JP2000272265A - 直描型平版印刷版原版およびそれを用いた印刷刷版作製方法 - Google Patents

直描型平版印刷版原版およびそれを用いた印刷刷版作製方法

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真司 清水
Yasuhiko Kojima
靖彦 児島
Koji Oe
紘司 小江
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光超親水化方法により印刷刷版が得られる直
描型平版印刷版原版およびそれを用いた印刷刷版作製方
法を提供する。 【解決手段】 第一の構成は、基体上に一層以上の光触
媒性金属酸化物を含有した画像受理層を設けた直描型平
版印刷版原版、または基体上にシリコーン層と、光触媒
性酸化チタンを含有した画像受理層とを、この順に設け
た直描型平版印刷版原版である。第二の構成は、前記し
た印刷版原版に親油性画像を形成し、日光または紫外線
を照射して非画像部を超親水化して印刷刷版を得る方
法、又は、予め日光または紫外線を照射して画像受理層
を超親水化した直描型平版印刷版原版に、親油性画像を
形成することにより印刷刷版を得る方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽印刷分野で使用
される直描型平版印刷版に関し、特に新規な画像受理層
を持つ平版印刷版原版およびそれを用いた新規な印刷刷
版作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】軽印刷分野で使用される直描型平版印刷
版は、油性のインキと水が反発して互いに混じり合わな
いと言う原理を巧みに応用した平版型の印刷版であっ
て、凸版やグラビアのような版面上に凸凹がない。しか
しその表面には親水性の非画線部と親油性の画線部が存
在しており、版の非画線部に水分を与えた後にインキロ
ーラーを転がしてインキ付けを行うと、非画線部は水と
インキとの反発によりインキを受け付けず、画線部は水
分を反発しインキを良く受け付ける。このようにして画
線部に乗ったインキを紙等の媒体に転写することによっ
て印刷がなされる。
【0003】上記のような目的で使用される従来の直描
型平版印刷版は、耐水性処理を施した紙、プラスチック
フィルムなどからなる支持基体上に、無機顔料、水溶性
樹脂及び耐水化剤などからなる画像受理層を設けた構造
をしている。そして画像受理層上に親油性インキを用い
て、手書き、タイプライターまたはインクジェット方式
によって親油性画像を形成するか、または電子写真感光
体上に形成したトナー画像を画像受理層に転写し、これ
を熱定着することによって親油性画像を形成するか、あ
るいは、熱転写プリンターでインクリボンから画像を熱
溶融転写して親油性画像を形成しインキの受容部とす
る。親油性画像部が形成された直描型平版印刷版は、エ
ッチング液処理により非画像部が不感脂化されて印刷に
際しての親水性部となる。このようにして作製される直
描型平版印刷版は、新聞印刷や商業印刷に用いられるP
S版による印刷刷版と比較して、操作が簡便で容易に刷
版が得られ、使用すべき機器も小型で、事務機器として
取り扱うことができることから専ら軽印刷分野で使用さ
れてきた。しかし、直描型印刷刷版はPS版と比べると
簡易で効率よく作製できる印刷刷版ではあるが、事務機
器として考えた場合には、腐食性のあるエッチング液を
使用しなければならない、エッチ液処理に伴い印刷物の
ブルーイングが起きるなどの不都合があり、これら問題
のない方法の開発が望まれていた。
【0004】また、従来の直描型平版印刷版の画像受理
層における親水化材料としては酸化亜鉛が専ら使用さ
れ、非画像部の親水化処理は、画像形成後非画像部の酸
化亜鉛がエッチング液処理によって親水化されることに
より行われる。このとき、印刷に際して非画像部の地汚
れ防止や耐刷性の向上を目的として酸化チタン微粒子が
添加されることは公知であって、例えば、特開昭56−
80,492号、同56−80,493号、同57−1
73,197号、同58−181,692号、同61−
3,797号、同62−157,059号、同62−2
61,489号、同63−166,590号、同63−
166,591号、特開平5−169,892号、同8
−87,138などを挙げることができるが、このとき
添加された酸化チタン微粒子の作用としては、親水化さ
れた非画像部において、エッチング液に影響されない無
機の親水性化合物の添加により、安定的に親水性を保た
せることにあり、光と反応して超親水性を示すなどの光
触媒作用を行うものではないし、その事実も観察されて
いない。
【0005】また従来の直描型平版印刷版原版の水に対
する接触角は10度以上、通常は20度程度であり、水
との接触角が10度以下、さらには5度以下の超親水性
を示すものはなかった。従来の直描型平版印刷版原版
は、エッチング液などによる親水化処理を行って始めて
非画像部が水との接触角が10度以下となるものであっ
た。さらにまた、水との接触角が10度以下を示す様な
超親水性の表面に、親油性画像を形成し、それが安定的
に直描型印刷版として使用できることは知られていなか
った。
【0006】一方、光触媒作用を持つ金属酸化物材料
は、特に光触媒性酸化チタンを中心にした多くの技術が
公開されており、例えば、特開平7−155,598
号、同7−222,928号、同8−66,635号、
同8−117,606号、同8−131,834号、同
8−131,842号、同8−175,887号、同8
−224,481号、同8−267,646号、同9−
939号、同9−56,742号、同9−57,912
号、同9−76,395号、同9−78,791号、同
9−188,850号、同9−225,387号、同9
−225,388号、同9−226,041号、同9−
226,042号、同9−227,805号、同9−2
27,829号、同9−227,156号、同9−22
7,160号、同9−227,831号、同9−22
7,832号、同9−241,038号、同9−31
4,750号、同10−50,159号、同10−6
7,543号、同10−72,242号、同10−8
1,840号、同10−85,608号、同10−8
5,609号、同10−85,610号、同10−9
5,635号、同10−114,544号、同10−1
14,545号、同10−114,546号、同10−
140,046号、同10−146,251号、同10
−147,770号、同10−147,771号、WO
96/29,375号、WO97/23,572号など
に記載されており、広く光触媒作用を用いた自己洗浄
性、易洗浄性、防曇性、結露防止性、抗菌性などを利用
