JP2000277115A - リチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池

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正 寺西
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中島  宏
Hiroshi Watanabe
浩志 渡辺
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 正極1と負極7と非水電解質を備えるリチウ
ム二次電池において、充放電サイクル特性を向上させ
る。 【解決手段】 組成がMX Ti1-X Y (式中、MはC
u、Zn、Cr、Mn、Co及びNiの少なくとも1種
であり、X及びYはそれぞれ0<X≦0.18及び1.
65≦Y≦2.25を満足する値である)で示される複
合硫化物またはこれにLiを含有させた複合硫化物を正
極1または負極7の活物質として用いることを特徴とし
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム二次電池
に関するものであり、より詳細には、正極または負極に
用いられる活物質材料が改良されたリチウム二次電池に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、リチウム二次電池の開発が盛んに
行われている。リチウム二次電池は、用いられる電極活
物質により、充放電電圧、充放電サイクル寿命特性、保
存特性などの電池特性が大きく左右されることが知られ
ている。例えば、TiS2 等の硫化物系の正極活物質を
用いると、該活物質中にはフリーの硫黄が存在するた
め、それが負極と反応し、電池電圧の低下を引き起こす
ことが知られている。これを改善する方法として、特開
昭60−175371号公報では、硫黄と反応し易い銅
などの金属粉末を正極に添加する方法が提案されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、TiS
2 を正極活物質として用いると、充放電サイクル特性が
悪くなるという問題があった(Lawrence P.Klemann, J.
Electrochem. soc, 128,No.1 (1981) 13-18)。
【0004】本発明の目的は、上記の問題を解消するこ
とにあり、充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電
池を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のリチウム二次電
池は、正極と負極と非水電解質を備えるリチウム二次電
池であり、組成がMX Ti1-X Y (式中、MはCu、
Zn、Cr、Mn、Co及びNiの少なくとも1種であ
り、X及びYはそれぞれ0<X≦0.18及び1.65
≦Y≦2.25を満足する値である。)で示される複合
硫化物またはこれにLiを含有させた複合硫化物を正極
または負極の活物質として用いることを特徴としてい
る。
【0006】本発明によれば、チタン硫化物の結晶格子
中に、金属元素M(Cu、Zn、Cr、Mn、Co及び
Niの少なくとも1種)が含有されることにより、活物
質の結晶構造が安定化される。このため、これを正極ま
たは負極の活物質として用いた場合、リチウム二次電池
の充放電サイクル特性を向上させることができる。
【0007】本発明において用いている金属元素Mは、
いずれもSと安定な化合物を形成することが知られてお
り、その分解温度は1000℃以上であることが知られ
ている(例えば、Binary Alloy Phase Diagrams, (198
6), American Society for MetalsのM−S二元状態図
を参照)。従って、これらの金属元素MはSとの間に比
較的強い化学結合力が働き、TiS2 相の結晶格子の一
部を占有し、その結晶構造を安定にする。従って、Sと
化合物を形成する他の元素、例えば、Cd、In、L
a、Ce、Sm、W及びPtなどについても、本発明と
同様にチタン硫化物中に固溶させることにより、充放電
サイクル寿命特性を向上させる効果が期待できる。
【0008】本発明においては、上記複合硫化物中の組
成における金属元素Mの組成比Xを0.18以下に限定
している。これは、金属元素Mがこれ以上に含有される
と、金属元素Mを主体とする単体相もしくは硫化物相の
析出によりサイクル寿命特性向上の効果が低下するおそ
れがあるからである。
【0009】本発明において、正極または負極の活物質
として用いられる上記複合硫化物は、TiS2 と類似の
層状の結晶構造を有するものである。このような結晶構
造は、X線回折(XRD)により確認することができ
る。
【0010】本発明のリチウム二次電池の電解質の溶媒
としては、リチウム二次電池の非水電解質の溶媒として
一般的に用いられてるものを用いることができ、具体的
には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネー
ト、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネートとジ
メチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエ
チルカーボネートなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒
が例示される。また、上記環状カーボネートと1,2−
ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエ
ーテル系溶媒との混合溶媒も例示される。また、溶質と
しては、LiPF 6 、LiBF4 、LiCF3 SO3
LiN(CF3 SO2 2 、LiN(C25 SO2
2 、LiN(CF3 SO2 )(C4 9 SO2 )、Li
C(CF3SO2 3 、LiC(C2 5 SO2 3
どまたはそれらの混合物が例示される。さらに、電解質
として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル
などのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマ
ー電解質やLiI、Li3 Nなどの無機固体電解質が例
示される。
【0011】本発明において用いる非水電解質は、イオ
ン導電性を発現させる溶質としてのLi化合物を含み、
溶質を溶解・保持する溶媒が電池の充電時や放電時また
は保存時において電圧によって分解しない限り、制約な
く用いることができる。
【0012】本発明において、上記チタン複合硫化物を
正極活物質として用いる場合、負極活物質としては、L
iを電気化学的に吸蔵・放出できる黒鉛(天然黒鉛、人
造黒鉛)、コークス、有機物焼成体などの炭素材料や、
Li−Al合金、Li−Mg合金、Li−In合金、L
i−Al−Mn合金などのLi合金及びLi金属などを
用いることができる。この場合、その充電電圧は約2.
