JP2000299248A - 高誘電体薄膜コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
高誘電体薄膜コンデンサ及びその製造方法Info
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Abstract
圧に優れたコンデンサを提供すること。 【解決手段】 ガラス基体上(1)上にPtの下部電極
をDCマグネトロンスパッタ法により形成した後、RF
マグネトロンスパッタ法により基体温度300℃、成膜
圧力2×10-3Torrの条件で高誘電体薄膜(4)の
SrTiO3を形成し、引き続き上部電極(3)のPt
をDCマグネトロンスパッタ法により形成し、高誘電体
薄膜コンデンサとする。
Description
いた薄膜コンデンサに関し、特にチップコンデンサと称
する小型かつ軽量なコンデンサを用いた携帯電話や携帯
情報端末等の電子機器に応用できるものである。
薄型化が要求されている。電子機器はICやコンデンサ
などの電子部品が実装された回路基板等から構成され、
使用される電子部品、回路基板にも薄型化が要求されて
いる。小型かつ薄型なコンデンサを実現するために、ガ
ラスやセラミック、金属箔、あるいは有機高分子フィル
ムなどの小型、軽量、低コストな基体の上に、電極薄膜
と高誘電体薄膜との積層構造からなる小型、軽量コンデ
ンサが提供されている。
誘電体薄膜を形成する際、高誘電体薄膜は成膜条件によ
りランダムな方位に配向し、基体の影響を受けない場
合、主に(110)面、(111)面、(200)面に
優先的に配向する。しかし、(111)面以外に配向し
た高誘電体薄膜は(111)面に配向した高誘電体薄膜
よりも誘電分極が小さくなる結果、誘電率が低くなって
しまう。さらに、(111)面以外に配向すると表面の
凹凸が大きくなると共に、結晶粒界も粗な膜が形成され
てしまう。
極薄膜との接触状態を劣悪なものとし、結晶粒界や電極
との界面でのキャリアの再結合が支配的となる結果、リ
ーク電流が増大してしまい、絶縁耐圧の低いコンデンサ
となってしまう。
誘電体薄膜が(111)面に優先配向することにより大
きな誘電率を有し、しかもフラットな表面形態となり、
結晶粒界が緻密な高誘電体薄膜を提供することにより、
誘電率が大きく、しかも絶縁耐圧に優れた高品質かつ高
信頼性を有する高誘電体薄膜コンデンサを提供すること
を目的とする。
め、本発明の高誘電体薄膜コンデンサは、ペロブスカイ
ト構造を有する高誘電体薄膜の配向性が(111)面に
優先配向していることを特徴とする。これにより高誘電
体薄膜の誘電分極が大きくなる結果、誘電率が大きくな
る。さらに、フラットな表面形態となり、結晶粒界が緻
密な高誘電体薄膜を提供することが可能となり、リーク
電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供するこ
とが可能である。
薄膜の下部電極が面心立方晶構造をもち、電極薄膜の配
向性が(111)面に優先配向していることを特徴とす
る。これにより、下部電極上に形成した高誘電体薄膜の
格子整合が可能となり、接合界面における欠陥準位密度
の低い高誘電体薄膜と電極薄膜との接合が可能となる。
小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可
能である。
薄膜の上部電極が面心立方晶構造をもち、電極薄膜の配
向性が(111)面に優先配向していることを特徴とす
る。これにより、上部電極下に形成した高誘電体薄膜の
格子整合が可能となり、接合界面における欠陥準位密度
の低い高誘電体薄膜と電極薄膜との接合が可能となる。
その結果、誘電率が大きく、リーク電流の小さな絶縁耐
圧に優れたコンデンサを提供することが可能である。
薄膜と電極薄膜の格子の不整合が5%を上限とすること
を特徴とする。これにより、上下電極と高誘電体薄膜の
格子不整合が小さくなり、接合界面における欠陥準位密
度の低い高誘電体薄膜と電極薄膜との接合が可能とな
る。その結果、誘電率が大きく、リーク電流の小さな絶
縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可能であ
る。
薄膜の格子定数が電極薄膜の格子定数よりも大きいこと
を特徴とする。これにより高誘電体薄膜には圧縮の面内
