JP2000158182A - ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法 - Google Patents
ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法Info
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Abstract
スをシールドガスとするMAG溶接において、溶滴のス
プレー移行を可能とし、アークの安定化、低スパッター
化が可能なガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを提供す
る。 【解決手段】 ワイヤ中のCaを0.0020%以下に制限し、
さらにKを0.0035〜0.0150mass%、O:0.0080〜0.0800
mass%を含む組成として、溶滴のスプレー移行を可能と
する。また、Ti、ZrおよびAlのうち1種または2種以上
を合計で0.05〜0.30%、あるいはS:0.015 〜0.030 %
を含有してもよい。K、O量の調整は、ワイヤ製造工程
の焼鈍前に素線にカリウム塩溶液を塗布して焼鈍するこ
とにより行うのが好ましい。
Description
ク溶接用鋼ワイヤに係り、とくにシールドガスの炭酸ガ
ス(CO2 ガス)濃度を25%以上と高くした高炭酸ガスM
AG溶接に用いて好適なガスシールドアーク溶接用鋼ワ
イヤに関する。
ドガスとするMAG溶接法は、自動溶接の急速な普及に
より、自動車、造船、建築などの各分野で広く利用され
ている。MAG溶接法の利点は、スパッタの発生が少な
いことであるが、これは、溶滴の移行形態がスプレー移
行にあるからであり、そのため、通常、スプレー移行が
ぎりぎり可能なAr−20%CO2 混合ガスをMAG溶接のシ
ールドガスとして使用している。
スが高価なことである。これは、ArガスがCO2 ガスに比
べ高価であるためで、最近では、混合ガス中のCO2 比率
を高めたAr−40〜60%CO2 混合ガスを使用する場合が多
くなってきた。しかし、シールドガスであるAr−CO2 混
合ガスのCO2 比率を25%以上に高めると、スプレー移行
臨界電流値が高くなり、溶接電流をいくら高くしても溶
滴の移行形態がスプレー移行とならなくなる。このた
め、インバータパルス電源と組み合わせても、スパッタ
が多発するという問題があった。
-12717号公報には、Arと10〜50%CO 2 の混合ガスをシー
ルドガスとするガスシールドアーク溶接用のワイヤとし
て、C:0.01〜0.09%、Si:0.35〜0.95%、Mn:0.50〜
1.50%および全Ti:0.03〜0.09%を含有し、酸可溶性T
i:0.03%以下、S:0.02%以下、N:0.012 %以下、
残部が実質的にFeからなる組成を有する溶接用鋼ワイヤ
が提案され、溶接時のスパッタ発生を防止するとしてい
る。しかしながら、特公昭63-12717号公報に記載された
溶接用鋼ワイヤでは、酸不溶性Ti量の調整が難しく、完
全にはスパッタ発生を防止することができなかった。
で、C:0.15%以下、Si:0.3 〜0.9 %、Mn:1.2 〜2.
5 %、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Ti:0.02〜0.
20%、Al:0.10%以下、B:0.001 〜0.004 %、O:0.
010 %以下、N:0.015 %以下、残部Feおよび不可避的
不純物よりなる溶接ワイヤを用い、Ar+5〜50体積%CO
2 の混合ガスをシールドガスとして、パルス幅、入熱量
を調整してパルスマグ溶接するガスシールドアーク溶接
方法が開示されている。これにより、引張強さ590 N/mm
2 以上あるいは690N/mm2以上を有する高張力薄鋼板の溶
接時に、スパッタ発生量を少なくすることができるとし
ている。しかし、この方法では、溶接条件への依存度が
高く、限られた条件でのみ有効であり、そのスパッタ発
生量の低減も満足いくものではなかった。
で、C:0.05〜0.15%、Si:0.1 〜0.8 %、Mn:1.0 〜
2.0 %、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、Ti:0.