した多くの有用な材料が発表されている。しかしなが
ら、光触媒反応に基づく超親水化現象を利用した印刷刷
版への応用は見あたらず、光触媒性金属酸化物から構成
された画像受理層が印刷用材料として有用であることは
知られていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、光触媒
作用のある金属酸化物材料を含有した画像受理層を設け
た直描型平版印刷版を作製したところ、金属酸化物によ
る光触媒作用によって超親水化された表面は、超親水化
により印刷用油性インキを受け付けず良好な非画像部と
しての親水部を形成し得ることを発見し、しかも親水化
に当たっては、エッチング液などを用いることなく、単
に光を照射するだけで良く、即ち光親水化が可能である
と言うことを見出し本発明に至ったものである。
【0008】従って、本発明の第一の課題は、超親水性
の画像受理層を持った新規な直描型平版印刷版原版を提
供することにある。さらに、本発明の第二の課題は、一
層以上の光触媒性金属酸化物を含有した画像受理層をも
つ新規な直描型平版印刷版原版を提供することにある。
本発明による第三の課題は、本発明の一層以上の光触媒
性金属酸化物を含有した画像受理層を持つ新規な直描型
平版印刷版原版に、日光または紫外線を照射する光超親
水化により、超親水性の画像受理層を持った新規な直描
型平版印刷版原版の形成方法を提供することにある。本
発明による第四の課題としては、本発明の直描型平版印
刷版原版を用い、油性の画像部を形成した後において、
エッチング液を使用することなく、日光または紫外線を
照射することにより非画像部を超親水化する極めて簡易
な光親水化方法を提供することにある。そして本発明の
第五の課題は、直描型平版印刷版原版を用い、油性の画
像部の形成と、日光または紫外線の照射による非画像部
の超親水化とにより、良好な平版印刷刷版を作製する方
法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、基
体上に一層以上の光触媒性金属酸化物を含有した画像受
理層を設けた直描型平版印刷版原版を作製し、その表面
に親油性画像を形成すると共に、親油性画像形成工程の
後において、日光又は紫外線照射により画像受理層を超
親水化して印刷刷版とする印刷刷版の作製方法により達
成された。
【0010】即ち、本発明の第一の構成は、直描型平版
印刷版原版に関するものであり、基体上に一層以上の光
触媒性金属酸化物を含有した画像受理層を設けたことを
特徴とする直描型平版印刷版原版である。更に、基体上
にシリコーン層を有し、基体、シリコーン層、光触媒性
酸化チタンを含有した画像受理層をこの順に設けた直描
型平版印刷版原版である。
【0011】又、本発明は、前記した画像受理層に固体
酸が添加される、又は、金属によるドーピングが施さ
れ、画像受理層の光超親水化作用が増強された直描型平
版印刷版原版に関するものである。更に、基体上に一層
以上の光触媒性金属酸化物を含有した画像受理層を設け
た直描型平版印刷版原版に、日光又は紫外線の照射によ
り画像受理層を超親水化して得られる新規な直描型平版
印刷版原版に関するものである。
【0012】本発明の第二の構成は、印刷刷版作製方法
であって、前記した直描型平版印刷版原版画像受理層上
に親油性画像を形成した後、日光又は紫外線を照射し、
画像受理層を超親水化して印刷刷版を得ることを特徴と
する印刷刷版作製方法である。又、親油性画像形成前
に、日光又は紫外線照射により超親水性化処理を施され
た直描型平版印刷版原版の画像受理層上に、親油性画像
を形成して印刷刷版を得る印刷刷版作製方法である。
【0013】更に、印刷刷版作成方法に於いて、親油性
画像を形成する方法が、親油性インキを用いて、手書
き、タイプライターまたはインクジェット方式によって
親油性画像を形成する方法、又は電子写真感光体上に形
成したトナー画像を画像受理層に転写し、これを熱定着
することによって親油性画像を形成する方法、或いは、
熱転写プリンターでインクリボンから画像を熱溶融転写
して画像受理層上に親油性画像を形成する方法から選ば
れた、親油性画像形成方法である印刷刷版作製方法に関
する。
【0014】
【発明の実施の形態】
【0015】本発明による直描型平版印刷版原版は、光
触媒性金属酸化物を含有した画像受理層を設けたことを
特徴とする直描型平版印刷版原版であり、以下に光触媒
性金属酸化物を含有した画像受理層について説明する。
【0016】本発明の直描型平版印刷版原版の画像受理
層に含有することのできる光触媒性金属酸化物として
は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロン
チウム、三酸化タングステン、三酸化二ビスマス、酸化
第二鉄などが使用可能であるが、特に酸化チタンが好ま
しく用いられる。
【0017】光触媒性の酸化チタンとしては、ルチル型
およびアナターゼ型さらにはアモルファル型の酸化チタ
ンがいずれも使用できる。光触媒用アナターゼ型酸化チ
タンとして今日では多くのメーカーから市販されている
ものを利用でき、例えば粉末状のものとしては石原テク
ノ社STシリーズ、堺化学工業社SSPシリーズ、チタ
ン工業社PCシリーズ、多木化学社A−100、テイカ
社AMT/ATM、富士チタン工業社TPシリーズ、古
河機械金属社DNシリーズ、日本アエロジル社P25、
昭和電工Fシリーズなどがあり、またゾル状のものとし
ては石原テクノ社STSシリーズ、堺化学工業社CBS
シリーズ、テイカ社チタニアゾル、古河機械金属社FS
シリーズ、多木化学社H−40,N−40、CA−62
などが挙げられる。
【0018】これら粉末状あるいはゾル状の光触媒性の
酸化チタンを使用して画像受理層とする第一の方法とし
ては、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粒子又は
ゾルとシリカ粒子又はゾルを含む懸濁液を基体の表面に
塗布し、基体の軟化点以下の温度で加熱焼結する方法が
ある。加熱温度は200℃以上1000℃以下で、1分
から1時間の間である。このとき使用できる基板として
は鋼板、ステンレス板、トタン板等の金属薄板やガラス
の薄板が使用される。使用する酸化チタンの割合は10
〜100重量%であるが、好ましくは40〜80重量%
である。
【0019】また、粉末状あるいはゾル状の光触媒性の
酸化チタンを画像受理層に含有させる第二の方法として
微細酸化チタンを担持する塗膜形成能のあるバインダー
を用いる方法がある。通常の有機化合物によるバインダ
ー樹脂の場合には、光触媒作用による酸化反応が起って
樹脂強度が弱くなり、崩壊などの現象が起こり使用する
ことは適当でない。好ましい方法としては、未硬化のも
