【発明の詳細な説明】
半導体ウェハの保持及び保護装置並びに方法
この発明は、物体、特に半導体ウェハの保持装置並びに方法に関する。
半導体デバイス或いは半導体集積製品の製造プロセスの経過において半導体ウ
ェハは何度も繰り返して成膜プロセスに曝され、その都度ウェハはその両面に成
膜される。ウェハの裏面における種々多数の膜構造は望ましくなく、また他のプ
ロセスの妨害にもなることがあるので、全製造プロセスの経過において裏面エッ
チング工程が実施される。これは、通常、前面の全面にわたって塗料を塗布し、
しかる後ウェハ裏面の該当する膜をCDE法(化学液体エッチング、マイクロ波
プラズマ或いは高周波プラズマ)により湿式或いは乾式に除去することによって
行われる。その後ウェハの前面の塗料は除去されねばならない。
しかしながら、ウェハ円板に塗料を塗布する工程と、それを除去する工程との
付加的な2つの工程はウェハの処理時間を著しく上げるだけでなく、さらに少な
からぬ化学薬剤の消費を伴う。その他に、この付加的工程は塗料の塗布ライン、
塗料除去容器並びに酸素ストリッパのような付加的な設備容量を必要とする。
円板裏面上の膜を除去するために、さらに、いわゆる「スピン・エッチング」
を使用することができる。この方法は、前面の保護なしで行えるが、湿式ベース
で行われる。この方法においては、大部分既に構造を備えたウェハ円板が回転す
る空気クッションの上でその構造化した上面を下にして急速にその軸を中心に回
転され、一方円板裏面には上から湿性のエッチング化学溶液が流される。円板を
急速に回転する結果、化学薬剤は円板裏面の縁部を越えて外側に投げ出され、構
造化されたウェハ前面が侵されることはない。
しかしながら、この方法は特に窒化膜を除去する場合、化学薬剤や水の使用量
が大きく、また処理量も少なく、従ってコスト高となる。また湿性のエッチング
化学溶液は窒化物と酸化物との間の選択性がないので、この「スピンエッチング
法」は、加えて、大きいウェハサイズ(8”ウェハ)における特定のプロセスに
は適していない。
このような欠点にも係わらず、多くの場合、裏面エッチングは今日まで上述の
方法の1つにより行われている。
従来の方法の上記の欠点を回避する1つの可能性は、ドイツ特許出願公開第1
9502777号公報に記載された、円板前面に塗料が塗布されてない場合の、
プラズマ利用の半導体円板の裏面エッチング方法であり、この方法は円板の前面
に塗料を塗布せずかつウェットエッチングの上述の欠点なしに裏面エッチングを
可能としている。
ドイツ特許出願公開第19502777号公報に記載されたこの方法によれば
円板の前面の保護は、従来のように、この面に塗料を塗布することによるのでは
なく、中性ガスにより行われる。円板の前面を真空中において反応性ガスに対す
る密封は、その場合、円板縁部53の近くに微細な、一定に設定可能な間隙(ギ
ャップ)52を備えた遮断装置50を介して行われ、この間隙は円板の前面55
に触れることなしに間接的なストッパ58で設定される(図6参照)。この間隙
52を介して、遮断装置50と円板の前面との間の空間に導入される中性ガスが
僅かな過圧をもって外に向かって反応室に流入し、その際円板の前面への反応ガ
ス侵入を阻止する。円板は、この場合、エッチング中少なくとも3つの尖頭部の
上に載置されている。
このドイツ特許出願公開第19502777号公報による方法は、しかしなが
ら、エッチングガスがシリコン円板が載置されている位置56に直接には達する
ことができないので、この載置位置における円板裏面の除去される膜が、その他
の位置におけるのと同一の速度では除去されないという欠点を持っている。この
載置位置においてそれにも係わらずエッチングされる膜を除去するためには、よ
り長時間のオーバーエッチング(>50%)が必要である。これは、除去される
膜の下にあるストッパ層が充分厚く(例えば、6”ウェハにおいて50nm)で
