JP2000173630A - 固体高分子型燃料電池用セパレータ部材の製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用セパレータ部材の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 材質性状の等方性が高く、特に電気比抵抗及
びその異方性が小さく、またガス不透過性にも優れ、固
体高分子型燃料電池のセパレータとして好適な部材の製
造方法を提供する。 【解決手段】 鱗片状天然黒鉛粉末または膨張黒鉛粉末
80〜95重量%に不揮発分65%以上の熱硬化性樹脂20〜5
重量%の重量比で配合混練し、混練物を造粒し、粒径10
〜1000μm の造粒ペレットを成形容器に充填して減圧脱
気したのち等方加圧成形し、成形体を所定形状に加工し
た後150 〜280 ℃の温度で加熱硬化する、あるいは150
〜280 ℃の温度で加熱硬化した後所定形状に加工する。
好ましくは表面処理を施した鱗片状天然黒鉛粉末または
膨張黒鉛粉末を使用し、また造粒ペレットの気孔率を5
%以上に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体高分子型燃料
電池に用いられる炭素質セパレータ部材の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】固体高分子型燃料電池はパーフルオロカ
ーボンスルフォン酸等のイオン交換膜からなる固体高分
子の電解質膜と、その両側に設けた2つの電極とそれぞ
れの電極に水素等の燃料ガスあるいは酸素等の酸化剤ガ
スを供給するガス供給溝を設けたセパレータなどからな
る単セルを積層したスタック、及びその外側に設けた2
つの集電体から構成されている。リン酸型燃料電池と類
似した構造であるが、電解質部分に高性能の高分子電解
質膜を使用している関係で作動温度が80〜100℃と
リン酸型燃料電池の作動温度180〜220℃に比較し
て著しく低いにも拘わらず高出力の発電が可能である。
【0003】このセパレータには、例えば燃料ガスと酸
化剤ガスとを完全に分離した状態で電極に供給するため
に高度のガス不透過性が要求され、また発電効率を高く
するために電池の内部抵抗を小さくすることが必要であ
る。更に、電池反応に伴う発熱を効率よく放散させ、電
池内温度分布を均一化するために高い熱伝導性や長期耐
久性の確保のために耐蝕性に優れるなどの材質特性が必
要とされている。
【0004】このような材質特性が要求されるセパレー
タとして、例えば特開平4−267062号公報にはセ
パレータの材質を純銅やステンレス鋼などで構成する例
が開示されている。しかしながら、これらの金属系の材
質では燃料ガスとして用いる水素ガスと長時間に亘って
接触するために、水素脆性による材質劣化が生じ、電池
性能が低下する欠点がある。
【0005】また、リン酸型燃料電池ではセパレータに
炭素質系の材料、特にガス不透過性に優れているガラス
状カーボン材が使用されている。ガラス状カーボン材は
フェノール系樹脂やフラン系樹脂などの熱硬化性樹脂液
を成形し加熱硬化後、非酸化性雰囲気中800℃以上の
温度で焼成炭化して得られるガラス質の性状を呈する特
異な炭素材である。
【0006】しかしながら、ガラス状カーボン材は緻密
な組織構造を有し、高いガス不透過性を示す反面、硬度
が高く脆性であるため加工性が悪いという欠点がある。
更に金属系の材質に比べて熱伝導率が低く電気抵抗も大
きいという難点があり、リン酸型燃料電池に比較して高
電流密度で運転される固体高分子型燃料電池のセパレー
タとして使用するには適当でない。
【0007】ガラス状カーボン材に比べて熱伝導率が高
く、電気抵抗も低い黒鉛材は、組織中に微細な気孔空隙
が多数存在するためにガス不透過性が低く、黒鉛材をそ
のまま固体高分子型燃料電池のセパレータとして使用す
ることはできない。この気孔空隙に熱硬化性樹脂液を含
浸し、加熱硬化して気孔空隙を閉塞することによりガス
不透過性にする試みは従来から種々の方法が提案されて
いる。
【0008】例えば、含浸する樹脂を特定するものとし
て特開昭52−125488号公報には炭素材料にフリ
ーデルクラフツ樹脂を含浸硬化する不浸透性炭素製品の
製造方法が、特開昭59−57975号公報には炭素基
材にフェノール樹脂とピッチとの相溶物を含浸し、該含
浸物を炭化あるいは黒鉛化処理する不浸透性炭素材料の
製造法が、また特公平6−31184号公報にはカーボ
ン材にクレゾール樹脂を40〜95重量%の割合で含有
