JP2001006668A - 密閉型アルカリ蓄電池 - Google Patents

密閉型アルカリ蓄電池

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JP2001006668A
JP2001006668A JP11176484A JP17648499A JP2001006668A JP 2001006668 A JP2001006668 A JP 2001006668A JP 11176484 A JP11176484 A JP 11176484A JP 17648499 A JP17648499 A JP 17648499A JP 2001006668 A JP2001006668 A JP 2001006668A
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nickel oxyhydroxide
negative electrode
battery
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Mitsunori Tokuda
光紀 徳田
Mutsumi Yano
睦 矢野
Mamoru Kimoto
衛 木本
Yasuhiko Ito
靖彦 伊藤
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Sanyo Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電池缶1,2,3と、中空状の正極5と、セ
パレータ6と、ゲル状負極7と、負極集電体4から構成
され、正極活物質としてγ型オキシ水酸化ニッケル粒子
を用い、負極活物質として亜鉛を用いた放電スタートの
密閉型アルカリ蓄電池において、充放電サイクルの長期
にわたって、電解液が外部に漏出しにくく、かつ放電容
量の高い密閉型アルカリ蓄電池を得る。 【解決手段】 γ型オキシ水酸化ニッケル粒子がマンガ
ンを固溶しており、かつ平均粒子径が5〜40μmであ
ることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電スタートの密
閉型アルカリ蓄電池に関するものである。放電スタート
の蓄電池とは、予め充電することなく初回の放電を行う
ことができる蓄電池のことである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
亜鉛を負極活物質とする密閉型アルカリ蓄電池用の正極
活物質としては、二酸化マンガンが提案されている(特
公昭45−3570号公報参照)。また、亜鉛を負極活
物質とするアルカリ蓄電池の正極活物質として、酸化ニ
ッケルと二酸化マンガンを混合したものが提案されてい
る(特公昭49−114741号公報参照)。
【0003】しかしながら、二酸化マンガンは充放電サ
イクルにおける可逆性が悪く、初回の放電を行った後充
電しても当初の二酸化マンガンに戻らないので、充放電
サイクルにおいて放電容量が急激に低下する。また、二
酸化マンガンの酸素過電圧が低いために、充電時に正極
側で酸素ガス(水の電気分解による)が発生して電池内
圧が上昇し、それに伴い電池外装部材の接合部における
密着性が低下して、電解液が外部に漏出しやすい。ま
た、酸化ニッケルと二酸化マンガンとの混合物を蓄電池
に用いた場合、活物質である酸化ニッケルの酸素過電圧
が低いために、二酸化マンガンを単独で使用した場合と
同様に、電池内圧が上昇しやすく漏液が起こりやすい。
【0004】このような問題を解消し得る正極活物質と
して、本出願人はマンガンを固溶したγ型オキシ水酸化
ニッケルを提案している(特開平10−214621号
公報参照)。マンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニッ
ケルを正極活物質として用いることにより、充放電サイ
クルの長期に渡って電解液が外部に漏出しにくい、信頼
性の高い放電スタートの密閉型アルカリ蓄電池を得るこ
とができる。しかしながら、このような密閉型アルカリ
蓄電池においては、さらに放電容量を高めることが求め
られている。
【0005】本発明の目的は、充放電サイクルの長期に
渡って電解液が外部に漏出しにくく、かつ放電容量の高
い放電スタートの密閉型アルカリ蓄電池を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の密閉型アルカリ
蓄電池は、電池缶と、該電池缶と電気的に接触するよう
に電池缶内に配置される、γ型オキシ水酸化ニッケル粒
子を正極活物質とした中空状の正極と、正極の内側に配