しくは部分的に硬化したシリコーン(オルガノポリシロ
キサン)またはシリコーンの前駆体から成る塗膜形成要
素に粉末状あるいはゾル状の光触媒性の酸化チタンを分
散させて作製した画像受理層塗装液を、基体または基体
上の中間層上に塗布し、塗膜形成要素を硬化させること
により画像受理層を形成することができる。
【0020】画像受理層用の塗膜形成要素としては、塗
膜形成能のあるシリコーンの前駆体を必須成分として、
その他水、メタノール、エタノール、プロパノール、イ
ソプロパノール、ブタノールなどの溶媒や、トリブチル
アミン、ヘキシルアミンなどの塩基性化合物、塩酸、硝
酸、硫酸、アルミニウムトリイソプロポキシド、テトラ
イソプロピルチタネートなどの酸性化合物などのシリコ
ーンの前駆体を硬化させる触媒や、シランカップリング
剤などのコーティング液の分散性を向上させる界面活性
剤などである。
【0021】シリコーンの前駆体としては、種々の有機
基置換アルコキシシラン化合物類、アルコキシシラン化
合物類、有機基置換ハロゲノシラン化合物類、ハロゲノ
シラン化合物類、ハロゲノアルコキシシラン化合物類お
よびヒドロシラン化合物類などを挙げることができる。
【0022】これらシリコーンの前駆体の具体例として
は、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエ
トキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルト
リブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチル
トリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エ
チルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラ
ン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポ
キシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジメチルジ
メトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチル
ジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエ
チルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ
エチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラ
ン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチル
ジエトキシシラン、フェニルメチルジプロポキシシラ
ン、フェニルメチルジブトキシシラン、n−プロピルト
リメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、
n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリ
ブトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキ
シシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシ
ラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラクロルシラ
ン、ジメトキシメチルクロルシラン、ジエトキシジクロ
ルシラン、トリエトキシクロルシラン、ジフェニルジク
ロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、トリクロ
ルヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、ビニルト
リクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフル
オロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピル
トリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチル
ジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエ
トキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエト
キシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシ
ラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ
−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げ
ることができる。
【0023】さらにこれら前駆体の部分加水分解および
脱水縮重合物としてのダイマーやトリマーさらにはオリ
ゴマーなども使用することができる。またシロキサン結
合を有するシリコーンに変えて、シラザン結合を有する
オルガノポリシラザン化合物を使用することもできる。
【0024】シリコーン塗膜の良好な硬度と平滑性を確
保するには、3次元架橋性シロキサンを10モル%以上
含有させることが好ましい。また塗膜の可撓性を得るに
は2次元架橋性シロキサンを60モル%以下含有させる
ことが好ましい。画像受理層中における光触媒性の酸化
チタンの含有量は、10〜100重量%であるが、好ま
しくは40〜70重量%である。
【0025】また、この時シリコーンの硬化に必要な条
件としては、室温から300℃までの温度で、5分から
数時間硬化させることによって目的とする画像受理層を
形成することができるため、耐水性紙、樹脂フィルム、
樹脂板など熱変性し易い基体を用いる場合に適してい
る。
【0026】また別の光触媒性の酸化チタンを作製する
方法として、無定形酸化チタンの焼成により結晶性酸化
チタンに相変化させる方法がある。この方法によれば、
まず基板上に無定形酸化チタンを塗布し、その後200
℃以上に1分以上数時間まで加熱焼成して結晶性酸化チ
タンとするもので無定形酸化チタンの形成には以下のよ
うな方法がある。
【0027】チタンのアルコキシド化合物、例えば、テ
トラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライ
ソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、
テトラブトキシチタン、に塩酸またはエチルアミンの如
