JP2000080274A - 電子部品封止用樹脂組成物およびその製造方法、ならびにこの電子部品封止用樹脂組成物を用いた封止電子部品 - Google Patents

電子部品封止用樹脂組成物およびその製造方法、ならびにこの電子部品封止用樹脂組成物を用いた封止電子部品

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JP2000080274A
JP2000080274A JP10251290A JP25129098A JP2000080274A JP 2000080274 A JP2000080274 A JP 2000080274A JP 10251290 A JP10251290 A JP 10251290A JP 25129098 A JP25129098 A JP 25129098A JP 2000080274 A JP2000080274 A JP 2000080274A
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resin
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electronic component
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JP10251290A
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Hiroshi Yamamoto
広志 山本
Shinji Hashimoto
眞治 橋本
Masaaki Otsu
正明 大津
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Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐湿信頼性や成形性に優れた熱可塑性樹脂の
電子部品封止用樹脂組成物を提供する。 【解決手段】(A)直鎖型ポリアリーレンスルフィド樹
脂、(B)無機イオン交換体、(C)α−オレフィンと
α,β−不飽和酸のアルキルエステルと無水マレイン
酸、あるいはα−オレフィンとα,β−不飽和酸のアル
キルエステルからなる少なくとも一方のオレフィン系共
重合体セグメント(a)と、下記一般式[化1]で示さ
れる不飽和基を有する無水コハク酸単位からなる重合体
セグメント(b)が、分岐、または架橋構造的に化学結
合したグラフト共重合体、(D)無機充填材からなる。 【化1】 (ただし、式中のR1、R2はアルキル基または、水素原子
を示し、R1とR2の炭素の合計数は6〜17である)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LSI、IC、ハ
イブリッドIC、トランジスタ、ダイオード、サイリス
タやこれらのハイブリッド部品など、電子部品の封止に
用いられる電子部品封止用樹脂組成物、およびこの電子
部品封止用樹脂組成物の製造方法、ならびにこの電子部
品封止用樹脂組成物を用いて電子部品を封止した封止電
子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子部品の封止にはエポキシ樹脂
等の熱硬化性樹脂が用いられてきたが、熱硬化性樹脂に
は種々の欠点がある。例えば、成形品を金型から取り出
すことを可能にするために、キャビティ内の成形品部分
は硬化が進んでいる必要があるので、成形に1〜2分間
を要し、そのため、成形サイクル時間が長くなり生産性
が低いことが挙げられる。
【0003】また、成形時に発生するスプルーやランナ
ーを再利用できないので、材料の利用効率が低いという
事に起因する、資源保護の面で地球環境への負荷が大き
いことと、封止工程コスト低減が困難であることも挙げ
られる。
【0004】一方、熱硬化性樹脂のこれらの欠点を解消
するために、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPS
と略すことがある)や液晶ポリマー(以下LCPと略
記)等の熱可塑性樹脂を電子部品封止用樹脂組成物とし
て用いることが、特公平7−98901号公報、特開平
7−331036号公報、特開昭62−150752号
公報等で提案されている。
【0005】しかしながら、LCP樹脂組成物系は成形
時の溶融粘度が高いため、ボンディング用金線等のワイ
ヤーが樹脂の流動によって流されて変形するスイープが
発生したり、ワイヤーの断線が発生したりする成形不良
が発生し易く、さらに電子部品のリードフレームや素子
の密着性が劣るという問題が有り、更に、分子構造がポ
リエステルであるのでPCT(プレッシャークッカーテ
スト)等の信頼性加速試験に供すると、分子が加水分解
して耐湿信頼性が大きく低下するという問題があった。
【0006】また、PPS樹脂組成物で封止した封止電
子部品についても耐湿信頼性は不十分であり、特にPP
S樹脂組成物系にはイオン性不純物(Cl、Na等)が
多く含まれているので、封止電子部品の耐湿信頼性を高
めることは困難であった。
【0007】一方、本発明等は、特開昭63−3646
1号公報で、PPSに無機イオン交換体を配合すること