あり、エッチングガスの選択性が充分である限り、なんら問題がない。
通常、酸化シリコンからなるストッパ層はしかし8nmの厚さであるので、エ
ッチングガスの選択性がよい場合ても、載置点における部分の膜を除去するため
に、充分に長時間のオーバーエッチングすることはできない。さらに、ドイツ特
許出願公開第19502777号公報に記載された方法においては、シリコン円
板がその上面における過圧により湾曲し、それにより幾つかの縁部位置において
間隙が広がり、エッチングガスがこの間隙を通して円板の上面に侵入するという
問題がある。
さらにまた、ドイツ特許出願公開第19502777号公報に記載された発明
の異なる実施例によれば、シリコン円板はその側面側の縁部において支持され、
シリコン円板の上面に加わる過圧がシリコン円板をずらせるということがある。
これによりまた反応性エッチングガスが円板の前面に侵入することがある。
それ故、このような従来の技術の欠点を回避する保持方法が必要とされる。特
に、いわゆる「ベルヌーイ効果」による保持が不可能であるような小さな周囲圧
の場合(>30トル)でも使用することのできる保持方法が必要とされる。特に
、真空プロセスに中シリコン円板の裏面が接触されてはならない保持方法が必要
とされる。
この課題は、請求の範囲の請求項1による装置により、並びに請求項14及び
15による方法により解決される。この発明のその他の有利な実施態様、構成例
及び利点はそれ以外の請求項、明細書の記載及び添付の図面により明らかにされ
る。
この発明によれば、ベースと、このベースに配置され外側領域と内側領域とを
画定する壁部と、この外側領域への少なくとも1つの導入部と、内側領域への少
なくとも1つの導入部と、外側領域に(前記導入部を介して)周囲圧に対して過
圧を作るための手段とを備えた物体の保持及び保護装置が提供される。
同様に、この発明によれば、物体の表面の外側領域にわたって保護ガスにより
周囲圧に対して過圧を、物体の表面の内側領域にわたって周囲圧に対して低圧を
作り、その際保護ガスの一部が物体の表面の縁部にわたって供給される物体の保
持及び保護方法が提供される。
物体がその側縁部で保持されるときには、物体の表面の内側領域にわたって低
圧を作る必要はない。この場合には物体の表面の内側領域は物体の表面の外側領
域よりも僅かな過圧もしくは周囲圧を受けることになる。しかしまた、この場合
にも、物体の表面の内側領域にわたって低圧を設定することができることは当然
である。
装置の外部範囲において物体の表面の外側領域に作られる過圧はこの表面を侵
食性のガスから保護すると共に、装置の内部範囲において物体の表面の内側領域
に作られた低圧並びに側部の保持装置が物体を装置に保持する。これにより、真
空プロセス(<30トル)中に半導体ウェハの裏面は最早触れられる必要はなく
、従ってエッチングプロセスの際長時間のオーバーエッチングが最早必要でなく
、これにより非常に高い要求を持つプロセス、例えば非常に薄いストッパ層の場
合のプロセスも実現できる。しかし、同時に半導体ウェハの既に構造化された前
面も侵食性のエッチングガスから保護されている。
半導体ウェハの前面に塗料を塗布することは最早必要がなく、これにより従来
のプロセスにおけるような、例えば半導体ウェハの前面の保護塗料の塗布、酸素
プラズマによる塗料除去やウェットケミカル清浄のような幾つかのプロセス工程
が回避される。これにより処理量が上がり、また必要な化学薬剤及びコストの著
しい節約になる。
さらに、いわゆる「スピンエッチング」において必要なような半導体ウェハの
面倒な回転も省略される。
半導体ウェハの表面の内側領域にわたる低圧は、半導体ウェハの内側領域全体
にわたり支持するように作用する。これにより半導体ウェハの機械的荷重が明ら
かに減少し、これにより半導体ウェハの湾曲が回避される。物体を側方で保持す
る際にも物体の表面の内側領域に加わる圧力荷重が小さいことによって半導体ウ
ェハの機械的荷重は明らかに減少する。