01〜0.25%、Mo:0.1 〜0.9 %を含み、残部Feおよび不
可避的不純物よりなり、不可避的不純物中、OとNが合
計で0.0080%以下と制限し、さらにK化合物をK換算で
溶接ワイヤ全量当たり0.0002〜0.0010%の量で溶接ワイ
ヤ表面層近傍に存在させたことを特徴とする高張力鋼用
のマグおよびパルスマグ溶接用ソリッドワイヤが開示さ
れている。
で、C:0.10%以下、Si:0.3 〜1.2 %、Mn:0.8 〜2.
0 %、P:0.005 〜0.030 %、S:0.005 〜0.030 %、
Ti:0.03%以下、O:0.0020〜0.0200%、N:0.0020〜
0.0100%、Ca:0.0003〜0.0030%、K:0.0015%以下で
かつ(K−Ca/3):0.0001%以上を含み、残部Feおよび
不可避的不純物よりなるスパッタの極めて少ないガスシ
ールドアーク溶接用鋼ワイヤが開示されている。
7-251292号公報、特開平8-132280号公報に記載された溶
接用ワイヤは、20体積%CO2 までのAr+CO2 混合ガスを
シールドガスとするMAG溶接では、スパッタの発生を
抑制できるが、25体積%を超えるCO2 比率の混合ガスを
シールドガスとする場合には、アークが不安定となるう
え、完全にはスパッタ発生を防止することができないと
いう問題を残していた。
に解決し、CO2 比率が25体積%を超える30〜60体積%の
Ar+CO2 混合ガスをシールドガスとする高CO2 MAG溶
接においても、溶滴のスプレー移行を可能とし、アーク
の安定化、スパッター発生の抑制、さらにはインバータ
パルス電源と組合せて極低スパッター化が可能なガスシ
ールドアーク溶接用鋼ワイヤを提供することを目的とす
る。
を高めたAr+CO2 混合ガスをシールドガスとするMAG
溶接において、溶滴の移行形態をスプレー移行とし、ス
パッタを低減するため、スプレー移行を容易とする手段
について種々検討した。その結果、ワイヤ中のCaを0.00
20%以下に低減し、かつワイヤ内部にKを0.0035〜0.01
50%、Oを0.0080〜0.0800%の範囲で安定して保持させ
ることにより、溶滴の移行形態をスプレー移行とするこ
とができ、しかもアークが安定化し、スパッターの発生
が抑制されることを知見した。
プールを安定化させるには、ワイヤにTi、ZrおよびAlの
うち1種または2種以上を合計で0.05〜0.30%添加する
のが好ましいこと、低電流域の溶接では、棒端からの
溶滴の離脱を容易にし溶滴を微細にするには、ワイヤの
S含有量を0.015 〜0.030 %の範囲とするのがよいこ
と、を知見した。
れたものである。すなわち、本発明は、mass%で、C:
0.15%以下、Si:2.0 %以下、Mn:2.5%以下、K:0.0
035〜0.0150%、O:0.0080〜0.0800%を含み、かつ不
純物としてCaを0.0020%以下に制限し、残部Feおよび不
可避的不純物からなる組成を有することを特徴とするガ
スシールドアーク溶接用鋼ワイヤであり、本発明では、
前記組成に加えて、さらに、mass%で、Cr:0.60%以
下、Ni:3.0 %以下、Cu:3.0 %以下、Mo:0.50%以
下、B:0.005 %以下、のうちの1種または2種以上を
含有するのが好ましく、また、本発明では、前記各組成
に加えて、さらに、mass%で、Nb、Vのうちの1種また
は2種を合計で0.25%以下含有するのが好ましい。
下、Si:2.0 %以下、Mn:2.5 %以下、K:0.0035〜0.