によって、イオン性不純物の少ない樹脂組成物を提供し
ている。しかしこの樹脂組成物を用いて封止した電子部
品は、信頼性加速試験のPCTでは実用レベルの耐湿信
頼性を得ることができるものの、バイアス電圧をかけて
行うTHB(Temperature Humidit
y Bias Test)のような信頼性加速試験で
は、高い信頼性を得ることは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、熱可塑
性樹脂を電子部品封止用樹脂組成物として用いること
は、解決すべき課題が多く、まだ実用化されていないの
が現状である。
【0009】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
あり、耐湿信頼性や成形性に優れた熱可塑性樹脂の電子
部品封止用樹脂組成物及びその製造方法、並びにこれら
の電子部品封止用樹脂組成物を用いて封止した封止電子
部品を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
電子部品封止用樹脂組成物は、(A)直鎖型ポリアリー
レンスルフィド樹脂、(B)無機イオン交換体、(C)
α−オレフィンとα,β−不飽和酸のアルキルエステル
と無水マレイン酸、あるいはα−オレフィンとα,β−
不飽和酸のアルキルエステルからなる少なくとも一方の
オレフィン系共重合体(a)と、上記一般式[化1]で
示される繰り返し単位からなる重合体セグメント(b)
が、分岐、または架橋構造的に化学結合したグラフト共
重合体、(D)無機充填材からなることを特徴とする。
【0011】本発明の請求項2に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフィ
ド樹脂が、パラフェニレンスルフィド単位を70重量%
以上有するポリパラフェニレンスルフィドであることを
特徴とする。
【0012】本発明の請求項3に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフィ
ド樹脂において、溶融粘度が、パラレルプレート法によ
る温度300℃、角速度100rad/sの条件で、1〜3
0Pa・sであることを特徴とする。
【0013】本発明の請求項4に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフィ
ド樹脂において、抽出水中のイオン性不純物が、樹脂重
量換算した値でナトリウム含量5ppm以下、塩素含量
5ppm以下であり、同抽出水の電気伝導度が、10μ
S/cm以下であることを特徴とする。
【0014】本発明の請求項5に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(B)無機イオン交換体が、上記一般
式[化2]で示されるものであることを特徴とする。
【0015】本発明の請求項6に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(C)グラフト共重合体において、上
記一般式[化1]で示される不飽和基を有する無水コハ
ク酸単位からなる重合体セグメント(b)が、上記一般
式[化3]で示される繰り返し単位を包含する共重合体
であることを特徴とする。
【0016】本発明の請求項7に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(C)グラフト共重合体において、α
−オレフィンがエチレンであることを特徴とする。
【0017】本発明の請求項8に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(D)無機充填材が、アミノ基、又は
エポキシ基、又はメルカプト基を有するカップリング剤
で処理されていることを特徴とする。
【0018】本発明の請求項9に係る電子部品封止用樹
脂組成物は、上記(D)無機充填材が、ガラス繊維であ
り、繊維径5〜15μm、平均繊維長30〜100μ
m、アスペクト比20以下であることを特徴とする。
【0019】本発明の請求項10に係る電子部品封止用
樹脂組成物は、上記(D)無機充填材が、球状シリカで
あり、平均粒径0.5〜40μmであることを特徴とす
る。
【0020】本発明の請求項11に係る電子部品封止用
樹脂組成物は、上記(D)無機充填材が、(A)〜
(D)の合計中、30〜70重量%であることを特徴と
する。
【0021】本発明の請求項12に係る電子部品封止用
樹脂組成物は、上記(D)無機充填材において、ガラス
繊維と球状シリカの重量比が100/0〜30/70で
あることを特徴とする。
【0022】本発明の請求項13に係る電子部品封止用
樹脂組成物は、上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフ
ィド樹脂100重量部に対して、上記(B)無機イオン
交換体が0.5〜5重量部であり、上記(C)グラフト
共重合体が1〜15重量部であることを特徴とする。
【0023】本発明の請求項14に係る電子部品封止用
樹脂組成物の製造方法は、請求項1ないし請求項13何
れか記載の電子部品封止用樹脂組成物において、上記
