JP2000143303A - 水中沈設用石材およびその製造方法 - Google Patents

水中沈設用石材およびその製造方法

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Yasuto Miyata
康人 宮田
Tetsushi Numata
哲始 沼田
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 藻場用等の水中沈設資材に好適な人工石材を
提供する。 【解決手段】 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主
原料とし、この主原料と添加材との混合物を原料とする
水中沈設用石材であって、前記主原料となるスラグが粉
粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種
以上からなり、前記添加材の少なくとも一部がセメント
からなり、前記スラグと添加材との混合物を炭酸化反応
で生成させたCaCO3をバインダーとして固結させ、
塊状化したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、鉄鋼製造プロセス
で発生するスラグを主原料とする水中沈設用石材、より
詳細には、藻場用石材、築磯用石材、魚礁用石材、海底
マウンド用石材、河床用石材、魚道用石材、人工河床用
石材、湖沼・池の沈設用石材、さらには、水質浄化を主
目的として海、河川、湖沼、池等に沈設または敷設され
る石材等として使用される水中沈設用石材およびその製
造方法に関する。なお、上記“藻場”とは海底に生育す
る海藻類(藻類、海草等)の群落を指す。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄鋼製造プロセスで発生するスラ
グ(例えば、高炉スラグ、転炉スラグ等)の有効利用を
図る一環として、スラグを藻場用石材や魚礁等の水中沈
設用資材として利用する試みがなされている。スラグを
これらの資材として利用する場合の主たる形態として
は、塊状のスラグをそのまま藻場用等の石材として利用
する方法とスラグをコンクリート魚礁等の骨材として利
用する方法が考えられる。
【0003】また、近年魚類や甲殻類等の生物の生存環
境を含めた河川や湖沼等の淡水系水域の自然環境を整
備、改善しようとする機運が高まりつつあり、その一環
として、例えば河床を水中生物(魚類、甲殻類、水生昆
虫等)や水生植物(藻類、水草等)が生息、生育しやす
い環境に改修する試みもなされている。河川を例にとる
と、河川において所謂生命空間(ビオトープ)とよばれ
る生物の生存、休息空間は、その多くが河床の石によっ
てもたらされ、したがって、一般には河床に石等による
凹凸が多くある河床の方が、より水中生物が生存しやす
い環境にあると言える。例えば、河川内にある水没また
は半水没状の大塊の石と石との間の比較的大きな空間
や、河床に敷き詰められた小石の間の小さな空間は、い
ずれも水中生物にとって重要な生命空間となる。また、
河床の石は藻類等の水生植物が生育する場でもあり、水
生植物を生育させるためにも石の存在は重要である。
【0004】したがって、河川の自然環境の整備、改善
の一環として行われる河床等の改修に当っては、河床に
適当な形態で石材を沈設または敷設(例えば、大塊の石
材の置き石、河床への中塊、小塊の石材の沈設、敷設
等)することが、魚類等の水中生物や水生植物が生息、
生育しやすい環境を整える有効な手段となり得る。しか
し、このような河床等の改修には膨大な量の石材が必要
であり、これに用いる自然石を他所で調達することは新
たな自然破壊を引き起こす恐れがあり、また、自然石自
体も決して安価ではないため施工コストも嵩んでしま
う。そこで、この河川に使用する石材としても、上述し
たようなスラグの利用が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、スラグを水中
沈設用資材として利用する上記の方法には以下のような
問題点がある。まず塊状のスラグをそのまま藻場用や河
床用等の石材として利用する方法では、スラグ中に含ま
れるCa分が水中に溶け出し、海水や河川水等のpHを
上昇させるおそれがある。また、水中に溶け出したCa
分と水中のMgイオンとの反応によりMg(OH)2
沈殿(白沈)を生じることがあり、これがスラグ表面に
付着して藻類等の水生植物の着生や発芽を阻害する問題
がある。さらには、Ca分の溶出によりスラグ自体の強
度が低下し、経時的に或いは外力の作用によって崩壊し
てしまうおそれがある。
【0006】また、鉄鋼製造プロセスで得られたままの
塊状のスラグを藻場用等の石材とした場合、その表面性
状等からしてコンクリート製品に比べれば海藻類等の水
生植物の着生・生育に適しているとは言えるが、藻場用
等の石材としては天然石と同程度の機能(海藻類等の水
生植物の付着性、成育性)しかなく、海藻類等の水生植
物の成育を促進し得るような特別な機能を有する石材で
はない。
【0007】また、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグ
は地金(粒鉄等の鉄分)を多く含んでいるため、通常は
スラグをある程度の大きさまで粉砕し、スラグ中に含ま
れる鉄分を回収して鉄鋼製造プロセスにリサイクルして
いる。しかし、藻場用や河床用等の石材として用いるス
ラグにはある程度の大きさが必要であり、地金回収のた
めに粉砕処理したようなスラグはほとんど利用すること
ができない。このため塊状スラグを藻場用等の石材とし
て用いる場合には、鉄鋼資源として有用な地金の回収が
ほとんどできない。
【0008】一方、スラグをコンクリート魚礁等のよう
なコンクリート製のプレキャスト体の骨材として利用す
る方法は、上述した塊状スラグをそのまま水中に沈めた
場合のような問題は生じにくい。しかし、この方法によ
り得られる資材は表面がセメントモルタルにより構成さ
れるコンクリート製品であるため、藻場用や河床用等と
してそれなりの機能が期待できると考えられる塊状スラ
グの性状(例えば、凹凸状の表面性状等)すら生かすこ
とができない。
【0009】藻場や漁礁に適用される石材は機能的に海
藻類等の水生植物の着生や成育に適していることが必要
であるが、コンクリート製の石材は、スラグを骨材とし
て含むと否とに拘りなく機能的に海藻類等の水生植物の
着生や成育には適さず、また、所謂磯焼けの原因となる
石灰藻の付着繁殖を促すとされており、したがって、藻
場用や漁礁用の水中沈設用石材としては全く適さない。
また、コンクリートはpHが高いため(通常、pH12
〜12.5程度)、周囲の海水や河川水等のpHを上昇
させたり、海藻類等の水生植物の生育遅延を生じさせた
りするおそれもある。
【0010】また、近年、河川に設けられたダムや堰に
魚類の上・下流への移動や遡上を可能とするための魚道
を設ける必要性が認識され、このためのダムや堰の改修
も各地で行われるようになってきた。この魚道は、ダム
や堰の一部に魚類が移動できる程度の流れが形成される
水路(通常、2〜5m程度の幅を有する水路)を設けた
ものであり、傾斜路式、階段路式等の様々な形式のもの
が知られている。従来の一般的な魚道は、コンクリート
壁で囲まれた水路をダムや堰の一部を切欠くようにして
設けられている。
【0011】このような従来の魚道は水の流速や底部の
傾斜、段差等に特に問題がない限り魚類の移動には支障
はない。しかし、コンクリート製の魚道は、その底部が
元々平滑でしかも藻類等の水生植物も生育しにくいた
め、河床(石等の表面の突起や水生植物)に爪等を引っ
掛けながら這って移動したり或いは流れの早い場所では
河床に爪等を引っ掛けながら移動する水中生物(例え
ば、甲殻類や水生昆虫等)にとって移動が困難であると
いう問題がある。このような問題に対しては、魚道を発
泡コンクリートにより構成して魚道の底部に微細な凹凸
を付ける方法もあるが、このような魚道は施工コストが
高く、実用性に乏しい。また、いずれにしてもコンクリ
ートはpHが高いため、河床に沿って移動するような水
中生物にはコンクリート製の魚道は好ましいものではな
い。
【0012】さらに、近年では環境保護の観点から海、
河川、湖沼、池などの水質浄化が大きな課題となってい
る。このような水質浄化のための一つの手法として、バ
クテリアを中心とした生物の生態系による自浄作用を利
用することを狙いとし、水中での生物間の活発な食物連
鎖の環境を人為的に提供する試みがなされており、その
環境を提供するために水中や水辺に沈設または敷設する
資材として、好気性生物や嫌気性生物等の多様な生物が
棲息できる多孔質のコンクリートブロック体が用いられ
ている。しかし、このような従来の水質浄化用の資材も
コンクリート製品であるため、上述したような本質的な
問題点を有している。
【0013】したがって本発明の目的は、上記のような
スラグを原材料とする水中沈設用資材の問題を解消し、
藻場用石材、築磯用石材、魚礁等、海底マウンド用石
材、河床用石材、魚道用石材、人工河床用石材、湖沼・
池の沈設用石材、さらには、水質浄化用の石材として、
海、河川、湖沼、池等の水中に沈設または敷設した際
に、海水や河川水等のpHの上昇や白沈の発生等の問題
を生じることがなく、しかも海藻類等の水生植物の着
生、育成や魚介類の繁殖、魚類等の生存空間形成、水質
浄化等の面で優れた機能を発揮でき、また、河川のダム
や堰等に設けられる魚道等の人工構造部や石張り河床等
の人工河床に沈設または敷設した際に、魚類以外の水中
生物の移動性や水生植物の生育等の面でも優れた機能を
発揮することができる水中沈設用石材を提供することに
ある。
【0014】また、本発明の他の目的は、上記のような
水中沈設用石材を安価且つ効率的に製造することができ
る製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他
の目的は、上記のような水中沈設用石材を好適に使用す
るための使用方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく実験と検討を重ねた結果、以下のような事
実を見出した。 (1) 粉粒状、粗粒状或いは小塊状のスラグ、特に鉄分
(元々スラグ中に含まれる鉄分および/またはスラグ中
に有意に添加された鉄分)を適度に含むこれらのスラグ
を、スラグ中に含まれるCaO(またはCaOとMg
O)の炭酸化反応で生成させたCaCO3(またはCa
CO3とMgCO3)をバインダーとして固結させ、塊状
化させたものを海や河川等の水中沈設用石材として用い
ることにより、海水や河川水のpHの上昇や白沈の発生
