JP2000243410A - 燃料電池用セパレータ及びその製造法並びに燃料電池用セパレータを用いた燃料電池 - Google Patents

燃料電池用セパレータ及びその製造法並びに燃料電池用セパレータを用いた燃料電池

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JP2000243410A
JP2000243410A JP11044024A JP4402499A JP2000243410A JP 2000243410 A JP2000243410 A JP 2000243410A JP 11044024 A JP11044024 A JP 11044024A JP 4402499 A JP4402499 A JP 4402499A JP 2000243410 A JP2000243410 A JP 2000243410A
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separator
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molded body
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Akitsugu Tashiro
了嗣 田代
Koichi Takei
康一 武井
Atsushi Fujita
藤田  淳
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リブ間と生成水との濡れ性が良く、リブ間を
安定に生成水が通過でき、電気抵抗、優れたガスの不浸
透性、液膨潤性、機械強度等のセパレータ特性において
問題がなく、かつ安価な燃料電池用セパレータ及びその
製造法並びに燃料電池用セパレータを用いた燃料電池を
提供する。 【解決手段】 成形体の表面に、水との接触角が40度
以下となる表面改質処理を施してなる燃料電池用セパレ
ータ、膨張黒鉛粉及び樹脂を均一に混合した後、成形
し、次いで成形体の表面に紫外線オゾンを照射して成形
体の表面を酸化することを特徴とする燃料電池用セパレ
ータの製造法並びに前記のセパレータ又は前記の製造法
により得られるセパレータを有してなる燃料電池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池用セパレ
ータ及びその製造法並びに燃料電池用セパレータを用い
た燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池用セパレータの重要な特性項目
の一つとして、使用ガス(酸素、水素等)の安定供給及
びガス同士の反応の際に発生する生成水の速やかな排出
機能があり、特に生成水を速やかに排出することは、燃
料電池の特性に大きく影響する。また、生成水を円滑に
排出する上で重要なポイントとなるのは、セパレータに
形成されたリブ間と生成水との親水性(濡れ性)にあ
る。
【0003】従来型の燃料電池用セパレータの材質は、
黒鉛ブロックを加工し不浸透化した不浸透化物、耐食性
金属及び膨張黒鉛シート積層成形体に液状樹脂を含浸さ
せ硬化させた液状樹脂含浸物である。しかしこれらの材
質からなるセパレータは、水をはじき易いばかりでなく
形状構成に時間と手間がかかり、コストの高いものにな
っていた。また、前記のような材質のセパレータでは、
形成されたリブ間と生成水との濡れ性が悪いため水滴と
なって介在し、生成水の流量低下を招き電池特性を低下
させていた。
【0004】生成水の流量向上策として、リブ間の断面
積を小さくしたり、リブ間を蛇行させるなどの手段によ
り流路長さを長くして生成水の流速を高める方法がとら
れているが、しかしながらこれらの方法では、高い寸法
精度が要求され、現在一般材として使用されている黒鉛
ブロック切削品のコスト高に拍車をかけている。前記と
は別に、WO97/02612などに示されるように膨
