JP2000240763A - シザーズギヤ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 メインギヤの溝穴にコイルスプリングが強く
接触するのを防止して正規のばね荷重を得ることのでき
るシザーズギヤ装置を提供する。 【解決手段】 シザーズギヤ６を、メインギヤ７と、メ
インギヤ７の被重合面に重なるサブギヤ８と、メインギ
ヤ７の被重合面に穿設される溝穴９と、溝穴９に収容さ
れてサブギヤ８を周方向にずらすコイルスプリング１１
とから構成する。また、溝穴９の底面の略中央部９ｂを
深く湾曲形成し、メインギヤ７とサブギヤ８の重合面に
対してコイルスプリング１１の巻き中心軸１１ｂをメイ
ンギヤ７側にオフセットする。溝穴９の底面の略中央部
９ｂがコイルスプリング１１の腹部１１ａとの接触を回
避するので、メインギヤ７に対してサブギヤ８がずれる
場合でも、コイルスプリング１１が予想外の姿勢に変化
することがない。よって、正規のばね荷重を得ることが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種の二輪や四輪
の自動車、電動車両、船外機、汎用エンジン、芝刈機、
ボート、又は水上バイク等に用いられるギヤ装置に関
し、より詳しくは、ガタつきを防止して騒音を抑制する
シザーズギヤ装置の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図６はＤＯＨＣ方式の動弁装置１を示す
もので、この動弁装置１は、１気筒に吸入弁２個、排気
弁２個の４バルブを備えている。この動弁装置１は、ク
ランク軸の右側のプライマリドライブギヤ２により、カ
ムドライブアイドルギヤ軸３が回転するが、このカムド
ライブアイドルギヤ軸３の両側には、各気筒のカムチェ
ーンドライブスプロケット４が配設されている。このカ
ムチェーンドライブスプロケット４により、カムチェー
ンドリブンスプロケットがサイレントチェーンを介して
回転するとともに、カムギヤが回転し、カム軸のカム部
でタペットが押し上げられてバルブ５が開閉する。

【０００３】ところで、プライマリドライブギヤ２とカ
ムギヤとには、相手側のギヤとの隙間を無くすシザーズ
ギヤ(scissors gear)６が使用される。このシザーズギ
ヤ６は、図７ないし図９(a)に示すように、軸に嵌着さ
れたメインギヤ７と、軸に嵌着されてメインギヤ７の被
重合面に重合するサブギヤ８と、メインギヤ７の被重合
面に穿設される複数の溝穴９と、サブギヤ８の重合面に
穿設されて各溝穴９に対向する溝穴１０と、これらの溝
穴９、１０に収容されてサブギヤ８を周方向にずらすコ
イルスプリング１１とを備えている。このように構成さ
れたシザーズギヤ６は、相手側のギヤの歯を挟持してギ
ヤのガタを無くし、騒音を抑制防止する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来のシザーズギヤ装
置は、以上のように構成され、メインギヤ７に対してサ
ブギヤ８がずれる際(図９(b)の矢印参照)、溝穴９の底
面に撓んだコイルスプリング１１の腹部１１ａが強く接
触して大きく姿勢変化するので(同図参照)、正規のばね
荷重を得ることができずにトルクが減少してしまうとい
う大きな問題があった。

【０００５】本発明は、上記問題に鑑みなされたもの
で、メインギヤの溝穴にコイルスプリングが強く接触す
るのを防止して正規のばね荷重を得ることのできるシザ
ーズギヤ装置を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明にお
いては、上記課題を達成するため、第一のギヤに噛合す
る第二のギヤを、メインギヤと、このメインギヤの被重
合面に重なるサブギヤと、該メインギヤの被重合面に設
けられる溝穴と、この溝穴に収容されて上記サブギヤを
周方向にずらすコイルスプリングとから構成したもので
あって、上記溝穴の底面の略中央部を深く形成し、上記
メインギヤと上記サブギヤの重合面に対して上記コイル
スプリングの中心軸を該メインギヤ側にオフセットした
ことを特徴としている。

【０００７】また、請求項２記載の発明においては、上
記課題を達成するため、第一のギヤに噛合する第二のギ
ヤを、メインギヤと、このメインギヤの被重合面に重な
るサブギヤと、該メインギヤの被重合面に設けられる溝
穴と、この溝穴に収容されて上記サブギヤを周方向にず
らすコイルスプリングとから構成したものであって、上
記溝穴に低摩擦材を内蔵し、上記メインギヤと上記サブ
ギヤの重合面に対して上記コイルスプリングの中心軸を
該メインギヤ側にオフセットしたことを特徴としてい
る。なお、上記コイルスプリングを低摩擦材で包囲する
ことができる。

