JP2000263065A - 工業廃液中のリンの除去方法 - Google Patents

工業廃液中のリンの除去方法

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JP2000263065A
JP2000263065A JP11075930A JP7593099A JP2000263065A JP 2000263065 A JP2000263065 A JP 2000263065A JP 11075930 A JP11075930 A JP 11075930A JP 7593099 A JP7593099 A JP 7593099A JP 2000263065 A JP2000263065 A JP 2000263065A
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wastewater
waste liquid
treatment
magnesium
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Mamoru Takayanagi
柳 守 高
Tomonobu Nakamura
村 智 宣 中
Yoshihiro Kayanuma
沼 義 弘 萱
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Matsuda Sangyo Co Ltd
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Matsuda Sangyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来処理が困難であった、写真処理廃液のよ
うに塩類を高濃度で含む廃液中のリンを容易に除去する
方法、を提供することにある。 【解決手段】 リン酸塩の以外の無機塩類を高濃度で含
む工業廃液に、マグネシウム塩を添加して、リン含有不
溶性塩を形成させ、これを除去することを特徴とするリ
ンの除去方法、による。この方法により、無機塩類を高
濃度で含む廃液において、汚泥の発生量を最小限に抑え
て廃液中のリンを除去することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業廃液中のリン
を除去する方法、詳しくは、リン酸塩及びその他の塩類
を高濃度含む排水の処理において、汚泥の発生を最小限
に抑えて、実質的にリンのみを除去することを特徴とす
るリン除去方法、に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、写真廃液は処理の難しいものとさ
れていて、このような処理の難しい廃液は海洋投棄され
ていた。しかし、産業廃棄物の生態系に与える影響への
懸念から、「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の
防止に関する条約(ロンドン条約)」に基づいて、19
96年1月より、海洋投棄が原則禁止となった。国内で
も、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の整備が行
われ、こうした廃液の陸上処理が義務づけられた。この
結果、処理の難しい廃液の無害化方法が数多く考案さ
れ、現在では様々な方法でこれら廃液が処理され、無害
な排水として排出されている。
【0003】排水の水質規制項目は、大きく分けると、
健康項目と生活環境項目になる。健康項目で規制される
物質には、カドミウムや鉛など、人体や生物に直接影響
を及ぼす有害物質が含まれる。生活環境項目で規制され
る物質には、総窒素やリンなど、人体への直接の毒性は
無いが、富栄養化などを引き起こして周辺環境を汚染す
る物質が含まれる。ところが、近年、環境意識の高まり
と共に、こうした水質規制項目に市町村条例による上乗
せ排水基準がさらに課されるようになり、従来の処理方
法では基準値を達成することが困難な場面が多くなって
きている。
【0004】特に、リンは、湖沼などの閉鎖性水域に流
れ込むと、藻類や微生物の栄養源となって富栄養化を引
き起こし、その結果、水質や周辺環境に重大な被害を与
える。これまでリンは、屎尿を含む生活排水が主な排出
源であったが、近年では写真処理廃液をはじめとして、
各種工業等の廃液もその排出源となっている。
