JP2001002451A - ガラス基板およびその製造方法 - Google Patents

ガラス基板およびその製造方法

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JP2001002451A
JP2001002451A JP16948399A JP16948399A JP2001002451A JP 2001002451 A JP2001002451 A JP 2001002451A JP 16948399 A JP16948399 A JP 16948399A JP 16948399 A JP16948399 A JP 16948399A JP 2001002451 A JP2001002451 A JP 2001002451A
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glass substrate
glass
acid
substrate
base plate
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Minoru Onoda
稔 小野田
Kunio Hibino
邦男 日比野
Fujio Okuyama
富士夫 奥山
Kenta Ito
健太 伊藤
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C21/00Treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by diffusing ions or metals in the surface
    • C03C21/001Treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by diffusing ions or metals in the surface in liquid phase, e.g. molten salts, solutions

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  • Organic Chemistry (AREA)
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  • Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 強度および平滑度の高いガラスを安定的に得
ることができ、また、表面異物がなく、ヤケ等の変質が
生じにくい高品質なガラス基板を得ることができるガラ
ス基板の製造方法を提供する。。 【解決手段】 加熱軟化したガラス材料を、ディスク基
板に対応する一対の平滑なプレス面を有する金型によっ
て、加圧成形した後、成形したガラス基板を化学強化
し、更に、必要に応じて化学強化したガラス基板表面を
酸処理して、ガラス基板を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報記録ディスク
用基板に特に適したガラス基板、およびその製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータの普及に伴い、ハー
ドディスクドライブのような外部記憶装置に対しては課
される要求は非常に厳しくなりつつある。特に、大容量
化(即ち、高密度記録化)、アクセス速度の高速化、お
よび小型化は、外部記憶装置に対して常に要求される事
項である。
【0003】これらの要求に応えるべく、外部記憶装置
を構成する部材に対して種々の改良がなされてきた。中
でも、外部記憶装置において情報を記録する媒体(即
ち、記録媒体)となる情報記録ディスクは、改良の対象
となりやすい部材である。例えば、情報記録ディスクが
磁気記録媒体である場合、情報記録ディスクの保磁力を
高めることによって高密度化による出力低下を防止で
き、情報記録ディスクの強度を向上させることによって
装置全体の小型化が可能となる。
【0004】情報記録ディスクの物理的性質は、その基
板に大きく依存することが判っている。そして、情報記
録ディスクに適した基板として、ガラス基板が注目され
ている。ガラス基板が情報記録ディスクに適している理
由としては、1)強度が大きいこと、2)耐熱性が良好
であること、および3)表面硬度が高く酸化セリウム等
を使用した高精度な精密研磨が可能であるために優れた
平滑性が得られることが挙げられる。これらの特性は、
