JP4264145B2 - In2O3−SnO2前駆体塗布液の製造方法 - Google Patents

In2O3−SnO2前駆体塗布液の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガラス、セラミックス、プラスチックスなどの基体の表面に、低温での結晶化が可能である導電性の酸化インジウム−酸化錫(In−SnO;ITO)薄膜を形成させるために用いられるIn−SnO前駆体塗布液を製造する方法に関し、特に、硝酸インジウムと錫アルコキシドとを出発原料としてIn−SnO前駆体塗布液を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明導電性ITO薄膜は、スパッタリング法、CVD法などの乾式プロセスや、金属アルコキシドを出発原料としてゾル−ゲル法により基板の表面に形成された塗布膜を適当な温度で加熱処理する方法、金属塩を出発原料とした噴霧分解法などの乾式プロセスにより製造されている。
【0003】
上記した方法のうち、スパッタリング法は、透明導電性のITO薄膜の形成に最も広く用いられている方法であるが、処理が真空プロセスで行われるため、ITO薄膜を形成しようとする基板の形状や大きさが制約される、といった問題点がある。また、CVD法では、出発原料としての揮発性のインジウムおよび錫の確保が必要であり、また、それぞれの原料物質の組成比の制御が難しい、といった問題点がある。
【0004】
これに対し、ゾル−ゲル法を利用してITO薄膜を形成する方法は、所望の化学量論比の膜を容易に得ることが可能である。
【0005】
一方、ゾル−ゲル法を用いてITO薄膜を製造する方法では、一般に、シリコンアルコキシドを除く金属アルコキシドの加水分解速度が非常に速いため、成膜可能な均質なゾルを調製することが困難である。そこで、金属アルコキシドの加水分解速度を抑制するための幾つかの方法が検討されている。
【0006】
金属アルコキシドの加水分解速度を抑制する方法としては、例えば、金属アルコキシドの濃度を極端に低くすることにより、塗布液の均質な成膜を可能にする方法がある。しかしながら、この方法は、1回の成膜工程で得られる膜厚が非常に薄くなるため、工業的な見地からは有効な方法ではない。
【0007】
一方、多座配位可能な有機化合物を添加して、金属アルコキシドを安定化させる方法が幾つか提案されている。例えば、マテリアルズ・リサーチ・ソサイアティ・シンポジウム・プロシーディングズ(Materials Research Society Symposium Proceedings) 346,p469(1994)やマテリアルズ・リサーチ・ソサイアティ・シンポジウム・プロシーディング 271,p401(1992)には、インジウムアルコキシドを出発原料とし、アルカノールアミンを併用して、ITO薄膜を製造する方法が開示されている。
【0008】
また、窯業協会誌 90,p9(1982)には、硝酸インジウムと硝酸錫をアセチルアセトンに溶解させた後、成膜、熱分解させることにより、ITO薄膜を作成する方法が開示されている。さらに、日本セラミックス協会学術論文誌 102,200(1994)には、複合酸化物としてのIn−SnOゾルの調製のために、金属アルコキシドに代えて硝酸インジウムと塩化錫を使用して、コロイド粒子を合成する方法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記したゾル−ゲル法では、金属酸化物を結晶化させるために、400℃〜700℃程度の温度での加熱処理が必要である。たとえば、マテリアルズ・リサーチ・ソサイアティ・シンポジウム・プロシーディング 271,p401(1992)、窯業協会誌 90,p9(1982)および日本セラミックス協会学術論文誌 102,200(1994)に記載されている各方法では、それぞれ400℃、450℃および550℃以上の温度での加熱処理が必要であった。このため、プラスチックスなどのような耐熱性の低い基体上にITO薄膜を形成することができなかった。また、Na等の元素を多く含む基板では、数百℃の加熱処理による膜中への数百ppm〜数%のNa成分の拡散により、高導電率のITO薄膜を形成することが非常に難しかった。
【0010】
また、金属アルコキシドを出発原料に用いたゾル−ゲル法では、高純度のIn−SnO塗布液を合成することが困難であり、このため、高品位のITO薄膜を形成することが難しい、といった問題点がある。
【0011】