【0005】産業廃棄物処理の過程で排出される廃液・
排水には、多くの場合、硝酸塩、硫酸塩などの様々な塩
類が、リン酸塩と共に含まれている。特に、写真廃液に
は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムといった無
機塩の他に、高BOD、COD負荷を持つ有機化学物
質、鉄キレート化合物やリンが、含まれている。一般
に、写真廃液としては、現像廃液、定着廃液、発色現像
廃液、漂白廃液、漂白定着廃液等およびこれらの混合物
が含まれる。このような写真廃液の処理方法としては、
酸化分解処理が主であり、化学酸化処理、電解酸化処
理、液中燃焼処理などの方法がある。中でも液中燃焼処
理は、一般に、有機物を多く含有する、廃酸液や廃アル
カリ液等の廃液を、燃焼炉内に噴霧して、有機物を完全
に燃焼させ、発生した高温燃焼ガスを、一挙に下部の液
体中に噴出させるものであって、このようにして、液体
と燃焼ガス気泡との直接接触によりガスを約90度まで
冷却すると同時に、ナトリウムなどの無機物塩の捕集を
行うなど、熱伝達や燃焼ガス成分の吸収を効率的に行う
処理方法のことをいう(「産業廃棄物処理ガイドブック
〈改訂版〉」、電力新報社発行、p84等)。このように
して、液中燃焼処理は、含有成分をほぼ完全に無害化で
きることから、現在の写真廃液処理の大部分がこの方法
に依っている。
【0006】すなわち、液中燃焼処理によれば、写真廃
液中の有機化学物質は、二酸化炭素と水にまで酸化さ
れ、一方、無機塩はその最終酸化形態まで酸化されて水
中に溶解した状態(排水)となる。この無機塩を多量に
含んだ排水は、フィルタープレスなどの濾過装置により
懸濁物質が除去され、pH調整後、下水道放流されるの
である。このようにして放流される排水は、通常、下水
道放流における水質規制項目のほとんどを達成してい
る。
【0007】しかしながら、近年、現像液中のリン濃度
が増加する傾向にあり、このため、排水中のリン濃度に
関して下水道放流基準値を守ることが難しくなりつつあ
る。リンは、現像液中にリン酸塩の形で含まれており、
上記のように液中燃焼処理をした場合であっても、シア
ンや有機化合物のように分解することによって無害化す
ることができず、リンは燃焼処理後の排水中に残留す
る。従って、水質規制項目を守るためには、この排水中
からリンを分離除去しなければならない。こうした傾向
は、化学酸化処理、電解酸化処理を行っている場合にお
いても同様であって、リン除去が求められている。
【0008】排水処理における一般的なリン除去方法と
しては、凝集沈殿法、微生物による活性汚泥法、リンを
不溶性の結晶として取り除く晶析法、リンをリン酸マグ
ネシウムアンモニウムとして析出させることからなるM
AP法、などがある。
【0009】このうち、凝集沈殿法は、カルシウム塩や
硫酸バンドなどの凝集剤を添加し、リンを不溶性の塩と
して、または凝集沈降する他の物質に巻き込んで共沈さ
せて、除去する方法であり、排水処理において最もよく
行われている方法である。しかし、高濃度の塩類を含む
排水の処理などでは、汚泥の発生量が多く、それに伴う
汚泥の処理コスト、並びに過剰量投入するための薬品コ
スト、がかかるといった欠点がある。
【0010】すなわち、凝集剤としてカルシウム塩、例
えば消石灰、を用いて高濃度の塩類を含む排水を処理し
た場合、カルシウムは、硫酸、リン酸などと不溶性の塩
をつくって、沈降する。重金属類を共沈させるような場
合は消石灰でも良いが、写真廃液を液中燃焼処理した後
の排水のように、含まれている塩類のほとんどが硫酸塩
で、リン濃度が硫酸塩と比較すると非常に少ないような
液の処理においては、カルシウムイオンとリン酸イオン
の反応がほとんど起こらない。即ち、硫酸塩が多く含ま
れているような系においては、硫酸イオンとカルシウム
イオンが硫酸カルシウムを生成するため、リンの除去効
率が著しく低下してしまう。そのため、排水中リン濃度
を下水道放流基準値以下に下げるためには過剰量の消石
灰を添加する必要があり、この結果、副成硫酸カルシウ
ムの析出により汚泥量が膨大なものとなって、使用薬品
コストや汚泥処理コストの負担が増大することとなる。
【0011】また、硫酸バンド法の場合は、排水のpH
を予め5〜7に調整する必要があり、このpH範囲に当
てはまらない場合は、添加前にpH調整を行う必要があ
る。一方、産業廃棄物処理においては、多くの場合、固
