JP2000264633A - 酸化錫前駆体塗布液の製造方法および酸化錫膜の製造方法 - Google Patents

酸化錫前駆体塗布液の製造方法および酸化錫膜の製造方法

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JP2000264633A
JP2000264633A JP11075446A JP7544699A JP2000264633A JP 2000264633 A JP2000264633 A JP 2000264633A JP 11075446 A JP11075446 A JP 11075446A JP 7544699 A JP7544699 A JP 7544699A JP 2000264633 A JP2000264633 A JP 2000264633A
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tin oxide
thin film
film
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tin
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JP11075446A
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Ko Hayashi
紅 林
Naoko Asakuma
直子 朝隈
Toshimi Fukui
俊巳 福井
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Kansai Research Institute KRI Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定化剤を用いなくても、均質な成膜が可能
であるような均質な酸化錫前駆体塗布液を調製できる方
法、および、その前駆体塗布液を使用して、加熱処理を
行わなくても透明導電性の酸化錫の薄膜を得ることがで
きる方法を提供する。 【手段】 錫アルコキシドを溶剤に添加した溶液を加水
分解させて酸化錫前駆体塗布液を製造する場合に、溶液
の加水分解を−50℃以下の温度で行う。酸化錫前駆体
塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、薄膜に
対し波長が360nm以下である光を照射して薄膜を結
晶化させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ガラス、セラミ
ックス、プラスチックなどの基体の表面に透明導電性の
酸化錫(SnO)の薄膜を形成するために使用される
酸化錫前駆体塗布液を製造する前駆体塗布液の製造方
法、ならびに、その製造方法によって得られた酸化錫前
駆体塗布液を使用して基体の表面に透明導電性の酸化錫
の薄膜を形成する酸化錫膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示板、プラズマ表示パネル、エレ
クトロクロミックデバイス、太陽電池などの電極、静電
防止膜、電解シールド膜、熱線反射膜などとして使用さ
れる透明導電性膜において、実用的な透過率を得るため
に光学バンドギャップが3.1eV以上である条件を持
つ系では、室温下で価電子帯から伝導帯へ熱励起される
電子がほとんど存在しないので、化学量論的な組成から
のずれと少量の不純物の添加による高いキャリア濃度を
持つことが必要である。この要件をほぼ満たしている金
属酸化物としては、In、SnO、CdO、C
SnOなどがあり、それらはn型導電性を示す。
また、少量のSbを添加したSnO (Sb−S
nO)の薄膜は、ネサ(NESA)膜あるいはATO
(Antimony−doped Tin Oxid
e)膜と呼ばれ、少量のSnO を固溶させたIn
(Indium Tin Oxide:ITO)の
薄膜と共に、高い導電性を示す透明導電性膜として実用
化されている。これらの金属酸化物膜のうち、酸化錫
(SnO)膜(Sb−SnO膜を含む。以下、同
じ)は、比較的安価な透明導電性膜として一般に知られ
ている。
【0003】酸化錫膜を製造する方法としては、化学的
製膜法であるスプレー法(噴霧熱分解法)、CVD法な
ど、および、物理的製膜法であるスパッタリング法、真
空蒸着法などの固相法があるが、近年、透明導電性膜が
汎用的にかつ大量に使用されるようになったことに伴
い、より安価な製膜法の開発が求められている。錫のア
