JP2000256731A - 溶鉄精錬用カルシウムフェライトの製造方法 - Google Patents

溶鉄精錬用カルシウムフェライトの製造方法

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JP2000256731A
JP2000256731A JP11061464A JP6146499A JP2000256731A JP 2000256731 A JP2000256731 A JP 2000256731A JP 11061464 A JP11061464 A JP 11061464A JP 6146499 A JP6146499 A JP 6146499A JP 2000256731 A JP2000256731 A JP 2000256731A
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Hidetoshi Noda
英俊 野田
Koichi Ichikawa
孝一 市川
Shoichi Mutsukawa
庄一 六川
Yoshiteru Kikuchi
良輝 菊地
Eiju Matsuno
英寿 松野
Hiroshi Shimizu
宏 清水
Toru Kitagawa
融 北川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶鉄精錬材のカルシウムフェライトを高生産
率、高歩留、且つ安価に製造する。 【解決手段】 粒径2mm以下が80wt.%以上の石
灰石と、微粉鉄鉱石等、平均粒径1.5mm以下の酸化
鉄原料とを用い、Ca/Feモル比0.3〜1.5に配
合し、混合、調湿し、ディスディスクペレタイザー3で
調湿、造粒して生ペレット8を造り、表面を粉コークス
4で被覆し、無端移動グレート式焼成炉6で焼成し、カ
ルシウムフェライト11を造る。焼成品のCaOが25
〜50wt.%になるようにする。上記において適宜下
記を付加する。石灰石のスラリー化、石灰石の一部の生
石灰代替、表面被覆の粉コークス重量を生ペレット乾燥
重量当たり5wt.%以上とする。焼成炉6への装入層
厚を400mm以下、装入生ペレット粒径を5〜10m
mに分級して使用。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、溶鉄の精錬材、
特に脱りん材の製造方法に関し、カルシウムフェライト
を高生産率、高歩留、且つ安価に製造する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、転炉における鋼の精錬過程におい
ては、炉内の溶銑に酸素ガスを吹き付けて、溶銑中のC
及びSiを酸素と反応させ、それぞれをCO及びSiO
2とする。また、同時に生石灰(CaO)を炉内に添加
して、溶銑中のS及びPと結合させることにより脱S及
び脱Pを行なう。こうして、溶銑中C、Si、S及びP
の濃度を所定値まで低下させる。
【0003】ところが、上記CaOの脱P及び脱S作用
は、転炉内に添加されたCaOが、炉内の溶銑と接触し
て反応することにより行なわれる。そこで、このCaO
の上記接触・反応寄与率を向上させるために、当該Ca
Oの粒径を10〜30mm程度に調整して添加する。そ
して、この脱P及び脱S反応を効率よく行なわせるため
には、更に、このCaOと、当該炉内溶銑の酸素吹錬で
生成したFeOとを融体化させた溶融スラグにすること
が必要である。この溶融スラグは、既に生成していたS
iO2と反応して、CaO−SiO2−FeO系の融体と
なる。そして、通常、このCaO−SiO2−FeO系
スラグ中のCaOとSiO2との重量%の比、CaO
(wt.%)/SiO2(wt.%)が、3.0以上と
なるように、CaOの添加量を調整する。
【0004】しかしながら、上記CaO−SiO2-Fe
O系スラグの融体化過程においては、転炉へのCaO添
加時に既に生成していたSiO2や、その後に生成した
SiO2がCaOと反応して、2CaO・SiO2や3C
aO・SiO2が生成し、これらが当該CaOの粒子表
面を覆い、取り囲む形態となる。ところが、上記2Ca
O・SiO2及び3CaO・SiO2の融点は、それぞれ
2130℃及び2070℃と高温である。このため、通
常の転炉操業の温度では、この2CaO・SiO2及び
3CaO・SiO2は固体状態であり、CaOの融体化
を著しく阻害化する。こうして、溶銑の脱P及び脱S作
用の効率化に重要な、CaO(wt.%)/SiO
2(wt.%)≧3.0を満たすCaO−SiO2−Fe
O系スラグの生成が遅れる。そこで、従来、転炉スラグ
には蛍石(CaF2)を適宜添加して、融体化を促進す
る方法が採られてきた。
【0005】この結果、精錬に用いられた転炉スラグに
は、若干のCaF2が含まれている。ところが、最近、