等の問題を生じさせることなく、しかも海藻類等の水生
植物の着生、育成や水質浄化等の面で優れた効果を発揮
する。また、河川のダムや堰等に設けられる魚道等の人
工構造部や人工河床に沈設または敷設した際に、魚類以
外の水中生物の移動性や水生植物の生育等の面でも優れ
た効果を発揮する。
【0016】(2) 水中に沈設される石材は、運搬や水中
への沈設の際に衝撃が加わっても、また海中に長期間置
かれても割れや崩壊を生じないことが必要であるが、ス
ラグを炭酸固化させて塊状の石材を得る場合、スラグの
CaO分だけの炭酸化反応では十分な強度が得られない
場合がある。このようなスラグを主原料とする石材の強
度を確実なものとするには、スラグに少量のセメントを
配合した上で炭酸固化させることが極めて有効であり、
これにより長期間にわたって割れや崩壊を生じない高い
強度が安定して得られる。
【0017】(3) 上記のような塊状の水中沈設用石材を
得るためには、粉粒状、粗粒状若しくは小塊状のスラグ
に対して少量のセメントを添加し、このスラグを所望の
密度に山積み若しくは充填して、この積み山若しくは充
填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることに
よりスラグを固結させる製法が有効であり、また、この
ような製法によれば石材を適用すべき海底や河床の状
況、海流や水流の状況、さらには藻場用、漁礁用、河床
用、魚道用、水質浄化用等の用途の別に応じた任意の密
度と大きさの石材を製造でき、また石材の大塊化も極め
て容易に実現できる。
【0018】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴は以下の通りである。 [1] 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主原料とし、
この主原料と添加材との混合物を原料とする水中沈設用
石材であって、前記主原料となるスラグが粉粒状スラ
グ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種以上から
なり、前記添加材の少なくとも一部がセメントからな
り、前記スラグと添加材との混合物を炭酸化反応で生成
させたCaCO3をバインダーとして固結させ、塊状化
したことを特徴とする水中沈設用石材。
【0019】[2] 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを
主原料とし、この主原料と添加材との混合物を原料とす
る水中沈設用石材であって、前記主原料となるスラグが
粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1
種以上からなり、前記添加材の少なくとも一部がセメン
トからなり、前記スラグと添加材との混合物を炭酸化反
応で生成させたCaCO3およびMgCO3(但し、Mg
CO3が水和物、水酸化物塩または複塩として存在する
場合を含む)をバインダーとして固結させ、塊状化した
ことを特徴とする水中沈設用石材。
【0020】[3] 上記[1]または[2]の水中沈設用石材に
おいて、全原料中のセメントの配合量が2〜15wt%
であることを特徴とする水中沈設用石材。 [4] 上記[1]〜[3]のいずれかの水中沈設用石材におい
て、スラグの少なくとも一部が高炉水砕スラグであるこ
とを特徴とする水中沈設用石材。 [5] 上記[1]〜[4]のいずれかの水中沈設用石材におい
て、スラグが地金回収処理または地金除去処理を経た粉
粒状および/または粗粒状のスラグからなることを特徴
とする水中沈設用石材。
【0021】[6] 上記[1]〜[5]のいずれかの水中沈設用
石材において、添加材の一部が金属鉄、含金属鉄材、酸
化鉄、含酸化鉄材の中から選ばれる1種以上であること
を特徴とする水中沈設用石材。 [7] 上記[1]〜[5]のいずれかの水中沈設用石材におい
て、添加材の一部が可溶性シリカおよび/または含可溶
性シリカ材であることを特徴とする水中沈設用石材。
【0022】[8] 上記[1]〜[5]のいずれかの水中沈設用
石材において、添加材の一部がCaO、Ca(O
H)2、MgO、Mg(OH)2の中から選ばれる1種以
上であることを特徴とする水中沈設用石材。 [9] 上記[1]〜[8]のいずれかの水中沈設用石材におい
て、空隙率が10〜70%であることを特徴とする水中
沈設用石材。
【0023】[10] 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグ
を主原料とし、この主原料と添加材との混合物を原料と
する水中沈設用石材の製造方法であって、主原料である
粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1
種以上からなるスラグに、添加材の少なくとも一部とし
てセメントを混合し、該混合物による積み山または任意
の空間内での充填層を形成し、該積み山または充填層に
炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより前
記混合物を固結させ、スラグおよび添加材が塊状化した
石材を得ることを特徴とする水中沈設用石材の製造方
法。
【0024】[11] 上記[10]の製造方法において、全原
料中のセメントの配合量が2〜15wt%であることを
特徴とする水中沈設用石材の製造方法。 [12] 上記[10]または[11]の製造方法において、スラグ
の積み山若しくは充填層に炭酸ガス若しくは炭酸ガス含
有ガスを吹き込むか、または積み山若しくは充填層を炭
酸ガス若しくは炭酸ガス含有ガス雰囲気下に置くことを
特徴とする水中沈設用石材の製造方法。 [13] 上記[10]〜[12]のいずれかの製造方法において、
スラグの少なくとも一部が高炉水砕スラグであることを
特徴とする水中沈設用石材の製造方法。
【0025】[14] 上記[10]〜[13]のいずれかの製造方
法において、スラグとして、地金回収処理または地金除
去処理を経た粉粒状および/または粗粒状のスラグを用
いることを特徴とする水中沈設用石材の製造方法。 [15] 上記[10]〜[14]のいずれかの製造方法において、
添加材の一部が金属鉄、含金属鉄材、酸化鉄、含酸化鉄
材の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする水
中沈設用石材の製造方法。
【0026】[16] 上記[10]〜[14]のいずれかの製造方
法において、添加材の一部が可溶性シリカおよび/また
は含可溶性シリカ材であることを特徴とする水中沈設用
石材の製造方法。 [17] 上記[10]〜[14]のいずれかの製造方法において、
添加材の一部がCaO、Ca(OH)2、MgO、Mg
(OH)2の中から選ばれる1種以上であることを特徴
とする水中沈設用石材の製造方法。 [18] 上記[10]〜[17]のいずれかの製造方法において、
スラグの積み山または充填層の嵩比重/真比重を0.3
〜0.9の範囲とすることを特徴とする水中沈設用石材
の製造方法。
【0027】[19] 上記[10]〜[18]のいずれかの製造方
法において、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを水中に
通すことでH2Oを飽和させ、しかる後、スラグの積み
山または充填層に炭酸化処理のために供給することを特
徴とする水中沈設用石材の製造方法。 [20] 上記[10]〜[19]のいずれかの製造方法において、
固結した積み山または充填層を所望の大きさの塊状物に
破砕し、該破砕による破面を有する塊状石材を得ること
を特徴とする水中沈設用石材の製造方法。
【0028】[21] 上記[10]〜[20]のいずれかの製造方
法において、スラグを最適水分含有率に水分調整した上
で、該スラグの積み山または充填層に炭酸ガス存在下で
炭酸化反応を生じさせることを特徴とする水中沈設用石
材の製造方法。 [22] 上記[10]〜[21]のいずれかの製造方法において、
全量が粒度50mm以下であって、累積粒度分布の小径
側から30重量%の粒度(D30)が800μm以下で
ある粒度分布を有し、且つ水分含有率が3〜10%であ
るスラグの積み山または充填層に炭酸ガス存在下で炭酸
化反応を生じさせることを特徴とする水中沈設用石材の
製造方法。
【0029】[23] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の石
材を、河川内において水が流れる人工構造部または人工
河床に沈設または敷設することを特徴とする水中沈設用
石材の使用方法。 [24] 上記[23]の使用方法において、石材を、魚道の少
なくとも底部に沈設または敷設することを特徴とする水
中沈設用石材の使用方法。 [25] 上記[23]または[24]の使用方法において、沈設ま
たは敷設された石材の上面が、破砕または破断により形
成された破面であることを特徴とする水中沈設用石材の
使用方法。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明は鉄鋼製造プロセスで発生
するスラグを主原料とする水中沈設用石材であり、原料
スラグとしては、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグ等の
高炉系スラグ、予備処理、転炉、鋳造等の工程で発生す
る脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、
鋳造スラグ等の製鋼系スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉
スラグ等を挙げることができるが、これらに限定される
ものではなく、また、2種以上のスラグを混合して用い
ることもできる。
【0031】これらのスラグのうち、代表的なスラグの
組成の一例を以下に示す。 (1) 脱炭スラグ … T.Fe:17.5%,CaO:4
6.2%、SiO2:11.7%、Al23:1.4
%、MgO:8.3%、MnO:6.2%、P:0.7
6%、S:0.04% (2) 脱燐スラグ … T.Fe:5.8%,CaO:5
4.9%、SiO2:18.4%、Al23:2.8
%、MgO:2.3%、MnO:1.9%、P:2.8
%、S:0.03%
【0032】(3) 脱硫スラグ … T.Fe:10.5
%,CaO:50.3%、SiO2:10.0%、Al2
3:5.4%、MgO:1.1%、MnO:0.4
%、P:0.13%、S:1.8% (4) 脱珪スラグ … T.Fe:10.5%,CaO:1
3.6%、SiO2:43.7%、Al23:3.8
%、MgO:0.4%、MnO:15.8%、P:0.