0150%、O:0.0080〜0.0800%を含み、さらに、Ti、Zr
およびAlのうち1種または2種以上を合計で0.05〜0.30
%含有し、かつ不純物としてCaを0.0020%以下に制限
し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する
ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤで
あり、本発明では、前記組成に加えて、さらに、mass%
で、Cr:0.60%以下、Ni:3.0 %以下、Cu:3.0%以
下、Mo:0.50%以下、B:0.005 %以下、のうちの1種
または2種以上を含有するのが好ましく、また、本発明
では、前記各組成に加えて、さらに、mass%で、Nb、V
のうちの1種または2種を合計で0.25%以下含有するの
が好ましい。
下、Si:2.0 %以下、Mn:2.5 %以下、K:0.0035〜0.
0150%、O:0.0080〜0.0800%を含み、さらに、S:0.
015〜0.030 %を含有し、かつ不純物としてCaを0.0020
%以下に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる
組成を有することを特徴とするガスシールドアーク溶接
用鋼ワイヤであり、本発明では、前記組成に加えて、さ
らに、mass%で、Cr:0.60%以下、Ni:3.0 %以下、C
u:3.0 %以下、Mo:0.50%以下、B:0.005 %以下、
のうちの1種または2種以上を含有するのが好ましく、
また、本発明では、前記各組成に加えて、さらに、mass
%で、Nb、Vのうちの1種または2種を合計で0.25%以
下含有するのが好ましい。
加工により所定の線径の素線としたのち、該素線に、焼
鈍、酸洗を施し、あるいはさらに銅めっきをした後、伸
線加工して所定の寸法の鋼ワイヤとするガスシールドア
ーク溶接用鋼ワイヤの製造方法において、前記鋼素材と
して、Caを0.0020mass%以下に制限した組成を有する鋼
素材を使用し、前記焼鈍前に前記素線にカリウム塩溶液
を塗布して、前記ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ中
のK、O含有量がK:0.0035〜0.0150mass%、O:0.00
80〜0.0800mass%となるように、前記カリウム塩溶液の
塗布条件(濃度、塗布量)、および前記焼鈍の条件を調
整することを特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワ
イヤの製造方法である。また、本発明では、前記鋼素材
をC:0.15%以下、Si:2.0 %以下、Mn:2.5 %以下を
含み、かつ不純物としてCaを0.0020%以下に制限し、残
部Feおよび不可避的不純物からなる組成とするのが好ま
しく、また、本発明では、前記組成に加えてさらに、T
i、ZrおよびAlのうち1種または2種以上を合計で0.05
〜0.30%含有する組成としてもよく、また、前記各組成
に加えてさらに、S:0.015 〜0.030 %を含有する組成
としてもよい。また、本発明では、前記各組成に加え
て、さらにCr:0.60%以下、Ni:3.0 %以下、Cu:3.0
%以下、Mo:0.50%以下、B:0.005 %以下、のうちの
1種または2種以上を含有するのが好ましく、また、本
発明では、前記各組成に加えて、さらに、Nb、Vのうち
の1種または2種を合計で0.25%以下含有するのが好ま
しい。
ク溶接用鋼ワイヤの組成限定理由について説明する。な
お、%は、とくにことわらない限りmass%を意味する。 C:0.15%以下 Cは、溶接金属の強度を確保するための重要な元素であ
り、所望の強度に応じ含有する。しかし、過剰の含有は
溶融金属の粘性を低下し流動性を低下させるとともに、
溶接金属の靱性を低下させる。とくに、MAG溶接にお
いては、過剰のC含有は高電流域での溶滴、溶融池の挙
動を不安定とし、スパッタを多発する。このため、Cは
0.15%に限定した。なお、強度、靱性の観点から、好ま
しくは0.02〜0.08%である。
向上させる。また、Siは強度を増加させる元素であり、
所望の強度に応じ含有する。しかし、過剰の含有は、靱
性を劣化させ、さらに溶接硬化性を増加させる。このた
め、Siは2.0 %以下に限定した。なお、好ましくは、0.