転炉スラグからのFイオンの溶出が環境上望ましくない
との理由で、転炉スラグ中のCaF2の存在が、転炉ス
ラグの用途制限の一因となっている。
【0006】上記状況下において、蛍石を用いずに、転
炉において溶銑を脱P及び脱Sするための精錬材であっ
て、極めて効果的なものとして、カルシウムフェライト
系の精錬材が注目され、多数の製造方法が開示されてい
る。ここで、カルシウムフェライトとは2CaO・Fe
23、CaO・Fe23及びCaO・2Fe23の総称
である。例えば、特開昭51−133200号公報に
は、石灰石等の酸化カルシウム粉中で、転炉灰や鉄鉱石
粉等の酸化第二鉄からなる粒状原料を、回転炉内で12
00〜1250℃で転動させながら焼成し、製造する方
法が開示されている(以下、先行技術という)。しかし
ながら先行技術の方法により、カルシウムフェライトを
工業的規模で製造する場合、回転炉内の温度管理が難し
く、均質な成品は得られにくい。更に、カルシウムフェ
ライト系精錬材は融点が低いので、回転炉内壁に多量の
融着物層が生成し、このために度々操業を中断し、これ
を除去しなけらばならず、操業上大きな問題となる。
【0007】特開昭61−177314号公報には、カ
ルシウムフェライトの焼成炉として、無端移動グレート
式焼成炉(ドワイトロイド式焼結機)を用いる方法が開
示されているが、焼結原料の融剤中に蛍石を添加する方
法であるために、焼成過程で低融点のカルシウムフェラ
イトが大量に発生するため、焼結ベッドの通気性が大幅
に悪化し、生産率が著しく低下すると考えられる。ま
た、排ガス中のフッ素やフッ化水素の排出や設備の腐食
等も問題となる。
【0008】上述したように、カルシウムフェライトを
工業的に、しかも安価に製造する技術は未だ確立してい
ないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述した通り、従来の
技術によれば、転炉その他の精錬炉において、溶銑や溶
鉄中の不純物の内、PやSを当該溶湯から除去するため
の、脱P及び脱Sを主目的とした効果的な精錬材とし
て、特に、低温度で行なう精錬により反応が促進される
脱P反応、例えば1250〜1400℃程度の低温にお
いても優れた脱P作用を発揮する精錬材として、カルシ
ウムフェライトが知られている。しかしながら、従来の
技術では、上記カルシウムフェライトを工業的規模で製
造しようとする場合には、次の問題が解決されていない
ために、実用上問題がある。
【0010】(1)カルシウムフェライト製造の主原料
の一つである石灰源物質に由来するCaO粒子は、他の主
原料である酸化鉄源物質に由来するFe23との間にカ
ルシウムフェライトを生成するが、当該CaO粒子の内
部にはCaO成分が未反応のまま残留する。そのため
に、精錬材として使用した後のスラグ中に、精錬反応に
寄与しなかった未反応のCaO成分が残留する。なお、
この未反応残留CaOは、スラグの利用上からも問題で
ある。
【0011】(2)カルシウムフェライトは融点が11
00〜1200℃と低いので、その焼成工程において溶
融化による製造工程上のトラブルをなくす技術が確立し
ていない。
【0012】そこで、本発明者等は、カルシウムフェラ
イトがその製造装置内部で溶融化してトラブルを起こす
ようなことがなく、しかも、蛍石のようなFを含有する
融剤を添加せずに、CaO粒子の内部全域にわたりカル
シウムフェライトが生成するような、カルシウムフェラ
イトの製造方法を開発することとした。こうして、この
発明の目的は、溶鉄の精錬材としてのカルシウムフェラ
イトの製造に際し、その生産性及び歩留を低下させず
に、成品品質及びその化学成分組成が安定しており、更
に、これを安価に製造し得る、溶鉄の精錬材として、カ
ルシウムフェライトを工業的に製造する方法を提供する
ことにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述した観点から、本発
明者等は鋭意研究を重ねた結果、原料の粒径分布及び配
合原料中の成分組成の適切化、生ペレットの調製方法及
びその粒径の適切化を図ることにより、安価な原料を使
用して、カルシウムフェライトを高生産率、高歩留にて
工業的に生産することが可能であることを知見した。
【0014】この発明は、上記知見に基づきなされたも
のであり、その要旨は下記の通りである。
【0015】請求項1記載の溶鉄精錬用カルシウムフェ
ライトの製造方法は、下記工程を有することに特徴を有
するものである。
【0016】原料としてCaO源物質と酸化鉄源物質
とを使用し、CaO源物質として粒径2mm以下のもの
が80wt.%以上を占める石灰石と、酸化鉄源物質と
して微粉鉄鉱石、ダスト、ミルスケール及び砂鉄の内の
1種以上からなりその平均粒径が1.5mm以下である