8Vとなり、放電電圧は約1.8Vとなる。上記負極活
物質の中でも、炭素材料を負極活物質として用いた場合
に、サイクル寿命特性の向上においてより大きな効果を
得ることができる。これは、炭素材料を用いた場合、L
i合金及びLi金属のように内部短絡の原因となる充放
電に伴う樹枝状のデンドライト結晶成長が生じないこ
と、及び電解液に微量に溶解したイオウが負極のLi金
属またはLi合金中のLiと反応して、不活性化の原因
となるLi−S2 二元合金状態図に示されるLiS
2 (例えば、Binary Alloy Phase Diagrams, Vol.2, p1
500 (1986), American Society for Metals を参照)の
ような化合物を負極の表面に形成するおそれがないこと
による。
【0013】本発明において、上記チタン複合硫化物を
負極活物質として用いる場合、正極活物質としては、例
えば、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMn2 4
LiMnO2 、Li含有MnO2 、LiCo0.5 Ni
0.5 2 、LiNi0.7 Co0. 2 Mn0.1 2 、LiC
0.9 Ti0.1 2 、LiCo0.5 Ni0.4 Zr0.1
2 などのLi含有遷移金属複合酸化物を用いることがで
きる。この場合、充電電圧は約2.3Vとなり、放電電
圧は約1.3Vとなる。なお、これらの電池は、電池組
み立て時に放電状態にあり、初回、電池を充電すること
により、すなわち正極活物質中のLiを負極活物質中に
移動させることにより放電可能な状態となるものであ
る。このようにチタン複合硫化物を負極活物質として用
いることにより、充放電サイクル寿命特性の向上におい
て、さらに大きな効果を得ることができる。これは、充
電電圧が低いため電解質の分解が抑制されるからであ
る。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて
さらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら
限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲に
おいて適宜変更して実施することが可能なものである。
【0015】(実施例1)まず、正極に本発明における
活物質材料であるM0.1 Ti0.9 2 (MはCu、Z
n、Cr、Mn、Co及びNi)を用い、負極活物質と
して天然黒鉛を用いた扁平円盤型の電池を作製し、その
充放電サイクル寿命を測定した。ここでは、複合化する
金属元素Mを変えて充放電サイクル寿命への影響を検討
した。
【0016】〔正極の作製〕出発原料として純度99.
