JP2011108886A - 薄膜コンデンサ及び薄膜コンデンサの製造方法 - Google Patents

薄膜コンデンサ及び薄膜コンデンサの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサ及び薄膜コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜コンデンサ100は、炭素含有量が1質量%〜16質量%であるペロブスカイト系材料からなる誘電体前駆体層を下側の電極(下地電極2又は内部電極8となる内部電極層8b)の上に形成し、さらに上側に電極層(内部電極層8b又は上部電極層10b)を積層した後に、これらからなる積層体を焼成することで、六方晶系の結晶構造を有するペロブスカイト系材料からなる誘電体層4,6を形成することができる。また、上記の製造方法によれば、六方晶系の結晶構造を有するチタン酸バリウムの公知の製造方法と比較して低温で焼成が可能となるため、温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサをより容易に作製することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜コンデンサ及び薄膜コンデンサの製造方法に関する。
ペロブスカイト構造を有する強誘電体材料の一つであるチタン酸バリウム(BaTiO)は、誘電率が高く、且つ、鉛(Pb)等を含まず環境上も好ましいことから、薄膜コンデンサ等に広く用いられている。このチタン酸バリウムは温度や製造方法によって異なる結晶系を有することが知られているが、チタン酸バリウムを薄膜コンデンサや圧電体電子部品に適用する場合には、室温付近で比誘電率が高い正方晶系や立方晶系の結晶構造のものが一般的に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特開平8−139292号公報
しかしながら、正方晶系や立方晶系の結晶構造のチタン酸バリウムは、温度変化による静電容量の変化が大きく、温度補償用の薄膜コンデンサの誘電体層として好適な材料ではない。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサ及び薄膜コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは鋭意研究の結果、六方晶系の結晶構造を有するペロブスカイト系材料からなる誘電体層を設けることで、温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサが得られることを見出した。
すなわち、本発明に係る薄膜コンデンサは、金属からなる下側電極と、下側電極上に積層され、六方晶系の結晶構造を有するペロブスカイト系材料からなる誘電体層と、金属からなり、誘電体層を挟んで下側電極の反対側に積層された上側電極と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る薄膜コンデンサの製造方法は、金属からなる下側電極の上に、ペロブスカイト系材料からなり、炭素含有量が1質量%〜16質量%であると共に誘電体層となる誘電体前駆体層を形成する工程と、誘電体前駆体層の上に、金属からなり上側電極となる上側電極層を積層して積層体を形成する工程と、積層体を焼成する工程と、を備えることを特徴とする。
上記の薄膜コンデンサの製造方法のように、炭素含有量が1質量%〜16質量%であるペロブスカイト系材料からなる誘電体前駆体層を下側電極の上に形成し、さらに上側電極層を積層した後に、これらからなる積層体を焼成することで、六方晶系の結晶構造を有するペロブスカイト系材料からなる誘電体層を形成することができる。また、上記の製造方法によれば、六方晶系の結晶構造を有するチタン酸バリウムの公知の製造方法と比較して低温で焼成及び生成が可能となり、温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサをより容易に作製することができる。
また、本発明に係る薄膜コンデンサの製造方法は、上側電極層の厚さが50nm〜1000nmであることを特徴とする。このように、上側電極層の厚さを上記の範囲とすることで、誘電体前駆体層における六方晶系の結晶構造の形成が好適に行われる。
本発明によれば、温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサ及び薄膜コンデンサの製造方法が提供される。
