JP2000124000A - 荷電粒子ビーム出射方法 - Google Patents

荷電粒子ビーム出射方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】簡単な制御で荷電粒子ビームを出射できる荷電
粒子ビーム出射方法を提供することにある。 【解決手段】シンクロトロン1内を周回する荷電粒子ビ
ームに高周波印加装置11により高周波電磁場を印加す
ることにより、シンクロトロン1から荷電粒子ビームを
出射する場合に、シンクロトロン1から出射する荷電粒
子ビームのエネルギーに基づいて、高周波印加装置11
が発生する高周波電磁場の強度を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加速器から荷電粒
子ビームを出射する荷電粒子ビーム出射方法に係り、特
に簡単な制御で荷電粒子ビームを出射できる荷電粒子ビ
ーム出射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】荷電粒子ビーム(以下、ビームという)
を出射する加速器としては、一般にシンクロトロンが知
られており、シンクロトロンにおけるビームの出射方法
については、特開平5−198397 号公報において次のよう
に述べられている。シンクロトロンを周回するビームの
安定限界を四極電磁石を制御することにより一定に保
ち、その状態で荷電粒子ビームに高周波印加装置から高
周波電磁場を印加して安定限界内の荷電粒子ビームを安
定限界外に移動させ、安定限界外へ移動したビームを共
鳴を用いてシンクロトロンから出射する。
【0003】また、高周波電磁場を用いた上記出射方法
においては、ビームのエネルギーによって高周波電磁場
の周波数を変化させなければビームを効率よく出射でき
ないことも既に知られている。特開平7−14699号公報
は、出射するビームのエネルギーに応じて、ビームに印
加する高周波電磁場の中心周波数と周波数幅を制御する
ことを記載している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術において
はビームに印加する高周波電磁場の強度の決定方法につ
いて何ら述べられていないが、シンクロトロンからエネ
ルギーの異なるビームを出射する場合に、例えばビーム
に印加する高周波電磁場の強度を一定とすると、ビーム
のエネルギーが高いほどシンクロトロン内を周回するビ
ームを全て出射するのにかかる時間が長くなるというこ
とが新たに分かった。すなわち、ビームのエネルギーが
高いほど単位時間に出射される粒子数が低下することが
分かった。ビームのエネルギーによって、シンクロトロ
ン内を周回するビームを全て出射するのにかかる時間が
変化してしまうと、図8に示すように、シンクロトロン
の運転サイクルのうちビームを出射する期間の長さをビ
ームのエネルギーによって変更しなければならず、シン
クロトロンの制御が複雑になるという問題がある。な
お、図8において、T1<T2である。
【0005】本発明の目的は、簡単な制御で荷電粒子ビ
ームを出射できる荷電粒子ビーム出射方法を提供するこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の特徴は、加速器内を周回する荷電粒子ビームに高周
波電磁場を印加することにより、加速器から荷電粒子ビ
ームを出射する荷電粒子ビーム出射方法において、加速
器から出射する荷電粒子ビームのエネルギーに基づい
て、前記高周波電磁場の強度を設定することにある。
【0007】単位時間に出射される粒子数(ビームの出
射量)は、荷電粒子ビームのベータトロン振動が安定限
界をこえる速さ、すなわち荷電粒子ビームに印加される
高周波電磁場の強度に比例する。従って、荷電粒子ビー
ムのエネルギーに基づいて高周波電場の強度を設定する
ことにより、ビームの出射量を調整し、荷電粒子ビーム
のエネルギーによらずビームの出射量を一定に保つこと
ができる。よって、シンクロトロンの運転サイクルにお
けるビームを出射する期間の長さをビームのエネルギー
によらず一定にすることができ、簡単な制御で荷電粒子
ビームを出射することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】(実施例1)以下、図面を用いて
本発明の実施例を詳細に説明する。
【0009】図1は、本発明の好適な一実施例である加
速器システムを示す。
【0010】本実施例の加速器システムは、約20Me