置される、亜鉛を負極活物質とした負極と、正極と負極
の間に配置されるセパレータと、負極内に挿入された状
態で配置される負極集電体と、正極、負極、及びセパレ
ータ内に含浸される電解液とを備える密閉型アルカリ蓄
電池であり、γ型オキシ水酸化ニッケル粒子がマンガン
を固溶しており、かつ平均粒子径が5〜40μmである
ことを特徴としている。
【0007】本発明において正極活物質として用いるγ
型オキシ水酸化ニッケル粒子は、好ましくは、マンガン
(Mn)を5〜50重量%固溶している。マンガンの固
溶量は以下の式により定義される。
【0008】マンガンの固溶量(重量%)=(γ型オキ
シ水酸化ニッケル中のマンガン量)/(γ型オキシ水酸
化ニッケル中のニッケル及びマンガンの合計量)×10
0マンガンの固溶量が5重量%未満になると、充放電サ
イクルの経過に伴い、オキシ水酸化ニッケルの放電生成
物である水酸化ニッケルの結晶構造が、α型からβ型へ
変化するため、酸素過電圧(酸素発生電位−充電電位)
が低下し、充電時に正極側で酸素が発生しやすくなる傾
向にある。一方、固溶量が50重量%を超えると、正極
活物質であるγ型オキシ水酸化ニッケルの量が減少する
ため、十分な放電容量を得ることが困難になる。マンガ
ンの固溶量は、マンガンの原料とニッケル原料の混合割
合を変化させることにより、調整することができる。
【0009】本発明において、γ型オキシ水酸化ニッケ
ル粒子は、その平均粒子径が5〜40μmである。この
ようなγ型オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径は、レー
ザー回折法により測定することができる。γ型オキシ水
酸化ニッケルの平均粒子径が5μmより小さいと、二次
凝集が生じるため、正極活物質の反応表面積が減少し、
放電容量が低下する。また、平均粒子径40μmより大
きくなると、電極内における正極活物質の充填性が低下
して、電極内の活物質の量が減少し、放電容量が低下す
る。γ型オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径は、水酸化
ニッケルを生成する際の反応温度を制御することによ
り、調整することができる。
【0010】本発明におけるγ型オキシ水酸化ニッケル
中のニッケル原子の価数は、初回放電前において、すな
わち満充電状態で、3.4〜3.8価であることが好ま
しい。ニッケル原子の価数が3.4未満になると、十分
な放電容量が得られにくく、また酸素過電圧が低いため
充電時に電解液の漏れが発生する場合がある。また、一
般にオキシ水酸化ニッケルにおいては、ニッケル原子の
価数が3.8価よりも大きなものは存在しない。従っ
て、満充電状態の後にさらに充電を続けても、水が分解
して酸素ガスが発生するだけであり、ニッケル原子の価
数が3.8価を超えることはない。
【0011】本発明において用いるγ型オキシ水酸化ニ
ッケルは、例えば水酸化ニッケルを次亜塩素酸ナトリウ
ム(NaClO)等の酸化剤で酸化することにより得ら
れる。またニッケルの価数は、反応させる酸化剤の添加
量により調整することができる。
【0012】本発明において用いるγ型オキシ水酸化ニ
ッケルには、マンガン以外に、さらにアルミニウム(A
l)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、イッテ
ルビウム(Yb)、エルビウム(Er)及びガドリニウ
ム(Gd)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元
素が固溶されていてもよい。これらの元素が固溶したγ
型オキシ水酸化ニッケルを用いることにより、正極の酸
素過電圧をさらに高めることができる。これらの元素の
固溶量としては、0.5〜5重量%程度が好ましい。な
お、この固溶量は以下の式により定義される。
【0013】他の元素の固溶量(重量%)=(γ型オキ
シ水酸化ニッケル中の他の元素の量)/(γ型オキシ水
酸化ニッケル中のニッケル及び他の元素の合計量)×1
00また、本発明においては、正極、負極、セパレー
タ、負極集電体、及び電解液が、電池缶内の容積の75
体積%以上を占めることが好ましい。これにより、電池
缶内における活物質の充填量を高めることができ、放電
容量の高い密閉型アルカリ蓄電池とすることができる。
また、このような放電容量の高い密閉型アルカリ蓄電池
において、電池内圧の上昇を抑制し、充放電を繰り返し
た際に電解液が外部へ漏出するのを防止することができ
る。
【0014】本発明の電極材料は、上記本発明の密閉型
アルカリ蓄電池の正極活物質に用いられるものであり、
マンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニッケル粒子であ
り、平均粒子径が5〜40μmであることを特徴として
いる。
【0015】本発明の電極材料を密閉型アルカリ蓄電池
の正極活物質として用いることにより、充放電サイクル
の長期にわたって電解液が外部に漏出しにくく、かつ放
電容量の高い放電スタートの密閉型アルカリ蓄電池とす
ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて
さらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら
限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲に
おいて適宜変更して実施することが可能なものである。
【0017】〔実験1〕この実験1では、正極活物質で
あるγ型オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径と、初期容
量、サイクル経過に伴う放電容量、及び漏液電池発生率
との関係について調べた。
【0018】(実施例1)〔正極の作製〕 ステップ1:水酸化ニッケルの作製 1.4モル/リットルの硫酸ニッケル水溶液500m
l、0.17モル/リットルの硫酸マンガン水溶液を5
00ml、30重量%アンモニア水溶液を1.9リット
ル、及び10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を1リッ
トル混合した水溶液に、pHが11.0になるように適
時10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら
滴下し、温度を30℃に保持した。そして、pHを11
に保持した状態で8時間反応させた。そして、生成物を
ろ過、水洗、乾燥してマンガンを固溶させたα型の水酸
化ニッケルを作製した。この際、α型水酸化ニッケル内
のマンガン固溶量をICP(発光分析法)により定量分
析した結果、元素換算で10重量%であった。また、レ
ーザー回折法により平均粒子径を測定した結果、20μ
mであった。
【0019】ステップ2:酸化処理 酸化剤である10重量%の次亜塩素酸ナトリウム110
0mlと40重量%水酸化ナトリウム水溶液1000m
lとを混合した水溶液を用意し、この水溶液を75℃に
加熱する。この水溶液中に、上記ステップ1で作製した
マンガンを固溶した水酸化ニッケル粉末を100g攪拌
しながら投入し2時間反応させた。その後、ろ過、水
洗、60℃で乾燥し、活物質であるγ型オキシ水酸化ニ
ッケルを作製した。得られた生成物について、マンガン
の固溶量をICPにより定量分析した結果、ステップ1
で作製した水酸化ニッケル中の固溶量と同量で、10重
量%であった。また、平均粒子径もα型水酸化ニッケル
と同じであった。また、鉄の2価/3価酸化還元滴定測
定法により、生成物のニッケルの価数を測定した結果、
3.5であった。
【0020】なお、上記の例では、酸化剤として、次亜
塩素酸ナトリウム(NaClO)を使用しているが、他
に過硫酸ナトリウム(Na2 2 8 )を酸化剤として
用いた場合でも、同様の処理が行えることを確認した。
【0021】ステップ3:電極の作製 上記ステップ2で得られたγ型オキシ水酸化ニッケル粉
末90重量部と黒鉛粉末10重量部と30重量%水酸化
カリウム水溶液10重量部とを、らいかい機で30分間
混合し、加圧成型して、外径13.3mm、内径9m
m、高さ13.7mmの円筒中空状の正極を作製した。
なお、電池の作製においては、この円筒中空状の正極を
3個直列に重ねて、全体として1個の円筒中空状正極と
して使用した。
【0022】〔負極の作製〕負極活物質としての亜鉛粉
末65重量部と酸化亜鉛(ZnO)を飽和量含む40重
量%水酸化カリウム水溶液34重量部と、ゲル化剤とし
てのアクリル酸樹脂(日本純薬社製、商品名「ジュンロ
ンPW150」)1重量部とを混合して、ゲル状の負極
を作製した。
【0023】〔電池の作製〕上記の正極及び負極を用い
て、通称「インサイドアウト型」と呼ばれている構造
(電池缶側が正極側、電池蓋側が負極側:「アウトサイ
ド・正極型」とも呼ばれる)で、AAサイズの密閉型ア
ルカリ蓄電池(本発明電池)Aを作製した。なお、放電
容量を正極容量で規定するために、正極と負極との電気
化学的な容量を1:1.2とした(以下の電池も全てこ
れと同じ容量比にした)。また、負極、正極、セパレー
タ、負極集電体、及び電解液からなる発電要素体が占め
る体積を、電池缶内の容積に対して、80体積%とした
(以下の電池も全てこれと同じ充填率にした)。