酸化鉄原料とを用いる。
【0017】上記石灰石と酸化鉄原料との混合原料中
のCaとFeとのモル比が0.3〜1.5の範囲内にな
るように配合し、こうして得られた配合原料を調湿しそ
して混合し、得られた粉体原料をディスクペレタイザー
で処理して造粒する。
【0018】こうして造粒された粒子の表面を粉コー
クスで被覆し、こうして調製された生ペレットを無端移
動グレート式焼成炉へ装入して焼成し、こうして得られ
た焼成成品中のCaO含有率が25〜50wt.%の範
囲内になるように調製する。
【0019】請求項2記載の溶鉄精錬用カルシウムフェ
ライトの製造方法は、請求項1に記載された発明におい
て、石灰石として、スラリー状石灰石を使用することに
特徴を有するものである。
【0020】請求項3記載の溶鉄精錬用カルシウムフェ
ライトの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載され
た発明において、使用する原料として、石灰石に加えて
生石灰を当該石灰石及び/又はスラリー状石灰石の一部
代替として使用することに特徴を有するものである。
【0021】請求項4記載の溶鉄精錬用カルシウムフェ
ライトの製造方法は、請求項1、請求項2又は請求項3
に記載された発明において、ディスクペレタイザーで造
粒された粒子の表面を被覆する粉コークスの重量を、生
ペレットの乾燥重量当たり5wt.%以上とし、そし
て、この生ペレットの無端移動グレート式焼成炉へ装入
層の厚さを400mm以下にして焼成することに特徴を
有するものである。
【0022】請求項5記載の溶鉄精錬用カルシウムフェ
ライトの製造方法は、請求項1から請求項4のいずれか
に記載された発明において、無端移動グレート式焼成炉
へ装入する生ペレットとして、粒径が5〜10mmに分
級されたものを用いることに特徴を有するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の形態を説
明する。
【0024】図1に、この発明の方法により溶鉄精錬用
のカルシウムフェライトを製造するのに適した製造工程
の概略フロー図を示す。
【0025】1は原料ホッパー、2はドラムミキサー、
3はディスクペレタイザー、4は粉コークス等の粉体燃
料、5はコーティングミキサー、そして6は無端移動グ
レート式焼結機である。図1に示した製造工程のフロー
により、以下に述べる原料1a〜1gを適切な割合で配
合し、水分7を添加して調湿し、ドラムミキサー2で原
料を均一に混合する。次いで、調湿・混合された粉状体
原料をディスクペレタイザー3に装入する。ディスクペ
レタイザー3においても、適宜水分7’を添加して調湿
し、造粒して生ペレット8にする。次いで、生ペレット
8に粉コークス4を添加し、コーティングミキサー5に
装入し、生ペレット8の表面を適正量の粉コークス4で
被覆する。こうして粉コークスが表面に外装された生ペ
レット9を調製する。以上の通り調製された粉コークス
外装生ペレット9を、無端移動グレート式焼成炉(焼結
機)6に装入し、所定条件で焼成する。こうして、カル
シウムフェライトを主成分とする溶鉄の精錬材、特に脱
りん材を製造する。
【0026】上記精錬材の製造工程において満たすべき
製造条件とその限定理由について、図1を参照しなが
ら、製造フローに沿って説明する。
【0027】(1)原料ホッパー1から原料を切り出し
て配合する。原料の種類は、CaO含有物質としての
石灰石1a及び生石灰1b、酸化鉄含有物質としての
微粉鉄鉱石1c、ミルスケール1d及びダスト1e、
生ペレット9の焼成用燃料にする炭素含有物質としての
粉コークス1g及び4、並びに、当該精錬材成品の分
級工程で発生するカルシウムフェライトのリターン品で
ある返鉱である。但し、上記項中、生石灰(主成分:
CaO)は、石灰石(主成分:CaCO3)を仮焼して
製造したものである。これはCaO含有物質として用い
ると共に、造粒促進剤としての機能を発揮させるもので
ある。また、上記項中のダストとは、製鉄所の製錬炉
等で発生するダストであって、三酸化二鉄(Fe23
を主成分として含むものを指す。これは安価であり、し
かもカルシウムフェライトの主要構成成分であるFe2
3を含有しているから、好都合である。項の酸化鉄
含有物質としては、同様に上記以外のもの、例えば、砂
鉄、ペレットフィードその他のものであっても、安価で
あって、三酸化二鉄(Fe23)を主成分として含むも
のであればよい。
【0028】(a)原料配合においては、石灰石と、微
粉鉄鉱石、ミルスケール及びダストの内の一種以上と
を、適宜配合する。ここで、原料配合に際して、各原料
の粒径は所定値以下であることが必要である。即ち、石
灰石はその粒径が2mm以下のものが80wt.%以上を
占めているものであり、且つ、微粉鉄鉱石、ミルスケー
