JP2000285737A - 透明導電性薄膜及びその製造方法 - Google Patents
透明導電性薄膜及びその製造方法Info
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Abstract
ア濃度が高い透明導電性薄膜等を提供する。 【解決手段】 パルスレーザー蒸着法を用い、YSZ単
結晶基板上に、In2O3、ZnO又はSnO2からなる
キャリア生成層と、ドーパントを添加した、In2O3、
ZnO又はSnO2からなるキャリア移動層と、を交互
に積層して、透明導電性薄膜を製造する。
Description
示デバイスや太陽電池等の透明電極として使用できる透
明導電性薄膜及びその製造方法に関し、特に、超高導電
性を有する透明導電性薄膜及びその製造方法に関する。
xide)、ATO(Antimony doped TinOxide)、AZO
(Aluminum doped Zinc Oxide)などがあり、液晶ディ
スプレイには主にITOが、太陽電池には主にATOが
用いられている。しかし、液晶ディスプレイの大型化と
高精細化が進むに連れて、ITOの導電率を高める必要
性が生じている。例えば、STN型液晶ディスプレイの
場合、透明電極は信号電極を兼ねており、ストライプ状
の形状をしている。ディスプレイの大型化はストライプ
が長くなることを意味し、高精細化はストライプが細く
なることを意味する。このため、ストライプ端点間の抵
抗値が大きくなり、電圧降下を生じるので、液晶分子の
適切なスイッチングか困難になる。また例えば、TFT
型液晶ディスプレイの場合、信号電極には金属材料を用
いるのが通常であるが、素子構成を単純化して製造工程
を単純化し、ひいては製造コストを圧縮するために、信
号電極としても透明電極が用いられ始めている。しかし
この場合にもディスプレイが大型化し、または、高精細
化するに連れて電極端点間の抵抗値が増大するので、現
状では対角11インチ以下のディスプレイに対しての
み、透明電極を信号電極として用いることができるにと
どまっている。
大の課題である。効率の向上に寄与する主な要素は、
材料に入射した光エネルギーの有効な閉じこめ、光生
成キャリアの有効な収集と光起電力効果への寄与の増
大、光生成キャリアの再結合損失の軽減、直列抵抗
損失の軽減、電圧因子損失の軽減、より広い光エネ
ルギースペクトルの収集などがある。透明電極の電気抵
抗は電池の直列抵抗損失として作用し、特に大面積の素
子に対してはその変換効率に大きく影響を与える。そこ
で、太陽電池の場合にも、透明電極の導電率を高めるこ
とが求められている。
の限界を支配する機構であるイオン化不純物散乱の現象
を抑制することにより、高い導電率を実現しようとする
方法が提案されている。例えば、Raufは温度勾配を
付けた基板上に、電子ビーム蒸着法によりITO薄膜を
載せた(J.Mater.Sci.Lett.12,1902〜1905(1993))。こ
れは単結晶精製に用いられるゾーン・リファイニング法
を応用したもので、温度勾配にしたがって温度の高いと
ころから低いところへ、不純物Snイオンが移動し、S
n濃度の高い部分と低い部分が形成される。Sn濃度の
高い部分で生成したキャリアが低濃度部分に染み出して
移動するならば、低濃度部分でのイオン化不純物散乱の
頻度は小さいので、移動度の低下が抑えられることにな
る。Raufはこの方法により2×105S/cmとい
う非常に高い導電率を得たと報告している。
濃度の高低がストライプ状に形成されるので、膜の面内
方向に導電率の異方性が生まれる。そこでSn濃度の高
低を、膜の厚さ方向に作製すれば、膜の面内方向の異方
性を解決できると考えられる。すなわち、Sn濃度の高
いキャリア生成層とSn濃度の低いキャリア移動層を交
互に積層する構造である。このような構造を有する透明
導電性薄膜は、キャリア生成とキャリア移動の二つの機
能を有する層を交互に積層した薄膜であるので、本明細
書では交互積層型透明導電性薄膜と呼ぶことにする。
率を有する透明導電性薄膜が、大野らによって提案され
ている(特開平6−103817号公報)。大野らの薄
膜は、伝導キャリア濃度の高い層(キャリア生成層)と
伝導キャリア濃度の低い層(キャリア移動層)を交互に
積層し、かつキャリア生成層の厚みを20nm以下とし