【0024】図1は、作製した密閉型アルカリ蓄電池を
示す部分断面図である。図示の密閉型アルカリ蓄電池
は、有底円筒状の正極缶(正極外部端子)1、負極蓋
(負極外部端子)2、絶縁パッキング3、真鍮製の負極
集電棒4、円筒中空状の正極(ニッケル極)5、ビニロ
ンを主材とする円筒フィルム状のセパレータ6、ゲル状
負極(亜鉛極)7などからなる。
【0025】正極缶1には、正極缶1の円筒部の内周面
に当接させて正極5が収納されており、該円筒中空状の
正極5の内周面には、セパレータ6が外周面を当接させ
て設けられており、セパレータ6の内側には、ゲル状の
負極7が充填されている。負極7の中央部には、正極缶
1と負極蓋2とを電気的に絶縁する絶縁パッキング3に
より一端を支持された負極集電棒(負極集電体)4が挿
入されている。正極缶1の開口部は、負極蓋2により閉
蓋されている。電池内部の密閉は、正極缶1の開口部に
絶縁パッキング3を嵌め込み、その上に負極蓋2を載置
した後、正極缶1の閉口端を内側にかしめることにより
なされている。本実施例の密閉型アルカリ蓄電池におい
て、電極缶は、正極缶1、負極蓋2及び絶縁パッキング
3から構成される。
【0026】なお、上記実施例の密閉型アルカリ蓄電池
においては中空状正極として円筒状の正極を用いている
が、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
角筒状などの中空状正極であってもよい。
【0027】(実施例2)上記〔実験1〕のステップ1
において、水酸化ニッケルを作製する際の反応温度を、
10℃、15℃、20℃、40℃、50℃、55℃、6
0℃に変化させて、マンガンを固溶させた水酸化ニッケ
ルを作製した。これらの水酸化ニッケルを、〔実験1〕
と同様にして酸化処理し、γ型オキシ水酸化ニッケル粒
子を作製した。得られたγ型オキシ水酸化ニッケルの平
均粒子径を測定し、測定結果を反応温度と共に表1に示
した。
【0028】
【表1】
【0029】次に、これらのγ型オキシ水酸化ニッケル
粒子を用いて、上記(実施例1)と同様にして電池B1
〜B7を作製した。 (比較例1)二酸化マンガン粉末100gと、黒鉛粉末
15gと、ポリエチレン樹脂5gとを混合し、さらにこ
れに7モル/リットル濃度の水酸化カリウム水溶液20
mlを混合し、加圧成型して、正極を作製した。この正
極を使用したこと以外は、上記実施例1と同様にして、
比較電池Xを作製した。
【0030】(比較例2)2モル/リットルの硝酸ニッ
ケル水溶液500mlと、10重量%次亜塩素酸ナトリ
ウム水溶液1500mlとを、14モル/リットル濃度
の水酸化カリウム水溶液2000mlに滴下混合した
後、1時間徐冷した。次いで、生成する沈殿物をろ過、
水洗し、90℃で乾燥して、正極活物質としてのγ型オ
キシ水酸化ニッケル粉末を作製した。
【0031】上記γ型オキシ水酸化ニッケル粉末50g
と、二酸化マンガン粉末30gと、黒鉛15gと、ポリ
エチレン樹脂5gとを混合し、さらにこれに7モル/リ
ットル濃度の水酸化カリウム水溶液20mlを混合し、
加圧成型して、正極を作製した。この正極を使用したこ
と以外は上記実施例1と同様にして、比較電池Yを作製
した。この正極活物質であるγ型オキシ水酸化ニッケル
は、マンガンは含有されていない。
【0032】(比較例3)上記(実施例1)のステップ
1において、硫酸マンガンを添加せず、反応時のpHを
10.9としたこと以外は、(実施例1)と同様にし
て、比較電池Zを作製した。正極活物質には、マンガン
は固溶されていない。また、γ型オキシ水酸化ニッケル
の平均粒子径は、レーザー回折法により測定した結果、
20μmであった。
【0033】〔各電池の充放電サイクルにおける放電容
量及び漏液電池発生率〕上記電池A、電池B1〜B7、
比較電池X、Y及びZについて、100mAで電池電圧
が1Vになるまで放電した後、100mAで電池電圧が
1.95V(比較電池Xについては1.65V)に達す
るまで充電を行う工程を1サイクルとする充放電サイク
ル試験を行った。各電池それぞれ10個について、1サ
イクル目及び50サイクル目における放電容量及び漏液
電池発生率を調べた。この結果を表2に示す。
【0034】表2中の1サイクル目及び50サイクル目
の放電容量は、本発明電池Aの1サイクル目の放電容量
を100とした指数であり、電解液が漏出しなかった電
池の放電容量の平均値である。表2に示す漏液電池発生
率は、以下の式で定義される。
【0035】漏液電池発生率(%)=(漏液した電池の
数)/(試験を行った電池の数)×100
【0036】
【表2】
【0037】表2に示すように、比較電池X、Y及びZ