30〜0.85%である。
の作業性を向上させるとともに、強度を増加させる元素
であり、所望の強度に応じ含有する。しかし、過剰の含
有は、靱性を劣化させ、さらに溶接硬化性を増加させ
る。このため、Mnは2.0 %以下に限定した。なお、好ま
しくは、1.00〜1.70%である。
り、とくにMAG溶接では安定なスプレー移行に顕著な
効果がある。しかし、CO2 比率が25体積%を超えるAr+
CO2 混合ガスを使用する高CO2 MAG溶接においては、
ワイヤ中のK含有量が0.0035%未満では、溶滴のスプレ
ー化が達成できず、スパッタが多発する。一方、ワイヤ
中のK含有量が0.0150%を超えると、アーク長が長くな
りすぎ、ワイヤ先端に懸垂した溶滴が不安定となり、ス
パッタが多発する。このようなことから、ワイヤ中のK
含有量は0.0035〜0.0150%の範囲に限定した。なお、好
ましくは、0.005 〜0.010 %である。また、Kは沸点が
760 ℃と低いため、溶製段階での歩留りは低い。このた
め、Kは溶製段階で添加するより、ワイヤ製造中に、ワ
イヤ表面にカリウム塩溶液を塗布したのち焼鈍し、ワイ
ヤ内部に安定して保持するのが好ましい。
素であるが、Kと同様に、溶滴の移行形態をスプレー化
するのに効果があり、とくにパルスMAG溶接では安定
なスプレー移行に顕著な効果がある。これらの効果が顕
著に認められるのは、Oが0.0080%以上含有される場合
である。しかし、Oが0.0800%を超えると、溶接金属の
靱性が劣化する。このため、Oは0.0080〜0.0800%の範
囲に調整する。
素であり、本発明では不純物としてワイヤ中に含有ある
いはワイヤに付着するCaを制限する。ワイヤ中に含有あ
るいはワイヤに付着するCa量が0.0020%を超えると、と
くにCO2 比率が25体積%を超えるAr+CO2 混合ガスを使
用する高CO2 MAG溶接においては、溶滴のスプレー化
が達成できず、スパッタが多発する。このため、ワイヤ
中に含有あるいはワイヤに付着するCa量の許容範囲は0.
0020%以下とした。なお、好ましくは、0.0003%以下で
ある。ワイヤ製造中に伸線潤滑剤として、Ca系伸線潤滑
剤を使用すると、Caがワイヤ表面に付着残留して、溶接
作業に悪影響を及ぼす。このため、Caの付着残留は0.00
03%以下とするのが望ましい。
を合計で0.05〜0.30% 本発明では、必要に応じ、Ti、ZrおよびAlのうち1種ま
たは2種以上を添加できる。Ti、ZrおよびAlは、いずれ
も脱酸剤として作用し、さらに溶接金属の強度を増加さ
せ、耐候性を向上させる作用を有する。またさらに、T
i、ZrおよびAlは、MAG溶接の高電流域で、溶融池の
振動を抑え、アークの短絡を低減する効果を有する。T
i、ZrおよびAlのうち1種または2種以上の含有量の合
計が0.05%未満では、上記した作用効果は認められな
い。一方、0.30%を超える含有は、溶接金属の靱性を低
下させる。このようなことから、Ti、ZrおよびAlは、こ
れら元素のうち1種または2種以上を合計で0.05〜0.30
%の範囲に限定するのが好ましい。
015 %未満とされるが、必要に応じ添加することができ
る。Sは、溶融金属の粘性を低下させる作用を有し、ワ
イヤ先端に懸垂する溶滴の離脱を容易にし、とくに低電
流域で溶滴を微細化する効果を有している。このような