張黒鉛粉と熱可塑性樹又は熱硬化性樹脂を混合、成形し
た低コストの燃料電池用セパレータがあるが、このセパ
レータではリブ間と生成水との濡れ性は前記のセパレー
タと同等であり、期待する程の効果は得られないもので
あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】請求項1、2、3及び
4記載の発明は、リブ間と生成水との濡れ性が良く、リ
ブ間を安定に生成水が通過でき、電気抵抗、優れたガス
の不浸透性、液膨潤性、機械強度等のセパレータ特性に
問題がなく、かつ安価な燃料電池用セパレータを提供す
るものである。請求項5及び6記載の発明は、リブ間と
生成水との濡れ性が良く、リブ間を安定に生成水が通過
でき、電気抵抗、優れたガスの不浸透性、液膨潤性、機
械強度等のセパレータ特性に問題がなく、かつ安価な燃
料電池用セパレータの製造法を提供するものである。請
求項7及び8記載の発明は、リブ間と生成水との濡れ性
が良く、リブ間を安に生成水が通過でき、電気抵抗、優
れたガスの不浸透性、液膨潤性、機械強度等のセパレー
タ特性に問題がなく、かつ安価なセパレータを有する、
高性能な燃料電池を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、成形体の表面
に、水との接触角が40度以下となる表面改質処理を施
してなる燃料電池用セパレータに関する。また、本発明
は、表面改質処理が、酸化処理である前記の燃料電池用
セパレータに関する。また、本発明は、成形体が、膨張
黒鉛粉及び樹脂を含む成形体である前記の燃料電池用セ
パレータに関する。また、本発明は、樹脂が開環重合に
より硬化反応するフェノール樹脂である前記の燃料電池
用セパレータに関する。
【0007】また、本発明は、膨張黒鉛粉及び樹脂を均
一に混合した後、成形し、次いで成形体の表面に紫外線
オゾンを照射して成形体の表面を酸化することを特徴と
する燃料電池用セパレータの製造法に関する。また、本
発明は、樹脂が、開環重合により硬化反応するフェノー
ル樹脂である前記の燃料電池用セパレータの製造法に関
する。また、本発明は、前記のセパレータ又は前記の方
法で得られるセパレータを有してなる燃料電池に関す
る。さらに、本発明は、固体高分子型である前記の燃料
電池に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で得られる成形体は、表面
の水との接触角が40度以下、好ましくは30度以下、
より好ましくは25度以下、さらに好ましくは20度以
下と角度が小さくなる程好ましく、0度が最も好まし
い。なお表面の水との接触角が40度を越えるとリブ間
と生成水との親水性が劣り、本発明の目的を達成するこ
とができない。
【0009】前記の成形体の材質としては、炭素材料と
樹脂を含む材料をセパレータ形状に成形して得られるも
ので、特に炭素材料が樹脂中に分散された構造のものが
成形性、ガスの不浸透性等の点に優れ、安価であるので
好ましい。前記炭素材料としては、機械強度などの点で
膨張黒鉛粉を用いることが好ましい。また、成形体は、
前記の他にブロック状の炭素材料をセパレータ形状に切
削して製作することも可能である。なお、前記の成形体
の材質については特に制限はない。
【0010】本発明において、水との接触角が40度以
下とするためには成形体の表面に表面改質処理を施す必
要がある。表面改質処理を施す手段としては特に制限は
ないが、成形体の表面に紫外線オゾンを照射して酸化処
理することが好ましい。成形体の表面を酸化処理する場
合、その酸化度、即ち紫外線オゾンの照射量は、酸化処
理後の成形体の表面の水との接触角が40度以下になる
量の紫外線オゾンを照射して成形体の表面を酸化させる
ことが望ましい。
【0011】なお紫外線オゾンは、主としてセパレータ
のリブ部面に形成される。紫外線オゾンを照射する方法
及び紫外線オゾンを照射するのに用いられる発生装置に
ついては特に制限はないが、例えば紫外線オゾン発生装