上記したように多座配位化合物の添加により金属アルコキシドの加水分解速度を抑制する方法によれば、均質な塗布液を容易に調製することができるが、得られた塗布膜中に多くの有機物が残留することになる。この結果、その残留物の除去のために塗布膜を500℃程度の高温で加熱処理することが必要になる。また、塗布膜中に多くの有機物が残存するため、塗布膜を加熱処理すると膜の重量減少が大きくなる。言い換えると、塗布膜からの有機物の除去によって膜中に多くの気孔が生成し、欠陥となり易い。そして、膜の微細組織を改善するためには、余分なエネルギーが必要となる。
【0012】
なお、上記したように金属塩を用いる方法は、基本的には熱分解法であり、加熱処理後の膜質に多くの問題を生じることになる。
【0013】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、硝酸塩を出発原料とするゾル−ゲル法を用いて基体の表面にITO薄膜を形成する場合において、安定性に優れた高純度のIn−SnO前駆体塗布液を得ることができ、高品位のITO薄膜を得ることを可能にするIn−SnO前駆体塗布液の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、硝酸インジウムと錫アルコキシドとを出発原料としてIn−SnO前駆体塗布液を製造する方法において、溶剤としてエチレングリコールモノアルキルエーテルもしくはプロピレングリコールモノアルキルエーテルを用いることを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の製造方法において、出発原料である硝酸インジウムとして、予め脱水処理された硝酸インジウムを用いることを特徴とする。
【0016】
請求項1に係る発明の製造方法によると、安定性に優れた高純度のIn−SnO前駆体塗布液が得られることになる。請求項1に係る発明は、硝酸インジウムと錫アルコキシドとを出発原料としてIn−SnO前駆体塗布液を製造する場合に、溶剤としてエチレングリコールモノアルキルエーテルもしくはプロピレングリコールモノアルキルエーテルを用いることが有効であることを新たに見出してなされたものである。
【0017】
請求項2に係る発明の製造方法によると、予め脱水処理された硝酸インジウムを出発原料に用いることにより、得られたIn−SnO前駆体塗布液の成膜性などが向上することになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態について説明する。
【0019】
この発明に係る製造方法では、硝酸インジウムと錫アルコキシドとを出発原料として、In−SnO前駆体塗布液を調製する。そして、得られた塗布液を被塗布物の表面に塗布して塗布膜を形成し、その塗布膜を形成するIn−SnOを結晶化させて導電性のITO薄膜を得る。
【0020】
In−SnO塗布液の出発原料として用いられる硝酸インジウムは、後述する溶剤に容易に溶解し、その分解温度も低い。硝酸インジウム中のNa不純物量は、10ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。なお、硝酸塩以外のインジウム塩は、後述する殆どの溶剤に対して不溶であり、均質な塗布液を得ることができない。
【0021】
塗布液の出発原料として用いられる硝酸インジウムは、予め脱水処理しておくことが好ましい。硝酸インジウムを脱水処理することで、得られる塗布液の、各種基板に対する塗れ性が向上し、より膜質の優れたITO薄膜が最終的に得られることになる。
【0022】
錫原料としては、金属アルコキシドが用いられる。錫アルコキシドは、均質な塗布液を調製することが可能であれば、その種類は特に限定されないが、例えば、含有酸化物濃度、入手の容易さなどから、アルコキシル基の炭素数が1〜4であるものが好ましい。例えば、錫アルコキシドとしては、錫メトキシド、錫エトキシド、錫プロポキシド、錫ブトキシドなどが使用される。錫アルコキシドは、1種類のものを使用するようにしてもよいし、2種以上のものを組み合わせて使用するようにしてもよい。また、金属アルコキシドと金属塩とを組み合わせて使用することも可能である。錫原料中のNa不純物量は、10ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
【0023】
硝酸インジウムと錫アルコキシドとの含有割合は特に限定されないが、より低抵抗のITO薄膜を得るためには、In−SnOのうちにSnOが1重量%〜20重量%だけ含まれるような割合とすることが好ましい。
【0024】
