JP2000106843A - カロチノイド系色素含有材料の退色防止剤及び退色防止方法 - Google Patents

カロチノイド系色素含有材料の退色防止剤及び退色防止方法

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JP2000106843A
JP2000106843A JP10281329A JP28132998A JP2000106843A JP 2000106843 A JP2000106843 A JP 2000106843A JP 10281329 A JP10281329 A JP 10281329A JP 28132998 A JP28132998 A JP 28132998A JP 2000106843 A JP2000106843 A JP 2000106843A
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carotenoid
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Shunsuke Horiike
俊介 堀池
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QP Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カロチノイド系色素を含有する食品、医薬
品、化粧品、飼料、着色剤等のカロチノイド系色素含有
材料の退色を効果的に防止する。 【解決手段】 カロチノイド系色素含有材料の退色防止
剤は、脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤とを有効
成分として含有する。水溶性抗酸化剤としては、アスコ
ルビン酸もしくはその塩、エリソルビン酸もしくはその
塩、没食子酸、コーヒー酸、エチレンジアミン四酢酸も
しくはその塩又はポリフェノール類を好ましく使用する
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カロチノイド系色
素を含有する材料、例えば食品、医薬品、化粧品、飼
料、着色剤等のための退色防止剤、カロチノイド系色素
を含有する抗退色性着色剤、カロチノイド系色素含有食
品及びその退色防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】カロチノイド系色素は、動植物界に広く
分布する黄色乃至赤色の色素であり、ニンジン、トマ
ト、柑橘類、鮭、エビ、カニ、卵等、多くの食材に含有
されており、従ってこれらの食材を原料とする食品にも
カロチノイド系色素が含有されていることとなる。ま
た、種々の動植物から抽出されたカロチノイド系色素
は、安全性も高いために、粘稠液体、ペーストもしくは
粉末の形態で、種々の食品の着色剤として広く用いられ
ている。
【0003】しかしながら、カロチノイド系色素は、そ
の分子中に長い共役系を有するために、酸素や熱等に対
する耐性、特に光に対する耐性が著しく低いという欠点
がある。そのためカロチノイド系色素を含有する着色剤
や食品は、特に光の影響により経時的に退色を起こし易
いという問題がある。ひとたび退色した着色剤や食品
は、商品価値が著しく低下する。
【0004】このため、従来よりカロチノイド系色素の
退色を防止するために、種々の試みが提案されている。
代表的には、カロチノイド類の乳化液にカロチノイド類
の安定化剤としてアスコルビン酸又はその塩を添加する
こと(特公昭37−8532号公報)や、カロチノイド
色素を含有する水性液に水易溶性フラボノール配糖体と
水溶性抗酸化剤とを添加すること(特開平2−1350
70号公報)、あるいは2つ以上のカルボキシル基を有
する有機酸やグリシンをカロチノイド色素含有物に添加
すること(特開平6−264055号公報)等が提案さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、カロチ
ノイド系色素の退色を防止するためのこれら従来の試み
は、いずれも退色を十分に防止するまでには至っていな
いという問題があった。中でも、アスコルビン酸を使用
した場合には、逆に退色を促進してしまう場合もあっ
た。
【0006】このため、カロチノイド系色素を含有する
食品の場合、賞味期限を短く設定したり、光の影響を除