応力が加わることになり、さらに大きな誘電分極を生じ
ることにより誘電率が大きく、しかもリーク電流の小さ
な絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可能で
ある。
定形構造あるいは結晶構造をもち、高誘電体薄膜及び電
極薄膜の配向性に影響を及ぼさないことを特徴とする。
これにより、基体上に形成した電極薄膜が面心立方晶の
細密充填面である(111)面が基体と平行に配向する
ことになり、上下電極と高誘電体薄膜の格子整合が可能
となり、接合界面における欠陥準位密度の低い高誘電体
薄膜と電極薄膜との接合が可能となる。その結果、誘電
率が大きく、リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコン
デンサを提供することが可能である。
ラス、セラミック、金属箔、有機高分子体、半導体基体
からなる群より選択される少なくとも1つの物質である
ことが好ましい。これにより基体上に形成する電極薄膜
は(111)面に優先配向することになり、誘電率が大
きく、リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサ
を提供することが可能である。
薄膜がSrTiO3、BaTiO3及びPbTiO3から
なる群より選択される少なくとも1つの物質であること
が好ましい。これにより誘電率が大きく、しかもリーク
電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供するこ
とが可能である。
がPt、Ag、Au、Cu、Ni、Al、Pd、Ru及
びIrからなる群より選択される少なくとも1つの物質
であることが好ましい。これにより高誘電体薄膜との格
子不整合が小さくなる結果、誘電率が大きく、リーク電
流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供すること
が可能である。
製造方法は、ペロブスカイト構造を有する高誘電体薄膜
の配向性が(111)面に優先配向した高誘電体薄膜を
形成するための高誘電体薄膜コンデンサの製造方法であ
る。
法としてRFマグネトロンスパッタ法、ECRマグネト
ロンスパッタ法からなる群より選択される手段を用いる
ことが好ましい。これにより高い比誘電率を示す高誘電
体薄膜の形成が可能となり、誘電率が大きく、しかもリ
ーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供す
ることが可能である。
ンスパッタ法、ECRマグネトロンスパッタ法での成膜
圧力が3×10-3Torrを上限とすることが好まし
い。これにより、(111)面に優先配向した高誘電体
薄膜を形成することが可能となり、誘電率が大きく、リ
ーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供す
ることが可能である。
形成温度が300℃を上限とすることが好ましい。これ
により酸化が起こりやすいAlやCu、Niを電極材料
として適用するが可能となり、低コストかつ誘電率が大
きく、リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサ
を提供することが可能である。
堆積速度が毎分10nmを下限とすることが好ましい。
これにより高誘電体薄膜形成の時間が短縮される結果、
製造のスループット向上が可能となり、低コストかつ誘
電率が大きく、リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコ
ンデンサを提供することが可能である。
速度が毎分10nmを下限とすることが好ましい。これ
により電極薄膜形成の時間が短縮される結果、製造のス
ループット向上が可能となり、低コストかつ誘電率が大
きく、リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサ
を提供することが可能である。
製造方法は、高誘電体薄膜の下部および上部電極が面心
立方晶構造をもち、電極薄膜の配向性が(111)面に
優先配向した電極薄膜を形成するための高誘電体薄膜コ
ンデンサの製造方法である。
してDCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンス
パッタ法、ECRマグネトロンスパッタ法、真空蒸着法
及びCVD法からなる群より選択される手段を用いるこ
とが好ましい。これにより、容易に電極薄膜の配向性が
(111)面に優先配向した電極薄膜を形成することが
可能となり、誘電率が大きく、リーク電流の小さな絶縁
耐圧に優れたコンデンサを提供することが可能である。
速度が毎分10nmを下限とすることが好ましい。これ
により電極薄膜形成の時間が短縮される結果、製造のス
ループット向上が可能となり、低コストかつ誘電率が大
きく、リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサ
を提供することが可能である。
デンサとは、ペロブスカイト構造を有する高誘電体薄膜
が(111)面に優先配向することにより誘電分極が大
きく、さらにフラットな表面形態となり、結晶粒界が緻
密な高誘電体薄膜となり、誘電率が大きく、絶縁耐圧に
優れた高品質かつ高信頼性を有する高誘電体薄膜コンデ
ンサである。すなわち、本高誘電体薄膜コンデンサを用
いることによりチップコンデンサとして小型かつ軽量な
電子機器に搭載することが可能となり、平滑用、同調用
やデカップリング用などのフレキシブルな低容量から高
容量までのチップコンデンサとして使用することができ
る。
面を参照してさらに詳しく説明する。
る高誘電体薄膜コンデンサの構成を図1に示す。
3は高誘電体薄膜である。基体として硼珪酸ガラスを用
い、電極薄膜にはAl、高誘電体薄膜にSrTiO3を
用いた。
法を用いて電極のPt薄膜を形成後、RFマグネトロン
スパッタ法によりSrTiO3薄膜を形成した。引き続
き電極のPt薄膜をDCマグネトロンスパッタ法により
形成し、高誘電体薄膜コンデンサとした。上記試料にお
いてコンデンサ特性を確認することができた。
られるようなSrTiO3、BaTiO3、PbTi
O3、およびそれらの固溶体からなる群より選択される
少なくとも1つの物質であることが好ましい。
ネトロンスパッタ法、ECRマグネトロンスパッタ法を
用いることが好ましい。
0nmを下限とすることが好ましい。
u、Ni、Al、Pd、Ru及びIrからなる群より選
択される少なくとも1つの物質であることが好ましい。
以下であることが好ましい。
ロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、ECR
マグネトロンスパッタ法、真空蒸着法、CVD法を用い
ることが好ましい。
mを下限とすることが好ましい。
る。
高誘電体薄膜コンデンサにおいて、厚さ0.5mmのガ
ラス基体上に、DCマグネトロンスパッタ法を用いてP
t下部電極を形成した。電極薄膜のスパッタ条件は10
-6Torr台の高真空チャンバー内においてAr雰囲気
中、DC電力200W、成膜圧力8×10-3Torr、
基体温度25℃の条件で行った。膜厚は約1000Å、
蒸着レートは約100Å/minであった。なお、電極
形状はメタルマスクを用いて5mm角の大きさに形成さ
れている。下部電極形成後、SrTiO3の高誘電体薄
膜の形成を行った。SrTiO3薄膜のスパッタ条件は
10-6Torr台の高真空チャンバー内においてAr/
O2=2/1の混合雰囲気中において、RF電力800
W、基体温度300℃の条件で行った。成膜圧力は2×
10-3Torrと8×10-3Torrの2条件で形成し
た。SrTiO3薄膜の膜厚は約3000Å、膜堆積速
度はともに約300Å/minあった。Pt下部電極上
のSrTiO3薄膜の表面積は4×4mmであった。S
rTiO3薄膜形成後、上部電極として再びPt電極の
形成を行った。上部電極の形成条件は、下部電極と同一
条件である。電極間に挟まれたSrTiO3薄膜の表面
積は3×3mmであった。
構造積層膜のX線回折(XRD)を用いて分析した結晶
の配向性を図2に示す。X線回折パターンから、成膜圧
力を2×10-3Torrとして形成したSrTiO3薄
膜は(111)面に優先配向し、8×10-3Torrで
形成したピークがSrTiO3薄膜は(110)面に優
先配向していることがわかる。
構造積層膜のSrTiO3薄膜表面の走査型電子顕微鏡
(SEM)を用いて分析した表面形態を図3に示す。X
RDの結果と合わせると、(111)面に優先配向した
SrTiO3薄膜は表面の凹凸が小さく、結晶粒界も緻