効果は、Sを0.015 %以上とした場合に認められるが、
0.030 %を超える含有は、小粒のスパッタを増加させる
とともに、溶接金属の靱性を低下させる。このため、S
は添加する場合には、0.015 〜0.030 %の範囲とした。
0 %以下、Mo:0.50%以下、B:0.005 %以下、のうち
の1種または2種以上 Cr、Ni、Cu、Mo、Bは、溶接金属の強度を増加させ、耐
候性を向上させる作用を有しており、必要に応じ添加で
きる。しかし、過剰な含有は溶接金属の靱性を劣化させ
る。このため、Crは0.60%以下、Niは3.0 %以下、Cuは
3.0 %以下、Moは0.50%以下、Bは0.005 %以下に限定
するのが望ましい。
25%以下 Nb、Vは、溶接金属の強度と靱性を向上させる作用を有
しており、必要に応じ添加できるが、過剰な添加は溶接
金属の靱性を劣化させる。このため、Nb、Vのうちの1
種または2種を合計で0.25%以下に限定するのが望まし
い。本発明のガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤでは、
上記した成分以外は、残部Feおよび不可避的不純物であ
る。不可避的不純物として、P、Nは溶接金属の靱性を
劣化させるため、できるだけ低減するのが望ましいが、
Pは0.030 %、Nは0.010 %までは許容できる。
ヤの製造方法について説明する。上記した組成の溶鋼
を、転炉、電気炉等通常公知の溶製方法により溶製し、
好ましくは連続鋳造法によりビレット等の鋼素材とす
る。鋼素材は、その後熱間圧延、あるいはさらに冷間圧
延により所定の線径の素線とされる。熱間圧延条件、冷
間圧延条件については、所定の寸法形状の鋼素線となる
条件であればとくに限定されない。
あるいはさらに銅めっきを施されたのち、冷間伸線加工
により所定の線径のガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ
とされる。本発明では、焼鈍前の鋼素線表面に、カリウ
ム塩含有溶液を塗布する。カリウム塩溶液としては、ク
エン酸3カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化
カリウム水溶液が好ましい。塗布溶液のカリウム塩濃度
は、K換算で2〜30%(重量%)とするのが好ましい。
また、カリウム塩含有溶液の塗布量は、線径、カリウム
塩濃度、焼鈍温度・時間と関連し、鋼ワイヤ中のK含有
量が0.0035〜0.0150%、O含有量が0.0080〜0.0800%と
なるように予め実験等により塗布条件を決定しておくの
が望ましい。
素線は、ついで焼鈍を施される。焼鈍は、水蒸気を含む
弱酸化性雰囲気中で、750 〜950 ℃の温度範囲で行うの
が望ましい。焼鈍温度が750 ℃未満では、内部酸化反応
の進行が遅く、また950 ℃を超えると、内部酸化反応の
進行が速すぎて、K、O含有量の調整が困難となる。焼
鈍雰囲気は露点0℃以下、酸素濃度200ppm以下とするの
が内部酸化層形成の観点から望ましい。このような雰囲
気中で、表面にカリウム塩含有溶液を塗布された鋼素線
を焼鈍することにより、鋼表面から酸化が進行し、図1
に示すように表層部が内部酸化される。この内部酸化部
にカリウムが、確実に保持される。
のK含有量が0.0035〜0.0150%、O含有量が0.0080〜0.