ル及びダストはいずれもその平均粒径が1.5mm以下
であるものに限る。各原料の粒径を上記の通り制限する
理由は、次の通りである。
【0029】第一の理由は、上記原料の粒径が粗すぎる
と、混合、造粒工程でその分散が不均一となり、その結
果、均質混合粉体原料及び均質な生ペレットが得られな
い。このために焼結過程における塊成化が不十分とな
り、成品の生産率及び歩留が低下する。本発明者等の試
験によれば、石灰石及び各種酸化鉄の粒径を上述した範
囲に制限することにより、上記問題が解決されることが
明らかとなった。
【0030】第二の理由は、焼成炉6に装入された原料
である生ペレット9は、粉コークス1g及び4の燃焼に
より乾燥され、石灰石は脱炭酸されてCaO粒子となる
と共に、酸化鉄と反応してカルシウムフェライトを生成
する。このとき、石灰石の粒径が2mm以下のものが8
0%よりも少ないと、CaO粒子の内部までカルシウム
フェライトにならず、その中心部にCaOが未反応のま
ま残るものが発生する。この問題を解決するためには、
上記条件が満たされていることが必要であることを、本
発明者等は見出した。
【0031】一方、上述したように、石灰石1aと各種
酸化鉄原料1c〜1dの粒径が上記条件の通り微粉体が
主体の場合には、調湿・混合に際しては、アイリッヒ、
レディゲタイプの所謂強攪拌混合(ねっか処理)を行な
うことができる混合造粒機を使用すると、その混合が均
質化される。この場合であっても、均質混合のために
は、石灰石1aはその粒径が2mm以下のものが80w
t.%以上を占め、且つ、上記各種酸化鉄1c〜1d原料
はその平均粒径が1.5mm以下の細粒粉であることが
望ましい。そして、原料混合機として通常のドラムミキ
サーを使用する場合には、原料粒径は均質混合のため
に、上記条件を満たすことが必要である。
【0032】上述した粒径2mm以下の石灰石中には、
石灰石粉末が随伴して含まれる。従って、貯留及び搬送
等のハンドリングで発塵・飛散する。よって、当該石灰
石は、スラリーで扱うのが効果的である。この発明の方
法においては、原料配合後、水分による調湿を行なうの
で、石灰石を適宜水分を含有するスラリーの形態で原料
として供給してもよい。
【0033】生石灰は、石灰石を仮焼して製造する。従
って、CaO含有物質として石灰石の一部代替として生
石灰を使用すると一般に原料コストは上昇する。しか
し、生石灰は、配合原料の調湿・混合過程において、水
分と反応して水酸化カルシウムを生成し、粒径が数十μ
以下の微粒子になる。そして、造粒過程において造粒粒
子表面を被覆して、造粒を促進すると共に、造粒後の生
ペレットの粒子強度を向上させる効果を有する。生石灰
にはこのようなバインダー作用もあるので、カルシウム
フェライトの生産率及び歩留向上に対して効果的であ
る。生石灰は石灰石を焼成して製造する過程で微粉化す
るのが一般的であるが、生石灰の粒径分布の制限条件
も、上述した石灰石1aの粒径分布条件の理由に準じ、
2mm以下の生石灰粒子が80wt.%以上を占めるもの
を使用することが必要である。
【0034】上述したように、各原料の粒径分布が、上
記条件を満たすことにより、配合原料の均質混合及び均
質造粒が行なわれ、カルシウムフェライトの精錬材とし
ての生産率及び歩留が改善され、更に、CaO粒子の表
面だけでなくその内部までカルシウムフェライトが生成
し得る条件がみたされる。
【0035】(b)原料1の配合割合は、配合後の原料
(配合原料)中のCaとFeとの含有量が、それぞれの
含有モル数の比を、nCa/nFeで表わした場合に、
下記(1)式: nCa/nFe=0.3〜1.5………………(1) 但し、nCa:配合原料中に含まれるCaのモル数、 nFe:配合原料中に含まれるFeのモル数 を満たすように、調整することが必要である。その理由
は次の通りである。
【0036】本発明の方法により製造しようとするカル
シウムフェライトの化学成分は、2CaO・Fe23
CaO・Fe23及びCaO・2Fe23のいずれか一
種以上からなるものである。従って、当該カルシウムフ
ェライトの成分組成の内、2CaO・Fe23が100
%を占める場合に、当該カルシウムフェライト中のCa
とFeの両者のモル数の比(nCa/nFe)は最大値
をとり、その値は、1:1、即ち1.0である。これに
対して、CaO・2Fe23がその100%占める場合
に、当該カルシウムフェライト中のCaとFeの両者の
モル数の比(nCa/nFe)は最小値をとり、その値
は、1:4、即ち0.25である。
【0037】上記反応の化学当量論から、nCa/nF
eは、0.25〜1の範囲内であることが必要である。
当該検討結果に加えて、更に、酸化鉄源物質として使用
する原料の微粉鉄鉱石、ダスト、ミルスケール及び砂鉄
は、Fe23、Fe34及びFeOの構成比率及び各種