Vの荷電粒子ビーム(以下、ビームという)を入射し、
予め設定されたエネルギーまで加速後、出射するシンク
ロトロン1を有する。
【0011】図1において、制御装置3からの指示に従
って前段加速器4は約20MeVのビームを出射する。
前段加速器4から出射されたビームは、ビーム輸送系を
介して入射器16に導かれ、入射器16によりシンクロ
トロン1に入射される。
【0012】シンクロトロン1は、ビームに高周波の磁
場及び電場(以下、高周波電磁場という)を印加するこ
とによりビームのベータトロン振動振幅を増加させる高
周波印加装置11,ビームの軌道を曲げる偏向電磁石1
2,ビームのベータトロン振動を制御する四極電磁石1
3,ビーム出射時の共鳴を励起するための六極電磁石1
4,ビームにエネルギーを与える、すなわちビームを加
速する高周波加速空胴15,ビームをシンクロトロン1
に入射する入射器16及びビームをシンクロトロン1か
ら出射する出射用デフレクター17により構成される。
これらの機器のうち、六極電磁石14,高周波印加装置
11及び出射用デフレクター17は、ビームを出射する
過程でのみ使用する。
【0013】制御装置3は、シンクロトロン1内を周回
中のビームのエネルギーに応じて、電源21から偏向電
磁石12に供給する電流の値を電源21に指示する。電
源21は制御装置3から指示された値の電流を偏向電磁
石12に供給する。偏向電磁石12は電源21より供給
された電流に応じて磁場を発生する。なお、図1では、
電源21から1つの偏向電磁石12にのみ電流が供給さ
れているように示しているが、その他の偏向電磁石12
にも同じ電流が供給される(後述する四極電磁石13及
び六極電磁石14も同様)。入射器16によりシンクロ
トロン1に入射されたビームは、シンクロトロン1内を
周回する過程で偏向電磁石12により軌道が曲げられ
る。
【0014】四極電磁石13には、水平方向にビームを
収束させて垂直方向にビームを発散させるようにビーム
の軌道勾配をかえる四極電磁石と、水平方向にビームを
発散させて垂直方向にビームを収束させるようにビーム
の軌道勾配をかえる四極電磁石とがある。この四極電磁
石13にも偏向電磁石12と同様に電源21から電流が
供給されるが、この電流値は制御装置3がシンクロトロ
ン1内を周回中のビームのエネルギーに応じて指示して
いる。このような四極電磁石13により、ビームはシン
クロトロン1内をベータトロン振動をしながら周回し、
そのベータトロン振動の振動数は、四極電磁石13の励
磁量により制御される。入射と加速の過程でビームを安
定に周回させるには、シンクロトロン1における1周あ
たりのベータトロン振動数(以下、チューンという)を
共鳴が生じない値にしておく必要があり、特に次数の低
い共鳴を起こすチューンから離しておく必要がある。本
実施例では水平方向チューンνxが1.75、垂直方向
チューンνyが1.25になるように四極電磁石13の
励磁量を制御装置3及び電源21により制御する。
【0015】この状態でビームはシンクロトロン1内を
安定に周回するが、その過程で高周波加速空胴15から
ビームに高周波電場が印加されることにより、ビームに
エネルギーが与えられ、ビームは加速される。高周波加
速空胴15から印加される高周波電場の周波数は、周回
するビームの周波数の整数倍(n倍)に設定される。こ
の高周波加速空胴15にも制御装置3により指示された
値の電流が、電源21より供給される。ビームはこの高
周波電場の周波数に同期するように、周回方向にn個の
塊状(バンチ状)になってシンクロトロン1内を周回す
る。
【0016】また、高周波加速空胴15によりビームを
加速していくときには、偏向電磁石12及び四極電磁石
13各々の磁場強度比を一定に保ちつつ磁場強度を増加
させる。そのことにより、偏向電磁石12では、ビーム
のエネルギー増加による遠心力の増加と、偏向電磁石1
2の磁場強度の増加による向心力増加とが釣り合い、エ
ネルギーが増加してもビームは同一軌道上を周回する。
【0017】シンクロトロン1内を周回するビームのエ
ネルギーが、オペレータが制御装置3に入力した目標エ
ネルギーまで増加したら、次にシンクロトロン1からビ
ームを出射する。ビームを出射するまでの手順を図2の
フローチャートに示す。まず、高周波加速空胴15によ
るビームへのエネルギーの付与を停止する(ステップ2
1)。エネルギーの付与を停止することによりビームは
バンチ状から連続状ビームになる。次に電源21により
四極電磁石13を制御して、水平方向チューンνxを
1.676 に設定する(ステップ22)。続いて、六極