(A)〜(D)の成分を混練することを特徴とする。
【0024】本発明の請求項15に係る電子部品は、請
求項1ないし請求項13何れか記載の電子部品封止用樹
脂組成物を用いて電子部品を封止してなることを特徴と
する。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を詳細に
説明する。
【0026】本発明によれば、(A)直鎖型ポリアリー
レンスルフィド樹脂、(B)無機イオン交換体、(C)
α−オレフィンとα,β−不飽和酸のアルキルエステル
と無水マレイン酸、あるいはα−オレフィンとα,β−
不飽和酸のアルキルエステルからなる少なくとも一方の
オレフィン系共重合体(a)と、上記一般式[化1]で
示される不飽和基を有するコハク酸単位からなる重合体
セグメント(b)が、分岐、または架橋構造的に化学結
合したグラフト共重合体、(D)無機充填材からなるこ
とを特徴とする電子部品封止用樹脂組成物が提供され
る。ただし、上記一般式[化1]中のR1、R2はアルキ
ル基または、水素原子を示し、R1とR2の炭素の合計数
は6〜17、より好ましくは8〜15である。
【0027】また、本発明によれば、この電子部品封止
用樹脂組成物を用いて封止した封止電子部品が提供され
る。
【0028】本発明で用いられる(A)直鎖型ポリアリ
ーレンスルフィド樹脂(以下、直鎖型PAS樹脂と記す
ことがある)は、繰り返し単位 −Ar− (但し、A
rはアリール基)を主構成単位とするポリマーであっ
て、その代表的物質は、構造式−Ph−S− (但し、
Phはフェニル基)で示される繰り返し単位を70重量
%以上有するポリフェニレンスルフィド樹脂である。P
PS樹脂は、一般に、その製造方法により、実質上、架
橋型、半架橋型、直鎖型等に分類されるが、本発明で
は、直鎖型が、機械的強度とイオン性不純物量の点で、
優れている為好適である。
【0029】特に、融点が260℃以上、溶融粘度が、
パラレルプレート法により温度300℃、角速度100
rad/sの条件で測定して、1〜30Pa・sであるもの
が好適に用いられる。パラレルプレート法は、厚み1m
m×直径25mmのペレットをハンドプレスで作製し、
直径25mmの下部のパラレルプレート上にペレットを
置いて上部パラレルプレートを降ろして挟み、300℃
で10分間保持した後に測定をすることによって行なわ
れるものであり、例えば、レオメトリックサイエンティ
フィック社製、アレス(商品名)での測定が適当であ
る。
【0030】また、分子量分布についても、特に制限は
なく、さまざまなものを充当することが可能である。そ
して、融点が、260℃未満であれば、電子部品封止用
樹脂の機械的強度が弱くなるので好ましくない。融点の
上限は無いが、290℃程度が実用上の限界である。ま
た、溶融粘度が、この範囲未満であれば、封止した電子
部品の機械的強度の低下が大きく、また、この範囲を越
えると、成形流動性が劣り成形時ワイヤースイープを起
こしやすい。本発明に好ましい直鎖型PAS樹脂は、パ
ラフェニレンスルフィドの繰り返し単位を70重量%以
上、好ましくは90重量%以上含まれているものであれ
ば、他の構成単位と共重合された物が併用されてもよ
い。この繰り返し単位が70重量%未満であると結晶性
高分子としての特徴である結晶化度が低くなり、十分な
強度が得られなくなる傾向があり、靭性に劣るものとな
る傾向がある。勿論、パラフェニレンスルフィドの繰り
返し単位が100重量%のものであってもよい。
【0031】また、本発明に用いられる直鎖型PAS樹
脂は、他の共重合単位を含んでも良く、共重合の構成単
位としては、例えば、下記[化4]、[化5]、[化
6]、[化7]、[化8]、[化9]などのものがあげ
られる。
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】 さらに、本発明で用いる直鎖型PAS樹脂は、樹脂中に
含まれているナトリウムや塩素等のイオン性不純物は予
め少量にしておくことが好ましく、純水で抽出した抽出
水中のイオン性不純物が、ナトリウム含量5ppm以
下、塩素含量5ppm以下(樹脂10gをイオン交換水
100mL中で、95℃−15時間処理したものをイオ
ンクロマトグラフ法で評価、測定した値を樹脂重量で換
算した値を示す。)であり、また、同抽出水の電気伝導
度が、50μS/cm以下が望ましく、特に、同電気伝
導度が10μS/cm以下が好適である。この範囲を外
れると、耐湿信頼性が悪化する傾向を示すので好ましく
ない。ナトリウム含量や塩素含量は少ない程好ましく、
理想的には0ppmであるが、実用上のナトリウム含量
の下限は0.1ppm、塩素含量の下限は0.1ppm
である。また電気伝導度も小さい程好ましく、理想的に
は0μS/cmであるが、実用上の下限は0.01μS
/cmである。
【0038】次に、本発明に用いる無機イオン交換体
(B)はゼオライト、ハイドロタルサイト、チタニアや
上記一般式[化2]で示されるものがあるが、中でも上
記一般式[化2]で示されるものが望ましい。
【0039】この無機イオン交換体がイオン性不純物や
PCT処理した時に加水分解してくるイオンを吸着、捕
捉して、封止樹脂の耐湿信頼性の低下を防ぐと共に、封
