JP2000332289A - Iii族窒化物半導体素子及びその製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物半導体素子及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】Si基板上に、密着性があり、且つ結晶性に優
れるIII族窒化物半導体結晶層から成る積層構造体を
構成し、発光強度に優れたIII族窒化物半導体発光素
子を得る。 【解決手段】Si基板上に、III族金属元素を主体と
して成る堆積層を介してIII族窒化物半導体緩衝層を
形成し、その上にIII族窒化物半導体積層構造体を構
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】Si基板上に、良質のIII
族窒化物半導体層を形成した半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】窒素を構成元素とするIII族窒化物半
導体結晶層は、短波長可視発光デバイスあるいは高周波
電子デバイスの緩衝層、発光層、チャネル(chann
el)層等を構成するために利用されている(例えば、
Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vo
l.468(1977)、481〜486頁参照)。
【0003】従来、上記のIII族窒化物半導体デバイ
スの積層用基板として、六方晶系のサファイアや炭化珪
素単結晶が用いられてきた(例えば、Jpn.J.Ap
pl.Phys.,Vol.34、Pt.2、No.1
0(1995)、L1332〜L1335頁参照)。
【0004】最近では、Si単結晶を基板とする積層構
造体から短波長発光素子を構成する例があるが(App
l.Phys.Lett.,72(4)(1998)、
415〜417頁参照)、これはダイヤモンド構造型の
Siを基板とすれば、(1)[011]結晶方向への劈
開を利用して個別素子に裁断できる、(2)半導体レー
ザー素子にあって、劈開により簡便に光共振面を形成で
きるからである。また導電性の立方晶結晶材料から基板
を構成すれば、オーミック電極が都合良く形成できる
(Electron.Lett.,33(23)(19
97)、1986〜1987頁参照)。
【0005】しかし、Siを基板として使用した場合、
ウルツ鉱(wurtzite)型の六方晶窒化ガリウム
との格子定数の差異(格子ミスマッチ度)は約17%に
達し(上記のAppl.Phys.Lett.,72
(1998)参照)、このため、Si基板上には、Ga
Nを初めとして連続性のあるIII族窒化物半導体結晶
層を積層するのは困難とされている。
【0006】従来より、これを回避するため、Si単結
晶基板上に緩衝層等の介在層を配置する技術手段が採ら
れている。緩衝層(中間層)としては、窒化アルミニウ
ム・ガリウム(AlGaN)を用いる例が知られ(第5
9回応用物理学会学術講演会(1998年9月)講演予
稿集、312頁、17p−YA−15)、このAlGa
N中間層は、1090℃の高温で形成されている。ま
た、緩衝層として、窒化アルミニウム(AlN)を介在
させる技術も開示されており(特開平10−24258
6号公報明細書参照)、この場合、緩衝層は840℃で
成膜されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来より行われてい
る、Si基板上にAlN系の緩衝層を配置する方法で
は、緩衝層上のIII族窒化物半導体結晶層の表面の平
坦性は必ずしも充分に確保されておらず(特開平10−
242586号公報明細書参照)、このため緩衝層の成
膜時に、表面に平坦性を与える複数の不純物を故意に添
加(ドーピング)する煩雑な手段が採られている。
【0008】本発明は、この従来技術の問題点に鑑み、
Si結晶基板上に連続性のあるIII族窒化物半導体結
晶層を安定して与える緩衝層の構成を提示し、これによ
り特性に優れるIII族窒化物半導体素子を提供するこ
とを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、[1]Si
単結晶基板上に緩衝層を介して、窒化ガリウム系半導体
の積層構造を有するIII族窒化物半導体素子におい
て、Si基板の表面に、有機III族化合物またはII
I族塩化物から生成する、主としてIII族金属元素か