9%のCu、Ti、及びSの各試薬を、Cu:Ti:S
の原子比が0.1:0.9:2になるように秤量後、乳
鉢で混合して直径17mmの金型を用い115kg/c
2 でプレス加圧成形した後、アルゴンガス雰囲気下に
おいて300℃で36時間焼成し、さらに600℃で4
8時間焼成し、Cu0.1 Ti0.9 2 の焼成体を得た。
これを乳鉢で平均粒径10μmまで粉砕した。
【0017】このCu0.1 Ti0.9 2 の粉末を85重
量部、導電剤としての炭素粉末を10重量部、結着剤と
してのポリフッ化ビニリデン粉末を5重量部となるよう
混合し、これをN−メチルピロリドン(NMP)溶液と
混合してスラリーを調製した。
【0018】このスラリーを厚さ20μmのアルミニウ
ム製の集電体の片面にドクターブレード法により塗布し
て活物質層を形成した後、150℃で乾燥して打ち抜
き、直径が10mm、厚みが約100μmの円盤状の正
極を作製した。
【0019】〔正極へのLiの挿入〕エチレンカーボネ
ートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、L
iPF6 を1mol/リットル溶解した電解液を準備
し、この電解液中に、得られた正極とLi金属とをポリ
プロピレン製微多孔膜を介した状態で浸漬し、100μ
Aの定電流で1.5V vs.Li/Li+ まで電解し
て、正極にLiを挿入した。このLiを挿入した電極を
以下の電池作製に供した。
【0020】〔負極の作製〕天然黒鉛粉末95重量部
と、ポリフッ化ビニリデン粉末5重量部を混合し、これ
をNMP溶液に添加してスラリーを調製した。このスラ
リーを、厚さ20μmの銅製の集電体の片面にドクター
ブレード法により塗布して、活物質層を形成した後、1
50℃で乾燥して打ち抜き、直径が10mm、厚みが約
60μmの円盤状の負極を作製した。得られた負極を、
以下の電池の作製に供した。
【0021】〔電解液の作製〕エチレンカーボネートと
ジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、LiPF
6 を1mol/リットル溶解して電解液とし、これを以
下の電池の作製に供した。
【0022】〔電池の作製〕上記の正極、負極及び電解
液を用いて、図1に示す実施例1の扁平型リチウム二次
電池A1を作製した。図1は、本実施例のリチウム二次
電池の構造を示す断面図である。図1に示すように、正
極1と負極7は、セパレータ8を介して対向している。
セパレータ8としては、ポリプロピレン製微多孔膜を用
いた。正極1、負極7及びセパレータ8は、正極缶3及
び負極缶5から形成される電池ケース内に収納されてい
る。正極1は正極集電体2を介して正極缶3に接続され
ており、負極7は負極集電体6を介して負極缶5に接続
されている。正極缶3と負極缶5は、外周部においてポ
リプロピレン製の絶縁パッキング4により絶縁されてい
る。以上のようにして、二次電池として充電及び放電が
可能な構造となっている。
【0023】さらに、充放電サイクル寿命への金属元素
Mの影響を検討するため、〔正極の作製〕における出発
原料としてCuに代えて、Zn、Cr、Mn、Co及び
Niを用い、それ以外は上記と同様にして、実施例1に
係る電池A2、A3、A4、A5、及びA6を作製し
た。
【0024】(比較例1)正極活物質としてTiS2
用いる以外は、上記実施例1と同様にして比較例1に係
る扁平円盤型電池B1を作製した。
【0025】さらに、TiS2 100重量部に対し平均
粒径5μmの銅粉5重量部を混合したもの(特開昭和6
0−175371号公報で開示されている活物質)を正
極活物質に用いる以外は、上記実施例1と同様にして比
較例1に係る扁平円盤型電池B2を作製した。
【0026】〔充放電サイクル寿命特性の測定〕各電池
を、25℃において、電流値100μAで2.6Vまで
充電した後、電流値100μAで1.5Vまで放電し、
これを1サイクルの充放電とした。各電池の1サイクル
目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比を
容量維持率とした。結果を表1に示す。
【0027】なお、実施例1に係る電池A1〜A6の放
電電圧は平均で約1.8Vであり、初期容量は2.4〜
2.6mAhであった。また、比較例1の電池B1及び
電池B2の放電電圧は1.8Vであり、初期容量は2.