するクレゾール樹脂とフェノール樹脂の混合樹脂液を含
浸硬化する不浸透性カーボン材の製造方法などが提案さ
れている。
【0009】また、含浸硬化条件を特定するものとして
特公平5−67595号公報には炭素質素材を含浸槽に
入れ、減圧下で液状の熱硬化性樹脂に浸漬し、ついで系
内を加圧状態に切り換えて液状樹脂が初期硬化するまで
30℃以上の温度で加熱処理する不浸透性炭素材の製造
方法が提案されている。
【0010】しかしながら、これらの方法で得られる不
浸透性炭素材を固体高分子型燃料電池のセパレータとし
て用いるには、ガス不透過性、熱伝導性、導電性などの
特性をバランスよく付与する点で充分なものではなく、
特に黒鉛材には物理的性状、例えば電気抵抗などの特性
に異方性が生じ易い難点がある。
【0011】そこで本出願人はガス不透過性、熱伝導
性、導電性、耐蝕性などに優れ、これらの性能をバラン
スよく備え、固体高分子型燃料電池のセパレータなどと
して好適な黒鉛部材の製法として、最大粒径125μm
以下の炭素質粉末に結合材を加えて加熱混練後CIP成
形し、次いで焼成、黒鉛化して得られた平均気孔径10
μm 以下、気孔率20%以下の等方性黒鉛材に熱硬化性
樹脂液を含浸、硬化処理する固体高分子型燃料電池用黒
鉛部材の製造方法(特開平8−222241号公報)を開発提
案した。しかしながら、焼成、黒鉛化という工程を経る
関係で製造に長期間を要し、コスト低減が困難であっ
た。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記特
開平8−222241号公報の技術を基に更に研究を進
めた結果、導電性に優れた天然黒鉛または膨張黒鉛の粉
末に熱硬化性樹脂を混合し、造粒したペレットを等方加
圧成形することにより特性の方向性が少なく、特に電気
抵抗の異方性が小さく、また強度やガス不透過性が高
く、固体高分子型燃料電池用のセパレータ部材として好
適な性能を付与できることを見出した。
【0013】本発明は上記の知見に基づいて開発された
ものであり、その目的は材質性状の等方性が高く、特に
電気抵抗の異方性を改善し、また材質強度及びガス不透
過性に優れた固体高分子型燃料電池用のセパレータ部材
の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による固体高分子型燃料電池用セパレータ部
材の製造方法は、鱗片状天然黒鉛粉末または膨張黒鉛粉
末80〜95重量%に不揮発分65%以上の熱硬化性樹
脂を20〜5重量%の重量比で配合、混練し、混練物を
造粒し、粒径10〜1000μm の造粒ペレットを成形
容器に充填して減圧脱気したのち等方加圧成形し、成形
体を所定形状に加工した後150〜280℃の温度で加
熱硬化する、あるいは150〜280℃の温度で加熱硬
化した後所定形状に加工する、ことを構成上の特徴とす
る。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、人造黒鉛に比べて黒鉛
の結晶化度が高く、導電性に優れている鱗片状天然黒鉛
粉末または膨張黒鉛粉末(以下「天然黒鉛粉末など」と
いうこともある」)を原料として用い、これらの天然黒
鉛粉末などを熱硬化性樹脂を結合材として一体化するも
のである。固体高分子型燃料電池用セパレータは、通
常、厚さ1〜3mm程度の板状体に加工され、その表裏両
面には燃料ガスあるいは酸化剤ガスを供給するための、
通常、深さ0.5〜1mmのガス溝が形成されている。し
たがって、天然黒鉛粉末などの粒径が大きいと、これら
の加工時に黒鉛粒子の脱落などが起こって、気孔空隙が
形成されてガス不透過性が低下し、また電池内が汚染さ
れ電池性能が損なわれることともなる。そのため、天然
黒鉛粉末などは平均粒子径が50μm 以下、最大粒子径
が100μm 以下の粒子性状のものが好ましく用いられ
る。
【0016】鱗片状天然黒鉛粉末や膨張黒鉛粉末は黒鉛
の結晶化度が進んでいるために表面が不活性であり、熱
硬化性樹脂との接着性が低く、材質強度やガス不透過性
の確保が困難となる場合がある。そのため、これら天然
黒鉛粉末などは表面処理して改質することが好ましい。
表面処理はオゾン酸化処理あるいは塩素酸、過硫酸、硝
酸などの酸化剤による湿式酸化処理により行われるが、
大気中で機械的に粉砕処理する方法が簡便であり迅速に
処理できるので好ましく、例えばボールミル、粉砕機、
ジェットミル、擂潰機などの適宜な手段が用いられる。
【0017】天然黒鉛粉末などと熱硬化性樹脂は、天然
黒鉛粉末など80〜95重量%、熱硬化性樹脂20〜5
