JP2001011366A - プライマー層およびそれを用いた金属板とゴムの複合体 - Google Patents

プライマー層およびそれを用いた金属板とゴムの複合体

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alkyl
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Takayuki Hattori
高幸 服部
Takaaki Ishida
孝明 石田
Tetsuro Mizoguchi
哲朗 溝口
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 環境問題を解消するとともに金属板とゴムを
接着するのに適したプライマー層およびそのプライマー
層を用いた金属板とゴムの複合体を提供する。 【解決手段】 プライマー層にビスフェノールAを含ま
ないアルキル置換フェノール樹脂をベースポリマーに用
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属板とゴムの加硫
接着において、金属表面に塗布されるプライマー層およ
び該プライマー層と上塗層よりなる接着剤またはその接
着剤を用いたゴムと金属板の接着複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来金属板とゴムの複合体の接着に使用
される、たとえば免震支承用あるいは防舷材用として市
販されている加硫接着剤はビスフェノールA型フェノー
ル樹脂ないしはビスフェノールA型エポキシ樹脂等、ビ
スフェノールAを含有する樹脂を用いたプライマー層
と、塩素化ポリオレフィンまたは塩素化天然ゴムを基材
に含み、芳香族ニトロソ化合物、あるいは芳香族ジオキ
シムあるいは脂肪族ビスニトロソアミンを架橋剤として
含有する上塗剤からなっている。
【0003】しかし、従来、使用されるプライマー樹脂
は、昨今大きな問題となっている環境ホルモンの一種で
ある遊離のビスフェノールAを含有する。ビスフェノー
ルAが環境ホルモンとして人体に及ぼす影響としては、
精子数減少、生殖異常、神経障害、乳ガン等があり、特
に、微少量であっても人体に多大な影響を与える懸念が
ある。
【0004】接着剤製造や運搬、塗布に直接従事する作
業者、あるいはそれらを用いた製品、たとえば免震支承
構造体や防舷材の使用者への影響、あるいは製品が耐用
年数を超えて解体、廃棄される場合、作業者や周囲環境
に与える影響を考えるとビスフェノールAを含まない接
着剤系を開発することが急務となっている。
【0005】現在、溶剤による引火性や作業者への安全
性確保の問題から、種々の水性接着剤が開発されつつあ
り、これらにおいてはビスフェノールAを含まないもの
が多い。しかるに、これらは塗工性、接着力、あるいは
耐久性において現行使用の上記加硫接着系には遠く及ば
ず、特に強力な接着力と破断性能、耐久性を要求される
免震支承や防舷材において実用に耐えるものが存在しな
い。よって溶剤による影響だけでなくビスフェノールA
が環境ホルモンとして人体に及ぼす多大な悪影響がわか
ったとしてもこれらを使わざるを得ないのが現状であ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような観点から、
本発明は環境ホルモンとして多大な悪影響を人体に与え
るビスフェノールAを含有せず、塗工性、接着力あるい
は耐久性において上述の現行加硫接着剤系並みの性能を
発揮し得るプライマー組成物および加硫接着剤またはそ
れらを用いたゴムと金属板の接着複合体を提供すること
を目的としている。なお、このゴムと金属板接着複合体
の具体的な製品の例としては免震支承構造体、防舷材等
が挙げられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は金属板とゴムの
加硫接着において、金属表面に塗布されるプライマー層
であって、アルキル置換フェノール樹脂を主成分とし、
ビスフェノールAを含有しないことを特徴とするプライ
マー層である。
【0008】さらに本発明は、プライマー層と、塩素化
ポリオレフィンあるいは塩素化天然ゴムに芳香族ニトロ
ソ化合物、芳香族ジオキシムまたは脂肪族ニトロソアミ
ンを架橋剤として含有する上塗層よりなる二液性の加硫
接着剤である。さらにこのような接着剤を金属板とゴム
の間に塗布して加硫接着してなるゴムと金属板の複合体
である。
【0009】また、これらのプライマー層を、ニッケル