それぞれ、外部記憶装置の1)小型化、2)保磁力の向
上、および3)低フライングハイト化に寄与する。な
お、基板の耐熱性が高い場合に保磁力が向上するのは、
基板の耐熱性がより高ければ、より高い温度で磁性層の
成膜を実施でき、その結果、磁性層の結晶性がより向上
することによる。このような特性を有するガラス基板は
情報記録媒体の基板として実用に供されているが、一方
では、より強度が高く、より平滑なガラス基板が常に求
められている。
【0005】そこで、例えば、ガラス基板の強度を向上
させるために、研磨したガラス基板に化学強化等の強化
処理を施すことが特開平2−31325号公報に記載さ
れている。また、化学強化処理後のガラス基板は、その
表面に化学強化処理液に由来する溶融塩が付着している
ため、洗浄処理される。一般に、化学強化処理後の情報
記録ディスク用ガラス基板の洗浄は、アルカリ性洗浄
剤、純水、有機溶剤等を用いて行われる。特開平2−2
85508号公報には、そのような洗浄を、例えば、メ
カノケミカルポリッシングにより研磨したアルミノケイ
酸ガラス基板について実施することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ガラス基板は、酸化セ
リウム等を用いた高精度な研磨が可能なものである。し
かしながら、研磨されるガラス基板には、研磨剤粒子に
よるキズのために微細なクラック(例えば、幅0.1〜
1.0μm、深さ1〜5nm、長さ0.01〜5mm)が存
在しており、このクラックは、研磨によっても完全に除
去することはできない。かかる微細なクラックは、ガラ
ス基板の平滑度を低下させ、また、ガラスの強度低下の
原因ともなる。
【0007】さらに、研磨したガラス基板を化学強化し
た場合でも、必ずしも十分な強度向上効果が得られない
という問題がある。
【0008】また、最近では、より高い密度で記録可能
な装置が要求されている。この要求を満たすには、情報
記録ディスクはより高いレベルの平滑度を有する必要が
ある。そのため、ガラス基板の製造工程においては、情
報記録ディスク表面の突起の原因となり得るガラス基板
上の異物を完全に除去する必要があるが、先に述べたよ
うな洗浄方法では、ガラス基板上の異物、例えば化学強
化処理液に由来する析出溶融塩を完全に除去することは
困難であり、また、上述した従来の洗浄方法だけでは、
ガラス表面における、いわゆる「ヤケ」等の変質を高い
レベルで十分に防止することは困難であった。
【0009】本発明は、かかる実情に鑑みてなされたも
のであり、高い強度と優れた平滑性を有するガラス基板
を提供することを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明のガラス基板の製造方法は、 1)加熱軟化したガラス材料を、1対の平滑なプレス面
を有する金型で加圧成形する工程、および 2)加圧成形したガラス基板を、化学強化処理液に浸漬
することにより化学強化する工程 を含むことを特徴とする。
【0011】この方法において、所定の平滑な金型を用
いたガラス材料の加圧成形は、ガラス基板の表面の平滑
度を向上させ、また、加圧成形後のガラス基板表面付近
におけるアルカリ金属イオンの濃度を増加させてイオン
交換能を向上させる。従って、加圧成形して得たガラス
基板を化学強化すれば、研磨して形成したガラス基板に
比べ、より大きな強化効果が得られる。
【0012】本発明のガラス基板製造方法は、上記の工
程に加えて、化学強化処理したガラス基板の表面を酸処
理する工程を含むことが好ましい。酸処理は化学強化の
後に実施される。酸処理によって、化学強化処理液に由
来するガラス基板に析出した溶融塩を除去することがで
き、また、ガラス基板の変質が抑制される。
【0013】本発明のガラス基板製造方法に従って製造
されるガラス基板は、優れた平滑性と高い強度を有し、
かつ変質しにくいものである。従って、このガラス基板
は、光ディスク、光磁気ディスクおよび磁気ディスクの
ような情報記録ディスクの基板に適しており、特にハー
ドディスクドライブに組み込まれる磁気ディスクのよう
な磁気記録媒体の基板に適している。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を具体
的に説明する。本発明では、加熱軟化したガラス材料を
一対の平滑なプレス面を有する金型に挟んで加圧するこ
とによって、所定の厚さを有するガラス基板に成形す
る。本明細書において、「金型」には、少なくとも1
つのプレス面に凹部が形成され、2つの型板が組み合わ