密であることが分かる。これに対し(110)面に優先
配向したSrTiO3薄膜は表面の凹凸が大きく、結晶
粒界も粗であることがわかる。
用いてコンデンサ特性を評価した結果を表1に示す。な
お、測定周波数は1kHzである。またリーク電流測定
時の電圧は下部電極に+5Vを印加している。
orrで成膜したSrTiO3薄膜は誘電率が80で、
2.6×10-7mA/cm2の電流密度であったのに対
し、8×10-3Torrで成膜したSrTiO3薄膜は
誘電率が60で、5.3×10-5mA/cm2の電流密
度であった。
(111)面に優先配向したことにより誘電分極が大き
くなったことを反映して誘電率が大きくなったものであ
る。また、電流密度の違いは、SrTiO3薄膜の配向
性の違いを反映した結果であり、(110)面に配向し
たSrTiO3薄膜はSEMで観察された表面の凹凸お
よび粗な結晶粒界によりPtとの接合状態が悪くなり、
SrTiO3/Pt接合界面での欠陥準位が増大したこ
とによりリーク電流が大きくなったものである。tan
δについても同様の現象が確認されている。また、誘電
率に関しては、成膜圧力が高真空になるほど高くなる結
果を示した。これは高真空成膜により高誘電体薄膜が
(111)面により優先的に配向して誘電分極が大きく
なり、それに伴い誘電率が向上した結果である。なお、
成膜圧力としては(111)面への優先配向性を示す6
×10-3Torrよりも低い圧力で成膜することが好ま
しい。
が(111)に優先配向することにより誘電率が大き
く、しかも表面の凹凸が小さく結晶粒界も緻密となり、
電極薄膜との接合も良好となる結果、リーク電流の小さ
な絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可能で
ある。
1で使用した(111)面に優先配向したSrTiO3
薄膜を用いて、電極材料に体心立方晶の結晶構造を有す
るCrを用いて同様の実験を行った。それ以外は実施例
1とすべて同一条件である。
構造積層膜およびCr/SrTiO3/Cr構造積層膜
のX線回折(XRD)を用いて分析した結晶の配向性を
図4に示す。X線回折パターンから、Ptは面心立方晶
構造を有することから、細密充填面である(111)面
に優先配向している。一方、Crは体心立方晶構造を有
することから、細密充填面である(110)面に優先配
向していることがわかる。
の特性を示す。
11)面に優先配向していたため、誘電率に大きな違い
はなかった。しかし、面心立方晶の結晶構造を有するP
t電極では2.6×10-7mA/cm2の電流密度であ
ったのに対し、体心立方晶の結晶構造を有するCr電極
では5.3×10-5mA/cm2の電流密度であった。
SrTiO3薄膜は(111)面に優先配向しているた
め凹凸が小さく、結晶粒界も密であるのに、これらの電
流密度に違いが生じたのは、電極材料の結晶構造および
配向性の違いを反映した結果である。図5にSrTiO
3およびPt、Crの結晶構造を示す。SrTiO3はS
rの立方晶結晶格子中の面心位置にO、体心位置にTi
が占有している。SrTiO3薄膜が(111)面に配
向すると、Srで囲まれた(111)面が基体に平行に
なるように配向する。これに対して電極材料において
は、Ptは面心立方晶の結晶構造をもち、細密充填面で
ある(111)面が基体と平行になるように配向する。
一方、Crは体心立方晶の結晶構造をもち、細密充填面
である(110)面が基体と平行になるように配向す
る。さらに、それぞれの格子定数はSrTiO3はa=
3.91Å、Ptは3.924Å、Crは2.885Å
である。従って、Pt(111)面上にSrTiO
3(111)面が成長すると格子不整合は0.4%とな
り、小さな格子不整合で成長する。一方、Cr(11
0)面上にSrTiO3(111)面が成長すると格子
不整合は9.6となり、大きな格子不整合で成長するこ
とになる。その結果、格子不整合の小さなPt/SrT
iO3接合では界面状態が良好となり、欠陥準位が低減
する結果、リーク電流が小さくなる。一方、格子不整合
の大きなCr/SrTiO3接合では界面状態が劣悪と
なり、欠陥準位が増大する結果、リーク電流が大きくな
る。
×10-3Torrの成膜圧力で形成することによりSr
TiO3(110)面優先配向/Cr(110)面配向
の積層膜を形成したが、この場合は格子不整合は26.