0〜2.2mAhであった。
【0028】
【表1】
【0029】表1から明らかなように、本発明に従う電
池A1〜A6は、容量維持率において比較例の電池B1
及びB2よりも高い値を示している。従って、充放電サ
イクル寿命特性において優れていることがわかる。
【0030】(実施例2)正極活物質として、Cu0.1
Ti0.9 2 を用い、負極活物質としてLi金属及びL
i−Al合金(Li20.6重量部、Al79.4重量
部)を用い、実施例2に係る扁平円盤型電池A7及びA
8を作製し、その充放電サイクル寿命を測定した。
【0031】実施例1と同様にして、〔正極の作製〕、
〔電解液の作製〕及び〔電池の作製〕を行ったが、〔正
極へのLiの挿入〕は行っていない。また、負極の作製
及び充放電サイクル寿命特性の測定は以下のようにして
行った。
【0032】〔負極の作製〕Li金属及びLi−Al合
金のシートをアルゴン雰囲気中でそれぞれ直径10m
m、厚み1.0mmに打ち抜き加工して円盤状の負極を
作製し、これを電池の作製に供した。
【0033】(比較例2)正極活物質としてTiS2
00重量部に対し平均粒径5μmの銅粉5重量部を混合
したもの(特開昭和60−175371号公報で開示さ
れている活物質)を用いる以外は、上記実施例2と同様
にして比較例2に係る扁平円盤型電池B3及びB4を作
製した。
【0034】〔充放電サイクル寿命特性の測定〕各電池
を、25℃において、電流値100μAで1.5Vまで
放電した。その後、電流値100μAで2.8Vまで充
電した後、電流値100μAで1.5Vまで放電し、こ
れを1サイクル目とした。
【0035】以降、電流値100μAで2.8Vまで充
電した後、電流値100μAで1.5Vまで放電し、こ
れを1サイクルの充放電とした。各電池の1サイクル目
の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の比を容
量維持率とした。結果を表2に示す。
【0036】なお、電池A7の放電電圧は1.8V、電
池A8の放電電圧は1.4Vであった。また、初期容量
は、電池A7及びA8ともに2.4mAhであった。比
較例の電池B3及びB4の放電電圧は、ともに1.8V
であり、初期容量はともに2.0〜2.2mAhであっ
た。
【0037】
【表2】
【0038】表2の結果から明らかなように、本発明に
従う電池A7及びA8は、比較例の電池B3及びB4に
比べ、高い容量維持率を示しており、優れた充放電サイ
クル寿命特性を有することが確認された。
【0039】また、表1の結果と比較すると、負極活物
質として黒鉛を用いた場合の方が容量維持率が大きくな
っていることがわかる。これは、炭素材料を負極活物質
とした場合、Li合金及びLi金属のように内部短絡の
原因となる充放電に伴う樹枝状のデンドライト結晶成長
が生じないことに加えて、電解液に微量に溶解したSが
負極のLi金属もしくはLi合金中のLiと反応して、
不活性化の原因となるLiS2 のような化合物を負極表
面に形成しなかったためと考えられる。
【0040】(実施例3)負極活物質として、Cu0.1
Ti0.9 2 を用い、正極活物質として、Li含有遷移
金属化合物であるLiCoO2 、LiNiO2 及びLi
Mn2 4 (例えば、T.Ohzuku, A.Ueda, Solid State
Ionics, 69, p201 (1994) を参照)を用い、実施例3に
係る扁平円盤型電池A9、A10及びA11を作製し、
その充放電サイクル寿命を測定した。
【0041】負極の作製については、実施例1の〔正極
の作製〕において、集電体の材質を銅に代える以外は同
様にして、Cu0.1 Ti0.9 2 を負極活物質とした負
極を作製した。〔電解液の作製〕及び〔電池の作製〕は
実施例1と同様であるが、ここでは、〔正極へのLiの
挿入〕は行っていない。また、正極の作製及び充放電サ
イクル寿命特性の測定は以下のように行った。