本発明の実施形態に係る薄膜コンデンサの概略断面図である。 図1の薄膜コンデンサの製造方法を説明するフローチャートである。 図3(a)、図3(b)は、図1の薄膜コンデンサの製造方法を示す概略断面図である。 図4(a)、図4(b)は、図1の薄膜コンデンサの製造方法を示す概略断面図である。 実施例及び比較例に係る焼成済積層体の概略断面図である。 図6(a)、図6(b)、図6(c)は、実施例に係る焼成済積層体の誘電体層ディフラクションパターンである。 図7(a)、図7(b)は、実施例及び比較例に係る薄膜コンデンサの概略断面図である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、実施形態に係る薄膜コンデンサについて説明する。本実施形態に係る薄膜コンデンサ100は、図1に示すように、下地電極2と、下地電極2上に積層された誘電体層4と、誘電体層4上に積層された内部電極8と、内部電極8上に積層された誘電体層6と、誘電体層6上に積層された上部電極10と、を備える。すなわち、薄膜コンデンサ100は、下地電極2と、下地電極2上に積層された二つの誘電体層4、6と、誘電体層4と誘電体層6との間に積層された内部電極8と、誘電体層4、6及び内部電極8を挟んで下地電極2の反対側に積層された上部電極10と、を備える。なお、以下では、下地電極2、誘電体層4、内部電極8、誘電体層6及び上部電極10が順次重なる方向を「積層方向」と記す。
薄膜コンデンサ100は、誘電体層4、内部電極8、誘電体層6及び上部電極10を挟んで下地電極2の反対側に、一対の端子電極12a、12bを備える。一対の端子電極12a、12bのうち一方の端子電極12aは、下地電極2及び上部電極10と電気的に接続されている。また、他方の端子電極12bは、内部電極8と電気的に接続されている。また、一対の端子電極12a、12bは互いに電気的に絶縁されている。
また、薄膜コンデンサ100は、下地電極2、誘電体層4、内部電極8、誘電体層6及び上部電極10から構成される積層体と、一対の端子電極12a、12bとの間を満たす絶縁性のカバー層14を備える。さらに、薄膜コンデンサ100は、端子電極12a,12bとカバー層14との間を覆う絶縁性保護層18を備える。以下、薄膜コンデンサ100を構成する各部について説明する。
下地電極2は導電性材料から形成される。具体的には、導電性材料としては、主成分としてニッケル(Ni)や銅(Cu)を含有する合金又は金属間化合物が好ましく、特に、主成分としてNiを含有する合金が好適に用いられる。純Niを使用する場合、そのNiの純度は99.99%以上が好ましい。さらに、Niを含有する合金の場合、Ni以外の金属として含まれてもよい金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも一種とすれば好適である。
下地電極2の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、20〜70μmであることがより好ましく、30μm程度であることがさらに好ましい。下地電極2の厚さが薄過ぎる場合、薄膜コンデンサ100の製造時に下地電極2をハンドリンクし難くなる傾向があり、下地電極2の厚さが厚過ぎる場合、リーク電流を抑制する効果が小さくなる傾向がある。また、上述の下地電極2は金属箔からなることが好ましく、基板と電極とを兼用している。このように、本実施形態に係る下地電極2は基板としても兼用する構成であることが好ましいが、Siやアルミナなどからなる基板と、この基板上に形成された金属膜からなる電極とからなる基板/電極膜構造を下地電極2として用いても良い。その場合、下地電極として機能する電極膜の厚さは50〜1000nm程度が好適である。
誘電体層4、6は、ペロブスカイト系の誘電体材料から構成される。ここで、本実施形態におけるペロブスカイト系の誘電体材料としては、BaTiO(チタン酸バリウム)、(Ba1−XSr)TiO(チタン酸バリウムストロンチウム)、(Ba1−XCa)TiO、PbTiO、Pb(ZrTi1−X)O等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、Pb(Mg1/3Nb2/3)O等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料等が含まれる。ここで、上記のペロブスカイト構造、ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料において、AサイトとBサイト比は、通常整数比であるが、特性向上のために意図的に整数比からずらしても良い。なお、誘電体層4、6の特性制御のため、誘電体層4、6に適宜、副成分として添加物質が含有されていてもよい。
誘電体層4,6の各厚さは、50〜1000nmである。
また、下地電極2(下側電極)と内部電極8(上側電極)とに挟まれた誘電体層4、及び、内部電極8(下側電極)と上部電極10(上側電極)とに挟まれた誘電体層6はそれぞれ六方晶系の結晶構造を有している。
次に、誘電体層4,6に挟まれて設けられる内部電極8及び上部電極10を説明する。内部電極8及び上部電極10は、導電性材料から形成される。具体的には、主成分としてニッケル(Ni)を含有し、さらに白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下、「添加元素」と記す。)を含有する合金又は金属間化合物であってよい。内部電極8及び上部電極10に主成分としてNiを含有する材料を用いる場合、その含有量は、内部電極8及び上部電極10全体に対して、50mol%以上であることが好ましい。内部電極8及び上部電極10が添加元素を含有することによって、内部電極8及び上部電極10の途切れが防止される。なお、内部電極8及び上部電極10は複数種の添加元素を含有してもよい。また、本実施形態の薄膜コンデンサ100では、内部電極8及び上部電極10は同一の材料から形成されるが、互いに異なる導電性材料により形成されていてもよい。