溶剤としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル、または、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルが用いられ、それらのうちの1種のもの、あるいは2種以上のものを組み合わせて使用する。
【0025】
塗布液の調製方法は、特に限定されないが、代表的な調製方法を説明すると、まず、硝酸インジウムを溶剤に添加し、硝酸インジウムを溶剤と反応させて、硝酸基を部分的にアルコキシル基に置換させ、In(NO3−X(OR)(Rはアルキル基、x=2〜3)とする。錫アルコキシドは、この反応が終了した後に添加してもよいし、予め溶剤に添加していてもよいが、塗布液中に錫アルコキシドが共存することで、In(NO3−X(OR)溶液が安定化するため、予め混合させておくことが好ましい。また、得られた反応溶液を加熱処理することも可能である。さらに、得られた反応生成物In(NO3−X(OR)の重合を促進させるために、水の添加による部分加水分解を行わせるようにしてもよい。この際の水の添加量は、インジウムと錫との混合比率などによって異なるため、特定することはできない。また、触媒として酸または塩基が適宜併用される。使用する触媒は特に限定されないが、高純度材料を得るためには、金属成分を含まない化合物が好ましい。例えば、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸などの鉱酸、炭酸、ほう酸、蟻酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸が用いられる。また、塩基としては、アンモニア、アミン類などが用いられる。
【0026】
上記したような製造方法で得られたIn−SnO前駆体塗布液は、成膜したい基体上に塗布することにより、基体の表面に塗布膜を形成する。塗布の方法として、ディップコート、スピンコート、フローコート、バーコートなど、一般に実施されている方法を利用することができる。
【0027】
得られた塗布膜は、加熱処理や光照射など、目的に応じた処理が施されることにより、In−SnO相が結晶化されて、導電性のITO薄膜が形成される。
【0028】
光照射によりIn−SnO相を結晶化する場合は、例えば、塗布膜に対して波長が280nm以下であるレーザ光を照射する。これにより、加熱処理を行わなくても、結晶性の透明導電性ITO薄膜が得られることとなる。あるいは、塗布膜に対して波長が280nm以下である紫外光を照射し、塗布膜中に金属インジウムおよび/または金属錫を析出させた後、金属インジウムおよび/または金属錫が析出した塗布膜に対して波長が600nm以下であるレーザ光を照射する。この場合において、塗布液を被塗布物の表面に塗布して形成された塗布膜に対して波長が280nm以下である紫外光が照射されることにより、塗布膜中に金属インジウムおよび/または金属錫が析出する。この理由は、明確には分からないが、280nm以下の紫外光を塗布膜が吸収することにより、化学結合の切断と再結合が進行するからであると考えられる。この金属インジウムおよび/または金属錫が析出した塗布膜が、波長が600nm以下であるレーザ光を吸収することにより、塗布膜中のインジウムおよび/または錫が再酸化され、塗布膜を形成するIn −SnO が結晶化する。ここで、通常のゲル膜は、600nm〜280nmの長波長域ではレーザ光の吸収が起こらないが、ゲル膜中に金属インジウムや金属錫が生成していることにより、600nm〜280nmの長波長域でもレーザ光が塗布膜に吸収され、そのエネルギーによってIn −SnO 相の結晶化が進行することになる。これにより、加熱処理を行わなくても、結晶性の透明導電性In −SnO 薄膜が得られることとなる。
【0029】
塗布膜に対してレーザ光を照射する光源としては、波長が280nm以下であるレーザ光を照射可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、シンクロトロン放射光、YAGレーザ4倍波などが使用される。また、これらの光源のうちの2つもしくはそれ以上のものを組み合わせて使用することも可能である。
【0030】
塗布膜中に金属インジウムおよび/または金属錫を析出させるための紫外光の光源としては、280nm以下の波長の光を含む光源が用いられる。波長が280nmより長い光のみでは、目的とする金属インジウムおよび/または金属錫が分散した塗布膜を得ることができない。このため、低圧水銀ランプ、280nm以下の波長の紫外光を放出可能であるエキシマランプやエキシマレーザなどが使用される。光照射強度や照射時間は、塗布液の種類、In/Sn比、塗布膜の厚みなどにより適宜決定されるが、ITO薄膜を得るためには、照射後における塗布膜の透過率が20%以上となることが好ましい。また、照射後における塗布膜の透過率が20%未満となると、次の工程で塗布膜へレーザ光を照射した後に金属が残存し、ITO薄膜の透過率が低下することになるため、照射後における塗布膜の透過率は30%〜60%であることがより好ましい。