き加水分解抑制剤を添加し、エタノールやプロパノール
の如きアルコール系有機溶剤で希釈し、部分的にあるい
は完全に加水分解を進行させた後、混合物をディッピン
グ法、スピンコート法、ノズルフローコート法、スプレ
ー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フロー
コート法、バーコート法など公知の塗布方法にて基体の
上に塗布し、室温から200℃の温度で5分から数時間
乾燥して、酸化チタンの脱水縮重合により無定形酸化チ
タンが形成できる。チタンのアルコキシド化合物に替え
て、チタンのキレートまたはアセテートのような有機チ
タン化合を使用しても良い。
【0028】無機チタン化合物、例えば、四塩化チタン
または硫酸チタンの酸性水溶液を、ディッピング法、ス
ピンコート法、ノズルフローコート法、スプレー法、フ
ローコート法、バーコート法など公知の塗布方法にて基
体の上に塗布し、室温から200℃の温度で5分から数
時間乾燥して、酸化チタンの脱水縮重合により無定形酸
化チタンが形成できる。あるいは、四塩化チタンの化学
蒸着により基体の表面に無定形酸化チタンを形成させて
も良い。
【0029】得られた無定形酸化チタンは、300℃以
上500℃の温度で数分から数時間焼成することによ
り、アナターゼ型酸化チタンに変換することができる
し、600℃以上の温度で数分から数時間焼成すること
により、ルチル型酸化チタンに変換することができる。
本発明には、いづれの酸化チタンも好ましく使用するこ
とができる。
【0030】上記の無定形酸化チタンを利用した本発明
の画像受理層の形成方法としては、まず第一に、基体の
表面に形成された無定形酸化チタン層を焼成して、その
まま画像受理層として使用する方法である。
【0031】第二の無定形酸化チタンを利用した本発明
の画像受理層の形成方法としては、形成された無定形酸
化チタン層の上に極薄い無定形シリカ層を形成した後、
無定形チタンの焼成温度と条件で焼成して、画像受理層
を形成する方法である。このとき無定形シリカ層を形成
する方法は、前述のシリコーン塗膜を形成する方法に順
じて行うことができる。即ち、前述した塗膜形成能のあ
るシリコーンの前駆体を必須成分として、水または/お
よびアルコール系の有機溶媒や、シリコーンの前駆体を
硬化させる触媒や、コーティング液の分散性を向上させ
る界面活性剤などを混合して作製された塗布液を、公知
の塗布方法に従って無定形酸化チタン層の上に塗布した
後、室温から300℃までの温度で、5分から数時間硬
化させることによって無定形シリカ層を形成することが
できる。以上のようにして、光触媒性酸化チタン層の上
に無定形シリカ層が塗設された画像受理層を形成するこ
とができる。
【0032】また、第三の無定形酸化チタンを利用した
本発明の画像受理層の形成方法としては、チタンのアル
コキシド、キレートあるいはアセテートのような有機チ
タン化合物の溶液中、又は四塩化チタンまたは硫酸チタ
ンのような無機チタン化合物の溶液中に、シリカの粒子
またはゾルを分散させた懸濁液を基体の表面に塗布し、
室温から200℃までの温度加熱処理することにより、
チタン化合物を加水分解と脱水縮重合させた、シリカ粒
子が分散された無定形酸化チタンの薄膜を形成する。次
いで、300℃以上の温度でかつ基体の軟化点以下の温
度で加熱処理して、無定形酸化チタンが結晶性酸化チタ
ンに相変化されると同時にシリカ粒子が分散された本発
明の画像受理層を形成することができる。
【0033】更に又、第四の無定形酸化チタンを利用し
た本発明の画像受理層の形成方法として、チタンのアル
コキシド、キレートあるいはアセテートのような有機チ
タン化合物の溶液中、又は四塩化チタン又は硫酸チタン
のような無機チタン化合物の溶液中に、塗膜形成能のあ
るシリコーンの前駆体、水及び/又はアルコール系の有
機溶媒、シリコーンの前駆体を硬化させる触媒、コーテ
ィング液の分散性を向上させる界面活性剤等から成る液
を混合し、公知の塗布方法に従って基体上に塗布した
後、室温から300℃までの温度で、5分から数時間硬
化させる。以上により、無定形酸化チタンと無定形シリ
カが混合した薄膜層を形成することができる。次いで、
300℃以上の温度でかつ基体の軟化点以下の温度で加
熱処理して、無定形酸化チタンを結晶性酸化チタンに相
変化し、光触媒性酸化チタンが無定形シリカに担持され
た、本発明の画像受理層を形成することができる。
【0034】以上いずれの画像受理層の形成方法に於い
ても、無定形酸化チタンを結晶性酸化チタンに相変化さ
せるため、加熱処理温度として300℃以上を必要とす
るので、基体としては金属薄板やガラス板などが好まし
く用いられる。
【0035】本発明の直描型平版印刷版原版の画像受理
層中には、複数の光触媒性金属酸化物を含有させること
ができる。すなわち、光触媒性金属酸化物としての酸化
チタンの他に、前述した光触媒性金属酸化物として酸化
亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、三酸化タング
ステン、三酸化二ビスマス、酸化第二鉄などの中から1
種類以上の光触媒性金属酸化物を添加することができ
る。添加方法としては、前述の画像受理層の塗膜を形成
するに際し、それら塗膜液中に金属酸化物の粉末または
ゾルを添加するとか、これら金属のアルコキシ化合物、
キレート化合物、アセテート化合物などの有機化合物ま
たはハロゲン化化合物、硫酸化化合物、硝酸化化合物な
どの無機化合物などを添加した後、塗布して乾燥して塗
膜を形成した後、400℃以上の温度で加熱処理して焼
成し、画像受理層とすることができる。これら光触媒性
金属酸化物の好ましい組み合わせとしては、酸化チタン
と三酸化タングステンあるいは酸化チタンと酸化錫の組
み合わせがある。組み合わせの場合における各光触媒性
金属酸化物の組成比については任意の割合で混合使用す
ることができる。
【0036】本発明の直描型平版印刷版原版の画像受理
層中には、超親水性を長期に亘って維持する目的で固体
酸を添加することができる。固体酸としては、例えば、
硫酸担持金属酸化物、硝酸担持金属酸化物、酸化チタン
/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化イットリウム、
酸化チタン/酸化タングステン、酸化チタン/酸化ジル
コニウム、酸化チタン/酸化モリブデン、酸化タングス
テン/酸化ジルコニウム、酸化タングステン/酸化錫な
どの金属酸化物複合体、酸化アルミニウム/シリカなど
を挙げることができる。これら金属酸化物の画像受理層
中への添加方法としては、前述の画像受理層の塗膜を形
成するに際して、それら塗膜液中に金属酸化物の粉末ま
たはゾルを添加するとか、これら金属酸化物の前駆体と
