JP2000231212A - 電子写真用感光体、電子写真用感光体の製造方法、及び電子写真装置 - Google Patents

電子写真用感光体、電子写真用感光体の製造方法、及び電子写真装置

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JP2000231212A
JP2000231212A JP11032019A JP3201999A JP2000231212A JP 2000231212 A JP2000231212 A JP 2000231212A JP 11032019 A JP11032019 A JP 11032019A JP 3201999 A JP3201999 A JP 3201999A JP 2000231212 A JP2000231212 A JP 2000231212A
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Yasuhiro Yamaguchi
康浩 山口
Fumiaki Taho
文明 田甫
Masakazu Iijima
正和 飯島
Masahiro Iwasaki
真宏 岩崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電荷輸送性、耐摩耗性、耐溶剤性、耐エッチ
ング性等に優れ、且つ高寿命な電子写真用感光体、特に
他の層を積層成膜する場合の耐溶剤性に優れた架橋型電
荷輸送層を有する電子写真用感光体を提供することがで
きる。 【解決手段】 電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸
送性グラフト共重合体と遊離ラジカルを発生する化合物
とを用いて形成される架橋型電荷輸送層を有することを
特徴とする電子写真用感光体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真用感光
体、その製造方法、及びそれを用いた電子写真装置に関
する。詳しくは、電荷輸送性、耐溶剤性、機械的強度、
耐エッチング性に優れた新規な3次元架橋型電荷輸送層
を有する電子写真用感光体、その製造方法、及びそれを
用いた電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真技術は、高速で、高印字品質が
得られる等の利点を有するために、近年、複写機、プリ
ンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を
果たしている。電子写真技術の心臓部である電子写真用
感光体の構成材料としては、従来からセレン、セレン−
テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料が
広く用いられてきた。一方、これらの無機光導電性材料
を用いた無機系電子写真用感光体に比べ、コスト、製造
性、安全性等の点で優れた利点を有する有機光導電性材
料を用いた有機系電子写真用感光体の研究も活発に行わ
れ、現在では無機系電子写真用感光体を凌駕するに至っ
ている。特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷
輸送をそれぞれ別々の層に担わせる機能分離型積層構成
の開発により、電子写真用感光体は材料選択の自由度が
増し、著しい性能の向上が達成された。すなわち、電荷
発生能と電荷輸送能の両機能に優れた材料の設計開発は
困難であったが、機能分離型積層構成の採用により、そ
れぞれ単一機能のみに集中した最適化設計が可能とな
り、高性能な電子写真用感光体を得ることが可能となっ
た。
【0003】機能分離積層型有機系電子写真用感光体の
電荷発生層としては、キノン系顔料、ぺリレン系顔料、
アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、セレン等の電荷発
生能に優れた顔料を蒸着等により直接成膜したもの、あ
るいはこれらの顔料を高濃度で結着樹脂中に分散して塗
布等により成膜したもの等が実用化されている。一方、
電荷輸送層としては、ヒドラゾン系化合物、ベンジジン
系化合物、アミン系化合物、スチルベン系化合物等の電
荷輸送能に優れた低分子化合物を絶縁性樹脂中に分子分
散して塗布等により成膜したものが実用化されている。
【0004】ところで、光学的に原稿を感光体上に結像
させることによって感光体を露光する従来のアナログ方
式の電子写真式複写機では、濃度階調による中間調の再
現性を良好にするために、図1に示すような光誘起電位
減衰特性を持つ感光体、即ち、露光量に対し比例的に電
位減衰が起こる感光体(以下、「J字型感光体」とい
う。)が要求される。上記の無機系感光体、機能分離型
の積層型有機感光体は図1に示される光誘起電位減衰特
性を示す。
【0005】しかしながら、近年の高画質化、高付加価
値化、ネットワーク化等の要請に伴い、盛んに研究開発
が行われているデジタル方式の電子写真装置では、一般
にドット等の面積率で階調を出す面積階調方式を採用す
るため、むしろ図2に示すような、ある露光量に達する
までは電位減衰せず、その露光量を越えると急峻な電位
減衰が起こる、いわゆるS字型の光誘起電位減衰特性を
有する感光体(以下、「S字型感光体」という。)を使
用する方が、画素の鮮鋭度が高められる等の点から望ま
しい。
【0006】S字型光誘起電位減衰特性は、ZnO等の
無機顔料又はフタロシアニン等の有機顔料を樹脂中に粒
子分散した単層型感光体において公知の現象である{例
えば、R.M.Schaffert:「Electro
photography」,Focal Press,
p.344(1975)、J.W.Weigl,J.M
ammino,G.L.Whittaker,R.W.
Radler,J.F.Byrne:「Current
Problems in Electrophoto
graphy」,Walter de Gruyte
r,p.287(1972)}。特に、現在多用されて
いる半導体レーザーの発信波長である近赤外域に光感度
を有するフタロシアニン系顔料を結着樹脂中に分散した
レーザ露光用単層感光体が多数提案されている{例え
ば、グエン・チャン・ケー,相沢:日本化学会誌,p.
393(1986)、特開平1−169454号公報、
同2−207258号公報、同3−31847号公報、
同5−313387号公報}。これらの単層型感光体で
は単一材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う必要が
ある。
【0007】しかしながら、両機能共に優れた性能を有
する材料は稀有であり、実用に耐え得るものは未だ得ら
れていない。特に顔料粒子は、一般的に多くのトラップ
レベルを有するため、電荷輸送能が低く、電荷が残留す
る、繰り返し安定性が低い等の欠点があり、電荷輸送を
担わせるには不適当である。この問題を根本的に解決
し、材料選択の自由度を上げ、ひいては総合的な感光体
特性を向上させるためには、S字型感光体においても、
機能分離構成の導入が不可欠である。
【0008】この問題に対し、D.M.Pai等は、電
荷発生層と電荷輸送層からなる2層構成の積層型感光体
において、電荷輸送層として少なくとも2つの電荷輸送
領域及び1つの電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領
域が互いに接触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不
均一電荷輸送層を用いることにより、任意の電荷発生層
との組合せでS字型光誘起電位減衰特性が実現できるこ
とを報告している{特開平6−83077号公報(米国
特許第5,306,586号明細書)}。また、本発明
者等は、電荷発生層、不均一電荷輸送層及び均一電荷輸
送層から成る3層構成の感光体がS字型光誘起電位減衰
特性を示すことを見出し、上記D.M.Pai等の発明
からさらに機能分離を高めることに成功した(特開平9
−96914号公報)。
【0009】しかしながら、これらの発明において鍵と
なるS字型光誘起電位減衰特性(以下、「S字性」とい
う)にする機能を担う不均一電荷輸送層の具体例として
は、フタロシアニン顔料微結晶の樹脂分散膜、六方晶セ
レン微結晶の樹脂分散膜、ポリビニルカルバゾール−ド
デシルメタクリレート相分離系ブロック共重合体が開示
されているのみであり、しかもこれ等の材料には以下に
示すような問題点があり、上記発明を実用化するには、
不均一電荷輸送層材料の新たな開発が不可欠な課題であ
った。
【0010】即ち、フタロシアニン顔料、六方晶セレン
等のような電荷発生機能を有する着色顔料を不均一電荷
輸送層用電荷輸送材料として用いると、特に電荷輸送層
側から電荷発生層を露光する場合、不均一電荷輸送層で
の光吸収及びそれに伴う電荷発生により、光感度や帯電
性に悪影響がでたり、繰り返し安定性が低下する等の問
題が生じる。この問題は、不均一電荷輸送層に吸収され
ない波長域に光感度を有する電荷発生層を用い且つ該波
長域内のみの露光を行う露光装置を用いることにより回
避することができるが、その場合材料や装置に制約が課
せられることになる。また、フタロシアニン顔料の樹脂
分散膜や六方晶セレンの樹脂分散膜の製造に際し、これ
ら顔料の粉砕及び/又は分散工程が必要であるが、粉砕
は莫大なエネルギーを要し、且つ不純物混入の危険性を
伴う。さらに、安定な分散液を得ることは一般的に困難
であり、好適な分散溶剤やバインダー樹脂の探索に多大
な労力を要すると共に、選択材料に著しい制約を受け
る。また、分散液中での結晶成長や凝集化による分散液
の変性は一般的に避けられず、長期に亘る使用は不可能
である。このため、頻繁に分散液を交換することが必要
となり、コストアップにつながる。
【0011】一方、ポリビニルカルバゾール−ドデシル
メタクリレート相分離系ブロック共重合体は、その塗布
液が均一溶液であると共に乾燥時にミクロ相分離するこ
とによって所望の不均一電荷輸送層を与えるものである
ため、上記のような粉砕/分散に係わる問題は根本的に
解消されるという利点を有する。また、相分離系ブロッ
ク共重合体は顔料ではないため、上記の光吸収に係わる
問題も発生しない。しかしながら、この相分離系ブロッ
ク共重合体は特殊な2官能基性開始剤を用いて合成され
るものであり、製造が困難、コストが高い等の問題があ
った。さらに、機械的強度が弱い、電荷移動度が小さ
い、電荷注入性が低い等の問題もあった。
【0012】ところで、電荷輸送性高分子としては、従
来から知られるポリビニルカルバゾールの他に、近年、
トリアリールアミン系電荷輸送性低分子化合物が高い電
荷輸送性を有するという知見を基に、トリアリールアミ
ン骨格を主鎖又は側鎖に含む電荷輸送性高分子が多数、
開発されている(例えば、米国特許4,806,443
号明細書、同4,806,444号明細書、同4,80
1,517号明細書、同4,937,165号明細書、
同4,959,288号明細書、特開昭61−2095
3号公報、特開平1−134456号公報、同1−13
4457号公報、同1−134462号公報、同4−1
33065号公報、同4−133066号公報、同8−
176293号公報、同8−176293号公報)。
【0013】しかしながら、これらの電荷輸送性高分子
は、単独重合体又は数種のモノマーのランダム共重合体
であるため、本質的に相分離性を示すことはなく、それ
ら単独ではS字性を示す不均一電荷輸送層を形成するこ
とはできなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】このような背景から、
本発明者らは、ポリビニルカルバゾール−ドデシルメタ
クリレート相分離系電荷輸送性ブロック共重合体に代わ
る相分離系電荷輸送性高分子について鋭意研究し、一般
的に、電荷輸送性高分子と絶縁性高分子とからなる電荷
輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合
体が、ミクロ相分離性、即ちS字性を示し、不均一電荷
輸送性材料として用いことができることを見出した。特
に、本発明者らは、トリアリールアミン骨格を主鎖或い
は側鎖に含む電荷輸送性高分子とビニル系絶縁性高分子
からなる電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グ