たものである。大野らはこの膜を、蒸着法やスパッタリ
ング法などで作製できるとし、特にイオンビームスパッ
タ法が有力な方法であると述べている。イオンビームス
パッタ法は、膜表面がプラズマに曝されることが無く、
また、大面積への均質な成膜も可能であるからである。
ャリア移動層)とキャリア高濃度膜(キャリア生成層)
を交互に積層した薄膜において、キャリア移動層の基材
の金属酸化物の金属よりも仕事関数の小さい金属をドー
パントとしてキャリア移動層に添加した薄膜を提案した
(特開平8−69981号公報)。福吉らは、キャリア
生成層として銀などの金属を考え、キャリア移動層とし
てSnを添加していないIn2O3層(IO層)やITO
層を考えた。さらに、Ag層とIO層またはITO層の
界面に、ある種の拡散電位が生じているか、もしくは界
面準位のディストーションが生じていると仮定し、ジル
コニウムなどをIO層またはITO層に添加することに
よって、IO層またはITO層の仕事関数を下げること
によって、透明性と導電性を向上させることができたと
している。成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリン
グ法、イオンプレーティング法などが例示されている。
(キャリア生成層)として10重量%の酸化錫が添加さ
れた酸化インジウム膜を選び、ドーパント低濃度薄膜
(キャリア移動層)として0.3重量%の酸化錫が添加
された酸化インジウム膜を選んで、これらを互いに隣接
してスパッタ法にて成膜し、そののち加熱アニーリング
処理して、一層のキャリア移動層を二層のキャリア生成
層で挟み込んだ、三層構造からなる透明導電膜を提案し
た(特開平8−43841号公報)。この透明導電膜に
おいては、三層が相互に作用し合うため、全体として高
い導電性が得られるとしている。
を基礎にはしていないが、同様の積層構造が谷口らによ
って提案されている(特開平6−60723号公報)。
谷口らは、ITOの成膜工程において、薄膜は成長初期
においては二次元成長するが、膜厚が厚くなるにつれて
三次元成長に移動し、結晶配向が(001)から(21
1)に変化し、電気光学的特性が劣化することを発見し
た。そこで谷口らは、二次元成長が支配的で、かつ(1
00)配向している部分のみを有効に利用するため、透
明絶縁膜であるIO膜を、ITO膜と交互に積層し、多
層構造とすれば、積層数を増やすに連れて導電率を向上
しうることを見出した。成膜法には、スパッタリング法
を用いている。
うITO層とキャリア移動機能を担うIO層を交互に積
層して透明導電性薄膜とする方法は、不純物Snイオン
によるキャリア電子の散乱現象を原理的に回避しようと
する点で優れているが、大野らが指摘しているように一
層の膜厚は20nm程度でなくてはならず、また福吉が
指摘しているように、二つの層の界面にはポテンシャル
の変形が生じるので、極めて薄い膜を、界面粗さを極め
て小さく抑えて作製しなければ、意図した高い伝導率を
実現することは困難である。
記公報中で指摘しているように、膜表面がプラズマに曝
されていることから、プラズマによる損傷を受けやす
い。すなわち、プラズマ中には、散乱反射中性イオン、
スパッタリング中性粒子、正の二次イオン、負の二次イ
オン、および、高エネルギー中性散乱粒子が存在してい
る。このうち、負の二次イオンと高エネルギー中性散乱
粒子は高エネルギー粒子と呼ばれ、高エネルギーをもっ
て基板を衝撃する。高エネルギー粒子の基板衝撃は、再
スパッタリングを引き起こすほどのものであって、薄膜
に大きなダメージを与える(石橋啓次、セラミックス、
33巻、10号、801頁、1998年)。このため、界面粗さは
非常に大きくなり、交互積層型透明導電性薄膜の製造方
法として適さない。
中で指摘しているように、基板面内に均質に成膜するこ
とが難しい。このため、キャリア移動層やキャリア生成
層の厚みを、20nmといった領域において精密に制御
することが困難であり、交互積層型透明導電性薄膜の製
造方法として適さない。
は、大野らが上記公報中で指摘しているように、膜表面
がプラズマに曝されることが無く、均質な成膜が可能で
ある点で、交互積層型透明導電性薄膜の製造方法として
適している。しかし、この方法はせいぜい数kVの電圧
で加速したイオンビームをターゲットに照射して、スパ