ら構成された堆積層を有し、該堆積層上に、III族窒
化合物半導体結晶から構成される緩衝層を有し、さらに
その上にIII族窒化物半導体層を有することを特徴と
するIII族窒化物半導体素子、[2]前記III族金
属元素から構成される堆積層が、Si基板の表面を、有
機III族化合物またはIII族塩化物に曝すことで形
成されることを特徴とする[1]に記載のIII族窒化
物半導体素子の製造方法、[3]前記III族金属元素
から構成される堆積層の生成温度をA、その上に形成さ
れる緩衝層の形成温度をB、さらにその上に形成される
III族窒化物半導体層の形成温度をCとした場合、上
記にA<B<Cなる関係があることを特徴とする[2]
に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法、[4]
上記温度は、Aが200℃以上350℃以下で、Bが3
50℃を越え600℃以下であることを特徴とする請求
項3記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法、を成
すことで上述の問題点を解決した。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の堆積層とは、Si基板の
表面を被覆するために比較的低温で形成される、III
族金属元素を含む層である。一例を挙げれば、Si基板
の表面上にガリウムを主体とする堆積層を形成するに
は、例えば、基板を加熱してトリメチルガリウム((C
33Ga)の蒸気を含む気体を噴霧すれば形成でき
る。またトリメチルガリウムの蒸気を含む気流中に、S
i基板の表面を曝す手法によっても形成できる。所望す
る堆積層の構成によって、噴霧する気体の構成を変え
る。例えば、アルミニウムを主体とする堆積層を構成す
るには、トリメチルアルミニウム((CH33Al)な
どを用いる。インジウムを主体とする堆積層を構成する
には、トリメチルインジウム((CH33In)や結合
価を1価とするシクロペンタジエニルインジウム(C5
5In)(J.Crystal Growth,10
7(1991)、360〜364頁参照)が利用でき
る。
【0011】堆積層を構成するための原材料には、上記
のトリアルキル化合物の他に、三塩化ガリウム(GaC
3)や三塩化インジウム(InCl3)などのIII族
金属元素の塩化物が利用できる。これらのイオン結合
性、あるいは電気陰性度を相違する原子(原子団)から
構成される物質は、共有結合性のSi表面に吸着し易
く、堆積層が優位に形成できる。弗化物等の他のハロゲ
ン化物も利用できないことはないが、特に弗化物にあっ
ては、弗素イオンの作用により、Si基板の表面が浸食
され、基板表面の平坦性が損なわれる欠点がある。堆積
層は、これらの塩化物を含む溶液をSi基板表面に塗布
する手法によっても形成できる。
【0012】堆積層を形成するのに都合の良い温度は、
概ね、150℃を越える温度である。高温では、Si基
板表面からの脱離が顕著となり、堆積層が安定的に形成
できなくなり不都合である。また、堆積層を構成する物
質からIII族金属元素が遊離して凝集し、III族金
属元素の液滴が発生してSi基板の表面が被覆できない
不都合を招く。Si基板の表面を被覆する堆積層を安定
して得るのに好ましい温度範囲は、200℃以上で35
0℃以下である。
【0013】堆積層の形成を終了した後は、基板の温度
を好ましくは350℃を越え600℃以下の温度に昇温
し、緩衝層を形成する。緩衝層は、GaN、AlN、I
nNやそれらの混晶AlXGaYIn1-X-YN(0≦X,
Y≦1、X+Y=1)から構成できる。緩衝層を形成す
る手段には、通常の気相成長(VPE)法、有機金属熱
分解気相成長(MOCVD)法、或いは分子線エピタキ
シャル(MBE)法等の気相成長法を用いることができ
る。堆積層上に形成する緩衝層は、アンドープでも不純
物がドーピングされていても差し支えはないが、層厚は
50nm以下、好ましくは約20nm以下で約2nm以
上とすることが好ましい。
【0014】堆積層表面上に緩衝層を形成する利点は、
Si基板表面と緩衝層との中間にもう1つの層が介在す
るため、Si基板との密着性の増した緩衝層が得られる
ことである。また堆積層をその形成時の温度よりも高温
に曝すことにより、堆積層中のメチル基や塩素などが脱
離され、III族金属元素が表面に露呈する確率が増
し、これより、窒化物半導体堆積層と緩衝層との密着性