ラフト共重合体が、高いミクロ相分離性と優れた電荷輸
送性とを兼ね備え、不均一電荷輸送層材料として好適で
あることを見出した(特願平09−144358号明細
書)
【0015】しかしながら、これらの電荷輸送性ブロッ
ク共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体は、一般的
に溶解性が高い。そのため、電荷輸送性ブロック共重合
体又は電荷輸送性グラフト共重合体を含む不均一電荷輸
送層上に、他の層を湿式塗布法等で積層成膜しようとし
た場合、電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グ
ラフト共重合体自体の溶出、或いは不均一電荷輸送層自
体の膜荒れ等を起こしてしまうという製造上の問題があ
った。この問題は、勿論、乾式成膜法を用いたり、湿式
成膜法でも塗布液との接触時間が短いリング塗布法等を
用いたり、或いは共重合体の置換基として溶解性を低下
させる特殊なものを用いたりすること等によって回避で
きるが、コストアップ等の弊害を伴い、根本的な改善策
が求められている。
【0016】この課題に対し、本発明者らは、電荷輸送
性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体に
予めヒドロキシル基、イソシアネート基、ビニル基等の
反応性基を導入し、必要に応じ硬化助剤を添加して、3
次元架橋をさせ不均一電荷輸送層を形成する方法を提案
した(特願平08−292113号明細書)。しかしな
がら、これらの電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸
送性グラフト共重合体は、反応性基を有するが故、やは
り合成が困難であるばかりでなく、塗布液中で徐々に反
応硬化が進行し、塗布液がゲル化してしまうという問題
が依然としてあった。また、未硬化反応基が残存し不均
一電荷輸送層に悪影響を及ぼすという問題もあった。
【0017】即ち、本発明は、従来の技術における上記
のような実情に鑑みなされたものであって、即ち、本発
明の第1の目的は、電荷輸送性、耐摩耗性、耐溶剤性、
耐エッチング性等に優れ、且つ高寿命な電子写真用感光
体を提供することにある。本発明の第2の目的は、他の
層を積層成膜する場合の耐溶剤性に優れた架橋型電荷輸
送層を有する電子写真用感光体を提供することにある。
本発明の第3の目的は、これらの電子写真用感光体の安
価で簡便な製造方法、及びそれを用いた画質及び耐久性
に優れた電子写真装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電荷輸送
層を形成する電荷輸送性ブロック共重合体及び電荷輸送
性グラフト共重合体、その架橋方法に関して鋭意検討を
重ねた結果、適当な電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体と遊離ラジカルを発生する化
合物とを用いることで、その塗布液のポットライフを保
証し、且つ電荷輸送性、耐摩耗性、耐溶剤性、耐エッチ
ング性等に優れた架橋型電荷輸送層を簡便に形成できる
ことを見出した。即ち、本発明は、
【0019】<1>電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体と、遊離ラジカルを発生する
化合物と、を用いて形成される架橋型電荷輸送層を有す
ることを特徴とする電子写真用感光体である。
【0020】<2>架橋型電荷輸送層が、電荷輸送活性
相と電荷輸送不活性相とを含む架橋型不均一電荷輸送層
であることを特徴とする前記<1>に記載の電子写真用
感光体である。
【0021】<3>架橋型不均一電荷輸送層に加え、さ
らに電荷発生層、及び均一電荷輸送層を有することを特
徴とする前記<2>に記載の電子写真用感光体である。
【0022】<4>電荷発生層、架橋型不均一電荷輸送
層、及び均一電荷輸送層がこの順序で積層されているこ
とを特徴とする前記<3>に記載の電子写真用感光体で
ある。
【0023】<5>電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体が、下記一般式(1)又は
(2)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位
として含む電荷輸送活性ブロックを含有することを特徴
とする前記<1>〜<4>のいずれかに記載の電子写真
用感光体である。
【0024】
【化4】
【0025】一般式(1)中、Ar1 及びAr2 は、そ
れぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示す。
1 は、芳香族環構造を有する2価の炭化水素基又はヘ
テロ原子含有炭化水素基を示す。X2 及びX3 は、それ
ぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示す。
Lは、枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化
水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示す。mは、0
又は1を示す。
【0026】
【化5】
【0027】一般式(2)中、Ar3 及びAr4 は、そ
れぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示す。
Yは、芳香族環構造を有する3価の炭化水素基又はヘテ
ロ原子含有炭化水素基を示す。
【0028】<6>一般式(1)又は(2)で示される
構造が、−CHRa b (式中、R a 及びRb は、それ
ぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリ
ール基、アラルキル基を示す。)で表される置換基を少
なくとも1種含むことを特徴とする前記<5>に記載の
電子写真用感光体である。
【0029】<7>電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体が、下記一般式(3)で示さ
れる構造の少なくとも1種を繰り返し単位として含む電
荷輸送不活性ブロックを含有することを特徴とする前記
<1>〜<6>のいずれかに記載の電子写真用感光体で
ある。
【0030】
【化6】
【0031】一般式(3)中、R1 〜R4 は、それぞれ
独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボ
キシル基、シアノ基、置換もしくは未置換のアルキル
基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未
置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオ
キシ基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは
未置換のアリールカルボニル基、置換もしくは未置換の
アシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルコキシカル
ボニル基、置換もしくは未置換のアリールカルボニルオ
キシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニ
ル基を示す。R1とR2 とは、互いに連結して環構造を
形成してもよい。
【0032】<8>遊離ラジカルを発生する化合物が有
機過酸化物であることを特徴とする前記<1>〜<7>
のいずれかに記載の電子写真用感光体である。
【0033】<9>有機過酸化物の1時間半減期温度
が、60〜170℃であることを特徴とする前記<8>
に記載の電子写真用感光体である。
【0034】<10>有機過酸化物の分解生成物の沸点
が、170℃以下であることを特徴とする前記<8>又
は<9>に記載の電子写真用感光体である。
【0035】<11>帯電電位を50%減衰させるのに
要する露光量E50% と10%減衰させるのに要する露光
量E10% との比(E50% /E10% 値)が、1〜5である
ことを特徴とする前記<1>〜<10>に記載の電子写
真用感光体である。
【0036】<12>前記<1>〜<11>に記載の架
橋型電荷輸送層を形成する電子写真用感光体の製造方法
であって、電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性
グラフト共重合体と、遊離ラジカルを発生する化合物と
を含む塗布液を塗布成膜した後、該遊離ラジカルを発生
する化合物が、少なくとも半分以上分解するのに必要な
温度及び時間で加熱処理し架橋硬化させることによって
架橋型電荷輸送層を形成することを特徴とする電子写真
用感光体の製造方法である。
【0037】<13>前記<4>に記載の架橋型電荷輸
送層を形成する電子写真用感光体の製造方法であって、
架橋型電荷輸送層上に、電荷輸送性化合物を含む塗布液
を塗布成膜することによって均一電荷輸送層を形成する
ことを特徴とする前記<12>に記載の電子写真用感光
体の製造方法である。
【0038】<14>前記<1>〜<11>のいずれか
に記載の電子写真用感光体と、露光手段とを少なくとも
備えたことを特徴とする電子写真装置である。
【0039】<15>露光手段が、デジタル処理された
画像信号に基づき露光を行うデジタル方式の露光手段で
あることを特徴とする前記<14>に記載の電子写真装
置である。
【0040】本発明の電子写真用感光体において、架橋
型電荷輸送層は、熱又は光等による外的エネルギーより
遊離ラジカルを発生する化合物から発生した遊離ラジカ
ルが、電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラ
フト共重合体を架橋硬化させることにより形成され、電
荷輸送性、耐摩耗性、耐溶剤性、耐エッチング性等に優
れる。特に、この架橋型電荷輸送層は耐溶剤性に優れる
ため、架橋型電荷輸送層上に、他の層を塗布欠陥なしに
積層成膜することが可能である。このため簡便な浸漬塗
布法によって、成膜可能という製造上のメリットが得ら
れる。また、遊離ラジカルを発生する化合物は、熱又は
光等による外的エネルギーが与えられるまでは、実質的
に遊離ラジカルを発生しないため、架橋型電荷輸送層を
形成する塗布液は、ポットライフに優れ、取扱いが容易
である。
【0041】本発明の電子写真用感光体において、電荷
輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合
体が遊離ラジカルを発生する化合物によって架橋硬化さ
せる機構は、現状では必ずしも明らかではないが、遊離
ラジカルを発生する化合物から発生した遊離ラジカル
が、電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフ
ト共重合体中の水素原子を引き抜くことで、電荷輸送性
ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体中に
ラジカルサイトが生成し、異なる分子鎖間で該ラジカル
サイトがカップリングすることにより架橋硬化されるも
のと推測される。
【0042】本発明の電子写真用感光体において、電荷
輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合
体と遊離ラジカルを発生する化合物とを用いて形成され
る架橋型電荷輸送層は、S字性を示す電荷輸送活性相と
電荷輸送不活性相とを含む架橋型不均一電荷輸送層が好
適である。この架橋型不均一電荷輸送層を有する電子写
真用感光体は、高いS字性を示し、それを使用したデジ
タル方式の画像形成装置は、優れた印字品質を長期にわ
たり、且つ広範な環境下において実現できる。
【0043】本発明の電子写真用感光体において、S字
性、即ち、S字型光誘起電位減衰特性の発現の機構に関
しては、トラップ説{例えば、北村,小門:電子写真学
会誌Vol.20,p.60(1982)}、D.M.
Paiらが上記の特許で唱えている回旋状電導説等幾つ
かの提案はあるものの、未だ確立された説はない。
【0044】しかしながら、これまでにS字型感光体と
して報告されている顔料樹脂分散型単層感光体、D.