【０００８】ここで、特許請求の範囲における溝穴とコ
イルスプリングとは、単数複数いずれでも良い。また、
溝穴の底面の略中央部には、中央部と、おおよそ中央部
と認められる部分のいずれもが含まれる。この中央部
は、深ければ、底付きでも良いし、貫通した底無しでも
良い。また、シザーズギヤ装置には、シザーズギヤ装置
同様、コイルスプリングにより、ねじりトルクを発生さ
せるギヤ機構やギヤ装置、例えばクラッチのダンパスプ
リング等が含まれる。また、溝穴の内面の一部、全部、
あるいは底面の略中央部等には、単数複数の低摩擦材を
設けることができる。さらに、低摩擦材は、摩擦を低減
することができる材料であれば、各種の合成樹脂に限定
されるものではなく、いかなる材料でも良い。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好
ましい実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態
になんら限定されるものではない。本実施形態における
シザーズギヤ装置は、図１(a)、(b)や図２に示すよう
に、第一のギヤである相手側のギヤに噛合するシザーズ
ギヤ６を、軸に嵌着された厚肉のメインギヤ７と、軸に
嵌着されてメインギヤ７の被重合面に重なる同歯数で薄
肉のサブギヤ８と、メインギヤ７の被重合面に穿設され
る複数の溝穴９と、サブギヤ８の重合面に穿設されて各
溝穴９に対向する溝穴１０と、これらの溝穴９、１０に
収容されてサブギヤ８を周方向にずらすコイルスプリン
グ１１とから構成している。

【００１０】溝穴９は、平面視で両側部９ａが外側に湾
曲して広がるよう形成され、断面視で底面の両端部以外
の略中央部９ｂ、換言すれば、コイルスプリング１１の
腹部１１ａの接触する部分が湾曲して徐々に深くなるよ
う形成されている。さらに、コイルスプリング１１は、
その巻き中心軸１１ｂがメインギヤ７の被重合面とサブ
ギヤ８の重合面の境界面に対してメインギヤ７側にオフ
セットして収納され、メインギヤ７方向に撓みが規制さ
れる。その他の部分については、従来例と同様であるの
で説明を省略する。

【００１１】上記構成によれば、溝穴９の両側部９ａや
底面の凹んだ略中央部９ｂが撓んだコイルスプリング１
１の腹部１１ａとの接触を確実に回避するので、メイン
ギヤ７に対してサブギヤ８がずれる場合でも、コイルス
プリング１１の姿勢が予想外の姿勢に大きく変化するこ
とがない。したがって、簡易な構成で正規のばね荷重を
きわめて容易に得ることができ、繰り返し作動にかかわ
らず、シザーズギヤ６のトルクを安定させ、シザーズギ
ヤ６の歯打ち音等の抑制防止が大いに期待できる。さら
に、コイルスプリング１１の巻き中心軸１１ｂがメイン
ギヤ７の被重合面とサブギヤ８の重合面の境界に対して
メインギヤ７側に偏位しているので、メインギヤ７方向
にコイルスプリング１１が必ず撓むこととなり、コイル
スプリング１１の撓み方向や姿勢が不安定化することが
全くない。

【００１２】次に、図３(a)、(b)は本発明の第２の実施
形態を示すもので、この場合には、溝穴９の略中央部９
ｂを底無しとして貫通孔９Ａを形成し、この貫通孔９Ａ
の底面の略中央部９ｂとコイルスプリング１１の腹部１
１ａとの接触を回避するようにしている。その他の部分
については、上記第１の実施形態と同様であるので説明
を省略する。本実施形態においても、簡易な構成で上記
実施形態と同様の作用効果を期待することができ、しか
も、溝穴９の底面を深く湾曲加工するのが困難な場合に
きわめて有益であるのは明白である。

【００１３】次に、図４(a)は本発明の第３の実施形態
を示すもので、この場合には、メインギヤ７の溝穴９を
深く形成せずにその底面側に断面略Ｕ字形あるいは断面
半円弧形等を呈したシート状のテフロン(デュボン社の
四ふっ化エチレン樹脂の商品名、ポリテトラフルオロエ
チレン)からなる低摩擦材１２を接着し、溝穴９の底面
の略中央部９ｂとコイルスプリング１１の腹部１１ａと
の接触を規制して摩擦接触に伴う損失を大幅に抑制防止
するようにしている。なお、底面の略中央部９ｂは、深
く凹み形成することも容易に可能である。その他の部分
については、上記実施形態と同様である。

【００１４】また、図４(b)、(c)の場合には、メインギ
ヤ７の溝穴９の一側部の一部、深く形成した底面の略中
央部９ｂ、及び他側部の一部に断面Ｕ字形を呈したテフ
ロンからなる低摩擦材１２を接着し、溝穴９の底面の略
中央部９ｂとコイルスプリング１１の腹部１１ａとの接
触を防止して摩擦接触に伴う損失を大幅に抑制防止する
ようにしている。その他の部分については、上記実施形
態と同様であるので説明を省略する。