してのアルコキシ化合物、キレート化合物、アセテート
化合物などの金属有機化合物またはハロゲン化合物、硫
酸化合物、硝酸化合物などの金属無機化合物などを添加
した後、塗布して乾燥して塗膜を形成した後、400℃
以上の温度で加熱処理して焼成することにより、画像受
理層を形成することができる。上記金属酸化物の前駆体
としては、酸化アルミニウムに関しては、例えば、アル
ミニウムアセチルアセトナート、硫酸アンモニウムアル
ミニウム、臭化アルミニウム、アルミニウムn−ブトキ
サイド、アルミニウムsec−ブトキサイド、アルミニ
ウムtert−ブトキサイド、塩化アルミニウム、アル
ミニウムエトキサイド、弗化アルミニウム、沃化アルミ
ニウム、アルミニウムメトキシド、アルミニウムイソプ
ロポキシドなど、酸化イットリウムに関しては、酢酸イ
ットリウム、イットリウムアセチルアセトナート、炭酸
イットリウム、塩化イットリウム、弗化イットリウム、
硝酸イットリウムなど、酸化タングステンに関しては、
塩化タングステン、タングステンヘキサカルボニル、タ
ングステン酸、燐タングステン酸、珪タングステン酸な
ど、酸化ジルコニウムに関しては、ジルコニウムアセチ
ルアセトナート、ジルコニウムn−ブトキサイド、塩化
ジルコニウム、ジルコニウムイソプロポキシド、硝酸酸
化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコ
ニウムなど、酸化モリブデンに関しては、塩化モリブデ
ン、モリブデンヘキサカルボニル、モリブデニルアセチ
ルアセトナート、モリブデン酸、モリブド燐酸など、酸
化錫に関しては、酢酸錫、臭化錫、塩化錫、弗化錫、沃
化錫、蓚酸錫、硫酸錫、など、シリカに関しては前述の
シリコーン前駆体などを挙げることができる。好ましく
用いられるのは、600℃〜800℃で焼成した酸化チ
タン/酸化タングステン、700℃〜900℃で焼成し
た酸化タングステン/酸化ジルコニウム、900℃〜1
100℃で焼成した酸化タングステン/酸化錫などであ
るが、特に好ましく用いることの出来るのは、400℃
〜600℃で焼成した酸化アルミニウム/シリカであ
る。
【0037】以上の金属酸化物複合体は、画像受理層中
に添加して用いられるが、画像受理層上にもう一層の金
属酸化物複合体を設けても超親水性の表面を形成するこ
とが可能である。
【0038】本発明の直描型平版印刷版原版の画像受理
層中には、光触媒性金属酸化物による超親水性化効果を
増強するために、白金族金属によるドーピングを行うこ
とができる。使用できる白金族金属としては、プラチ
ナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスニウム、
イリジウム等の金属であり、画像受理層へのドーピング
方法としては、画像受理層の塗膜を形成する段階で他の
要素と一緒にこれら白金族金属の可溶性塩を添加する方
法や、画像受理層の塗膜を形成した後にこれら白金族金
属の可溶性塩を塗布し光還元析出させる方法などがあ
る。ドーピングさせる白金族金属の量としては、光触媒
性金属1モルに対して10-9モル〜10-3モル、好まし
くは10-7モル〜10-5モルである。
【0039】上述の画像受理層は、基体の上に直接ある
いは下引き層や中間層の上に塗設されて、本発明による
直描型平版印刷版原版とされる。
【0040】本発明に用いることのできる基体として
は、耐水性の紙、ポリエステル、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフ
ィルム、塩ビ、ポリカーボメート、フッ素樹脂等の樹脂
板、鋼板、ステンレス板、トタン、ブリキ、ニッケル鍍
金板等の厚さが0.5mm以下の金属板、厚さが0.5
mm以下のガラス板等が使用できる。
【0041】前述の画像受理層を形成するに当たり、2
00℃以上の熱処理を要する場合には基板としてステン
レスやトタンなどの金属薄板が好ましく用いられ、20
0℃以下の熱処理の場合には、アルミニウム基板やプラ
スチックフィルムが基板として好ましく用いられる。
【0042】本発明の直描型平版印刷版原版は、金属板
やガラス板など比較的親水性のある基体の場合には前述
の画像受理層を直接塗布して作製することも可能である
が、プラスチックフィルムや樹脂板などの材料の場合に
は、接着層または中間層としてのシリコーン層を設ける
ことが好ましい。
【0043】基板表面にシリコーン層を設ける製法とし
ては、基板表面にシリコーン層塗布液を塗布し、硬化さ
せることにより製造することができる。シリコーン層塗
布液の組成としては、シリコーンの前駆体を必須成分と
して、その他水、メタノール、エタノール、プロパノー
ル、イソプロパノール、ブタノール等の溶媒や、トリブ
チルアミン、ヘキシルアミン等の塩基性化合物、塩酸、
硝酸、硫酸、アルミニウムトリイソプロポキシド、テト
ライソプロピルチタネート等の酸性化合物等のシリコー
ンの前駆体を硬化させる触媒や、シランカップリング剤
等のコーティング液の分散性を向上させる界面活性剤な
ども添加することができる。
【0044】ここでシリコーンの前駆体としては、2個
の一価の有機基と2個のアルコキシ基または2個のハロ
ゲン原子とから成るシラン化合物類、2個の一価の有機
基と1個のアルコキシ基および1個のハロゲン原子とか
ら成るシラン化合物類、2個の水素原子と2個のアルコ
キシ基または2個のハロゲン原子とから成るシラン化合
物類、2個の水素原子と1個のアルコキシ基および1個
のハロゲン原子とから成るシラン化合物類、1個の一価
の有機基と1個の水素原子と2個のアルコキシ基または
2個のハロゲン原子とから成るシラン化合物類、1個の
一価の有機基と1個の水素原子と1個のアルコキシ基お
よび1個のハロゲン原子とから成るシラン化合物類、1
個の一価の有機基と3個のアルコキシ基または3個のハ
ロゲン原子とから成るシラン化合物類、1個の一価の有
機基と2個のアルコキシ基および1個のハロゲン原子と
から成るシラン化合物類、1個の一価の有機基と1個の
アルコキシ基および2個のハロゲン原子とから成るシラ
ン化合物類、1個の水素原子と3個のアルコキシ基また
は3個のハロゲン原子とから成るシラン化合物類、1個
の水素原子と2個のアルコキシ基および1個のハロゲン
原子とから成るシラン化合物類、1個の水素原子と1個
のアルコキシ基および2個のハロゲン原子とから成るシ
ラン化合物類、4個のアルコキシ基で置換されたシラン
化合物類、3個のアルコキシ基および1個のハロゲン原
子とから成るシラン化合物類、2個のアルコキシ基およ
び2個のハロゲン原子とから成るシラン化合物類、1個
のアルコキシ基および3個のハロゲン原子とから成るシ
ラン化合物類または4個のハロゲン原子で置換されたシ