くために遮光性の包装や容器に食品を入れることが行わ
れている。賞味期限を短く設定すると、衛生学的及び栄
養学的には問題がない食品であっても廃棄処分せざるを
得ない場合が生ずる。また、遮光性の包装や容器を使用
すると、包装まで含めた食品の製造コストが増大すると
いう問題があった。
【0007】本発明は、以上の従来の技術の課題を解決
しようとするものであり、カロチノイド系色素を含有す
る食品、医薬品、化粧品、飼料、着色剤等のカロチノイ
ド系色素含有材料の退色を効果的に防止することを目的
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、詳細な理由
は不明であるが、カロチノイド系色素含有材料に脱脂卵
黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤とを添加することによ
り上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成
させるに至った。
【0009】即ち、本発明は、脱脂卵黄の加水分解物と
水溶性抗酸化剤とを有効成分として含有することを特徴
とする、カロチノイド系色素含有材料の退色防止剤を提
供する。
【0010】また、本発明は、上述のカロチノイド系色
素含有材料の退色防止剤と、カロチノイド系色素とを含
有することを特徴とする抗退色性着色剤を提供する。
【0011】更に、本発明は、カロチノイド系色素含有
材料中のカロチノイド系色素の退色を防止するために、
上述のカロチノイド系色素含有材料の退色防止剤を含有
することを特徴とするカロチノイド系色素含有材料を提
供する。
【0012】また、本発明は、カロチノイド系色素含有
材料に、上述のカロチノイド系色素含有材料の退色防止
剤を添加することを特徴とするカロチノイド系色素含有
材料の退色防止方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】先ず、本発明のカロチノイド系色
素含有材料の退色防止剤について説明する。
【0014】本発明のカロチノイド系色素含有材料の退
色防止剤は、有効成分として脱脂卵黄の加水分解物と水
溶性抗酸化剤とを含有する。
【0015】ここで、退色防止の対象となるカロチノイ
ド系色素含有材料には、カロチノイド系色素を含有する
食品(例えば、ニンジン、パプリカ、カボチャ等のカロ
チノイド系色素を含有した食材を含有した加工食品、ジ
ュース等の飲料類、ゼリー等の菓子類、ソーセージ等の
肉加工品、蒲鉾等の魚肉練製品、ドレッシング、ケチャ
ップ等の調味料類、スープ類等);医薬品(例えば、錠
剤の糖衣部分、着色顆粒剤、栄養ドリンク剤等);化粧
品(例えば、ファンデーション、クリーム、リップステ
ィック、シャンプー、リンス等);粘稠液体状、ペース
ト状あるいは粉末状のカロチノイド系色素含有着色剤等
が含まれる。
【0016】また、カロチノイド系色素としては、α−
カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、カプサンチ
ン、カプソルビン、アスタキサンチン、カンタキサンチ
ン、ゼアキサンチン、ロドキサンチン、リコピン、クリ
プトキサンチン、クロセチン、クロシン、ビキシン、ノ
ルビキシン等の化合物、ニンジン、パプリカ、クチナ
シ、アナトー等のカロチノイド系色素を含有する動植物
の溶剤(水、アルコール、アセトン、ヘキサン等)によ
る抽出物(例えば、ニンジンカロチン色素、パプリカ色
素、クチナシ黄色素、アナトー色素等)もしくはその濃
縮物又は精製品等を挙げることができる。
【0017】本発明において使用する「脱脂卵黄の加水
分解物」は、卵黄脂質が除去された卵黄(即ち、脱脂卵
黄)を、酸加水分解法、アルカリ加水分解法、酵素加水
分解法等から選択される加水分解法の一種単独で又は二
種以上の方法を組み合わせて加水分解して得られた結果
物である。
【0018】これらの加水分解法により得られる加水分
解物の中でも、平均分子量が200〜1000の脱脂卵
黄の加水分解物は、水溶性抗酸化剤との併用の相乗効果
が特に高く、カロチノイド系色素の著しい退色防止効果
を示す。ここで、平均分子量は、セミミクロケルダール
法による全窒素の含量をA重量%とし、ホルモール滴定
法によるアミノ態窒素の含量をB重量%とし、そしてア