内部電極8及び上部電極10の厚さは、50〜1000nmとすることが好ましい。内部電極8及び上部電極10の厚さが50nmより薄い場合には、後述の薄膜コンデンサ100の製造方法において、内部電極8及び上部電極10の積層方向下側に設けられた誘電体層4,6中の炭素の含有量が焼成において減少し、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層4,6を製造することが困難となる。また、内部電極8及び上部電極10の厚さが1000nmよりも厚い場合には、各層の積層方向下側に設けられた誘電体層4,6を十分に焼成することができないという問題がある。
なお、誘電体層4は、図1に示す薄膜コンデンサ100の断面において途切れているが、積層方向に垂直な面内において連続している。同様に、誘電体層6、内部電極8及び上部電極10も、それぞれ積層方向に垂直な面内において連続している。
端子電極12a、12bは、例えばCu等の導電性材料から構成される。
また、カバー層14は、誘電体層4、6と同じ材料からなることが好ましい。すなわち、チタン酸バリウム(BaTiO)系の誘電体材料が好適に用いられる。なお、カバー層14の材料は上記に限定されず、例えば、SiO、アルミナ、SiN(シリコンナイトライド)等の絶縁材料を用いることもできる。
また、端子電極12a、12bとカバー層14との間に設けられる絶縁性保護層18は、例えばポリイミド等により構成される。絶縁性保護層18を設けることで導通経路を作製でき、コンデンサ表面まで端子電極を引き出すことが可能となる。
次に、本実施形態の薄膜コンデンサ100の製造方法について、図2〜4を参照しながら説明する。図2は、図1に示す薄膜コンデンサ100に係る製造方法を説明するフローチャートである。また、図3(a),(b)及び図4(a),(b)は、図1に示す薄膜コンデンサ100に係る製造方法を示す概略断面図である。図2に示すように、薄膜コンデンサ100は、誘電体膜を形成する工程(S01)と、仮焼き工程(S02)と、電極の形成工程(S03)と、カバー前駆体層の形成工程(S04)と、焼成工程(S05)と、端子電極の形成・接続工程(S06)と、を含んで構成される。このうち、誘電体膜を形成する工程(S01)〜電極の形成工程(S03)は、内部電極8及び上部電極10の総数に応じて繰り返して行われる。すなわち、図1の薄膜コンデンサ100を製造する場合、内部電極8及び上部電極10は2層からなるので、誘電体膜を形成する工程(S01)〜電極の形成工程(S03)は2回繰り返される。
最初に、誘電体膜を形成する工程(S01)について説明する。まず、金属箔からなる下地電極2を準備する。この金属箔は必要に応じてその表面が研磨される。この研磨はCMP(Chemical Mechanical Polishing)、電解研磨、バフ研磨等の方法により行うことができる。次に、この下地電極2の上に誘電体層4となる誘電体膜4aを形成する。この誘電体膜4aの組成は、完成後の薄膜コンデンサ100が備える誘電体層4と同様とすればよい。また、誘電体膜4aの形成方法としては、化学溶液法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等の成膜技術を用いることができるが、化学溶液法がより好ましい方法である。また、化学溶液法を用いる場合には、誘電体膜4aを構成する組成物の金属有機酸塩が有機溶媒に溶解したものを下地電極2上に塗布することで、誘電体膜4aが形成される。塗布方法は特に限られず、例えばスピンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、スリットコーター、印刷法のような方法で行うことができる。この工程により、図3(a)に示すように、誘電体膜4aは下地電極2の表面を覆うように設けられる。
次に、下地電極2上に形成された誘電体膜4aを仮焼きする(S02)。このとき、仮焼き後の誘電体膜4aは誘電体前駆体層4bとなる。この誘電体前駆体層4bは、炭素含有量が1質量%〜16質量%とされる。誘電体前駆体層4bの炭素含有量は、仮焼き時の雰囲気、仮焼き温度、及び仮焼き時間を調整することができる。例えば、焼成後の誘電体層の厚さが300nmとなるように誘電体膜4aを下地電極2上に塗布したものを大気雰囲気中で仮焼きする場合には、仮焼き温度を360℃〜500℃の範囲として、10分間程度仮焼きをすると、焼成後の誘電体前駆体層4bの炭素含有量を上記の範囲とすることができる。また、仮焼きを還元雰囲気中で行う場合には、仮焼き温度を430℃〜500℃の範囲とし、60分間程度仮焼きをすることが好ましい。なお、一度の誘電体膜の形成(S01)及び仮焼き(S02)によって所望の厚さの誘電体前駆層が得られない場合には、これらを複数回繰り返すことで所望の厚さとなるまで誘電体前駆層を厚くすることもできる。