【0042】〔正極の作製〕出発原料としてLi2 CO
3 及びCoCO3 を用いてLi、Coの原子比が1:1
になるように秤量して乳鉢で混合し、空気中において8
00℃で24時間焼成し、LiCoO2 の焼成体を得
た。これを乳鉢で平均粒径10μmまで粉砕し正極活物
質試料とした。
【0043】このLiCoO2 粉末85重量部、導電剤
としての炭素粉末10重量部、結着剤としてのポリフッ
化ビニリデン粉末5重量部を混合し、これをN−メチル
ピロリドン(NMP)溶液と混合してスラリーを調製し
た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム製の集
電体の片面にドクターブレード法により塗布して活物質
層を形成した後、150℃で乾燥して打ち抜き、厚みが
約80μmの円盤状の正極を作製した。
【0044】LiNiO2 については、出発原料とし
て、LiNO3 及びNiOを用いてLi、Niの原子比
が1:1となるように秤量して乳鉢で混合し、酸素雰囲
気下において700℃で48時間焼成してLiNiO2
の焼成体を得、これを上記と同様に粉砕し、上記と同様
にスラリーを調製して、これを活物質とする正極を作製
した。
【0045】LiMn2 4 については、出発原料とし
て、LiOH・H2 O及びMnO2を用いて、Li、M
nの原子比が1:2となるように秤量して乳鉢で混合
し、これを空気中において650℃で48時間焼成して
LiMn2 4 の焼成体を得、上記と同様に粉砕し、こ
れを用いて上記と同様にスラリーを調製して、これを活
物質とする正極を作製した。
【0046】〔充放電サイクル寿命特性の測定〕各電池
を、25℃において、電流値100μAで2.8Vまで
充電した。その後、電流値100μAで0.5Vまで放
電し、これを1サイクル目とした。以降、電流値100
μAで2.0Vまで充電した後、電流値100μAで
0.5Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とし
た。各電池の1サイクル目の放電容量に対する50サイ
クル目の放電容量の比を容量維持率とした。結果を表3
に示す。
【0047】なお、電池A9、A10及びA11の放電
電圧は平均で1.2〜1.4Vであり、初期容量は2.
4mAhであった。
【0048】
【表3】
【0049】表3から明らかなように、負極活物質とし
て本発明のチタン複合硫化物を用い、正極にLi含有遷
移金属複合酸化物を用いた場合、その容量維持率は、9
0〜96%であり、優れた充放電サイクル寿命特性を示
すことが確認された。
【0050】(実施例4及び比較例3)正極活物質とし
て本発明の複合硫化物であるCuX Ti1-X 2 を用
い、負極活物質として天然黒鉛を用いた扁平円盤型電池
において、複合化する金属元素Cuの組成比Xを変えて
充放電サイクル寿命に与える影響を検討した。Cu:T
iの原子比を変える以外は、実施例1と同様にして、活
物質としてのCu0.01Ti 0.992 ,Cu0.02Ti0.98
2 ,Cu0.04Ti0.962 ,Cu0.08Ti0.92 2
Cu0.12Ti0.882 ,Cu0.17Ti0.832 、及びC
0.18Ti0.822を作製した。これらをそれぞれ正極
活物質とし、天然黒鉛を負極活物質とした実施例4に係
る扁平円盤型電池A12、A13、A14、A15、A
16、A17及びA18を作製した。また、Cu:Ti
の原子比を変えてCu0.19Ti0.81 2 及びCu0.2
0.8 2 を作製し、これらを正極活物質として用いた
比較例3に係る扁平円盤型電池B5及びB6を作製し
た。
【0051】これらの電池の容量維持率を実施例1と同
様にして測定した。結果を図2に示す。なお、各電池の
放電電圧は平均で1.8Vであり、初期容量は2.2〜
2.6mAhであった。
【0052】図2に示すように、Cuの組成比Xが0.