0800%となるように、線径、およびカリウム塩濃度、カ
リウム塩含有溶液の塗布量等の塗布条件と関連して決定
されるのが望ましい。焼鈍済の鋼素線は、さらに酸洗を
施され、あるいはさらに銅めっきを施された後、冷間伸
線加工されて所定の寸法の鋼ワイヤとされる。
冷間伸線加工において、ダイス管理を徹底しワイヤ表面
の平坦度(実表面積/理論表面積)を1.01未満とするこ
とが肝要である。また、ワイヤ表面に付着する不純物
は、給電安定化のため、0.01g/ワイヤ10kg 以下とするのが
望ましい。
滑油が塗布されるが、ロボット溶接用として送給性を確
保するには、その塗布量は0.35〜1.4g/ワイヤ10kgとするの
が望ましい。
を、熱間圧延し、5.5 〜7.0mm φの線材とし、ついで冷
間加工(伸線)により、2.0 〜2.8mm φの鋼素線とし
た。これら鋼素線に、3〜20%(重量%)クエン酸3カ
リウム水溶液を塗布した。塗布量は、5〜30g/素線kgと
した。ついで、これら鋼素線を750 〜 900℃の温度範囲
の一定温度で焼鈍し、素線表層部に内部酸化層を形成さ
せた。焼鈍条件は、線径、クエン酸3カリウム水溶液の
濃度、および鋼ワイヤ中の目標K、O含有量に応じ、調
整した。焼鈍条件を表1に示す。なお、焼鈍雰囲気は、
露点−2℃、酸素濃度200ppm以下、CO2 濃度0.1 %以下
の窒素ガス雰囲気とした。
を施され、ついで冷間伸線により1.4mm φの鋼ワイヤと
された。なお、1部は銅めっきを施さないものとした。
これら鋼ワイヤの組成を表2に示す。なお、表中のCu
は、銅めっきによるCu量を含んでいる。
油を塗布した表2に示す組成の鋼ワイヤを用い、パルス
MAG溶接により、板厚19mmの鋼板上にビードオン溶接
を行って、Cu製捕集治具を用いてスパッタを捕集し、単
位時間内のスパッタ発生量を調査する溶接試験を実施し
た。なお、溶接時間は1min とした。用いた溶接条件は
つぎのとおりである。
ピーク幅1.5ms スパッタ発生量についての結果を表3に示す。なお、ス
パッタ発生量が0.2g/min以下を良(○)、0.2g/min超0.
3g/min以下を可(△)、0.3g/min超を不可(×)で評価
した。
以下と少なく、スパッタ低減効果が顕著となっている。
とくに、S含有量を0.015 〜0.030 %とすることにより
更なる低スパッタ化が達成されている。一方、Ca、K、
O含有量のいずれかが本発明範囲を外れる比較例(ワイ
ヤNo.35 〜No.38 )では、スパッタ発生量が0.3g/minを
超え、スパッタが多発した。 (実施例2)実施例1と同様に、連続鋳造製鋼素材(ビ
レット)を、熱間圧延と冷間加工(伸線)により、2.0
〜3.2mm φの鋼素線とした。これら鋼素線に、クエン酸
3カリウム水溶液を塗布した。ついで、これら鋼素線を
750 〜 900℃の温度範囲の一定温度で焼鈍し、素線表層
部に内部酸化を生じさせた。焼鈍条件は、線径、クエン
酸3カリウム水溶液の濃度、および鋼ワイヤ中の目標
K、O含有量に応じ、調整した。焼鈍条件を表4に示
す。なお、焼鈍雰囲気は、露点−2℃、酸素濃度200ppm
以下、CO2 濃度0.1 %以下の窒素ガス雰囲気とした。
を施され、ついで冷間伸線により1.4mm φの鋼ワイヤと
された。なお、1部は銅めっきを施さないものとした。
これら鋼ワイヤの組成を表5に示す。なお、表中のCu
は、銅めっきによるCu量を含んでいる。
油を塗布した表5に示す組成の鋼ワイヤを用い、MAG
溶接により、板厚19mmの鋼板上にビードオン溶接を行っ
て、Cu製捕集治具を用いてスパッタを捕集し、単位時間
内のスパッタ発生量を調査する溶接試験を実施した。な
お、溶接時間は1min とした。用いた溶接条件はつぎの
とおりである。
パッタ発生量が0.3g/min以下を良(○)、0.3g/min超0.