ミノ酸分析により得られた構成アミノ酸の数平均分子量
をCとしたとき、以下の式(1)に基づいて算出される
値である。
【0019】
【数1】 平均分子量=(A×C)/B (1)
【0020】なお、酸加水分解法、アルカリ加水分解
法、酵素加水分解方法等の中でも、得られる加水分解物
の風味が良好となる点で、酸加水分解法を単独であるい
は酸加水分解法と他の加水分解法と併用することが好ま
しい。
【0021】ここで、脱脂卵黄としては、通常、鳥卵
(代表的に鶏卵)を割卵して得られる卵黄液を一旦乾燥
して乾燥卵黄とし、その乾燥卵黄を卵黄脂質抽出溶媒
(例えば含水エタノール(90〜99容量%))で処理
することにより乾燥卵黄から抽出溶媒に可溶な卵黄脂質
(主に、トリグリセリド、コレステロール及びリン脂質
等)を抽出し、そして得られた抽出処理液から濾過によ
り卵黄脂質を含有する抽出溶媒を濾過除去し、得られた
濾過残渣を乾燥させたものを使用することが好ましい。
【0022】なお、脱脂卵黄を調製する際に、卵黄液を
一旦乾燥させずに卵黄液を卵黄脂質抽出溶媒で直接処理
してもよい。この場合には、脱脂卵黄と抽出溶媒とをデ
カンテーションにより分離すればよい。また、このよう
にして得られた脱脂卵黄は、そのまま加水分解処理して
もよく、常法により乾燥して乾燥脱脂卵黄とした後に加
水分解処理してもよい。
【0023】以下に、脱脂卵黄の加水分解物の代表的な
調製方法を1)〜3)の工程に分けて具体的に説明す
る。
【0024】1) 乾燥卵黄の調製 まず、卵黄液を乾燥する。即ち、鳥卵(例えば、鶏卵)
を割卵し、卵白液から分離した卵黄液を、噴霧乾燥法
(スプレードライ法)や凍結乾燥法(フリーズドライ
法)等により乾燥し、乾燥卵黄を得る。
【0025】2)脱脂卵黄の調製 乾燥卵黄1重量部に、含水エタノール(90〜99容量
%)5〜20重量部を作用させ、エタノールに可溶な卵
黄脂質(主に、トリグリセリド、コレステロール及びリ
ン脂質)を抽出し、フィルタープレス、圧搾濾過等の濾
過法により卵黄脂質を含有したエタノール画分を除去
し、必要に応じ、濾過残渣にエタノールを更に作用させ
て残存する卵黄脂質を抽出し、濾過した後、濾過残渣か
ら水分やエタノールを蒸発除去して乾燥させ、脱脂卵黄
を得る。
【0026】3) 脱脂卵黄の加水分解 脱脂卵黄を、酸加水分解法、アルカリ加水分解法、酵素
加水分解法等から選択された加水分解法の一種単独で又
は二種以上の方法を組み合わせて加水分解し、脱脂卵黄
の加水分解物を得る。ここで、これらの加水分解法の一
例を具体的に説明する。
【0027】(酸加水分解法)乾燥脱脂卵黄1重量部に
対し、5〜40重量部の0.5〜6N(規定度)の塩酸
あるいは0.5〜15N(規定度)の硫酸を添加し、例
えば常圧下、50〜100℃で30分〜24時間加水分
解処理し、中和後、濾過し、必要に応じて更に脱塩する
ことにより、脱脂卵黄の加水分解物の水溶液を得る。
【0028】(アルカリ加水分解法)乾燥脱脂卵黄1重
量部に対し、5〜40重量部の0.5〜3N(規定度)
の水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムを添加し、
例えば常圧下、40〜100℃で30分〜8時間加水分
解処理し、中和後、濾過し、必要に応じて更に脱塩する
ことにより、脱脂卵黄の加水分解物の水溶液を得る。
【0029】(酵素加水分解法)乾燥脱脂卵黄1重量部
に対し、10〜40重量部の水を加え、蛋白質分解酵素
(例えばパパイン、パンクレアチン等)を乾燥脱脂卵黄
に対し0.5〜20重量%となるように添加し、酵素の
至適pH及び温度で5〜40時間加水分解処理し、次に
加熱して酵素を失活させた後、濾過することにより脱脂
卵黄の加水分解物の水溶液を得る。
【0030】(酸加水分解法と酵素加水分解法との併
用)乾燥脱脂卵黄1重量部に対し、5〜40重量部の
0.5〜6N(規定度)の塩酸あるいは0.5〜15N
(規定度)の硫酸を添加し、例えば常圧下で50〜10
0℃で30分〜24時間処理し、次に、蛋白質分解酵素
の至適pHに調整後、蛋白質分解酵素(例えば、パパイ
ン、パンクレアチン等)を乾燥脱脂卵黄に対し0.1〜
20重量%となるように添加し、酵素の至適温度で5〜
40時間処理し、その後加熱により酵素を失活させ、濾
過し、必要に応じて更に脱塩することにより脱脂卵黄の
加水分解物の水溶液を得る。
【0031】なお、上述の各種の加水分解法により得ら