置としては、((株)サムコインターナショナル研究所
製、UV−1、UV−300、UV−660(商品
名))等を用いることができる。
【0012】装置の形態は、バッチ式及び連続式のどち
らでも対応できる。紫外線オゾンの照射(処理)条件
(温度、時間)についても特に制限はないが、フェノー
ル樹脂の分解温度を考慮すると、250℃以下で、かつ
15分〜1時間の条件で照射することが好ましい。紫外
線オゾンを照射する場合、成形体を回転させながら照射
すれば、照射時間の短縮及び凹凸のあるリブ部面上に効
率よく照射することができるので好ましい。
【0013】本発明に用いられる膨張黒鉛粉は、例えば
原料黒鉛を、酸性物質及び酸化剤を含む溶液中に浸漬し
て黒鉛層間化合物を生成させる工程、前記黒鉛層間化合
物を加熱して黒鉛結晶のC軸方向を膨張させて膨張黒鉛
とする工程、前記膨張黒鉛を圧縮成形した後粉砕する工
程、また必要に応じて行う前記粉砕粉の水洗、乾燥工程
を含むことにより得ることができる。
【0014】前記の原料黒鉛としては、天然黒鉛、キッ
シュ黒鉛、熱分解黒鉛等の高度に結晶が発達した黒鉛が
好ましいものとして挙げられる。得られる特性と経済性
のバランスを考慮すると、天然黒鉛が好ましい。用いる
天然黒鉛としては、特に制限はなく、F48C(日本黒
鉛(株)製、商品名)、H−50(中越黒鉛(株)製、商品
名)等の市販品を用いることができる。
【0015】原料黒鉛の処理に用いられる酸性物質は、
一般に硫酸又は硫酸と硝酸との混液が使用される。酸の
濃度は、95重量%以上であることが好ましい。酸性物
質の使用量については特に制限はなく、目的とする膨張
倍率で決定され、例えば、黒鉛100重量部に対して1
00〜1000重量部使用することが好ましい。
【0016】また、酸性物質と共に用いられる酸化剤と
しては、過酸化水素、塩酸を用いることが、良好な膨張
黒鉛粉が得られるので好ましい。酸化剤として過酸化水
素を用いる場合、過酸化水素の濃度については特に制限
はないが、20〜40重量%が好ましい。その量につい
ても特に制限はないが、黒鉛100重量部に対して過酸
化水素水として5〜60重量部配合することが好まし
い。
【0017】前記黒鉛を膨張黒鉛にする方法に特に制限
はなく、公知の方法としては、前記黒鉛を硫酸又は硫酸
と硝酸との混液である酸性物質に浸漬し、さらに過酸化
水素、塩酸等の酸化剤を添加して処理することにより黒
鉛層間化合物を生成させ、次いで水洗してから急速加熱
して、黒鉛結晶のC軸方向を膨張処理する方法が挙げら
れる。これにより、膨張した黒鉛が虫状形となり方向性
のない複雑に絡み合った形態となる。
【0018】前記に示すような方法で得られた膨張黒鉛
粉は、密度が0.7g/cm3〜1.7g/cm3であることが好
ましい。前記のような密度の膨張黒鉛粉を得るには、前
記膨張黒鉛を、ロール、プレス等で加圧して、膨張黒鉛
同士の接触を大きくして、密度が0.7g/cm3〜1.7g
/cm3の、例えばシート状の成形体に成形する。次いでこ
れを粉砕し、必要に応じて分級することにより得ること
ができる。
【0019】ここで、密度が0.7g/cm3未満のシート
を使用した場合、電気特性の向上があまり認められず、
一方、1.7g/cm3を越えるシートを使用した場合、成
形体の製造時に大きな圧力が必要となり、作業性及び生
産性が低下する傾向にある。最適密度に調整したシート
状の成形体は、各種粉砕装置を用いて粉砕し、良好な膨
張黒鉛粉を得ることができる。粉砕した膨張黒鉛粉は、
硫酸イオンを低減するため必要に応じて水洗、乾燥して
使用される。
【0020】また、膨張黒鉛粉の平均粒径に特に制限は
ないが、粉末状の樹脂との乾式混合などを考慮すると、
25μm〜500μmの範囲が好ましい。ここで、平均
粒径が25μm未満の膨張黒鉛粉を使用した場合、成形
したセパレータの機械的強度が低下する傾向にあり、一
方、500μmを超える膨張黒鉛を使用した場合、粉末
状の樹脂との混合性が低下し均一な成形体が得られにく