5g/min以下を可(△)、0.5g/min超を不可(×)で評価
した。
以下と少なく、スパッタ低減効果が顕著となっている。
一方、K含有量が本発明範囲を外れる比較例(ワイヤN
o.2-17 、No.2-18 )では、スパッタ発生量が0.5g/min
を超え、スパッタが多発した。
超えるAr+CO2 混合ガスをシールドガスとする高CO2 M
AG溶接においても、溶滴のスプレー移行が可能とな
り、さらにアークの安定化、スパッター発生の抑制、さ
らにはインバータパルス電源と組合せて極低スパッター
化が可能となるなど、溶接作業性の向上、溶接コストの
低減など産業上格段の効果を奏する。
断面組織の1例を示す模式図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 mass%で、 C:0.15%以下、 Si:2.0 %以下、 Mn:2.5 %以下、 K:0.0035〜0.0150%、 O:0.0080〜0.0800% を含み、かつ不純物としてCaを0.0020%以下に制限し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有すること
を特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項2】 mass%で、 C:0.15%以下、 Si:2.0 %以下、 Mn:2.5 %以下、 K:0.0035〜0.0150%、 O:0.0080〜0.0800% を含み、さらに、 Ti、ZrおよびAlのうち1種または2種以上を合計で0.05
〜0.30% 含有し、かつ不純物としてCaを0.0020%以下に制限し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有すること
を特徴とするガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項3】 mass%で、 C:0.15%以下、 Si:2.0 %以下、 Mn:2.5 %以下、 K:0.0035〜0.0150%、 O:0.0080〜0.0800% を含み、さらに、 S:0.015 〜0.030 %を含有し、 かつ不純物としてCaを0.0020%以下に制限し、残部Feお
よび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴と
するガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項4】 前記組成に加えて、さらに、mass%で、 Cr:0.60%以下、Ni:3.0 %以下、Cu:3.0 %以下、M
o:0.50%以下、B:0.005 %以下、のうちの1種また
は2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用鋼ワイ
ヤ。 - 【請求項5】 前記組成に加えて、さらに、mass%で、 Nb、Vのうちの1種または2種を合計で0.25%以下含有
することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記
載のガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項6】 鋼素材を熱間加工、冷間加工により所定
の線径の素線としたのち、該素線に、焼鈍、酸洗を施
し、あるいはさらに銅めっきをした後、伸線加工して所
定の寸法の鋼ワイヤとするガスシールドアーク溶接用鋼
ワイヤの製造方法において、前記鋼素材として、Caを0.
0020mass%以下に制限した組成を有する鋼素材を使用
し、前記焼鈍前に前記素線にカリウム塩溶液を塗布し
て、前記ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ中のK、O
含有量がK:0.0035〜0.0150mass%、O:0.0080〜0.08
00mass%となるように、前記カリウム塩溶液の塗布条件
および前記焼鈍の条件を調整することを特徴とするガス
シールドアーク溶接用鋼ワイヤの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10333586A JP2000158182A (ja) | 1998-11-25 | 1998-11-25 | ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10333586A JP2000158182A (ja) | 1998-11-25 | 1998-11-25 | ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000158182A true JP2000158182A (ja) | 2000-06-13 |
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ID=18267711
Family Applications (1)
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JP10333586A Pending JP2000158182A (ja) | 1998-11-25 | 1998-11-25 | ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000158182A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001071175A (ja) * | 1999-08-31 | 2001-03-21 | Kobe Steel Ltd | ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ |
JP2002346787A (ja) * | 2001-05-21 | 2002-12-04 | Kobe Steel Ltd | パルスmag溶接用ソリッドワイヤ |
CN114616072A (zh) * | 2019-11-07 | 2022-06-10 | 株式会社神户制钢所 | 气体保护电弧焊用焊丝 |
-
1998
- 1998-11-25 JP JP10333586A patent/JP2000158182A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001071175A (ja) * | 1999-08-31 | 2001-03-21 | Kobe Steel Ltd | ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ |
JP2002346787A (ja) * | 2001-05-21 | 2002-12-04 | Kobe Steel Ltd | パルスmag溶接用ソリッドワイヤ |
CN114616072A (zh) * | 2019-11-07 | 2022-06-10 | 株式会社神户制钢所 | 气体保护电弧焊用焊丝 |
CN114616072B (zh) * | 2019-11-07 | 2023-10-10 | 株式会社神户制钢所 | 气体保护电弧焊用焊丝 |
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