M.Pai等が開示した、電荷発生層及び不均一電荷輸
送層からなる電子写真感光体、並びに本発明の1つの形
態である、電荷発生層、不均一電荷輸送層及び均一電荷
輸送層を備えた電子写真感光体においては、少なくとも
電荷輸送層中における電荷発生領域に隣接する領域が電
気的に不活性なマトリックス(以下、「電気的不活性マ
トリックス」ということがある。)中に電荷輸送活性ド
メインが分散された不均一な構造であるという共通点を
認めることができる。尚、ここでいう電気的不活性マト
リックスとは、マトリックスの輸送エネルギーレベル
が、電荷輸送ドメインの輸送エネルギーレベルより著し
く大きく、通常の電界強度では、実質的に該マトリック
スに輸送電荷が注入されることがなく、該マトリックス
が輸送電荷にとって事実上の電気的絶縁状態にあるよう
なマトリックスを意味する。
【0045】D.M.Paiらが唱える回旋状電導説に
よれば、S字型光誘起電位減衰が起こる過程は、以下の
ようなものであると推定されている。まず、不均一電荷
輸送層では、電気的不活性マトリックス中に分散された
電荷輸送活性ドメインが互いに接触し、回旋状の電荷輸
送路を形成しているものと考えられる。この場合、電子
写真感光体が帯電され感光層に高電界が印加されると、
露光により電荷発生層で発生した電荷は電界によるクー
ロン力により電界に沿って、電荷発生層から電荷輸送層
に注入され、電荷輸送活性ドメイン中を電界方向に移動
する。しかし、電荷輸送活性ドメインの末端凸部に到達
した所で、電気的不活性マトリックスの障壁に出会い、
電界により移動方向が規制されているため、ここで該電
荷の移動は一旦停止することになる。この間の移動距離
が感光層の全膜厚に対して充分小さければ、この間の電
位減衰は無視できるものとなる。殆ど全ての表面電荷に
相当する電荷が注入された後は、該注入電荷近傍での表
面に垂直な局部的電界は無視できるほど小さくなり、停
止していた電荷は電界による束縛を逃れ表面に垂直な方
向以外の方向に拡散することが可能となり、回旋状に連
なる連結路を辿って最初に電荷が停止された所よりも深
部に達する。この深部において、先程と同様に電荷は再
び十分な高電界に曝されドメイン内を電界方向に沿って
移動し、再び電気的不活性マトリックスの障壁に出会
い、移動を停止する。しかし、前の電荷の移動で電界強
度は低下しているので、より多くの電荷が回旋状電荷輸
送路を通り次の絶縁性障壁にまで達する。かくして、電
荷の移動はカスケード的に起こり、S字型の光誘起電位
減衰となる、というのがD.M.Pai等による説明で
ある。尚、顔料樹脂分散型の単層S字感光体において
は、露光された光は表面近傍で吸収されそこで電荷が発
生されるため、該光吸収/電荷発生の領域を電荷発生
層、それに続く残りの領域を電荷輸送層と見なすことが
でき、上記説明が当てはまる。ここで、電界により移動
方向が規制された電荷輸送活性ドメインの末端凸部は、
一種のトラップと捕らえることができる(以下、構造的
トラップということがある。)。一般のエネルギーレベ
ル差に起因するトラップ(以下、エネルギートラップと
いうことがある。)では、電界強度の低下と共に該トラ
ップからの脱出確率がプール−フレンケル効果により低
下する。これに対し、構造的トラップでは、上述の機構
から、電界強度の低下と共に脱出確率が増加するという
特徴を有する。
【0046】本発明の電子写真感光体において、架橋型
電荷輸送層が、電荷輸送活性相と電荷輸送不活性相とを
含む架橋型不均一電荷輸送層の場合に、S字型の光誘起
電位減衰挙動を呈するのも、電荷輸送活性相、即ち電荷
輸送活性ブロックからなる相が電荷輸送活性ドメイン
を、電荷輸送性不活性相、即ち電荷輸送不活性ブロック
からなる相が電気的不活性マトリックスをそれぞれ形成
するため上記のような現象が起きているためと推定され
る。
【0047】
【発明の実施の形態】本発明の電子写真用感光体は、導
電性支持体上に、少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層
を含む感光層を有することが好適であり、該電荷輸送層
の少なくとも1層は、電荷輸送性ブロック共重合体又は
電荷輸送性グラフト共重合体と遊離ラジカルを発生する
化合物とを用いて形成される架橋型電荷輸送層である。
本発明の電子写真用感光体は、さらに所望により下引き
層、保護層、乱反射層等を有してもよい。
【0048】前記導電性支持体について詳しく説明す
る。前記導電性支持体としては、当業界で導電性支持体
として利用されうる任意の種類から選択でき、不透明及
び透明の導電性支持体いずれも用いることができる。前
記導電性支持体としては、例えばアルミニウム、ニッケ
ル、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタン、
ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジルコニ
ウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等
の薄膜を設けたプラスチック、ガラス及びセラミックス
等;導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチッ
ク、ガラス及びセラミックス等が挙げられる。また、前
記導電性支持体の形状は、ドラム状、シート状、プレー
ト状等、適宜の形状とすることができる。
【0049】前記導電性支持体の表面には必要に応じ
て、各種の処理を行うことができる。該各種の処理とし
ては、例えば電解酸化処理、薬品処理、着色処理、機械
的粗面化処理(砂目立て、荒切削、ホーニング等)等が
挙げられる。電解酸化処理や機械的粗面化処理は、前記
導電性支持体表面を粗面化するのみならず、その上に塗
布される層の表面形状をも制御し、露光用光源としてレ
ーザー等の可干渉光源を用いた場合に問題となる導電性
支持体表面及び/又は積層界面での反射による干渉縞の
発生を防止すると云う効果を発揮する。
【0050】本発明の電子写真用感光体は、前記導電性
支持体から前記感光層への電荷の漏洩を阻止し、また前
記感光層を前記導電性支持体に対して一体的に接着保持
せしめるために、前記導電性支持体と前記感光層との間
に下引き層を設けることが好適である。
【0051】前記下引き層は、公知のものを用いること
ができ、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、メ
タクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸
ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミ
ド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹
脂、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹
脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロー
ス、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の樹脂及び
これらの共重合体、又は、ジルコニウムアルコキシド化
合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング
剤等の硬化性金属有機化合物を、単独又は2種以上混合
して用いて形成することができる。また、帯電極性と同
極性の電荷のみを輸送し得る材料を用いて形成した層も
下引き層として使用可能である。これらの中でも特に、
少なくともジルコニウムアルコキシド化合物を用いて形
成された下引き層は、前記導電性支持体から前記感光層
への電荷漏洩の阻止能が高く、また残留電位も低く抑え
られ、さらに環境変化に伴う特性の変動も小さいため好
適である。
【0052】前記下引き層の膜厚は、0.01〜10μ
m程度が適当であり、好ましくは0.05〜5μmであ
る。前記下引き層は、上述の材料を適当な溶剤中に溶解
又は分散させた塗布液を浸漬塗布することにより形成す
ることが好適であるが、他に、ブレード塗布法、ワイヤ
ーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアー
ナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布等の通常の
方法によっても形成できる。
【0053】前記感光層の電荷発生層について詳しく説
明する。前記電荷発生層は、電荷発生能を有するものな
ら如何なるものでも構わない。電荷発生層を形成する電
荷発生材料としては、例えば、非晶質セレン、セレン−
テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物及
びセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−
SiC等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、ス
クアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ
系、多環キノン系、ピレン系、ピロロピロール系、ピリ
リウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料及び染料
等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独
あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0054】前記フタロシアニン系化合物は、デジタル
式の電子写真装置に光源として現在広く使用されている
発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオードの発
信波長である600〜850nmに優れた光感度を有す
るため、電荷発生材料として特に好ましい。前記フタロ
シアニン系化合物としては、無金属フタロシアニン、金
属フタロシアニン、及びそれらの誘導体が挙げられる。
前記金属フタロシアニンの中心金属としては、Cu、N
i、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、
Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、ま
たこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、
アルキル化物、及びアルコキシ化物等の誘導体も用いる
ことができる。前記金属フタロシアニンとして具体的に
は、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシ
アニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジル
フタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジ
クロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニ
ン等が挙げられる。また、上記化合物のフタロシアニン
環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニン類も
用いることができる。さらにまた、上記化合物のフタロ
シアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換された
アザフタロシアニン類も用いることができる。これらフ
タロシアニン系化合物の形態としては、アルモルファス
又は全ての結晶形のものが使用可能である。
【0055】前記フタロシアニン系化合物の中でも、無
金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロ
ガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシ
アニン、及びジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた
光感度を有しており、電荷発生材料として特に好まし
い。
【0056】また、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸
引性基を有するフタロシアニン類及びアザフタロシアニ
ン類は、殆どのフタロシアニン系化合物が正孔を主たる
輸送電荷とするp型半導体の性質を有しているのに対
し、電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であり、電
荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合物を用
いて、導電性基体上に電荷発生層と正孔輸送層(電荷輸
送層)を順次積層してなる電子写真用感光体は、それを
負帯電で使用した場合、高感度で且つ導電性支持体から
の正電荷の注入が抑えられ、暗減衰が小さく帯電性が高
いと云う良好な電子写真特性を示すため好適である。
【0057】また、六方晶セレン、アゾ系顔料、多環キ
ノン系顔料及びペリレン系顔料も電荷発生効率に優れる
ため、電荷発生材料として好ましく用いることができ
る。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小
径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レー
ザーの短波長化の検討がなされているが、これらの化合
物は、紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短
波長レーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用い
ることができる。