ッタリング中性粒子をターゲットから叩き出す方法であ
るので、スパッタリング中性粒子の持つ運動エネルギー
は数10eVに過ぎず、基板表面に衝突すると容易にエ
ネルギーを失うため、薄膜の結晶性を十分に高められな
い傾向がある。キャリア移動層の結晶性が十分に高くな
い場合には、交互積層型透明導電性薄膜の移動度を充分
に高めることができない。また、キャリア生成層の結晶
性が十分に高くない場合には、交互積層型透明導電性薄
膜のキャリア濃度を十分に高めることができない。移動
度もしくはキャリア濃度が十分に高くなければ、交互積
層型透明導電性薄膜の導電率を十分に高くすることはで
きない。
ア生成層を交互に積層してなる透明導電性薄膜におい
て、充分に結晶性が高く、移動度が高く、キャリア濃度
が高い薄膜と、その製造方法を提供することである。
本発明は以下の構成としてある。
層とを交互に積層してなる薄膜であって、それぞれの層
の界面における表面粗さが自乗平均平方根粗さRmsで
10nm以下であることを特徴とする透明導電性薄膜。
層とを交互に積層してなる薄膜であって、それぞれの層
の界面における表面粗さが自乗平均平方根粗さRmsで
3nm以下であることを特徴とする透明導電性薄膜。
以下であり、かつ、2nm以上であることを特徴とする
構成1又は2記載の透明導電性薄膜。
において、キャリア生成層がIn2O3、ZnO及びSn
O2のうちの一つであり、キャリア移動層がドーパント
を添加した、In2O3、ZnO及びSnO2のうちの一
つであることを特徴とする透明導電性薄膜。
基板上に、In2O3、ZnO又はSnO2からなるキャ
リア生成層と、ドーパントを添加した、In2O3、Zn
O又はSnO2からなるキャリア移動層と、を交互に積
層することを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。
であることを特徴とする構成5記載の透明導電性薄膜の
製造方法。
層とを、一原子層毎に原子層成長モードで交互に積層す
ることを特徴とする構成5又は6記載の透明導電性薄膜
の製造方法。
成膜方法として、パルス・レーザー・蒸着法(PLD
法:Pulsed Laser Deposition法)を用いる。PLD法
は、レーザー光を原料蒸発源とする物理的成膜法の一つ
であり、高出力パルスレーザー光をターゲット表面に集
光・照射し、光・固体相互作用により、ターゲット最表
面を瞬時に2000℃以上の高温に加熱する。そのとき
起こる極表層部での構成元素の瞬間的な剥離(アブレー
ション)を利用して、アブレートされた原子、分子、イ
オンやクラスターを基板上に堆積させる。ターゲット上
でプラズマ発光柱(プルーム)の発生が観察されること
から、単なる熱的な過程だけでなく、光イオン化過程が
複雑に関与していると言われる。PLD法は、スパッタ
法や蒸着法などの他の物理的成膜法に比べて、極めて清
浄なプロセスであり、酸素圧を高く設定することがで
き、膜厚の制御性が良い点で優れている。
圧粉体、高純度In金属、高純度ITOの焼結体や圧粉
体、高純度InSn合金などを用いることができる。圧
粉体の場合には、ターゲットの調製が容易であるが、真
空容器内が粉体で汚れやすいという欠点がある。また、
金属の場合には、純度を非常に高くすることが可能であ
るが、レーザー光を反射するために効率的に蒸発が起こ
らないという欠点がある。焼結体については、近年、緻
密化の技術が進み、相対密度99%以上、純度99.9
9%程度のものが市販されるに至っており、真空容器を
汚しにくく、レーザー光を反射しない点で優れている。
10-7Torr以下とすることが好ましい。これより真
空度が低いと、真空容器中のガスはH2Oが支配的とな
り、ターゲットや基板の表面に多量に付着して、作製す
るIn2O3薄膜の特性を劣化させる怖れがある。できれ
ば、真空到達度が1×10-7〜1×10-10Torrに
至る、超高真空容器を用いることが好ましい。排気用ポ
ンプには、分子ターボポンプもしくはソープションポン
プが適当である。成膜中にO2ガス等の酸化性ガスを流
すためである。真空容器中には、ターゲットを設置し、
これに対向する位置に基板を配置する。ターゲットと基
板の間の距離は、通常、数cmから10cm程度であ
る。ターゲットは自転させることが好ましい。レーザー