くなる傾向にある。
【0021】本発明において、前記膨張黒鉛粉と共に用
いられる樹脂(熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)、とし
ては、粉末状の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いる
ことが好ましい。その構造に特に制限はなく、例えば、
固形エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、レゾ
ールタイプ、ノボラックタイプ等の各種フェノール樹
脂、粉末状ポリアミド樹脂、粉末状ポリアミドイミド樹
脂、フェノキシ樹脂等が使用される。これらの樹脂は必
要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、硬化触媒等を併用す
ることができる。例えば、エポキシ樹脂は、硬化剤と硬
化促進剤が併用して使用される。これらの樹脂の中で、
優れた特性バランスを示し、経済性、作業性等にも優れ
ることから、フェノール樹脂が好ましい。
【0022】フェノール樹脂としては、硬化反応時に発
生ガスが少なく、成形性が良くまた良好な諸特性を有す
る開環重合により硬化反応するフェノール樹脂が特に好
ましいものとして用いられる。開環重合により硬化反応
するフェノール樹脂としては、粉末状の樹脂が好まし
く、一般式(I)
【化1】 に示されるジヒドロベンゾオキサジン環を含む樹脂が成
形性、耐熱性等に優れ、好ましい。この樹脂は、加熱に
より開環重合反応を起こし、触媒や硬化剤を用いること
なく、揮発分を発生させることなく優れた特性を持つ架
橋構造を形成することができる。
【0023】前記ジヒドロベンゾオキサジン環を含む樹
脂としては、一般式(A)
【化2】 (式中、芳香環に結合する水素はヒドロキシル基のオル
ト位の1つを除き、置換基で置換されていてもよい)に
示す化学構造単位と一般式(B)
【化3】 (式中、R1は炭化水素基であり、芳香環に結合する水
素は、置換基て置換されていてもよい)に示す化学構造
単位を含むものが揮発性ガスの発生を抑制する効果が高
いので好ましく、一般式(A)/一般式(B)のモル比
が4/1〜1/9で含むものが耐熱性等の点でより好ま
しい。なお、この比は、用いる材料の比率等により調整
できる。
【0024】前記一般式(A)及び一般式(B)で示さ
れる化学構造単位において、芳香環に結合する水素の代
わりに置換されていてもよい置換基としては特に制限は
ないが、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル
基などの炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましいも
のとして挙げられる。また、一般式(A)において、ヒ
ドロキシル基のオルト位の1つは硬化反応のために水素
を持つ。また、一般式(B)において、R1で示される
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、シクロヘキ
シル基、フェニル基、置換フェニル基等の炭素原子数1
〜10のものが挙げられる。
【0025】前記各化学構造単位の数は、1分子中に含
まれる一般式(A)の数をm、一般式(B)の数をnと
するときに、mが1以上、nが1以上であればよいが、
数平均でm+nが3〜10であることが、硬化物の特
性、例えば耐熱性等の点で好ましい。
【0026】前記各化学構造単位は、互いに直接結合し
ていてもよく、各種の基を介して結合していてもよい。
このような基としては、有機基として、アルキレン基、
キシリレン基等の炭化水素基などが好ましいものとして
挙げられ、具体的には、
【化4】 で示される基(但し、R2は、水素原子又はメチル基、
エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、