次に、誘電体前駆体層4bの表面にNiIr合金からなる内部電極層8bを形成する(S03)。内部電極層8bの組成は、完成後の薄膜コンデンサ100が備える第1の内部電極8と同様とすればよく、これにより、図3(b)に示すように内部電極層8bが形成される。また、内部電極層8bの形成方法としては、DCスパッタリング等が挙げられる。
さらに、誘電体膜の形成(S01)及び仮焼き(S02)をもう一度繰り返して、内部電極層8bの表面に誘電体前駆体層6bを形成する。具体的には、内部電極層8bの表面の全体に誘電体膜を形成した後に、これを仮焼きすることで、誘電体前駆体層6bが形成される。誘電体前駆体層6bの形成方法は、誘電体前駆体層4bと同様である。
さらに、誘電体前駆体層6bの表面に、NiIr合金からなる上部電極層10bを形成する(S03)。これにより、図3(b)に示すように上部電極層10bが形成される。これにより、下地電極2、誘電体前駆体層4b、内部電極層8b、誘電体前駆体層6b及び上部電極層10bを順次積層してなる積層体100Aを得る。なお、上部電極層10bの形成方法としては、DCスパッタリング等が挙げられる。
次に、この積層体100Aの下地電極2、誘電体前駆体層4b、内部電極層8b、誘電体前駆体層6b及び上部電極層10bの表面を覆うようにカバー前駆体層14bの形成が行われる(S04)。ここで形成されるカバー前駆体層14bは、誘電体前駆体層4b,6bと同じ組成を有する材料であることが好ましく、カバー前駆体層の形成方法は、誘電体前駆体層4b,6bと同様の方法により形成される。このようにカバー前駆体層14bを形成することにより、図4(a)に示す積層体100Bが得られる。
その後、この誘電体前駆体層4b,6b及びカバー前駆体層14bを備える積層体100Bを焼成する(S14、焼成工程)。焼成時の温度は、誘電体前駆体層4b,6bが焼結(結晶化)する温度とすることが好ましく、具体的には500〜1000℃であることが好ましい。また、焼成時間は5分〜2時間程度とすればよい。また、焼成時の雰囲気は、特に限定されず、例えば、Nや酸素分圧の低いN,H,及びHOからなる還元ガス中で焼成してもよいが、少なくとも、下地電極2が酸化しない程度の酸素分圧下で焼成することが好ましい。これにより、誘電体層4、誘電体層6、及びカバー層14が形成される。このように、誘電体前駆体層4bは下地電極2と内部電極層8bとの間に挟まれ、誘電体前駆体層6bは内部電極層8bと上部電極層10bとの間に挟まれた状態で、それぞれ焼成されることで、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層4,6が形成される。なお、カバー層14は、正方晶系又は立方晶系の結晶構造を有する。
次に、焼成後の積層体に対して、端子電極の形成・接続を行う(S06、端子電極の形成・接続工程)。具体的には、図4(b)の積層体100Cに示すように、各電極層からコンデンサの表面に電極を引き出すために、フォトリソグラフィを使用して、エッチング及びパターニングを繰り返す。さらにエッチング及びパターニング後の誘電体層4,6、内部電極8、上部電極10及びカバー層14の表面に対してポリイミド等の樹脂からなる絶縁性保護層18を設けることで導通経路(ビア)を作製する。そして、この積層体100Cに対して一対の端子電極12a、12bを形成する。一方の端子電極12aは、下地電極2及び上部電極10とビアを介して電気的に接続させ、他方の端子電極12bは、内部電極8とビアを介して電気的に接続させる。さらに、端子電極12a,12bが配置された積層体に対してアニール処理を施す。アニール処理は、減圧雰囲気下、温度が200〜400℃である雰囲気下で行えばよい。ここで、減圧雰囲気とは、1気圧(=101325Pa)より低い圧力を有する雰囲気を意味する。アニール処理を行うことにより、電気特性を安定化することができる。
以上の工程により、図1に示す本実施形態に係る薄膜コンデンサ100が得られる。
ここで、上記のように、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層4,6が形成される条件についての検討について説明する。
[検討1]
本実施形態に係る薄膜コンデンサ100及び上記の薄膜コンデンサ100の製造方法では、上側と下側とが金属からなる電極で挟まれた誘電体層(図1の誘電体層4,6)が六方晶系の結晶構造を備える。そして、この六方晶系の結晶構造を有する誘電体層を挟むように電極が設けられた薄膜コンデンサでは、温度変化に対する静電容量の変化が小さいことを以下の方法で確認した。
[検討1−1]
まず、薄膜コンデンサの基板(下地電極)として、Ni金属箔を準備し、誘電体膜の付着する面をCMP等によって平坦化した。平坦化後のNi金属箔の厚みは50μmであった。
次に、この基板上に誘電体層を溶液法にて形成した。溶液は目的の組成物の金属有機酸塩がアルコール等の有機溶媒に溶解したものを使用した。ここでは金属酸塩としてオクチル酸塩、アルコールとしてブタノールを使用した。誘電体としてはBaTiOを使用した。すなわち、金属酸塩としてオクチル酸Ba及びオクチル酸Tiがブタノールに溶解した溶液を使用した。