電磁石14にビームを共鳴させるための電流を流す(ス
テップ23)。六極電磁石14に流す電流は、シンクロ
トロン1内を周回中のビームのうちベータトロン振動振
幅の大きな粒子が安定限界内に納まる程度の値とし、そ
の値は予め計算により求めておくか、或いは出射の運転
の繰返しを通じて求める。次に、高周波印加装置11に
よりビームに高周波電磁場を印加する(ステップ2
4)。なお、高周波印加装置11については後述する。
高周波電磁場が印加されることによりビームの軌道勾配
が変化し、ビームのベータトロン振動振幅が増加する。
ベータトロン振動振幅が増加して安定限界をこえたビー
ムは、共鳴によりベータトロン振動振幅が急激に増加す
る。ベータトロン振動振幅が増加したビームは出射用デ
フレクター17によりシンクロトロン1から出射される
(ステップ25)。
【0018】図3は、高周波印加装置11,電源22及
び制御装置3を示す。図3において、制御装置3は、出
射するビームのエネルギーE及びビームの出射を開始し
てから終わるまでの時間Tに基づいて、高周波印加装置
11に供給する交流電圧の振幅の2乗平均の平方根V
(以下、電圧振幅Vという)、交流電圧の中心周波数f
c及び周波数幅ΔBWを決定する。電圧振幅V,中心周
波数fc及び周波数幅ΔBWは、エネルギーE及び時間
Tの様々な値に対応づけて制御装置3に記憶しておき、
制御装置3は、オペレータにより入力されるエネルギー
E及び時間Tに基づいて電圧振幅V,中心周波数fc及
び周波数幅ΔBWを決める。なお、電圧振幅Vは、時間
の経過に応じてその値が増加するよう設定されている。
また、電圧振幅Vと高周波電磁場の強度とは比例関係に
ある。
【0019】ここで、制御装置3に記憶される電圧振幅
V,中心周波数fc及び周波数幅ΔBWの値について説
明する。ビームのエネルギーがEの時の周回周波数をfr
sとすると、高周波印加装置11に供給する交流電圧に
は0.66frs から0.70frs 程度の周波数帯域を含む
周波数スペクトルを持たせる。即ち、中心周波数fcを
0.68frs とし周波数幅ΔBWが0.02frs となる周
波数スペクトルを持たせる。高周波印加装置11に供給
する交流電圧にこのような周波数成分を持たせる理由
を、以下に説明する。なお、周回周波数frs は、エネル
ギーEから求められる。
【0020】シンクロトロン1内を周回するビームのう
ち、ベータトロン振動振幅が極めて小さいビ−ムのチュ
ーンは四極電磁石13で設定した1.676 となってい
るが、共鳴発生用の六極電磁石14の作用によって安定
限界近くのベータトロン振動振幅をもったビームのチュ
ーンは1.666 となっている。従って、シンクロトロ
ン1内を周回するビームのチューンは1.666〜1.6
76の間に連続的に分布する。一方、ビームのベータト
ロン振動振幅を増加させるためには、高周波電磁場の周
波数が以下の(数1)或いは(数2)の周波数である必
要がある。
【0021】 f=周回周波数×(整数+チューンの小数部) …(数1) f=周回周波数×(整数−チューンの小数部) …(数2) 本実施例では、上記(数1)において整数=0として高
周波電磁場の周波数を決定している。すなわち、チュー
ンが1.666の ビームに必要とされる高周波電磁場の
周波数fは、f=frs×(0+0.666)=0.666f
rsとなる。また、チューンが1.676 のビームに必要
とされる高周波電磁場の周波数fは、f=frs×(0+
0.676)=0.676frsとなる。前述の通り、本実
施例の高周波印加装置11に供給する交流電圧は0.6
6frsから0.70frs程度の周波数帯域を含む周波数ス
ペクトルを持つので、チューンが0.666〜0.676
のビームのベータトロン振動振幅を増加させるのに必要
な周波数成分を含んでいる。すなわち、シンクロトロン
1内を周回する全てのビームのベータトロン振動振幅を
増加させることができる。なお、高周波印加装置11に
供給される交流電圧の周波数成分は、高周波印加装置1
1が発生する高周波電磁場の周波数成分と等しい。
【0022】また、ベータトロン振動の共鳴に2次共鳴
を用いる場合には、中心周波数fcを0.5frsとし、周
波数幅ΔBWは前述の周波数幅ΔBWと同様に0.02f
rsにすればよい。
【0023】一方、高周波印加装置11に供給する交流
電圧の電圧振幅Vは、シンクロトロン1内を周回するビ
ームの出射を開始してから終わるまでの時間をT、ビー
ムのエネルギーをE、ビームの周回周波数をfrs 、高周