されたときに目的とするガラス基板の形状に対応するキ
ャビティを画定するもの、プレス面が平坦であってキ
ャビティが形成されておらず、ガラス材料を挟んで加圧
することによりその厚さを小さくして目的とするガラス
基板の形状とするもの、および一方の型板に凹部が形
成され、他方の型板が当該凹部に嵌入できる相補的な形
状寸法を有し、一方の型板の凹部に配置したガラス材料
を他方の型板で押圧して、目的とするガラス基板の形状
とするものが含まれるものとする。
【0015】加熱軟化したガラス材料には、加圧成形に
より、金型の平滑なプレス面の表面状態が転写される。
従って、表面の平滑なガラス基板を得るためには、得よ
うとする表面と同等またはそれ以上の平滑度を有するプ
レス面をガラス材料に接触させて加圧成形を実施する必
要がある。本発明においては、平滑度を示す指標として
中心線平均粗さを採用する。
【0016】金型のプレス面の平滑度は、得ようとする
ガラス基板の用途等に応じて決定される。例えば、ガラ
ス基板を、情報記録ディスクの基板として使用する場合
には、中心線平均粗さが1nm以下であるプレス面を有す
る金型を使用することが好ましい。プレス面の中心線平
均粗さが1nmよりも大きいと、ガラス基板の中心線平均
粗さも1nmより大きくなるが、そのような基板で情報記
録ディスクを構成すると、低フライングハイト化が困難
であるといった不都合が生じる。
【0017】ガラス材料の加圧成形は、ガラス材料を加
熱により軟化させてから実施する。ガラス材料の加熱
は、加熱した金型を用いて行ってよく、または金型以外
の別の手段によって加熱してよい。加圧成形は、加圧開
始後、ガラス材料を軟化した状態に維持して所定時間、
例えば0.5〜5分間圧力を加えた後、30℃/分の割
合でガラス材料をガラス転移温度付近まで冷却し、更
に、25℃/分の割合で50℃まで冷却してから、ガラ
ス基板を金型から取り出すことによって実施する。従っ
て、金型は、ガラス材料を加熱することができるよう、
また加圧開始後、所定時間、ガラス材料を軟化した状態
に維持できるよう、高温となっても変形しない材料で構
成されることが好ましい。
【0018】上記の条件を満たす金型は、例えば、厚さ
5〜20mmの超硬合金をダイヤモンド微粒子により鏡面
研磨することによって得られる。超硬合金は耐熱性に優
れており、金型を構成する材料として好ましいものであ
る。超硬合金は、例えば、タングステンカーバイド、ま
たはクロムカーバイドを主成分とするものであってよ
い。また、超硬合金の代わりにサーメットを使用しても
よい。研磨面には、加圧成形時のガラスの付着防止およ
び高熱による表面の酸化防止のために、保護膜を形成す
ることが好ましい。保護膜は、例えば、ルテニウム合金
膜または白金合金膜であればよく、その厚さは1〜5μ
mであることが好ましい。
【0019】本発明では、軟化点が700℃以下である
ガラス材料を使用することが好ましい。軟化点が700
℃を超えるガラス材料を成形する場合には、加圧成形の
工程において、金型を700℃よりも高い温度に加熱す
る必要があるが、そのような加熱は、金型の寿命を短く
するという不都合をもたらし、また、エネルギー効率の
点においても好ましくない。
【0020】ガラス材料は、例えば、アルミノシリケー
トガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノシリケ
ートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリ
ケートガラス等であってよい。特に、アルミノシリケー
トガラスは化学強化処理による強化効果が大きく、ま
た、化学強化処理の後、必要に応じて実施される酸処理
による悪影響を受けにくいので好ましい。加圧成形する
ガラス材料は、例えば、情報記録ディスク用のガラス基
板を製造する場合には、成形前には厚さ5〜10mm、直
径5〜40mmの円筒形状であり、成形後において厚さ
0.3〜1.0mm、直径20〜100mmとなるように加
工されることが望ましい。
【0021】金型による加圧成形は、金型にガラス材料
をはさみこんで、ガラス材料が軟化するまで加熱した
後、圧力を加えて実施する。ガラス材料に加える圧力は
20〜500kg/cm2であることが好ましい。圧力が小
さいと、ガラス材料が所定の厚さとならず、圧力が大き
いとガラス基板にうねり又はゆがみ等が生じて成形面の
平坦度が低下し、また金型に加わる負荷が大きくなると
いう問題が生じる。
【0022】このように加圧成形して得られるガラス基
