JP2000282244A - 酸化チタン膜の製造方法 - Google Patents

酸化チタン膜の製造方法

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JP2000282244A
JP2000282244A JP11089017A JP8901799A JP2000282244A JP 2000282244 A JP2000282244 A JP 2000282244A JP 11089017 A JP11089017 A JP 11089017A JP 8901799 A JP8901799 A JP 8901799A JP 2000282244 A JP2000282244 A JP 2000282244A
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titanium oxide
film
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rutile
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Ko Hayashi
紅 林
Toshimi Fukui
俊巳 福井
Naoko Asakuma
直子 朝隈
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Kansai Research Institute KRI Inc
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Kansai Research Institute KRI Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱処理を行わなくても結晶化された酸化チ
タンの薄膜を得ることができ、かつ、アナタースのほ
か、ルチルやアナタースとルチルとの混合形の薄膜を任
意に得ることができる方法を提供する。 【手段】 チタンアルコキシドを含む溶液を加水分解さ
せて酸化チタン前駆体塗布液を調製する際に、溶液中に
安定化剤を添加しないようにし、また溶剤として低級ア
ルコールを用いるようにする。前駆体塗布液を基板の表
面に塗布して成膜した後、薄膜に対し波長が360nm
以下である紫外光を照射し、その紫外光の照射エネルギ
ー密度を調節することにより薄膜をアナタース、アナタ
ースとルチルとの混合形およびルチルのうちのいずれか
に任意に結晶化させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ガラス、セラミ
ックス、プラスチックスなどの基体の表面に酸化チタン
(チタニア)の薄膜を形成する酸化チタン膜の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】ゾル−ゲル法を利用して酸化チタンの薄
膜を形成するには、チタンのアルコキシドまたは金属塩
を出発原料とし、それを含む溶液を加水分解・重合させ
て酸化チタン前駆体塗布液(ゾル)を調製し、得られた
塗布液を基板の表面に塗布して、基板表面に薄膜(ゲル
膜)を形成した後、基板上の薄膜を適当な温度で加熱処
理して薄膜を結晶化させるようにする。また、前駆体塗
布液を調製する際には、一般に、多座配位可能な有機化
合物を安定化剤(配位子)として添加するようにしてい
る。例えば、チタンイソプロポキシドを出発原料とした
酸化チタン膜の製造では、1,3−ブタンジオールの添
加が有効であり(小柴寿夫、豊橋技術科学大学博士論
文、平成5年3月)、またジエタノールアミンの添加が
有効であり(ジャーナル・オブ・マテリアルズ・サイエ
ンス(Journal of Materials C
ience)、23、2259(1988))、さらに
β−ジケトンの添加が有効である(日本セラミックス協
会学術論文誌、97、183(1989))ことがそれ
ぞれ報告されている。そして、基板の表面に形成された
酸化チタンの薄膜(ゲル膜)は、400℃の温度で加熱
処理することによりアナタース(anatase)が結
晶化し、さらに800℃の温度で加熱処理することによ
りルチル(rutile)相へ転移することが知られて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ゾル−ゲル法により酸
化チタンの薄膜を製造する従来の方法では、チタンのア
ルコキシドまたは金属塩を含む溶液を加水分解させて得
られる前駆体塗布液を基板の表面に塗布し乾燥させた