波電磁場の周波数幅をΔBW、高周波印加装置11を構
成する平板電極111及び112の間隔をdとして、
(数3)で表わせることが新たに分かった。
【0024】 V2∝(d2EΔBW)/(Tfrs2) …(数3) (数3)において、間隔dは実測値、エネルギーEはオ
ペレータにより入力された設定値、周波数幅ΔBWは前
述の値、時間Tも設定値、周回周波数frs はエネルギー
Eに基づいて計算した値をそれぞれ用いれば、電圧振幅
Vを求めることができる。この(数3)より、エネルギ
ーEが高いほど、電圧振幅Vを大きくしなければならな
いことがわかる。
【0025】しかしながら、上記(数3)に基づいて求
めた電圧振幅Vの交流電圧を高周波印加装置11に供給
し続けても、シンクロトロン1から単位時間に出射され
る粒子数(以下、ビームの出射量という)は時間の経過
とともに減少する。すなわち、(数3)は、安定限界内
に十分な数の粒子が存在することを前提に求められた数
式であり、時間の経過とともに安定限界内の粒子数が減
少すると、シンクロトロン1からのビームの出射量も減
少する。そこで本実施例では、時間の経過とともに電圧
振幅Vを増加させる。つまり、ビームの出射量は安定限
界内にある粒子数とビームのベータトロン振動が安定限
界をこえる速さの積に比例するから、時間の経過ととも
に安定限界内にある粒子数が減っても、ビームに加える
高周波電磁場の強度(電圧振幅V)を増加していくこと
でビームのベータトロン振動が安定限界をこえる速さを
速くし、単位時間当たりに出射される粒子数を一定に保
つことができる。なお、この電圧振幅Vを増加させるパ
ターンは、予め計算によって求めておく。
【0026】このようにして求められた電圧振幅Vのパ
ターンは、間隔d,エネルギーE,周波数幅ΔBW,時
間T及び周回周波数frs の様々な値に対応づけて制御装
置3に複数記憶される。
【0027】制御装置3は、決定した電圧振幅Vを増幅
器224へ、中心周波数fcを発振器221へ、そして
周波数幅ΔBWを発振器222へそれぞれ出力する。発
振器221は入力された中心周波数fcと等しい周波数
の交流電圧(正弦波)を乗算器223に出力する。一
方、発振器222は、入力された周波数幅ΔBWに基づ
いて、0〜±ΔBWの周波数成分を有する交流電圧を乗
算器223に出力する。乗算器223は、入力された2
つの交流電圧を乗算し、その結果を増幅器224に出力す
る。この出力電圧は、fc−ΔBW〜fc+ΔBWの周
波数成分を有する交流電圧となる。増幅器224は、乗
算器223から入力された交流電圧の振幅が、制御装置
3から入力される電圧振幅Vのパターンと等しくなるよ
うに、交流電圧を増幅していき、その交流電圧を高周波
印加装置11の平板電極111及び112に出力する。
なおこの交流電圧は、平板電極111及び112に対し
逆位相で供給される。
【0028】平板電極111,112は、供給された交
流電圧に応じて高周波電磁場を発生し、シンクロトロン
1内を周回するビームに印加する。平板電極111及び
112により発生される電場及び磁場の向きは、それぞれ
図3に示す方向となる。なお、電場及び磁場の強度は、
交流電圧の振幅の増加に伴って強くなっていく。
【0029】以上説明したように、ビームのエネルギー
Eに基づいて平板電極111,112に印加する交流電
圧の周波数成分を決めることにより、ビームのエネルギ
ーが変わっても、シンクロトロン1内を周回する全ての
ビームを効率よく出射することができる。また、ビーム
のエネルギーE及びビームの出射にかける時間Tに基づ
いて交流電圧の電圧振幅Vのパターンを決めることによ
って、ビームのエネルギーEが変わっても、時間Tの間
にシンクロトロン1内のビームを全て出射でき、つまり
ビームのエネルギーEが変わっても、ビームの出射量を
一定にすることができる。すなわち、図7に示すよう
に、ビームのエネルギーEによらず、シンクロトロン1
内を周回するビームを同じ時間Tで出射することができ
る。図7において、T1=T2である。よって、シンク
ロトロン1から出射するビームのエネルギーによらず、
シンクロトロンの運転サイクルのうちビームを出射する
期間の長さTを一定にすることができ、シンクロトロン
の制御が簡単になるなお、以上説明した本実施例では、
交流電圧の周波数成分を2つの発振器221,222と
乗算器223により得たが、広い周波数成分からフィル
タで必要周波数成分を選ぶ方法や、多周波数成分を同時
に加える方法、ほかには、単一周波数を時間的に変化さ
せる方法等を用いても良い。