止電子部品のアルミニウム配線の腐食を効果的に抑制す
る。無機イオン交換体の配合量は、直鎖型PAS樹脂
(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲
が好ましい。無機イオン交換体の配合量が、0.5重量
部未満であると、イオンの吸着、捕捉の効果を十分に得
ることができない。しかし、逆に無機イオン交換体の配
合量が5重量部を越えると、バイアス電圧のかかるTH
BやUSPCBT(Unsaturated Pres
sure Cooker Bias Test)のよう
な耐湿信頼性の加速試験では、無機イオン交換体がイオ
ン化するため、逆に耐湿信頼性の極端な悪化が生じる恐
れがある。
【0040】次に、本発明で(C)成分として用いるグ
ラフト共重合体とは、α−オレフィン単位とα,β−不
飽和酸のアルキルエステル単位と無水マレイン酸単位か
らなるオレフィン系共重合体セグメント(a)あるい
は、α−オレフィン単位とα,β−不飽和酸のアルキル
エステル単位からなるオレフィン系共重合体セグメント
(a)の少なくとも一方と、上記一般式[化1]で示さ
れる不飽和基を有する無水コハク酸単位からなる重合体
セグメント(b)が、分岐、または架橋構造的に化学結
合したものである。
【0041】ここで、(a)の共重合体部分を構成する
α−オレフィン単位に由来するモノマーとしては、エチ
レン、プロピレン、ブテン−1などがあげられるが、エ
チレンが好ましく用いられる。
【0042】又、(a)の共重合体部分を構成するα,
β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル単位に由来す
るモノマーとしては、炭素数3〜8個の不飽和カルボン
酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエス
テルであって、具体例としては、アクリル酸メチル、ア
クリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸
イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−
ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタ
クリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタ
クリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどがあ
り、これらの中でも特にアクリル酸エチル、アクリル酸
n−ブチル、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0043】α−オレフィンとα,β−不飽和酸のアル
キルエステルと無水マレイン酸からなるオレフィン系共
重合体セグメント(a)は、好ましくは、その単量体成
分が、エチレン、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエ
ステル、無水マレイン酸からなり、エチレンが50〜9
0重量%、好ましくは60〜85重量%、α,β−不飽
和カルボン酸アルキルエステルが3〜49重量%、好ま
しくは7〜45重量%、無水マレイン酸が0.5〜10
重量%、好ましくは1〜8重量%からなるものである。
【0044】また、α−オレフィンとα,β−不飽和酸
のアルキルエステルからなるオレフィン系重合体セグメ
ント(a)の構成において、α−オレフィン単位は、オ
レフィン系共重合体セグメント(a)中に、60〜90
重量%、中でも70〜98重量%含有するのが好まし
い。このオレフィン系重合体セグメント(a)として
は、エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体、エチレ
ンと酢酸ビニルとアクリル酸エチルとの共重合体、エチ
レンとアクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとの共重
合体、エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体、エチ
レンと酢酸ビニルとアクリル酸エチルとの共重合体等が
例示される。また、このオレフィン系共重合体セグメン
ト(a)は2種以上の混合体であっても良い。
【0045】オレフィン系共重合体セグメント(a)の
形状は、粒径が0.1〜5mm程度のパウダー又はペレ
ットであることが望ましいが、(a)の配合割合によっ
て、適宜選択されるのが好ましい。粒径が過度に大きい
と重合時の分散が困難であるばかりでなく、グラフト成
分を構成する単量体の含浸に長時間を要する問題があ
る。
【0046】次に、重合体セグメント(b)を構成する
上記一般式[化1]で示される不飽和基を有する無水コ
ハク酸単位に由来するモノマーとしては、n−オクテニ
ル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、ペンタデセ
ニル無水コハク酸が好ましく用いられる。
【0047】重合体セグメント(b)は、不飽和基を有
する無水コハク酸単位の他に、これと共重合可能なモノ