ラン化合物類などを挙げることができる。
【0045】これらシリコーンの前駆体の具体例として
は、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエ
トキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルト
リブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチル
トリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エ
チルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラ
ン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポ
キシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジメチルジ
メトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチル
ジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエ
チルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ
エチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラ
ン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチル
ジエトキシシラン、フェニルメチルジプロポキシシラ
ン、フェニルメチルジブトキシシラン、n−プロピルト
リメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、
n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリ
ブトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキ
シシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシ
ラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラクロルシラ
ン、ジメトキシメチルクロルシラン、ジエトキシジクロ
ルシラン、トリエトキシクロルシランなどを挙げること
ができる。さらにこれら前駆体の部分加水分解および脱
水縮重合物としてのダイマーやトリマーさらにはオリゴ
マーなども使用することができる。
【0046】上述のシコーン層塗布液の塗布方法として
は、ディッピング法、スピンコート法、ノズルフローコ
ート法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、
印刷法、フローコート法、バーコート法など公知の塗布
方法が使用できる。
【0047】シリコーン層の硬化方法としては、加熱処
理、室温放置、紫外線照射などの方法により重縮合させ
て行うことができる。シリコーン層の膜厚は数nmから
数μmが好ましい。
【0048】本発明による直描型平版印刷版原版を作製
するには、前述の基板上またはシリコーン層上に、画像
受理層塗布液を塗布し乾燥重縮合および/または焼成す
ることにより作製することができる。画像受理層塗布液
の組成および乾燥重縮合または焼成条件については前述
の通りである。画像受理層塗布液の塗布方法としては、
ディッピング法、スピンコート法、ノズルフローコート
法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷
法、フローコート法、バーコート法など公知の塗布方法
が使用できる。
【0049】以上のようにして作製された画像受理層の
膜厚は、光触媒反応が十分に行えるため、数nmから数
μmが好ましい。
【0050】上述の方法で作製された本発明による直描
型平版印刷版原版は、さらに光を照射することによっ
て、超親水性の表面を持つ本発明による超親水化直描型
平版印刷版原版とすることができる。
【0051】光親水化の条件としては、光源として日
光、蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ、水銀ラ
ンプなどを用い、照射時間を数分から10日間とするこ
とにより、表面における水の接触角が10度以下の超親
水化直描型平版印刷版原版を得ることができる。
【0052】次に本発明の直描型平版印刷版原版を用い
て印刷刷版を作製する方法について説明する。
【0053】本発明による直描型平版印刷版原版の画像
受理層上に親油性インキを用いて、画像書き込みを行う
方法については、公知の各手段を用いることができる。
本発明による直描型平版印刷版原版の画像受理層は通常
水との接触角は20度程度であり、既存の直描型平版印
刷版原版と変りなく問題ないが、接触角が10度以下に
超親水化された画像受理層をもつ本発明による直描型平
版印刷版原版においても、同様に親油性インキを用いた
画像書き込みを行うことができ、得られた印刷刷版を用
いて印刷インキで安定的に印刷ができると言うことは驚
きであった。
【0054】公知の書き込み手段としては、親油性イン
キを用いて、手書き、タイプライターまたはインクジェ
ット方式によって親油性画像を形成するか、または電子
写真感光体上に形成したトナー画像を画像受容層に転写
し、これを熱定着することによって親油性画像を形成す
るか、あるいは、熱転写プリンターでインクリボンから
画像を熱溶融転写して親油性画像を形成しインキの受容
部とすることによって行われる。
【0055】本発明の印刷刷版作製方法は光による超親
水化を特徴とする。即ち、画像書き込みがされた本発明
による直描型平版印刷版は、光照射によって画像受理層
の非画像部が超親水化される。用いることのできる光源
としては、400nm以下の紫外線を放射する光源であ
ればいずれも用いることができ、具体的には、日光、蛍
光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ、水銀ランプな
どを用いることができる。照射時間としては、光源の光
強度により異なるが、数分から数時間、また日光による
場合には数日から10日程度を要する。本発明による直
描型平版印刷版原版の水との接触角は当初20度程度で
あるが、光照射により10度以下、好ましくは5度以
下、さらに好ましくは0度とすることにより印刷刷版と
して使用することができる。尚、予め画像受理層が光照
射によって超親水化された直描型平版印刷原版の場合に
は、画像書き込み後特別の処理をすることなく印刷を行