誘電体層を形成する際には、基板への溶液の塗布、仮焼きによる熱分解を繰返し、300nmの膜厚となるまで誘電体前駆体層を積層した後、焼成(結晶化アニール)を行い、誘電体層を形成した。このとき、溶液の塗布はスピンコーティングを行い、仮焼きは大気中(Air雰囲気)400℃にて10分間行った。焼成は750℃の真空中にて30分間行った。
上記の手順にて作製された誘電体層のX線回折(XRD)パターンを観察したところ、立方晶系の結晶構造を有することが確認された。
[検討1−2]
検討1−1と同様に、薄膜コンデンサの基板(下地電極)として、Niからなる金属箔を準備し、誘電体膜の付着する面をCMP等によって平坦化した。平坦化後のNi箔の厚みは50μmであった。
次に、図2に示す誘電体膜の形成(S01)、仮焼き(S02)、電極層の形成(S03)を2回繰り返し、カバー前駆体層の形成(S04)を行うことで、図5に示すように、下地電極2、誘電体前駆体層4b、内部電極層8b、誘電体前駆体層6b、上部電極層10b、カバー前駆体層14bが下方からこの順で積層された積層体200を形成し、これを焼成した。なお、誘電体前駆体層4b,6b及びカバー前駆体層14bは同一の材料を用いて形成された。また、誘電体膜の仮焼きは大気中(Air雰囲気)400℃にて10分間行った。また、内部電極層8b及び上部電極層10bとしては、Irを10mol%含有するNiIr合金を用いた。
そして、この積層体200を750℃の真空中にて30分間焼成(結晶化アニール)することで、コンデンサ構造物が得られた。
このコンデンサ構造物の断面TEM像(透過型電子顕微鏡:Transmission Electron Microscope)(型式:JEOL3010(Acc.300kV))を観察し、それぞれの誘電体部分における電子線のディフラクションパターンを確認した。このうち、カバー前駆体層14bを焼成して得られたカバー層及び誘電体前駆体層6bを焼成して得られた誘電体層のディフラクションパターンを図6(a)〜(c)に示す。図6(a)は、カバー前駆体層14bを焼成して得られたカバー層のディフラクションパターンであり、図6(b),(c)は、誘電体前駆体層6bを焼成して得られた誘電体層中の互いに異なる位置でのディフラクションパターンである。
図6(a)では、{100}のスポットを確認でき、且つ{110}及び{111}のスポットが規則正しく並んでいることが確認できたことから、このカバー層は立方晶系の結晶構造を有すると考えられた。
一方、図6(b),(c)では、{011},{004},{013}のスポットが確認されたことから、この誘電体層は六方晶系の結晶構造を有することを確認できた。
このように、下側が金属からなる電極層からなり、上側が金属からなる電極層で覆われた状態で、誘電体前駆体層を焼成(結晶化アニール)することで、六方晶系のBaTiOが得られることが確認された。
なお、上記の焼成条件では、誘電体前駆体層4bを焼成して得られた誘電体層には、一部結晶化できなかったアモルファスが存在した。そこで、焼成時間を増加させることで、アモルファスとなっている部分が減少、もしくは存在しなくなるかを確認したところ、さらに750℃の真空中にて1時間焼成することで、誘電体前駆体層4bを焼成して得られた誘電体層のアモルファスがなくなり、単相の六方晶となることが分かった。よって、この誘電体層は、下側の下地電極(基板)が厚いため、焼成中に加えている熱が逃げやすいことから、誘電体層に温度が十分に加わることが難しく、上記の焼成時間では十分に焼成を行うことができなかったと考えられる。
[検討1−3]
次に、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層を備える薄膜コンデンサと、立方晶系の結晶構造を有する誘電体層を備える薄膜コンデンサとの特性の違いを調べるため、下記の2種類の薄膜コンデンサを作製し、その特性を評価した。
図7(a)に示す薄膜コンデンサ300A及び図7(b)に示す薄膜コンデンサ300Bを作製した。
図7(a)に示す薄膜コンデンサ300Aは、下地電極2、誘電体層4、内部電極8、誘電体層6、上部電極10、カバー層14が下方からこの順となるように積層し、Cuからなる端子電極12aと上部電極10とを接続すると共に、Cuからなる端子電極12bと内部電極8とを接続したものである。なお、カバー層14と端子電極12a,12bとの間はポリイミドからなる絶縁性保護層18により覆われている。この薄膜コンデンサ300Aでは、端子電極12a,12bが接続する上部電極10、内部電極8、及びこれらの電極の間の誘電体層6がコンデンサとして機能する。
一方、図7(b)に示す薄膜コンデンサ300Bは、下地電極2、誘電体層4、内部電極8、誘電体層6、上部電極10、カバー層14が下方からこの順となるように積層し、さらにカバー層14の上側にCuからなる接続電極20を設けたものであり、Cuからなる端子電極12aと上部電極10とを接続すると共に、Cuからなる端子電極12bと接続電極20とを接続したものである。なお、カバー層14は、誘電体層4,6と同一の材料からなり、カバー層14と端子電極12a,12bとの間はポリイミドからなる絶縁性保護層18により覆われている。この薄膜コンデンサ300Bでは、端子電極12a,12bが接続する上部電極10、接続電極20、及びこれらの電極の間の誘電体材料からなるカバー層14がコンデンサとして機能する。