光の照射によって照射部分が蒸発するため、凹部が形成
されるからである。また、基板も自転させることが好ま
しい。レーザー光の照射によってターゲット表面から爆
発的に蒸発する物質は、プルームと呼ばれる気球形状の
発光を伴うが、プルームの径はせいぜい数cmから10
cm程度に過ぎず、その範囲内で物質が基板上に堆積す
るためである。より広い面積に、均一に成膜することを
意図するならば、基板を回転させることが好ましいので
ある。レーザー光は、ターゲット表面に焦点を絞るよう
に導入する。焦点の面積とレーザー光のエネルギー値と
から、ターゲットに入射するレーザー光のパワー密度が
求まる。パワー密度が低すぎれば、爆発的な蒸発現象が
起こらず、薄膜を作製することができない。パワー密度
が高すぎれば、成膜速度が大きくなりすぎて、良好な膜
質が得られなくなるなどの問題が生じる。そこで適当な
パワー密度が得られるように、レーザ光の焦点面積とエ
ネルギーとを調節する必要がある。レーザー光の波長は
紫外領域のものを選ぶのが通常である。可視領域の光は
ターゲットに吸収されないので、爆発的な蒸発が起こら
ない。紫外レーザーとしては通常、XeCl、KrF、
ArF等のエキシマーレーザーや、Nd:YAGレーザ
ーの4倍波などを用いる。Nd:YAGレーザーの様に
連続光を発振できるものは、連続光のまま入射させても
良いが、モードロック方式やQスイッチ方式によってパ
ルス状に発振させた方が、エネルギーの尖塔値が高くな
り、爆発的な蒸発現象を、より効率的に誘起することが
できる。
選び、酸素分圧は0〜1kPaの間で選ぶ。200℃以
下では、酸化インジウム相の結晶化が進行せず、100
0℃以上では酸化インジウムの気化が進行して膜質が悪
化する。この温度範囲内では、基板温度を高くするほ
ど、酸化インジウム薄膜の結晶性は向上し、粒子径が大
きくなる傾向がある。粒子形状は、200℃〜500℃
の領域では球形であるが、500℃以上とすると、次第
に酸化インジウムの結晶構造を反映して立方形に変化す
る。粒子が大きくなりすぎると、表面粗さが大きくなり
すぎて好ましくない。本発明の交互積層透明導電性薄膜
の表面粗さは、自乗平均平方根粗さRmsで表現する
と、10nm以下であり、好ましくは3nmであり、さ
らに好ましくは1nm以下である。本発明においては各
層を交互に積層するので、成膜途中における薄膜の表面
粗さは、成膜終了時における薄膜の各層の間の界面粗さ
に対応する。
ーザー光のエネルギー密度や照射パルス数によって制御
することができる。各層の厚みは30nm以下、かつ2
nm以上でなければならない。30nm以上では、キャ
リア生成層からキャリア移動層にキャリアが有効に染み
出さず、充分に高い導電率を得ることができない。2n
m以下ではキャリア生成とキャリア移動の機能を十分に
分離できず、充分に高い伝導率を得ることができない。
各層の厚みは好ましくは20nm以下、5nm以上であ
る。交互積層の層数(各層の合計層数)は2〜100層
程度が好ましく、2〜30層程度がさらに好ましい。1
層では当然積層効果は現れない。層数が増えるとプロセ
スが複雑になる。積層の層数は、全膜厚と各層の好まし
い厚みとの兼ね合いで決める。
ット基板間距離を適切に制御することによって、薄膜の
堆積速度を十分に小さくすると、酸化インジウムが一格
子ずつ堆積して一つのテラスを作った後に、次のテラス
を作るべく、再び一格子ずつ堆積するという、いわゆる
原子層成長モードを達成することができる。このような
原子層成長モードが実際に実現しているか否かは、例え
ば成長途中の薄膜の表面モフォロジーを、原子間力顕微
鏡で観察したり、高速電子線による回折強度をモニタリ
ングすることによって判断することができる。原子層成
長モードでは、薄膜が一格子単位でテラス状に成長する
ために、基板全域にわたって、極めて良い精度で、均一
な膜厚を実現することができる。このことは、交互積層
透明導電性薄膜の高い導電率を得る上で、極めて有効な
事実である。
ガラス基板等の上に形成する。単結晶基板の結晶性は良
好であることが好ましく、In2O3結晶と対称性が合
い、格子定数が合い、ヘテロエピタキシャル成長に適合
するものであることが好ましい。また、単結晶基板は、
成膜前に、高温における熱処理または酸によるエッチン
グ処理によって、基板表面を原子オーダーで超平坦化し