10%、S:0.19% (5) 高炉水砕スラグ … FeO:0.3%、CaO:4
2.0%、SiO2:33.8%、MnO:0.3%、
MgO:6.7%、Al23:14.4%
【0033】なお、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグ
のうち、脱燐スラグはP含有量が高いために、また脱珪
スラグはMnOの含有量が高いために、それぞれセメン
ト原料として使用するには難があるが、本発明ではこれ
らのスラグについても問題なく水中沈設用石材の主原料
として利用することができる。
【0034】本発明の水中沈設用石材は、粉粒状スラ
グ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種以上から
なるスラグを主原料とする。このようなスラグを主原料
として用い、これを炭酸化反応で固結させることによ
り、全体(表面および内部)がポーラスな性状の石材を
得ることができる。
【0035】主原料となるスラグは粉粒状スラグ、粗粒
状スラグ、小塊状スラグの1種以上であればよく、その
他の条件は任意である。したがって、以下に述べるよう
な地金回収工程または地金除去工程を経たスラグでもよ
いし、そのような工程を経ないスラグでもよい。
【0036】鉄鋼製造プロセスで発生するスラグは、程
度の差はあるものの比較的多量(通常、数重量%〜30
重量%程度)の地金(粒鉄等の鉄分)を含んでおり、一
般には、このような鉄分を鉄鋼製造プロセスにリサイク
ルするために、スラグ中の地金回収が行われる。通常、
この地金回収を行うためにスラグは粉砕処理され、した
がって、元々粉化、粗粒化若しくは小塊化した状態にあ
るスラグを含め、地金回収工程を経たスラグは必然的に
粉粒状、粗粒状若しくは小塊状のものとなる。通常、こ
の地金回収工程を経たスラグ粒子の粒径はcmオーダー
またはそれ以下(例えば、5cm以下)のものである。
【0037】ここで、地金回収処理とは、上述したよう
にスラグ中に含まれる地金のリサイクルを目的としてス
ラグ中から地金を回収する処理のことであり、例えば、
後述する地金除去処理のようにスラグ中の地金を実質的
に除去することを目的として行われる処理とは異なる。
一般に地金回収処理においてはスラグは微細には粉砕さ
れず、このため処理後のスラグ中には未だ相当量の地金
が残存している。
【0038】なお、スラグを水中沈設用石材の素材とす
る場合、一般にはスラグ中の鉄分含有率は、後述する地
金除去処理を経たスラグを石材の素材とする場合ほど低
くなくてもよく、むしろ適量の鉄分(特に、粒鉄等の金
属鉄や含金属鉄材)が含まれていた方がよい。これは、
スラグに適量含まれる鉄分(金属鉄、含金属鉄材等)が
水中に溶出することにより、水中に栄養塩として鉄分が
補給され、これが海藻類等の水生植物の育成に有効に作
用するからである。このため通常は、スラグ中の鉄分含
有率は3重量%以上とすることが適当である。
【0039】このようなスラグ中の鉄分は、スラグ中に
元々含まれる地金(粒鉄等)の一部または全部を回収す
ることなく残存させ、これをそのまま利用してもよい
し、或いは一旦スラグ中の地金の実質的な全部(不可避
的に除去できない地金を除く)を地金除去処理により除
去した後、添加材として金属鉄および/または含金属鉄
材を添加することにより確保してもよい。
【0040】この後者の方法、すなわち、一旦スラグ中
の地金の実質的な全部を地金除去処理により除去した後
に添加材として金属鉄および/または含金属鉄材を添加
する方法の場合には、以下のような利点がある。 (1) スラグ中に元々含まれる地金(粒鉄等)の一部を回
収することなく残存させる方法では、スラグ中に残存さ
せる地金の量を正確に調整することが難しい。すなわ
ち、スラグ中からの地金の回収は磁気選別等により行わ
れるが、この磁気選別処理の性質上、一定量の地金が残
存するように地金の回収を行うことはかなり難しく、ま
た、これが可能な場合であっても磁気選別を行う上で煩
雑な制御や操作を行う必要がある。これに対して後者の
方法では、スラグ中に元々含まれる地金の実質的な全部
を除去回収し、改めて粒鉄等の金属鉄や含金属鉄材を添
加するものであるため、スラグ中に含まれる鉄分の含有
量を任意に制御することができる。
【0041】(2) また、上記と同様の理由から、前者の
方法、すなわちスラグ中に元々含まれる鉄分(粒鉄等)
の一部を回収することなく残存させる方法では、スラグ
中に残存させる地金の形状や大きさを選択できない。一
般に水中沈設用石材を構成すべきスラグ中に含まれる鉄
分としては金属鉄である所謂粒鉄が好ましいが、スラグ
中から磁気選別等により地金の一部を除去回収する場
合、このような粒鉄が残存するとは限らず、むしろ粒鉄
が回収除去され、形状の大きい地金が残存してしまうこ
ともあり得る。これに対して上記後者の方法では、スラ
グ中に添加する金属鉄等の形状や大きさを任意に選択で
き、粒鉄等の好ましい鉄源をスラグ中に含有させること
ができる。
【0042】したがって、金属鉄や含金属鉄材を含むス
ラグを得るには、一旦スラグ中の地金の実質的な全部
(不可避的に除去できない地金を除く)を地金除去処理
により除去した後、改めて金属鉄や含金属鉄材を添加す
るのが最も好ましい。一般に地金除去処理はスラグを粉
粒状または粗粒状に粉砕処理した後、磁気選別等により
行われ、したがって、元々粉粒化または粗粒化した状態
にあるスラグを含め、地金除去処理を経たスラグは必然
的に粉粒状および/または粗粒状のもの(通常、50m
mオーダーまたはそれ以下のスラグ粒径)である。
【0043】上記の地金除去処理では、不可避的に残存
する地金成分を除きスラグ中の地金は可能な限り除去さ
れることが好ましく、通常、地金除去処理後のスラグ中
の鉄分(地金)含有率は3重量%未満とすることが好ま
しい。そして、このような地金除去処理を経たスラグに
対して、粒鉄などの金属鉄および/または含金属鉄材が
適量添加され、金属鉄や含金属鉄材を含む所望の鉄分含
有量を有するスラグが得られる。
【0044】スラグ中に添加する金属鉄や含金属鉄材と
しては、スラグを成型する際に形状の大きい金属鉄や含
金属鉄材が成型の邪魔にならないようにすること、スラ
グ中に含まれる金属鉄等の比表面積を大きくして海中に
沈設された石材からの鉄分の溶出性を高めること等の観
点から、粒径が小さく且つ大きさのある程度揃ったもの
が好ましく、このような観点からは粒鉄が最適である。
また、この粒鉄としては、スラグから回収された粒鉄だ
けでなく、それ以外で調達できる任意の粒鉄を使用でき
る。
【0045】一般に、鉄鋼製造プロセスで発生するスラ
グには相当量(通常、20重量%〜60重量%)のCa
Oが含まれており、本発明の水中沈設用石材は、このス
ラグ(粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのう
ちの1種以上からなるスラグ)に含まれているCaO若
しくはこのCaOが変化したCa(OH)2を炭酸化反
応によりCaCO3に変化させ、このCaCO3をバイン
ダーとしてスラグ(および添加材粒子)粒子を固結さ
せ、塊状化したものである。
【0046】粒状物をCaOとCO2との反応、すなわ
ち炭酸化反応により生じるCaCO3を利用して固結さ
せこと自体は古くから知られた技術であり、CaOを含
む粒状物を炭酸ガス雰囲気下に置くと、下記反応式によ
ってCaCO3が生成し、このCaCO3をバインダーと
して粒子間に固結現象を生じる。CaO+CO2 → C
aCO3
【0047】従来、このような炭酸化反応を利用した技
術としては、例えば製鋼風砕スラグと水との混練物を原
料として建材用途等の硬化体製品を製造する方法(例え
ば、特開昭58−74559号)、粉末状の転炉スラグ
とポルトランドセメントとの混合物を原料として高強度
建材用の硬化体製品を製造する方法(例えば、特開昭5
2−140535号)、非焼成ペレットの製造法(例え
ば、特開昭57−92143号、特開昭58−4864
2号、特開昭58−133334号)等が提案されてい
る。しかしこれらの従来技術は、いずれも所要の強度を
有する硬化体製品や非焼成ペレットを短時間で製造する
ことのみを目的としたものであり、粉粒状、粗粒状また
は小塊状のスラグを炭酸化反応により固結させて得られ
た石材が、その特性や性状面で藻場用等の水中沈設用石
材として極めて好適なものであることについては、何も
示していない。
【0048】また、MgOを含む粒状物についても、こ
れを炭酸ガス雰囲気下に置くと炭酸化反応によりMgC
3が生成し、このMgCO3をバインダーとして粒子間
に固結現象を生じる。MgOの炭酸化反応により生じる
MgCO3は無水和物、水和物(例えば、二水和物、三
水和物、五水和物等)、水酸化物塩(塩基性炭酸マグネ
シウム)等の多様な形態をとるが、例えば、MgCO3
の三水和物は下記反応式によって生成される。 MgO+CO2+3H2O → MgCO3・3H2
【0049】大部分のスラグにはCaOとともにある程
度の量のMgOが含まれており、このようなスラグ(粉
粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種
以上からなるスラグ)を原料とする本発明の水中沈設用
石材は、MgOまたはこのMgOが変化したMg(O
H)2についても上記炭酸化反応によりMgCO3に変化
させ、このMgCO3とCaCO3をバインダーとしてス
ラグ粒子(および添加材粒子)を固結させ、塊状化した
ものである。
【0050】なお、上述したようにMgOの炭酸化反応
により生じるMgCO3は無水和物、水和物、水酸化物
塩等のように種々の形態をとるものであり、本発明の水
中沈設用石材中にバインダーとして含まれるMgCO3
は、これらのうちの何れ形態のMgCO3でもよい。例