板を、例えば情報記録用ディスクの基板として使用する
場合には、基板の周辺部を、例えばダイヤモンド砥石を
用いてコアリングすることにより真円を確保してもよ
い。更に、ダイヤモンド砥石を用いてコアリングするこ
とにより基板の中央部に円形の開口部を形成し、基板を
ドーナツ形状にしてもよい。基板の周辺部および中央部
をともにコアリングする場合には、2つの砥石を使用し
て同時に実施してよい。
【0023】なお、本発明の方法に含まれる、加熱軟化
したガラス材料を1対の平滑なプレス面を有する金型で
加圧成形する工程は、例えば特開平2−137914号
公報および特開平2−26843号公報において開示さ
れており、当業者であれば加圧成形によりガラス基板を
得る工程は、これらの公報を参照して実施することがで
きる。
【0024】加圧成形して得たガラス基板は、一般的な
研磨方法によって得たガラス基板よりも、その表面付近
のアルカリ金属原子(イオン)の濃度が高いものであ
る。そのことを、図1および図2に示す。
【0025】図1は、加圧成形後のガラス基板の表面か
ら深さ方向に沿ったNaの濃度プロファイルである。加圧
成形は、以下の条件で行った。 1)ガラス材料:軟化点690℃のアルミノシリケート
系ガラス 2)金型:中心線平均粗さが1nmである平坦なプレス面
を有するタングステンカーバイト系超硬合金製金型であ
り、プレス面に白金合金から成る厚さ1μmの保護膜が
形成されたもの 3)成形温度および圧力:690℃、350kg/cm2 4)成形後のガラス基板の厚さ:0.64mm
【0026】図2は、厚さ1mmのガラス基板を酸化セリ
ウムにより研磨し、研磨剤を純水を用いてスクラブ洗浄
することにより除去して得たガラス基板表面のNaの濃度
プロファイルである。ガラス材料および研磨後の基板の
厚さは上記加圧成形したガラス基板のそれらと同じであ
る。いずれのガラス基板についても、Naの濃度分析は、
基板表面をエッチングしながら、ATOMIKA社製の二次イ
オン質量分析計SIMS4500で行った。
【0027】図1からわかるように、加圧成形法により
作製したガラス基板では、Naの濃度が、ガラス表面から
10nmまでの領域において、他の領域よりも高くなって
いる。一方、図2に示すように、研磨法により作製した
ガラス基板表面においては、ガラス表面から2nmまでの
領域においてのみNaの濃度が高くなっている。これは、
ガラス基板の表面に存在するNaが洗浄により除去され
たためであると考えられる。このことは、化学強化処理
におけるKイオンとの交換反応において、イオン交換能
の減少をもたらすと考えられる。
【0028】また、加圧成形法により作製したガラス基
板におけるNaの濃度のピークは、研磨法により作製した
ガラス基板のそれよりも高い。このように、ガラス材料
を加圧成形することにより、基板表面付近において、例
えばLi、Na等のアルカリ金属原子の濃度を増加させるこ
とができる。従って、加圧成形したガラス基板は、これ
を化学強化する場合、特にガラス基板表面付近でのイオ
ン交換能が高くなるため、研磨法により作製したガラス
基板に比べて、より強度の大きいものとなり得る。
【0029】化学強化は、加熱により溶融した化学強化
処理液にガラス基板を浸漬し、ガラス基板の表面層の金
属イオンを化学強化処理液中の金属イオンでイオン交換
させる方法、即ち、イオン交換法によって行う。イオン
交換法には、低温型イオン交換法および高温型イオン交
換法がある。エネルギー効率およびガラス表面が受ける
ダメージを考慮すれば、本発明では低温型イオン交換法
を採用することが好ましい。低温型イオン交換法では、
ガラス材料を、そのガラス転移温度(Tg)以下の温度領
域にある化学強化処理液に浸漬し、ガラス基板の表面付
近のアルカリイオン、例えばLi+またはNa+を、それ
よりもイオン半径の大きいアルカリイオン、例えばNa
+またはK+と置換し、イオン交換した部分の容積増加に
よってガラス表面に強い圧縮応力を発生させてガラス表
面を強化する。
【0030】化学強化処理液としては、硝酸カリウム
(KNO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、炭酸カリ
ウム(K2CO3)などの溶融塩や、これらの塩を混合し
たもの(例えばKNO3+NaNO3、KNO3+K2CO
3など)の溶融塩を用いることができる。
【0031】化学強化処理液の温度は、イオン交換を促
進するためには高温であることが好ましいが、ガラス基