れる脱脂卵黄の加水分解物は、水溶液の状態であり、そ
の状態でも使用することができるが、所望により凍結乾
燥法あるいは噴霧乾燥法により乾燥し、必要に応じて粉
末化し、そのような乾物状態あるいは粉末状態で使用す
ることもできる。
【0032】また、本発明で使用する水溶性抗酸化剤と
しては、水に可溶で還元性を示す物質であれば特に限定
されないが、好ましくは、アスコルビン酸もしくはその
塩、エリソルビン酸もしくはその塩、没食子酸、コーヒ
ー酸、エチレンジアミン四酢酸もしくはその塩、ポリフ
ェノール類等を挙げることができる。
【0033】本発明の退色防止剤中における脱脂卵黄の
加水分解物と水溶性抗酸化剤との配合割合は、水溶性抗
酸化剤の配合割合が相対的に少なすぎても多すぎても十
分な退色防止効果が得られないので、脱脂卵黄の加水分
解物1重量部(乾物換算)に対し、水溶性抗酸化剤を好
ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.1
〜10重量部の割合である。
【0034】本発明のカロチノイド系色素含有材料の退
色防止剤は、更に、必要に応じて他の添加剤、賦形剤、
水や低級アルコール等の溶剤等を含有することができ
る。
【0035】本発明のカロチノイド系色素含有材料の退
色防止剤は、脱脂卵黄の加水分解物と、水溶性抗酸化剤
と、必要に応じて他の添加成分とを常法に従って混合す
ることにより、溶液状態、乳化状態、ペースト状態ある
いは粉末状態の退色防止剤として製造することができ
る。
【0036】本発明のカロチノイド系色素含有材料の退
色防止剤の使用方法(即ち、カロチノイド系色素含有材
料の退色防止方法)としては、カロチノイド系色素含有
材料と退色防止剤とを共存させればよく、共存させる方
法としては特に限定されず、例えば、溶液状態、乳化状
態、ペースト状態あるいは粉末状態の本発明の退色防止
剤を、カロチノイド系色素含有材料及び必要に応じて添
加される各種添加剤(例えば、トコフェロール類等)や
賦形剤等と共に常法により均一に混合すればよい。ま
た、カロチノイド系色素含有材料に、予め脱脂卵黄の加
水分解物と水溶性抗酸化剤とを混合して得られる均一な
退色防止剤を添加するのではなく、カロチノイド系色素
含有材料に、脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤と
を別々に添加してもよい。
【0037】この場合、退色防止剤のカロチノイド系色
素含有材料に対する添加量は、少なすぎると十分な退色
防止効果が得られず、また過度に添加しても退色防止効
果の飛躍的向上が望めず、しかも経済的ではない。従っ
て、カロチノイド系色素含有材料中のカロチノイド系色
素1重量部に対し、退色防止剤中の脱脂卵黄の加水分解
物と水溶性抗酸化剤との合計量が好ましくは0.1〜5
000重量部となるように添加する。
【0038】次に、本発明の抗退色性着色剤について説
明する。
【0039】本発明の抗退色性着色剤は、脱脂卵黄の加
水分解物、水溶性抗酸化剤及びカロチノイド系色素を含
有する。脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤とを着
色剤に含有させることにより、含有されているカロチノ
イド系色素の退色を防止して着色剤に抗退色性を賦与す
ることができる。
【0040】なお、本発明の抗退色性着色剤で使用する
脱脂卵黄の加水分解物、水溶性抗酸化剤及びカロチノイ
ド系色素は、本発明の退色防止剤で説明したものと同様
のものを使用することができる。
【0041】この抗退色性着色剤には、必要に応じて他
の添加剤や賦形剤等を添加することができる。
【0042】抗退色性着色剤中における脱脂卵黄の加水
分解物と水溶性抗酸化剤との配合割合は、水溶性抗酸化
剤の配合割合が相対的に少なすぎても多すぎても十分な
退色防止効果が得られないので、脱脂卵黄の加水分解物
1重量部(乾物換算)に対し、水溶性抗酸化剤を好まし
くは0.01〜50重量部、より好ましくは0.1〜1
0重量部の割合である。
【0043】また、抗退色性着色剤中におけるカロチノ
イド系色素に対する脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸
化剤との合計の配合割合は、それらの合計量が相対的に
少なすぎても十分な退色防止効果が得られず、過度に添