置換フェニル基等の炭素原子数1〜20の炭化水素基を
示す)、炭素原子数5〜20の鎖状アルキレン基等が挙
げられる。これは、原料として用いるフェノール性水酸
基を有する化合物の種類などにより選択できる。
【0027】前記ジヒドロベンゾオキサジン環を含む樹
脂は、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、ホ
ルムアルデヒド類及び第1級アミンから合成することが
できる。これらの材料からジヒドロベンゾオキサジン環
を含む樹脂を合成する方法としては、フェノール性水酸
基を有する化合物と第1級アミンとの混合物を好ましく
は70℃以上に加熱したホルムアルデヒド類中に添加し
て、好ましくは70℃〜110℃、より好ましくは90
℃〜100℃で、好ましくは20分〜120分反応さ
せ、その後好ましくは120℃以下の温度で減圧乾燥す
る方法が挙げられる。
【0028】前記フェノール性水酸基を有する化合物と
しては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフ
ェノール等のビスフェノール化合物、トリスフェノール
化合物、テトラフェノール化合物等の低分子フェノール
化合物やフェノール樹脂を挙げることができる。フェノ
ール樹脂としては、フェノール若しくはキシレノール、
t−ブチルフェノール、オクチルフェノール等のアルキ
ルフェノールなどの1価のフェノール化合物、レゾルシ
ノール、ビスフェノールA等の多価フェノール化合物と
ホルムアルデヒド類を反応させて得られるノボラック樹
脂若しくはレゾール樹脂、フェノール変性キシレン樹
脂、メラミン変性フェノール樹脂、ポリブタジエン変性
フェノール樹脂等が挙げられる。
【0029】前記ホルムアルデヒド類としては、ホルム
アルデヒドの他、ホルマリン、パラホルムアルデヒドや
ヘキサメチレンテトラミンのようなホルムアルデヒドを
発生するものを用いることもできる。第1級アミンとし
ては、メチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族
アミン、アニリン、置換アニリン等の芳香族アミンが挙
げられる。耐熱性の面からは、芳香族アミンが好まし
い。
【0030】これらの配合比に特に制限はないが、例え
ば、フェノール性水酸基を有する化合物のヒドロキシル
基(そのオルト位の少なくとも1つが水素であるもの)
1モルに対し、第1級アミンを0.2〜0.9モル、ホ
ルムアルデヒド類を第1級アミンの2倍モル量以上の比
で反応させることが好ましい。
【0031】樹脂として粉末状のフェノール樹脂を用い
る場合、その粒度分布に特に制限はないが、膨張黒鉛粉
等の炭素材料との混合性(特に乾式混合法の場合)、成
形時に於ける樹脂の流れ性を考慮すると、数平均粒径で
1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがさ
らに好ましい。
【0032】本発明で使用する膨張黒鉛粉と樹脂の混合
比率は、膨張黒鉛粉/樹脂=95/5〜30/70(重
量比)の範囲が好ましく、90/10〜50/50の範
囲がさらに好ましい。ここで混合する膨張黒鉛粉の量が
95/5を越える場合、機械的強度が急激に低下する傾
向があり、一方、30/70未満の場合、導電性が低下
する傾向がある。
【0033】膨張黒鉛粉と樹脂の混合方法に特に制限は
なく、樹脂が粉末状の場合、粉末状の樹脂を溶媒に溶解
して、膨張黒鉛粉と良く混合し、使用樹脂の反応が進行
しない条件下で脱溶媒し、得られた混合物を最適な大き
さに粉砕、分級する方法や膨張黒鉛粉と粉末状の樹脂と
を一度に配合し、乾式で混合する方法(シエイカー、ミ
キサー等で溶媒無しで混合する方法)などが用いられ
る。乾式混合法によればコスト及び作業性の点で好まし
い。
【0034】得られた混合物は、必要に応じて作業性向
上のため、予備成形(混合物の体積を減少させるため、
樹脂が溶融又は硬化しない温度、例えば室温で成形)