エチレン系不飽和単量体単位が共重合されても良い。共
重合可能なモノエチレン系不飽和単量体単位としては、
上記一般式[化3]で示されるものが好適に採用され
る。また、N−置換マレイミド単位と共重合させても良
い。N−置換マレイミド化合物としては、例えば、N−メ
チルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマ
レイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレ
イミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシル
マレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−
(2−メチル)シクロヘキシルマレイミド、N−フェニ
ルマレイミド、N−(o−クロル)フェニルマレイミ
ド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、
N−ドデシルマレイミド、N−オクタデシルマレイミド等
を好ましく挙げることができるが、特に好ましいのはN
−フェニルマレイミドとN−シクロヘキシルマレイミド
である。
【0048】重合体セグメント(b)として好ましいも
のは次のものを含有する。即ち、メタクリル酸メチルと
n−オクテニル無水コハク酸(又はドデセニル無水コハ
ク酸又はペンタデセニル無水コハク酸)との共重合体、
アクリル酸エチルとn−オクテニル無水コハク酸(又は
ドデセニル無水コハク酸又はペンタデセニル無水コハク
酸)との共重合体、アクリル酸ブチルとn−オクテニル
無水コハク酸(又はドデセニル無水コハク酸又はペンタ
デセニル無水コハク酸)との共重合体、アクリル酸−2
−エチルヘキシルとn−オクテニル無水コハク酸(又は
ドデセニル無水コハク酸又はペンタデセニル無水コハク
酸)との共重合体、アクリロニトリルとn−オクテニル
無水コハク酸(又はドデセニル無水コハク酸又はペンタ
デセニル無水コハク酸)との共重合体、アクリロニトリ
ルとスチレンとn−オクテニル無水コハク酸(又はドデ
セニル無水コハク酸又はペンタデセニル無水コハク酸)
との共重合体、アクリル酸ブチルとメチルメタクリル酸
とn−オクテニル無水コハク酸(又はドデセニル無水コ
ハク酸又はペンタデセニル無水コハク酸)との共重合
体、アクリル酸ブチルとメチルメタクリル酸とn−オク
テニル無水コハク酸(又はドデセニル無水コハク酸又は
ペンタデセニル無水コハク酸)との共重合体、スチレン
とn−オクテニル無水コハク酸(又はドデセニル無水コ
ハク酸又はペンタデセニル無水コハク酸)との共重合体
等が包含される。
【0049】重合体セグメント(b)における不飽和無
水コハク酸単位の量は、好ましくは、0.5〜50重量
%である。
【0050】本発明におけるグラフト共重合体(C)は
オレフィン系共重合体(a)と重合体セグメント(b)
が分岐または架橋構造的に化学結合したものである。化
学結合しているかどうかは、(a)又は(b)を溶解し
うる溶媒により(a)と(b)とが全量抽出しうるかど
うかで判断できる。全量分離できれば化学結合していな
いとするものであるグラフト共重合体(C)中、オレフ
ィン系共重合体(a)は40〜95重量%、好ましくは
50〜90重量%からなる。(a)が40重量%未満で
あると直鎖型PAS樹脂との相溶化が不十分になり、9
5重量%を超えると組成物の耐熱性や寸法安定性を損な
う。
【0051】このようなグラフト共重合体の調製法は、
一般に知られている連鎖移動法等のいずれの方法でも良
いが、最も好ましいのは、次のような方法による。
【0052】まず常法により得られた上記のオレフィン
系共重合体(a)100重量部を水に懸濁させる。他
方、少なくとも1種の上記の共重合体セグメント(b)
を構成するモノマー5〜400重量部に下記一般式[化
10]又は[化11]で表されるラジカル重合性有機過
酸化物の1種又は2種以上の混合物を該共重合体セグメ
ント(b)を構成するモノマー100重量部に対して
0.1〜10重量部と、10時間の半減期を得るために
分解温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤を共
重合体セグメント(b)を構成するモノマーとラジカル
重合性有機過酸化物の合計100重量部に対して0.0
1〜5重量部とを溶解させた溶液を用意する。前記水性
懸濁液に前記溶液を添加し、ラジカル重合開始剤の分解
が実質的に起こらない条件で加熱し、共重合体セグメン
ト(b)を構成するモノマー、ラジカル重合性有機過酸
化物、ラジカル重合開始剤をオレフィン系重合体(a)
中で共重合させて前駆体を得る。
【0053】そしてこの前駆体を100〜300℃の溶
融下で混練することにより、オレフィン系重合体セグメ
ント(a)とモノエチレン系重合体セグメント(b)が
化学結合した構造の共重合体(C)を得ることができ
る。
【0054】前記一般式[化10]で表されるラジカル
重合性有機過酸化物とは、
【0055】
【化10】 (式中、R5は水素原子又は、炭素数1〜2のアルキル
基、R6は水素原子又はメチル基、R7、R8はそれぞれ