【0030】(実施例2)図4は、実施例1の加速器シ
ステムを用いて、がん患者の治療を行う治療システムを
示す。以下、本実施例について、実施例1の加速器シス
テムに新たに付加した構成を中心に説明する。
【0031】図4において、回転照射装置5は、シンク
ロトロン1から出射されたビームを入射する。回転照射
装置5に入射されたビームは、偏向電磁石51,52,
四極電磁石53により軌道が調節され、走査電磁石5
4,55に導かれる。なお、偏向電磁石51,52,四
極電磁石53には、制御装置3からの指示に従って電源
57から電流が供給される。
【0032】走査電磁石54,55には、電源58から
位相が90度ずれた正弦波の電流がそれぞれ供給され
る。そのため走査電磁石54,55に導かれたビームは
がん患者の患部位置において円形に走査されて照射され
る。線量モニタ56は、ビームの照射線量を測定し、測
定結果を制御装置3に出力する。線量モニタ56の出力
は、制御装置3において予め設定された目標照射線量と
比較され、ビームの照射線量が目標照射線量に達したか
否かの判定に用いられる。
【0033】また、本実施例の治療システムは、回転照
射装置5に電流モニタ59を備えている。電流モニタ5
9はシンクロトロン1から出射されたビームの電流を測
定し、電流測定値を電源22に出力する。図5に示すよ
うに、電流モニタ59の出力である電流測定値は、電源
22において比較器225に入力される。比較器225に
は予めオペレータにより設定された電流目標値も入力さ
れ、電流測定値と比較される。比較の結果、電流目標値
の方が大きかった場合には増幅器224による増幅度を
上げ、電流目標値の方が小さかった場合には増幅器22
4の増幅度を下げるように増幅器224を制御する。
【0034】本実施例のように、患部位置でビームを円
形に走査して照射する照射方法に、実施例1で説明した
シンクロトロン1が出射するビームを用いることによ
り、走査電磁石54,55によるビームの走査速度をビ
ームのエネルギーによらず一定にすることができる。す
なわち、従来のシンクロトロンでは、前述したように出
射するビームのエネルギーによってビームの出射量が異
なっていたため、ビームのエネルギーが低くてビームの
出射量が多い場合には、その分走査電磁石によるビーム
の走査速度を早くしなければならなかった。しかしなが
ら、本実施例のシンクロトロン1は、ビームのエネルギ
ーによらずビームの出射量が一定であるため、走査電磁
石54,55による走査速度を変化させる必要がなく、
従って、走査電磁石54,55に供給する電流も変えな
くて良い。よって、簡単な制御で患部にビームを照射す
ることができる。
【0035】なお、本実施例ではビームを円形に走査す
る場合について説明したが、円形に走査する場合に限ら
ず、ビームを走査するものであればどのような方法に対
しても同様の効果を生じる。
【0036】(実施例3)本実施例の治療システムにつ
いて、実施例2と異なる点を説明する。本実施例では、
図6に示すように、ビームを患部に照射する際に患部を
ビームの進行方向に複数の層状の領域L1〜L9(以
下、層L1〜L9と呼ぶ)に分け、更にその層L1〜L
9を複数の領域A11,A12…に分けて、その領域毎
にビームを照射する。なお、本治療システムの装置構成
は、実施例2の治療システムと同様である。
【0037】本実施例において、各層にビームを照射す
る場合には、その層の位置にブラッグピークが来るよう
なエネルギーのビームを照射する。従って、層L9から
層L1へと層の位置が浅くなるにつれて、照射されるビ
ームのエネルギーは低くなる。このようにビームを照射
する層によってビームのエネルギーを変更する場合で
も、本実施例によればビームの出射量を一定にできる。
【0038】各層において、ビームを照射する領域A1
1,A12…を変更する場合には、高周波印加装置11
からビームに印加する高周波電磁場の強度を低下させ
て、シンクロトロン1から出射されるビームの量を例え
ば1/10に減少させる。そうすることにより、ビーム
を照射する領域を変更しているときに照射される照射線
量を減少させることができ、余分な照射を低減できる。
【0039】また、ビームを照射する領域を変更する場
合に、ビームに対する高周波電磁場の印加を停止して、
シンクロトロン1からのビームの出射を停止すれば、照
射領域を変更する際の余分な照射をなくすことができ
る。
【0040】本実施例のように、照射領域を変更する際
にビームの出射量を低下させる、或いはビームの出射を