うことができる。また、このようにして作製された超親
水部は比較的安定でそのまま数日間は超親水性を保つこ
とができる。また必要に応じ、再度紫外線に曝すことに
より超親水性を回復することも可能である。
【0056】本発明の方法により作製された、光触媒金
属酸化物を含有した画像受理層は強固であって、通常2
万枚から5万枚程度の印刷には耐えることができし、ま
たその超親水性の特徴により印刷インキの非画像部にお
ける汚染による地汚れなどの問題も少ない。
【0057】以上の方法によって作製された印刷刷版は
次工程である印刷にそのまま供せられる。
【0058】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳しく具
体的に説明するが、もとより本発明はこれら実施例に限
定されるものではない。
【0059】〔実施例1〕予め脱脂処理を施したB4ワ
イドのアルミニウム板上に、テトラメトキシシランの部
分加水分解・縮合物であるMKCシリケートMS56
(三菱化学社製)10.0g、メタノール40.0gお
よび0.01規定の塩酸溶液1.0gから成るシリカコ
ーティング溶液をロッド番号#16のバーを用いて塗布
した。80℃で10分間乾燥した後、テトラブトキシシ
ランBTS(三菱化学社製)2.0g、アナターゼ型チ
タニアゾルTA−15(日産化学社製)3.0g、エタ
ノール60.0gおよび水1.0gから成る混合塗布液
をロッド番号#12のバーを用いて塗布した。150℃
で30分間乾燥・加熱しアナターゼ型チタニア粒子が無
定形シリカのバインダーで結着された画像受理層を形成
した。
【0060】以上の方法で形成された本発明の直描型平
版印刷版原版を、固形インクジェット方式の画像書き込
み機IJP−1000(ポリクローム社製)に装着し、
コンピューターからの文字画像情報を直描版上に書き込
んだ。得られた版材に紫外線ハンドランプR−51A型
(入江商会社製)により1mの距離から全面照射を1時
間行って、超親水化処理を終了し印刷刷版(1)を得
た。非画像部の水に対する接触角は5度以下であった。
【0061】印刷刷版(1)を印刷機(TOKO−82
0L;東京航空計器社製)に装着し、印刷テストを実施
した。印刷条件として、印刷速度;4,000枚/時
間、印刷用紙;十条ダイヤコートB4、インキ;GEO
S−G紅S(大日本インキ化学工業社製)、湿し水;N
A108W(1:50希釈、大日本インキ化学工業社
製)の条件下、2,000枚の印刷テストを実施した。
得られた文字印刷物2,000枚は、品質などの問題も
なく良好な印刷物であった。
【0062】〔実施例2〕予め脱脂処理を施したB4ワ
イドのステンレス板上に、アナターゼ型チタニアゾルT
A−15(日産化学社製)10.0gおよび酸化錫ゾル
(多木化学社製)10.0gから成る混合塗布液を小型
ホエラー(大日本スクリーン社製)500rpmの条件
にて塗布し、750℃で10分間焼成して、固体酸を含
有した本発明の直描型平版印刷版原版を得た。
【0063】以上の方法で形成された直描型平版印刷版
原版を、固形インクジェット方式の画像書き込み機IJ
P−1000(ポリクローム社製)に装着し、コンピュ
ーターからの文字画像情報を直描版上に書き込んだ。得
られた版材に紫外線ハンドランプR−51A型(入江商
会社製)により1mの距離から全面照射を1時間行っ
て、超親水化処理を終了し印刷刷版(2)を得た。非画
像部の水に対する接触角は5度以下であった。
【0064】印刷刷版(2)を印刷機(TOKO−82
0L;東京航空計器社製)に装着し、印刷テストを実施
した。印刷条件として、印刷速度;1,000枚/時
間、印刷用紙;十条ダイヤコートB4、インキ;GEO
S−G紅S(大日本インキ化学工業社製)、湿し水;N
A108W(1:50希釈、大日本インキ化学工業社
製)の条件下、2,000枚の印刷テストを実施した。
得られた文字印刷物2,000枚は、品質などの問題も
なく良好な印刷物であった。
【0065】〔実施例3〕予め脱脂処理を施したB4ワ
イドのステンレス板上に、テトラブトキシチタン3.4
g、アセチルアセトン1.0g、水1.0gおよびエタ
ノール100.0gから成る混合塗布液を小型ホエラー
(大日本スクリーン社製)500rpmの条件にて塗布
し、500℃で10分間焼成した。さらにその表面に、
塩化白金酸6水和物の0.1重量%水溶液を用い、小型
ホエラー(大日本スクリーン社製)1,500rpmの
条件にて塗布し、20Wのブルーライトブラック蛍光灯
(三共電気製)下に10分間放置乾燥した。以上のよう
にして、チタニア結晶が白金でドーピングされた本発明
の直描型平版印刷版原版を得た。
【0066】以上の方法で形成された直描型平版印刷版
原版を、固形インクジェット方式の画像書き込み機IJ
P−1000(ポリクローム社製)に装着し、コンピュ
ーターからの文字画像情報を直描版上に書き込んだ。得
られた版材に紫外線ハンドランプR−51A型(入江商
会社製)により1mの距離から全面照射を30分間行っ
て、超親水化処理を終了し印刷刷版(3)を得た。非画
像部の水に対する接触角は5度以下であった。
【0067】印刷刷版(3)を印刷機(TOKO−82
0L;東京航空計器社製)に装着し、印刷テストを実施
した。印刷条件として、印刷速度;1,000枚/時
間、印刷用紙;十条ダイヤコートB4、インキ;GEO
S−G紅S(大日本インキ化学工業社製)、湿し水;N
A108W(1:50希釈、大日本インキ化学工業社
製)の条件下、2,000枚の印刷テストを実施した。
得られた印刷物2,000枚は、品質などの問題もなく
良好な印刷物であった。
【0068】〔実施例4〕A4サイズのポリエチレンテ
レフタレートフィルムに、テトラメトキシシランの部分
加水分解・縮合物であるMKCシリケートMS56(三
菱化学社製)10.0g、メタノール40.0gおよび
0.01規定の塩酸溶液1.0gから成るシリカコーテ
ィング溶液をロッド番号#9のバーを用いて塗布し、8
0℃で10分間乾燥してシリコーン層を作製した。次
に、アナターゼ型チタニアゾルTA−15(日産化学社
製)3.0g、高反応性シリカ分散液MS51SGH
(三菱化学社製)3.0gおよびエタノール60.0g
からなる混合液をロッド番号#9のバーを用いてシリコ
ーン層上に塗布し、80℃で1分間乾燥してチタニア含
有シリコーンを画像受理層とする本発明の直描型平版印
刷版原版を得た。
【0069】以上の方法で作製された直描型平版印刷版
原版を、感熱転写方式のプリンターMD−4000J
(アルプス電気社製)に装着し、コンピューターからの
文字画像情報を直描版上に書き込んだ。得られた版材を
2日間日光に曝して、超親水化処理を終了し印刷刷版
(4)を得た。非画像部の水に対する接触角は5度以下