えば、MgCO3の水和物としては、MgCO3・2H2
O、MgCO3・3H2O、MgCO3・5H2O等があ
り、また、水酸化物塩(塩基性炭酸マグネシウム)とし
てはMgCO3・Mg(OH)2・3H2O、4MgCO3
・Mg(OH)2・4H2O、4MgCO3・Mg(O
H)2・5H2O、4MgCO3・Mg(OH)2・8H2
O等がある。さらに、MgCO3は他の塩と結合して種
々の複塩を形成する場合があり、このような複塩の形態
で存在するMgCO3でもよい。
【0051】また、鉄鋼製造プロセスにおいて発生した
スラグは、これに含まれるCaOやMgOの一部または
全部が経時的な水分の吸収或いは他の原因でCa(O
H)2やMg(OH)2に変化する場合があるが、上記の
ように本発明で利用するスラグとしては何ら問題なく、
これらCa(OH)2やMg(OH)2も炭酸化反応によ
りそれぞれCaCO3、MgCO3に変化し、本発明の水
中沈設用石材が得られる。
【0052】本発明の水中沈設用石材の原料スラグ中に
は、添加材の少なくとも一部として少量のセメントが添
加され、このセメント中に含まれるCaOの炭酸化反応
で生成させたCaCO3もバインダーの一部としてスラ
グ粒子の固結に寄与する。セメントは石材の強度を向上
させるために添加されるもので、通常、62〜66wt
%程度のCaOを含んでおり、これが炭酸化反応により
生成するバインダーの一部となる。炭酸化反応でバイン
ダー化するCaO源を主原料であるスラグ中のCaOだ
けに求めた場合、スラグ粒子どうしを十分な強度で結合
させるためのバインダー(CaCO3、MgCO3)の量
が不足し、長期間水中に置かれる水中沈設用石材として
の強度が十分に得られない場合がある。
【0053】セメントの配合量は、全原料中の割合で2
〜15wt%とすることが好ましい。セメントの配合量
が2wt%未満では強度の向上効果が小さく、また、原
料全体にセメントを均一に分散させることが難しい。一
方、セメントの配合量が15wt%を超えると、15w
t%以上のセメントを全量炭酸化反応させることは困難
であり、炭酸化反応しないセメントがコンクリート製品
と同様にCaOとSiO2の水和物を生成するため、先
に述べたようなコンクリート製品と同様の問題、すなわ
ち海藻類等の水生植物の着生、成育不良、海水等のpH
上昇、石灰藻の発生等の問題が顕在化しはじめるため好
ましくない。
【0054】本発明の水中沈設用石材には、適用すべき
水中の状況等に応じてそれぞれ好適な組成とするため
に、必要に応じて原料スラグに対してセメント以外の各
種の添加材(粉粒状、粗粒状または小塊状の添加材)を
添加することができる。この添加材としては、例えば可
溶性シリカ源となる粉粒または粗粒物(可溶性シリカ、
含可溶性シリカ材)、先に述べたような鉄源となる粉粒
または粗粒物(金属鉄、含金属鉄材、酸化鉄、含酸化鉄
材)、粉粒状または粗粒状のCaO、Ca(OH)2
MgO、Mg(OH)2等が挙げられる。
【0055】水中沈設用石材に含まれる可溶性シリカや
鉄源(金属鉄、酸化鉄)は、これらが水中に溶出するこ
とにより海藻類等の水生植物の成育に有効に作用する。
また、水中への溶出性、海藻類等の成育作用の点から
は、鉄源の中でも特に金属鉄や含金属鉄材が好ましい。
【0056】また、原料中にCaO、Ca(OH)2
MgO、Mg(OH)2の1種以上を添加する場合、こ
れらは炭酸化反応によりCaCO3、MgCO3に変化し
てバインダーの一部となるか、若しくは一部がCaO等
として残存して、以下のような機能を果たす。すなわ
ち、水中沈設用石材に少量含まれるCaOは、海底に赤
潮の原因となる燐や青潮の原因となる硫黄が多く含まれ
る場合にこれら燐や硫黄を吸着し、赤潮や青潮の発生を
防止するのに効果がある。なお、先に述べたように石材
中にCaOが多量に含まれる場合には海水のpHを上昇
させるという問題があるが、燐や硫黄を吸着するには炭
酸固化後に残存する程度の少量のCaOが含まれていれ
ば足りる。
【0057】可溶性シリカ源となる粉粒または粗粒物と
しては、粉粒状または粗粒状の可溶性シリカおよび/ま
たは含可溶性シリカ材がある。この含可溶性シリカ材と
しては、火力発電所等において石炭燃焼により生じるフ
ライアッシュやクリンカーアッシュ等を用いることがで
きる。これらのうちフライアッシュは45〜75重量%
程度、またクリンカーアッシュは50〜65重量%程度
の可溶性シリカを含有している。
【0058】鉄源となる粉粒または粗粒物としては、粒
鉄等のような粉粒状若しくは粗粒状の金属鉄または含金
属鉄材、粉粒状若しくは粗粒状の酸化鉄または含酸化鉄
材等があり、特に容易且つ安価に入手できる粉粒または
粗粒物としては、鉄鋼製造プロセスで発生する含鉄ダス
トやミルスケールが挙げられる。含鉄ダストとしては製
鉄ダストが一般的であり、通常、このダストはFe換算
で75%前後の酸化鉄を含有している。また、ミルスケ
ールもFe換算で70%前後の酸化鉄を含有している。
【0059】また、高炉水砕スラグも可溶性シリカを比
較的多く含んでいるため、主原料であるスラグの一部ま
たは全部を高炉水砕スラグとすること、例えば製鋼スラ
グと高炉水砕スラグとを混合して用いることにより、可
溶性シリカ源となる添加材を添加した場合と同様の効果
が得られる。
【0060】また、先に述べたようにヘドロが堆積した
ような海底に比重の大きい石材を沈設した場合には、石
材がヘドロのなかに沈んでしまい、藻場用石材や魚礁等
としての役目を果たせなくなる場合がある。したがっ
て、このようなヘドロの堆積した海域で使用する水中沈
設用石材については、比較的比重の小さいスラグを主原
料とすることが好ましく、具体的には、他のスラグに比
べて比重の小さい水砕スラグを主原料の少なくとも一部
として用いることが有効である。粉粒状、粗粒状または
小塊状のスラグを主原料とする本発明の水中沈設用石材
は比較的ポーラスな性状を有しており、これにより下記
で述べるような効果が得られる。石材の空隙率は特に
限定しないが、通常、10〜70%程度の空隙率とする
ことが好ましい。この空隙率は、炭酸固化させる際の原
料スラグの嵩密度(圧密度)を調整することにより容易
に調整できる。
【0061】本発明の水中沈設用石材は海、河川、湖
沼、池等において使用され、例えば、海においては藻場
用石材、築磯用石材、魚礁用石材、海底マウンド用石
材、水質浄化用石材として、河川においては河床用石
材、魚道用石材、水質浄化用石材等として、湖沼や池に
おいては水底用石材、水質浄化用石材等として、それぞ
れ水中に沈設または敷設されることにより使用される。
本発明の石材を水中に設置する態様は任意であり、単に
沈設するだけでなく、適当な構造部等に固定的に敷設し
てもよい。
【0062】また、本発明の水中沈設用石材は、一部が
水面上に露出したり、或いは水位の変動により全体が一
時的に水面上に露出するような態様でも使用できること
は言うまでもない。これらの例としては、例えば、海
岸、河原、河川の水際部等に敷設する石材、海岸や河川
の護岸用として法面に敷設する石材等が挙げられる。ま
た、沈設または敷設する態様としては、単に塊状の石材
をランダムに沈設、敷設するだけでなく、中塊・大塊状
の石材を石積みする態様、小塊・中塊状の石材を蛇籠等
に収納して積み上げる態様、ブロック状の石材を組み付
けて敷設する態様等、任意の態様を採用できる。
【0063】また、本発明の水中沈設用石材は魚道用石
材等のように人工構造部や人工河床に沈設または敷設さ
れる石材としても好適であり、このうち魚道用石材とし
ては、少なくとも魚道の底部に沈設若しくは固定的に敷
設される。また、魚道以外にも、例えば、水が流れる人
工構造部の上面(例えば、堰等の頭首工の一部または全
部を構成する人工構造部の緩傾斜面)や固定的に構築さ
れた人工河床(例えば、石張りまたは石組により構築さ
れた河床)等、任意の構造部に固定的に敷設することも
できる。
【0064】本発明の水中沈設用石材を使用する際の形
態(大きさや形状等)は任意であり、例えば、大きさと
しては1000mm以上のオーダーから数十mm程度の
オーダーまで、用途に応じて適宜選択するればよい。ま
た、石材の形状としては、後述するように炭酸固化した
スラグの積み山または充填層から重機等による破砕によ
って石材を切り出せばランダムな形状の塊状石材が得ら
れるし、スラグを適当な大きさの充填層で炭酸固化させ
れば、その充填層の形状のままの塊状石材が得られる。
また、この後者の場合には、石材の形状は球状、パネル
状、直方体または立方体ブロック形状、円筒形状、容器
形状等、任意の形状を選択でき、また、それらの形状に
おいて任意の孔、凹み、溝、突起等を付けることもでき
る。
【0065】また、魚道や他の人工構造部或いは人工河
床等に固定的に敷設する場合には、施工がしやすく、且
つ場合によっては石材の石組だけで固定的に敷設できる
ようにするため、ブロック状、パネル状またはタイル状
若しくはそれに近い形状(定形材)で使用することが好
ましい。但し、魚道等においても、その底部に非定形の
塊状石材を単に沈設するような形態で用いてもよい。
【0066】本発明の水中沈設用石材は、上述した各種
用途の水中沈設用石材として以下のような長所を有す
る。 スラグ中とセメント中に含まれるCaO(またはC
aOから生成したCa(OH)2)の大部分がCaCO3
に変化するため、CaOによる海水のpH上昇を防止で
きる。一般に自然石(石灰石)のpHは9.3程度、コ
ンクリートのpHは12〜12.5程度であるが、本発
明の水中沈設用石材は製造時の上記中和反応により自然
石並みのpH10前後とすることができる。また、Ca
分と水中のMgイオンとの反応による白沈の発生も防止
できる。一方において、スラグに適量の鉄分(特に、金
属鉄、含金属鉄材)が含まれることにより、この鉄分が
水中に溶出することで水中に栄養塩として鉄分が補給さ