液分離の際の処理液pHを弱アルカリ性、即ち8〜9程
度、に保って、処理後の液の濾過性を良くする。従っ
て、硫酸バンド処理をする場合には、処理後の排水の濾
過分離性が悪くなる傾向が見られ、作業効率が悪化して
しまう。
【0012】活性汚泥法は、リンを取り込む性質を持つ
微生物の作用によりリンを除去する方法である。大量の
排水を処理する場合、設備面積が大きくなり、維持コス
トがかかる。また、汚泥発生量が多く、高濃度のリン除
去には不向きである、といった欠点がある。これらを改
良した、汚泥発生量の少ない生物学的脱リン法もある
が、現状では、運転の安定性に問題があるようである。
【0013】晶析法は、排水中のリンをカルシウムヒド
ロキシアパタイトとして析出させる方法であり、汚泥の
発生量がほとんどない点を特徴とする。この点では、上
記の各方法より有利であるといえる。しかしながら、写
真廃液燃焼処理後の排水のような、硫酸塩などを高濃度
に含む排水、の処理においては、硫酸カルシウムの析出
によって、リン除去効率が低下するため、この方法は、
リンを除去する観点からは望ましくない。
【0014】MAP法は、リンをリン酸マグネシウムア
ンモニウム(MAP)として析出させる方法であって、
晶析法の一種である。この方法は、排水中にアンモニア
が含まれているような下水処理において発展した方法で
ある。このため、排水中にアンモニアが含まれていない
場合は、そのまま本MAP法を適用することは出来ない
ので、MAP法適用にあたって、アンモニアを別途排水
に添加する必要がある。また、このMAP法には、これ
を液中燃焼処理後の排水に適用するに当たっては別の問
題点がある。すなわち、液中燃焼処理後の排水の処理は
液中燃焼処理後に引き続いて行うことが処理効率上は望
ましく、従って排水は高温であることが普通であるとこ
ろ、そのような高温ではMAP結晶が析出し難い、とい
った欠点があるからである。
【0015】従って、上記したように、高濃度の塩を含
む排水中のリンを除去でき、かつ、汚泥発生量が少な
い、リンの除去方法、が望まれている。すなわち、焼却
処理法においては、省エネルギーの観点から廃液を濃縮
した後に処理する場合が多く、この場合、濃縮により処
理後の排水中の無機塩等の割合が増大してしまうため、
塩を高濃度で含む排水を容易に処理できる方法、が望ま
れている。また、アンモニアを含まない排水を処理する
ことができるリン除去方法も望まれている。さらに、液
中燃焼処理直後の排水は、通常高温であるため、高温の
状態のまま、リン除去処理が可能である方が、処理効率
上有利であり、このような高温の排水を処理できる方法
も望まれている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】[発明の概要]本発明
は、上記の従来技術が包蔵する問題を解決することを目
的とするものであり、具体的には、写真廃液のように高
濃度の塩類を含むため、カルシウム塩による凝集沈澱処
理が困難であったような廃液中のリンを除去する方法、
を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のように
従来処理が困難であった廃液中に、マグネシウム塩を添
加すると、リンが、廃液中の塩類の中から選択的に不溶
性塩を形成して、除去可能な状態となる、との発見に基
づくものであり、また、これにより上記従来技術が包蔵
している問題を解決できるとの発見に基づくものであ
る。
【0018】<要旨>本発明によるリンの除去方法は、
リン酸塩以外の無機塩類を少なくとも1g/L含む、含
リン工業廃液に、マグネシウム塩を添加してリン含有不
溶性塩を形成させ、これを除去すること、を特徴とする
ものである。
【0019】<効果>本発明のリンの除去方法は、廃液
にマグネシウム塩を添加して、種々の無機塩のようなの
夾雑物を含む廃液中にあるリンを、選択的に、不溶性の
リン酸マグネシウムに変換し、これを沈殿させて分離除
去するものであって、このとき、廃液中に多く含まれる
リン以外の無機イオン、主に硫酸イオン等、とは、不溶
性塩を殆ど形成しない。このため、本発明の方法によれ
ば、硫酸イオンなどを高濃度で含む廃液の処理におい
て、汚泥の発生量を最小限に抑えてリンを除去すること
ができ、処理コストも低減できる。同時に、従来法のよ
うに過剰量の薬品を投入する必要がないので、使用薬品
コストを低く抑えることもできる。さらに、本発明の方