脈石含有割合がそれぞれ異なるにもかかわらず、これら
酸化鉄源物質の配合割合に特別の制限を付けずに使用し
得ることを考慮して、本発明の方法によるカルシウムフ
ェライトを製造するためには、nCa/nFeが0.3
〜1.5の範囲内になるように原料配合を調整すべきで
あるとした。
【0038】(2)上述した通り、所定の原料を所定の
条件で配合して得られた適切な粉体配合原料を、ドラム
ミキサー2等の混合機で調湿し、均質に混合する。次い
で、これをディスクペレタイザー3等の造粒機に装入
し、適切な調湿条件下で造粒して、生ペレット8を調製
する。ここでは、所定の強度及び適切な粒径の生ペレッ
ト8を調製する必要がある。
【0039】ここで、調製すべき生ペレットの粒径につ
いては、焼成工程における原料粒子間の通気性を確保
し、安定した熱源の供給を行ない、雰囲気温度を所定値
に制御することができるような条件にすることが重要で
ある。この観点から、生ペレット8の粒径は、ほぼ5〜
10mmの範囲内にあることが望ましい。そして、粒径
が5〜10mm程度の生ペレットに造粒するのに適し
た、混合粉体原料中の水分は、約10〜12wt.%であ
る。
【0040】一方、生ペレット8の粒子強度を高め、且
つ造粒機の経済的な運転条件で粒径を5mm以上のもの
が主体となるような粒径分布のペレットに成長させるた
めには、造粒機としてディスクペレタイザー3を使用す
る必要がある。回転ドラム型ペレタイザーでは、生ペレ
ットの強度は小さく、また、粒径は通常3mm程度が上
限であるから、この発明では採用することはできない。
【0041】(3)次いで、上記生ペレット8に粉コー
クス4を添加し、コーティングミキサー5で当該生ペレ
ット8の表面を粉コークスで被覆する。ここで、コーテ
ィングミキサーのタイプは、ドラム型、あるいはディス
ク型のいずれでもよい。生ペレット8の表面を粉コーク
スで外装被覆するのは、次の焼成工程でその期間中コー
クスの燃焼性を適正に維持するためである。この際、粉
コークスの粒子が粗粒であると、生ペレットへの付着性
が低下し、成品歩留の悪化や焼成不均一を招くので、3
mm以下にするのが望ましい。上記燃焼性を適正に維持
するために必要な粉コークスの量は、配合原料中の石灰
石の割合に応じて適切な量を添加すべきであり、生ペレ
ット8の乾燥重量に対して、5wt.%以上確保するこ
とが望ましい。粉コークスの添加量が少なすぎると、生
ペレット中の石灰石の分解・脱炭酸が進まず、また、カ
ルシウムフェライトの生成反応も不十分となり、その結
果、成品歩留の悪化を招く。この内、外装粉コークスの
重量は、焼成用生ペレット9に添加する全粉コークス重
量の50wt.%以上とするのが望ましい。粉コークスを
外装被覆すると、コークスの燃焼性を維持するのに効果
的である。
【0042】(4)粉コークスが外装された生ペレット
9の焼成装置としては、グレート式焼成炉を使用する。
その理由は次の通りである。この発明の方法により製造
される精錬材のカルシウムフェライトは、融点が低いの
で、従来使用されている回転炉ではその内壁に多量の融
着物層が生成し、実生産は不可能であったが、グレート
式焼成炉を使用すると、カルシウムフェライトの融液が
生成しても、上記生ペレット表面の外装粉コークスの燃
焼、及びグレートを通して下方に吸引するので、焼結ベ
ッド上の原料充填層の通気性は操業上悪化することがな
い。従って、生産性に優れていると共に、成品品質も安
定しており、その水準も良好である。このように、この
発明においては、下方吸引式のグレートを持った焼成炉
を使用することが重要である。更に、無端移動グレート
式の焼成炉を使用すれば、連続的に目的とするカルシウ
ムフェライトを製造することができるので、生産性は一
層向上する。
【0043】但し、グレート式焼成炉を使用しても、焼
結ベッド充填層の厚さには上限を設定した方が望まし
い。焼成炉への装入原料の層厚は、歩留向上の観点から
は厚い方が望まれるが、焼成過程における層内通気性及
び溶融反応性のバランスから、400mm以下で生産率
及び歩留向上が顕著となり、より一層望ましい。
【0044】(5)上述した通りの方法で製造された焼
成品であるカルシウムフェライトは、そのCaOの含有
率量が25〜50wt.%の範囲内にあることが必要で
ある。その理由は次の通りである。焼成品中のCaO含
有率が25wt.%よりも低いと、脱P材としての効果
が低減する。従って、多量に添加しなければならなくな
り、コストも高くなる。一方、石灰石と酸化鉄原料との
混合原料中のCaとFeとのモル比が1.5前後の場合
には、生成カルシウムフェライトの結晶形態は主として
2CaO・Fe23となり、このときの焼成品中のCa
O含有量はほぼ50wt.%であった。ところが、カル
シウムフェライト焼成品中のCaO含有量が50wt.