【0058】前記電荷発生層は、前記電荷発生材料を真
空蒸着法等により直接成膜したり、前記電荷発生材料と
結着樹脂とを含む塗布液を用い、湿式塗布法にて成膜す
ることにより形成することができる。
【0059】前記電荷発生層を前記電荷発生材料と結着
樹脂とを含む塗布液を用いて形成させる場合、該結着樹
脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリビニルブ
チラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポ
リビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ
エステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹
脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポ
リ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、
ポリビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの
結着樹脂は単独重合体、ブロック、グラフト、ランダム
及び交互共重合体のいずれでもよい。また、これらの結
着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよ
い。
【0060】前記電荷発生材料と前記結着樹脂との配合
比(電荷発生材料/結着樹脂(体積比))は、1/10
〜10/1が好ましく、1/1〜3/1が好ましい。電
荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が、1/10未満
であると光感度の低下、残留電位の増大等の障害が起き
る虞があり、10/1を超えると、暗減衰が増大し易く
なり、また、湿式塗布法で成膜する場合は均質な膜を得
ることが困難になる虞がある。
【0061】前記電荷発生層の膜厚は、一般的には、
0.05〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1
〜2.0μmである。また、前記電荷発生層を前記電荷
発生材料と結着樹脂を含む塗布液を用いて形成させる場
合の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー
塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、
エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布等の
通常の方法が挙げられる。
【0062】前記感光層の電荷輸送層について詳しく説
明する。前記電荷輸送層は、1層でも複数層でも構わな
いが、その内少なくとも1層は、電荷輸送性ブロック共
重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体と遊離ラジカル
を発生する化合物とを用い形成された架橋型電荷輸送層
(以下、単に「架橋型電荷輸送層」ということがあ
る。)であることが必須である。本発明において、架橋
型電荷輸送層以外の電荷輸送層を「その他の電荷輸送
層」という。
【0063】前記架橋型電荷輸送層は、耐摩耗性、耐溶
剤性、耐エッチング性に優れる観点から、最表面層とし
て用いてもよいが、特に塗布溶剤に対する耐溶剤性に優
れる観点から最表面層以外の層として用いる場合に顕著
な効果を発揮する。架橋型電荷輸送層上には、中間層を
設ける或いは塗布方法の選択等の制約なしに、その他の
電荷輸送層を積層することができる。
【0064】前記架橋型電荷輸送層は、S字性を示す、
電荷輸送活性相と電荷輸送不活性相とを含む架橋型不均
一電荷輸送層であることが好適である。電荷輸送活性相
とは、電荷輸送活性ブロックからなる相を示し、電荷輸
送不活性相とは、電荷輸送不活性ブロックからなる相を
示す。
【0065】前記遊離ラジカルを発生する化合物を説明
する。前記遊離ラジカルを発生する化合物としては、熱
的エネルギー、電磁気的エネルギー、粒子的エネルギ
ー、電気的エネルギー、音波的エネルギー、機械的エネ
ルギー等のエネルギーの吸収により遊離ラジカルを発生
するものであれば、如何なるものでも構わないが、製造
性、コスト等の観点から、熱的エネルギー又は電磁気的
エネルギーの吸収により遊離ラジカルを発生するものが
好適である。該熱的エネルギー又は電磁気的エネルギー
の吸収により遊離ラジカルを発生するものとしては、過
酸化物類、ジアゾメタン類、ジアゾニウム塩類、アゾ
類、テトラセン類、過硫酸化物類、スルフィン酸化物
類、多価金属塩類、トリフェニルホスフィン類、ジスル
フィド類等が挙げられる。これらの中でも、溶解性、安
定性等の観点から、特に有機過酸化物が好適である。
【0066】前記有機過酸化物は、熱的エネルギーの吸
収により分解して遊離ラジカルを発生する。前記有機過
酸化物の1時間半減期温度は、60〜170℃が好まし
く、100〜170℃がより好ましく、110〜140
℃がさらに好ましい。1時間半減期温度が60℃未満で
あると、常温での分解が無視できなくなるため塗布液の
ポットライフが低下してしまう虞があり、また、1時間
半減期温度が170℃を超えると、充分な架橋硬化を得
るのに高温を長時間掛ける必要があり、コストアップを
招くと共に、電荷輸送性高分子化合物等の酸化分解によ
る劣化の原因になり易い。本発明において1時間半減期
温度とは、1時間の経過で化合物が元の半分まで分解す
る温度を示す。
【0067】前記有機過酸化物は、加熱架橋硬化後に有
機過酸化物の分解生成物が膜中に残存しない方が一般的
によいことから、前記有機過酸化物の分解生成物の沸点
が170℃以下であることが特に好ましい。勿論、分解
性生物の沸点が高く残留するとしても、添加量が少なか
ったり、不活性なものであれば、問題は顕在化しない。
【0068】前記有機過酸化物として具体的には、ベン
ゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、
アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサ
イド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロ
ヘキサン等のパーオキシケタール類、p−メンタンハイ
ドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ
クミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド
等のジアルキルパーオキサイド類、ジ−3−メトキシブ
チルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ
イソプロピルモノカーボネート等のパーオキシカーボネ
ート類、t−ブチルパーオキシピヴァレート等のパーオ
キシエステル類が挙げられる。また、分解生成物として
沸点が170℃以下のもののみを発生する有機過酸化物
としては、例えば、分解生成物としてアセトン、t−ブ
タノール、イソプロパノール、炭酸ガスを生じるt−ブ
チルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、分解生
成物としてアセトン、t−ブタノールを生じるジ−t−
ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0069】前記遊離ラジカルを発生する化合物は、単
独で用いてもよいし、また複数を混合して用いてもよ
い。前記遊離ラジカルを発生する化合物の添加量は、電
荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重
合体に対して、0.5〜20重量%が好ましく、2〜1
0重量%がより好ましい。該添加量が0.5重量%未満
であると、耐溶剤性、耐摩耗性を発揮するのに十分な架
橋密度が得られない虞があり、また、20重量%を超え
ると、電荷輸送性が低下したり、塗膜の均質性が低下す
る虞がある。
【0070】前記電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷
輸送性グラフト共重合体について説明する。前記電荷輸
送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体
としては、電荷輸送能を有するものであれば如何なるも
のでも構わないが、架橋型電荷輸送層が架橋型不均一電
荷輸送層であることが好適なことから、電荷輸送活性ブ
ロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性ブ
ロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体である
ことが好適である。
【0071】前記電荷輸送活性ブロックは、電荷輸送能
を有するものであればいかなるものでも構わないが、特
に電荷輸送性、電荷注入性、電荷寿命、可視光及び赤外
光透過性、化学的安定性、及び機械的強度等の点で、下
記一般式(1)又は(2)で示される構造の少なくとも
1種を繰り返し単位として含有するものが好適である。
【0072】
【化7】
【0073】
【化8】
【0074】一般式(1)中、Ar1 及びAr2 は、そ
れぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、炭素
数6〜16の置換又は未置換のアリール基が好ましい。
該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニ
ル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、
置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハ
ロゲン原子等が挙げられる。
【0075】一般式(1)中、X1 は、芳香族環構造を
有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基
を示し、炭素数6〜20の炭化水素基又は炭素数6〜2
0のヘテロ原子含有炭化水素基が好ましい。具体例とし
ては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン
基、ナフチレン基、メチレンジフェニル基、シクロヘキ
シレデンジフェニル基、オキシジフェニル基及びチオジ
フェニル基等が挙げられる。芳香族環構造を有する2価
の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基は、置換基
を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチ
ル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。X1
としては、特に電荷輸送性、化学的安定性の点で置換若
しくは未置換ビフェニレン基が好ましく、3,3’−置
換ビフェニレン基がより好ましい。
【0076】一般式(1)中、X2 及びX3 は、それぞ
れ独立に置換又は未置換のアリーレン基を示し、炭素数
6〜18の置換又は未置換のアリーレン基が好ましい。
該アリーレン基の具体的には、フェニレン基、ビフェニ
レン基、ターフェニレン基及びナフチレン基等が挙げら
れる。また、置換基としては、メチル基、エチル基、メ
トキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0077】一般式(1)中、Lは、枝分れ若しくは環
構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含
有炭化水素基を示し、特に機械的特性の点で、エーテル
結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサン結
合等から選ばれる結合基を含み、且つ炭素数が20以下
であるものが好ましい。その具体例としては、以下のも
のが挙げられる。
【0078】
【化9】
【0079】一般式(1)中、また、mは0又は1を示
す。
【0080】一般式(2)中、Ar3 及びAr4 は、そ
れぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、炭素
数6〜18の置換又は未置換のアリール基が好ましい。
該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニ
ル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、
置換基としては、炭素数1〜12個のアルキル基、炭素
数1〜12個のアリール基,炭素数1〜12個のアルコ
キシ基、ジアリールアミノ基、ジアリールアミノアリー
ル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0081】一般式(2)中、Yは芳香族環構造を有す
る3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を示
し、特に機械的特性の点で、炭素数が20以下のものが
好ましい。その具体例としては、以下のものが挙げられ
る。
【0082】
【化10】
【0083】一般式(1)又は(2)で示される構造
は、遊離ラジカルを発生する化合物から発生する遊離ラ
ジカルによる水素引き抜き反応を起こり易くする点か
ら、−CHRa b (式中、Ra 及びRb は、それぞれ
独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール
基、アラルキル基を示す。)で表される置換基を少なく
とも1種を含むことが好適である。
【0084】一般式(1)又は(2)で示される構造の