においては、充放電サイクルを経過するに伴い、放電容
量が低下し、さらに漏液電池発生率が増加した。γ型オ
キシ水酸化ニッケル粒子の平均粒子径が5〜40μmで
ある本発明電池A及びB3〜B6においては、初期の放
電容量が高く、かつ充放電サイクルを経過した後も高い
放電容量を示している。平均粒子径が5μmよりも小さ
いγ型オキシ水酸化ニッケル粒子を用いた電池B1及び
B2においては、平均粒子径が小さいため、二次凝集が
生じ、反応表面積が減少し、充放電サイクルの経過に伴
い放電容量が低下したものと考えられる。また、平均粒
子径が40μmより大きいγ型オキシ水酸化ニッケル粒
子を用いた電池B7においては、正極活物質の充填性が
低下し電極内の活物質量が減少したため、初期の段階か
ら放電容量が低かったと考えられる。
【0038】〔実験2〕この実験2では、正極活物質に
固溶される元素種及び含有量とサイクル経過に伴う放電
容量及び漏液電池発生率の関係を調べた。
【0039】上記〔実験1〕の(実施例1)のステップ
1で、硫酸ニッケル水溶液に同時に添加する硫酸マンガ
ン水溶液の濃度を0.02モル/リットル、0.05モ
ル/リットル、0.08モル/リットル、0.37モル
/リットル、0.64モル/リットル、1.00モル/
リットル、1.50モル/リットル、1.83モル/リ
ットル、2.25モル/リットルとし、それぞれの反応
時のpHも10.6、10.6、10.8、11.2、
11.3、11.3、11.5、11.6、11.8と
変化させて、マンガンを固溶させた水酸化ニッケルを作
製した。これらの水酸化ニッケルを〔実験1〕のステッ
プ2と同様の方法で酸化処理した後に、得られたγ型オ
キシ水酸化ニッケル内のマンガンの固溶量をICPによ
り測定したところ、元素換算でそれぞれ1重量%、3重
量%、5重量%、20重量%、30重量%、40重量
%、50重量%、55重量%、60重量%であった。ニ
ッケル原子の価数は3.5であった。平均粒子径を、レ
ーザー回折法により測定した結果、20μmであった。
【0040】次いで、これらのγ型オキシ水酸化ニッケ
ルを用いて、上記〔実験1〕の(実施例1)と同様に
し、順に電池C1〜C9を作製した。なお、これらの電
池の正極活物質を準備するにあたり使用した硫酸マンガ
ン水溶液の濃度、正極活物質作製時のステップ1のpH
値、正極活物質へのマンガン固溶量を、表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】上記電池A及び電池C1〜C9について、
上記〔実験1〕と同じ条件で充放電サイクル試験を行
い、その際の1サイクル目及び50サイクル目の放電容
量及び漏液電池発生率を調べた。放電容量は、電池Aの
1サイクル目の放電容量を100とした指数であり、電
解液が漏出しなかった電池の放電容量の平均値である。
その結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】表4から明らかなように、マンガンの固溶
量が5〜50重量%の電池A及び電池C3〜C7は、初
期の放電容量が高く、かつ充放電サイクルを経過しても
放電容量がそれぞれ100〜97に維持されている。ま
た充放電サイクルを経過しても電解液の漏出は認められ
なかった。従って、マンガンの固溶量としては、5〜5
0重量%が好ましいことがわかる。
【0045】〔実験3〕この実験3では、正極活物質で
あるγ型オキシ水酸化ニッケルのニッケル原子の価数と
放電容量及び漏液電池発生率の関係を調べた。
【0046】上記〔実験1〕の(実施例1)のステップ
2で、酸化剤である10重量%次亜塩素酸ナトリウム水
溶液の量を、1100mlから、800ml、950m
l、1200ml、1350ml、1500mlと変化
させて正極活物質を作製した。得られたγ型オキシ水酸
化ニッケルのニッケル原子の価数は、鉄の2価/3価酸
化還元滴定法により測定した結果、それぞれ3.3、
3.4、3.6、3.7、3.8である。平均粒子径
を、レーザー回折法により測定した結果、20μmであ
った。
【0047】次いで、上記の正極活物質を用いて、上記
(実施例1)と同様にして、順に電池D1〜D5を作製
した。上記〔実験1〕で作製した電池A及び電池D1〜
D5について、上記〔実験1〕と同じ条件で充放電サイ
クル試験を行い、その際の1サイクル目及び50サイク
ル目の放電容量、及び漏液電池発生率を調べた。
【0048】その結果を、表5に示す。表内の放電容量
は、電池Aの1サイクル目の放電容量を100とした指
数で示しており、電解液が漏出しなかった電池の放電容
量の平均値である。
【0049】
【表5】
【0050】表5に示すように、電池A及び電池D2〜