し、その後、熱成形することができる。熱成形は通常の
圧縮成形で行うことができ、例えば140℃〜200
℃、好ましくは160℃〜180℃に昇温したセパレー
タ成形用金型に、前記混合物を充填し(ただし予備成形
した場合は予備成形品を挿設し)、圧力を加えたまま成
形することができる。
【0035】また、成形方法としては、所望のセパレー
タ形状の金型を使用する方法が直接セパレータを成形で
きるので好ましいが、予め大きめの成形体を作製し、こ
れを切削して所望の形状の大きさのセパレータにするこ
ともできる。なお熱成形時の加熱加圧保持時間は、使用
する樹脂の成形温度での反応時間が目安となり決定され
る。さらに、より一層生産性を向上させる目的で多段プ
レスを行うことも可能である。
【0036】本発明における燃料電池用セパレータの大
きさ、厚さ、形状等に特に制限はない。図1に、本発明
の燃料電池用セパレータの一例の斜視図を示す。一般
に、燃料電池用セパレータ1には、反応ガスの流路を確
保するため、図1に示されるようなリブが設けられてい
る。2はリブ部、3は溝部である。図1の(a)は両面
にリブが設けられているものであり、(b)は片面にリ
ブが設けられているものである。
【0037】本発明における燃料電池用セパレータは、
固体高分子型、固体酸化物型、溶融炭酸塩型、アルカリ
水溶液型、酸水溶液型等種々の型式の燃料電池用セパレ
ータとして使用可能である。燃料電池は、一般に、電解
質層をはさんで燃料極及び空気極の各電極層が存在し、
その両側から挟むセパレータを単位とするセルを含む。
電解質としては、アルカリ水溶液型の場合は水酸化カリ
ウムなどが用いられ、酸水溶液型の場合はリン酸などが
用いられ、固体高分子型の場合はイオン交換膜などが用
いられ、溶融炭酸塩型の場合は炭酸リチウム等が用いら
れ、固体酸化物型の場合は安定化ジルコニアなどが用い
られる。電極の基材としては、カーボン繊維などのよう
なカーボン材などが挙げられ、必要に応じて、白金、パ
ラジウム、銀、ニッケル等の触媒層を表面に設けたもの
が用いられる。燃料ガスである水素、炭化水素等は、天
然ガス、石油、石炭、メタノール等を反応させて改質ガ
スを取り出し、これを用いることにより供給される。本
発明のセパレータは中でも、固体高分子型燃料電池用と
して、特に好適である。
【0038】図2に固体高分子型燃料電池の一例のセル
の構造を表す斜視図を示す。電池の反応を起こす最小単
位のセル4は、固体高分子電解質膜5、燃料極6、空気
極7の各層から構成される3層膜8と、それを両側から
挟むセパレータ9a、9bにより構成されている。この
ように構成されたセル3が図1に示すように数段積み重
ねられ、集合体としてのセルスタック10が得られる。
【0039】
【実施例】次に実施例を説明する。 実施例1 (1)膨張黒鉛粉の製造 硫酸(濃度99重量%)600gと硝酸(濃度99重量
%)200gを3リットルのガラスビーカに入れた。こ
のものに黒鉛F48C(固定炭素99重量%以上、日本
黒鉛(株)製、商品名)400gを配合し、ガラスはねを
取り付けた撹拌モータ(60rpm)で6分間撹拌し、そ
の後、過酸化水素(濃度35重量%)32gを配合し、
15分間撹拌した。撹拌終了後、減圧濾過で酸化黒鉛と
酸成分を分離し、得られた酸化黒鉛を別容器に移し、5
リットルの水を加え、10分間撹拌し、減圧濾過で洗浄
酸化黒鉛と洗浄水を分離した。
【0040】得られた洗浄酸化黒鉛をホーロー製のバッ
トに移し平らに均し、110℃に昇温した乾燥器で1時
間処理して水分を乾燥させた。このものを更に800℃
に昇温した加熱炉に5分間入れ、膨張黒鉛を得た。この
膨張黒鉛をロールで圧延して密度が1.0g/cm3のシー
トに加工し、得られたシートを粗粉砕機(ホソカワミク
ロン(株)製、ロートプレックス(商品名))で粉砕後、
微粉砕機(奈良機械製作所(株)製、自由粉砕機M−3
(商品名))で粉砕し、平均粒径が150μm及び密度
が1.0g/cm3の膨張黒鉛粉を得た。