化合物等鉛系とセレン系以外の安定剤のみを含有する上
塗層と組合せて二液性接着剤としても良好な塗工性、接
着力あるいは耐久性が得られ、このような組合せを用い
ると、鉛化合物、セレン化合物の有毒性を回避できるこ
とと相まって、作業者および周囲環境等へのさらに大き
く配慮することができる。
【0010】以下本発明を詳細に説明する。本発明は、
防舷材、免震支承あるいはソリッドタイヤ等の金属板と
ゴムの複合構造において金属板とゴムを接着するために
金属板に塗布されるプライマー層である。ここで金属板
は材質として一般に鋼板が用いられる。
【0011】そしてゴムは防舷材、免震支承あるいはソ
リッドタイヤに一般に用いられるゴム組成物が用いられ
る。たとえばゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴ
ム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチル
ゴム、ハロゲン化ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン
ゴム等である。
【0012】そして配合剤としてカーボンブラック、オ
イル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、および加硫
促進剤、さらに硫黄、過酸化物、キノンジオキシム誘導
体、ジニトロソベンゼン誘導体、マレイミド誘導体等の
架橋剤を用いることができる。
【0013】本発明のプライマー層は通常、樹脂成分、
無機添加剤および溶剤で構成される。そして樹脂成分は
アルキル置換フェノール樹脂成分を含む。ここでアルキ
ル置換フェノール樹脂はたとえばn−ブチル置換フェノ
ール樹脂、メチル置換フェノール樹脂、エチル置換フェ
ノール樹脂等である。なお、アルキル置換フェノールは
ノボラックタイプ、レゾールタイプがあるが、後者は硬
化剤が不要であり、使いやすい利点がある。これらの樹
脂成分は金属表面に吸着し、金属表面を保護し、耐腐食
性を向上させる。
【0014】本発明では、環境ホルモンとして毒性が高
いとされる遊離ビスフェノールAを発生させるビスフェ
ノールA型レゾール樹脂やビスフェノールA型エポキシ
樹脂を含まない。本発明のプライマー層はさらに無機フ
ィラーとして、たとえば耐腐食性のため酸化チタンを、
また特に塩素化ポリマーの熱安定剤としてゼオライト
(Na/Al23・SiO2)、あるいは珪酸アルミニ
ウムの一種または二種以上を配合する。無機フィラーは
樹脂成分100重量部に対して合計10〜100重量
部、好ましくは25〜60重量部配合される。また、カ
ーボンブラックまたはシリカを5〜100重量部配合さ
れるとともにレベリング剤を0.5〜5重量部特に、
0.1〜2重量部配合することが好ましい。カーボンブ
ラック、シリカ、レベリング剤を加えることにより塗工
性が改善される。
【0015】なお、アルキル置換フェノール樹脂は有機
溶剤、たとえばメチルエチルケトン、トルエン、キシレ
ン等を樹脂成分100重量部に対して通常100〜50
0重量部加えて希釈して使用される。ここでメチルエチ
ルケトンはアルキル置換フェノール樹脂を溶解し、安定
化する作用を有し、一方トルエンはプライマー組成物の
のりをよくする作用を有する。
【0016】次に、上記プライマー組成物の上面に塗布
される上塗層は通常ベースポリマー、架橋剤、無機安定
剤および溶剤で構成される。ここでベースポリマーは塩
素化ポリオレフィン、塩素化天然ゴム、クロロスルホン
化ポリエチレン(ハイパロン)あるいは塩素を60重量
%以上含む高塩素化ポリエチレン等が用いられる。ベー
スポリマーは相互拡散により金属と接着される配合ゴム
およびプライマー組成物に拡散する。そして分子中の塩
素が金属との接着、また−SO2Cl基が前記配合ゴム
やプライマー組成物との接着性を向上する一方、分子中
に有する多量の塩素によって架橋剤を安定化する。
【0017】次に上塗層の架橋剤として芳香族ニトロソ
化合物、芳香族ジオキシムまたは、脂肪族ニトロソアミ
ンが用いられる。特に主架橋剤としてp−ジニトロソベ
ンゼンが、補助架橋剤として1,3フェニレンビスマレ
イミドが好適に用いられる。p−ジニトロソベンゼンは
金属と接着されるゴム配合あるいはプライマー層に拡散
し、共架橋剤として作用し、一方1,3フェニレンビス
マレイミドは加硫ゴムの耐熱性を向上する。なお架橋剤
はベースポリマー100重量部に対して20〜250重
量部配合される。