加しても退色防止効果の飛躍的向上が望めず、しかも経
済的ではない。従って、カロチノイド系色素1重量部に
対し、脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤との合計
量が好ましくは0.1〜5000重量部、より好ましく
は1〜2000重量部の割合である。
【0044】本発明の抗退色性着色剤は、脱脂卵黄の加
水分解物と水溶性抗酸化剤とカロチノイド系色素と、更
に必要に応じて添加される他の添加剤や賦形剤等を常法
により均一に混合することにより製造することができ
る。
【0045】本発明の抗退色性着色剤は、着色すべき種
々の食品や医薬品等の製造時の配合成分の一つとして好
ましく使用することができる。
【0046】次に、本発明のカロチノイド系色素含有材
料について説明する。
【0047】本発明のカロチノイド系色素含有材料は、
その中に含有されているカロチノイド系色素の退色を防
止するために、脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤
とを含有することを特徴とする。脱脂卵黄の加水分解物
と水溶性抗酸化剤とをカロチノイド系色素含有材料に含
有させることにより、含有されているカロチノイド系色
素の退色を防止して、カロチノイド系色素含有材料に優
れた抗退色性を賦与することができる。従って、本発明
のカロチノイド系色素含有材料が食品の場合、退色が原
因で短い賞味期限を設定されていたものであっても、賞
味期限を延長することが可能となる。
【0048】なお、本発明のカロチノイド系色素含有材
料は、前述したように、種々の食品や医薬品等を対象と
することができる。また、脱脂卵黄の加水分解物及び水
溶性抗酸化剤は、本発明の退色防止剤で説明したものと
同様のものを使用することができる。
【0049】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。
【0050】実施例1及び比較例1 (脱脂卵黄の調製)鶏卵を割卵し、卵白液から分離した
卵黄液10kgを噴霧乾燥して水分を除去することによ
り乾燥卵黄4.8kgを得た。
【0051】この乾燥卵黄4kgに、95容量%エタノ
ール20リットルを加え、30℃で30分間撹拌し、そ
の後に濾過により卵黄脂質を含有したエタノール画分を
除去した。更に、濾過残渣を95容量%エタノール2リ
ットルで洗浄し、濾過残渣中の卵黄脂質を除去した。得
られた濾過残渣から減圧下50℃でエタノールを除去す
ることにより、脱脂卵黄1.7kgを得た。この脱脂卵
黄には、卵黄脂質が約15%しか含まれていなかった。
【0052】(脱脂卵黄の加水分解物の調製)脱脂卵黄
1kgに1.5N(規定度)塩酸溶液10リットル添加
し、90℃で3時間加水分解処理した。次に、4N(規
定度)水酸化ナトリウム水溶液で中和後、濾過し、電気
透析で脱塩し、得られた水溶液を噴霧乾燥して、脱脂卵
黄の加水分解物(平均分子量約500)を得た。この加
水分解物の風味は良好なものであった。
【0053】(ゼリー菓子(退色が防止されたカロチノ
イド系色素含有材料)の製造)次に、得られた粉末状の
脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤としてアスコル
ビン酸ナトリウムとを含む表1に示す配合成分を混合し
加熱溶解し、その一部を分光光度計用ディスポセルに充
填し、冷却することにより、カロチノイド系色素として
クチナシ黄色素を含有するゼリー菓子を製造した。これ
を25℃で蛍光灯照射下(600ルクス)で4日間保存
し、保存前と保存後との442nm吸光度を測定するこ
とにより色素残存率を評価した(実施例1)。また、表
1に示すように、脱脂卵黄の加水分解物を含有しない以
外は実施例1と同様にしてゼリー菓子を製造し、同様に
色素残存率を評価した(比較例1)。得られた結果をそ
れぞれ表1に示す。
【0054】表1からわかるように、脱脂卵黄の加水分
解物と水溶性抗酸化剤とを含有する実施例1の場合には
色素残存率が74%であったが、脱脂卵黄の加水分解物
を含有しない比較例1の場合には38%であった。
【0055】