法は、処理過程にアンモニアは関与しないので、アンモ
ニアを含まない廃液の処理に有効である。
【0020】また、本発明の方法の実施にあたっては、
pH調整などの事前操作がほとんど必要ないため、特に
液中燃焼処理後の排水のように、廃液が高温であるよう
な場合、マグネシウム塩溶液を添加するだけで効率良く
反応を進めることができるという利点がある。従って、
本発明の方法により、作業工程の簡素化及び汚泥処理コ
ストの低減など、従来に比べ優れた排水処理を行うこと
が可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】[発明の具体的説明] <工業廃液>本発明のリン除去方法で処理の対象とする
廃液は、塩を高濃度で含む、含リン工業廃液、すなわ
ち、主として各種工業において発生する種々の廃液、で
ある。このような廃液の代表的なものとしては、写真廃
液および/またはその処理後廃液等が例示される。ま
た、本発明の対象として好ましい廃液としては、従来の
MAP法では処理が煩雑であった、アンモニア不含の廃
液、すなわちアンモニアを殆ど含まない廃液あるいはア
ンモニアを全く含まない廃液、も挙げられる。また、こ
れらの廃液は、必要に応じて、各種濃縮手段を利用して
濃縮させて、濃縮廃液として本発明の処理に付すことも
できる。
【0022】ここで、写真廃液とは、現像廃液、定着廃
液、またはそれらの混合物等を含むものをいう。このよ
うな写真廃液のうち、典型的な現像廃液の一例として
は、成分として、有機物類の他、主に、亜硫酸カリウ
ム、炭酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、水酸化カリウム
等の無機塩類を含むものが例示される。また、典型的な
定着廃液の一例としては、成分として、有機物類の他、
主に、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、等
の無機塩類を含むものが例示される。これらの廃液は、
通常、無機塩類を、そのいずれか一種の濃度において、
あるいはそれら二種以上の合計の濃度として計算して、
少なくとも1g/L含むものである。
【0023】また、写真廃液処理後の廃液として代表的
なものは、写真廃液を液中燃焼処理に付して、可燃物な
いし酸化可能物質を燃焼ないし酸化させて得た廃液(排
水)が挙げられる。すなわち、この液中燃焼処理後の排
水は、有機物やアンモニア等が燃焼処理により既に無毒
化されて除去された後に残されるものであり、リンの
他、硫酸塩等の無機物を多量に含む排水である。このよ
うな液中燃焼処理後の排水は、典型的には、成分とし
て、主に、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩類
を含むものであり、好ましくは、無機塩を、そのいずれ
か一種の濃度において、あるいはそれら二種以上の合計
の濃度として計算(硫酸ナトリウム換算)して、少なく
とも1g/L含むものである。
【0024】これに対して、従来の各種リン除去法の適
用対象とされてきた屎尿等の排水は、通常、アンモニウ
ム塩以外の硫酸ナトリウムや硫酸カリウム等の無機塩類
を、極僅か(通常、例えば数ppm程度又は1ppmより小さ
い濃度)しか含まないものであることが知られている。
このため、上記の廃液濃度からもわかるように、本発明
のリン除去法は、従来の廃液(排水)に比べて、極めて
高濃度の無機塩類を含む廃液を、処理対象として処理で
きるものである。このような高濃度の無機塩類を含む廃
液から、リンを選択的に除去する処理方法は、従来、見
られなかったものである。
【0025】また、上述したように、本発明の対象とし
て好ましい廃液には、アンモニア不含の廃液、すなわち
アンモニアを殆ど含まない廃液あるいはアンモニアを全
く含まない廃液、も挙げられる。本発明の処理方法によ
れば、不溶性塩形成過程においてアンモニアの存在は不
要なため、マグネシウム塩のみを添加することにより、
アンモニア不含の廃液であっても、容易に処理が可能で
ある。この点で、アンモニア不含廃液を処理する場合
は、アンモニアの添加が必要となる従来のMAP法より
有利である。
【0026】上記のような液中燃焼処理後に残った排水
については、高温の燃焼処理操作の後に得られるため、
燃焼処理直後の排水は高温であることが多い。したがっ
て、このようにして得られる排水の温度は、通常、40