炭素数1〜4のアルキル基、R9は炭素数1〜12のア
ルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又は炭
素数3〜12のシクロアルキル基を示し、mは1又は2
である)で示される化合物である。
【0056】前記一般式[化11]で表されるラジカル
重合性有機過酸化物とは、
【0057】
【化11】 (式中、R10は水素原子又は、炭素数1〜2のアルキル
基、R11は水素原子又はメチル基、R12、R13はそれぞ
れ炭素数1〜4のアルキル基、R14は炭素数1〜12の
アルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又は
炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、nは0、1
又は2である)で示される化合物である。
【0058】前記一般式[化10]で示されるラジカル
重合性有機過酸化物として、具体的には、t−ブチルペ
ルオキシ(メタ)アクリロ(エトキシ)エチルカーボネ
ート、t−アミルペルオキシ(メタ)アクリロイキシ
(エトキシ)エチルカーボネート、t−ヘキシルペルオ
キシ(メタ)アクリロイキシ(エトキシ)エチルカーボ
ネート、1,2,3,3−テトラメチルブチルペルオキ
シ(メタ)アクリイロキシ(エトキシ)エチルカーボネ
ート、クミルペルオキシ(メタ)アクリロイロキシ(エ
トキシ)エチルカーボネート、p−イソプロピルペルオ
キシ(メタ)アクリロイロキシ(エトキシ)エチルカー
ボネート、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチ
ルカーボネートなどを例示することができる。
【0059】さらに前記一般式[化11]で表される化
合物としては、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリル
カーボネート、クミルペルオキシ(メタ)アクリルカー
ボネート、t−ブチルペルオキシ(メタ)アクリロイロ
キシエチルカーボネート等が例示できる。中でも好まし
いのは、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチル
カーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキ
シエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアクリル
カーボネート、t−ブチルペルオキシメタクリルカーボ
ネートである。
【0060】グラフト共重合体(C)の製造方法につい
ての詳細は、いずれも日本油脂(株)の出願の特開平1
−131220号公報、特開平1−138214号公報
に記載されているように公知であり、これらの方法をそ
のまま用いて、グラフト共重合体(C)を調製すること
ができる。
【0061】また、グラフト共重合体(C)は、熱重量
分析において、昇温10℃/分、温度330℃での重量
減少が、5重量%以下であるものが望ましい。これは、
同重量減少が、5重量%を越えると、材料溶融混練時や
成形時に揮発分により、成形性が悪化するためである。
従って重量減少は小さい程好ましいく、重量減少0重量
%が理想的であるが、実用上の下限は0.1重量%であ
る。
【0062】ここで、直鎖型PAS樹脂は、機械的強度
に優れるので、あえて(C)のグラフト共重合体を配合
する必要は無いのであるが、本発明は無機イオン交換体
と併用してグラフト共重合体を配合することによって、
バイアス電圧のかかるTHBやUSPCBTのような耐
湿信頼性の加速試験でも、耐湿信頼性が悪化したり、封
止電子部品のアルミニウム配線に腐食が生じたりするこ
とを抑制することができるという、従来予測できない効
果を得ることができたものである。この効果の理由はグ
ラフト共重合体が無機イオン交換体のイオン化を抑制し
ているのではないかと考えられる。
【0063】また、グラフト共重合体(C)の直鎖型P
AS樹脂(A)100重量部に対する配合量は、1〜1
5重量部、好ましくは1〜10重量部である。(C)成
分が少なすぎるとイオン化を抑制する効果が不十分にな
り、多過ぎるとワイヤーのスイープや断線等の成形不良
が起こりやすくなるために好ましくない。
【0064】次に、本発明に使用する無機充填材(D)
は、非晶質シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリ
カ、アルミナ、ガラス、ミルドファイバーガラス、酸化
チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、タルク、カ
オリン、窒化ケイ素、窒化アルミ、等の充填剤があげら
れ、特に、好ましいのは、ミルドファイバーガラスや、
非晶質シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカ、球
状アルミナである。また、これらは、単独で使用しても
よいし、2種類以上を併用してもよい。また、無機充填
材の表面をカップリング剤で処理したものが好ましい。
カップリング剤としては後述するアミノ基、又はエポキ
シ基、又はメルカプト基を有するものを用いることがで