ておくことが好ましい。例えば、YSZ(Yttrium Stab
ilized Zirconia:イットリウム安定化ジルコニア)単
結晶基板の場合、熱処理によって超平坦化することが可
能であり、熱処理の温度域は1200℃以上1500℃
以下とすることが好ましい。1200℃以下では、YS
Zの蒸気圧が低すぎて超平坦化が困難であり、1500
℃以上では、YSZの蒸気圧が高すぎて基板表面に突起
が形成される。好ましくは1300℃〜1400℃の範
囲で処理することが適当である。YSZ単結晶の面方位
は、(100)面でもよく(111)面でもよく、また
他の面でもIn2O3格子と対称性と格子定数が合う面で
あればよい。(100)面を選ぶ場合には、立方形状の
In2O3結晶子が緻密に整列する。(111)面を選ぶ
場合には、In2O3結晶子は(111)方位を基板法線
方向に向け、(100)面を表面に露出した三角錐状の
構造を作り、緻密に整列する。このため、正三角形状の
断面が原子間力顕微鏡や走査電子顕微鏡によって観察さ
れる。
Z等の単結晶基板の場合と異なって、基板に結晶性がな
いため、ヘテロエピタキシャル成長を実現することがで
きない。このため、In2O3膜には配向性がなく、多結
晶となり、移動度が小さくなる傾向がある。配向性が重
要な場合には、例えばガラス基板上にZnOのc軸配向
膜を作製し、その上にIn2O3膜を形成するならば、I
n2O3の(111)方位を向いた配向膜が得られる。Z
nOのc軸配向膜は、パルスレーザー蒸着法の他、スパ
ッタ法、CVD法によって作製することができ、市販も
されている。
空容器にYSZ単結晶基板(001)面(フルウチ化学
(株)製)を設置し、IRランプヒーターによって80
0℃に加熱した。容器中に1.2×10-3Paの酸素を
導入し、ラムダフィジクス(株)製KrFエキシマーレ
ーザー光を高純度In2O3ターゲット(東ソー(株)
製)に照射、ターゲットから30mm離して対向させた
基板上にIOを堆積させた。膜厚は200nmとした。
理学電機製X線回折装置により、試料の回折パターンを
測定し、高配向性の薄膜となっていることが明かとなっ
た。ファンデアパウ法により電気特性を測定した結果、
基板温度を上げるに従い移動度が増大し、YSZ基板上
で、800℃で81cm2/Vsの移動度を得た。キャ
リア密度は4×1018/cm3、導電率は47S/cm
であった。
(東ソー(株)製、SnO2を5重量%含有)に交換
し、同じ条件でレーザー光を照射、新しいYSZ(10
0)単結晶基板上に、200nmのITOを積層させ
た。X線回折パターンは、高配向性の薄膜となっている
ことを示し、ファンデアパウ法による測定の結果、7×
1020/cm3のキャリア密度を得た。移動度は36c
m2/Vs、導電率は3850S/cmであった。
を用意し、上記の条件で、まずIO層を20nm積層
し、続いてITO層を20nm積層した。交互の積層を
さらに3回繰り返して、厚みが160nmでYSZ/I
O/ITO/IO/ITO/IO/ITO/IO/IT
Oの構造を有する交互積層型薄膜を形成した。X線回折
パターンは高配向性の薄膜となっていることを示してお
り、ファンデアパウ法による測定の結果、移動度70c
m2/Vs、キャリア密度4×1021/cm3、導電率4
500S/cmの特性が得られた。また、交互積層透明
導電性薄膜の表面粗さは自乗平均平方根粗さRmsで1
0nm以下であった。なお、交互積層透明導電性薄膜表
面の表面粗さを自乗平均平方根粗さRmsで0.3nm
以下としたところ、X線回折パターンは高配向性の薄膜
となっていることを示しており、ファンデアパウ法によ
る測定の結果、移動度70cm2/Vs、キャリア密度
6×1020/cm3、導電率6700S/cmの特性が
得られた。
3×10-4Paとして、IO膜の表面粗さを自乗平均平
方根粗さRmsで10nm超としたこと以外は実施例1
と同様にして、交互積層型薄膜を形成した。X線回折パ
ターンは高配向性の薄膜となっていることを示してお
り、ファンデアパウ法による測定の結果、移動度35c
m2/Vs、キャリア密度3×1021/cm3、導電率1
700S/cmの特性が得られた。
及び照射パルス数を制御して、各層の厚みを30nm
超、及び、2nm未満としたこと以外は実施例1と同様