℃より高い温度である。
【0027】<マグネシウム塩>従来、リン除去処理で
多く使用されてきたカルシウム塩は、写真廃液等に多く
含まれる硫酸塩との間で不溶性の硫酸カルシウムを形成
してしまうため、リンを除去する目的で、このような廃
液にカルシウム塩を加えて、リンとで不溶性塩を形成さ
せるためには、過剰量のカルシウム塩物質を加える必要
がある。また、このように過剰量の塩を加えてしまう
と、不溶性塩の汚泥を大量に発生してしまうことにな
り、これらを処理するコストが増大する一方、使用する
薬品のコストも増えることになるので、問題である。こ
れに対し、マグネシウム塩は、廃液中に主に存在する硫
酸塩とは不溶性の塩を殆ど形成することなく、実質的に
リンとのみリン酸マグネシウムのような不溶性の塩を形
成するため、不溶性塩の形成に伴う汚泥の発生量も少な
くて済むことになる。このため、写真廃液等の中のリン
を除去処理するためには、処理コストおよび使用薬品コ
スト等の面から、より好ましく、リンのより効率的な除
去が可能となる。すなわち、写真廃液等の塩を高濃度で
含む廃液中のリン除去のためには、マグネシウム塩の使
用は、従来法に比べて、明らかに有利であるといえる。
【0028】本発明に用いられるマグネシウム塩として
は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネ
シウム等、またはそれらの混合物、が包含される。本発
明では、特に、硫酸マグネシウム、を使用するのが好ま
しい。これらのマグネシウム塩は、薬剤として製造会社
等から入手可能なものを使用するのが普通であるが、廃
棄物処理過程等で別途排出されたマグネシウム成分、さ
らに、蛇紋石のようなマグネシウム含有鉱物、を使用す
ることもできる。このように、本発明では、マグネシウ
ム含有鉱物をもマグネシウム塩と呼ぶこととする。
【0029】マグネシウム塩を使用する場合には、入手
されたマグネシウム塩をそのまま、または粉砕し、それ
をそのまま処理用廃液中に投入してもよい。しかしなが
ら、好ましいマグネシウム塩は、対象廃液(排水)に可
溶性のもの、具体的には水溶性のもの、である。本発明
で使用するのに典型的な、硫酸マグネシウムや塩化マグ
ネシウム等のマグネシウム塩は、溶解度が高いので、溶
媒に溶かして溶液として投入するのがより好ましい。こ
の場合、使用する溶媒としては、水が普通であるが、硫
酸、塩酸、硝酸のような酸等も使用可能である。マグネ
シウム塩の添加の際には、マグネシウム塩水溶液の形態
で使用するのが、特に好ましい。他の水溶性マグネシウ
ム塩の一群は、マグネシア混液である。一般的に、マグ
ネシア混液は、塩化マグネシウム六水和物と塩化アンモ
ニウムとを水に溶かし、アンモニアを加え、水で希釈し
て作られるものであり、通常、リン酸塩と反応して白色
の沈殿を生ずるものである。このように、マグネシウム
塩の溶液を使用することより、酸化マグネシウム、水酸
化マグネシウム等を投入した場合の固−液反応よりも反
応性が良い、液−液反応を起こさせることが可能であ
る。すなわち、スラリー状態でカルシウム塩を添加する
従来法よりも、高効率でリン除去を行うことができる。
【0030】マグネシウム塩類の水への溶解度は、25
℃で、硫酸マグネシウムで26.7g/100g−水、
塩化マグネシウムで35.5g/100g−水、であ
る。添加時は可能な限り高濃度の溶液である方が、処理
後の排水量を減らすためにも有利であるので、硫酸マグ
ネシウムでは15〜33.5w/v%、好ましくは20
〜30w/v%、例えば25w/v%、塩化マグネシウ
ムでは25〜42.3w/v%、好ましくは30〜40
w/v%、例えば35w/v%、程度の高濃度溶液とし
て添加することが望ましい。
【0031】<マグネシウム塩の添加>上記のように、
処理する廃液(排水)にマグネシウム塩、例えば、硫酸
マグネシウムまたは塩化マグネシウム、を添加する場合
には、その高濃度溶液を、処理する排水に適量添加する
のが好ましい。このとき、排水への添加量は、処理対象
の液中リン濃度によって異なる。したがって、常温にお
ける処理対象の排水中の初期リン濃度が、例えば70m
g/Lである場合には、添加後の排水中のマグネシウム
塩濃度が、2g/Lより高くなるように、前記マグネシ
ウム塩溶液を添加するのが好ましい。あるいはまた、上
記の初期リン濃度が、例えば100mg/Lである場合
には、添加後の排水中のマグネシウム塩濃度が、4g/