【表1】 成分 実施例1 比較例1 (重量%) (重量%) 砂糖 5 5 果糖ブドウ糖液糖(75%) 25 25 ゲル化剤*1 1 1 クエン酸 0.2 0.2 クチナシ黄色素*2 0.1 0.1 脱脂卵黄の加水分解物 0.2 − アスコルビン酸ナトリウム 0.05 0.05 香料 適量 適量 清水 バランス バランス 合計 100 100 (評価) 色素残存率(%) 74 38 表1注 *1: ゲルメイト NB、大日本製薬(株)製 *2: サンエローNo.3(クチナシ黄色素約75重量%含有製剤)、三栄源 エフ・エフ・アイ(株)製
【0056】実施例2及び比較例2 実施例1と同様に調製した脱脂卵黄1kgに、水20リ
ットルを加え、1N(規定度)塩酸でpH7に調整した
後、蛋白質分解酵素(アクチナーザAS、科研製薬
(株)製)100gを添加し、50℃で6時間加水分解
処理した後、更に、別の蛋白質分解酵素(パンクレアチ
ンF、天野製薬(株)製)20gを添加し、40℃で6
時間加水分解処理した。次に、この酵素処理液を90℃
で30分間加熱処理して酵素を失活させ、濾過後に凍結
乾燥して脱脂卵黄の加水分解物(平均分子量約600)
を得た。この脱脂卵黄の加水分解物は、実施例1で得ら
れた脱脂卵黄の加水分解物に比べ、若干苦みを呈してい
た。
【0057】次に、得られた粉末状の脱脂卵黄の加水分
解物0.5kgとエリソルビン酸0.25kgとを清水
10kgに溶解させ、得られた溶液を噴霧乾燥すること
により粉末状の退色防止剤を得た。
【0058】得られた退色防止剤を含む表2の配合の飲
料を製造し、透明ガラス瓶に充填し、密封し、これを2
5℃で蛍光灯照射下(600ルクス)で1ヶ月間保存
し、保存前と保存後との450nm吸光度を測定するこ
とにより色素残存率を評価した(実施例2)。また、表
2に示すように、退色防止剤を配合させず、エリソルビ
ン酸を配合すること以外は実施例2と同様にして飲料を
製造し、同様に色素残存率を評価した(比較例2)。得
られた結果をそれぞれ表2に示す。
【0059】表2からわかるように、脱脂卵黄の加水分
解物と水溶性抗酸化剤とを構成成分とする退色防止剤を
含有する実施例2の場合には色素残存率が94%であっ
たが、脱脂卵黄の加水分解物を含有しない比較例2の場
合には79%であった。
【0060】
【表2】 成分 実施例2 比較例2 (重量%) (重量%) 砂糖 15 15 クエン酸 1 1 クエン酸ナトリウム 0.3 0.3 ニンジンカロチン色素*3 0.1 0.1 エリソルビン酸 − 0.05 退色防止剤 0.15 − 香料 適量 適量 清水 バランス バランス 合計 100 100 (評価) 色素残存率(%) 94 79 表2注 *3: キャロットベースNB(ニンジンカロチン色素約1.6重量%含有製剤 )、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製
【0061】実施例3及び比較例3 実施例1と同様にして得られた粉末状の脱脂卵黄の加水
分解物1.5kgとコーヒー酸0.5kgとニンジンカ
ロチン色素(*3)1kgとを清水10kgに溶解さ
せ、得られた溶液を噴霧乾燥することにより、粉末状の
着色剤1を得た。また、粉末状の脱脂卵黄の加水分解物
を配合しないこと以外は、同様の操作で着色剤2を得
た。
【0062】得られたそれぞれの着色剤を含む表3の配
合の実施例3及び比較例3の飲料を製造し、実施例2及
び比較例2と同様に色素残存率を評価した。その結果を
表3に示す。
【0063】表3からわかるように、脱脂卵黄の加水分
解物と水溶性抗酸化剤とを構成成分とする着色剤1を含
有する実施例3の飲料の場合には色素残存率が92%で
あったが、脱脂卵黄の加水分解物を構成成分としない着
色剤2を含有する比較例3の飲料の場合には67%であ
った。
【0064】
【表3】 成分 実施例3 比較例3 (重量%) (重量%) 砂糖 15 15 クエン酸 1 1 クエン酸ナトリウム 0.3 0.3 着色剤1 0.3 − 着色剤2 − 0.15 香料 適量 適量 清水 バランス バランス 合計 100 100 (評価) 色素残存率(%) 92 67
【0065】実施例4 本実施例は、脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤と
してアスコルビン酸とからなる退色防止剤のクチナシ黄
色素に対する退色防止効果について、表4に示すよう
に、脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤のそれぞれ
の単独の退色防止効果と比較した結果を示す例である。
【0066】即ち、0.05M(モル濃度)酢酸緩衝液
(pH4)に、クチナシ黄色素(サンエローNo.3、
三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.1重量%と表4
に示した割合で脱脂卵黄の加水分解物(実施例1で調製
したものと同じ酸加水分解物)及び/又はアスコルビン
酸を添加し、得られた試料2〜7を透明なサンプル瓶に
充填し、これを25℃で蛍光灯照射下(700ルクス)
で保存した。
【0067】なお、脱脂卵黄の加水分解物もアスコルビ
ン酸も添加せずに0.05M(モル濃度)酢酸緩衝液
(pH4)にクチナシ黄色素だけを添加し、暗所、4℃
で保存したものを試料1とした。
【0068】各試料について、クチナシ黄色素の可視部
極大吸収波長である440nmの吸光度を、クチナシ黄
色素を添加せずに同様に調製し、保存したものをブラン
クとして測定し、保存前に対する保存後の吸光度の百分
率により、色素残存率を求めた。得られた結果を表4に
示す。
【0069】
【表4】 試料 1 2 3 4 5 6 7 保存温度(℃) 4 25 25 25 25 25 25 脱脂卵黄の加水分解物(重量%) 0 0 0.2 1.0 0 0.2 1.0アスコルヒ゛ン 酸(重量%) 0 0 0 0 0.05 0.05 0.05 (色素残存率) 保存前 100 100 100 100 100 100 100 3日後 87 50 33 27 28 86 89 6日後 80 31 15 11 18 78 80 13日後 68 17 7 5 0 68 66 20日後 59 6 3 3 0 49 43
【0070】表4からわかるように、退色防止のために
アスコルビン酸あるいは脱脂卵黄の加水分解物のみを添
加した試料5、試料3及び試料4は、同一条件で保存し
た無添加の試料2よりも退色が進行していることがわか
る。
【0071】一方、アスコルビン酸と脱脂卵黄の加水分
解物とを添加した試料6及び試料7は、同一条件で保存
した無添加の試料2よりも退色が抑制されており、ま
た、4℃で暗所で保存した試料1と同等の退色防止効果
を示した。
【0072】なお、脱脂卵黄の加水分解物1重量部に対
するアスコルビン酸の量を0.01重量部未満とした場
合、保存後の色素退色率は脱脂卵黄の加水分解物のみを
添加した試料3及び試料4の場合と同程度であり、ま
た、脱脂卵黄の加水分解物1重量部に対しアスコルビン
酸を50重量部超の量とした場合、保存後の色素退色率
はアスコルビン酸のみを添加した試料5の場合と同程度
であり、いずれも十分な効果が得られなかった。
【0073】実施例5 本実施例は、種々の平均分子量を有する脱脂卵黄の加水
分解物と水溶性抗酸化剤としてアスコルビン酸とからな
る退色防止剤のβ−カロチン色素に対する退色防止効果
について、表5及び表6に示すように、種々の平均分子
量を有する脱脂卵黄の加水分解物及び水溶性抗酸化剤の
それぞれの単独の退色防止効果と比較した結果を示す例
である。
【0074】即ち、0.05M(モル濃度)酢酸緩衝液
(pH4)に、β−カロチン色素(水溶性β−カロチン
液(飲料用/β−カロチン色素約1重量%含有製剤)、
三共(株)製)0.04重量%と、表5及び表6に示し
た割合で脱脂卵黄の加水分解物(実施例1で調製したも
のと同じ酸加水分解物及び実施例1の脱脂卵黄の加水分
解物の調製において塩酸の濃度や反応時間を変化させて
得られた、種々の平均分子量を有する酸加水分解物)及
び/又はアスコルビン酸を添加し、得られた試料9〜2
0を透明なサンプル瓶に充填し、これを25℃で蛍光灯
照射下(700ルクス)で保存した。
【0075】なお、脱脂卵黄の加水分解物もアスコルビ
ン酸も添加せずに0.05M酢酸緩衝液にβ−カロチン
色素だけを添加し、暗所、4℃で保存したものを試料8
とした。
【0076】各試料について、β−カロチン色素の可視
部極大吸収波長である455nmの吸光度を、β−カロ
チン色素を添加せずに同様に調製し、保存したものをブ
ランクとして測定し、保存前に対する保存後の吸光度の
百分率により、色素残存率を求めた。得られた結果を表
5及び表6に示す。
【0077】