にして、交互積層型薄膜を形成した。X線回折パターン
は高配向性の薄膜となっていることを示しており、ファ
ンデアパウ法による測定の結果、各層の厚みが30nm
超の場合にあっては、移動度60cm2/Vs、キャリ
ア密度1×1020/cm3、導電率960S/cmの特
性が得られた。各層の厚みが2nm未満の場合にあって
は、移動度35cm2/Vs、キャリア密度4×1021
/cm3、導電率2240S/cmの特性が得られた。
ZnOからなるキャリア生成層と、ドーパントとしてア
ルミニウムを添加したZnOからなるキャリア移動層
と、を交互に積層して、交互積層型薄膜を形成した。X
線回折パターンは高配向性の薄膜となっていることを示
しており、ファンデアパウ法による測定の結果、移動度
60cm2/Vs、キャリア密度9×1020/cm3、導
電率860S/cmの特性が得られた。交互積層透明導
電性薄膜の表面の表面粗さは自乗平均平方根粗さRms
で3nmであった。
SnO2からなるキャリア生成層と、ドーパントとして
をSb添加したSnO2からなるキャリア移動層と、を
交互に積層して、交互積層型薄膜を形成した。X線回折
パターンは高配向性の薄膜となっていることを示してお
り、ファンデアパウ法による測定の結果、移動度50c
m2/Vs、キャリア密度2×1021/cm3、導電率1
600S/cmの特性が得られた。交互積層透明導電性
薄膜の表面粗さは自乗平均平方根粗さRmsで4nmで
あった。
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
アブレーションによる成膜条件、膜の種類や組合せ、交
互積層数、基板の種類等は、上記実施例に限定されず、
適宜変更して実施できる。また、得られた透明電極はエ
ッチングなどによって任意のパターニングを施こすこと
ができる。
リア生成層を交互に積層してなる透明導電性薄膜であっ
て、充分に結晶性が高く、移動度が高く、キャリア濃度
が高い透明導電性薄膜が得られる。本発明の超高導電性
透明導電性薄膜は、液晶ディスプレイの大型化や高精細
化に寄与するばかりでなく、太陽電池の高効率化にも寄
与し、社会の情報化と省エネルギー化を進める上で重要
な技術を提供する。
Claims (7)
- 【請求項1】 キャリア生成層とキャリア移動層とを交
互に積層してなる薄膜であって、それぞれの層の界面に
おける表面粗さが自乗平均平方根粗さRmsで10nm
以下であることを特徴とする透明導電性薄膜。 - 【請求項2】 キャリア生成層とキャリア移動層とを交
互に積層してなる薄膜であって、それぞれの層の界面に
おける表面粗さが自乗平均平方根粗さRmsで3nm以
下であることを特徴とする透明導電性薄膜。 - 【請求項3】 それぞれの層の厚みが30nm以下であ
り、かつ、2nm以上であることを特徴とする請求項1
又は2記載の透明導電性薄膜。 - 【請求項4】 請求項1乃至3の透明導電性薄膜におい
て、キャリア生成層がIn2O3、ZnO及びSnO2の
うちの一つであり、キャリア移動層がドーパントを添加
した、In2O3、ZnO及びSnO2のうちの一つであ
ることを特徴とする透明導電性薄膜。 - 【請求項5】 パルスレーザー蒸着法を用い、基板上
に、In2O3、ZnO又はSnO2からなるキャリア生
成層と、ドーパントを添加した、In2O3、ZnO又は
SnO2からなるキャリア移動層と、を交互に積層する
ことを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。 - 【請求項6】 前記基板が、YSZ単結晶基板であるこ
とを特徴とする請求項5記載の透明導電性薄膜の製造方
法。 - 【請求項7】 キャリア生成層とキャリア移動層とを、
一原子層毎に原子層成長モードで交互に積層することを
特徴とする請求項5又は6記載の透明導電性薄膜の製造
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09023399A JP4397451B2 (ja) | 1999-03-30 | 1999-03-30 | 透明導電性薄膜及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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