れ、これが海藻類等の水生植物の育成に有効に作用す
る。
【0067】 粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状
スラグのうちの1種以上からなるスラグを炭酸固化して
得られた塊状物は全体(表面及び内部)がポーラスな性
状を有しており、このため石材表面に海藻類が付着し易
く、しかも石材内部もポーラス状であるため、石材中に
含まれている海藻類等の水生植物の成育促進に有効な成
分(例えば、可溶性シリカや鉄分)が水中に溶出しやす
い。このため塊状スラグをそのまま水中沈設用石材とし
て用いる場合やスラグを骨材とするコンクリート製魚礁
に較べて、海藻類等の水生植物の成育を効果的に促進す
ることができる。
【0068】特に、藻場造成場所等において沈設される
石材への海藻類の増殖、生育を効果的に促進するために
は、石材表面での海藻類の幼体の生育を促進させる必要
がある。この点、本発明の水中沈設用石材から水中に溶
出する有効成分は、海藻類の個体が石材に近いほど効果
的に作用するため、海藻類の幼体の生育に特に有効であ
り、このため海藻類の幼体の生育を効果的に促進させる
ことができる。
【0069】 塊状スラグそのものを水中沈設用石材
として用いる場合、溶融スラグの冷却方法や条件等の制
約により一般にその大きさには限界(通常、最大でも8
00mm程度)があり、また、サイズの揃った大塊の石
材を得ることは難しい。これに対して粉粒状スラグ、粗
粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種以上からなるス
ラグを炭酸固化させた石材は、炭酸固化させる際の形状
の選択或いは炭酸固化後の切り出し形状の選択等により
その大きさを任意に調整することができ、藻場用石材や
魚礁等として特に好ましい大塊の石材も容易に得ること
ができる。また、河川や湖沼、池等のための石材として
も、置き石用の大塊の石材、河床や水底に沈設または敷
設する中塊の石材、小塊の石材(割石状の石材)等、任
意の大きさの石材を容易に得ることができる。
【0070】 水中沈設用石材は海底や河床の状況、
海流や水流の状況等に応じて最適の密度(比重)のもの
を用いることが好ましく、例えばヘドロが堆積したよう
な海底に密度の大きい石材を沈設した場合には、石材が
ヘドロのなかに沈んでしまい、藻場用石材や魚礁として
の役目を果たせなくなる。この点、粉粒状スラグ、粗粒
状スラグ、小塊状スラグのうちの1種以上からなるスラ
グを炭酸固化させた石材は、炭酸固化させる際のスラグ
の嵩密度(圧密度)を適宜調整することにより、その密
度を任意に調整することができる。
【0071】 本発明の石材は、水質浄化用石材とし
ても優れた機能を有している。すなわち、本発明の石材
は上記で述べたように石材全体(表面及び内部)がポ
ーラスな性状を有しているため、優れた微生物担体機能
(多様な生物、特に微生物を安定して棲息させる機能)
を有しており、多様な微生物を固定して微生物による有
機性汚濁物質の分解と窒素化合物の硝化を効率的に促進
させる。さらに、上述したような水生植物の植生基盤と
しての優れた機能により、藻類のような水生植物、さら
には湿性植物の生育環境を提供し、植物による富栄養分
の吸収を促進させることにより自然の水質浄化能力を向
上させる。さらに、この石材で育成された水生植物は水
生生物の餌や棲家を提供するため、多様な生物間での食
物連鎖の環境が確保され、生物の生態系、食物連鎖によ
る水の自浄作用を促進させる。そして、このような微生
物担体機能と植生基盤としての機能が複合化することに
より、従来のようなコンクリート製の水質浄化ブロック
では得られない優れた水質浄化作用が得られる。
【0072】 通常、本発明の石材は固結した積み山
または充填層から切り出されることによって岩状のごつ
ごつした形態を有するため、これを河床や湖沼の水底等
に沈設または敷設した場合、一般の河川で見られるよう
な丸石またはこれに類する形状の自然石に較べて石材間
や石材と河底と間に大きな空間を生じやすく、その分、
水中生物にとって有用な生存、休息空間が形成されやす
い。
【0073】また、先に述べたように本発明の水中沈設
用石材は、河川用途のなかでも特に魚道等の水が流れる
人工構造部用や人工河床用の石材(以下は、魚道用石材
を例に説明する)として好適なものであり、このような
用途の石材として用いた場合、上記の点以外に以下のよ
うな長所を有する。
【0074】 粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状
スラグのうちの1種以上からなるスラグを炭酸固化して
得られた塊状物の表面はポーラスな性状で、無数の凹凸
を有しているため、これを魚道の底部等に沈設または敷
設した場合には、河床(石等の表面の突起や水生植物)
に爪等を引っ掛けながら移動するような水中生物(例え
ば、甲殻類や水生昆虫等)であっても魚道を容易に移動
することができる。また特に、本発明の石材は上述した
ようにポーラスで凹凸のある表面を有し且つpHも自然
石並みであり、また有効成分も溶出しやすい性質がある
ため、表面に藻類等の水生植物が付着、生育しやすく、
このような水生植物の付着、生育により上記水中生物の
魚道での移動がより容易になる。
【0075】 魚道用として石材を用いる場合、魚道
内に塊状の石材を単に沈設するだけでもよいが、水流に
よる石材の流失を防止するには、ブロック状またはパネ
ル状等の形状に成型した石材を魚道等の底部に固定的に
敷設することが好ましい。この点、スラグを炭酸固化さ
せて得られる石材は製造時に任意の形状に成型すること
が可能であるため、ブロック状またはパネル状等の形状
のものを容易に得ることができ、このような石材を用い
ることにより魚道等の底部に固定的に敷設する際の施工
が容易であり、しかも、確実に敷設することができる。
【0076】次に、本発明の水中沈設用石材の製造法に
ついて説明する。本発明による水中沈設用石材の製造法
では、主原料である粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊
状スラグのうちの1種以上からなるスラグに、添加材の
少なくとも一部としてセメントを混合し、この混合物に
よる積み山または任意の空間内での充填層を形成し、こ
の積み山または充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を
生じさせることにより前記混合物を固結させ、スラグお
よび添加材が塊状化した石材を得る。
【0077】図1は本発明法の製造フローの一例を、ま
た図2はこの製造フローに従った製造工程の一例を示し
ている。鉄鋼製造プロセスで発生したスラグについて
は、一般にスラグ中の地金の回収が行われ、スラグ中に
含まれる相当程度の割合の地金分が除去される。通常、
この地金回収工程ではスラグを粉砕機等によりcmオー
ダーまたはそれ以下の粒径(例えば、5cm以下)まで
粉砕し、粉粒状、粗粒状若しくは小塊状スラグとした
後、地金の回収が行われる。スラグは地金回収が可能な
程度の粒径であればよく、したがって、スラグの性状等
により比較的粒度が粗くても地金回収が可能なものにつ
いては、地金除去可能な粒径までスラグを粉砕すればよ
い。
【0078】また、上記の地金回収では、回収処理後の
スラグ中の地金含有率が後述する地金除去処理後ほど低
くなくてもよく、適量の地金を残存させてよい。これ
は、スラグ中に適量含まれる鉄分(特に、金属鉄、含金
属鉄材)が水中に溶出することにより、水中に栄養塩と
して鉄分が補給され、これが海藻類等の水生植物の成育
に有効に作用するからである。このため、通常は回収処
理後の含有率で3重量%以上の地金がスラグ中に残存す
る程度の回収を行えばよい。
【0079】また、スラグによっては地金回収が可能な
程度の粒径に自然崩壊した状態(すなわち、粉粒状、粗
粒状若しくは小塊状に自然崩壊した状態)で搬入される
ものもあり、このようなスラグについては上述したよう
な粉砕処理は必要ない場合もある。例えば、スラグ中に
含まれる未滓化のCaOがスラグの冷却固化後、空気中
の水分または雨水、冷却時の散水等と反応してCa(O
H)2を生成し、この生成時にスラグが膨張して崩壊、
粉化する場合や、塩基度(CaO/SiO2)が2に近
いスラグ中に2CaO・SiO2(C2S)が生成し、こ
のC2Sがスラグ冷却過程で変態膨張を起こし、スラグ
が崩壊、粉化する場合等があり、これらの原因で既に地
金回収が可能な程度の粒径まで粉化、粒状化若しくは小
塊化したスラグについては、そのまま地金回収を実施す
ることができる。
【0080】通常、スラグの地金回収は磁気選別機等に
よる磁気選別(磁石によりスラグ中の地金分を除去する
方法)により行われるが、必ずしもこれに限定されるも
のではなく、例えば、地金成分とスラグ成分との比重差
を利用した風力選別等の比重選別法を用いることもでき
る。この地金回収によって、スラグ中に含まれる相当量
の地金成分が回収される。図2において、1は粉砕機、
2は磁気選別機を示す。
【0081】なお、一般に地金回収工程を経たスラグの
多くは、程度の差こそあるものの粉粒状または粗粒状の
スラグ粒子が或る一定以上の割合で含まれ、したがっ
て、スラグ中に比較的粒径の大きい小塊状のスラグ粒子
が混在していても、小塊状のスラグ粒子どうしの隙間を
粉粒状または粗粒状のスラグ粒子が埋めるため、スラグ
粒子を所定の強度を持つ状態に炭酸固化させるのに支障
を生じる恐れはほとんどない。但し、スラグが実質的に
小塊状のスラグ粒子のみからなる場合やスラグ中に占め
る小塊状のスラグ粒子の割合が比較的多い場合には、ス
ラグ粒子どうしの接触面積が小さくなるため、スラグ粒
子を所定の強度を持つ状態に炭酸固化させるのに支障を
生じる恐れがある。したがって、このような場合には、