Lより高くなるように、前記マグネシウム塩溶液を添加
するのが好ましい。このように、処理対象の排水を処理
することにより、排水中のリン濃度を目標濃度(例え
ば、下水道放流基準)以下に下げることが出来る。
【0032】<マグネシウム塩添加時のその他条件>リ
ン酸とマグネシウムを反応させてリン酸マグネシウムを
生成させるには、反応速度論に従い高温である方が生成
反応の進行が促進されると考えられるため、エネルギー
を多量に加える必要があるので、反応系(処理時の排
水)の温度は、高温であることが望ましい。すなわち、
反応系の温度は、好ましくは少なくとも40℃であり、
少なくとも70℃であるのが最適である。また、反応系
の温度の上限は、90℃程度である。このような温度に
するため、必要に応じて、予め反応系を種々の加熱手段
によって加熱することができる。また、液中燃焼処理の
ような廃液焼却処理を行った後の排水を使用する場合、
通常、焼却処理直後の排水は、高温である。このような
場合、得られた高温の排水を、そのまま、または、保温
して、あるいは必要に応じて冷却または加熱することに
より、本発明のリン除去処理の反応系に使用することが
できる。このように、焼却処理直後の排水温度が高い状
態に在ることを利用することにより、反応をより高効率
で促進させることできる。
【0033】本発明の方法によれば、通常、事前にpH
調整する必要はほとんどないが、必要に応じて、処理対
象の排水を、その処理前にpH調整してもよい。この場
合、処理上、好ましいpH範囲は、5〜9の範囲であ
る。従って、処理する排水が強アルカリ性である場合
は、添加したマグネシウム化合物が水酸化マグネシウム
を生成してしまうのを抑制するため、あらかじめ弱アル
カリ性以下(pH9以下)に調整しておくことが望まし
い。本発明の方法は、このように、処理液の濾過性が良
いとされる、弱アルカリ性において処理可能なため、排
水の濾過性が比較的良好な状態で処理を行えるので、作
業効率が良い、という利点がある。
【0034】<リンの除去処理>リンの除去処理は、先
ず、マグネシウム塩、例えば、硫酸マグネシウムまたは
塩化マグネシウム、の高濃度溶液を、処理対象の排水に
適量添加する。このとき、特に硫酸マグネシウム溶液の
場合、この硫酸マグネシウム溶液のpHが約6〜7であ
るため、通常、酸性またはアルカリ性の処理液に添加し
て中和に伴う急激な発熱及び反応を引き起こすことはな
い。マグネシウム塩溶液添加後は、通常、フロックが速
やかに生成し、撹拌する過程で成長する。フロックを成
長させるため、一般には、20分以上撹拌を行う。生成
したフロックは濾過分離性が良いので、高分子凝集剤な
どを投入してフロックを成長させる作業は、特に希望す
る場合を除けば、一般に不要である。反応後の液は、フ
ィルタープレスなどの固液分離装置で清澄液と固形分に
容易に分離できる。濾過した液は、リンが実質的に除去
されているため、必要に応じてpH調整を行った後、下
水道等に排出・放流することができる。
【0035】
【実施例】下記は、本発明の例を示して本発明を具体的
に説明するものである。本発明は、これらに限定される
ものではない。
【0036】[例1](比較例) 《写真廃液処理後排水》写真廃液を液中燃焼処理する過
程で発生する排水中のリンを除去した例は、下記の通り
である。液中燃焼処理後の灰分は、発生した燃焼ガスの
一部とともにそのまま水中に吹き込まれ、水により急速
冷却される。このときガス中に含まれる灰分は水中に捕
集・溶解される。写真廃液に多量に含まれている亜硫酸
ナトリウムは硫酸塩まで酸化される。灰分が吹き込まれ
た直後の排水の温度は約90℃である。灰分を固液分離
する前の排水を用いて、リンを除去する試験を行った。
【0037】《リンの除去》まず、従来の方法である消
石灰によるリン除去を試みた例は、下記の通りである。
排水500mLを採取し、70〜80℃に加熱して消石
灰を所定量添加し、約20分撹拌した。液を濾過し、濾
液中のリン濃度を調べた。排水中消石灰濃度に対するリ
ン濃度変化を図1に示す。初期リン濃度105mg/L
の排水を、リンの下水道放流基準値である32mg/L
以下にするのに必要な消石灰添加量は、約45g/Lで
あった。
【0038】[例2]例1と同様の写真廃液処理排水
に、硫酸マグネシウムを添加した例(本発明)は、下記
の通りである。硫酸マグネシウムの添加形態は、25w
