JP3619701B2 - リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に係わり、詳しくは、充放電サイクル特性が良いリチウム二次電池を提供することを目的とした、正極活物質の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
Nb2 O5 (五酸化二ニオブ)が、リチウム二次電池の正極活物質として、提案されている(特開昭59−90359号公報参照)。
【0003】
Nb2 O5 は、斜方晶系に属し、酸化ニオブの中では最も安定な酸化物であるが、Nb2 O5 を正極活物質とするリチウム二次電池の充放電サイクル特性は良くない。充放電時の膨張・収縮の繰り返しにより、Nb2 O5 の結晶構造が短サイクル裡に劣化するからである。
【0004】
したがって、本発明は、Nb2 O5 を正極活物質とするリチウム二次電池に比べて充放電サイクル特性が良いリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリチウム二次電池(本発明電池)は、正極と、負極と、非水電解質とを備え、前記正極が、組成式:Mx Nb2−x Oy (MはV、Cr、Mo、W、Mn及びFeよりなる群から選ばれた少なくとも一種の遷移元素;0<x≦0.6;4.7≦y≦5.3)で表される斜方晶系の複合酸化物又は当該複合酸化物にリチウムを含有せしめてなる斜方晶系のリチウム含有複合酸化物を活物質として有する。
【0006】
上記複合酸化物は、Nb2 O5 相の結晶格子中のNbの一部が特定の遷移元素Mで置換された結晶構造を有しており、Nb2 O5 に比べて、充放電サイクルにおいて結晶構造が劣化しにくい。結晶格子中のMとO(酸素)との化学結合がNbとOとの化学結合に比べて強いためと考えられる。
【0007】
組成式中のxが0.6以下に限定されるのは、xが0.6を越えると、複合酸化物が、不安定な遷移元素Mの酸化物相を含有するようになり、充放電サイクル特性が低下するからである。充放電サイクル特性が極めて良いリチウム二次電池を得るためには、組成式中のxが0.02〜0.3の複合酸化物を使用することが好ましい。組成式中のyが4.7〜5.3に限定されるのは、遷移元素Mの種類、並びに、複合酸化物を合成する際の焼成温度及び焼成雰囲気によりyは変動するものの、上記の範囲を外れることはないからである。なお、yに依る複合酸化物の安定性(充放電サイクル特性)の変動は極めて小さい。
【0008】
本発明電池の具体例としては、上記の複合酸化物又はリチウム含有複合酸化物を正極活物質として有し、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵及び放出することが可能な物質又はリチウム金属を負極材料として有するリチウム二次電池(充電電圧:約3.0V、放電電圧:約1.6V)が挙げられる。リチウムイオンを電気化学的に吸蔵及び放出することが可能な物質としては、黒鉛、コークス、有機物焼成体等の炭素材料、及び、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金等のリチウム合金が例示される。充放電サイクル特性が良いリチウム二次電池を得る上で、デンドライト(樹枝状の電析リチウム)がセパレータを貫通することにより生じる内部短絡の虞れが無い炭素材料を負極材料として使用することが好ましい。リチウム含有複合酸化物を正極活物質として使用する場合は、リチウム含有炭素材料又はリチウム非含有炭素材料を負極材料として使用し、一方リチウムを含有しない複合酸化物を正極活物質として使用する場合は、リチウム含有炭素材料を負極材料として使用する。
【0009】
非水電解質は、溶媒及び溶質が充放電時及び保存時の電圧で分解しない限り、特に限定されない。非水電解質の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステルと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルとの混合溶媒、及び、環状炭酸エステルと、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒との混合溶媒が例示される。非水電解質の溶質としては、LiPF6 、LiBF4 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 、LiN(C2 F5 SO2 )2 、LiN(CF3 SO2 )(C4 F9 SO2 )、LiC(CF3 SO2 )3 及びLiC(C2 F5 SO2 )3 が例示される。これらのリチウム塩は、一種単独を使用してもよく、必要に応じて、2種以上を併用してもよい。非水電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル等の高分子に非水電解液を含浸せしめてなるゲル状電解質、又は、LiI、Li3 N等の無機固体電解質を使用してもよい。
【0010】
本発明電池は、Nb2 O5 に比べて結晶構造が安定な特定の複合酸化物又はリチウム含有複合酸化物を正極活物質として有するので、Nb2 O5 を正極活物質とするリチウム二次電池に比べて充放電サイクル特性が良い。
【0011】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能なものである。
【0012】
(実験1)
本発明電池及び比較電池を作製し、充放電サイクル特性を比較した。
【0013】
(実施例1〜6)
〔正極の作製〕
バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)又は鉄(Fe)(いずれも純度99.9%)と、ニオブ(Nb)(純度99.9%)とを原子比0.2:1.8で秤取し、乳鉢にて混合し、直径17mmの円盤金型にて成型圧115kg/cm2 で加圧成型した後、酸素雰囲気下にて1000°Cで10時間焼成し、乳鉢にて粉砕して、それぞれ組成式:V0.2 Nb1.8 O5 、Cr0.2 Nb1.8 O5 、Mo0.2 Nb1.8 O5 、W0.2 Nb1.8 O5 、Mn0.2 Nb1.8 O5 及びFe0.2 Nb1.8 O5 で表される平均粒径10μmの複合酸化物粉末を作製した。
【0014】
正極活物質としての上記の各複合酸化物粉末と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末とを、重量比85:10:5で混合し、得られた混合物とNMP(N−メチルピロリドン)とを混合して、スラリーを調製し、このスラリーを厚み20μmのアルミニウム製の集電体の片面にドクターブレード法により塗布し、150°Cで乾燥した後、打ち抜いて、直径10mm、厚み約80μmの円盤状の正極を作製した。
【0015】
上記の各正極と、対極としての円盤状のリチウム金属とを、セパレータ(イオン透過性のポリプロピレンフィルム)を間に介して積層して電極体を作製し、この電極体を、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒にLiPF6 を1モル/リットル溶かした非水電解液に浸漬し、100μAで1.0V(vs.Li/Li+ )まで電解して、各正極の複合酸化物にリチウムを含有せしめた。
【0016】
〔負極の作製〕
天然黒鉛粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末とを、重量比95:5で混合し、得られた混合粉末とNMP(N−メチルピロリドン)とを混合して、スラリーを調製し、このスラリーを厚み20μmの銅製の集電体の片面にドクターブレード法により塗布し、150°Cで乾燥した後、打ち抜いて、直径10mm、厚み約60μmの円盤状の負極を作製した。
【0017】
〔非水電解質の調製〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒にLiPF6 を1モル/リットル溶かして、非水電解質を調製した。
【0018】
〔リチウム二次電池の作製〕
上記の各正極、負極及び非水電解質を使用して、扁平形のリチウム二次電池A1〜A6(本発明電池)を作製した。セパレータには、イオン透過性のポリプロピレンフィルムを使用した。図1は、作製したリチウム二次電池の断面図であり、図示のリチウム二次電池Aは、正極1、負極2、これらを離間するセパレータ3、正極缶4、負極缶5、正極集電体6、負極集電体7、ポリプロピレン製の絶縁パッキング8などからなる。正極1及び負極2は、非水電解質を含浸したセパレータ3を介して対向して正極缶4及び負極缶5が形成する電池缶内に収容されており、正極1は正極集電体6を介して正極缶4に、負極2は負極集電体7を介して負極缶5に、それぞれ接続され、電池缶内に生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部へ取り出し得るようになっている。
【0019】
(実施例7及び8)
実施例1における正極の作製方法と同様にして、正極を作製した。但し、正極の複合酸化物(V0.2 Nb1.8 O5 )にリチウムを含有せしめる操作である電解は行わなかった。また、リチウム圧延シート及びリチウム−アルミニウム合金シート(リチウム含有率:20.6重量%)を打ち抜いて、直径10mm、厚み1.0mmの2種の円盤状の負極を作製した。正極及び負極として、それぞれ上記の正極及び各負極を使用したこと以外は実施例1と同様にして、本発明電池A7及びA8を作製した。
【0020】
(比較例1)
正極活物質としてのNb2 O5 粉末と、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末とを、重量比85:10:5で混合し、得られた混合粉末とNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とを混合して、スラリーを調製し、このスラリーを厚み20μmのアルミニウム製の集電体の片面にドクターブレード法により塗布し、150°Cで乾燥した後、打ち抜いて、直径10mm、厚み約80μmの円盤状の正極を作製した。次いで、実施例1〜6で行ったものと同じ条件の電解を行って、Nb2 O5 にリチウムを含有せしめた。正極として、上記の正極を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較電池B1を作製した。
【0021】
〈各電池の充放電サイクル特性〉
本発明電池A1〜A6及び比較電池B1については、100μAで3.0Vまで充電した後、100μAで1.0Vまで放電する充放電を50サイクル行い、各電池の50サイクル目の容量維持率を下式より求めた。また、本発明電池A7及びA8については、100μAで1.0Vまで放電し、次いで、100μAで3.0Vまで充電した後、100μAで1.0Vまで放電する充放電を50サイクル行い、各電池の50サイクル目の容量維持率を下式より求めた。充放電サイクル試験は全て室温(25°C)で行った。各電池の、初期容量(1サイクル目の放電容量)及び容量維持率を表1に示す。
【0022】
容量維持率(%)=(50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0023】
【表1】
【0024】