さらに、内側領域に(導入部を介して)周囲圧に対して低圧を作る付加的な手
段を設けるのがよい。
また、ベースは平らなカバープレートとして形成するのがよく、同様にベース
が円板状に形成されているのがよい。
この発明の有利な構成によればベースと壁部とは単一部材から、好ましくは、
アルミニウムから形成される。
保護される前面を確実に密封するために、装置の外側領域が装置の内側領域を
完全に包囲するのが有利である。
同様に、外側の壁部の末端にスペーサ、好ましくは点状スペーサ、特にサファ
イアの球が全周にわたって均一に分配されて(例えば、6個)設けられるのが好
適である。このスペーサによって半導体ウェハの前面の敏感な部分が保持装置と
平面的に接触することが回避されるだけでなく、半導体ウェハの装置に対する側
方の動きが摩擦力により阻止される。
さらに、外側の壁部に突起部が設けられ、これがエッチング室の内部における
ウェハ移送機構の間接的ストッパとして役立つようにするのも好ましい。
保持される物体が全く接触することなく保持されねばならないときには、外側
領域が複数の区画に分割され、これらの区画がそれぞれ過圧を作るための導入部
を備えるようにするのが有利である。この各区画はこの場合物体を間隔を持って
保持するので、これにより物体が傾くことが回避される。自動的にかつ自己調整
的に設定される間隔は設定された保護ガス流及び(圧力差を介して設定可能な)
上に向かう力によってのみ影響を受ける。
さらに、外側領域に過圧を作るための手段がガス溜を備え、これが特に外側領
域への導入部と直接接続されているのが好ましい。
さらに、これらの導入部は、この装置の使用中、1つの導入部に沿った圧力低
下が外側領域の過圧と周囲圧との間の圧力差よりも大きくなるように、設計され
るのがよい。これにより、1つの区画と周囲との間の圧力差に大きな相対的変動
があってもガス溜とこの区画との間の小さな相対圧力差にしかならない。しかし
、その場合、この圧力差に比例するガス流も一定にとどまり、即ちガス溜は任意
の多数の区画に対して一定なガス流を持つ源として作用する。1つの導入部に沿
う圧力低下は外側領域の過圧と周囲の圧力との間の圧力差より2倍以上、特に1
0倍以上大きいのがよい。
物体の装置に対する側方の動きを阻止するために、外側の壁部或いは突起部に
側部スペーサが設けられるとよい。
さらに、保護ガスとしては、好ましくは、窒素、酸素、希ガス或いはこれらの
混合ガスが使用される。エッチングに使用されるプロセスガスも、それが活性化
されないときには、使用することもできる。
この発明を添付図面を参照してさらに詳しく説明する。図面において、図1は
この発明による装置の一実施例の概略断面図を、
図2はこの発明による装置の異なる実施例の概略断面図を、
図3はこの発明による装置の異なる実施例の概略平面図を、
図4は同様にこの発明による装置の異なる実施例の概略平面図を、
図5a乃至5cはシリコン円板がこの発明による装置により保持される工程の概
略説明図を、そして
図6は従来の技術による裏面エッチングの方法の概略説明図を示す。
図1はこの発明による装置10の一実施例の概略断面図を示す。この発明によ
る装置10は円板状のカバープレート(ベース)11を備え、このベースから2
つのリング状の壁部12及び13が突き出ている。これらの壁部12及び13は
リング状の外側領域14と円形の内側領域15を画定している。その場合、内側
の壁部13は外側の壁部12に比較して約2倍の厚さに形成されている。カバー
プレート11には2つの開口(導入部)16及び17(図4参照)が設けられて
いる。この開口16はカバープレート11の上側からリング状の外側領域14に
、開口17はカバープレート11の上側から円形の内側領域15に延びている。
壁部12の外側には突起部18が設けられ、間接的なストッパとして作用してい
る。
カバープレート11に平行して壁部12及び13の末端にシリコン円板20が