%よりも高くなると、当該焼成品の融点が急激に高くな
り、溶鉄の精錬材として使用したときに、速やかにその
効果を発揮しなくなる。更に、未反応の石灰石の割合が
増加し、歩留が低下する。従って、カルシウムフェライ
トの生産率を向上させ、且つ溶鉄の精錬材として十分に
その効果を発揮させるためには、成品中のCaO含有量
が25〜50wt.%の範囲内に入るように制約する必
要がある。
【0045】
【実施例】次に、この発明を実施例により更に詳細に説
明する。
【0046】図1に示したカルシウムフェライトの製造
工程のフローにしたがい、本発明の範囲内の条件で行な
ったカルシウムフェライトの製造試験(実施例1〜1
6)、並びに、図7に示すように、造粒機として回転ド
ラム型ペレタイザー10を用い、本発明の範囲外の条件
で行なったカルシウムフェライトの製造試験(従来例1
〜4)、及び図1に示したフローにしたがい、本発明の
範囲外の条件で行なったカルシウムフェライトの製造試
験(比較例1〜4)を行なった。但し、比較例1及び3
は、粉コークスの外装はしなかった。
【0047】表1及び表2に実施例、表3に従来例及び
比較例の試験条件を示す。ここで使用した各原料の化学
成分組成を表4、各原料の粒度分布を表5に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】上記表からわかるように、試験条件を次の
通り変化させた。 (1)使用原料: 原料の種類:CaO含有原料として、石灰石及びその
一部代替として生石灰を使用した場合と、石灰石のみの
場合とについて、また、三酸化二鉄(Fe23)を含有
する原料(酸化鉄原料)として、微粉鉄鉱石のみの場合
と、微粉鉄鉱石及びその一部代替としてミルスケール及
び/又はダストを用いた場合とについて試験した。な
お、石灰石の形態は固体粒子状の場合を基本状態とし、
水スラリー状の場合についても試験した。
【0054】原料の粒度:石灰石に関しては、表5に
示した粒径が5mm以下のもの(「石灰石−1」とい
う)、又は粒径が2mm以下のもの(「石灰石−2」と
いう)を用いた。
【0055】(2)粉体燃料:上記原料に粉コークスを
添加して、焼成時の燃料とした。粉コークスの添加形態
は、原料配合時に一緒に混合して造粒した場合(内装コ
ークス)と、内装粉コークスは添加せず、造粒後に粒子
表面を粉コークスで被覆した場合(外装コークス)とに
ついて、適宜添加量を変えて試験した。
【0056】(3)原料配合:上記(1)及び(2)項
を適宜組み合わせたそれぞれの試験条件において、焼成
成品の目標成分組成を、モノカルシウムフェライト(C
aO・Fe23)とした場合と、ダイカルシウムフェラ
イト(2CaO・Fe23)とした場合との二通りの配
合をした。CaO・Fe23の生成を目標とした場合
(原料の配合タイプ「A」)には、原料中のCa/Fe
のモル比を、1/2=0.5となるように配合し、2C
aO・Fe23の生成を目標とした場合(原料の配合タ
イプ「B」)には、原料中のCa/Feのモル比を、1
/1=1となるように配合して試験した。なお、上記原
料配合割合は、CaO源として、石灰石(CaCO3
のみを用いた場合と、石灰石及び生石灰(CaO)との
両方を用いた場合とに共通である。
【0057】(4)粉体原料の調湿、混合、造粒、及び
粉コークスの外装: 混合機はすべて回転ドラムミキサーを使用した。
【0058】造粒機は、回転ドラム型造粒機を用いた
場合と、ディスクペレタイザーを用いた場合との二通り