【表5】 試料 8 9 10 11 12 13 14 保存温度(℃) 4 25 25 25 25 25 25 脱脂卵黄の加水分解物(重量%) 0 0 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 平均分子量 − − 150 200 500 1000 1100アスコルヒ゛ン 酸(重量%) 0 0 0 0 0 0 0 (色素残存率) 保存前 100 100 100 100 100 100 100 13日後 99 58 31 28 29 35 30 27日後 92 3 5 3 4 4 4 41日後 89 3 4 3 4 3 4
【0078】
【表6】 試料 15 16 17 18 19 20 保存温度(℃) 25 25 25 25 25 25 脱脂卵黄の加水分解物(重量%) 0 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 平均分子量 − 150 200 500 1000 1100アスコルヒ゛ン 酸(重量%) 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 (色素残存率) 保存前 100 100 100 100 100 100 13日後 93 95 97 98 97 96 27日後 64 78 84 86 86 80 41日後 36 58 72 78 75 62
【0079】表5及び表6からわかるように、退色防止
のためにアスコルビン酸だけを添加した試料15は、同
一条件で保存した無添加の試料9よりは退色が抑制され
ていたが、4℃暗所で保存されていた試料8よりは、退
色が進行していた。また、退色防止のために種々の平均
分子量を有する脱脂卵黄の加水分解物のみを添加した試
料10〜試料14は、同一条件で保存した無添加の試料
9よりは、退色が進行しており、退色防止効果がほとん
ど観察されなかった。
【0080】一方、アスコルビン酸と種々の平均分子量
を有する脱脂卵黄の加水分解物とを添加した試料16〜
試料20は、同一条件で保存したアスコルビン酸のみを
添加した試料15よりも退色がより抑制されており、退
色防止効果に優れていることがわかる。更に、アスコル
ビン酸と平均分子量200〜1000の脱脂卵黄の加水
分解物とを添加した試料17〜試料19は、特に退色防
止効果に優れていることがわかる。
【0081】
【発明の効果】本発明によれば、カロチノイド系色素を
含有する食品、医薬品、化粧品、飼料、着色剤等のカロ
チノイド系色素含有材料の退色を効果的に防止すること
ができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤
    とを有効成分として含有することを特徴とする、カロチ
    ノイド系色素含有材料の退色防止剤。
  2. 【請求項2】 脱脂卵黄の加水分解物の平均分子量が2
    00〜1000である請求項1記載のカロチノイド系色
    素含有材料の退色防止剤。
  3. 【請求項3】 水溶性抗酸化剤が、アスコルビン酸もし
    くはその塩、エリソルビン酸もしくはその塩、没食子
    酸、コーヒー酸、エチレンジアミン四酢酸もしくはその
    塩又はポリフェノール類である請求項1又は2記載のカ
    ロチノイド系色素含有材料の退色防止剤。
  4. 【請求項4】 脱脂卵黄の加水分解物1重量部(乾物換
    算)に対し、水溶性抗酸化剤を0.01〜50重量部の
    割合で含有する請求項1〜3のいずれかに記載のカロチ
    ノイド系色素含有材料の退色防止剤。
  5. 【請求項5】 脱脂卵黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤
    とカロチノイド系色素とを含有することを特徴とする抗
    退色性着色剤。
  6. 【請求項6】 カロチノイド系色素含有材料中のカロチ
    ノイド系色素の退色を防止するために、脱脂卵黄の加水
    分解物と水溶性抗酸化剤とを含有することを特徴とする
    カロチノイド系色素含有材料。
  7. 【請求項7】 カロチノイド系色素含有材料の用途が食
    品である請求項6記載のカロチノイド系色素含有材料。
  8. 【請求項8】 カロチノイド系色素含有材料に、脱脂卵
    黄の加水分解物と水溶性抗酸化剤とを添加することを特
    徴とするカロチノイド系色素含有材料の退色防止方法。
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