ルコキシドまたは金属塩を出発原料とする液相法(ゾル
−ゲル法)は、固相法に比べて製造設備に余り費用がか
からず、製膜操作も極めて簡単であるため、工業的にみ
て大変有利な製膜法である。また、ゾル−ゲル法は、複
雑な形状や大きな面積を有する基板上にも薄膜を形成す
ることができる、といった利点も有している。
【0004】このゾル−ゲル法により酸化錫の薄膜を形
成する方法では、錫のアルコキシドまたは金属塩を含む
溶液を加水分解・重合させて前駆体塗布液を調製し、そ
の前駆体塗布液を基板の表面に塗布し、基板表面に形成
された薄膜を結晶化させるようにする。ところが、錫の
アルコキシドや金属塩は、その加水分解速度が非常に速
いため、そのままでは、均質な成膜が可能であるような
均質な塗布液を調製することが困難である。そこで、錫
のアルコキシドや金属塩の加水分解速度を抑制して、均
質な塗布液を得るために、β−ジケトンやアルカノール
アミンなどの安定化剤を添加することが行われている。
【0005】また、ゾル−ゲル法により酸化錫の薄膜を
形成する方法では、錫のアルコキシドまたは金属塩を含
む溶液を加水分解させて得られる前駆体塗布液を基板の
表面に塗布し乾燥させた後、基板表面に形成された塗布
膜を、例えば500℃〜600℃以上の温度で加熱処理
することにより、基板上の薄膜を結晶化させて、酸化錫
の薄膜に透明導電性を付与する(チン・ソリッド・フィ
ルムズ(Thin Solid Films)295
95−100(1997)等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したようにβ−ジ
ケトンやアルカノールアミンなどの安定化剤を使用し、
錫のアルコキシドや金属塩を安定化させてその加水分解
速度を抑制する、といった方法によると、均質な成膜が
可能であるような均質な前駆体塗布液を容易に調製する
ことができる。しかしながら、基板の表面に形成された
塗布膜中に多くの有機物が残存することになり、この結
果、その有機物の分解除去のために塗布膜を500℃程
度の温度で加熱処理することが必要になる。また、塗布
膜中に多くの有機物が残存するため、塗布膜を加熱処理
すると、塗布膜からの有機物の分解除去に伴って薄膜中
に多くの気孔が生成され、得られる酸化錫膜の膜質が悪
化する原因となる。薄膜中の気孔は、薄膜を加熱処理し
て緻密化すれば除去することが可能であるが、そのため
には、通常、600℃以上の温度での焼成が必要になっ
てくる。
【0007】また、ゾル−ゲル法により酸化錫の薄膜を
形成する方法では、錫のアルコキシドまたは金属塩を含
む溶液を加水分解させて得られる前駆体塗布液を基板の
表面に塗布し乾燥させた後、酸化錫の薄膜を結晶化させ
て透明導電性を付与するために、基板表面に形成された
薄膜を通常500℃〜600℃以上の温度で加熱処理す
る必要がある。このため、従来のゾル−ゲル法によって
は、プラスチックスなどのような耐熱性の低い基体上に
酸化錫の薄膜を形成することができなかった。
【0008】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、均質な成膜が可能であるような均質
な酸化錫前駆体塗布液を調製することができ、かつ、被
塗布物の表面に形成された塗布膜中に多くの有機物が残
存することが無く、このため、有機物の分解除去のため
に塗布膜を高温で加熱処理する必要が無く、薄膜からの
有機物の分解除去に伴う膜質の悪化を抑えることが可能
で、薄膜の緻密化のための焼成が不要になるような酸化
錫前駆体塗布液を製造することができる方法を提供する
こと、ならびに、その前駆体塗布液を使用して、高温で
の加熱処理を行わなくても結晶化された酸化錫の薄膜を
得ることができる複合酸化物膜の製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
錫のアルコキシドまたは金属塩を溶剤に添加した溶液を
加水分解させて酸化錫前駆体塗布液を製造する方法にお
いて、前記溶液の加水分解を−50℃以下の温度で行う
ことを特徴とする。
【0010】請求項2に係る発明は、請求項1記載の製
造方法において、錫のアルコキシドまたは金属塩を、溶
液中の固形分濃度が5重量%以下となるように溶剤に添
加することを特徴とする。
【0011】請求項3に係る発明は、請求項1または請
求項2記載の製造方法において、アンチモンのアルコキ
シドまたは金属塩を、0.5mol%〜20mol%の
濃度となるように錫のアルコキシドまたは金属塩と共に