後、酸化チタンの薄膜を結晶化させるために、基板表面
に形成された薄膜を400℃以上の温度で加熱処理する
必要がある。このため、従来のゾル−ゲル法によって
は、プラスチックスなどのような耐熱性の低い基体上に
結晶化された酸化チタンの薄膜を形成することができな
かった。
【0004】また、上記したようにアルカノールアミン
やβ−ジケトンなどの安定化剤を使用すると、基板の表
面に形成された塗布膜中に多くの有機物が残存すること
になる。このため、その有機物を分解させて塗布膜から
除去するために塗布膜を500℃程度の温度で加熱処理
することが必要になる。また、塗布膜中に多くの有機物
が残存するため、塗布膜を加熱処理すると、塗布膜から
の有機物の分解除去に伴って薄膜中に多くの気孔が生成
され、得られた酸化チタン膜の膜質が悪化する原因とな
る。薄膜中の気孔は、薄膜を加熱処理して緻密化すれば
除去することが可能であるが、そのためには、通常、6
00℃以上の温度での焼成が必要になってくる。
【0005】一方、前駆体塗布液を調製する際に、出発
原料を含む溶液中に安定化剤を添加しないと、前駆体塗
布液を基板の表面に塗布して基板上に形成された薄膜
(ゲル膜)を500℃〜900℃の温度で加熱処理して
結晶化させても、アナタースしか得られず、ルチルは得
られない。
【0006】この発明は、以上のような事情に鑑みてな
されたものであり、高温での加熱処理を行わなくても結
晶化された酸化チタンの薄膜を得ることができ、かつ、
アナタースのほか、ルチルやアナタースとルチルとの混
合形の薄膜を任意に得ることができ、被塗布物の表面に
形成された塗布膜中に多くの有機物が残存することが無
く、このため、有機物の分解除去のために塗布膜を高温
で加熱処理する必要が無く、塗布膜からの有機物の分解
除去に伴う膜質の悪化を生じることが無く、薄膜の緻密
化のための焼成も不要である酸化チタン膜の製造方法を
提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
チタンのアルコキシドまたは金属塩を含む溶液を加水分
解させて酸化チタン前駆体塗布液を調製し、その前駆体
塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布
物表面に形成された薄膜を結晶化させる酸化チタン膜の
製造方法において、前記酸化チタン前駆体塗布液を調製
する際に、加水分解されるべき溶液中に安定化剤を添加
しないようにして、前記被塗布物の表面に形成された薄
膜に対し波長が360nm以下である紫外光を照射し、
その際の紫外光の照射エネルギー密度を調節することに
より薄膜をアナタース、アナタースとルチルとの混合形
およびルチルのうちのいずれかに任意に結晶化させるこ
とを特徴とする。
【0008】請求項2に係る発明は、請求項1記載の製
造方法において、酸化チタンの固形分濃度が2重量%〜
15重量%となるように酸化チタン前駆体塗布液を調製
することを特徴とする。
【0009】請求項3に係る発明は、請求項1または請
求項2記載の製造方法において、酸化チタン前駆体塗布
液を調製する際に、溶剤として炭素数が4以下である低
級アルコールを使用することを特徴とする。
【0010】請求項1に係る発明の酸化チタン膜の製造
方法によると、酸化チタン前駆体塗布液を調製する際に
溶液中に安定化剤が添加されないので、前駆体塗布液を
被塗布物の表面に塗布して成膜したときに、成膜後の薄
膜中に残存する有機物の量が少なくなる。このため、有
機物の分解除去のために塗布膜を500℃程度の温度で
加熱処理する必要が無くなる。また、成膜後において薄
膜を結晶化させるために紫外光の照射を行っても、薄膜
からの有機物の分解除去に伴って、得られる酸化チタン
膜の膜質が悪化する、といった心配が無い。そして、得
られる酸化チタン膜の膜質の悪化を生じないので、薄膜
の緻密化のための焼成は不要である。
【0011】また、前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗
布して成膜した後、被塗布物上の薄膜に対し波長が36
0nm以下である紫外光を照射することにより、紫外光
を薄膜が吸収してそのエネルギーで酸化チタンが結晶化
される。したがって、酸化チタンの結晶化のために高温
での加熱処理を行う必要が無いので、プラスチックスの
ような耐熱性の低い基体上にも、結晶化された酸化チタ
ンの薄膜を形成することが可能になる。そして、被塗布
物上の薄膜に対して照射される紫外光の照射エネルギー