きるものであり、これらのカップリング剤は単独で処理
してもよいし、2種類以上を併用して処理してもよい。
【0065】以上の無機充填材(D)の中で、特に好ま
しいのは、アミノ基を有するカップリング剤で処理され
た繊維径5〜15μm、平均繊維長30〜100μm、
アスペクト比20以下のものである。平均繊維長が、3
0μm未満であると、機械的強度の向上効果が少なくな
り、100μmを超えると素子にダメージを与える恐れ
が生じる。アスペクト比の下限は2に設定するのが好ま
しく、2未満であると成形品の機械的強度を向上させる
効果が不十分になる。
【0066】また、シリカは、球状であり平均粒径0.
5〜40μmであることが好適である。0.5μm未満
になると溶融粘度が増大し成形性が悪化し、40μmを
超えると機械的強度が低下し、さらに100μmを越え
ると、素子にダメージを与える恐れが生じる。また、形
状が破砕状であると、封止成形時に電子部品の素子にダ
メージを与える恐れと、金型摩耗を増加させる恐れがあ
る。
【0067】また、無機充填材(D)として、ガラス繊
維と球状シリカを併用する場合には、重量比100/0
〜30/70であることが好ましく、最も好ましくは重
量比90/10〜50/50である。球状シリカの比率
が70重量%を超えると機械的強度が低下する。
【0068】さらに、高熱伝導向けの封止材には無機充
填材(D)として、結晶シリカや球状アルミナが好まし
いが、成形性を考慮すると、結晶シリカの場合、その体
積分率は真比重換算で無機充填材中の40〜90%が好
ましい。球状アルミナの場合、その体積分率は真比重換
算で無機充填材中の30〜100%が好ましい。この範
囲未満であれば、所望の熱伝導性が得られない不具合が
生じる。また、この範囲を超えるとワイヤー断線等成形
不良が発生し易い。一方、メモリー向けの封止材には、
無機充填材(D)として、合成シリカを用いるのが、電
子部品素子のソフトエラーを防止するのに有用である。
【0069】そして、前記の(A)〜(D)の特定成分
を特定の配合割合にした樹脂組成物を使用することによ
り耐湿信頼性、成形性に際立った効果を発揮できるので
ある。無機充填材(D)は、(A)〜(D)の合計中、
30〜70重量%を配合することが好ましく30重量%
未満であれば、線膨張係数の低下による低応力性が期待
できず、また70重量%を越えると、成形時の流動性が
悪くなり、実用に供せなくなる。
【0070】本発明の電子部品封止用樹脂組成物は、必
要に応じて、本発明の目的を損なわない限り、他の合成
樹脂、エラストマー、酸化防止剤、結晶核剤、結晶化促
進剤、カップリング剤、離型剤、滑剤、着色剤、紫外線
吸収剤、帯電防止剤等を配合することができる。
【0071】上記合成樹脂、エラストマーとしては、例
えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオ
キシメチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化
ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミ
ド樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、
芳香族ナイロン、ナイロン46、共重合ナイロン)、ポ
リカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフ
ォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレ
ンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポ
リアセタール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミ
ドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、結
晶性ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、フェノキシ
樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリテトラフルオロ
エチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコ
ーン樹脂、ウレタン樹脂、テルペン樹脂、水素添加テル
ペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノー
ル樹脂等の合成樹脂やポリオレフィンゴム、オレフィン
系共重合体、水素添加ゴム等のエラストマーをあげるこ
とができる。また、これらは、単独で使用しても良い
し、2種類以上を混合して使用することができる。
【0072】酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、
フェノール系酸化防止剤等があげられる。また、これら
は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使
用することができる。