をより高めることができる。また、これにより連続性に
優れる緩衝層が形成でき、この緩衝層は、この上に成長
させるIII族窒化物半導体層をも連続性に優れるもの
とすることができる。
【0015】堆積層と緩衝層とは、同一のIII族金属
元素を含む材料から構成できる。例えば、堆積層をGa
を主体として構成し、緩衝層をGaNから構成したり、
Alを主体としてなる堆積層上に、AlXGa1-XN(0
≦X≦1)なる緩衝層を形成するのが効果的である。ま
た、堆積層と緩衝層とで、III族構成元素が異なって
も構わない。例えば、堆積層がAlを主体として成り、
緩衝層がGaNから構成されていても構わない。
【0016】緩衝層上には、好ましくは緩衝層の成膜温
度よりも高い温度で、III族窒化物半導体層を積層す
る。緩衝層の内部の結晶構成は、非晶質、多結晶、或い
は単結晶、若しくはそれらの混在であって差し支えない
が、素子の機能をなすためには結晶性に優れる単結晶か
ら構成する必要があり、成膜温度を緩衝層よりも高温と
することにより結晶性を向上させることができる。II
I族窒化物半導体層は、一般式AlXGaYIn1-X-Y
(0≦X,Y≦1、X+Y=1)から構成できる。ま
た、窒素原子以外の砒素原子やリンを含む場合は、一般
式AlXGaYIn 1-X-Ya1-a(0≦X,Y≦1、X
+Y=1、Mは窒素以外の第V族元素を表し、0<a≦
1)から構成できる。
【0017】例えば、Si基板上にGaを主体とする堆
積層を形成し、その上にGaN緩衝層、n形GaN下部
クラッド層、n形窒化ガリウム・インジウム(GaY
1-YN:0≦Y≦1)発光層、p形AlXGa1-X
(0<X≦1)上部クラッド層と順次積層すれば、短波
長可視帯或いは近紫外帯の発光素子用途の積層構造体が
構成できる。さらに、上記の積層構造体の表層に電流拡
散層を設ければ、短波長レーザーダイオード用途の積層
構造体となる。また、高比抵抗のSi結晶基板と高抵抗
緩衝層からなる下地層に、高純度のn形GaYIn1-Y
(0≦Y≦1)チャネル層、高純度のn形AlXGa1-X
N(0<X≦1)スペーサ層、n形AlXGa1-XN(0
<X≦1)電子供給層を順次積層すれば、変調ドーピン
グトランジスタ(MODFET)が構成できる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の詳細を、発光素子を作製する
場合を例にして、より具体的に説明する。図1は、本実
施例に係わる発光素子1Aの概略を示す平面模式図であ
る。また、図2は、図1の破線A−A’の断面模式図で
ある。
【0019】短波長可視発光素子1Aは、Si単結晶を
基板101とする積層構造体1Bを母体材料として構成
されている。積層構造体1Bは、アンチモンドープn形
Si基板101の表面上に堆積層102を介して形成し
た緩衝層103と、緩衝層103上のIII族窒化物半
導体結晶層からなる発光部107を備える。
【0020】{001}−Si単結晶基板101は、一
般的なMOCVD反応炉内に設置した後、水素ガスから
成る雰囲気中で280℃に加熱した。然る後、水素ガス
にトリメチルガリウム((CH33Ga)の蒸気を添加
し、このトリメチルガリウムの蒸気を随伴する水素ガス
にSi基板101の表面を30秒間曝し、層厚を約1n
mとする堆積層102を形成した。層厚は、一般的な偏
光を利用する光学的層厚測定器を利用して測定した。
【0021】堆積層102の形成終了後、直ちに雰囲気
を構成するガスを水素のみとし、基板101の温度を4
30℃に昇温した。昇温速度は25℃/分に設定した。
昇温後、トリメチルガリウムをGa源、アンモニア(N
3)を窒素源として、通常の常圧MOCVD法によ
り、GaNから成る緩衝層103を成膜した。緩衝層1
03の層厚は約15nmとした。
【0022】緩衝層103の成膜終了後、基板101の
温度を1050℃に昇温し、上記の原料系を使用して、
常圧MOCVD法でSiをドーピングしたn形GaN層
(層厚=3μm)104を積層した。キャリア濃度は約
3×1018cm-3とした。下部クラッド層とするn形G
aN層104は亀裂も無く、良好な表面モフォロジーを
有していた。引き続き、下部クラッド層104上に、8
90℃でインジウム組成比を約0.15とするn形Ga
0.85In0.15N発光層105を常圧MOCVD法で積層
した。発光層105は、インジウム組成比を相違する複
数の相(phase或いはdomain)から成る多相