表1より、本発明電池A1〜A8は、比較電池B1に比べて、容量維持率が大きく、充放電サイクル特性が良いことが分かる。また、本発明電池A1と本発明電池A7及びA8との容量維持率の比較から、充放電サイクル特性の良いリチウム二次電池を得る上で、負極材料として、充放電を繰り返してもデンドライトが生成する虞れが無い黒鉛(炭素材料)を使用することが好ましいことが分かる。
【0025】
(実験2)
組成式:Mx Nb2−x O5 中のxと充放電サイクル特性の関係を調べた。
【0026】
バナジウム(V)(純度99.9%)と、ニオブ(Nb)(純度99.9%)とを、原子比0.02:1.98、0.1:1.9、0.3:1.7、0.4:1.6、0.5:1.5、0.6:1.4又は0.63:1.37で秤取し、乳鉢にて混合し、直径17mmの円盤金型にて成型圧115kg/cm2 で加圧成型した後、酸素雰囲気下にて1000°Cで10時間焼成し、乳鉢にて粉砕して、それぞれ組成式:V0.02Nb1.98O5 、V0.1 Nb1.9 O5 、V0.3 Nb1.7 O5 、V0.4 Nb1.6 O5 、V0.5 Nb1.5 O5 、V0.6 Nb1.4 O5 及びV0.63Nb1.37O5 で表される平均粒径10μmの複合酸化物粉末を作製した。正極の作製において、組成式:V0.2 Nb1.8 O5 で表される複合酸化物粉末に代えて、上記の各複合酸化物粉末を使用したこと以外は実施例1と同様にして、順に、電池X1〜X6及び電池B2を作製した。電池X1〜X6は本発明電池であり、電池B2は比較電池である。各電池について、本発明電池A1〜A6及び比較電池B1について実験1で行ったものと同じ条件の充放電サイクル試験を行い、容量維持率を調べた。各電池の初期容量及び容量維持率を、表2に示す。図2は、組成式:Vx Nb2−x O5 中のxと充放電サイクル特性の関係を、縦軸に容量維持率(%)を、横軸に組成式:Vx Nb2−x O5 中のxの値をとって示したグラフである。表2及び図2には、本発明電池A1及び比較電池B1の容量維持率も示してある。
【0027】
【表2】
【0028】
表2及び図2より、xが0より大きく、且つ0.6以下の複合酸化物を使用すれば、充放電サイクル特性は向上するが、充放電サイクル特性を大きく向上させるためには、xが0.02〜0.3の複合酸化物を使用する必要があることが分かる。なお、この実験2では、遷移元素MがVである場合を例にして組成式:Vx Nb2−x O5 中のxと充放電サイクル特性の関係を調べたが、遷移元素Mの種類にかかわらず、充放電サイクル特性を大きく向上させるためには、Mx Nb2−x O5 中のxが0.02〜0.3の複合酸化物を使用する必要があることを確認した。
【0029】
上記の実施例では、本発明を扁平形のリチウム二次電池に適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、電池の形状に制限は無く、円筒形等の種々の形状のリチウム二次電池に適用可能である。
【0030】
【発明の効果】
Nb2 O5 を正極活物質とするリチウム二次電池に比べて充放電サイクル特性の良いリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した扁平形のリチウム二次電池の断面図である。
【図2】組成式:Vx Nb2−x O5 中のxと充放電サイクル特性との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
A リチウム二次電池
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極缶
5 負極缶
6 正極集電体
7 負極集電体
8 絶縁パッキング
Claims (4)
- 正極と、負極と、非水電解質とを備えるリチウム二次電池において、前記正極が、組成式:Mx Nb2−x Oy (MはV、Cr、Mo、W、Mn及びFeよりなる群から選ばれた少なくとも一種の遷移元素;0<x≦0.6;4.7≦y≦5.3)で表される斜方晶系の複合酸化物又は当該複合酸化物にリチウムを含有せしめてなる斜方晶系のリチウム含有複合酸化物を活物質として有することを特徴とするリチウム二次電池。
- 正極と、負極と、非水電解質とを備えるリチウム二次電池において、前記正極が、組成式:Mx Nb2−x Oy (MはV、Cr、Mo、W、Mn及びFeよりなる群から選ばれた少なくとも一種の遷移元素;0<x≦0.6;4.7≦y≦5.3)で表される斜方晶系の複合酸化物にリチウムを含有せしめてなる斜方晶系のリチウム含有複合酸化物を活物質として有し、前記負極が、炭素材料又は炭素材料にリチウムを含有せしめてなるリチウム含有炭素材料をリチウムイオン吸蔵材として有するリチウム二次電池。
- 正極と、負極と、非水電解質とを備えるリチウム二次電池において、前記正極が、組成式:Mx Nb2−x Oy (MはV、Cr、Mo、W、Mn及びFeよりなる群から選ばれた少なくとも一種の遷移元素;0<x≦0.6;4.7≦y≦5.3)で表される斜方晶系の複合酸化物を活物質として有し、前記負極が、炭素材料にリチウムを含有せしめてなるリチウム含有炭素材料をリチウムイオン吸蔵材として有するリチウム二次電池。
- 前記複合酸化物が、組成式:Mx Nb2−x Oy (MはV、Cr、Mo、W、Mn及びFeよりなる群から選ばれた少なくとも一種の遷移元素;0.02≦x≦0.3;4.7≦y≦5.3)で表される請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池。
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