であった。
【0070】印刷刷版(4)を印刷機(TOKO−82
0L;東京航空計器社製)に装着し、印刷テストを実施
した。印刷条件として、印刷速度;5,000枚/時
間、印刷用紙;十条ダイヤコートB4、インキ;GEO
S−G紅S(大日本インキ化学工業社製)、湿し水;N
A108W(1:50希釈、大日本インキ化学工業社
製)の条件下、1,000枚の印刷テストを実施した。
得られた文字印刷物1,000枚は、品質などの問題も
なく良好な印刷物であった。
【0071】〔実施例5〕実施例4で得られた直描型平
版印刷版原版に、紫外線ハンドランプR−51A型(入
江商会社製)により1mの距離から全面照射を1時間行
って、超親水化処理を終了し、本発明の画像受理層が超
親水化された直描型平版印刷版原版を得た。得られた画
像受理層の接触角は5度以下であった。得られた超親水
性の直描型平版印刷版原版を、感熱転写方式のプリンタ
ーMD−4000J(アルプス電気社製)に装着し、コ
ンピューターからの文字画像情報を直描版上に書き込ん
だ。得られた版材を1日間日光に曝して、再度超親水化
処理を終了し印刷刷版(5)を得た。非画像部の水に対
する接触角は5度以下であった。
【0072】印刷刷版(5)を印刷機(TOKO−82
0L;東京航空計器社製)に装着し、印刷テストを実施
した。印刷条件として、印刷速度;5,000枚/時
間、印刷用紙;十条ダイヤコートB4、インキ;GEO
S−G紅S(大日本インキ化学工業社製)、湿し水;N
A108W(1:50希釈、大日本インキ化学工業社
製)の条件下、1,000枚の印刷テストを実施した。
得られた文字印刷物1,000枚は、品質などの問題も
なく良好な印刷物であった。
【0073】〔実施例6〕A4サイズのポリエチレンテ
レフタレートフィルムに、テトラメトキシシランの部分
加水分解・縮合物であるMKCシリケートMS56(三
菱化学社製)10.0g、メタノール40.0gおよび
0.01規定の塩酸溶液1.0gから成るシリカコーテ
ィング溶液をロッド番号#9のバーを用いて塗布し、8
0℃で10分間乾燥してシリコーン層を作製した。次
に、アナターゼ型チタニアゾルTA−15(日産化学社
製)3.0g、テトラメトキシシランの部分加水分解・
縮合物MS56S(三菱化学社製)3.0gおよびエタ
ノール60.0gからなる混合液をロッド番号#9のバ
ーを用いてシリコーン層上に塗布し、110℃で5分間
乾燥してチタニア含有シリコーンを画像受理層とする本
発明の直描型平版印刷版原版を得た。得られた版材に紫
外線ハンドランプR−51A型(入江商会社製)により
1mの距離から全面照射を1時間行って、超親水化処理
を終了した。水に対する接触角は5度以下であった。以
上により本発明による画像受理層が超親水化された直描
型平版印刷版原版が作製できた。
【0074】超親水化された直描型平版印刷版原版に、
静電転写コピー機であるVIVACE455(フジゼロ
ックス社製)を用い、文字原稿によるトナー画像の書き
込みを行って、印刷刷版(6)を得た。
【0075】印刷刷版(6)を印刷機(TOKO−82
0L;東京航空計器社製)に装着し、印刷テストを実施
した。印刷条件として、印刷速度;5,000枚/時
間、印刷用紙;十条ダイヤコートB4、インキ;GEO
S−G紅S(大日本インキ化学工業社製)、湿し水;N
A108W(1:50希釈、大日本インキ化学工業社
製)の条件下、5,000枚の印刷テストを実施した。
得られた印刷物5,000枚は、品質などの問題もなく
良好な印刷物であった。
【0076】
【発明の効果】本発明による、基体上に一層以上の光触
媒性金属酸化物を含有した画像受理層を設けた直描型平
版印刷版原版は、画像受理層上に画像形成後、日光や紫
外線を照射するだけで非画像部が超親水化されて、良好
な印刷刷版とすることができ、また、予め超親水化され
た直描型平版印刷版原版は、画像書き込みを行うだけ
で、印刷刷版としてそのまま使用が可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H070 AA01 BB22 CC08 CC14 CC15 EE03 EE06 EE07 EE12 FF04 2H084 AA09 AA13 AA19 AA30 CC05 2H114 AA04 AB22 BA02 BA03 BA06 BA10 DA05 DA08 DA62 FA16 GA01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に一層以上の光触媒性金属酸化物
    を含有した画像受理層を設けたことを特徴とする直描型
    平版印刷版原版。
  2. 【請求項2】 基体上にシリコーン層を有し、光触媒性
    酸化チタンを含有した画像受理層をこの順に設けた請求
    項1に記載の直描型平版印刷版原版。
  3. 【請求項3】 前記した画像受理層が固体酸を含有する
    画像受理層である請求項1又は2に記載の直描型平版印
    刷版原版。
  4. 【請求項4】 前記した画像受理層が金属ドーピングを
    施された画像受理層である請求項1〜3の何れかに記載
    の直描型平版印刷版原版。
  5. 【請求項5】 前記した画像受理層が、日光又は紫外線
    照射により超親水化処理を施された画像受理層である、
    請求項1〜4の何れかに記載の直描型平版印刷版原版。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れかに記載の直描型平
    版印刷版原版画像受理層上に親油性画像を形成した後、
    日光又は紫外線を照射し、画像受理層を超親水化して印
    刷刷版を得ることを特徴とする印刷刷版作製方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の直描型平版印刷版原版
    画像受理層上に、親油性画像を形成して印刷刷版を得る
    印刷刷版作製方法。
  8. 【請求項8】 請求項6および7記載の印刷刷版作成方
    法に於いて、親油性画像を形成する方法が、親油性イン
    キを用いて、手書き、タイプライターまたはインクジェ
    ット方式によって親油性画像を形成する方法、又は電子
    写真感光体上に形成したトナー画像を画像受理層に転写
    し、これを熱定着することによって親油性画像を形成す
    る方法、或いは、熱転写プリンターでインクリボンから
    画像を熱溶融転写して画像受理層上に親油性画像を形成
    する方法から選ばれた、親油性画像形成方法である請求
    項6又は7に記載の印刷刷版作製方法。
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