粉粒状または粗粒状のスラグ粒子の割合を増やす等の粒
度調整を行うことが好ましい。
【0082】また、スラグ中の鉄分は、上記のようにス
ラグ中に元々含まれる地金(粒鉄等)の一部または全部
を回収することなく残存させ、これをそのまま利用して
もよいが、先に述べたようにスラグ中に含まれる鉄分の
含有量を任意に制御し、且つスラグ中に含まれる鉄分の
形状や大きさを任意に選択して、粒鉄等の好ましい鉄源
をスラグ中に含有させるためには、一旦スラグ中の地金
の実質的な全部(不可避的に除去できない地金を除く)
を地金除去処理により除去した後、添加材として金属鉄
および/または含金属鉄材を添加する方法を採る方が好
ましい。
【0083】一般に、この地金除去処理はスラグを粉砕
機等によりmmオーダーまたはそれ以下の粒径(例え
ば、5mm以下)まで粉砕した状態で行われる。但し、
スラグは地金除去処理が可能な程度の粒径であればよ
く、したがって、スラグの性状等により比較的粗粒状で
も地金除去が可能なものについては、地金除去可能な粒
径までスラグを粉砕すればよい。また、自然粉化等によ
り既に粉粒化または粗粒化しているスラグについては、
上記のような粉砕処理は必要ない場合もある。地金除去
処理では、不可避的に残存する地金成分を除き、スラグ
中の地金は可能な限り除去されることが好ましく、通
常、地金除去処理後のスラグ中の地金含有率を3重量%
未満とすることが好ましい。
【0084】通常、地金除去処理は磁気選別機等による
磁気選別(磁石によりスラグ中の地金分を除去する方
法)により行われるが、必ずしもこれに限定されるもの
ではなく、例えば、地金成分とスラグ成分との比重差を
利用した風力選別等の比重選別法を用いることもでき
る。
【0085】以上のような地金回収処理または地金除去
処理を経たスラグは、粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小
塊状状スラグのうちの1種以上からなるスラグである。
但し、原料スラグは粉粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊
状スラグの1種以上であればよく、したがって、上記の
ような地金回収工程や地金除去工程を経ることを必要条
件とするものではない。この原料スラグには少量のセメ
ントが添加され、さらに必要に応じて各種の添加材が添
加され、原料スラグと混合される。セメントの配合量
は、全原料中の割合で2〜15wt%とすることが好ま
しく、その理由は先に述べた通りである。
【0086】セメント以外の添加材としては、例えば可
溶性シリカ源となる粉粒または粗粒物(可溶性シリカ、
含可溶性シリカ材)、鉄源となる粉粒または粗粒物(金
属鉄、含金属鉄材、酸化鉄、含酸化鉄材)、CaO、C
a(OH)2、MgO、Mg(OH)2等の1種以上を添
加することができ、その具体例は先に述べた通りであ
る。なお、スラグ中に添加する金属鉄や含金属鉄材とし
ては、先に述べた理由から粒鉄が最適である。この粒鉄
としては、スラグから回収された粒鉄だけでなく、それ
以外で調達できる任意の粒鉄を使用できる。
【0087】また、これらのなかでも可溶性シリカや鉄
源(金属鉄、酸化鉄)は、これらが水中に溶出すること
により海藻類等の水生植物の成育に有効に作用する。ま
た、水中への溶出性、海藻類等の水生植物の成育作用の
点からは、鉄源の中でも特に金属鉄や含金属鉄材が好ま
しい。
【0088】原料スラグと添加材との混合は任意な方法
で行うことができ、例えば、モルタルミキサーやコンク
リートミキサー等の混練機で混合する方法、ホッパー内
で混合する方法、地金回収設備または地金除去処理設備
内で地金回収または地金除去処理済みのスラグに添加材
を添加して混合する方法、ショベル等の重機により混合
する方法等、任意の方法を採ることができる。また、こ
の段階において、必要に応じてスラグの水分調整を行う
こともできる。この水分調整については、後に詳述す
る。
【0089】このようにして添加材が添加、混合され、
且つ必要に応じて水分調整がなされたスラグは、炭酸固
化のために山積みまたは任意の空間内に充填される。こ
こで、スラグを山積みする場合には野積みで構わない
が、吹き込まれる炭酸ガスが積み山全体に十分に流れる
ようにし、且つスラグの飛散や雨水等による流失を避け
るため、積み山をシート等で覆うことが好ましい。
【0090】また、スラグの山積みまたは充填には、例
えば三方を仕切壁で囲んだようなピット、四方を仕切壁
で囲んだ型枠または容器等を用いることができる。この
うちピット内にスラグを山積みまたは充填する場合に
も、上記野積みの場合と同様に、積み山または充填層を
シート等で覆うことが好ましい。また、型枠または容器
を用いる場合にも、スラグの充填層をシートで覆うか或
いは蓋体を設けることが好ましい。図2は、型枠3の内
部に充填層Aを形成した状態を示している。
【0091】スラグの山積み量または充填量は特に限定
されず、例えば数トンないし数百トン規模の山積み量ま
たは充填量としてもよいし、或いは石材1個ないし数十
個程度に相当する山積み量または充填量としてもよく、
その量は任意である。但し、スラグの山積み量または充
填量が多くても、炭酸固化後の積み山または充填層を重
機等で砕くことにより、塊状の石材を容易に切り出すこ
とができ、しかもこのようにして破砕により切り出され
た塊状の石材は、海藻類等の水生植物の付着に有利な凹
凸状の破面を有する利点がある。したがって、生産性や
藻場用石材や魚礁等としての機能の面からはスラグの山
積み量または充填量はある程度多い方が好ましい。
【0092】また、製造すべき石材の密度に応じて、ス
ラグの積み山または充填層の嵩密度(圧密度)を調整す
ることが好ましい。すなわち、水中沈設用石材は海底の
状態等に応じて密度を調整することが好ましく、例えば
海底が泥質またはヘドロ質の場合には、石材が泥やヘド
ロ内に沈み込まないように比較的低密度の石材を使用す
ることが好ましく、一方、海底が岩礁等の場合には石材
が海流に流されないようにするため比較的高密度の石材
を使用することが好ましい。また、石材のポーラス度
(空隙率)により海藻類等の水生植物の付着、成育の度
合いや石材内部からの有効成分の溶出性の度合いも違っ
てくることから、石材を適用する水域の状況に応じて石
材のポーラス度を調整することが好ましい場合もある。
【0093】本発明法により製造される石材の密度は、
スラグの積み山または充填層の嵩密度(圧密度)に依存
し、したがって、上記のような必要に応じてスラグの積
み山または充填層の締め固めの度合いを調整し、その嵩
密度を調整することにより、石材の密度を容易に調整す
ることができる。スラグの積み山または充填層の締め固
めの度合いは任意であるが、通常、嵩比重/真比重が
0.3〜0.9の範囲、すなわち積み山または充填層内
の空隙率が70〜10%となる程度に締め固めが行われ
る。
【0094】スラグの積み山または充填層の締め固め
は、積み山または充填層の上部から重機等で加圧して締
め固める方法や、積み山または充填層に振動を与えるこ
とにより締め固める方法、両者を併用する方法等を採用
でき、これらを行う際の締め固めの度合いを調整すこと
により、積み山または充填層の嵩密度の調整を行う。ま
た、特に低密度の石材を製造する場合には締め固めを行
わず、スラグを山積みまたは充填したままで炭酸固化を
実施することもできる。
【0095】締め固めの具体的な方法としては、例えば
上述したようなピット、型枠または容器内の積み山また
は充填層に対して締め固めを行う場合、ピット、型枠ま
たは容器の内側に目標とする体積を示す秤線を表示して
おき、重量の分かったスラグをそれらの内部に入れた
後、積み山または充填層の上面が上記秤線の高さになる
まで締め固めを行う。
【0096】以上のようなスラグの積み山または充填層
の嵩比重の調整が完了した後、その積み山または充填層
に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせ、スラグを炭
酸固化させる。具体的には、スラグの積み山または充填
層内に炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込むか、
若しくは積み山または充填層を炭酸ガスまたは炭酸ガス
含有ガス雰囲気下に置き、スラグの炭酸固化を実施す
る。
【0097】積み山または充填層内に炭酸ガスまたは炭
酸ガス含有ガスを吹き込む方法に特別な制限はないが、
積み山または充填層の底部にガス吹き込み手段を設け、
このガス吹き込み手段を通じてガスを吹き込むことが最
も効果的である。具体的には、積み山または充填層の底
部(ピット、型枠または容器等を用いる場合には、それ
らの床部)にガス供給用の配管またはホース等を適当な
配置密度で配し、これら配管またはホースに適当なピッ
チ(例えば、30〜300mm×40〜400mmピッ
チ)で設けたガス吹出孔から炭酸ガスまたは炭酸ガス含
有ガスが吹き出されるようにすることができる。
【0098】また、積み山または充填層を炭酸ガスまた
は炭酸ガス含有ガス雰囲気中に置く方法としては、積み
山や充填層を気密性の空間(容器等を含む)内に置き、
この空間内に炭酸ガスや炭酸ガス含有ガスを任意の態様
で供給する方法等を採ることができる。使用される炭酸
ガス含有ガスとしては、例えば一貫製鉄所内で排出され
る石灰焼成工場排ガス(通常、CO2:25%前後)や
加熱炉排ガス(通常、CO2:6.5%前後)等が好適
であるが、これらに限定されるものではない。また、炭
酸ガス含有ガス中の炭酸ガス濃度が低すぎると処理効率
が低下するという問題を生じるが、それ以外の問題は格
別ない。したがって、炭酸ガス濃度は特に限定しない
が、効率的な処理を行うには3%以上の炭酸ガス濃度と
することが好ましい。