具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】前記電荷輸送活性ブロックの電荷移動度
は、電子写真感光体の応答速度を支配する一因子であ
り、移動度が高いもの程、高速の電子写真装置に好適に
用いられる観点から、1×10-5V/cmの電界強度域
において、1×10-6cm2 /V・s以上であることが
好ましく、5×10-6cm2 /V・s以上であることが
より好ましい。尚、電荷輸送活性ブロックの電荷移動度
は、電荷輸送活性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分
子の電荷移動度を測定することにより決定される。電荷
移動度の測定は、Time−of−Flight法によ
り行うことができる。
【0089】前記電荷輸送不活性ブロックとしては、十
分な絶縁性を示すものであれば如何なるものでも構わな
いが、電荷輸送活性ブロックと非相溶性のものが好まし
く、例えば、ポリビニルアセタール、ポリアルキルメタ
クリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリ塩化ビニ
ル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキルビニ
ルエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリシ
ロキサン等のブロック、グラフト、ランダム又は交互共
重合体等が挙げられる。電荷輸送不活性ブロックとして
は、機械的強度、可撓性、可視光又は赤外光透過性、絶
縁性、相分離性、化学的安定性、製造性、等の点から、
ビニル系モノマーから得られた重合体が好ましく、下記
一般式(3)で示される構造の少なくとも1種を繰り返
し単位として有するものが特に好ましい。
【0090】
【化11】
【0091】一般式(3)中、R1 〜R4 は、水素原
子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シ
アノ基、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しく
は未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルコキ
シ基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、置換若
しくは未置換のアシル基、置換若しくは未置換のアリー
ルカルボニル基、置換若しくは未置換のアシルオキシ
基、置換若しくは未置換のアルコキシカルボニル基、置
換若しくは未置換のアリールカルボニルオキシ基、置換
若しくは未置換のアリールオキシカルボニル基を示す。
アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基
及びアルコキシカルボニル基は、炭素数1〜21のもの
が好ましい。アリール基、アリールカルボニル基、アリ
ールカルボニルオキシ基及びアリールオキシカルボニル
基は、炭素数6〜19のものが好ましい。アリール基と
して具体的には、フェニル基、ナフチル基、ピレニル等
が挙げられる。置換基としては、ハロゲン原子、フェニ
ル基、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0092】一般式(3)で示される構造の具体的例
と、この単独重合体のガラス転移温度を示す。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】一般式(3)中、R1 及びR2 は、互いに
連結し環構造を形成してもよい。
【0101】前記電荷輸送不活性ブロックとしては、電
荷輸送性の観点から、極性の低いものが好ましい。電荷
輸送不活性ブロックの極性を支配する因子は、繰り返し
単位の極性であり、ビニル系重合体にあっては、原料ビ
ニルモノマーのビニル基への水素付加体の双極子モーメ
ントで判断することができる。該双極子モーメントの値
としては、2D以下であることが好ましく、より好まし
くは1.5D以下であり、さらに好ましくは1D以下で
ある。双極子モーメントは、化学便覧基礎編(日本化学
会編、丸善、1993)等に記載の方法によって測定す
ることができる。また、分子軌道計算法、分子力場計算
法等によって、算出することも可能である。また、溶剤
ハンドブック(浅原昭三ほか編、講談社、1976)等
の文献値を用いることもできる。溶剤ハンドブックによ
れば、例えば、スチレンモノマーの水素付加体であるエ
チルベンゼンの双極子モーメントは0.35Dであり、
2−メチルブテンの水素付加体である2−メチルブタン
の双極子モーメントは0.0Dであり、ビニルエチルエ
ーテルの水素付加体であるジエチルエーテルの双極子モ
ーメントは1.12Dであり、メチルアクリレートの水
素付加体であるプロピオン酸メチルの双極子モーメント
は1.73Dであり、酢酸ビニルの水素付加体である酢
酸エチルの双極子モーメントは1.88Dであり、塩化
ビニルの水素付加体であるクロロエタンの双極子モーメ
ントは1.96Dである。
【0102】特に、一般式(3)中のR1 〜R3 が水素
原子又はアルキル基であり、且つR 4 がアルキル基、ア
リール基、アリール基を置換基として有するアルキル
基、又はアルキル基を置換基として有するアリール基で
あるものは、そのビニル基への水素付加体の双極子モー
メントが1D以下であり、特に好ましい。
【0103】前記電荷輸送不活性ブロックの体積抵抗率
は、1012Ω・cm以上であることが好ましく、1014
Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率が
この値より低いと、電気的不活性マトリックスの電気的
絶縁性が損なわれ、S字性が失われたり、暗減衰が増加
する虞がある。なお、本発明において、体積抵抗率の値
は、硬化した状態での値を示す。
【0104】前記電荷輸送不活性ブロックのガラス転移
温度は、耐久性、機械的強度、可撓性、化学的安定性か
ら30℃以上であることが好ましく、より好ましくは6
0℃以上、特に好ましくは90℃以上である。
【0105】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体の構成ブロック、即ち電荷輸
送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの連結形式
は、如何なるものでも構わない。電荷輸送活性ブロック
と電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック
共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体としては、電
荷輸送活性ブロックをA、電荷輸送不活性ブロックをB
としてとしたとき、AB型、ABA型、BAB型、(A
B)n 型、(AB)n A型、及びB(AB)n 型のブロ
ック共重合体、電荷輸送活性ブロックを主鎖、電荷輸送
不活性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、電荷輸
送不活性ブロックを主鎖、電荷輸送活性ブロックを側鎖
とするグラフト共重合体、ABA型等のブロック共重合
体の側鎖にA及び/又はBをグラフト化したブロック−
グラフト共重合体等が挙げられる。また、種々の連結形
式のものが混在してもよい。
【0106】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体は、S字型光誘起電位減衰特
性を示すために、相分離の状態にあることが好ましく、
サブミクロンサイズの微細な相分離の状態にあることが
より好ましい。一般的に、ポリマーブレンド、ポリマー
アロイの分野で知られているように、異なる構造の高分
子は、互いに非相溶性であるため、それらの混合物、ブ
ロック共重合体、及びグラフト共重合体は相分離の状態
をとる。一般的に、異なる構造の高分子の単なる混合
物、即ちポリマーブレンドでは、相分離のスケールが数
μm以上のマクロな相分離状態(マクロ相分離)をと
る。これに対し、異なる構造の高分子の各成分が共有結
合で連結されたブロック共重合体、及びグラフト共重合
体は、相分離のスケールがブロック長によって規制され
たサブミクロンサイズ以下の微細なドメインからなる相
分離の状態をとる。
【0107】ブロック共重合体及びグラフト共重合体に
おける相分離のスケールは、一般的に各ブロックの平均
長と同程度であり、分子量の2/3乗根にほぼ比例する
ことが知られている。また、2種の高分子の非相溶性
は、一般的に分子量が大きい程、また、両者の溶解度パ
ラメータ差が大きい程、高い。
【0108】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体の相分離の構造としては、電
荷輸送活性ブロックが電荷輸送活性ドメインとなり、電
荷輸送不活性ブロックが電気的不活性マトリックスとな
るものであれば如何なる構造でもよいが、良好なS字型
光誘起電位減衰特性という点からは、電荷輸送活性ブロ
ックからなる相が島、電荷輸送不活性ブロックからなる
相が海となる相分離構造であることが好ましい。また、
スピノーダル分解により得られる変調構造も、好ましい
S字性が得られる。尚、電荷輸送活性ブロックが電荷輸
送活性マトリックスとなり、電荷輸送不活性ブロックが
電気的不活性ドメインとなる構造であっても、電荷輸送
不活性ブロックからなる電荷輸送不活性ドメインが上述
の構造的トラップを形成し得る形状を取っていれば、S
字性が発現される。また、電荷輸送活性ブロックが結晶
性であり、電荷輸送不活性ブロックが非結晶性である場
合、電荷輸送不活性ブロックからなる電気的不活性マト
リックス中に、電荷輸送活性ブロックの微結晶が電荷輸
送活性ドメインをなす相分離構造が得られ、この場合に
もS字性が発現される。
【0109】前記相分離の状態には、構成ブロックの種
類、分子量及び両ブロックの組成比等により、熱力学的
に最も安定な構造が存在する。一般的に、Aブロック、
Bブロックからなる共重合体は、連結形式には依らず、
A/B組成比にのみ依存し、A/B比の増加に伴い、A
が球状ドメインでBがマトリックスという構造から、A
が棒状ドメインでBがマトリックスという構造、A/B
交互層、Bが棒状ドメインでAがマトリックスという構
造を経て、Bが球状ドメインでAがマトリックスという
構造へと系統的に変化する。
【0110】しかしながら、一般的に、Aブロック、B
ブロックからなる共重合体を、湿式塗布法により、成膜
する場合には、用いる溶媒や乾燥速度等により、相分離
の状態を任意に制御することができる。例えば、A/B
比が大きく熱力学的にはBが球状ドメインでAがマトリ
ックスという構造になる場合でも、塗布溶媒として、B
の良溶媒であり且つAの貧溶媒である溶媒を選択すれ
ば、Aが球状ドメインでBがマトリックスという構造を
得ることができる。また、A、B両者の良溶媒を用い、
急速に溶媒を除去すると、スピノーダル分解状態で凍結
した相分離構造(変調構造)を得ることができる。ま
た、A/B比が大きく熱力学的にはBが球状ドメインで
Aがマトリックスという構造の共重合体に、Bのみと相
溶性のある重合体を添加すると、Aが球状ドメイン、B
及びBのみと相溶性のある重合体がマトリックスとなる
相分離構造を得ることができる。
【0111】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体の合成方法としては、第4版
実験化学講座28の高分子合成(丸善、1992)、マ
クロモノマーの化学と工業(アイピーシー、199
0)、高分子の相溶化と評価技術(技術情報協会、19
92)、高分子新素材One Point 12 ポリ
マーアロイ(共立、1988)等の文献に記載されてい
るブロック共重合体又はグラフト共重合体を与え得る任
意の適当な合成法を用いることができる。
【0112】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体の合成方法としては、例え
ば、予め電荷輸送活性重合体と電荷輸送不活性重合体を
合成し、それら重合体同士を反応結合させることによっ
て所望のブロック共重合体が得られる。また、電荷輸送
活性ブロックを形成するモノマーと電荷輸送不活性ブロ
ックを形成するモノマーの重合形式が同じであり且つ両
者の反応性が大きく異なる場合には、単にそれらのモノ
マーの混合物を重合させることで、まず、反応性の高い
方のモノマーが重合し、該モノマーが消費された後、反
応性の低い方のモノマーが重合し、所望のブロック共重
合体が得られる。さらに、予め一方のモノマーの重合体
を合成し、該重合体の末端及び/又は側鎖にアゾ、過酸
エステル、パーオキシ、ジチオカルバマート、アルカリ
金属オキシアルキル、アルカリ金属アルキル等の重合開
始能を有する基を含む重合開始基を導入し、該重合開始
基により、他方のモノマーを重合させることによって
も、所望のブロック共重合体又はグラフト共重合体が得
られる。この方法によれば、重縮合若しくは重付加系重
合体と付加重合若しくは開環重合系重合体からなるブロ
ック共重合体又はグラフト共重合体を容易に得ることが
できる。
【0113】また、分子中にアゾ、過酸エステル、パー
オキシ等の重合開始能を有する基を複数含む化合物を用
い、まず、一部の重合開始基から、一方のモノマーを重
合させ、次に残りの重合開始基から、他方のモノマーを
重合させることによっても所望のブロック共重合体が得
られる。さらに、カチオンリビング重合法、アニオンリ
ビング重合法、ラジカルリビング重合法等のリビング重
合法により、各モノマーを逐次重合させることによって
も所望のブロック共重合体を得ることができる。リビン
グ重合法は、各ブロックの分子量を容易に制御でき、且
つ分子量分布の狭い重合体を与え得るという利点を有す
る。また、イモータル重合法、Iniferter法等
により、各モノマーを逐次重合させることによっても所
望のブロック共重合体を得ることができる。さらにま