重量%の重量比で配合、混練する。配合する熱硬化性樹
脂の重量比が高い場合には成形性が向上し、ガス不透過
性も高くなるが、電気抵抗が増大し、逆に、天然黒鉛粉
末などの重量比が高い場合には電気抵抗が低下して導電
性は向上するが、成形性が低下してガス不透過性及び強
度の低下を招くこととなる。したがって、ガス不透過性
や強度と電気抵抗とをバランスよく付与するために上記
の重量比に設定される。
【0018】天然黒鉛粉末などの結合材として機能する
熱硬化性樹脂は不揮発分65%以上のものが用いられ
る。不揮発分が65%未満の場合には結合材としての機
能が充分に発揮されず、黒鉛粉末との密着性が阻害され
て材質強度の低下を招くばかりではなく電気抵抗の増大
をもたらすこととなる。なお、不揮発分とは一定量の樹
脂サンプルを丸底フラスコに採り135℃で1時間熱処
理後の重量残留率として測定される値である。
【0019】使用される熱硬化性樹脂としては、固体高
分子型燃料電池の発電稼働時の温度である80〜120
℃に耐える耐熱性、及びpH2〜3程度のスルフォン酸
や硫酸酸性に耐え得る耐酸性があれば特に制限はなく、
例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂など
の樹脂が用いられる。これらの熱硬化性樹脂は液状(初
期縮合物)やアルコールなどの揮発性の有機溶媒に溶解
した溶液として、天然黒鉛粉末などに所定の重量比で配
合し、混練される。
【0020】混練物はピン型造粒機、回転ドラム型造粒
機など適宜な造粒機により造粒してペレット化する。混
練により天然黒鉛粉末などの表面は非導電性の熱硬化性
樹脂により覆われた状態で混練物が形成されるが、造粒
時に混練物が解砕されて黒鉛面が露出した造粒ペレット
となり、導電性が向上するとともに混練時における天然
黒鉛粉末などの方向性、すなわち電気抵抗などの材質性
状の異方性の是正を図ることができる。なお造粒時には
水やポリビニルアルコールなどの適宜な媒剤を造粒助剤
として添加することもできる。
【0021】造粒されたペレットはラバープレスなどの
CIP成形容器に充填されるが、この際、成形容器内に
均等に充填するために粒径10〜1000μm の造粒ペ
レットが用いられ、また成形容器内を適宜に減圧して造
粒ペレットから揮発性成分を充分に脱気する。このよう
に混練物を造粒したペレットを成形容器内に充填するこ
とにより、鱗片状天然黒鉛粉末や膨張黒鉛粉末の配向性
を抑制することができ、また揮発性成分の脱ガスも容易
となる。更に、造粒ペレットの気孔率が5%以上であれ
ば脱ガスを一層容易に行うことができるので好ましい。
【0022】CIP成形容器内に充填された造粒ペレッ
トは、ラバープレスにより例えば1〜7トン/cm2 の圧
力で等方加圧成形し、成形体にされる。得られた成形体
は所定形状、例えば板状に加工して平面加工及び溝加工
を施した後150〜280℃の温度で熱硬化性樹脂成分
を加熱硬化する方法、あるいは150〜280℃の温度
で熱硬化性樹脂成分を加熱硬化した後板状などに加工し
て平面加工及び溝加工を施す方法、により固体高分子型
燃料電池用セパレータ部材が製造される。
【0023】このようにして材質性状の等方性が高く、
また材質強度及びガス不透過性に優れたセパレータ部材
を製造することができる。特に、電気抵抗の異方性が大
きい場合、例えば板状成形体の面方向(X−Y方向)と
厚さ方向(Z方向)の電気比抵抗の相違が大きい場合に
は内部における電流の流れが不均一となるために電池の
内部抵抗の増大を招くこととなり、発電効率が低下する
欠点があるが、本発明の方法により製造された固体高分
子型燃料電池用セパレータ部材によれば、このような欠
点を効果的に排除することが可能となる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。
【0025】実施例1〜3、比較例1〜4 膨張黒鉛粉末に、不揮発分67%のフェノール樹脂をメ
タノールに溶解した樹脂溶液(樹脂濃度;50重量%)
を異なる重量比で配合し、加圧ニーダーにより0.2kg
/cm2の加圧下に充分に混練した。混練物をピン型造粒機
を用いて水を添加しながら造粒し、混練物のフィード
量、造粒機シャフトの回転数、水量などを調節して粒径
の異なる造粒ペレットを作製した。これらの造粒ペレッ
トを室温で真空乾燥してメタノールや水などの揮発性成
分を揮散除去したのち、篩い分けして粒径範囲及び気孔
率の異なる造粒ペレットを分取して成形容器であるゴム
型に充填し、100g/cm2 の圧力を加えながら50torr