である。
【0059】造粒機における粉体原料中の水分含有量
は、すべて10〜12wt.%の範囲内に調整し、生ペレ
ットの粒径目標を5〜10mmの範囲内とした。なお、
焼成機の入り側で篩分けし、5〜10mmの粒径の生ペ
レットのみを焼成した。
【0060】焼成機における燃料として、生ペレット
には粉コークスを添加した。その添加方法として、原料
配合中に混合添加した場合(内装)と、造粒後の生ペレ
ット表面を被覆した場合(外装)とについて試験した。
【0061】(5)焼成:焼成炉はすべて無端移動グレ
ート式焼結機を使用し、生ペレットの焼結ベッド充填層
厚さを、300〜450mmの範囲内の各種一定の値と
した。
【0062】上記各種の試験条件下で、精錬材の製造試
験をした。各試験期間における操業成績として、精錬材
の生産率及び成品歩留を調査し、また、成品品質とし
て、シャッター強度及び成品の生成化合物同定試験を行
なった。試験結果は次の通りである。
【0063】図2及び図3に実施例、図4及び図5に従
来例と比較例の試験結果を示す。この試験成績はいずれ
も、成品粒径が5mm以上のものについての結果であ
る。
【0064】本発明の範囲外である従来例1〜4では、
粉体原料の造粒に回転ドラムペレタイザーを用いたの
で、生ペレットの造粒が不十分であり、また、粉コーク
スを他の原料と一緒に混ぜて造粒したので、粉コークス
が生ペレット粒子内に内装された。これらのために、焼
結の進行と共に大量のカルシウムフェライト融液の生成
が起こり、焼結ベッド内の通気性が著しく阻害され、同
時に粉コークスの燃焼性も著しく悪化して、成品の生産
率及びその歩留が低下する。
【0065】比較例1及び比較例3は、造粒機にディス
クペレタイザーを用いているが、粉コークスを内装して
いるため、焼成時の燃焼性が低下して、成品の生産率及
び歩留が悪化している。比較例2及び比較例4は、原料
石灰石の粒度分布のみが、本発明の条件を外れたもので
ある。即ち、通常の焼結プロセスで使用される粒度分布
の石灰石を使用したために、2mm以下のものの割合が
約45wt.%であって、本発明条件の2mm以下のも
のが80wt.%以上を満たしていなかった。そのため
に、カルシウムフェライトの生成反応が円滑に促進され
ず、成品の生産率及び歩留が低かった。
【0066】これに対して、本発明の範囲内にある実施
例1〜16においてはいずれの場合でも、焼成中にカル
シウムフェライトの生成反応が円滑に促進されて、成品
の生産率及び歩留は共に良好であった。また、本発明品
の成品生成化合物をX線回折により同定した結果、原料
配合のタイプが「A」の実施例1〜8では、CaO・F
23が大部分であり、また、原料配合のタイプが
「B」の実施例9〜16では、2CaO・Fe23が大
部分であって、一部CaO・FeO・Fe23の組成も
検出された。このように、本発明品においては、いずれ
もほぼ所定の均一なカルシウムフェライトが得られてい
ることが確認された。また表6に、本発明品の成分組成
を一括して示す。これよりわかるように、成品中のCa
O含有量は、25〜50wt.%の範囲内に入ってい
る。
【0067】
【表6】
【0068】モノカルシウムフェライト(CaO・Fe
23)の生成をねらった原料の配合タイプ「A」のもの
では、CaO/Fe23のモル比が1.17〜1.34
の範囲内にあり、一方、ダイカルシウムフェライト(2
CaO・Fe23)の生成をねらった原料の配合タイプ
「B」のものでは、CaO/Fe23のモル比が、1.