/V%溶液とした。試験方法は、例1と同じである。硫
酸マグネシウム濃度に対するリン濃度変化の様子を図2
に示す。初期濃度75mg/Lのリンを、排水中硫酸マ
グネシウム濃度を1g/L以上とすることにより、下水
道放流基準値である32mg/L以下に落とすことがで
きた。
【0039】[例3]硫酸マグネシウムを用いた別の例
として、排水を煮沸させたままで投入した場合は、下記
の通りである。これは、液中燃焼処理を行った直後の排
水により近い状態を想定して行ったものである。排水5
00mLを煮沸させ、25w/V%硫酸マグネシウム溶
液を所定量添加した。添加後、10分ごとに蒸発損失分
の水を添加しながら、1時間反応させた。このときの排
水中硫酸マグネシウム濃度に対するリン濃度変化の様子
を図3に示す。排水中の硫酸マグネシウム濃度を3g/
L以上とすることにより、初期濃度94mg/Lのリン
を32mg/L以下にすることが出来た。
【0040】排水500mLを処理した場合の汚泥発生
量について比較した結果は、下表に示す通りである。
【0041】 表1 例 排水中添加薬品濃度 汚泥発生量[g/500mL−排水] 1 消石灰 45g/L 25 2 硫酸マグネシウム 1g/L 0.8 3 硫酸マグネシウム 3g/L 2.2
【0042】このように、マグネシウム塩を用いた場合
は、汚泥発生量が非常に少ないという結果が得られた。
また、マグネシウム塩を用いることにより、液中燃焼処
理直後の高温の排水であっても、汚泥発生量を低減する
ことができた。
【0043】
【発明の効果】本発明の方法によって、無機物の塩を高
濃度で含む廃液のリン除去処理において、汚泥の発生量
を最小限に抑えることができ、その結果、処理コストお
よび使用薬品コストを低く抑えることができること、な
らびに、アンモニアを含まない廃液を有効に処理でき、
さらに、従来に比べて処理を効率良く行えることは、
[発明の概要]の項において、既に前記したところであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】例1により得られた、添加した消石灰濃度に対
する排水中のリン濃度の変化を示すグラフである。
【図2】例2により得られた、添加した硫酸マグネシウ
ム濃度に対する排水中のリン濃度の変化を示すグラフで
ある。
【図3】例3により得られた、添加した硫酸マグネシウ
ム濃度に対する排水中のリン濃度の変化を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 萱 沼 義 弘 東京都新宿区西新宿1−26−2 松田産業 株式会社内 Fターム(参考) 4D038 AA08 AB48 BB01 BB13 BB17 BB18

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リン酸塩以外の無機塩類を少なくとも1g
    /L含む、含リン工業廃液に、マグネシウム塩を添加し
    てリン含有不溶性塩を形成させ、これを除去することを
    特徴とする、リンの除去方法。
  2. 【請求項2】工業廃液が、アンモニア不含である、請求
    項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】工業廃液が、写真廃液燃焼処理後の排水で
    ある、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
  4. 【請求項4】マグネシウム塩が、対象工業廃液に可溶な
    ものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方
    法。
  5. 【請求項5】マグネシウム塩が、硫酸マグネシウムであ
    る、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 【請求項6】マグネシウム塩の添加に、マグネシウム塩
    濃度が15〜33.5w/v%のマグネシウム塩水溶液
    を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 【請求項7】マグネシウム塩を添加する際の工業廃液の
    温度が、少なくとも40℃である、請求項1〜6のいず
    れか一項に記載の方法。
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