【0031】
金属インジウムおよび/または金属錫が析出した塗布膜に対してレーザ光を照射する光源としては、波長が600nm以下である光を照射することができるものであれば、特に限定されない。波長が600nmより長い光を基板上の塗布膜に照射すると、基板が加熱されることになるため、プラスチックスなどの耐熱性に劣る基板の表面にITO薄膜を形成することができなくなる。光源としては、ArFエキシマレーザ、KrClエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザ、XeFエキシマレーザ、Arレーザ、Krレーザなどの気体レーザ、YAGレーザの2倍波、3倍波および4倍波などの高調波、ルビーレーザの2倍波、3倍波および4倍波などの高調波などの固体レーザなどが使用される。また、これらの光源のうちの2つもしくはそれ以上のものを組み合わせて使用することも可能である。レーザ光の照射出力や照射時間(ショット数)は、塗布膜やレーザの種類により適宜選定される
【0032】
【実施例】
次に、この発明のより具体的な実施例について説明する。
【0033】
[In−SnO塗布液の調製]
〈実施例1〜
硝酸インジウム−3水和物とテトラ−t−ブトキシ錫とを、固形分濃度が5重量%となるように各種の溶剤に添加し、その溶液を室温で攪拌することにより、In−SnO塗布液を調製した。原料の配合割合や合成条件を表1にまとめて示す。なお、硝酸インジウム中のNa不純物量は、3ppmであった。
【0034】
【表1】
Figure 0004264145
【0035】
〈実施例9〜14
硝酸インジウム−3水和物を105℃の温度で5時間、油圧ポンプを用いた真空乾燥器により脱水処理した後、得られた硝酸インジウムを用いて、上記した実施例1〜と同様の操作により、In−SnO塗布液を調製した。原料の配合割合や合成条件を表2にまとめて示す。
【0036】
【表2】
Figure 0004264145
【0037】
実施例9〜14で得られた塗布液は、半年以上放置しても、その特性に大きな変化は認められなかった。
【0038】
〈比較例1〉
上記した実施例1において、溶剤として2−ブタノールを用いて塗布液を調製した。しかしながら、均質なIn−SnO塗布液は得られなかった。
【0039】
〈比較例2〉
トリ−t−ブトキシインジウムとテトラ−t−ブトキシ錫(In/Sn=9/1モル比)とを2−ブタノールに添加し、さらにその溶液にインジウムと等モルのアセチルアセトンを添加して、アルコキシド混合溶液を調製した。また、アルコキシド混合溶液に添加したときにInの固形分濃度が5重量%となるように、0.1N塩酸−2−ブタノール混合液(HO/Inのモル比は0.8)を調製し、その混合液を室温でアルコキシド混合溶液に添加し、加水分解によりIn−SnO塗布液を得た。ここで用いたトリ−t−ブトキシインジウムには、0.1%のNaが不純物として混入していた。
【0040】
[ITO薄膜の形成および薄膜の物性]
上記した実施例11、12および比較例2でそれぞれ得られたIn−SnO塗布液を、スピンコータを使用して1,000rpmの回転数でシリカ基板の表面に塗布し、基板上に成膜した。これにより、いずれの場合にも、外観上均質な塗布膜が得られた。それぞれ得られた塗布膜を各種の温度で1時間、大気中で加熱処理した後、得られた薄膜の膜厚および抵抗値について評価した。膜厚は、段差計を使用して測定した。比抵抗値は、4端子法によりシート抵抗を求め、膜厚の値を用いて換算した(三菱化学製、ロレスタ・MP、MCP−T350を使用)。得られた薄膜の特性を表3にまとめて示す。
【0041】
【表3】
Figure 0004264145
【0042】
表3に示した結果から分かるように、実施例11、12でそれぞれ得られたIn−SnO塗布液を用いて成膜した塗布膜では、450℃の温度での焼成により、既に最低の比抵抗値が得られている。これまでの報告では、最低の比抵抗値を得るためには、塗布膜を600℃〜800℃の温度での焼成が必要であり、実際に、比較例2で得られたIn−SnO塗布液を用いて成膜した塗布膜では、600℃の温度での焼成において比抵抗値が最低になった。
【0043】