溶剤に添加し、その溶液を加水分解させて酸化錫前駆体
塗布液を得ることを特徴とする。
【0012】請求項4に係る発明は、請求項1ないし請
求項3のいずれかに記載の製造方法によって得られた酸
化錫前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した
後、被塗布物表面に形成された薄膜に対し波長が360
nm以下である光を照射して薄膜を結晶化させることに
より、酸化錫膜を被塗布物上に形成することを特徴とす
る。
【0013】請求項5に係る発明は、請求項4記載の製
造方法において、被塗布物表面に形成された薄膜に対し
紫外光を照射した後に波長が360nm以下であるレー
ザ光を照射することを特徴とする。
【0014】請求項1に係る発明の製造方法によると、
錫のアルコキシドまたは金属塩を含む溶液の加水分解が
−50℃以下という低温で行われることにより、錫のア
ルコキシドまたは金属塩の安定化の目的で通常用いられ
ているβ−ジケトンやアルカノールアミンなどの安定化
剤を使用しなくても、錫のアルコキシドまたは金属塩の
加水分解速度が抑制され、錫のアルコキシドまたは金属
塩が安定化されるので、均質な前駆体塗布液が得られ
る。このため、安定化剤を用いなくても、前駆体塗布液
の成膜性が向上して、被塗布物の表面への均質な成膜が
可能になる。また、β−ジケトンやアルカノールアミン
などの安定化剤を使用しなくてもよいので、成膜後の薄
膜中に残存する有機物の量が少なくなる。このため、有
機物の分解除去のために塗布膜を500℃程度の温度で
加熱処理する必要が無くなる。また、成膜後において薄
膜を結晶化させるために加熱処理等を行っても、薄膜か
らの有機物の分解除去に伴って、得られる酸化錫膜の膜
質が悪化する、といったことが抑えられる。そして、得
られる酸化錫膜の膜質の悪化が抑えられるので、薄膜の
緻密化のための焼成は不要になる。
【0015】請求項2に係る発明の製造方法では、溶剤
に対する錫のアルコキシドまたは金属塩の添加量を、溶
液中の固形分濃度が5重量%以下となるように調節する
ことにより、アルコキシドまたは金属塩の加水分解速度
が適度に調整され、より均質な前駆体塗布液が得られ
る。
【0016】請求項3に係る発明の製造方法では、アン
チモンが添加された酸化錫(ATO)の均質な前駆体塗
布液が得られる。
【0017】請求項4に係る発明の製造方法によると、
請求項1ないし請求項3に記載の製造方法によって得ら
れた均質な前駆体塗布液を使用することにより、被塗布
物の表面への均質な成膜が可能になる。そして、前駆体
塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布
物上の薄膜に対し波長が360nm以下である光を照射
することにより、光を薄膜が吸収してそのエネルギーで
酸化錫が結晶化される。したがって、酸化錫の結晶化の
ために高温での加熱処理を行う必要が無いので、プラス
チックスのような耐熱性の低い基体上にも、酸化錫の薄
膜を形成することも可能になる
【0018】また、前駆体塗布液の調製の際に、β−ジ
ケトンやアルカノールアミンなどの安定化剤を使用しな
くてもよいので、成膜後の薄膜中に残存する有機物の量
が少なくなる。このため、有機物の分解除去のために塗
布膜を500℃程度の温度で加熱処理する必要が無くな
る。また、成膜後において薄膜を結晶化させるために光
照射を行っても、薄膜からの有機物の分解除去に伴っ
て、得られる酸化錫膜の膜質が悪化する、といったこと
が抑えられる。そして、得られる酸化錫膜の膜質の悪化
が抑えられるので、薄膜の緻密化のための焼成は不要に
なる。
【0019】請求項5に係る発明の製造方法では、被塗
布物表面に形成された薄膜に対しレーザ光を照射する前
に紫外光を照射することにより、酸化錫の結晶化が最適
に行われて、得られる酸化錫の薄膜の比抵抗がより低下
する。また、得られる酸化錫の薄膜が最低抵抗値を示す
レーザ光の照射エネルギー密度が、レーザ光照射前の紫
外光照射により低下する。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施形態
について説明する。
【0021】この発明において目的とする酸化錫の薄膜
は、錫のアルコキシドまたは金属塩を出発原料として前
駆体塗布液を調製し、その前駆体塗布液を基板の表面に
塗布して成膜した後、基板表面に形成された薄膜に対し
波長が360nm以下である光を照射して薄膜を結晶化
させることにより形成される。