構造の結晶層から構成した。また、発光層105のキャ
リア濃度は約9×1018cm-3に設定し、層厚は約8n
mとした。発光層105上には、発光層105との接合
界面105aでのアルミニウム組成比を0.20、表面
側で0の、層厚を110nmとするマグネシウムドープ
p形AlXGa1-XN上部クラッド層106を積層した。
なお上部クラッド層106はコンタクト層をかねてい
る。これより、上記のn形下部クラッド層104、n形
多相構造発光層105、及び上部クラッド層106より
成るpn接合型のダブルヘテロ(DH)接合構造発光部
107を備えた発光素子用途の積層構造体1Bを構成し
た。
【0023】発光部107を構成する各層104、10
5、106は、何れも表面の平滑性に優れる連続膜から
成っていた。特に、Si基板101と堆積層102ある
いは緩衝層103との間には、空隙などは認められず、
基板101との密着性に優れる積層構造体1Bが得られ
た。
【0024】発光素子1Aは、基板101の裏面にn形
オーミック電極109と、上部クラッド層106の表面
にp形オーミック電極108を形成した構成した。双方
のオーミック電極108、109は共にAlから構成し
ている。
【0025】電極108、109間に順方向に20mA
の動作電流を流して、発光素子1Aを発光させた。発光
素子1Aからは、発光中心波長を約465nmとし、半
値幅を約14nmとする青緑色光が得られた。一般的な
積分球を利用して測定される発光強度は約16μWの高
強度となり、高輝度のIII族窒化物半導体発光素子が
得られた。
【0026】
【発明の効果】本発明の積層構造によると、Si基板と
の良好な密着性を有し、結晶性に優れるIII族窒化物
半導体機能層が得られ、これにより高輝度のIII族窒
化物半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の発光素子の断面模式図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【符号の説明】
1A 発光素子 1B 積層構造体 101 Si結晶基板 102 堆積層 103 緩衝層 104 n形下部クラッド層 105 n形多相構造発光層 105a 発光層とp形上部クラッド層との接合界面 106 p形上部クラッド層 107 発光部 108 p形オーミック電極 109 n形オーミック電極

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Si単結晶基板上に緩衝層を介して、窒化
    ガリウム系半導体の積層構造を有するIII族窒化物半
    導体素子において、Si基板の表面に、有機III族化
    合物またはIII族塩化物から生成する、主としてII
    I族金属元素から構成された堆積層を有し、該堆積層上
    に、III族窒化合物半導体結晶から構成される緩衝層
    を有し、さらにその上にIII族窒化物半導体層を有す
    ることを特徴とするIII族窒化物半導体素子。
  2. 【請求項2】前記III族金属元素から構成される堆積
    層が、Si基板の表面を、有機III族化合物またはI
    II族塩化物に曝すことで形成されることを特徴とする
    請求項1に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方
    法。
  3. 【請求項3】前記III族金属元素から構成される堆積
    層の生成温度をA、その上に形成される緩衝層の形成温
    度をB、さらにその上に形成されるIII族窒化物半導
    体層の形成温度をCとした場合、上記にA<B<Cなる
    関係があることを特徴とする請求項2に記載のIII族
    窒化物半導体素子の製造方法。
  4. 【請求項4】上記温度は、Aが200℃以上350℃以
    下、Bが350℃を越え600℃以下であることを特徴
    とする請求項3記載のIII族窒化物半導体素子の製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2014038105A1 (ja) * 2012-09-06 2014-03-13 パナソニック株式会社 エピタキシャルウェハ及びその製造方法
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