【0018】次に、上塗層に用いられる無機安定剤とし
てニッケル化合物あるいは、二塩基性亜リン酸塩等の鉛
化合物が用いられる。ハロゲン化ポリマーをベースポリ
マーに用いる場合、加硫時等の熱によりハロゲン化ポリ
マーは塩酸を発生しながら劣化するのでそれを防止する
作用を有する。そして、無機安定剤の配合量はベースポ
リマー成分100重量部に対して10〜100重量部さ
らに好ましくは、30〜80重量部である。
【0019】また、上塗層にはトルエン、キシレン等の
溶剤が用いられるが、これらの溶剤はp−ジニトロソベ
ンゼンを分散させ安定化する作用を有する。そしてこの
溶剤はベースポリマー成分100重量部に対して500
〜3500重量部が加えられる。上塗層は市販品として
ケムロック252X(ロードコーポレーション社製)、
メタロックXF−573(東洋化学研究所製)、メタロ
ックXG−823(東洋化学研究所製)として入手する
ことができる。
【0020】本発明で金属板とゴムを接着するにはたと
えば次の工程で行なう。 金属板にスチールショットブラストをあてて、ブラ
スト処理する。
【0021】 金属板の表面を、パークロロエチレン
による蒸気洗浄または炭化水素系溶剤あるいはアセトン
等による溶剤洗浄を行なう。なお、これらの洗浄法の代
わりにアルカリ洗浄剤等による水洗浄とリン酸塩皮膜処
理等を行なってもよい。
【0022】 スプレー塗布または刷毛塗りでプライ
マー組成物を均一に金属板に塗布し、約12時間以上空
気乾燥させる。
【0023】 電磁膜厚計を用いて各金属板の面内で
5点ずつ測定し、プライマー層の膜厚が7〜15μmの
厚みであることを確認する。
【0024】 上塗層の塗布も同様に行ない、1時間
以上空気乾燥した後、100〜140℃で一定時間焼成
する。
【0025】 プライマー層と上塗層の厚み合計を測
定し、上塗層の膜厚が15〜25μmとなることを確認
する。
【0026】 これに用途に応じて別途配合したゴム
組成物を積層し、金型に仕込んでプレス成型機により所
定温度で所定時間加硫する。
【0027】なお、プライマー層の膜厚を7〜15μ
m、上塗層の膜厚を15〜50μmとすることにより、
金属板とゴムの最大の接着強度が得られる。
【0028】
【実施例】図1において金属板1について材質はSS4
00の鋼板を用い、端部に7mmφの穴2をあけた。こ
の金属板1の端の25mm角の部分(以下試験面と呼
ぶ)にシールショットブラストをあててブラスト処理
し、その後洗浄、プライマー層塗布、空気乾燥、上塗層
塗布、焼き付け、金型への仕込みを経て、未加硫ゴム2
と加硫接着して上記テストピースを完成させた。
【0029】洗浄は炭化水素系溶剤により行なった。プ
ライマー層の塗布は刷毛塗りによって極力均一になるよ
うに行ない、12時間以上空気乾燥させた。空気乾燥
後、電磁膜厚計を用いて各金属板の面内で5点ずつ測定
し、膜厚が7〜15μmの厚みの範囲内であることを確
認した。
【0030】上塗層の塗布も同様の方法で刷毛塗りによ
って行なった。上塗層を塗布して1時間以上空気乾燥し
た後、オーブンにて120℃で20分焼成をし、プライ
マー層塗布時と同じようにプライマー層+上塗層の厚み
を測定し、各点において各々プライマー層の厚みを差し
引いて上塗層の厚みを求めた。
【0031】上塗層の厚みは15〜25μmとなること
を確認した。こうして得た金属板と表1の未加硫ゴム2
を金型に仕込み、温度120℃、加硫圧10[kgf/
cm 2]で2時間加硫し、加硫接着した。温度は加硫接
着により厳格な条件である低温長時間加硫を想定してい
る。
【0032】表1の未加硫ゴムシートは、密閉式混練機
やオープンロールを使用して混練して作製した。金型に
あった形状に切出して必要重量を計量して仕込み、上記
接着剤塗布済みの金属板とともにせん断剥離試験用テス
トピース作製用金型に仕込んで加硫接着した。なお、配
合ゴム物性のばらつきによる試験結果のばらつきを防ぐ
ために、練り方、温度等の条件を変えないようにした上
で、同一グラフ内の試験に用いたものは同一バッチの未
加硫ゴムを用いた。
【0033】プライマー層の調整は次の方法で行なっ
た。表2の溶剤分にフィラー分を加え、Reichshot社製
高速分散機デスパーマット、VMA−GETZMNN
GMBH D−51580で攪拌し、フィラー分を細か
く砕いて溶剤中に均一分散させた。その後、粉体あるい
はエチルメチルケトン溶液の基材樹脂を加えて、同機、
同上の容器と羽根を用いて500rpmで30分攪拌