板の変形を防止するため、処理するガラス材料のガラス
転移点以下とすることが好ましい。例えば、ガラス転移
点が450〜800℃であるガラス材料からなるガラス
基板を処理する場合、化学強化処理液の温度は、350
℃〜700℃、特に350℃〜450℃であることが好
ましい。
【0032】浸漬時間は、0.5〜20時間であること
が望ましい。0.5時間以下では化学強化の効果を十分
に得ることができず、20時間以上では、ガラス基板の
表面が荒れて平滑度が低下する。
【0033】化学強化する際には、ガラス基板の割れや
ヒビを防止するため、また化学強化処理液中の溶融塩が
ガラス基板表面において結晶化することを防止するた
め、ガラス基板を化学強化処理液に浸漬する前にガラス
基板を200℃〜350℃に予熱しておくことが望まし
い。
【0034】化学強化処理液に浸漬中、ガラス基板の表
面全体を均一に化学強化するため、ガラス基板を端面で
保持、即ち、基板の厚さ方向の面を複数箇所で支持して
実質的に鉛直方向に沿って立てた状態で、主表面におい
て処理液と接触しない部分ができるだけ存在しないよう
にすることが望ましい。
【0035】化学強化が終了した後、ガラス基板は化学
強化処理液から引き上げられ、冷却される。ガラス基板
は、冷却時にガラス基板において熱歪の発生を抑えるこ
とができるように、徐冷することが望ましい。徐冷は、
ガラス基板を空気中に放置することによって実施でき
る。また、徐冷は、ヒートショックテスト(不良品識
別)を兼ねた急冷を続けて実施できるよう、ガラス基板
が400〜200℃になるまで行うことが好ましい。ヒ
ートショックテストを兼ねた急冷は、好ましくは100
℃〜0℃、より好ましくは40℃〜10℃の冷媒に接触
させて行うことが好ましい。ガラス基板は、徐冷によっ
てのみ冷却してもよい。
【0036】化学強化した後のガラス基板を、更に酸処
理液に浸漬して酸処理することが好ましく、それにより
ガラス基板表面の変質を高いレベルで防止できる。酸処
理により、ガラス基板表面の変質が防止される理由とし
ては、化学強化したガラス基板表面に存在する非架橋の
Si−O−NaのNa+が、酸によってヒドロニウムイ
オンとイオン交換され、更に脱水によってシラノール基
が形成された後、そのシラノール基が脱水されて、ガラ
ス表面で−Si−O−を繰り返し単位とする架橋が形成
されることが挙げられる。ガラス基板表面に存在するS
i−O−Naは、アルカリ溶出によるヤケの原因になる
と考えられるが、酸処理によって形成された当該架橋
は、そのような溶出を有効に防止するものと推定され
る。ただし、この推定によって本発明が拘束されること
はなく、本発明は何ら影響を受けない。
【0037】酸処理は、例えば濃硫酸(例えば、濃度9
6%以上の濃硫酸)、硫酸、リン酸水溶液、硝酸、塩酸
またはフッ酸等の酸水溶液、またはこれらの混合物を酸
処理液とし、これにガラス基板を浸漬して行う。酸の濃
度は、ガラス基板表面に析出した溶融塩を除去でき、ま
た、ガラス表面の変質を有効に防止できる濃度となるよ
うに決定する。使用する酸によって最適濃度は異なる
が、例えば硫酸を用いる場合は50wt%以上であるこ
とが好ましく、95wt%以上であることがより好まし
い。酸処理液には、硫酸塩(例えば硝酸カリウム)、リ
ン酸塩、硝酸塩、金属塩化物または金属元素のフッ化物
が含まれていてもよい。
【0038】酸処理中、処理液の温度は40℃〜ガラス
転移点の範囲内にあることが好ましく、100℃〜30
0℃程度であることが好ましい。処理液の温度が低い
と、ガラス表面で−Si−O−の架橋化が進行しないた
めガラス表面が変質しやすくなる。また、処理液の温度
が高すぎる場合には、化学強化処理によってLi+また
はNa+イオンとイオン交換されたNa+またはK+イオ
ンが基板内部に移動し、それにより収縮応力が低下して
ガラス基板の強度が低下するおそれがある。
【0039】酸処理を実施する時間は、酸処理液の種類
および温度ならびにガラス材料に応じて適宜決定する必
要がある。例えば、150〜200℃に加熱された熱濃
硫酸による処理時間は、1分〜2時間程度が好ましい。
処理時間が1分以下では、酸処理の効果を十分に得るこ
とができず、処理時間が2時間を超えると、ガラス基板
の表面が荒れて平滑度が低下するおそれがある。
【0040】酸処理は、超音波振動を与えながら実施し
てよい。超音波振動を与えると、ガラス基板表面に析出
した溶融塩をより速やかに除去でき、また溶融塩の残留
をより少なくすることができ、好都合である。
【0041】上記の酸処理の後に、市販の洗浄剤(例え