2%となり、さらに界面状態が劣悪になり欠陥準位が増
大する結果、電流密度は5.4×10-3mA/cm2と
大きなリーク電流となった。さらに、実施例1で確認さ
れた(110)面に配向したSrTiO3薄膜の大きな
凹凸と粗な結晶粒界も大きなリーク電流に影響してい
る。
の傾向が確認されている。
電体薄膜の下部及び上部の電極薄膜が面心立方晶構造を
もち、電極薄膜の配向性が(111)面に優先配向して
いることにより、下部電極と上部電極間に形成した高誘
電体薄膜の格子整合が可能となり、接合界面における欠
陥準位密度の低い高誘電体薄膜と電極薄膜との接合が可
能となる。その結果、誘電率が大きく、しかもリーク電
流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供すること
が可能である。
整合は5%を上限とすることが望ましい。格子不整合が
5%を越えるとリーク電流が大きくなり、絶縁耐圧特性
が劣化する。
1で使用した(111)面に優先配向したSrTiO3
薄膜を用いて、電極材料に格子不整合の小さなPtとそ
れよりもやや格子不整合の大きいAlNi合金電極を用
いて同様の実験を行った。それ以外は実施例1とすべて
同一条件である。なお、AlNi合金はAl:Ni=5
5:45で、XRDによる精密格子定数測定の結果、格
子定数はa=3.85Åであった。なお、XRD分析に
よりSrTiO3薄膜は(111)面に配向しているこ
とを確認している。
の特性を示す。
いてtanδ、電流密度共に大きな変化はなく、誘電率
は向上する結果が得られた。これはSrTiO3薄膜よ
りも電極材料のAlNiの格子定数が小さくなったこと
によりSrTiO3薄膜に面内圧縮応力が掛かったこと
により誘電分極が大きくなった結果を反映している。実
験結果は、(111)面に配向したSrTiO3薄膜に
おいても面内圧縮応力が加わると誘電率が向上すること
を示している。
膜の格子定数よりも大きいことにより高誘電体薄膜には
圧縮の面内応力が加わることになり、大きな誘電分極を
生じることにより誘電率が大きく、しかもリーク電流の
小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可
能である。
整合は5%を上限とすることが望ましい。格子不整合が
5%を越えるとリーク電流が大きくなり、絶縁耐圧特性
が劣化する。
1で使用した(111)面に優先配向したSrTiO3
薄膜を用いて、実施例1で使用したガラス基体の代わり
に厚さ100μmのステンレス箔を用いて用いて同様の
実験を行った。それ以外は実施例1とすべて同一条件で
ある。なお、ステンレス箔は導電性があることから上下
電極間でショートするため、SUS表面にTi(OC2
H5)4の加水分解反応によるゾル-ゲル法を用いてTi
O2を形成した。TiO2の厚みは約500Åである。な
お、XRDを用いて分析した結果、両積層膜ともに同様
の回折パターンを示した。
の特性を示す。
体において誘電率、tanδ、電流密度共に大きな変化
はなく、同等の特性が得られた。なお、基体材料として
ガラス以外にセラミック、金属箔、有機高分子体、シリ
コン(100)基体、GaAs(100)基体を用いて
も同様の傾向を得ることができた。
造をもち、高誘電体薄膜及び電極薄膜の配向性に影響を
及ぼさないことにより、基体上に形成した電極薄膜が面
心立方晶の細密充填面である(111)面が基体と平行
に配向することになり、さらにその上に形成した高誘電
体薄膜が(111)面に配向することにより上下電極と
高誘電体薄膜の格子整合が可能となり、接合界面におけ
る欠陥準位密度の低い高誘電体薄膜と電極薄膜との接合
が可能となる。その結果、誘電率が大きく、しかもリー
ク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供する
ことが可能である。
1で使用したSrTiO3の高誘電体薄膜の代わりにB
aTiO3、PbTiO3、および固溶体の(Ba0.2S
r0.8)TiO3と(Pb0.1Sr0.9)TiO3、比較例
としてBiTiO3を用いて実施例1同様の実験を行っ
た。BaTiO3、PbTiO3、(Ba0.2Sr0.8)T
iO3、(Pb0.1Sr0.9)TiO3、BiTiO3の形
成条件は実施例1と同様である。
高誘電体薄膜は2×10-3Torrの成膜圧力で形成し
たところ、すべて(111)面に優先配向していた。
したフレキシブル薄膜コンデンサの誘電率を示す。
の誘電体薄膜において高い誘電率と低いtanδ、電流
密度を得ることができた。また、それぞれの高誘電体材
料において成膜圧力を8×10-3Torrとして(11
0)面に優先配向した高誘電体薄膜を形成してPt電極
のコンデンサを作製したが、すべてのコンデンサは高誘
電体薄膜が(111)面に配向した方が大きな誘電率を
示した。
aTiO3及びPbTiO3からなる群より選択される少
なくとも1つの物質であり、(111)面に優先配向す
ることにより誘電率が大きく、しかもリーク電流の小さ
な絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可能で
ある。
1で使用した(111)面に優先配向したSrTiO3
薄膜を用いて、実施例1で使用したPtの代わりに、A
lを用いて同様の実験を行った。それ以外は実施例1と
すべて同一条件である。
の特性を示す。
等の特性を得ることができた。なお、電極材料としては
Pt以外にAg、Au、Cu、Ni、Al、Pd、Ru
及びIrおよびこれらの合金を用いても同様の傾向を得
ることができた。これらの電極材料を使用することによ
り、高誘電体薄膜との格子不整合が小さくなる結果、リ
ーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供す
ることが可能である。
iO3薄膜の形成方法としてECRマグネトロンスパッ
タ法を用いた。ECRスパッタの条件として、10-6T
orr台の高真空チャンバー内においてAr/O2=2
/1の混合雰囲気中において、RF電力600W、マイ
クロ波電力400W、基体温度300℃の条件で行っ
た。成膜圧力は2×10-3Torrで形成した。SrT
iO3薄膜の膜厚は約3000Å、膜堆積速度は約30
0Å/minあった。それ以外は実施例1とすべて同一
条件である。
1とほぼ同様の傾向を得ることができた。
マグネトロンスパッタ法、ECRマグネトロンスパッタ
法からなる群より選択される手段を用いることにより高
い誘電率を示し、しかもリーク電流の小さな絶縁耐圧に
優れたコンデンサを提供することが可能である。
1で使用した(111)面に優先配向したSrTiO3
薄膜を用いて、高誘電体薄膜の形成温度として300℃
と400℃の2条件で実験を行った。なお、電極材料に
はAlを使用し、それ以外は実施例1とすべて同一条件
である。
の特性を示す。
デンサ特性が劣化している。基体温度が高くなると電極
材料のAlの表面が酸化されることにより低誘電率層の
Al酸化膜が形成され、誘電率が低下し、tanδも大
きくなっている。また、Alの酸化膜とSrTiO3薄
膜との界面接合特性が劣悪となることによりリーク電流
も増加している。
℃を上限とすることにより酸化が起こりやすいAlやC
u、Niを電極材料として適用するが可能となり、低コ
ストかつリーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデン
サを提供することが可能である。
1で使用した(111)面に優先配向したSrTiO3
薄膜を用いて、RF電力を増加させた時の高誘電体薄膜
の堆積速度の検討を行った。それ以外は実施例1とすべ
て同一条件である。
度が直線的に増加した。堆積速度の増大に伴うSrTi
O3薄膜の配向性の変化は確認されなかった。また、コ
ンデンサの誘電率は、RF電力を増加させて堆積速度を
上げても極度に劣化することはなかった。また、リーク
電流も極度に増大することはなかった。蒸着速度の向上
はスループットの向上につながり、高誘電体薄膜コンデ
ンサの低価格化を実現できる。特性が劣化しなければよ
り速い堆積速度が好ましく、本実施例では誘電率の極度
の低下やリーク電流の増大は見られなかった。
として10nmを下限とすることにより高誘電体薄膜形
成の時間が短縮される結果、製造のスループット向上が
可能となり、低コストかつ誘電率が大きく、リーク電流
の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが
可能である。
施例2で使用したPt電極の形成方法としてEB蒸着を
用いて同様の実験を行った。EB蒸着は10-6Torr
台の高真空チャンバー内において基体温度25℃の条件
で行った。金属電極の形成以外は実施例2とすべて同一
条件である。
面に優先配向していることが確認された。また、コンデ
ンサ特性も実施例2のPt電極を用いたコンデンサと同
等の特性が得られた。なお、金属電極の形成法としてD
Cマグネトロンスパッタ法、ECRマグネトロンスパッ
タ法、真空蒸着法、CVD法を用いてもほぼ同様の効果
を得ることができるが、真空装置の自動化、連続化の観
点からDCマグネトロンスパッタ法、あるいはRFマグ
ネトロンスパッタ法を用いることが好ましい。
ネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、E
CRマグネトロンスパッタ法、真空蒸着法及びCVD法
からなる群より選択される手段を用いることにより、容
易に電極薄膜の配向性が(111)面に優先配向した電
極薄膜を形成することが可能となり、誘電率が大きく、
リーク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供
することが可能である。
施例1で使用した(111)面に優先配向したSrTi
O3薄膜を用いて、DC電力を増加させた時の電極薄膜
の堆積速度の検討を行った。それ以外は実施例1とすべ
て同一条件である。