の減圧下に脱気処理を行った。次いで、2ton/cm2 の成
形圧でCIP成形して150×150×50mmの成形体
を作製し、大気中180℃の温度で加熱硬化した。この
成形体を切断加工して厚さ2.6mmに仕上げ、更に両面
に溝加工を行って幅1mm、深さ0.5mmの溝を50本形
成した。このようにして、膨張黒鉛粉末と硬化樹脂とが
複合一体化した固体高分子型燃料電池用セパレータ部材
を製造した。
【0026】実施例4 膨張黒鉛粉末を大気中で粉砕して表面処理を施したほか
は全て実施例2と同じ方法によりセパレータ部材を製造
した。
【0027】比較例5 混練物を造粒することなく、そのまま用いたほかは全て
実施例2と同じ方法によりセパレータ部材を製造した。
【0028】このようにして製造した固体高分子型燃料
電池用セパレータ部材の製造条件を対比して表1に示し
た。
【0029】
【表1】
【0030】次に、これらのセパレータ部材について下
記の方法により特性を測定して、その結果を表2に示し
た。 電気比抵抗(Ωcm);JIS R7202により測
定。 曲げ強度(kgf/cm2);JIS K6911により測
定。 ガス透過量(cm3/cm2 min);窒素ガスにより1Kg/cm2
の圧力をかけた際の窒素ガスの透過量を測定。 腐食電流(μA /cm2);温度30℃、濃度0.03重
量%のベンゼンスルフォン酸水溶液中で1.2 V/RHE
(塩化銀電極使用)の定電位腐食試験における140時
間後の腐食電流を測定。
【0031】
【表2】
【0032】表1、2の結果から、本発明で特定した製
造条件にしたがって製造した実施例のセパレータ部材
は、比較例のセパレータ部材に比べて電気比抵抗が低位
にあり異方比も小さいことが認められ、また曲げ強度お
よびガス透過性も低く、更に腐食電流も小さいので、固
体高分子型燃料電池用セパレータ部材として優れた性能
を有していることが判る。また、混練物の造粒を行わな
い比較例5では電気比抵抗の異方比が高く、ガス透過量
も多くなることが認められる。
【0033】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、鱗片状
天然黒鉛粉末または膨張黒鉛粉末に、所定の割合で熱硬
化性樹脂を配合、混練し、混練物を造粒してペレットの
粒径範囲、成形条件などを特定することにより、優れた
性能を備える固体高分子型燃料電池用セパレータ部材を
製造することが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 8/10 H01M 8/10 // B29K 103:04 Fターム(参考) 4F204 AA36 AA37 AB18 AB26 AB27 AB28 AC01 AC04 AG20 AH33 AR06 FA01 FB01 FE19 FF01 FF06 FN12 4G046 EA03 EA05 EB02 EC02 EC05 EC06 4J002 AA021 DA026 GQ00 HA09 5H026 AA06 BB00 BB01 BB02 BB08 EE06 EE18 HH01 HH04 HH05 HH08

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鱗片状天然黒鉛粉末または膨張黒鉛粉末
    80〜95重量%に不揮発分65%以上の熱硬化性樹脂
    を20〜5重量%の重量比で配合、混練し、混練物を造
    粒し、粒径10〜1000μm の造粒ペレットを成形容
    器に充填して減圧脱気したのち等方加圧成形し、成形体
    を所定形状に加工した後150〜280℃の温度で加熱
    硬化する、あるいは150〜280℃の温度で加熱硬化
    した後所定形状に加工する、ことを特徴とする固体高分
    子型燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 鱗片状天然黒鉛粉末または膨張黒鉛粉末
    が表面処理されたものである請求項1記載の固体高分子
    型燃料電池用セパレータ部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 造粒ペレットの気孔率が5%以上である
    請求項1記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ部材
    の製造方法。
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