ば中性洗剤、界面活性剤、アルカリ性洗浄剤)による洗
浄、スクラブ洗浄、純水洗浄および溶剤洗浄等の公知の
洗浄処理を一または複数、行ってよい。いずれの洗浄
も、加熱および/または超音波振動の付与を伴うもので
あってよい。酸処理後または洗浄処理後のガラス基板
は、溶剤蒸気乾燥または遠心分離乾燥等によって乾燥し
てよい。
【0042】このようにして製造されるガラス基板は、
高い強度と平滑度が要求される情報記録ディスクの基板
として有用である。情報記録ディスクには、例えば、光
ディスク、光磁気ディスクおよび磁気ディスク等が含ま
れるが、本発明のガラス基板は、ハードディスクと呼ば
れる磁気記録媒体の基板として特に有用なものである。
また、本発明の製造方法によって得られるガラス基板
は、光学材料、建築材料および機械部品等にも適用する
ことができる。
【0043】
【実施例】以下、本発明のガラス基板の製造方法を実施
例により具体的に説明する。
【0044】<実施例1>本実施例においては、磁気デ
ィスク用ガラス基板を、(1)加圧成形工程、(2)化
学強化工程、(3)酸処理工程、および(4)洗浄工程
を経て製造した。各工程における加工または処理条件は
次のとおりである。
【0045】(1)加圧成形工程 基板材料として、軟化点690℃のアルミナシリケート
系ガラスから成る円筒形状のガラス材料を用意した。ま
た、加圧成形用の金型として、タングステンカーバイド
系の超硬合金から成る金型を1対用意した。この金型の
プレス面は平坦であり(即ち、凹部が形成されておら
ず)、研磨により鏡面加工された面に保護膜として白金
合金が厚さ1μmとなるようにスパッタリングされ、中
心線平均粗さが1nmの表面を有するものであった。加圧
成形は、金型のプレス面にガラス材料を挟み、690℃
まで加熱した後、350kg/cm2の圧力を加え、ガラス
材料が所定の厚さとなるまで行った。加圧時間は約1分
であった。加圧成形後、冷却し、厚さ0.64mm、直径
84mmの磁気ディスク用基板を得た。
【0046】(2)化学強化工程 上記加圧成形工程を終えたガラス基板を化学強化した。
化学強化処理液として、硝酸カリウムを400℃に加熱
溶融したものを用意した。また、化学強化処理液に浸漬
する前に、ガラス基板を350℃で1時間予熱した。化
学強化は、予熱したガラス基板を化学強化処理液に約4
時間浸漬して行った。浸漬の際には、ガラス基板をその
端面で保持し、ガラス表面が均一に処理されるようにし
た。化学強化を終えたガラス基板を空気中で200℃ま
で徐冷した後、20℃の水槽に浸漬して急冷し、約20
分間放置した。なお、急冷によりガラス基板にひび等が
入ることはなかった。
【0047】(3)酸処理工程 化学強化したガラス基板を酸処理した。酸処理は、約1
80℃に加熱した濃度96wt%の熱濃硫酸にガラス基
板を15分間浸漬して行った。
【0048】(4)洗浄処理工程 酸処理後、ガラス基板を、スクラブ洗浄、純水洗浄、ア
ルカリ性洗剤洗浄、純水洗浄、およびIPA(イソプロ
ピルアルコール)洗浄し、最後にIPA蒸気乾燥を行っ
た。各洗浄工程においては、ガラス基板に超音波(周波
数43kHz)印加した。
【0049】<比較例1、2>上記の工程のうち酸処理
を省略して作製したガラス基板を比較例1として用意し
た。また、実施例1で使用したものと同じガラスから成
る厚さ1mmのガラス板を研磨した後、純水により洗浄し
て、厚さを0.64mmとし、これを直径84mmの円とな
るようにカットしてガラス基板を作製し、これを実施例
1の(2)〜(4)の工程に付したものを、比較例2と
して用意した。
【0050】<表面状態>実施例1のガラス基板表面に
ついて、原子間力顕微鏡を用いて10μm×10μmの
範囲内で表面粗さを測定したところ、中心線平均粗さは
1.0nmであり、金型のプレス面の表面粗さと同じであ
った。また、上記(1)〜(4)の工程を経て作製した
ガラス基板10枚の表面を光学顕微鏡で検査したとこ
ろ、析出溶融塩およびアルカリ溶出によるヤケはともに
観察されなかった。一方、酸処理を省略した比較例1の
ガラス基板について表面を同様に検査したところ、1枚
あたり平均1.5個の異物が観察され、アルカリ溶出に
よるヤケも観察された。また、比較例2のガラス基板に
ついて表面を同様に検査したところ、微細なクラックが
観察された。
【0051】<強度>実施例1のガラス基板の抗折強度
をリング曲げ試験法により試料数10で測定した。リン
グ曲げ試験は、受リング(r(半径)=20mm)上にガ