18以下の場合に、高い容量維持率が得られている。こ
れは、組成比Xが0.18以下であれば、Cuの単体相
もしくはCuの硫化物相が析出することなく、結晶格子
中に金属元素Cuが含有され、結晶構造の安定化の効果
が得られたためと考えられる。特にCuの組成比Xが
0.01≦X≦0.18の範囲にあるときは、容量維持
率が82〜90%の範囲内であり優れたサイクル寿命特
性を示している。
【0053】(実施例5及び比較例4)本発明の複合硫
化物であるCu0.1 Ti0.9 Y を正極活物質として用
い、負極活物質として天然黒鉛を用いた扁平円盤型電池
において、Sの組成比Yを変えて充放電サイクル寿命へ
の影響を検討した。添加するSの原子比を変える以外
は、実施例1と同様にして、活物質としてのCu0.1
0.9 1.65、Cu0.1 Ti0.9 1.7 ,Cu0.1 Ti
0.9 1.8 ,Cu0.1 Ti0.9 2.2 及びCu0.1Ti
0.9 2.25を作製した。これらをそれぞれ正極活物質と
し、天然黒鉛を負極活物質とした実施例5に係る扁平円
盤型電池A19、A20、A21、A22及びA23を
作製した。また、Cu0.1 Ti0.9 1.5 ,Cu0.1
0.9 1.6,Cu0.1 Ti0.9 2.3 及びCu0.1
0.9 2.4 を作製し、これらを正極活物質として用い
た比較例4に係る扁平円盤型電池B7、B8、B9及び
B10を作製した。
【0054】これらの電池の容量維持率を実施例1と同
様にして測定した。結果を図3に示す。なお、各電池の
放電電圧は平均で1.8Vであり、初期容量は2.2〜
2.7mAhであった。
【0055】図3から明らかなように、Sの組成比(量
論比)Yが1.65≦Y≦2.25の範囲内にあるとき
に、高い容量維持率が得られており、優れたサイクル寿
命特性を示している。特に、Sの組成比Yが1.7≦Y
≦2.2の範囲内のとき、87〜90%の良好な容量維
持率を示している。
【0056】Sの組成比Yが1.65≦Y≦2.25の
範囲にあれば、Liイオンと化学的に電気化学反応し活
物質として機能するTiS2 相が、Ti−S二元状態図
に示されるように安定して存在し、TiやSあるいはC
u単体が析出することなく、TiS2 相の結晶格子中に
Cuが含有され、高い結晶構造の安定化効果が得られて
いると考えられる。
【0057】
【発明の効果】本発明のリチウム二次電池においては、
正極または負極の活物質として、MXTi1-X Y で表
される複合硫化物もしくはこれにLiを含有させた複合
硫化物を用いている。このような活物質を用いることに
より、充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池と
することができる。従って、このようなリチウム二次電
池を用いることにより、これを駆動源とする機器の信頼
性を高めることができる。
【0058】本発明の電極活物質材料を、リチウム二次
電池用の活物質として用いることにより、充放電サイク
ル特性に優れたリチウム二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う一実施例の扁平型リチウム二次電
池の構造を示す断面図。
【図2】CuX Ti1-X 2 におけるCuの組成比Xと
これを活物質として用いた電池における容量維持率との
関係を示す図。
【図3】Cu0.1 Ti0.9 Y におけるSの組成比(量
論比)Yとこれを活物質として用いた電池における容量
維持率との関係を示す図。
【符号の説明】
1…正極 2…正極集電体 3…正極缶 4…絶縁パッキング 5…負極缶 6…負極集電体 7…負極 8…セパレータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 浩志 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 (72)発明者 藤谷 伸 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 Fターム(参考) 5H003 AA04 BB02 BB05 BB06 BD03 5H014 AA02 EE08 EE10 HH01 5H029 AJ05 AK03 AK05 AL04 AL06 AL07 AL12 AM00 AM01 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 AM16 BJ03 HJ02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極と負極と非水電解質を備えるリチウ
    ム二次電池において、組成がMX Ti1-X Y (式中、
    MはCu、Zn、Cr、Mn、Co及びNiの少なくと
    も1種であり、X及びYはそれぞれ0<X≦0.18及
    び1.65≦Y≦2.25を満足する値である。)で示
    される複合硫化物またはこれにLiを含有させた複合硫
    化物を正極または負極の活物質として用いることを特徴
    とするリチウム二次電池。
  2. 【請求項2】 上記組成式におけるXが0.01≦X≦
    0.18を満足する値であることを特徴とする請求項1
    に記載のリチウム二次電池。
  3. 【請求項3】 正極活物質が請求項1または2に記載さ
    れた複合硫化物であり、負極活物質が炭素材料もしくは
    炭素材料にLiを含有させたものであることを特徴とす
    る請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
  4. 【請求項4】 正極活物質がLi含有遷移金属酸化物で
    あり、負極活物質が請求項1に記載の複合硫化物である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二
    次電池。
  5. 【請求項5】 リチウム二次電池用電極活物質材料であ
    って、組成がMX Ti1-X Y (式中、MはCu、Z
    n、Cr、Mn、Co及びNiの少なくとも1種であ
    り、X及びYはそれぞれ0<X≦0.18及び1.65
    ≦Y≦2.25を満足する値である。)で示される複合
    硫化物またはこれにLiを含有させた複合硫化物である
    ことを特徴とするリチウム二次電池用電極活物質材料。
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