【0041】(2)開環重合するフェノール樹脂(ジヒ
ドロベンゾオキサジン環を含む樹脂)の製造 フェノール1.9kg、ホルマリン(37重量%水溶液)
1.0kg及びしゅう酸4gを5リットルのフラスコに仕
込み、環流温度で6時間反応させた。引き続き、内部を
6666.1Pa(50mmHg)以下に減圧して未反応のフ
ェノール及び水を除去し、フェノールノボラック樹脂を
合成した。得られた樹脂は、軟化点84℃(環球法)、
3核体〜多核体/2核体比92/18(ゲルパーミエー
ションクロマトグラフィー法によるピーク面積比)であ
った。
【0042】次に合成したフェノールノボラック樹脂
1.7kg(ヒドロキシル基16モルに相当)をアニリン
0.93kg(10モルに相当)と混合し、80℃で5時
間撹拌し、均一な混合溶液を調製した。次いで5リット
ルフラスコ中に、ホルマリン1.62kgを仕込み90℃
に加熱し、さらに前記のノボラック/アニリン混合溶液
を30分かけて少しずつ添加した。添加終了後、30分
間、環流温度に保ち、しかる後に100℃で2時間66
66.1Pa(50mmHg)以下に減圧して縮合水を除去
し、反応し得るヒドロキシル基の71モル%がジヒドロ
ベンゾオキサジン化されたジヒドロベンゾオキサジン環
を含む樹脂を得た。すなわち、上記ジヒドロベンゾオキ
サジン環を含む樹脂は、前記一般式(A)と一般式
(B)のモル比を前者/後者で1/2.45で含むもの
である。この後前記の樹脂を粉砕機で微粉化し、反応時
発生するガスの少ない粉末状のフェノール樹脂を得た。
【0043】なお、前記フェノールノボラック樹脂にお
いて反応し得るヒドロキシル基の量は、下記のようにし
て算出したものである。すなわち、前記フェノールノボ
ラック樹脂1.7kg(ヒドロキシル基16モルに相当)
をアニリン1.4(16モルに相当)、ホルマリン2.
59kgと反応させ、反応し得るヒドロキシル基のすべて
にジヒドロベンゾオキサジン環が導入された樹脂を合成
した。過剰のアニリン及びホルマリンは乾燥中にのぞか
れ、収量は3.34kgであった。このことから、前記フ
ェノールノボラック樹脂において、反応し得るヒドロキ
シル基の量は14モル反応し、ジヒドロベンゾオキサジ
ン環化したことを示している。
【0044】(3)成形体の製造 実施例1(1)で得た膨張黒鉛粉48gと(2)で得た
粉末状のフェノール樹脂32g(膨張黒鉛粉/樹脂=6
0/40)を、ビニール袋に計り取り空気を入れて袋を
膨らませた状態で30秒間乾式混合を行った。前記混合
粉を、180℃に昇温した燃料電池用セパレータ成形金
型に均一に充填し、温度180℃に昇温した76トン圧
縮成形機で、ゲージ圧力50kgf/cm2(4.9MPa)、成
形時間10分の条件で成形した。成形終了後の金型から
の成形体の取り出しは容易であった。次いで成形体の外
観良好な片面に高さ2mmのリブ状突起物を形成した縦1
40mm、横180mmの成形体を得た。このものを厚さ3
mmの鉄板2枚で挟み、200℃に昇温した乾燥器に入れ
30分間熱処理した。
【0045】(4)燃料電池用セパレータの製造 次に、前記で得た成形体を紫外線オゾン発生装置((株)
サムコインターナショナル研究所製、UV−1(商品
名))にセットし、150℃で、30分間紫外線オゾン
を照射した。
【0046】実施例2 紫外線オゾンの照射条件を200℃で30分間とした以
外は実施例1と同様の工程を経て燃料電池用セパレータ
を得た。
【0047】実施例3 紫外線オゾンの照射条件を250℃で30分間とした以
外は実施例1と同様の工程を経て燃料電池用セパレータ
を得た。
【0048】比較例1 実施例1で得た成形体の表面に紫外線オゾンを照射せ
ず、成形体そのものを燃料電池用セパレータとした。
【0049】評価 次に、実施例1で得られた成形体を2cm×2cmの大きさ
に切り出した試片を4個作製し、このうちの3個の試片
については、実施例1、実施例2及び実施例3と同様の
工程を経てリブ部面の反対側の平面(リブ部面では接触