ラス基板を載置し、押しリング(r=15mm)で押圧
し、ガラス基板が割れたときの荷重を測定して行った。
ガラス基板が割れたときの荷重、即ち、抗折強度は、実
施例1については平均230kgfであり、そのバラツキ
は標準偏差で5kgfであった。これに対し、比較例2の
ガラス基板の抗折強度は平均205kgfであり、そのバ
ラツキは標準偏差で17kgfであった。この結果より、
本発明の製造方法によれば、抗折強度の高いガラス基板
が得られ、また同様の手順で作製した基板の個体間のバ
ラツキを小さくし得ることが判った。なお、上記実施例
では、熱濃硫酸による処理例を示したが、リン酸および
硝酸を使用した場合にも同様の効果が確認された。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、加圧成形工程と化
学強化工程とを含む本発明のガラス基板の製造方法によ
れば、微細なクラックが存在しない、強度の高い平滑な
ガラスを安定的に得ることができる。更に、酸処理を実
施することによって、表面異物が殆どなく、ヤケ等の変
質が生じにくい品質の高いガラス基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加圧成形して得たガラス基板の表面付近のNa
の濃度プロファイルを示すグラフである。
【図2】 研磨して得たガラス基板の表面付近のNaの濃
度プロファイルを示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥山 富士夫 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 伊藤 健太 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 4G059 AA09 AC18 HB02 HB25 HB26 5D112 AA02 BA03 BA10 GA26 GA30

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス基板を製造する方法であって、 1)加熱軟化したガラス材料を、1対の平滑なプレス面
    を有する金型で加圧成形する工程、および 2)加圧成形したガラス基板を、化学強化処理液に浸漬
    することにより化学強化する工程 を含むことを特徴とするガラス基板の製造方法。
  2. 【請求項2】 金型のプレス面の中心線平均粗さが1nm
    以下である請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
  3. 【請求項3】 化学強化の後にガラス基板を酸処理液に
    浸漬するとにより、化学強化したガラス基板の表面を酸
    処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項1また
    は請求項2に記載のガラス基板の製造方法。
  4. 【請求項4】 酸処理する工程において、酸処理液の温
    度が、40℃以上であって、処理するガラス材料のガラ
    ス転移点よりも低い温度である請求項3に記載のガラス
    基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 酸処理液が、硫酸、リン酸水溶液、また
    は硫酸とリン酸水溶液とを含む混合物である請求項3ま
    たは請求項4に記載のガラス基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 ガラス基板が、情報記録ディスク用ガラ
    ス基板である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラ
    ス基板製造方法。
  7. 【請求項7】 ガラス基板が、磁気記録媒体用ガラス基
    板である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基
    板製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製
    造方法により製造されたガラス基板。
  9. 【請求項9】 請求項6に記載の製造方法により製造さ
    れた情報記録ディスク用ガラス基板。
  10. 【請求項10】 請求項7に記載の製造方法により製造
    された磁気記録媒体用ガラス基板。
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