配置されている。これにより外側の壁部12と、シリコン円板20の前面との間
には外側の間隙21が、そして内側の壁部13と、シリコン円板20の前面との
間には内側の間隙23が形成される。その場合、内側の間隙23は外側の間隙2
1の約2倍の大きさである。エッチングプロセス中にシリコン円板20が装置に
対して相対的に動くことを阻止し、規定された間隙21を設定するために、外側
の壁部12の末端に、周囲に均等に配分された6個のサファイアの球(図示せず
)が設けられ、これらは外側の間隙21に達し、シリコン円板20の表面と点状
に接触している。
さらに、図1はシリコン円板20をこの発明による装置10に導入する移送機
構30を示している。
エッチングプロセス中にプラズマによって活性化されたエッチングガスの反応
性粒子が下からシリコン円板20の裏面に到達する。これらは次いでエッチング
産物と共にエッチング室の壁(図示せず)の開口を通して吸い取られる。シリコ
ン円板20の前面にエッチングガスが到達することを阻止するために、シリコン
円板20の前面はエッチング性のない中性ガスによって保護される。この中性ガ
スとして、例えば窒素、酸素、アルゴン、しかしまた活性化されないエッチング
ガス自体、例えばCF4或いはNF3を使用することができる。
外側の間隙21を反応性ガスから密封するために、丁度この間隙21の近くに
保護ガスの必要な過圧を与えることで充分である。シリコン円板20の前面全体
にわたって過圧を与える必要はない。従って、保護ガスはただ開口16を通して
装置10のリング状の外側領域14に供給され、そこに過圧が作られる。保護ガ
スの導入システム44(図4参照)は、それ故、この発明の実施例においては、
外側領域14に導入部16を介して、周囲圧に対して過圧を発生させるための手
段を形成する。
内側の壁部13はこの外側領域14をシリコン円板20の上の内側領域15か
ら分離しているので、ここにはずっと低い圧力が設定される。これは保護ガスを
カバープレート11の開口17を通して吸い取ることによって行われる。保護ガ
スを吸い取るために使用される真空ポンプ45(図4参照)は、それ故、内側領
域15に導入部17を介して、周囲圧に対して低圧を発生させるための手段を形
成する。
内側の壁部13はシリコン円板20からやや大きい距離を持っているので、シ
リコン円板20が内側の壁部13に接触することは排除されている。しかしなが
ら、内側の壁部13は外側の壁部12より広幅であるので、保護ガスが吸引され
た内側領域15に漏出するのが制限されている。外側の壁部が2mmの幅である
とき、内側の壁部13は約3mmの間隔で配置され、0.1mm後退し、4mm
の幅である。外側の壁部12における外側の間隙21が0.1mmに設定されて
いる場合、内側の壁部13は0.2mmの内側の間隙22を持ち、両間隙を通し
てほぼ同じ量の保護ガスが流れることになる。
密封のために必要な過圧は、小さいリング面で、外側領域14の下側のシリコ
ン円板20の前面に、シリコン円板20の全体の面積に比べた比に相当する小さ
い力を発生する。上述の形状関係においてかつ2トルの過圧p2が外側領域にあ
ると、これは下に向かって凡そ100gの荷重となる。これになお約54gの円
板重量が加わる。装置10の内側領域15が真空にされていることを前提とすれ
ば、エッチング室における400mトルの動作圧p1で充分この力は補償できる
。800mトルのエッチング室における通常の動作圧は、約150gのシリコン
円板20を押し上げることになろう。しかしながら、内側領域15の吸引を制御
することによりその中の圧力p3を動作圧p1に関係して外で設定して、シリコン
円板20が全体として最早全く荷重を受けないようにすることも可能である。こ
れは、シリコン円板20の厚み、従って機械的安定性を将来益々直径が大きくな
る際に最早その割合で大きくすることができない傾向があるだけに益々重要であ