上記の薄膜コンデンサ300A,300Bには、検討1−2で作製したコンデンサ構造物を用いて作製した。したがって、薄膜コンデンサ300Aにおいて上部電極10と内部電極8との間に設けられた誘電体層6は六方晶系の結晶構造を有しているのに対して、薄膜コンデンサ300Bにおいて上部電極10と接続電極20との間に設けられた誘電体材料からなるカバー層14は立方晶系の結晶構造を有している。また、薄膜コンデンサ300A,300Bはx方向1mm、y方向0.5mmの1005サイズのコンデンサ素子として加工した。
上記の薄膜コンデンサ300A,300Bの電気特性として、容量、温度特性(25℃〜85℃の間で温度を変化した場合の容量の変化率)、絶縁抵抗値、及び誘電率εを測定した。なお、容量値はインピーダンスアナライザ(型式:Agilent 4194A)を用いて、室温、1MHz、1Vrmsの条件にて測定を行った。また、絶縁抵抗値は高抵抗計(型式:Agilent 4339B)を使用し、室温、DC4Vの条件にて測定を行った。この結果を表1に示す。
表1に示すように、薄膜コンデンサ300Aは、容量及び誘電率が薄膜コンデンサ300Bと比較して低いが、容量の温度変化は著しく小さく、また、絶縁抵抗値も10Ω以上有していることから、特に温度補償用の薄膜コンデンサとして好適な特性を有していることが確認された。
[検討2]
次に、仮焼き温度を除いて上記検討1−2と同様な方法を用いて複数種類のコンデンサ構造物を作製し、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層が形成される条件を検討した。
具体的には、検討1−2と同様に、下地電極となる金属箔を準備した後、誘電体膜の形成(S01)、仮焼き(S02)、電極層の形成(S03)を2回繰り返し、カバー前駆体層の形成(S04)を行った後、これを焼成してコンデンサ構造物を作製した。このとき、仮焼き時の仮焼き温度をそれぞれ360℃、400℃、440℃、480℃、500℃、550℃とした6種類のコンデンサ構造物を作製した。なお、仮焼き温度以外の仮焼きの条件は、検討1−2と同様である。すなわち、上記のそれぞれの仮焼き温度にて、大気中(Air雰囲気)で10分間仮焼きを行った。
また、上記の6種類のコンデンサ構造物の誘電体層が焼成により結晶化する前の誘電体前駆体層の炭素含有量(C量)を測定した。具体的には、下地電極の上部に塗布するための溶液を、Pt製の皿に滴下し、上記6種類の仮焼き温度と同じ条件で加熱分解を行い、残留物中のC量を酸素気流中燃焼−赤外吸収法によって測定した。この加熱分解後の残留物は、仮焼き後に得られる誘電体前駆体層に相当するものである。
上記の方法によって測定された誘電体前駆体層に対応する加熱分解後の溶液中C量の分析値と、加熱分解後のNi箔(コンデンサ構造物の下地電極に相当)の酸化の有無、仮焼き後の誘電体前駆体層の結晶化の有無、焼成(結晶化アニール)後のコンデンサ構造物における誘電体層の結晶系(ここでは、誘電体層6に対応する誘電体層の結晶系を測定対象とした)を、表2に示す。

Ni箔を基材として使用しているため、仮焼き温度を500℃以上とした場合にはNiが酸化してしまう。しかしながら、Niが酸化した場合であっても、誘電体層の結晶系は六方晶系であることが確認された。
一方、仮焼き温度を550℃まで上昇させた場合、加熱分解後の溶液のC量が1.0質量%より小さくなり、また誘電体前駆体層の一部が結晶化していることがXRDを用いた観察によって確認された。誘電体前駆体層の少なくとも一部が結晶化している場合、焼成後のコンデンサ構造物の誘電体層の結晶構造は六方晶系ではなく、すべて立方晶系であった。
[検討3]
次に、化学溶液法でなくスパッタ法を用いて誘電体層を形成する点を除いて、上記検討1−2と同様のコンデンサ構造物を作製し、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層が形成される条件を検討した。
具体的には、検討1−2と同様に、下地電極となる金属箔を準備した後、誘電体膜を室温条件においてスパッタ法により形成し、さらに、この誘電体膜の上部にNiIr合金からなる内部電極層を形成した。次に、内部電極層の上部に誘電体膜を室温条件においてスパッタ法により形成し、さらに、この誘電体膜の上部にNiIr合金からなる上部電極層を形成した。次に、この積層体を真空中750℃の条件下で30分間焼成することにより、コンデンサ構造物を作製した。
ここで、焼成前の誘電体膜をXRDにより観察したところ、アモルファス状態であることが確認できた。また、このアモルファス状態の誘電体膜中のC量を検討2と同様の方法、すなわち、スパッタ法により誘電体膜を形成するために使用したターゲットの一部を用いて酸素気流中燃焼−赤外吸収法にてC量を分析した。この結果、C量は0.1質量%であった。この結果から、スパッタ法により形成された誘電体膜のC量も0.1質量%以下であると考えられる。さらに、上記の工程を経て作製されたコンデンサ構造物の誘電体層の結晶系を確認した結果、各層とも立方晶系であった。