【0022】出発原料である錫のアルコキシドまたは金
属塩の種類は、特に限定されないが、残留有機物を低減
するためには、また入手の容易さなどから、錫アルコキ
シドとして、アルコキシル基の炭素数が1〜4であるも
の、すなわち錫メトキシド、錫エトキシド、錫プロポキ
シドおよび錫ブトキシドを用いることが好ましい。ま
た、錫金属塩としては、例えば硝酸錫や塩化錫などが使
用される。
【0023】錫のアルコキシドまたは金属塩を溶解させ
る溶剤としては、出発原料および加水分解に用いる水が
可溶であり、水を添加する温度で凝固しないものであれ
ば、その種類は限定されず、単一溶剤でも混合溶剤でも
よいが、特には、炭素数が3以上であるプロパノール、
ブタノールなどのアルコールが好ましい。
【0024】溶剤に対する錫のアルコキシドまたは金属
塩の添加量は、溶液中の固形分濃度が5重量%となるよ
うに調節することが好ましい。また、アンチモンのアル
コキシドまたは金属塩を、例えば0.5mol%〜20
mol%の濃度となるように錫のアルコキシドまたは金
属塩と共に溶剤に添加するようにしてもよい。さらに、
加水分解のために、酸触媒および/または塩基触媒を用
いるようにしてもよく、好ましくは、塩酸などの鉱酸や
酢酸などの有機酸が用いられる。なお、β−ジケトンや
アルカノールアミンなどの安定化剤は、添加しない方が
好ましい。
【0025】錫のアルコキシドまたは金属塩を含む溶液
(場合によりアンチモンのアルコキシドまたは金属塩も
含む)への水の添加は、−50℃以下の温度、好ましく
は−50℃〜−80℃の温度範囲で行う。−50℃以下
といった低温で水の添加を行うことにより、β−ジケト
ンやアルカノールアミンなどの安定化剤を添加してアル
コキシドや金属塩を安定化させるようにしなくても、錫
のアルコキシドまたは金属塩を高濃度で加水分解・重合
させることが可能になり、余分な有機物を含有しない高
濃度の酸化錫前駆体塗布液を得ることができる。また、
前駆体塗布液の調製は、空気中の水分による影響を避け
るために、制御された雰囲気中で行うことが好ましく、
例えば窒素、アルゴンガス等の雰囲気中で加水分解・重
合反応を行わせる。以上の条件で前駆体塗布液の調製を
行うことにより、均質な塗布液が得られる。
【0026】得られた前駆体塗布液は、通常の方法によ
り基板の表面に塗布して基板上に成膜することができ
る。塗布方法は、特に限定されず、通常行われているス
ピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、
フローコート法、バーコート法などの各種のコーティン
グ方法により成膜が可能である。塗布操作は、室温以下
の温度で行うことが望ましく、また、湿度は低い方が好
ましい。基板の表面への塗布液の塗布は、一層だけでも
よいし、多層にしてもよい。被塗布基板の種類は、特に
限定されず、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、プ
ラスチック基板などの基板が使用される。
【0027】基板上に薄膜が形成されると、その薄膜に
対して波長が360nm以下である光を照射する。光源
としては、波長が360nm以下である光を照射可能で
あれば、その種類を問わないが、例えば、エキシマラン
プ、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、シ
ンクロトロン放射光などが使用される。これらの光源の
うち2つもしくはそれ以上のものを組み合わせて使用す
ることも可能である。また、基板上に形成された薄膜に
対し紫外光を照射した後に、波長が360nm以下であ
るレーザ光を照射するようにしてもよい。この場合にお
いて、紫外光を照射する光源としては、高圧水銀ランプ
や低圧水銀ランプなどが使用される。このようにしたと
きは、酸化錫の結晶化が最適に行われて、得られる酸化
錫の薄膜の比抵抗がより低下し、また、得られる酸化錫
の薄膜が最低抵抗値を示すレーザ光の照射エネルギー密
度が低下する。
【0028】薄膜に対する光照射の際に、目的に応じ
て、基板を加熱したり、基板を減圧下に置いたり、雰囲
気(酸化雰囲気または非酸化雰囲気)を制御したりする
ことも可能である。薄膜に対して光が照射されることに
より、薄膜が結晶化され、基板の表面に目的の酸化錫の
薄膜が形成される。
【0029】
【実施例】次に、この発明のより具体的に実施例につい
て、比較例を示しながら説明する。
【0030】〈前駆体塗布液の調製〉 〔実施例1〕錫テトラ−2−ブトキシドを1−ブタノー