なお、表3に示した結果は、塗布液をシリカ基板の表面に1回塗布して成膜したときのものであるが、実施例12で得られたIn−SnO塗布液をシリカ基板の表面に5回塗布して成膜した後、焼成すると、膜厚が220nmで比抵抗値が2.1×10−3ΩcmであるITO薄膜が得られた。
【0044】
[レーザ光照射]
〈実施例15〜17
実施例12で得られたIn−SnO塗布液を成膜してシリカ基板上に形成された塗布膜に対し、各種の光源からそれぞれレーザ光を照射した。これにより、結晶性のITO薄膜が得られた。レーザ光の照射条件や得られた薄膜の特性を表4にまとめて示す。
【0045】
【表4】
Figure 0004264145
【0046】
〈比較例3、4〉
実施例12で得られたIn−SnO塗布液を成膜してシリカ基板上に形成された塗布膜に対し、波長が280nmより長いレーザ光を各種の条件で照射した。この結果、In−SnOの結晶化は認められず、導電性も発現しなかった。レーザ光の照射条件や得られた薄膜の特性を表4にまとめて示す。
【0047】
表4に示した結果から分かるように、実施例15〜17におけるように、波長が280nm以下であるレーザ光を塗布膜へ照射すると、光源の種類に拘わらず、加熱処理することなくIn−SnO相の結晶化が認められ、約9×10−3Ωcmの比抵抗値を有する透明導電性のITO薄膜が得られた。これに対し、比較例3、4におけるように、波長が280nmより長いレーザ光を塗布膜へ照射しても、塗布膜に変化は認められなかった。
【0048】
〈実施例18〜21
実施例12で得られたIn−SnO塗布液を成膜してシリカ基板上に形成された塗布膜に、低圧水銀ランプ(10mW/cm)を用いて、紫外光を30分間照射した。紫外光の照射により、シリカ基板上の塗布膜中に金属インジウムが生成し、膜は黒化した。得られた塗布膜のX線回折パターンを図1に示す。さらに、金属インジウムが生成された塗布膜に対し、各種のレーザ光を照射した。これにより、結晶性のITO薄膜が得られた。レーザ光の照射条件および得られたITO薄膜の特性を表5にまとめて示す。
【0049】
【表5】
Figure 0004264145
【0050】
表5に示した結果から分かるように、予め塗布膜に対し280nm以下の波長の紫外光を照射して、塗布膜中に金属インジウムを析出させることにより、実施例21で示した通りより長波長のレーザ光の照射によっても、In−SnOの結晶化が可能になる。また、表4に示した結果と比較すれば明らかなように、予め塗布膜に対し280nm以下の波長の紫外光を照射して塗布膜中に金属インジウムを析出させた後にレーザ光を照射すると、透過率が良くなる。言い換えれば、予め塗布膜へ紫外光を照射した後にレーザ光を照射することにより、レーザ光の照射による塗布膜のダメージを低減させることができ、より高品質のITO薄膜を得ることができる。
【0051】
以上の実施例で示した通り、この発明に係る方法によれば、安定性に優れた高純度のIn−SnO前駆体塗布液を調製することができる。そして、In−SnO塗布膜に対して波長が280nm以下であるレーザ光を照射することにより、加熱処理を行うことなく結晶性のITO薄膜を製造することが可能である。また、予めIn−SnO塗布膜に対して波長が280nm以下である紫外光を照射することにより、波長が600nm以下であるレーザ光の照射によってもIn−SnOの結晶化が可能になる。このように、この発明に係る方法によると、耐熱性の劣るプラスチックス基板上などにも、結晶性の導電性ITO薄膜を形成することが可能である。
【0052】
【発明の効果】
請求項1に係る発明の製造方法によると、安定性に優れた高純度のIn−SnO前駆体塗布液を得ることができ、高品位のITO薄膜を得ることが可能となる。
【0053】
請求項2に係る発明の製造方法では、成膜性などがより向上したIn−SnO前駆体塗布液を得ることができ、より高品位のITO薄膜を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る製造方法によって得られた、金属インジウムが析出した塗布膜のX線回折パターンを示す図である。

Claims (2)

  1. 硝酸インジウムと錫アルコキシドとを出発原料としてIn−SnO前駆体塗布液を製造する方法において、
    溶剤としてエチレングリコールモノアルキルエーテルもしくはプロピレングリコールモノアルキルエーテルを用いることを特徴とするIn−SnO前駆体塗布液の製造方法。
  2. 硝酸インジウムが、予め脱水処理された硝酸インジウムである請求項1記載のIn−SnO前駆体塗布液の製造方法。
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