以上の検討から、電極と電極で挟まれた誘電体前駆体層中のC量が1質量%以上であれば、六方晶系の誘電体を得ることができると考えられる。
[検討4]
次に、仮焼き条件を除いて上記検討1−2と同様な方法を用いて複数種類のコンデンサ構造物を作製し、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層が形成される条件を検討した。
具体的には、検討1−2と同様に、下地電極となる金属箔を準備した後、誘電体膜の形成(S01)、仮焼き(S02)、電極層の形成(S03)を2回繰り返し、カバー前駆体層の形成(S04)を行った後、これを焼成してコンデンサ構造物を作製した。このとき、仮焼きを大気中(Air雰囲気)で行うことに代えて還元雰囲気中で行った。なお、各々の仮焼き温度になっている炉内に、窒素及び水素の混合ガス(3vol% H)に30℃の飽和水蒸気を混合したものを導入することで還元雰囲気を形成した。また、仮焼き温度をそれぞれ400℃、430℃、450℃、460℃、480℃、500℃とし、各条件下で60分間仮焼きを行って、5種類のコンデンサ構造物を作製した。
また、上記の5種類のコンデンサ構造物の誘電体層が焼成により結晶化する前の誘電体前駆体層の炭素含有量(C量)を測定した。このときの測定方法は検討2と同様である。
上記の方法によって測定された誘電体前駆体層に対応する加熱分解後の溶液中C量の分析値と、加熱分解後のNi箔(コンデンサ構造物の下地電極に相当)の酸化の有無、仮焼き後の誘電体前駆体層の結晶化の有無、焼成(結晶化アニール)後のコンデンサ構造物における誘電体層の結晶系(ここでは、誘電体層6に対応する誘電体層の結晶系を測定対象とした)を、表3に示す。
上記のコンデンサ構造物は還元雰囲気中にて仮焼きを行っているため、表3に示すように、仮焼き温度に関係なくNi箔の酸化は確認されなかった。一方、還元雰囲気中で仮焼きを行った場合、仮焼き後の誘電体前駆体層中に炭素が比較的多く残留することが確認されたが、結晶化が十分に行われていない場合が確認された。具体的には、仮焼き温度が430℃以下の場合は、焼成後の誘電体層にアモルファスが含まれていた。仮焼き温度が430℃の場合はC量が17.6%であり、また、仮焼き温度が400℃の場合のC量は26.7%であった。
したがって、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層が形成されるためには、誘電体前駆体層の炭素含有量は1質量%以上であることが好ましく、16質量%を超えると、誘電体前駆体層の結晶化が阻害されるため、結晶化が十分に行われないことが確認された。
[検討5]
次に、内部電極及び上部電極の厚さを除いて上記検討1−2と同様な方法を用いて複数種類のコンデンサ構造物を作製し、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層が形成される条件を検討した。
具体的には、検討1−2と同様に、下地電極となる金属箔を準備した後、誘電体膜の形成(S01)、仮焼き(S02)、電極層の形成(S03)を2回繰り返し、カバー前駆体層の形成(S04)を行った後、これを焼成してコンデンサ構造物を作製した。このとき、内部電極及び上部電極の厚さが、それぞれ35,50,100,200,500,800,1000,1200nmとなる(内部電極と上部電極の厚さは同一とされる)8種類のコンデンサ構造物を作製した。なお、誘電体層及びカバー層の厚さが400nmとなるように、溶液の塗布を行った。また、内部電極及び上部電極の厚さ以外の製造条件は検討1−2と同様であり、仮焼きは大気中400℃にて10分間行い、焼成は750℃の真空中にて30分間行った。
上記の方法により得られた内部電極及び上部電極の厚さが互いに異なる8種類のコンデンサ構造物における内部電極と上部電極との間の誘電体層の断面TEM像を撮影し、結晶系を確認した。また、内部電極及び上部電極の途切れの有無を観察した。この結果を表4に示す。
表4に示すように、誘電体層の上側に設けられる電極(ここでは上部電極)と下側に設けられる電極(ここでは内部電極)とが薄い場合、間に挟まれる誘電体層は六方晶系になるが、電極が厚くなると、結晶化が阻害されるため、アモルファスと六方晶系とが混在した状態となった。これは、焼成(結晶化)後も誘電体層に残留するC量が多くなる状態を引き起こし、結晶化が阻害されたことによると考えられる。なお、六方晶系にアモルファスが混合した状態の誘電体層が得られた場合には、検討1−2と同様に焼成時間を延長することで、結晶化は進むと考えられる。
一方、内部電極及び上部電極が35nmと薄い場合には、誘電体層の結晶系は六方晶系であったが、電極の途切れが発生した。この電極の途切れは、薄膜コンデンサの容量の減少や、途切れ部分の電界集中による絶縁劣化、電極のパターニング時のエッチング不良の原因等を引き起こす可能性があるため望ましくない状態である。したがって、誘電体層の上側に設けられる電極の厚さは50nm〜1000nmであることが好ましい。