【0099】また、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの
ガス吹込量にも特別な制限はなく、スラグの積み山また
は充填層が流動しない程度にガス吹き込みを行えばよい
が、一般的な目安としては0.004〜0.5m3/m
in・t程度のガス吹き込み量が確保できればよい。ま
た、ガス吹き込み時間(炭酸化処理時間)にも特別な制
約はないが、目安としては炭酸ガス(CO2)の吹込量
がスラグの重量の3%以上となる時点、すなわち、ガス
量に換算すると材料1t当たり15m3以上の炭酸ガス
(CO2)が供給されるまでガス吹き込みを行うことが
好ましい。
【0100】スラグの積み山または充填層に吹き込まれ
る炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスは常温でよいが、ガ
スが常温よりも高温であればそれだけ反応性が高まるた
め有利である。但し、ガスの温度が過剰に高いとCaC
3がCaOとCO2に分解し、またMgCO3もMgO
とCO2に分解してしまうため、高温ガスを用いる場合
でもこのような分解を生じない程度の温度のガスを用い
る必要がある。
【0101】また、スラグをCaO、MgOと炭酸ガス
との反応を利用して炭酸固化させるには水分が必要であ
り、スラグの粒度等によって最適水分量は異なるが、炭
酸化処理開始直前のスラグ中の水分含有率は3〜10%
程度の範囲とすることが適当である。これは水にCa
O、MgOと炭酸ガスが溶解することにより炭酸化反応
が促進されるためである。したがって、スラグは必要に
応じて最適水分量に水分調整した上で、炭酸ガス存在下
で炭酸化反応を生じさせるようにすることが好ましい。
このためスラグの含水率が低過ぎる場合には、例えば、
図1の製造フローに示す混合過程等においてスラグに水
を加え、スラグの水分含有率を高める等の水分調整を行
うことが好ましい。
【0102】スラグの最適な含水状態(水分含有率)と
は、例えばスラグの積み山または充填層内部での水分の
存在形態を例にして言うと、各スラグ粒子の表面に薄い
水膜が形成されるとともに、隣接するスラグ粒子の水膜
どうしが一部で接している状態であって、且つ各スラグ
粒子表面の水膜面に炭酸ガスが供給されるようなガス流
路が確保された状態であると考えられる。
【0103】使用する原料スラグの最適水分量(水分含
有率)は、例えば以下のようにして求めることができ
る。一定量の原料スラグに対して、吸水率(JIS A
1109またはA 1110で規定される細骨材または
粗骨材の吸水率)以上の任意の量の水を加えた3水準以
上の原料スラグサンプルを用意し、この各原料スラグサ
ンプルを乾燥時の気孔率が一定になるように型枠内に充
填する。10〜40℃の範囲内での所定温度の炭酸ガス
を水浴等を通して加湿した後、前記型枠内の底部からス
ラグ充填層に一定の供給量と供給時間で吹込み、スラグ
を炭酸化養生して固化させる。その後、固化した各塊状
スラグ(石材ブロック)の圧縮強度を測定して、例え
ば、図3に示すような原料スラグの水分含有率と圧縮強
度との関係を求め、圧縮強度の極大値が得られた原料ス
ラグの水分含有率を当該原料スラグの最適水分含有率と
し、原料スラグの水分調整を行う。
【0104】図3は、原料スラグの水分含有率の影響を
調べるため行った実験結果に基づく、原料スラグの水分
含有率と製造された塊状スラグ(石材)の圧縮強度との
関係を示している。この実験では、塩基度(CaO/S
iO2):1.8の製鋼スラグを5mm以下に粉砕し、
このスラグに5.0wt%のセメントを添加するととも
に、水を添加して数水準の水分含有率に調整した。これ
ら数水準の水分含有率のスラグをそれぞれ型枠内に充填
し、炭酸ガスを0.5L/min・kgの供給量で型枠
の底部からスラグ充填層に供給し、スラグを炭酸固化さ
せた。
【0105】この炭酸固化により得られたサイズ1m×
1m×1mの石材ブロック(塊状スラグ)の圧縮強度を
測定した結果、図3に示すような原料スラグの水分含有
率と石材ブロックの圧縮強度との関係が得られた。この
うち原料スラグを水分含有率a1に調湿して得られた石
材ブロックは最も高い圧縮強度を持つが、原料スラグを
水分含有率a2に調湿して得られた石材ブロックは、脱
枠後にバケットで掴んで移動しようとしたところ、比較
的簡単に崩壊した。
【0106】また、スラグの積み山または充填層内に炭
酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを供給するに当たって
は、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを一旦水中に吹き
込んでH2Oを飽和させた後、積み山または充填層に吹
き込むようにすることにより、スラグの乾燥を防止して
炭酸化反応を促進させることができる。
【0107】以上のようにしてスラグの積み山または充
填層内に炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを供給するこ
とにより、先に述べたようなCaO(またはCa(O
H)2)、MgO(またはMg(OH)2)と炭酸ガスと
の反応によってCaCO3、MgCO3が生成し、このC
aCO3またはCaCO3とMgCO3がバインダーとな
ってスラグ粒子(および添加材粒子)が固結する。
【0108】このような炭酸固化完了後、必要に応じて
重機等により積み山または充填層を適当な大きさに砕
き、塊状の水中沈設用石材が切り出される。したがっ
て、この切り出す際の大きさにより、任意の大きさの石
材を得ることができる。通常、塊状の石材は80〜15
00mmの大きさに切り出される。また、この切り出し
時の破砕により、石材に海藻類の付着し易い凹凸のある
破面が生じる。なお、本発明法では充填層の容積を十分
に小さくすることで、上記のような切り出しを行うこと
なくそのまま石材として利用することもできる。
【0109】このような本発明の製造法には、以下のよ
うな利点がある。 スラグを積み山または充填層とした状態で炭酸固化
を行うため、積み山または充填層の締め固めの度合いを
調整してその嵩比重を調整することにより、水中沈設用
石材の密度の調整を簡単に行うことができる。先に述べ
たように、水中沈設用石材は海底や河床、海流や水流の
状況等に応じて密度やポーラス度を適宜調整することが
好ましく、このような調整を任意にしかも極く簡単に行
うことができることは、水中沈設用石材の製造法として
大きな利点である。従来技術として造粒ペレット等を炭
酸固化させる技術が知られているが、このような造粒方
式では非処理材の密度を幅広い範囲で調整することは困
難である。
【0110】 本発明法はスラグを積み山または充填
層とした状態で炭酸固化を行い、炭酸固化完了後、積み
山または充填層を適当な大きさに砕いて所望の大きさの
塊状石材を切り出し、或いは充填層をそのまま塊状石材
として利用するものであるため、切り出される石材の大
きさや充填層の大きさを適宜選択することにより、任意
の大きさ(例えば、80〜1500mm)の石材を得る
ことができ、藻場用石材や魚礁等として特に好ましい大
塊の石材も容易に得ることができる。上述した造粒ペレ
ット等を炭酸固化させる従来技術では、得られる塊状物
の大きさはせいぜい30〜50mm程度が限度であり、
しかも、不可避的にサイズの小さい塊状物も生じてしま
う。したがって、本発明法のように大塊の石材が得られ
ることは水中沈設用石材の製造法として大きな利点であ
る。
【0111】 炭酸固化後、スラグの積み山または充
填層を重機等により砕き、塊状の石材を切り出する方法
を採ることにより、海藻類等の水生植物の付着し易い凹
凸のある表面(破面)を有する塊状石材を得ることがで
きる。
【0112】 石材を魚道等の人工構造部や人工河床
に固定的に敷設する場合、使用する石材はブロック状ま
たパネル状等の形状のものであることが好ましいが、本
発明法では充填層の大きさや形状を適宜選択することに
より、このような形状の石材も容易に得ることができ
る。また、このブロック状またパネル状の石材を得る際
に、炭酸固化して得られたブロック状の石材を破砕また
は破断処理して2分割することにより、上面に破面を有
するブロック状またはパネル状等の形状の石材を得るこ
とができる。
【0113】
【実施例】[実施例1]全量が粒度5mm以下の粉粒状
スラグ(転炉スラグ、鉄分含有率:18wt%)に種々
の配合量でセメントを添加してモルタルミキサーにより
混合し、これを容器内に充填して適度に締め固めた後、
炭酸ガスを供給量0.1Nm3/hrの割合で14日間
吹込み、スラグを炭酸固化させて200mm×400m
m×200mmのサイズの石材を製造した。このように
して得られた石材のセメント配合量と圧縮強度との関係
を図4に示す。同図によれば、セメント配合量が2wt
%以上になると石材の強度が大幅に増大することが判
る。
【0114】[実施例2]全量が粒度30mm以下の粗
粒状スラグ(脱燐スラグ、鉄分含有率:8wt%)に種
々の配合量でセメントを添加してコンクリートミキサー
により混合し、これを容器内に充填して適度に締め固め
た後、炭酸ガスを供給量0.5Nm3/hrの割合で1
4日間吹込み、スラグを炭酸固化させて300mm×6
00mm×300mmのサイズの石材を製造した。この
ようにして得られた石材のセメント配合量と圧縮強度と
の関係を図5に示す。同図によれば、セメント配合量が
2wt%以上になると石材の強度が大幅に増大すること
が判る。
【0115】[実施例3]全量が粒度20mm以下の粉
粒状スラグ(転炉スラグ、鉄分含有率:19wt%)
と、同じく粒度50mm以下の粉粒状スラグ(脱燐スラ
グ、鉄分含有率:7wt%)に種々の配合量でセメント
を添加してパン型ミキサーにより混合し、これを容器内
に充填して適度に締め固めた後、炭酸ガスを供給量0.