し、最後に添加剤を加えてさらに500rpmで15分
攪拌し配合表に示すプライマー層に用いる組成物を得
た。
【0034】なお、表2に用いた配合剤の詳細を表3
に、また表4に用いた配合剤の詳細を表5に示してい
る。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】(テストピースによるせん断剥離試験)温
度23℃、湿度55%の下で試験を行なった。せん断変
形は図2の矢印の方向に、50mm/分の速度で引張る
ことにより行なった。そして破断時の応力、伸びおよび
破断形態を記録した。破断状態については、試験面全体
を100とし、各破断状態の割合を観察して記録した。
評価結果を表4に示す。表4において破断状態の略号は
次のとおりである。
【0041】R:ゴム破断、RC:ゴムー上塗層間の破
断、C:上塗凝集破断、PC:プライマー層上塗層破
断、P:プライマー層凝集破断、PM:プライマー層金
属間破断なお試験はn=4で行なったものを平均化し
た。
【0042】表4から本発明の実施例1〜7はいずれも
優れた破断応力、破断伸び、破断状態を示すことがわか
る。
【0043】今回開示された実施の形態はすべての点で
例示であって制限的なものではないと考えられるべきで
ある。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求
の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味お
よび範囲内でのすべての変更が含まれることが意図され
る。
【0044】
【発明の効果】本発明はビスフェノールAを含まないア
ルキル置換フェノール樹脂をプライマー層に用いたた
め、環境問題を解消するとともに金属板とゴムの接着強
度が向上し、このプライマー層を用いたゴムと金属板の
複合体を免震支承あるいは防舷材等に用いた場合破断強
度、耐久性等の優れた特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 金属とゴムの複合体を評価するための試験サ
ンプルの概略図である。
【図2】 試験サンプルの測定方法を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AB01A AB03 AH02C AH03C AK10C AK28C AK33B AL06C AN00D AN01C AN02C BA01 BA02 BA04 BA10A BA10D CA02C CA05C CA23 EH462 EJ062 EJ482 EJ862 GB51 GB90 JK06 4J038 CA012 CA132 CB172 DA041 JB21 JB22 KA03 PA07 PC02 4J040 CA011 DA181 GA03 HA006 HC17 KA16 KA27 KA29 MA02 MA12 MB05 PA11

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板とゴムの加硫接着において、金属
    表面に塗布されるプライマー層を形成する組成物であっ
    てアルキル置換フェノール樹脂を主成分とし、ビスフェ
    ノールAを含有しないことを特徴とするプライマー層。
  2. 【請求項2】 アルキル置換フェノール樹脂がn−アル
    キル置換フェノール樹脂である請求項1のプライマー
    層。
  3. 【請求項3】 アルキル置換フェノール樹脂がn−ブチ
    ル置換フェノール樹脂またはメチル置換フェノール樹脂
    である請求項1のプライマー層。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載のプライマー層と塩素
    化ポリオレフィンあるいは塩素化天然ゴムに芳香族ニト
    ロソ化合物、芳香族ジオキシムまたは脂肪族ニトロソア
    ミンを架橋剤として含有する上塗層よりなる加硫接着
    剤。
  5. 【請求項5】 上塗層に安定剤としてニッケル化合物を
    含有する請求項4の加硫接着剤。
  6. 【請求項6】 請求項4の加硫接着剤を金属板およびゴ
    ムの間に塗布し加硫接着してなるゴムと金属板の接着複
    合体。
  7. 【請求項7】 請求項5の加硫接着剤を金属板およびゴ
    ムの間に塗布し、加硫接着してなるゴムと金属板の接着
    複合体。
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