92〜2.25の範囲内にあり、理論目標値よりも大き
くなる傾向が強く、Feの一部がFeOになっている。
表6の結果より、本発明の方法で製造された成品のCa
O(wt.%)とFe23(wt.%)との比率を、C
aO−Fe23系平衡状態図上で示すと、図6の通りで
ある。
【0069】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
溶鉄の精錬材、特に脱りんに対して効果的なカルシウム
フェライトを主成分とする精錬材を、下記条件下で製造
することができる。
【0070】1.無端移動グレート式焼成炉を使用する
ので、カルシウムフェライトの生成反応が安定して行な
われ、高生産率、且つ高歩留の工業的量産が可能であ
る。
【0071】2.原燃料として、微粉石灰石、微粉鉄鉱
石、ミルスケール、ダスト及び砂鉄、並びに、粉コーク
スのような、安価な原料、並びに、製鉄所等での発生品
あるいは処理対象物質等を活用することができ、また、
そのために原材料コストが安価である。
【0072】3.生産設備として、既設の設備を活用す
ることができるので、設備コストが安価であり、、省ス
ペースにもなる。
【0073】このような溶鉄精錬用カルシウムフェライ
トの製造方法を提供することができ、工業上有益な効果
がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施に適した溶鉄精錬用のカルシウ
ムフェライトを製造する概略フロー図である。
【図2】実施例による操業成績及び品質水準を示すグラ
フグラフである。
【図3】実施例による操業成績及び品質水準を示すグラ
フグラフである。
【図4】従来例による操業成績及び品質水準を示すグラ
フグラフである。
【図5】比較例による操業成績及び品質水準を示すグラ
フグラフである。
【図6】CaO−Fe23系平衡状態図上における、本
発明方法で製造されたカルシウムフェライトの成分組成
を説明する図である。
【図7】従来の溶鉄精錬用のカルシウムフェライトを製
造する概略フロー図である。
【符号の説明】
1 原料 1a 石灰石 1b 生石灰 1c 微粉鉄鉱石 1d ミルスケール 1e ダスト 1f 返鉱 1g コークス 2 回転ドラムミキサー 3 ディスクペレタイザー 4 粉コークス 5 コーティングミキサー 6 無端移動グレート式焼成炉(焼結機) 7、7’水分 8 生ペレット 9 コークス外装生ペレット 10 回転ドラムペレタイザー 11 カルシウムフェライト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21C 5/46 103 C21C 5/46 103E 7/064 7/064 A C22B 1/20 C22B 1/20 Y (72)発明者 六川 庄一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 菊地 良輝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 松野 英寿 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 清水 宏 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 北川 融 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4G002 AA08 AB01 4K001 AA10 BA23 EA04 KA02 KA05 KA06 4K002 AA01 AB02 AE01 4K013 BA03 EA39 4K014 AA03 AB01 AB28

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料としてCaO源物質と酸化鉄源物質
    とを使用する溶鉄精錬用のカルシウムフェライトを製造
    する方法において、 前記CaO源物質として粒径2mm以下のものが80w
    t.%以上を占める石灰石と、前記酸化鉄源物質として
    微粉鉄鉱石、ダスト、ミルスケール及び砂鉄の内の1種
    以上からなりその平均粒径が1.5mm以下である酸化
    鉄原料とを用い、前記石灰石と前記酸化鉄原料との混合
    原料中のCaとFeとのモル比が0.3〜1.5の範囲
    内になるように配合し、 こうして得られた配合原料を混合機で調湿し混合し、得
    られた混合原料をディスクペレタイザーで調湿し造粒し
    て生ペレットを調製し、調製された生ペレットの表面を
    粉コークスで被覆し、こうして粉コークスが外装された
    生ペレットを無端移動グレート式焼成炉へ装入して焼成
    し、こうして得られた焼成成品中のCaO含有率が25
    〜50wt.%の範囲内になるように調製することを特
    徴とする、溶鉄精錬用カルシウムフェライトの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記石灰石として、スラリー状石灰石を
    使用する、請求項1記載の溶鉄精錬用カルシウムフェラ
    イトの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記原料として、前記石灰石及び/又は
    スラリー状石灰石に加えて、生石灰を当該石灰石及び/
    又はスラリー状石灰石の一部代替として使用する、請求
    項1又は請求項2に記載の溶鉄精錬用カルシウムフェラ
    イトの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記ディスクペレタイザーで造粒された
    前記粒子の表面を被覆する粉コークスの重量を、前記生
    ペレットの乾燥重量当たり5wt.%以上とし、そし
    て、前記生ペレットの前記無端移動グレート式焼成炉へ
    の装入層の厚さを400mm以下とする、請求項1、請
    求項2又は請求項3に記載の溶鉄精錬用カルシウムフェ
    ライトの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記無端移動グレート式焼成炉へ装入す
    る前記生ペレットとして、粒径が5〜10mmに分級さ
    れたものを用いる、請求項1から請求項4の内のいずれ
    かに記載の溶鉄精錬用カルシウムフェライトの製造方
    法。
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