密度を調節することにより、薄膜をアナタース、アナタ
ースとルチルとの混合形あるいはルチルに任意に結晶化
させることが可能になる。
【0012】ここで、出発原料を含む溶液中に安定化剤
を添加しない場合、加熱処理による薄膜の結晶化の方法
では、相当の高温での加熱処理によってもアナタースし
か得られず、ルチルは得られないが、上記したように、
被塗布物上の薄膜への紫外光照射による結晶化を行うこ
とにより、アナタースのほか、ルチルやアナタースとル
チルとの混合形の薄膜が得られることになる。また、仮
に溶液中に安定化剤を添加したとした場合には、被塗布
物上の薄膜への紫外光照射による結晶化を行うと、照射
エネルギー密度を相当に小さくしてもルチルしか得られ
ず、アナタースは得られないが、上記したように、溶液
中に安定化剤を添加しないで前駆体塗布液が調製される
ことにより、ルチルのほか、アナタースやアナタースと
ルチルとの混合形の薄膜が得られることになる。
【0013】請求項2に係る発明の製造方法では、均質
な成膜が可能であるような均質で安定した前駆体塗布液
が得られ、かつ、1回の塗布工程で、実用的にみて特に
問題とならない程度の厚みの塗布膜を形成することが可
能である。すなわち、前駆体塗布液中の酸化チタンの固
形分濃度が高過ぎると、前駆体塗布液を貯蔵している短
期間のうちに、チタンのアルコキシドまたは金属塩の加
水分解が進行して塗布液がゲル化してしまい、さらに固
形分濃度が高くなると、前駆体塗布液の調製時に塗布液
中で沈殿を生じてしまう。このため、均質で安定した前
駆体塗布液が得られず、その塗布液を用いて成膜して
も、均質な塗布膜は得られない。一方、前駆体塗布液中
の固形分濃度が低過ぎると、均質な成膜が可能であるよ
うな均質で安定した前駆体塗布液となるが、その塗布液
を用いて成膜したとき、1回の塗布工程で得られる塗布
膜の厚みが非常に薄くなる。このため、所望の厚みの薄
膜を得るためには塗布工程を何回も繰り返す必要があ
り、このような方法は、工業的な見地からは採用するこ
とができない。請求項2に係る発明の製造方法では、均
質で安定した前駆体塗布液が得られ、かつ、1回の塗布
工程で適当な厚みの塗布膜を形成することが可能であ
る。
【0014】請求項3に係る発明の製造方法では、前駆
体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜したときに、
成膜後の薄膜中に残留する有機物の量が低減する。ま
た、より均質な前駆体塗布液が得られ、より均質な成膜
が可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施形態
について説明する。
【0016】この発明において目的とする酸化チタンの
薄膜は、チタンのアルコキシドまたは金属塩を出発原料
として前駆体塗布液を調製し、その前駆体塗布液を基板
の表面に塗布して成膜した後、基板表面に形成された薄
膜に対し波長が360nm以下である紫外光を照射して
薄膜を結晶化させることにより形成される。
【0017】出発原料であるチタンのアルコキシドまた
は金属塩の種類は、特に限定されないが、残留有機物を
低減するためには、また入手の容易さなどから、チタン
アルコキシドとして、アルコキシル基の炭素数が1〜4
であるものを用いることが好ましく、例えばチタンイソ
プロポキシド(Ti(O−i−Pr))などが好適に
用いられる。また、チタン金属塩としては、例えば硝酸
チタンや塩化チタンなどが使用される。
【0018】チタンのアルコキシドまたは金属塩を溶解
させる溶剤としては、出発原料および加水分解に用いる
水が可溶であれば、その種類は特に限定されず、単一溶
剤でも混合溶剤でもよいが、残留有機物を低減するため
には、また、より均質な前駆体塗布液を得るためには、
炭素数が4以下である低級アルコール、すなわちメタノ
ール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを使
用することが好ましい。
【0019】前駆体塗布液の調製方法は、特に限定され
ないが、溶剤に対するチタンのアルコキシドまたは金属
塩の添加量は、得られる前駆体塗布液中の酸化チタンの
固形分濃度が2重量%〜15重量%となるように調節す
ることが好ましく、特には固形分濃度が5重量%以下と
なるように調節することが好ましい。
【0020】前駆体塗布液中の固形分濃度が高過ぎる
と、前駆体塗布液の貯蔵中に、チタンのアルコキシドま
たは金属塩の加水分解が進行して短期間のうちに塗布液
がゲル化してしまい、さらに固形分濃度が高くなると、