ルに添加して、濃度0.73mol/kgの溶液を調製
し、この溶液6.8gと1−ブタノール3gとを混合し
て、A液とした。塩酸(6N)0.09gと1−ブタノ
ール7.8gとを混合して、B液とした。窒素雰囲気中
において、冷媒中で−70℃程度の温度までA液とB液
とを冷却してから両液を混合し、混合溶液を撹拌して加
水分解した後、液を室温に戻した。これにより、酸化錫
の均質な前駆体塗布液が得られた。
【0031】〔実施例2〕塩化アンチモンを1−ブタノ
ールに添加して、濃度5.8重量%の溶液を調製し、窒
素雰囲気中において、その溶液0.082g、0.16
4g、0.819g、1.639gおよび3.278g
のそれぞれを、上記した実施例1で調製されたA液に添
加した後、その混合溶液と上記実施例1で調製したB液
とを冷媒中で−70℃程度の温度まで冷却してから両液
を混合し、混合溶液を撹拌して加水分解した後、液を室
温に戻した。これにより、アンチモンが添加された酸化
錫(ATO)の均質な前駆体塗布液が得られた。
【0032】〔比較例1〕上記した実施例1においてA
液とB液の他にアセチルアセトン0.4gを添加し、上
記と同様の方法により塗布液を調製した。
【0033】〔比較例2〕上記した実施例1においてA
液とB液の他にモノエタノールアミン0.3gを添加
し、上記と同様の方法により塗布液を調製した。
【0034】上記した実施例1、2および比較例1、2
でそれぞれ得られた前駆体塗布液は、いずれも透明であ
り、大気中で長期間(数カ月)貯蔵しても、沈殿するこ
となく透明性を保ったままであった。
【0035】〔実施例3、4〕上記した実施例1、2で
それぞれ得られた前駆体塗布液を、室温、湿度30%以
下で、スピンコーターを使用して、石英ガラス基板上お
よびシリコン基板上にそれぞれ塗布し500rpmの回
転数で5秒間および2,000rpmの回転数で20秒
間処理して成膜した後、基板上に形成された塗布膜を1
00℃の温度で1時間乾燥させた。
【0036】〔比較例3、4〕上記した比較例1、2で
それぞれ得られた前駆体塗布液を、室温、湿度30%以
下で、スピンコーターを使用して、石英ガラス基板上お
よびシリコン基板上にそれぞれ塗布し500rpmの回
転数で5秒間および2,000rpmの回転数で20秒
間処理して成膜した後、基板上に形成された塗布膜を1
00℃の温度で1時間乾燥させた。
【0037】上記した実施例3、4および比較例3、4
では、膜厚が60nm〜80nmである均質な薄膜(ゲ
ル膜)がそれぞれ得られた。得られた薄膜は、いずれも
300nm以下の波長での光の吸収が認められた。
【0038】〈酸化錫膜の形成〉〔実施例5〕上記した
実施例3で得られた薄膜(ゲル膜)に対し、低圧水銀ラ
ンプにより紫外光を30分間照射した後、KrFエキシ
マレーザ光(照射エネルギー密度:91〜105mJ/
cm、ショット数:200〜400回)を照射した。
これにより、いずれの場合にも、薄膜が結晶化されて、
導電性を有する酸化錫の薄膜が得られた。また、照射エ
ネルギー密度が91mJ/cmで300ショットであ
るときに、薄膜の比抵抗は最も低くなり、2.1×10
−2Ωcmとなった。
【0039】〔実施例6〕上記した実施例3で得られた
薄膜(ゲル膜)に対し、低圧水銀ランプにより紫外光を
4時間照射した後、KrFエキシマレーザ光(照射エネ
ルギー密度:72〜101mJ/cm、ショット数:
200〜400回)を照射した。これにより、いずれの
場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有する酸化錫
の薄膜が得られた。また、照射エネルギー密度が88m
J/cmで300ショットであるときに、薄膜の比抵
抗は最も低くなり、1.1×10−1Ωcmとなった。
【0040】〔実施例7〕上記した実施例4で得られた
薄膜(ゲル膜)に対し、KrFエキシマレーザ光(照射
エネルギー密度:99〜111mJ/cm、ショット
数:100〜1,000回)を照射した。これにより、
いずれの場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有す
るアンチモンが添加された酸化錫の薄膜が得られた。ま
た、照射エネルギー密度が105mJ/cmで1,0
00ショットであるときに、薄膜の比抵抗は最も低くな
り、1.9×10−2Ωcmとなった。
【0041】〔実施例8〕上記した実施例4において塗
布液を2回コーティングして得られた薄膜(ゲル膜)に
対し、KrFエキシマレーザ光(照射エネルギー密度:
99〜108mJ/cm、ショット数:100〜1,
000回)を照射した。これにより、いずれの場合に
も、薄膜が結晶化されて、導電性を有するアンチモンが
添加された酸化錫の薄膜が得られた。また、照射エネル
ギー密度が105mJ/cmで700ショットである
ときに、薄膜の比抵抗は最も低くなり、1.7×10
−2Ωcmとなった。
【0042】〔実施例9〕上記した実施例4で得られた
薄膜(ゲル膜)に対し、低圧水銀ランプにより紫外光を
30分間照射した後、KrFエキシマレーザ光(照射エ
ネルギー密度:82〜99mJ/cm、ショット数:
200〜400回)を照射した。これにより、いずれの
場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有する酸化錫
の薄膜が得られた。また、照射エネルギー密度が82m
J/cmで300ショットであるときに、薄膜の比抵
抗は最も低くなり、1.8×10−2Ωcmとなった。
【0043】〔実施例10〕上記した実施例4で得られ
た薄膜(ゲル膜)に対し、低圧水銀ランプにより紫外光
を4時間照射した後、KrFエキシマレーザ光(照射エ
ネルギー密度:47〜80mJ/cm、ショット数:
200〜400回)を照射した。これにより、いずれの
場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有する酸化錫
の薄膜が得られた。また、照射エネルギー密度が60m
J/cmで300ショットであるときに、薄膜の比抵
抗は最も低くなり、1.3×10−2Ωcmとなった。
【0044】〔実施例11〕上記した実施例3で得られ
た薄膜(ゲル膜)に対し、低圧水銀ランプにより紫外光
を4時間照射した後、ArFエキシマレーザ光(照射エ
ネルギー密度:28〜35mJ/cm、ショット数:
100〜200回)を照射した。これにより、いずれの
場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有する酸化錫
の薄膜が得られた。また、照射エネルギー密度が35m
J/cmで100ショットであるときに、薄膜の比抵
抗は最も低くなり、2.1×10−2Ωcmとなった。
【0045】〔実施例12〕上記した実施例4で得られ
た薄膜(ゲル膜)に対し、ArFエキシマレーザ光(照
射エネルギー密度:17〜29mJ/cm、ショット
数:100〜300回)を照射した。これにより、いず
れの場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有するア
ンチモンが添加された酸化錫の薄膜が得られた。また、
照射エネルギー密度が17mJ/cmで300ショッ
トであるときに、薄膜の比抵抗は最も低くなり、1.8
×10−2Ωcmとなった。
【0046】〔実施例13〕上記した実施例4で得られ
た薄膜(ゲル膜)に対し、低圧水銀ランプにより紫外光
を4時間照射した後、ArFエキシマレーザ光(照射エ
ネルギー密度:17〜35mJ/cm、ショット数:
100〜300回)を照射した。これにより、いずれの
場合にも、薄膜が結晶化されて、導電性を有するアンチ
モンが添加された酸化錫の薄膜が得られた。また、照射
エネルギー密度が35mJ/cmで300ショットで
あるときに、薄膜の比抵抗は最も低くなり、1.5×1
−2Ωcmとなった。
【0047】〔比較例5、6〕上記した比較例3、4で
得られた薄膜(ゲル膜)に対し、KrFエキシマレーザ
光(照射エネルギー密度:91mJ/cm、ショット
数:300回)を照射した。この結果、いずれの場合に
も、薄膜は、白濁や剥離が起こり易いことが分かった。
【0048】〔比較例7〕上記した実施例3で得られた
薄膜(ゲル膜)を加熱処理した。この結果、500℃の
加熱温度で薄膜が結晶化し、薄膜の比抵抗は、3.2×
10−1Ωcmであった。
【0049】〔比較例8〕上記した実施例3において塗
布液を2回コーティングして得られた薄膜(ゲル膜)を
500℃の温度で加熱処理した。得られた薄膜の比抵抗
は、2.4×10 −1Ωcmとなった。
【0050】〔比較例9〕上記した実施例4で得られた
薄膜(ゲル膜)を500℃の温度で加熱処理した。得ら
れた薄膜の比抵抗は、3.2×10−2Ωcmとなっ
た。
【0051】〔比較例10〕上記した実施例4において
塗布液を2回コーティングして得られた薄膜(ゲル膜)
を500℃の温度で加熱処理した。この結果、X線回折
法により、薄膜が結晶化したことが確認された。得られ
た薄膜の比抵抗は、3.0×10−2Ωcmとなった。