る。図1に示されたこの発明の実施例においてはシリコン円板に対するその他の
保持機構が設けられていないので、内側領域15における圧力p3を、シリコン
円板に上に向かう正味の力が生ずるように設定することが必要である。外側の間
隙21のサファイア球はシリコン円板20を、その場合、規定の間隔、例えば0
.1mmに保持する。
上に向かう正味の力が僅かな場合に外側の間隙21におけるサファイアの球を
断念するときには、シリコン円板は1つの位置において外側の壁部12に接触す
るが、しかし、これに対して比較的大きい外側の間隙21が設定される。その場
合、そこには保護ガスの主要部分が漏出し、即ちシリコン円板20が僅かに傾い
て接するかバタつく。これは、外側領域14を複数の同じ大きさの(例えば、6
個の)区画に分け、各々に別々に同じ流量の保護ガスが流れるようにすることに
よって回避することができる。これにより、各区画はそれ自体間隔をおいて保持
され、円板は最早傾いたり、1つの面に当たるようなことがない。自動的にかつ
自己調整的に設定される間隔は、その場合、設定された保護ガス流及び(可設定
の)上に向かう正味の力によって影響を受ける。円板はこの場合完全に無接触で
あるので、益々特別な側部の制限がない場合には、円板は側方に浮動することに
なる。
図2はこの発明による装置の異なる実施例の概略断面図を示す。図2において
、既に図1で示された部分は図1で使用された符号と同じ符号で示されている。
図1で示されたこの発明の実施例に追加して、図2の実施例においてはスペーサ
25が突起部18に設けられている。さらにこの実施例では外側の間隙における
サ
ファイアの球が省略される。同時にこの装置の外側領域14が周方向に6つの部
屋(図示せず)に分割され、この6つの部屋の各々がカバープレート11にそれ
ぞれ固有の開口16(図4参照)を備えている。これらの部屋により装置10の
全周にわたって殆ど同じ過圧を、シリコン円板20が全く自由に浮動して、この
装置10に対して相対的に動く場合ですら、作ることができる。装置10に対し
てシリコン円板20の過大な側方の動きを回避するために、この側方の動きを制
限するスペーサ25が設けられている。
図3はこの発明による装置の異なる実施例の概略断面図を示す。図2に示され
た装置のように、この装置においても外側領域14は複数の区画(部屋、図示せ
ず)に分けられ、それぞれが独自の導入部42を備えている。
物体20がスペーサ(例えば、サファイア球)もしくは直接的なホルダ31
(図4参照)なしに全周にわたって一定の間隔にとどまるためには、外側領域1
4の全ての区画にはほぼ同じ圧力が加わるかもしくはほぼ同一の安定したガス流
が間隙21を通して物体の縁部にわたって導かれねばならない。これは、例えば
図2に示されたこの発明の実施例において記載されたように、全ての区画が導入
部16を備え、これを介して同一の一定ガス流が導入されることにより行われる
。このガス流はこの場合各区画に対して互いに無関係に、例えばガス制御システ
ムにより一定に保持される。しかしながら、これは個々にはかなりのコストアッ
プをもたらす。例えば、6個或いはそれ以上の区画の場合このコストは既にプラ
ズマエッチングもしくは蒸着システムのガス制御のコストを越える。
図3に示されたこの発明の実施例はこの制御の問題を簡単にかつスマートな方
法で解決する。このために装置10の中空室にガス溜40が設置され、これに導
入部41を介して保護ガスが供給され、しかも周囲に対して一定の過圧が保たれ
る。このガス溜40からは導入部42(例えば、孔、導管。長さ50mm、断面
積1mm2)が各区画に通じている。これらの導入部42は、ガス流に意識的に
高い抵抗で対抗するような配置に選ばれている。それにもかかわらず個々の区画
に充分に高いガス流を得るために、ガス溜40の圧力p4は相応に高く設定され
ねばならない。これにより、しかし、ガス溜と各個々の区画との圧力差p4−p2