前駆体塗布液の調製時に塗布液中で沈殿を生じてしまう
ことになる。このため、均質で安定した前駆体塗布液が
得られず、その塗布液を用いて成膜しても、均質な塗布
膜が得られなくなる。一方、前駆体塗布液中の固形分濃
度が低過ぎると、前駆体塗布液自体は、均質で安定して
いるが、その塗布液を用いて成膜したとき、1回の塗布
工程で得られる塗布膜の厚みが非常に薄くなる。このた
め、所望の厚みの薄膜を得るためには、塗布工程を何回
も繰り返さなければならなくなる。これに対し、酸化チ
タンの固形分濃度が2重量%〜15重量%となるように
調節された前駆体塗布液は、均質で安定しており、か
つ、1回の塗布工程で適当な厚みの塗布膜を形成するこ
とが可能である。特に、固形分濃度が5重量%以下とな
るように調製された前駆体塗布液は、より安定してお
り、空気中に室温で長期間にわたって貯蔵しておいても
沈殿を生じることが無く、また、後述するように、その
前駆体塗布液を使用して成膜すると、均質な塗布膜が得
られ、その塗布膜に対し紫外光を照射して酸化チタンを
結晶化させたときには、均質な酸化チタンの薄膜が得ら
れることになる。
【0021】また、この前駆体塗布液の調製方法におい
ては、溶液中にβ−ジケトンやアルカノールアミンなど
の安定化剤を添加しない。したがって、余分な有機物を
含有しない酸化チタン前駆体塗布液を得ることができ
る。
【0022】溶液中への水の添加量は、チタンアルコキ
シドにおけるアルコキシル基の種類や金属塩の種類など
によって異なるため、特定することはできないが、溶液
中の水の含有量が1mol%〜4mol%となるように
することが好ましい。また、加水分解のための触媒とし
て、酸触媒および/または塩基触媒を用いるようにして
もよく、好ましくは、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機
酸が用いられる。
【0023】前駆体塗布液の調製の際の温度や雰囲気
は、特に限定されないが、加水分解の速度が適度に調整
されて均質な前駆体塗布液が得られるようにするために
は、室温以下の温度で加水分解・重合反応を行わせる行
うことが好ましい。以上の条件で前駆体塗布液の調製を
行うことにより、均質な塗布液が得られる。
【0024】得られた前駆体塗布液は、通常の方法によ
り基板の表面に塗布して基板上に成膜することができ
る。塗布方法は、特に限定されず、通常行われているス
ピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、
フローコート法、バーコート法などの各種のコーティン
グ方法により成膜が可能である。塗布操作は、室温以下
の温度で行うことが望ましく、また、湿度は低い方が好
ましい。基板の表面への塗布液の塗布は、一層だけでも
よいし、多層にしてもよい。被塗布基板の種類は、特に
限定されず、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、プ
ラスチック基板などの基板が使用される。
【0025】基板上に薄膜が形成されると、その薄膜に
対して波長が360nm以下である紫外光を照射する。
光源としては、波長が360nm以下である紫外光を照
射可能であれば、その種類を問わないが、例えば、高圧
水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマランプ、ArF
エキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、シンクロトロ
ン放射光などが使用される。これらの光源のうち2つも
しくはそれ以上のものを組み合わせて使用することも可
能である。
【0026】薄膜に対する紫外光照射の際に、目的に応
じて、基板を加熱したり、基板を減圧下に置いたり、雰
囲気(酸化雰囲気または非酸化雰囲気)を制御したりす
ることも可能である。薄膜に対して紫外光が照射される
ことにより、薄膜が結晶化され、基板の表面に目的の酸
化チタンの薄膜が形成される。
【0027】そして、この酸化チタン膜の製造方法で
は、薄膜に対して照射される紫外光のエネルギー密度を
調節することにより、薄膜をアナタース、アナタースと
ルチルとの混合形またはルチルの任意の構造に結晶化さ
せるようにする。すなわち、紫外光の照射エネルギー密
度を比較的低くすることにより、薄膜をアナタースの形
に結晶化させ、紫外光の照射エネルギー密度を比較的高
くすることにより、薄膜をルチルの形に結晶化させる。
また、紫外光の照射エネルギー密度を適当に調節するこ