D5においては、充放電サイクル経過に伴う放電容量が
高く、電解液の漏出は認められなかった。しかしなが
ら、電池D1においては、初期の放電容量が低くなって
いた。これは、正極活物質中のニッケル原子の価数が低
いため、十分な電池容量が得られなかったことによるも
のと考えられる。従って、正極活物質としてのγ型オキ
シ水酸化ニッケル中のニッケル原子の価数は、3.4〜
3.8の範囲内が好ましいことがわかる。
【0051】〔実験4〕この実験4では、マンガン以外
の元素のγ型オキシ水酸化ニッケルへの固溶と、初期容
量、充放電サイクル経過に伴う放電容量、及び漏液電池
発生率の関係を調べた。
【0052】(実施例3)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.0049モル/リットルの硫酸エルビウム
水溶液500mlを添加したこと以外は、〔実験1〕と
同様にして、電池E1を作製した。このときのエルビウ
ム及びマンガンの固溶量をICP(発光分析)により定
量した結果、エルビウムの固溶量は1重量%、マンガン
の固溶量は10重量%であった。また、γ型オキシ水酸
化ニッケル中のニッケル原子の価数は3.5であり、平
均粒子径は20μmであった。
【0053】(実施例4)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.0048モル/リットルの硫酸イッテルビ
ウム水溶液500mlを添加したこと以外は、〔実験
1〕と同様にして、電池E2を作製した。このときのイ
ッテルビウム及びマンガンの固溶量をICP(発光分
析)により定量した結果、イッテルビウムの固溶量は1
重量%、マンガンの固溶量は10重量%であった。ま
た、γ型オキシ水酸化ニッケル中のニッケル原子の価数
は3.5であり、平均粒子径は20μmであった。
【0054】(実施例5)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.0092モル/リットルの硫酸イットリウ
ム水溶液500mlを添加したこと以外は、〔実験1〕
と同様にして、電池E3を作製した。このときのイット
リウム及びマンガンの固溶量をICP(発光分析)によ
り定量した結果、イットリウムの固溶量は1重量%、マ
ンガンの固溶量は10重量%であった。また、γ型オキ
シ水酸化ニッケル中のニッケル原子の価数は3.5であ
り、平均粒子径は20μmであった。
【0055】(実施例6)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.0052モル/リットルの硫酸ガドリニウ
ム水溶液500mlを添加したこと以外は、〔実験1〕
と同様にして、電池E4を作製した。このときのガドリ
ニウム及びマンガンの固溶量をICP(発光分析)によ
り定量した結果、ガドリニウムの固溶量は1重量%、マ
ンガンの固溶量は10重量%であった。また、γ型オキ
シ水酸化ニッケル中のニッケル原子の価数は3.5であ
り、平均粒子径は20μmであった。
【0056】(実施例7)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.030モル/リットルの硫酸アルミニウム
水溶液500mlを添加したこと以外は、〔実験1〕と
同様にして、電池E5を作製した。このときのアルミニ
ウム及びマンガンの固溶量をICP(発光分析)により
定量した結果、アルミニウムの固溶量は1重量%、マン
ガンの固溶量は10重量%であった。また、γ型オキシ
水酸化ニッケル中のニッケル原子の価数は3.5であ
り、平均粒子径は20μmであった。
【0057】(実施例8)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.0014モル/リットルの硫酸コバルト水
溶液500mlを添加したこと以外は、〔実験1〕と同
様にして、電池E6を作製した。このときのコバルト及
びマンガンの固溶量をICP(発光分析)により定量し
た結果、コバルトの固溶量は1重量%、マンガンの固溶
量は10重量%であった。また、γ型オキシ水酸化ニッ
ケル中のニッケル原子の価数は3.5であり、平均粒子
径は20μmであった。
【0058】(実施例9)〔実験1〕の〔正極の作製〕
において、硫酸ニッケル水溶液及び硫酸マンガン水溶液
と同時に0.0025モル/リットルの硫酸エルビウム
水溶液500ml及び0.0046モル/リットルの硫
酸イットリウム500mlを添加したこと以外は、〔実
験1〕と同様にして、電池E7を作製した。このときの
エルビウム、イットリウム及びマンガンの固溶量をIC
P(発光分析)により定量した結果、エルビウム及びイ