【0052】以上のように、基板上に前駆体塗布液を塗
布して形成された薄膜(ゲル膜)に対し、KrFエキシ
マレーザ光およびArFエキシマレーザ光をそれぞれ照
射することにより、いずれの場合でも、薄膜に導電性が
付与されることが分かった。そして、光照射によって得
られる酸化錫膜の導電性は、薄膜を500℃の温度で加
熱処理して得られる酸化錫膜の導電性と同レベルかそれ
より一桁程度向上した。また、多層コートにより、最終
的に得られる酸化錫膜の比抵抗が低下することが分かっ
た。また、アンチモンのドープにより、酸化錫膜の比抵
抗が低下すること、および、レーザ光の照射エネルギー
密度が低下することが分かった。さらに、薄膜に対しレ
ーザ光を照射する前に、薄膜に対して紫外光を照射する
前処理を行うことにより、得られる酸化錫膜の比抵抗が
低下すること、および、最低抵抗値を示すレーザ光の照
射エネルギー密度が低下することが分かった。
【0053】
【発明の効果】請求項1に係る発明の製造方法による
と、安定化剤を用いなくても、均質な成膜が可能である
ような均質な酸化錫前駆体塗布液を調製することができ
る。そして、安定化剤を用いる必要が無くなるので、そ
れを使用して被塗布物の表面に成膜し酸化錫の薄膜を形
成したときに、薄膜からの有機物の分解除去に伴う膜質
の悪化を抑えることができ、薄膜の緻密化のための焼成
が不要になるような酸化錫前駆体塗布液を得ることがで
きる。
【0054】請求項2に係る発明の製造方法では、錫の
アルコキシドまたは金属塩の加水分解速度が適度に調整
されるので、より均質な前駆体塗布液を得ることができ
る。
【0055】請求項3に係る発明の製造方法では、アン
チモンが添加された酸化錫(ATO)の均質な前駆体塗
布液を得ることができる。
【0056】請求項4に係る発明の製造方法によると、
高温での加熱処理を行わなくても結晶化された酸化錫の
薄膜を得ることができる。したがって、プラスチックス
等の耐熱性に劣る基板上にも、酸化錫の薄膜を形成する
ことが可能となる。
【0057】請求項5に係る発明の製造方法では、より
低い比抵抗を有する酸化錫の薄膜を得ることができ、ま
た、得られる酸化錫の薄膜が最低抵抗値を示すレーザ光
の照射エネルギー密度を、より低下させることができ
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 錫のアルコキシドまたは金属塩を溶剤に
    添加した溶液を加水分解させて酸化錫前駆体塗布液を製
    造する方法において、 前記溶液の加水分解を−50℃以下の温度で行うことを
    特徴とする酸化錫前駆体塗布液の製造方法。
  2. 【請求項2】 錫のアルコキシドまたは金属塩を、溶液
    中の固形分濃度が5重量%以下となるように溶剤に添加
    する請求項1記載の酸化錫前駆体塗布液の製造方法。
  3. 【請求項3】 アンチモンのアルコキシドまたは金属塩
    が、0.5mol%〜20mol%の濃度となるように
    錫のアルコキシドまたは金属塩と共に溶剤に添加され、
    その溶液を加水分解させて酸化錫前駆体塗布液を得る請
    求項1または請求項2記載の酸化錫前駆体塗布液の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記
    載の製造方法によって得られた酸化錫前駆体塗布液を被
    塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形
    成された薄膜に対し波長が360nm以下である光を照
    射して薄膜を結晶化させることを特徴とする酸化錫膜の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 被塗布物表面に形成された薄膜に対し紫
    外光を照射した後に波長が360nm以下であるレーザ
    光を照射する請求項4記載の酸化錫膜の製造方法。
JP11075446A 1999-03-19 1999-03-19 酸化錫前駆体塗布液の製造方法および酸化錫膜の製造方法 Pending JP2000264633A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000327310A (ja) * 1999-05-24 2000-11-28 Konica Corp 金属酸化物、その薄膜及びこれを製造する方法

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