とにより、薄膜をアナタースとルチルとの混合形に結晶
化させ、さらにアナタースとルチルとの混合比も任意に
変えるようにする。
【0028】
【実施例】次に、この発明のより具体的に実施例につい
て、比較例を示しながら説明する。
【0029】〔前駆体塗布液の調製〕チタンイソプロポ
キシド(Ti(O−i−Pr))4.7gとエタノー
ル20.0gとを混合して、A液とした。塩酸(6N)
1.5gとエタノール18.4gとを混合して、B液と
した。室温で、A液とB液とを混合し、混合溶液を撹拌
して加水分解させた。これにより、酸化チタンの均質な
前駆体塗布液が得られた。
【0030】得られた前駆体塗布液は、透明であり、空
気中に長期間(数ヶ月)貯蔵しても、沈殿を生じること
なく透明性を保ったままであった。この前駆体塗布液中
の固形分濃度は、3重量%程度であった。なお、前駆体
塗布液中の固形分濃度が10重量%程度になると、塗布
液は透明であるが、数日間放置した場合にゲル化した。
また、固形分濃度が20重量%以上になると、塗布液中
で沈殿を生じた。
【0031】〔成膜〕上記した調製例で得られた前駆体
塗布液を、室温、湿度30%以下で、スピンコーターを
使用して、石英ガラス基板上およびシリコン基板上にそ
れぞれ塗布し500rpmの回転数で5秒間および2,
000rpmの回転数で20秒間処理して成膜した後、
基板上に形成された塗布膜を100℃の温度で1時間乾
燥させた。これにより、均質な薄膜(ゲル膜)が得られ
た。得られたゲル膜は、350nm以下の波長での光の
吸収が認められた。
【0032】〔薄膜の結晶化〕上記した成膜例で得られ
た薄膜(ゲル膜)に対し、KrFエキシマレーザ光(照
射エネルギー密度:51mJ/cm〜113mJ/c
、ショット数:100回)を照射した。これによ
り、得られた薄膜のX線回折パターンを図1に示すよう
に、薄膜が結晶化されていることが確認された。また、
同様に薄膜(ゲル膜)に対してArFエキシマレーザ光
を照射したときにも、結晶化された酸化チタンの薄膜が
得られた。
【0033】そして、薄膜(ゲル膜)に対して照射され
るKrFエキシマレーザ光のエネルギー密度を変化させ
たときに、図1に示すように、照射エネルギー密度50
mJ/cmの近辺でアナタース相によるピークが見え
始め、照射エネルギー密度の増加に伴ってアナタース相
によるピークが鋭くなった。また、照射エネルギー密度
70mJ/cmの近辺でルチル相によるピークが見え
始め、照射エネルギー密度110mJ/cmの近辺で
結晶性の良いルチル単相膜が得られた。そして、照射エ
ネルギー密度が70mJ/cm〜90mJ/cm
あるときに、アナタース相とルチル相とが混合した薄膜
が得られた。
【0034】また、薄膜に対して照射されるエネルギー
密度50mJ/cmとし、ショット数を300ショッ
ト、1,200ショットおよび3,000ショットと変
化させた。この結果、ショット数を増加させることによ
り薄膜の結晶性が向上することが確認された。また、基
板の種類に拘わらず、石英ガラス基板でもシリコン基板
でも、その基板上に形成された薄膜が結晶化することが
確認された。なお、基板の種類によって、結晶化挙動は
異なっていた。さらに、照射エネルギー密度の増加に伴
って、結晶化された薄膜の膜厚は薄くなり、薄膜の屈折
率が高くなることが確認された。
【0035】〔比較例1〕上記した実施例において、溶
剤としてエタノールの代わりに、配位子としての機能も
持つエトキシエタノールを使用し、チタンイソプロポキ
シド4.7gとエトキシエタノール8.0gとを混合し
てA液とし、塩酸(6N)1.5gとエトキシエタノー
ル7.0gとを混合してB液とした。これ以外は、上記
した実施例と全く同様にして、酸化チタンの薄膜を形成
した。この結果、薄膜(ゲル膜)に対して紫外光を照射
したときに、薄膜が白濁しやすいことが分かった。ま
た、薄膜に対してKrFエキシマレーザ光(照射エネル
ギー密度:51mJ/cm〜113mJ/cm、シ
ョット数:100回)を照射したとき、薄膜のX線回折
パターンには、ルチル相に由来するピークしか認められ
なかった。照射エネルギー密度を47mJ/cm(シ
ョット数:100回)と小さくしても、薄膜のX線回折
パターンにアナタース相は現れなかった。
【0036】〔比較例2〕上記した比較例1と同様にし
て成膜した後、基板上の薄膜(ゲル膜)を500℃の温
度で加熱処理した。この結果、結晶化された酸化チタン
(アナタース)の薄膜が得られた。
【0037】〔比較例3〕上記した実施例と全く同様に
して成膜した後、基板上の薄膜(ゲル膜)を500℃の