以上のように、本実施形態に係る薄膜コンデンサ100及びこの薄膜コンデンサ100の製造方法では、炭素含有量が1質量%〜16質量%であるペロブスカイト系材料からなる誘電体前駆体層を下側の電極(下地電極2又は内部電極8となる内部電極層8b)の上に形成し、さらに上側に電極層(内部電極層8b又は上部電極層10b)を積層した後に、これらからなる積層体を焼成することで、六方晶系の結晶構造を有するペロブスカイト系材料からなる誘電体層4,6を形成することができる。また、上記の製造方法によれば、六方晶系の結晶構造を有するチタン酸バリウムの公知の製造方法と比較して低温で焼成が可能となるため、温度変化による静電容量の変化が小さい薄膜コンデンサをより容易に作製することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施形態では、下地電極2の上部に複数の誘電体層4,6が積層され、この誘電体層4,6の間に内部電極8が設けられた構成について説明しているが、下地電極2の上部に積層される誘電体層が一層である(すなわち、内部電極を設けない)薄膜コンデンサであってもよい。この場合でも、一層のペロブスカイト系材料からなる誘電体前駆体層の炭素含有量が1質量%〜16質量%であり、下地電極と上部電極層とにより挟まれた状態で焼成することで、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層を備えた薄膜コンデンサを得ることができる。
また、上記実施形態の薄膜コンデンサ100では、誘電体層4,6と端子電極12a,12bのビアとの間にカバー層14が設けられる構成を備える。しかしながら、カバー層14は必須ではない。
また、上記実施形態では、内部電極8が1層のみである場合について説明したが、誘電体層4,6の数に応じて内部電極8の数は適宜増加させることができる。この場合、内部電極8の数に応じて端子電極12a,12bから延びるビアの配置は適宜変更される。
また、下地電極、内部電極、上部電極としては、上記の検討に用いたNiやNiIr合金に限られず、Niを含んだ合金又は金属間化合物や、Ir以外の貴金属やCu,W,Ta,Ag等を含んだ金属を使用することもできる。その場合の誘電体層の結晶化アニールでは、金属の酸化を防ぐような酸素分圧の低い環境が必要である。
また、上記の検討の結果に示すように、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層の形成可否は、主として結晶化前の誘電体前駆体層中のC量に依存すると考えられる。したがって、誘電体前駆体層を作製するための原料として、炭素の含有率が高い原料、例えばラウリン酸塩、ナフテン酸塩、等を積極的に用いることもできる。また、加熱分解(仮焼き)時の分解温度が比較的高い金属有機酸塩等を用いてもよい。
また、上記実施形態では、大気中にて溶液を塗布し熱分解させる化学溶液法を中心に説明したが、MOCVDのように炭素を多く含んだ溶液を塗布し熱分解させる方法でも、焼成前の誘電体前駆体層中のC量を1質量%〜16質量%の範囲にすることができることから、MOCVDを用いて誘電体前駆体層を形成する方法を採用してもよい。
また、誘電体前駆体層中のC量を増大させるために、誘電体前駆体層を形成するために用いる溶液に炭素を含む材料を用いることも可能である。例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)等の比較的厚膜を作製するために使用する溶剤を、あらかじめ溶液中に混合し、誘電体前駆体層中に残留するC量を増大させた場合でも、六方晶系の結晶構造を有する誘電体層を得ることができる。
100,300A,300B…薄膜コンデンサ、2…下地電極、4,6…誘電体層、8…内部電極、10…上部電極、12a,12b…端子電極、14…カバー層、18…絶縁性保護層、20…接続電極、100B,200…積層体。

Claims (3)

  1. 金属からなる下側電極と、
    前記下側電極上に積層され、六方晶系の結晶構造を有するペロブスカイト系材料からなる誘電体層と、
    金属からなり、前記誘電体層を挟んで前記下側電極の反対側に積層された上側電極と、
    を備えることを特徴とする薄膜コンデンサ。
  2. 金属からなる下側電極の上に、ペロブスカイト系材料からなり、炭素含有量が1質量%〜16質量%であると共に誘電体層となる誘電体前駆体層を形成する工程と、
    前記誘電体前駆体層の上に、金属からなり上側電極となる上側電極層を積層して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程と、
    を備えることを特徴とする薄膜コンデンサの製造方法。
  3. 前記上側電極層の厚さが50nm〜1000nmであることを特徴とする請求項2記載の薄膜コンデンサの製造方法。
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