停止させる場合に、ビームのエネルギーによらずビーム
の出射量が一定ならば、ビームの照射線量をより正確に
制御可能である。すなわち、出射量を低下、或いは出射
を停止するのにも、ある一定の時間が必要であり、その
間にも多少はビームが照射される。従来のシンクロトロ
ンのように、ビームのエネルギーによってビームの出射
量が異なると、出射量を低下、或いは出射を停止させる
間に照射されるビームの量がエネルギーによって異なっ
てしまうため、その点も考慮してビームの照射を行わな
ければならない。しかし、本実施例によれば、ビームの
エネルギーによらずビームの出射量を一定にできるた
め、出射量を低下、或いは出射を停止する間に照射され
るビームの量もエネルギーによらず一定となり、その値
も予め求めることが可能なので、照射線量を正確に制御
できる。
【0041】以上説明した各実施例では、ビームの出射
を開始してから終了するまでの時間Tは、0.5 秒程度
とする。ただし、呼吸に同期して移動する肺や肝臓を治
療する場合には、呼吸の静止期にのみビームを出射する
必要があるので、時間Tは、0.2 秒程度に設定するの
が望ましい。本実施例では、このような時間の設定も容
易に行うことができる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
簡単な制御で荷電粒子ビームを出射することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例である加速器システム
の構成図である。
【図2】荷電粒子ビームを出射するまでの手順を示すフ
ローチャートである。
【図3】図1の高周波印加装置11及び電源22の構成
図である。
【図4】本発明の他の実施例である治療システムの構成
図である。
【図5】図4の高周波印加装置11及び電源22の構成
図である。
【図6】本発明の他の実施例である治療システムにおけ
る、患部への荷電粒子ビームの照射方法を示す図であ
る。
【図7】本発明によるシンクロトロンの運転サイクルを
示す図である。
【図8】従来のシンクロトロンの運転サイクルを示す図
である。
【符号の説明】
1…シンクロトロン、3…制御装置、4…前段加速器、
11…高周波印加装置、12…偏向電磁石、13…四極
電磁石、14…六極電磁石、15…高周波加速空胴、1
6…入射器、17…出射用デフレクター、21,22…
電源。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加速器内を周回する荷電粒子ビームに高周
    波電磁場を印加することにより、加速器から荷電粒子ビ
    ームを出射する荷電粒子ビーム出射方法において、 加速器から出射する荷電粒子ビームのエネルギーに基づ
    いて、前記高周波電磁場の強度を設定することを特徴と
    する荷電粒子ビーム出射方法。
  2. 【請求項2】前記高周波電磁場の強度は、前記エネルギ
    ーが高いほど強くすることを特徴とする請求項1記載の
    荷電粒子ビーム出射方法。
  3. 【請求項3】前記高周波電磁場の強度は、荷電粒子ビー
    ムの出射を開始してから終了するまでの間、徐々に増加
    することを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビーム出
    射方法。
  4. 【請求項4】加速器から出射された荷電粒子ビームを患
    部に照射する際に、荷電粒子ビームを患部位置において
    走査する荷電粒子ビーム照射方法であって、 前記加速器からの荷電粒子ビームの出射を、請求項1乃
    至3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム出射方法により
    行うことを特徴とする荷電粒子ビーム照射方法。
  5. 【請求項5】加速器から出射された荷電粒子ビームを患
    部に照射する際に、前記患部を複数の領域に分けてその
    領域毎に荷電粒子ビームを照射し、かつ荷電粒子ビーム
    を照射する領域を変更するときに荷電粒子ビームの照射
    を停止する荷電粒子ビーム照射方法であって、 前記加速器からの荷電粒子ビームの出射を、請求項1乃
    至3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム出射方法により
    行うことを特徴とする荷電粒子ビーム照射方法。
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