3Nm3/hrの割合で12日間吹込み、スラグを炭酸
固化させて1000mm×1000mm×700mmの
サイズの石材を製造した。
【0116】これらの石材を、天然藻場の海藻類から胞
子が放出される時期を選んで、天然藻場の近くの水深3
mの海底に沈設し、沈設して1ヶ月後と6ヶ月後の珪藻
・海藻類と石灰藻の着生状態を観察した。その結果を表
1および表2に示す。表1および表2によれば、セメン
トを15wt%を超えて配合して製造した石材の表面に
は設置1ヶ月後からはやくも石灰藻が着生しており、藻
場造成には適さないことが判る。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【発明の効果】以上述べたように本発明の水中沈設用石
材は、海水や河川水のpHの上昇や白沈の発生等の問題
を生じることがなく、しかも藻場用石材、築磯用石材、
魚礁用石材、海底マウンド用石材、河床用石材、魚道用
石材、人工河床用石材、湖沼・池の沈設用石材、さらに
は、水質浄化用石材等として、海、河川、湖沼、池等の
水中に沈設または敷設した際に、海藻類等の水生植物の
育成や魚介類の繁殖、魚類等の生存空間形成、水質浄化
等の面で優れた効果を発揮でき、また、河川のダムや堰
等に設けられる魚道等の人工構造部や石張り河床等の人
工河床に沈設または敷設した際に、魚類以外の水中生物
の移動性や水生植物の生育等の面で優れた効果を発揮す
ることができる。
【0120】また、本発明の製造方法によれば、スラグ
を積み山または充填層とした状態で炭酸固化を行うた
め、積み山または充填層の締め固めの度合いの調整、炭
酸固化後に切り出す石材の大きさや充填層の大きさ等を
適宜選択することにより、任意の密度と大きさの水中沈
設用石材を簡単且つ低コストに製造することができる。
【0121】また、スラグの中には冷却時に生成するγ
−ダイカルシウムシリケートの変態膨張や、遊離CaO
の水和により生じる膨張等により粉化する性質を持つも
のがあり、従来、このような粉化スラグは一部がセメン
ト原料等として利用される以外は利材化の途がなく、大
部分が廃棄されていたものであるが、本発明ではこのよ
うな粉化スラグについても原料として利用でき、さらに
組成上の制約からセメント原料等として利用するのに難
があり、有効利用が難しかったスラグ(例えば、脱燐ス
ラグや脱珪スラグ等)についても原料として利用できる
ことから、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグの有効利
用という面でも非常に有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造フローの一例を示す説明図
【図2】図1の製造フローに従った本発明の製造工程の
具体例を示す説明図
【図3】原料スラグの水分含有率と製造される石材の圧
縮強度との関係を概略的に示すグラフ
【図4】原料中のセメント配合量と製造される石材の圧
縮強度との関係を示すグラフ
【図5】原料中のセメント配合量と製造される石材の圧
縮強度との関係を示すグラフ
【符号の説明】
1…粉砕機、2…磁気選別機、3…型枠、A…充填層

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主
    原料とし、この主原料と添加材との混合物を原料とする
    水中沈設用石材であって、前記主原料となるスラグが粉
    粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種
    以上からなり、前記添加材の少なくとも一部がセメント
    からなり、前記スラグと添加材との混合物を炭酸化反応
    で生成させたCaCO3をバインダーとして固結させ、
    塊状化したことを特徴とする水中沈設用石材。
  2. 【請求項2】 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを主
    原料とし、この主原料と添加材との混合物を原料とする
    水中沈設用石材であって、前記主原料となるスラグが粉
    粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種
    以上からなり、前記添加材の少なくとも一部がセメント
    からなり、前記スラグと添加材との混合物を炭酸化反応
    で生成させたCaCO3およびMgCO3(但し、MgC
    3が水和物、水酸化物塩または複塩として存在する場
    合を含む)をバインダーとして固結させ、塊状化したこ
    とを特徴とする水中沈設用石材。
  3. 【請求項3】 全原料中のセメントの配合量が2〜15
    wt%であることを特徴とする請求項1または2に記載
    の水中沈設用石材。
  4. 【請求項4】 スラグの少なくとも一部が高炉水砕スラ
    グであることを特徴とする請求項1、2または3に記載
    の水中沈設用石材。
  5. 【請求項5】 スラグが地金回収処理または地金除去処
    理を経た粉粒状および/または粗粒状のスラグからなる
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の水
    中沈設用石材。
  6. 【請求項6】 添加材の一部が金属鉄、含金属鉄材、酸
    化鉄、含酸化鉄材の中から選ばれる1種以上であること
    を特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の水
    中沈設用石材。
  7. 【請求項7】 添加材の一部が可溶性シリカおよび/ま
    たは含可溶性シリカ材であることを特徴とする請求項
    1、2、3、4または5に記載の水中沈設用石材。
  8. 【請求項8】 添加材の一部がCaO、Ca(O
    H)2、MgO、Mg(OH)2の中から選ばれる1種以
    上であることを特徴とする請求項1、2、3、4または
    5に記載の水中沈設用石材。
  9. 【請求項9】 空隙率が10〜70%であることを特徴
    とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記
    載の水中沈設用石材。
  10. 【請求項10】 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを
    主原料とし、この主原料と添加材との混合物を原料とす
    る水中沈設用石材の製造方法であって、主原料である粉
    粒状スラグ、粗粒状スラグ、小塊状スラグのうちの1種
    以上からなるスラグに、添加材の少なくとも一部として
    セメントを混合し、該混合物による積み山または任意の
    空間内での充填層を形成し、該積み山または充填層に炭
    酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより前記
    混合物を固結させ、スラグおよび添加材が塊状化した石
    材を得ることを特徴とする水中沈設用石材の製造方法。
  11. 【請求項11】 全原料中のセメントの配合量が2〜1
    5wt%であることを特徴とする請求項10に記載の水
    中沈設用石材の製造方法。
  12. 【請求項12】 スラグの積み山若しくは充填層に炭酸
    ガス若しくは炭酸ガス含有ガスを吹き込むか、または積
    み山若しくは充填層を炭酸ガス若しくは炭酸ガス含有ガ
    ス雰囲気下に置くことを特徴とする請求項10または1
    1に記載の水中沈設用石材の製造方法。
  13. 【請求項13】 スラグの少なくとも一部が高炉水砕ス
    ラグであることを特徴とする請求項10、11または1
    2に記載の水中沈設用石材の製造方法。
  14. 【請求項14】 スラグとして、地金回収処理または地
    金除去処理を経た粉粒状および/または粗粒状のスラグ
    を用いることを特徴とする請求項10、11、12また
    は13に記載の水中沈設用石材の製造方法。
  15. 【請求項15】 添加材の一部が金属鉄、含金属鉄材、
    酸化鉄、含酸化鉄材の中から選ばれる1種以上であるこ
    とを特徴とする請求項10、11、12、13または1
    4に記載の水中沈設用石材の製造方法。
  16. 【請求項16】 添加材の一部が可溶性シリカおよび/
    または含可溶性シリカ材であることを特徴とする請求項
    10、11、12、13または14に記載の水中沈設用
    石材の製造方法。
  17. 【請求項17】 添加材の一部がCaO、Ca(OH)
    2、MgO、Mg(OH)2の中から選ばれる1種以上で
    あることを特徴とする請求項10、11、12、13ま
    たは14に記載の水中沈設用石材の製造方法。
  18. 【請求項18】 スラグの積み山または充填層の嵩比重
    /真比重を0.3〜0.9の範囲とすることを特徴とす
    る請求項10、11、12、13、14、15、16ま
    たは17に記載の水中沈設用石材の製造方法。
  19. 【請求項19】 炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを水
    中に通すことでH2Oを飽和させ、しかる後、スラグの
    積み山または充填層に炭酸化処理のために供給すること
    を特徴とする請求項10、11、12、13、14、1
    5、16、17または18に記載の水中沈設用石材の製
    造方法。
  20. 【請求項20】 固結した積み山または充填層を所望の
    大きさの塊状物に破砕し、該破砕による破面を有する塊
    状石材を得ることを特徴とする請求項10、11、1
    2、13、14、15、16、17、18または19に
    記載の水中沈設用石材の製造方法。
  21. 【請求項21】 スラグを最適水分含有率に水分調整し
    た上で、該スラグの積み山または充填層に炭酸ガス存在
    下で炭酸化反応を生じさせることを特徴とする請求項1
    0、11、12、13、14、15、16、17、1
    8、19または20に記載の水中沈設用石材の製造方
    法。
  22. 【請求項22】 全量が粒度50mm以下であって、累
    積粒度分布の小径側から30重量%の粒度(D30)が
    800μm以下である粒度分布を有し、且つ水分含有率
    が3〜10%であるスラグの積み山または充填層に炭酸
    ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることを特徴とする
    請求項10、11、12、13、14、15、16、1
    7、18、19、20または21に記載の水中沈設用石
    材の製造方法。
  23. 【請求項23】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8または9に記載の石材を、河川内において水が流れる
    人工構造部または人工河床に沈設または敷設することを
    特徴とする水中沈設用石材の使用方法。
  24. 【請求項24】 石材を、魚道の少なくとも底部に沈設
    または敷設することを特徴とする請求項23に記載の水
    中沈設用石材の使用方法。
  25. 【請求項25】 沈設または敷設された石材の上面が、
    破砕または破断により形成された破面であることを特徴
    とする請求項23または24に記載の水中沈設用石材の
    使用方法。
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