が、間隔を保持するために(もっとはっきり言えば、前面の保護に)必要な、
個々の区画と周囲との間の圧力差p2−p1に比較して大きくなる。即ち、しかし
、区画と周囲(これはその場合設定される間隙21に関係する)との間の圧力差
の大きな相対的変動でさへガス溜と区画との間の小さな相対的圧力差p4−p2し
かもたらさない。これにより、しかしまた、この圧力差に比例するガス流もまた
一定にとどまる。即ち、ガス溜は任意の数の区画に対して一定のガス流を持つ源
のように作用する。これにより、かつ内側領域15と周囲との間の制御された一
定の圧力差p1−p3により、自動調整され、周囲にわたって一定の、外側の壁部
12と物体20との間の外側の間隙21が設定される。圧力p1、p2、p3はガ
ス溜40の圧力p4に較べて低いから、導入部42の形状が与えられている場合
間隙21の大きさは殆どガス溜40の圧力p4により決められる。200mmの
シリコン円板の裏面エッチングプロセスにおいて代表的には次の圧力値が生ずる
。即ち、p1=1トル、p2=3トル、p3=0.4トル、p4=40トルである。
図4はこの発明による装置の異なる実施例の概略断面を示す。図4において、
既に図1で示された部分は図1で使用された符号と同じ符号で示されている。図
1で示されたこの発明の実施例に追加して、図4の実施例においてはばね32を
介して外側の壁部12に結合される保持ピン31が設けられている。この保持ピ
ン31は可動機構35によりシリコン円板20の縁部に接触している。エッチン
グ工程中保持ピン31はシリコン円板20の縁部と係合し、それ故付加的な保持
力をシリコン円板20に与えている。それ故、装置10の内側領域15には圧力
p3が設定されるが、この圧力だけではシリコン円板20を支持するには充分でな
い。同様に保持ピン31によってシリコン円板20が外側の壁部12に接触する
ことが阻止される場合には、圧力p3は非常に低く選ばれてよい。それに応じて
内側領域15のこの圧力p3はシリコン円板20の湾曲が阻止されるように設定
される。
図5a乃至5cは、シリコン円板20がこの発明による装置10により保持さ
れる工程を概略的に示す。
シリコン円板20はウェハ・ハンドリングシステム(図示せず)によってエッ
チング室に運ばれ、移送機構30に置かれる。その場合、シリコン円板は少なく
とも3つのピンで支持される(図5a参照)。移送機構30はシリコン円板20
を装置10の方向に、移送機構30の一部が突起部18に当たるまで持ち上げる
(図5b)。この動作中既に保護ガスが装置10の外側領域14に導入され、装
置10の内側領域15から吸い取られる。
移送機構30が装置10と当たっている状態にあれば、移動機構35が保持ピ
ン31をシリコン円板20の縁部と接触させる。これによりシリコン円板20は
装置10に保持される(図5c)。移送機構30のピンはこの場合戻ることがで
きるので、これによりシリコン円板20の裏面は完全に露出される。従って図4
に示す状態が生ずる。
この発明による装置によれば、それ故、シリコン円板の前面に塗料を塗布しな
いでもその裏面をエッチングすることが可能となる。しかし円板裏面はエッチン
グ中接触されていないので、長時間のオーバーエッチングは最早必要でない。こ
れにより非常に高度の要求のあるプロセスでも、例えば非常に薄いストッパ層の
場合においても実現可能である。
勿論、この発明による装置は裏面エッチング以外の他のプロセスに対しても使
用できる。例えば、この発明による装置は、円板の前面及び裏面に接触するのを
避けようとする真空移送システムにおいても適用できる。図2或いは3に示され
た実施例はこれに対して好適である。これらの装置はこの場合可動部分を有して
いないからである。上述の動作圧p1の代わりにハンドリング範囲の周囲圧で代
替することもできる。但し、この場合この周囲圧は少なくとも円板の重量を補償
せねばならない、即ち、8”のウェハの場合140mトルよりも大きくなければ
ならない。