ットリウムの固溶量はそれぞれ0.5重量%、マンガン
の固溶量は10重量%であった。また、γ型オキシ水酸
化ニッケル中のニッケル原子の価数は3.5であり、平
均粒子径は20μmであった。
【0059】上記の固溶元素の異なる7種の電池E1〜
E7について、〔実験1〕と同様の条件にて充放電サイ
クル試験を行い、その際の1サイクル目及び50サイク
ル目の放電容量、及び漏液電池発生率を調べた。放電容
量は、電池Aの1サイクル目の放電容量を100とした
指数であり、電解液を漏出しなかった電池の放電容量の
平均値である。結果を表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】表6に示すように、正極活物質であるγ型
オキシ水酸化ニッケルに、マンガン以外の元素として、
エルビウム、イッテルビウム、イットリウム、ガドリニ
ウム、アルミニウム及びコバルトから選ばれる1種以上
の元素が固溶された場合においても、充放電サイクルの
長期にわたり、放電容量の低下が小さく、電解液の外部
への漏出が認められないことがわかる。
【0062】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、充放電
サイクルの長期にわたって電解液が外部に漏出しにく
く、かつ放電容量の高い放電スタートの密閉型アルカリ
蓄電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う一実施例の密閉型アルカリ蓄電池
を示す部分断面図。
【符号の説明】
1…正極缶 2…負極蓋 3…絶縁パッキング 4…負極集電棒 5…正極 6…セパレータ 7…ゲル状負極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木本 衛 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 (72)発明者 伊藤 靖彦 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 Fターム(参考) 5H003 AA04 BA09 BB04 BC01 BC06 BD02 BD04 5H016 AA01 AA08 EE05 HH01 HH08 5H028 AA01 AA05 CC17 CC24 EE01 EE05 HH01 HH05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電池缶と、前記電池缶と電気的に接触す
    るように前記電池缶内に配置される、γ型オキシ水酸化
    ニッケル粒子を正極活物質とした中空状の正極と、前記
    正極の内側に配置される、亜鉛を負極活物質とした負極
    と、前記正極と前記負極の間に配置されるセパレータ
    と、前記負極内に挿入された状態で配置される負極集電
    体と、前記正極、前記負極、及び前記セパレータ内に含
    浸される電解液とを備える密閉型アルカリ蓄電池であっ
    て、 前記γ型オキシ水酸化ニッケル粒子がマンガンを固溶し
    ており、かつ平均粒子径が5〜40μmであることを特
    徴とする密閉型アルカリ蓄電池。
  2. 【請求項2】 前記マンガンの固溶量が、5〜50重量
    %であることを特徴とする請求項1に記載の密閉型アル
    カリ蓄電池。
  3. 【請求項3】 初回放電前の前記γ型オキシ水酸化ニッ
    ケル粒子中のニッケル原子の価数が3.4〜3.8価で
    ある請求項1または2に記載の密閉型アルカリ蓄電池。
  4. 【請求項4】 前記γ型オキシ水酸化ニッケル粒子に、
    マンガン以外に、さらにアルミニウム(Al)、コバル
    ト(Co)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Y
    b)、エルビウム(Er)及びガドリニウム(Gd)よ
    りなる群から選ばれた少なくとも1種の元素が固溶して
    いる請求項1、2または3に記載の密閉型アルカリ蓄電
    池。
  5. 【請求項5】 密閉型アルカリ蓄電池の正極活物質とし
    て用いられる電極材料であって、 マンガンを固溶したγ型オキシ水酸化ニッケル粒子であ
    り、平均粒子径が5〜40μmであることを特徴とする
    密閉型アルカリ蓄電池用電極材料。
  6. 【請求項6】 前記マンガンの固溶量が、5〜50重量
    %であることを特徴とする請求項5に記載の密閉型アル
    カリ蓄電池用電極材料。
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