た、予め一方のモノマーの重合物の末端に他方のモノマ
ーを導入したマクロモノマーを合成し、該マクロモノマ
ーを重合することによって所望のグラフト共重合体を得
ることができる。
【0114】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体は、以上のような電荷輸送活
性ブロックによる高い電荷輸送能と共に、電荷輸送不活
性ブロックの導入というアロイ化の手法により、単独重
合体やランダム共重合体とは異なり、電荷輸送能を損ね
ることなく、機械的強度、ガラス転移温度、結晶化度、
屈折率、接着性、吸着性、可撓性、溶解性、溶融性、相
分離状態等の制御を行うことが可能である。さらに、所
望とする他の特性を発揮する成分を共重合化すること
で、さらに高機能化された材料とすることができる。
【0115】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体中の電荷輸送活性ブロックと
電荷輸送不活性ブロックとの組成比は、それらの相分離
の結果として得られる電荷輸送活性ドメインと電気的不
活性マトリックスとの体積比としては、10/1〜1/
10となる範囲内で任意に設定され、好ましい範囲は4
/1〜1/4である。電荷輸送活性ドメインと電気的不
活性マトリックスとの体積比が10/1より多いと、電
荷輸送活性ドメインが密に接触したり、電荷輸送活性ブ
ロックが電荷輸送活性マトリックスとなってしまい、実
質的に均一な構造の電荷輸送路が形成され、S字型光誘
起電位減衰特性発現に不可欠な電荷輸送路の不均一構造
が消失し、S字性が失われる虞がある。また、電荷輸送
活性ドメインと電気的不活性マトリックスとの体積比が
1/10より少ないと、電荷輸送路が分断され、残留電
位の増大、応答速度の低下等の障害を招く虞がある。
【0116】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体中に含まれる電荷輸送活性ブ
ロック、及び電荷輸送不活性ブロックの重量平均分子量
は、いずれも好ましくは2000以上、相分離性の点
で、より好ましくは30000以上であり、且つ分子量
が10000以下の成分が5%未満であることが好まし
い。
【0117】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体の重量平均分子量は、如何な
る値でも構わないが、高分子特性を発揮するには、40
00以上であることが好適である。この重量平均分子量
の上限は、電気的特性上の制限はないが、湿式成膜法に
より成膜する場合には、塗布溶液に適当な粘度を与える
範囲内にあることが必要であることから、一般的に50
00000以下であることが好適である。
【0118】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体の具体例としては以下のもの
が挙げられる。
【0119】
【表11】
【0120】
【表12】
【0121】前記電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活
性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体又は電
荷輸送性グラフト共重合体は、電荷輸送性高分子及び/
又は絶縁性高分子と併用してもよい。電荷輸送性高分子
としては、電荷輸送能を有するものであれば如何なるも
のでも構わないが、電荷輸送活性ブロックと相溶性を有
するものが好適である。絶縁性高分子としては、絶縁性
を有するものであれば如何なるものでも構わないが、電
荷輸送不活性ブロックと相溶性のあるものが好適であ
る。
【0122】前記電荷輸送活性ドメインの平均粒子径
は、0.005〜3μmが好ましく、より好ましくは
0.007〜1μm、特に好ましくは0.01〜0.5
μmの範囲である。電荷輸送活性ドメインの平均粒子径
が3μmより大きいと、好ましい膜厚の範囲内でS字性
に必要な電荷輸送路の不均一構造を形成する確率が低く
なり、S字性が低下する虞がある。また、電荷輸送活性
ドメインの平均粒子径が0.005μmより小さい場合
には、電荷輸送路が均一な構造に近付き、S字性が低下
する虞がある。
【0123】前記架橋型電荷輸送層及び/又はその塗布
液には、必要に応じ、反応性、架橋度、安全性、可とう
性等をコントロールすることを目的として、遊離ラジカ
ルを発生する化合物の分解促進剤、ラジカル種と反応し
得る化合物、又は希釈剤等を添加してもよい。また、架
橋型電荷輸送層が架橋型不均一電荷輸送層の場合、架橋
型不均一電荷輸送層には、残留電位の低下、繰り返し安
定性の向上等の目的で、主たる輸送電荷とは逆極性の電
荷のみを輸送することができる化合物を添加してもよ
い。
【0124】前記遊離ラジカルを発生する化合物の分解
促進剤としては、ナフテン酸コバルト、五酸化バナジウ
ム、ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0125】前記ラジカル種と反応し得る化合物として
は、ジビニルベンゼン、メタクリル酸無水物、乾性油、
不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0126】前記希釈剤としては、水、ジメチルフタレ
ート、飽和炭化水素、アルコール、キシレン、トルエ
ン、シリコンオイル、不活性固体等が挙げられる。
【0127】前記主たる輸送電荷とは逆極性の電荷のみ
を輸送することができる化合物としては、ジフェノキノ
ン誘導体、フルオレノン誘導体、キノジメタン誘導体、
ペリレン誘導体、キノン誘導体等が挙げられる。
【0128】前記架橋型電荷輸送層の膜厚は、0.1〜
50μm程度が好ましく、0.2〜15μmが好まし
い。膜厚が0.1μm未満であると、S字性が低下する
虞がある。また、膜厚の上限は、架橋型不均一電荷輸送
層の電荷輸送能により制限され、応答速度、残留電位等
が許容される範囲で設定される。
【0129】前記架橋型電荷輸送層以外にその他の電荷
輸送層を設ける場合、該その他の電荷輸送層としては、
架橋型電荷輸送層が架橋型不均一電荷輸送層の場合、機
能分離性をさらに高める点で、均一電荷輸送層が好適で
ある。該均一電荷輸送層としては、当業界で電荷輸送層
として用いられている任意のものから選択でき、例え
ば、電荷輸送性化合物(例えば、ベンジジン系化合物、
アミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化
合物、カルバゾール系化合物、イミン系化合物、及びそ
れらの混合物等)を、絶縁性樹脂(例えば、ポリカーボ
ネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホ
ン、ポリアルキルメタクリレート等)中に固溶させた複
合膜が挙げられる。また、該均一電荷輸送層には、電荷
輸送性化合物として、電荷輸送性高分子を用いることも
できるし、セレン、a−Si、a−SiC等の電荷輸送
能を有する無機物質も用いることもできる。
【0130】前記均一電荷輸送層は、電荷輸送性化合物
として、架橋型不均一電荷輸送層に用いる電荷輸送活性
ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性
ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共重合体の電
荷輸送活性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分子化合
物を用いたものが、架橋型不均一電荷輸送層と均一電荷
輸送層との間の電荷移動が非常にスムーズになることか
ら、特に好適である。
【0131】前記均一電荷輸送層の膜厚は、2〜50μ
m程度が好ましく、5〜20μmが好ましい。膜厚が2
μm未満であると、電荷輸送性が低下する虞がある。膜
厚の上限は、均一電荷輸送層の電荷輸能により制限さ
れ、応答速度、残留電位等が許容される範囲で設定され
る。また、均一電荷輸送層を最表面に用いる場合、その
膜厚は、0.1〜10μm程度が好ましく、0.5〜7
μmがより好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。
【0132】前記架橋型電荷輸送層の形成方法は、如何
なる方法でも構わないが、コスト、設備簡便性、製造性
等の点で、電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性
グラフト共重合体と遊離ラジカルを発生する化合物とを
含む塗布液を、塗布成膜した後、該遊離ラジカルを発生
する化合物が、少なくとも半分以上分解する温度及び時
間で加熱処理し架橋硬化させる方法が好適である。この
方法で用いる遊離ラジカルを発生する化合物としては、
熱分解して遊離ラジカルを発生する有機過酸化物が好適
である。
【0133】前記架橋型電荷輸送層上にその他の電荷輸
送層、例えば均一電荷輸送層を形成する場合、架橋型電
荷輸送層上に電荷輸送性化合物を含む塗布液を塗布成膜
することによって均一電荷輸送層を形成することができ
る。均一電荷輸送層を形成する塗布方法としては、従来
公知の塗布方法、例えば、浸漬塗布法、ブレード塗布
法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布
法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布
法等が挙げられる。これらの中でも、浸漬塗布法が、量
産性、コスト、膜厚の均一性等の点で有利なことから、
特に好適である。また、電荷輸送性化合物がセレン、α
−Si等の気相成膜可能なものは、直接成膜することも
できる。
【0134】前記「遊離ラジカルを発生する化合物が、
少なくとも半分以上分解する温度及び時間」は、用いる
遊離ラジカルを発生する化合物の分解性を考慮して、適
宜決定するが、10分間半減期温度以上で30分以上が
好適である。なお、少なくとも半分以上分解する温度及
び時間とあるが、半分未満の分解で電荷輸送性高分子化
合物を十分に架橋硬化できる遊離ラジカルを発生し、且
つ残存しても問題が生じなければ、これに限定されるわ
けではない。
【0135】前記電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷
輸送性グラフト共重合体と遊離ラジカルを発生する化合
物とを含む塗布液は、電荷輸送性ブロック共重合体又は
電荷輸送性グラフト共重合体と遊離ラジカルを発生する
化合物とを溶剤に溶解又は分散させて調製するが、該溶
剤としては、電荷輸送性高分子化合物及び遊離ラジカル
を発生する化合物が共に溶解するものが好ましく、例え
ば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒド
ロフラン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0136】前記架橋型電荷輸送層を形成する塗布方法
としては、従来公知の塗布方法、例えば、浸漬塗布法、
ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布
法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布
法、リング塗布法等が挙げられる。これらの中でも、浸
漬塗布法が、量産性、コスト、膜厚の均一性等の点で有
利なことから、特に好適である。
【0137】前記電荷輸送層は、1層又は複数層からな
るが、その全膜厚は5〜100μmが好ましく、10〜
40μmがより好ましく、15〜30μmがさらに好ま
しい。
【0138】前記乱反射層について説明する。前記乱反
射層は、公知のものを用いることができ、例えば、酸化
ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の微粒子を結
着樹脂中に分散させたもの等が挙げられる。
【0139】前記保護層について説明する。前記保護層
は、電子写真装置の帯電部材から発生するオゾン、酸化
性ガス及び紫外光等の化学的ストレスや、現像剤、紙、
クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレス
から感光層を保護し、感光層の実質的な寿命を改善する
のに有効である。特に、薄層の電荷発生層を感光層の上
層に用いる場合には、効果が顕著である。
【0140】前記保護層は、結着樹脂とこの結着樹脂中
に含有される導電性材料とで形成される。導電性材料と
しては、ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、酸
化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウ
ム、ITO等の金属酸化物等の材料を用いることができ
るが、これらに限定されるものではない。結着樹脂とし
ては、ポリアミド、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリ
カーボネート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シ
リコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキ
シ樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、保
護層としては、アモルファスカーボン等の半導電性無機
物質を直接成膜したものを用いることもできる。
【0141】前記保護層の電気抵抗は、109 〜1014
Ω・cmであることが好適である。電気抵抗が1014Ω
・cmを越えると残留電位が増加する虞があり、他方、
10 9 Ω・cm未満であると沿面方向での電荷漏洩が無
視できなくなり、解像度の低下が生じてしまう虞があ
る。
【0142】保護層の膜厚は0.5〜20μmが適当で
あり、1〜10μmの範囲であることが好適である。保
護層を設けた場合、必要に応じて、感光層と保護層との