温度で加熱処理した。この結果、薄膜のX線回折パター
ンには、アナタース相に由来するピークしか認められな
かった。また、基板上の薄膜(ゲル膜)を900℃とい
った高温で加熱処理しても、薄膜のX線回折パターンに
ルチル相は現れなかった。
【0038】
【発明の効果】請求項1に係る発明の製造方法による
と、高温での加熱処理を行わなくても結晶化された酸化
チタンの薄膜を得ることができる。したがって、プラス
チックス等の耐熱性に劣る基板上にも、酸化チタンの薄
膜を形成することが可能になる。また、アナタースのほ
か、ルチルやアナタースとルチルとの混合形の薄膜を任
意に得ることができる。さらに、前駆体塗布液の調製の
際に安定化剤を用いないので、被塗布物の表面に形成さ
れた塗布膜中に多くの有機物が残存することが無い。こ
のため、有機物の分解除去のために塗布膜を高温で加熱
処理する必要が無く、塗布膜からの有機物の分解除去に
伴う膜質の悪化を生じる心配が無く、薄膜の緻密化のた
めの焼成も不要である。
【0039】請求項2に係る発明の製造方法では、均質
で安定した前駆体塗布液が得られ、かつ、1回の塗布工
程で適当な厚みの塗布膜を形成することが可能である。
このため、均質な成膜で可能で、均質な酸化チタンの薄
膜を得ることができ、かつ、成膜の際に何回も塗布工程
を繰り返す必要が無い。
【0040】請求項3に係る発明の製造方法では、前駆
体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜したときに、
成膜後の薄膜中に残留する有機物の量が低減する。ま
た、より均質な前駆体塗布液が得られので、より均質な
成膜が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例で得られた薄膜のX線回折パ
ターンを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G047 CA02 CB06 CD02 CD07 4G075 AA24 AA61 BA05 CA02 CA33 CA36 CA51 4K022 AA03 AA04 AA13 BA15 BA22 BA33 CA12 DA08 DB30

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタンのアルコキシドまたは金属塩を含
    む溶液を加水分解させて酸化チタン前駆体塗布液を調製
    し、その前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜
    した後、被塗布物表面に形成された薄膜を結晶化させる
    酸化チタン膜の製造方法において、 前記酸化チタン前駆体塗布液を調製する際に、加水分解
    されるべき溶液中に安定化剤を添加しないようにして、
    前記被塗布物の表面に形成された薄膜に対し波長が36
    0nm以下である紫外光を照射し、その際の紫外光の照
    射エネルギー密度を調節することにより薄膜をアナター
    ス、アナタースとルチルとの混合形およびルチルのうち
    のいずれかに任意に結晶化させることを特徴とする酸化
    チタン膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸化チタン前駆体塗布液は、酸化チタン
    の固形分濃度が2重量%〜15重量%となるように調製
    される請求項1記載の酸化チタン膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 酸化チタン前駆体塗布液を調製する際
    に、溶剤として炭素数が4以下である低級アルコールを
    使用する請求項1または請求項2記載の酸化チタン膜の
    製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001262007A (ja) * 2000-03-17 2001-09-26 Mitsubishi Gas Chem Co Inc チタニア塗布液及びその製造方法、並びにチタニア膜及びその形成方法
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CN100389879C (zh) * 2006-04-20 2008-05-28 复旦大学 一种纳米晶介孔二氧化钛光催化剂的合成方法

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