度が直線的に増加した。堆積速度の増大に伴うPt薄膜
の配向性の変化は確認されなかった。また、コンデンサ
の誘電率は、DC電力を増加させて堆積速度を上げても
極度に劣化することはなかった。リーク電流も極度に増
大することはなかった。堆積速度の向上はスループット
の向上につながり、高誘電体薄膜コンデンサの低価格化
を実現できる。特性が劣化しなければより速い堆積速度
が好ましく、本実施例では誘電率の極度の低下やリーク
電流の増大は見られなかった。
て10nmを下限とすることにより電極薄膜形成の時間
が短縮される結果、製造のスループット向上が可能とな
り、低コストかつ誘電率が大きく、リーク電流の小さな
絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供することが可能であ
る。
カイト構造を有する高誘電体薄膜の配向性が(111)
面に優先配向していることにより誘電率が大きく、リー
ク電流の小さな絶縁耐圧に優れたコンデンサを提供する
ことができる。
薄膜コンデンサを効率よく合理的に製造することができ
る。
誘電体薄膜コンデンサを示す断面図
構造積層膜のX線回折パターンを示す図
態を示す図
構造積層膜およびCr/SrTiO3/Cr構造積層膜
のX線回折パターンを示す図
Crの結晶構造を示す図
Claims (17)
- 【請求項1】 ペロブスカイト構造を有する高誘電体薄
膜の配向性が(111)面に優先配向していることを特
徴とする高誘電体薄膜コンデンサ。 - 【請求項2】 高誘電体薄膜の下部電極が面心立方晶構
造をもち、電極薄膜の配向性が(111)面に優先配向
していることを特徴とする請求項1に記載の高誘電体薄
膜コンデンサ。 - 【請求項3】 高誘電体薄膜の上部電極が面心立方晶構
造をもち、電極薄膜の配向性が(111)面に優先配向
していることを特徴とする請求項1に記載の高誘電体薄
膜コンデンサ。 - 【請求項4】 高誘電体薄膜と電極薄膜の格子の不整合
が5%を上限とすることを特徴とする請求項1に記載の
高誘電体薄膜コンデンサ。 - 【請求項5】 高誘電体薄膜の格子定数が電極薄膜の格
子定数よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の
高誘電体薄膜コンデンサ。 - 【請求項6】 基体が無定形構造あるいは結晶構造をも
ち、高誘電体薄膜及び電極薄膜の配向性に影響を及ぼさ
ないことを特徴とする請求項1に記載の高誘電体薄膜コ
ンデンサ。 - 【請求項7】 基体がガラス、セラミック、金属箔、有
機高分子体、半導体結晶からなる群より選択される少な
くとも1つの物質であることを特徴とする請求項6に記
載の高誘電体薄膜コンデンサ。 - 【請求項8】 高誘電体薄膜がSrTiO3、BaTi
O3及びPbTiO3からなる群より選択される少なくと
も1つの物質である請求項1に記載の高誘電体薄膜コン
デンサ。 - 【請求項9】 電極薄膜がPt、Ag、Au、Cu、N
i、Al、Pd、Ru及びIrからなる群より選択され
る少なくとも1つの物質である請求項2又は3に記載の
高誘電体薄膜コンデンサ。 - 【請求項10】 ペロブスカイト構造を有する高誘電体
薄膜の配向性が(111)面に優先配向した高誘電体薄
膜を形成することを特徴とする高誘電体薄膜コンデンサ
の製造方法。 - 【請求項11】 高誘電体薄膜の形成法としてRFマグ
ネトロンスパッタ法、ECRマグネトロンスパッタ法か
らなる群より選択される手段を用いる請求項10記載の
高誘電体薄膜コンデンサの製造方法。 - 【請求項12】 RFマグネトロンスパッタ法、ECR
マグネトロンスパッタ法での成膜圧力が6×10-3To
rrを上限とすることを特徴とする請求項11記載の高
誘電体薄膜コンデンサの製造方法。 - 【請求項13】 高誘電体薄膜の形成温度が300℃を
上限とする請求項10に記載の高誘電体薄膜コンデンサ
の製造方法。 - 【請求項14】 高誘電体薄膜の堆積速度が毎分10n
mを下限とする請求項10に記載の高誘電体薄膜コンデ
ンサの製造方法。 - 【請求項15】 高誘電体薄膜の下部および上部電極が
面心立方晶構造をもち、電極薄膜の配向性が(111)
面に優先配向した電極薄膜を形成するための高誘電体薄
膜コンデンサの製造方法。 - 【請求項16】 電極薄膜の形成法としてDCマグネト
ロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、ECR
マグネトロンスパッタ法、真空蒸着法及びCVD法から
なる群より選択される手段を用いる請求項15記載の高
誘電体薄膜コンデンサの製造方法。 - 【請求項17】 電極薄膜の堆積速度が毎分10nmを
下限とする請求項15に記載の高誘電体薄膜コンデンサ
の製造方法。
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-
1999
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