間に、保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するため
のブロッキング層を設けることができる。このブロッキ
ング層としては、保護層の場合と同様に公知のものを用
いることができる。
【0143】本発明の電子写真用感光体において、オゾ
ンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による感光体の劣化
を防止する目的で、前記各層中に酸化防止剤、光安定剤
等を添加することができる。
【0144】前記酸化防止剤としては、公知のものを用
いることができ、例えば、フェノール類、アミン類、フ
ェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、スピロクロマ
ン類、スピロインダノン類、有機硫黄化合物、有機燐化
合物等が挙げられる。
【0145】前記光安定剤としては、公知のものを用い
ることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリア
ゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン
等及びそれらの誘導体、光励起状態をエネルギー移動あ
るいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物及び
電子供与性化合物等が挙げられる。
【0146】本発明の電子写真用感光体において、電荷
輸送層が電荷発生層と露光光源との間に存在する場合、
実効的な光感度の低下を防ぐ上で、電荷輸送層は、露光
波長の光に対し事実上透明であることが望ましい。電荷
輸送層における露光に用いる光の透過率は50%以上で
あることが好ましく、70%以上であることがより好ま
しく、90%以上であることがさらに好ましい。しかし
ながら、低感度での使用が望まれる場合には、露光波長
の光を吸収する物質を添加することによって、実効的な
光感度を所望の値に調整することもできる。
【0147】本発明の電子写真用感光体において、架橋
型電荷輸送層が架橋型不均一電荷輸送層である場合、電
荷発生層で発生した電荷が架橋型不均一電荷輸送層の電
気的不活性マトリックスの障害に出会い最初に一時停止
するまでの間の移動距離が感光層の全膜厚に対して充分
小さければ、その間の電位減衰は無視できるものとな
り、より理想的なS字性を示す。即ち、電荷発生層と架
橋型不均一電荷輸送層は近接、好ましくは隣接している
方がより良いS字性を与える。ただし、電荷の注入や電
荷の発生を助ける等の目的のために電荷発生層と架橋型
不均一電荷輸送層の間に適当な中間層(例えば、均一電
荷輸送層等)を設けることもできる。
【0148】本発明の電子写真用感光体において、電子
写真感光体の光誘起電位減衰特性がS字性であるか、J
字性であるかを判定するのに、電子写真感光体の帯電電
位を50%減衰させるのに要する露光量E50% と10%
減衰させるのに要する露光量E10% との比(以下、E
50% /E10% 値という。)を用いることができる。
【0149】本発明の電子写真用感光体は、E50% /E
10% 値が、1〜5であることが好ましく、デジタル式の
電子写真装置に好適に使用する観点から、1〜3である
ことが好ましく、1〜2であることがより好ましい。但
し、段調性を高める観点から、デジタル特性とアナログ
特性とを併用する場合、本発明の電子写真用感光体は、
50% /E10% 値が1.5〜4のとき、好適な結果を与
える。E50% /E10%値は、理想的なJ字型感光体であ
る場合、即ち、電位減衰が露光量に比例している場合に
は、5となり、一般的なJ字型感光体では、電界強度の
低下に伴い、電荷発生効率及び/又は電荷輸送能が低下
するため、5以上を示す。一方、E50%/E10% 値は、
理想的なS字型感光体の場合、1となる。E50% /E
10% 値の調整は、電荷発生層と不均一電荷輸送層との間
に中間層(例えば、均一電荷輸送層等)を挿入し、該中
間層の膜厚を変えること等により行うことができる。
【0150】本発明の電子写真用感光体の構成層は、任
意とすることができるが、機能分離性の観点から、電荷
発生層、架橋型不均一電荷輸送層、及び均一電荷輸送層
を有するものが好適である。また、本発明の電子写真用
感光体の構成層の積層順序も、任意とすることができる
が、電荷発生層、架橋型不均一電荷輸送層、及び均一電
荷輸送層がこの順序で積層されているのが、架橋型不均
一電荷輸送層の積層塗布耐性から均一電荷輸送層が塗布
欠陥なしに積層でき、そのため機能分離性を十分発揮で
きるため好適である。
【0151】図3〜図6は、本発明の電子写真用感光体
の1例の断面を示す模式図である。図3においては、導
電性支持体1上に、電荷発生層2が設けられ、その上に
架橋型不均一電荷輸送層3が設けられている。図4にお
いては、導電性支持体1上に、電荷発生層2が設けら
れ、その上に架橋型不均一電荷輸送層3が設けられ、さ
らにその上に均一電荷輸送層4が設けられている。図5
においては、導電性支持体1上に、架橋型不均一電荷輸
送層3が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられて
いる。図6においては、導電性支持体1上に、均一電荷
輸送層4が設けられ、その上に架橋型不均一電荷輸送層
3が設けられ、さらにその上に電荷発生層2が設けられ
ている。
【0152】本発明の電子写真装置である前記本発明の
電子写真用感光体を搭載する電子写真装置としては、電
子写真法に用いるものであれば如何なるものでもよい
が、デジタル処理された画像信号に基づき露光を行うデ
ジタル方式の露光手段を備える電子写真装置が好適であ
る。デジタル処理された画像信号に基づき露光を行うデ
ジタル方式の露光手段を備える電子写真装置とは、レー
ザー又はLED等の露光光源を用い、2値化又はパルス
幅変調や強度変調を行い多値化された光により露光を行
う電子写真装置である。
【0153】本発明の電子写真装置は、現像後の電子写
真用感光体の初期化(除電)又は電子写真特性の安定化
等の目的で、画像形成用の露光光源とは別に、光源(以
下、前露光光源ということがある)を併用することがで
き、その光源の発光域としては、電荷輸送層に吸収され
るものであっても吸収されないものであっても構わない
が、少なくとも電荷発生層まで光が届く方が好ましい。
【0154】本発明の電子写真装置としては、例えば、
LEDプリンター、レーザープリンター、レーザー露光
式デジタル複写機等を挙げられるが、特に、本発明の電
子写真用感光体が、電荷輸送性、耐摩耗性、耐溶剤性、
耐エッチング性に優れる特性を有することから、有機溶
剤に曝される液体現像方式の現像器を備えた電子写真装
置、エッチングストレスに曝される接触帯電方式の帯電
器を備える電子写真装置、機械的摩擦ストレスに曝され
るブレード方式のクリーニング器を備えた電子写真装
置、高温に曝されるドラムヒーター等の加熱器等を備え
た電子写真装置が好適である。
【0155】図7には、本発明の電子写真装置の一例と
して、レーザープリンタ10の概略構成が示されてい
る。このレーザープリンタ10は、本発明の電子写真用
感光体としての円筒形の感光体ドラム11を備え、感光
体ドラム11の周りには、感光体ドラム11の残留電荷
を除去するための前露光光源12(除電用LED)、感
光体ドラム11を帯電させるための帯電用交流印加接触
帯電ロール13、感光体ドラム11を画像信号に基づい
て露光する露光用レーザー光学系14、感光体ドラム1
1上に形成された静電潜像にトナーを付着させる現像器
15、感光体ドラム11上のトナー画像を用紙18に転
写する転写用接触帯電ロール16、及び感光体ドラム1
1上に残留したトナーを除去するクリーニングブレード
器17が、この順序で配置されている。露光用レーザー
光学系14は、デジタル処理された画像信号に基づきレ
ーザー光を照射するレーザーダイオード(例えば、発振
波長780nm)、照射されたレーザー光を偏向するポ
リゴンミラー、及びレーザー光を所定サイズで等速度移
動させるためのレンズ系を備えている。
【0156】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定され
るものではなく、当業者は高分子材料化学及び電子写真
技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加えるこ
とが可能である。
【0157】(電荷輸送性ブロック共重合体Aの合成
例)N,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−
N,N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチ
ル)フェニル]−[3,3’−ジメチル−1,1’−ビ
フェニル]−4,4’−ジアミン3kg、エチレングリ
コール9kg、及びテトラブトキシチタン25gを、窒
素気流下で6時間加熱還流した。0.5mmHgに減圧
し、エチレングリコールを留去しながら235℃に加熱
し、さらに6時間反応を続けた。その後、室温まで冷却
し、トルエン30kgを加え生成した樹脂を溶解させ、
0.5μm孔径のPTFE製フィルターにて不溶分を除
去した後、メチルエチルケトン150kgを加え、沈降
した高分子成分を分別した。これをテトラヒドロフラン
/イソプロパノールから再沈殿化処理し、両末端にヒド
ロキシ基を有する下記構造式(α)で示される電荷輸送
性高分子2.0kgを得た。得られた電荷輸送性高分子
の重量平均分子量はゲルパーミィエーションクロマトグ
ラフィー法(GPC法)にて測定したところ、9.4×
104 (ポリスチレン換算)であった。また、得られた
電荷輸送性高分子の分子量10000以下の成分は、全
体の1.1%であった。
【0158】
【化12】
【0159】得られた前記構造式(α)で示される電荷
輸送性高分子500gとトリエチルアミン5gとをトル
エン1.7リットルに溶解し、0℃に冷却した。ここ
に、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)
100gを加えた後、30℃に昇温し、6時間反応させ
た。この反応液をメタノールに滴下し、1時間撹拌した
後に濾別した。さらに、トルエン/メタノールによる再
沈殿処理をさらに2回繰り返し、末端にアゾ型重合開始
基を有する電荷輸送性高分子450gを得た。
【0160】得られた末端にアゾ型重合開始基を有する
電荷輸送性高分子200gをトルエン4リットルに溶解
し、スチレン720gとメタクリル酸30gとを加え、
窒素置換した後に70℃で100時間加熱した。この溶
液をメタノールに滴下し、沈降した固体を濾別した。濾
液を分析したところ、スチレン、メタクリル酸、及びス
チレン−メタクリル酸共重合体が検出された。濾別した
固体410gを細かく粉砕し、キシレン8.2リットル
中に加え、24時間攪拌し、不溶分と可溶分とに分別し
た。得られた可溶分と不溶分とを1 H−NMR法及びG
PC法により分析した結果、可溶分は、未反応の前記構
造式(α)で示される電荷輸送性高分子、電荷輸送活性
ブロックに富む電荷輸送性ブロック共重合体であった。
また、不溶分は、目的とする電荷輸送性ブロック共重合
体Aであった。
【0161】得られた電荷輸送性ブロック共重合体Aの
1 H−NMRスペクトルを解析し、両ブロック固有のプ
ロトンに対応するピークの積分比を求めたところ、電荷
輸送性ブロック共重合体Aの電荷輸送活性ブロックと電
荷輸送不活性ブロックとの重量組成比はおよそ35:6
5、電荷輸送不活性ブロック中のスチレンとメタクリル
酸との重量組成比はおよそ9:1であった。また、電荷
輸送性ブロック共重合体Aの電荷輸送活性ブロックと電
荷輸送不活性ブロックと、それぞれ同一構造を有する前
記構造式(α)で示される電荷輸送性高分子化合物とス
チレン−メタクリル酸共重合体とは、互いに非相溶性で
あり、電荷輸送性ブロック共重合体Aは、ミクロ相分離
性を示す。
【0162】(実施例1) −下引き層の形成− ホーニング処理により粗面化したアルミニウムドラム上
に、ジルコニウムアルコキシド化合物(オルガチックス
ZC540、マツモト製薬社製)15重量部、シランカ
ップリング剤(A1100、日本ユニカー社製)1重量
部、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、
信越化学工業社製)1重量部、イソプロパノール15重
量部、及びn−ブタノール15重量部からなる溶液を浸
漬塗布法で塗布し、50℃85%RHの条件下で10分
間加湿処理を行い、さらに160℃にて15分間加熱処
理し、膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
【0163】−電荷発生層の形成− 次にCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて
少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4
°、16.6°、25.5°、及び28.3°に強い回
折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶
4重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン共重合
体(UCARソリューションビニル樹脂VMCH、ユニ
オンカーバイド社製)2重量部、キシレン67重量部、
及び酢酸n−ブチル33重量部と混合し、ガラスビーズ
とともにペイントシェーク法で5時間分散処理した後、
得られた分散液を浸漬塗布法で上記下引き層上に塗布
し、100℃にて10分間加熱乾燥し、膜厚0.2μm
の電荷発生層を形成した。
【0164】−架橋型不均一電荷輸送層の形成− 次に、電荷輸送性ブロック共重合体A100重量部と有
機過酸化物t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカー
ボネート(パーブチルI、日本油脂製)3重量部、シク
ロヘキサノン200重量部、トルエン800重量部から
なる塗布液を浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、
150℃にて30分間加熱乾燥し、膜厚2μmの架橋型
不均一電荷輸送層を形成した。尚、t−ブチルパーオキ
シイソプロピルモノカーボネートの1時間半減期温度は
118℃、10分間半減期温度は135℃であり、その
分解生成物(アセトン、t−ブタノール、イソプロパノ
ール、炭酸ガス)の沸点は全て83℃以下である。
【0165】−均一電荷輸送層の形成− 次に、電荷輸送性ブロック共重合体Aの電荷輸送活性ブ
ロックと同一構造を有する電荷輸送性高分子(重量平均
分子量50000)20重量部を、クロロベンゼン80
重量部に溶解した塗布液を、浸漬塗布法で上記架橋型不
均一電荷輸送層上に塗布し、135℃にて30分間加熱
乾燥し、膜厚18μmの均一電荷輸送層を形成した。
【0166】以上の工程により、図4に示す層構成の実
施例1の電子写真用感光体を作製した。
【0167】(実施例2)架橋型不均一電荷輸送層の形
成において、有機過酸化物t−ブチルパーオキシイソプ
ロピルモノカーボネートの添加量を10重量部に代えた
以外は、実施例1と同様にして実施例2の電子写真用感
光体を作製した。
【0168】(実施例3)架橋型不均一電荷輸送層の形
成において、有機過酸化物t−ブチルパーオキシイソプ
ロピルモノカーボネートの添加量を15重量部に代えた
以外は、実施例1と同様にして実施例3の電子写真用感
光体を作製した。
【0169】(実施例4)架橋型不均一電荷輸送層の形
成において、有機過酸化物をt−ブチルパーオキシイソ
プロピルモノカーボネートからt−ブチルパーオキシベ
ンゾエート(パーブチルZ、日本油脂製)に代え、且つ
加熱乾燥条件を150℃60分に代えた以外は、実施例
1と同様にして実施例4の電子写真用感光体を作製し
た。なお、t−ブチルパーオキシベンゾエートの1時間
半減期温度は125℃、10分間半減期温度は143℃
である。また、その分解生成物(アセトン、t−ブタノ
ール、ベンゼン、安息香酸、炭酸ガス)の内、安息香酸
は融点123℃、沸点249℃の固体である。
【0170】(実施例5)架橋型不均一電荷輸送層の形
成において、架橋型不均一電荷輸送層を形成する塗布液
として、調整後密閉容器に入れ25℃の恒温槽中に30
日保持した塗布液を用いた以外は、実施例4と同様にし
て実施例5の電子写真用感光体を作製した。なお、t−
ブチルパーオキシベンゾエートの分解活性化エネルギー
のカタログ値を用い試算すると該経時条件でのt−ブチ
ルパーオキシベンゾエートの分解率はおよそ0.03%
である。
【0171】(比較例1)架橋型不均一電荷輸送層の形
成において、有機過酸化物を添加しなかった以外は、実
施例1と同様にして比較例1の電子写真用感光体を作製
した。
【0172】(比較例2)架橋型不均一電荷輸送層を形
成せず、均一電荷輸送層の膜厚を20μmに変えた以外
は、実施例1と同様にして比較例2の電子写真用感光体
を作製した。
【0173】(評価)得られた実施例1〜6及び比較例
1〜2の電子写真用感光体を、市販のレーザープリンタ
ー(Laser Press4105、富士ゼロックス
社製)を改造した評価装置に搭載し、高温高湿下(30
℃、85%RH)で印字して、画質の評価を行った。画
質評価は、1枚目と連続印字(A4横)した5000枚
目の印字サンプルに対して、目視にて行った。評価の結
果を表13に示す。なお、比較例1の電子写真用感光体
は、均一電荷輸送層の形成時に、下層の不均一電荷輸送
層が一部溶出してしまい均質な塗布膜が得られず、評価
が行えなかった。
【0174】
【表13】
【0175】表13より、本発明の電子写真用感光体
は、長期に渡って優れた電子写真特性発揮することが明
らかであり、総合的に見てみると、遊離ラジカルを発生
する化合物の添加量及び加熱乾燥条件に最適領域が存在
することがわかる。比較例1からは、架橋型不均一電荷
輸送層が積層塗布耐性(耐溶剤性)に優れていることが
わかる。また、実施例6からは、架橋型不均一電荷輸送
層を形成する塗布液の経時による影響は、殆ど認められ
ず、従来の架橋型電荷輸送層を形成する材料系で問題と
なる短ポットライフという欠点も克服されていることが
わかる。また、本発明の電子写真装置は、長期に渡って
安定な高画質を維持し、ランニングコストを低くするこ
とができることがわかる。
【0176】
【発明の効果】以上により、本発明は、電荷輸送性、耐
摩耗性、耐溶剤性、耐エッチング性等に優れ、且つ高寿
命な電子写真用感光体、他の層を積層成膜する場合の耐
溶剤性に優れた架橋型電荷輸送層を有する電子写真用感
光体、これらの電子写真用感光体の安価で簡便な製造方
法、及びそれを用いた画質及び耐久性に優れた電子写真
装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、J字型電子写真感光体における露光
量と表面電位の関係を示すグラフである。
【図2】 図2は、S字型電子写真感光体における露光
量と表面電位の関係を示すグラフである。
【図3】 図3は、本発明の電子写真用感光体の1例を
示す模式的断面図である。
【図4】 図4は、本発明の電子写真用感光体の他の1
例を示す模式的断面図である。
【図5】 図5は、本発明の電子写真用感光体の他の1
例を示す模式的断面図である。
【図6】 図6は、本発明の電子写真用感光体の他の1
例を示す模式的断面図である。
【図7】 図7は、本発明の電子写真装置の1例を示す
概略構成図である
【符号の説明】
1 導電性支持体 2 電荷発生層 3 架橋型不均一電荷輸送層 4 均一電荷輸送層 10 レーザープリンタ 11 感光体ドラム 12 前露光光源 13 帯電用交流印加接触帯電ロール 14 露光用レーザー光学系 15 現像器 16 転写用接触帯電ロール 17 クリーニングブレード器 18 用紙
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯島 正和 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 (72)発明者 岩崎 真宏 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 Fターム(参考) 2H068 AA13 AA20 AA21 AA39 BB07 BB08 BB09 BB10 BB17 BB23 BB49 BB57 BB61 BB62

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸
    送性グラフト共重合体と、遊離ラジカルを発生する化合
    物と、を用いて形成される架橋型電荷輸送層を有するこ
    とを特徴とする電子写真用感光体。
  2. 【請求項2】 架橋型電荷輸送層が、電荷輸送活性相と
    電荷輸送不活性相とを含む架橋型不均一電荷輸送層であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光
    体。
  3. 【請求項3】 架橋型不均一電荷輸送層に加え、さらに
    電荷発生層、及び均一電荷輸送層を有することを特徴と
    する請求項2に記載の電子写真用感光体。
  4. 【請求項4】 電荷発生層、架橋型不均一電荷輸送層、
    及び均一電荷輸送層がこの順序で積層されていることを
    特徴とする請求項3に記載の電子写真用感光体。
  5. 【請求項5】 電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸
    送性グラフト共重合体が、下記一般式(1)又は(2)
    で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として
    含む電荷輸送活性ブロックを含有することを特徴とする
    請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用感光体。 【化1】 一般式(1)中、Ar1 及びAr2 は、それぞれ独立に
    置換もしくは未置換のアリール基を示す。X1 は、芳香
    族環構造を有する2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有
    炭化水素基を示す。X2 及びX3 は、それぞれ独立に置
    換もしくは未置換のアリーレン基を示す。Lは、枝分れ
    もしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘ
    テロ原子含有炭化水素基を示す。mは、0又は1を示
    す。 【化2】 一般式(2)中、Ar3 及びAr4 は、それぞれ独立に
    置換もしくは未置換のアリール基を示す。Yは、芳香族
    環構造を有する3価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭
    化水素基を示す。
  6. 【請求項6】 一般式(1)又は(2)で示される構造
    が、−CHRa b(式中、Ra 及びRb は、それぞれ
    独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール
    基、アラルキル基を示す。)で表される置換基を少なく
    とも1種含むことを特徴とする請求項5に記載の電子写
    真用感光体。
  7. 【請求項7】 電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸
    送性グラフト共重合体が、下記一般式(3)で示される
    構造の少なくとも1種を繰り返し単位として含む電荷輸
    送不活性ブロックを含有することを特徴とする請求項1
    〜6のいずれかに記載の電子写真用感光体。 【化3】 一般式(3)中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に水素原
    子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シ
    アノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしく
    は未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルコキ
    シ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換も
    しくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアリー
    ルカルボニル基、置換もしくは未置換のアシルオキシ
    基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニル基、置
    換もしくは未置換のアリールカルボニルオキシ基、置換
    もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基を示す。
    1とR2 とは、互いに連結して環構造を形成してもよ
    い。
  8. 【請求項8】 遊離ラジカルを発生する化合物が有機過
    酸化物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    に記載の電子写真用感光体。
  9. 【請求項9】 有機過酸化物の1時間半減期温度が、6
    0〜170℃であることを特徴とする請求項8に記載の
    電子写真用感光体。
  10. 【請求項10】 有機過酸化物の分解生成物の沸点が、
    170℃以下であることを特徴とする請求項8又は9に
    記載の電子写真用感光体。
  11. 【請求項11】 帯電電位を50%減衰させるのに要す
    る露光量E50% と10%減衰させるのに要する露光量E
    10% との比(E50% /E10% 値)が、1〜5であること
    を特徴とする請求項1〜10に記載の電子写真用感光
    体。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11に記載の架橋型電荷輸
    送層を形成する電子写真用感光体の製造方法であって、
    電荷輸送性ブロック共重合体又は電荷輸送性グラフト共
    重合体と、遊離ラジカルを発生する化合物とを含む塗布
    液を塗布成膜した後、該遊離ラジカルを発生する化合物
    が、少なくとも半分以上分解するのに必要な温度及び時
    間で加熱処理し架橋硬化させることによって架橋型電荷
    輸送層を形成することを特徴とする電子写真用感光体の
    製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項4に記載の架橋型電荷輸送層を
    形成する電子写真用感光体の製造方法であって、架橋型
    電荷輸送層上に、電荷輸送性化合物材料を含む塗布液を
    塗布成膜することによって均一電荷輸送層を形成するこ
    とを特徴とする請求項12に記載の電子写真用感光体の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜11のいずれかに記載の電
    子写真用感光体と、露光手段とを少なくとも備えたこと
    を特徴とする電子写真装置。
  15. 【請求項15】 露光手段が、デジタル処理された画像
    信号に基づき露光を行うデジタル方式の露光手段である
    ことを特徴とする請求項14に記載の電子写真装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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