【００１５】本実施形態においても、上記実施形態と同
様の作用効果を期待することができ、しかも、溝穴９の
底面を湾曲加工するのが困難な場合に実に有効であるの
は明らかである。また、低摩擦材１２が化学的に安定
し、接着エネルギの小さいテフロン製であるから、優れ
た耐熱性、耐寒性、耐薬品性、寸法安定性、及び不燃性
を得ることができる。

【００１６】次に、図５は本発明の第４の実施形態を示
すもので、この場合には、コイルスプリング１１にテフ
ロンからなるパイプ形の低摩擦材１２を嵌合し、溝穴９
の底面とコイルスプリング１１の腹部１１ａとの接触を
規制して摩擦接触に伴う損失を著しく抑制防止するよう
にしている。この場合、溝穴９の底面の略中央部９ｂ
は、深く形成することもできるし、そうでなくても良
い。その他の部分については、上記実施形態と同様であ
るので説明を省略する。本実施形態においても、上記実
施形態と同様の作用効果を期待することができ、しか
も、溝穴９の加工が非常に困難な場合に便利である。

【００１７】なお、上記各実施形態は適宜組み合わせる
ことが可能である。例えば、第１、第４の実施形態を組
み合わせることができる。また、第２、第４の実施形態
を組み合わせたり、あるいは第３、第４の実施形態を組
み合わせることもできる。さらに、サブギヤ８の溝穴１
０は、貫通していても、そうでなくても良い。

【００１８】

【発明の効果】以上のように請求項１記載の発明によれ
ば、溝穴の底面の略中央部を深く形成し、メインギヤと
サブギヤの重合面に対してコイルスプリングの中心軸を
メインギヤ側にオフセットしているので、メインギヤの
溝穴にコイルスプリングが強く接触するのを抑制防止
し、これを通じて正規のばね荷重を得たり、トルク劣化
を防止することができるという効果がある。

【００１９】また、請求項２記載の発明によれば、溝穴
に低摩擦材を内蔵し、メインギヤとサブギヤの重合面に
対してコイルスプリングの中心軸をメインギヤ側にオフ
セットしているので、溝穴にコイルスプリングが強く接
触するのを抑制防止して正規のばね荷重を得ることが可
能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るシザーズギヤ装置の実施形態を示
す説明図で、(a)図は平面図、(b)図は断面図である。

【図２】本発明に係るシザーズギヤ装置の実施形態を示
す断面説明図である。

【図３】本発明に係るシザーズギヤ装置の第２の実施形
態を示す説明図で、(a)図は平面図、(b)図は断面図であ
る。

【図４】本発明に係るシザーズギヤ装置の第３の実施形
態を示す説明図で、(a)図は平面図、(b)図は平面図、
(c)図は断面図である。

【図５】本発明に係るシザーズギヤ装置の第４の実施形
態を示す斜視説明図である。

【図６】ＤＯＨＣ方式の動弁装置を示す斜視説明図であ
る。

【図７】従来のシザーズギヤ装置を示す断面説明図であ
る。

【図８】従来のシザーズギヤ装置を示す説明図で、(a)
図は平面図、(b)図は断面図である。

【図９】従来のシザーズギヤ装置を示す説明図で、(a)
図はサブギヤがずれる前の状態を示す断面図、(b)図は
サブギヤがずれた状態を示す断面図である。

【符号の説明】

６ シザーズギヤ(第二のギヤ) ７ メインギヤ ８ サブギヤ ９ 溝穴 ９ｂ 溝穴の底面の略中央部 ９Ａ 貫通孔 １０ 溝穴 １１ コイルスプリング １１ａ 腹部 １１ｂ コイルスプリングの巻き中心軸(中心軸) １２ 低摩擦材

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 第一のギヤに噛合する第二のギヤを、メ
   インギヤと、このメインギヤの被重合面に重なるサブギ
   ヤと、該メインギヤの被重合面に設けられる溝穴と、こ
   の溝穴に収容されて上記サブギヤを周方向にずらすコイ
   ルスプリングとから構成したシザーズギヤ装置であっ
   て、 上記溝穴の底面の略中央部を深く形成し、上記メインギ
   ヤと上記サブギヤの重合面に対して上記コイルスプリン
   グの中心軸を該メインギヤ側にオフセットしたことを特
   徴とするシザーズギヤ装置。
2. 【請求項２】 第一のギヤに噛合する第二のギヤを、メ
   インギヤと、このメインギヤの被重合面に重なるサブギ
   ヤと、該メインギヤの被重合面に設けられる溝穴と、こ
   の溝穴に収容されて上記サブギヤを周方向にずらすコイ
   ルスプリングとから構成したシザーズギヤ装置であっ
   て、 上記溝穴に低摩擦材を内蔵し、上記メインギヤと上記サ
   ブギヤの重合面に対して上記コイルスプリングの中心軸
   を該メインギヤ側にオフセットしたことを特徴とするシ
   ザーズギヤ装置。
3. 【請求項３】 上記コイルスプリングを低摩擦材で包囲
   した請求項１又は２記載のシザーズギヤ装置。