角がうまく計れないため)に、紫外線オゾンを照射して
実施例1、実施例2及び実施例3の接触角測定用試片と
した。また、他の1個については紫外線オゾンを照射せ
ず、そのままの状態のものを比較例1の接触角測定用試
片とした。以下これらの接触角測定用試片を用いて接触
角を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】* 接触角の測定方法 接触角測定用試片の表面(実施例1、2及び3は紫外線
オゾンを照射した面)にスポイトで水を垂らし、ゴニオ
メータ式接触角測定器(エルマ光学(株)製、G・I(商
品名)を用いて接触角を測定した。
【0052】
【発明の効果】請求項1、2、3及び4記載の燃料電池
用セパレータは、リブ間と生成水との濡れ性が良く、リ
ブ間を安定に生成水が通過でき、電気抵抗、優れたガス
の不浸透性、液膨潤性、機械強度等のセパレータ特性に
おいて問題がなく、かつ安価な燃料電池用セパレータで
ある。請求項5及び6記載の燃料電池用セパレータの製
造法によれば、リブ間と生成水との濡れ性が良く、リブ
間を安定に生成水が通過でき、電気抵抗、優れたガスの
不浸透性、液膨潤性、機械強度等のセパレータ特性にお
いて問題がなく、燃料電池用セパレータを安価に製造す
ることができる。請求項7及び8記載の燃料電池は、リ
ブ間と生成水との濡れ性が良く、リブ間を安定に生成水
が通過でき、セパレータの電気抵抗、優れたガスの不浸
透性、液膨潤性、機械強度等の特性において問題がな
く、かつ安価なセパレータを有し、高性能なものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池用セパレータの一例を示す斜
視図であり、(a)は両面にリブが存在するもの、
(b)は片面にリブが存在するものである。
【図2】本発明の燃料電池の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 セパレータ 2 リブ部 3 溝部 4 セル 5 固体高分子電解質膜 6 燃料極 7 空気極 8 3層膜 9a、9b セパレータ 10 セルスタック
フロントページの続き (72)発明者 藤田 淳 茨城県日立市鮎川町三丁目3番1号 日立 化成工業株式会社山崎工場内 Fターム(参考) 5H026 AA06 BB00 BB01 BB02 BB08 BB10 CC03 EE06 EE18 HH03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成形体の表面に、水との接触角が40度
    以下となる表面改質処理を施してなる燃料電池用セパレ
    ータ。
  2. 【請求項2】 表面改質処理が、酸化処理である請求項
    1記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 【請求項3】 成形体が、膨張黒鉛粉及び樹脂を含む成
    形体である請求項1又は2記載の燃料電池用セパレー
    タ。
  4. 【請求項4】 樹脂が、開環重合により硬化反応するフ
    ェノール樹脂である請求項3記載の燃料電池用セパレー
    タ。
  5. 【請求項5】 膨張黒鉛粉及び樹脂を均一に混合した
    後、成形し、次いで成形体の表面に紫外線オゾンを照射
    して成形体の表面を酸化することを特徴とする燃料電池
    用セパレータの製造法。
  6. 【請求項6】 樹脂が、開環重合により硬化反応するフ
    ェノール樹脂である請求項5記載の燃料電池用セパレー
    タの製造法。
  7. 【請求項7】 請求項1、2、3若しくは4記載のセパ
    レータ又は請求項5若しくは6記載の製造法により得ら
    れるセパレータを有してなる燃料電池。
  8. 【請求項8】 固体高分子型である請求項7記載の燃料
    電池。
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