【0073】結晶核剤としては、ジベンジリデンソルビ
トール系化合物、t−ブチル安息香酸のアルミニウム
塩、リン酸エステルのナトリウム塩等があげられる。ま
た、これらは、単独で使用しても良いし、2種類以上を
混合して使用することができる。
【0074】カップリング剤としては、シラン系化合
物、チタネート系化合物、アルミニウム系化合物等があ
げられ、特にシラン系化合物が好ましい。シラン系とし
ては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β
(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチル
ジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のア
ミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメ
トキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロ
ピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、p−ス
チリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、
ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニル
トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニル
シラン、更に、エポキシ系、アミノ系、ビニル系の高分
子タイプのシラン等があり、特に、アミノシラン、エポ
キシシラン、メルカプトシランが好適である。また、こ
れらは、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合し
て使用することができる。
【0075】滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤の両方
が使用でき、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド、脂
肪酸エステル等が挙げられる。また、これらは、単独で
使用しても良いし、2種類以上を混合して使用すること
ができる。
【0076】着色剤としては、公知の各種顔量又は染料
を使用することができ、例えば、カーボンブラック等の
黒色顔量、赤口黄鉛等の橙色顔量、弁柄等の赤色染顔
量、コバルトバイオレット等の紫色染顔量、コバルトブ
ルー等の青色染顔量、フタロシアニングリーン等の緑色
染顔量等を、使用することができる。更に、詳しくは、
最新顔量便覧(日本顔料技術協会編、昭和52年発行)
を参考にして、この便覧に掲載されているものを使用す
ることができる。
【0077】本発明で用いる組成物を製造する方法は、
一般的には各成分をヘンシェルミキサー等の混合機で混
合するか、必要に応じて予め必要成分の一部をマスター
バッチ化して混合した後、エクストルーダ等の混練機で
溶融混練して、ペレタイズする方法が用いられるが、こ
れに限定されない。
【0078】そして、上記のように本発明で製造された
組成物を用いて、電子部品を封止することによって、封
止電子部品を得ることができる。電子部品の封止方法
は、特に制限はなく、金型中に電子素子を固定してお
き、射出成形、トランスファー成形、ポッティング成形
で成形する方法などが挙げられる。
【0079】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に
述べる。
【0080】(実施例1〜28、および、比較例1〜
5)実施例1〜28に関しては、下記表2〜5に示す配
合(配合量は重量部)、比較例1〜5に関しては、下記
表6に示す配合(配合量は重量部)の各成分をヘンシェ
ルミキサーを用いて均一に混合した後、スクリュー径4
0mmの2軸混練押し出し機を用いて、シリンダー温度
300℃の条件で押し出して、ペレット化し、実施例1
〜28、および、比較例1〜5の電子部品封止用樹脂組
成物を作製した。
【0081】ここで、表2〜6において使用した原材料
は次のものである。 ・直鎖型PPS樹脂 樹脂A:直鎖型PPS樹脂(呉羽化学工業社製、品番
「W-202A」、溶融粘度:23Pa・s/パラレルプレート
法、300℃、100rad/secで測定、イオン性不純
物:ナトリウム2ppm、塩素1ppm、電気伝導度5
μS/cm) 樹脂B:直鎖型PPS樹脂(呉羽化学工業社製、品番
「W-203A」、溶融粘度:29Pa・s/パラレルプレート
法、300℃、100rad/secで測定、イオン性不純
物:ナトリウム2ppm、塩素2ppm、電気伝導度6
μS/cm) 樹脂C:直鎖型PPS樹脂(トープレン社製、品番「LR
01」、溶融粘度:6Pa・s/パラレルプレート法300
℃、100rad/secで測定、イオン性不純物:ナトリウ
ム5ppm、塩素4ppm、電気伝導度7μS/cm) 樹脂D:直鎖型PPS樹脂(トープレン社製、品番「LR
03」、溶融粘度:19Pa・s/パラレルプレート法30
0℃、100rad/secで測定、イオン性不純物:ナトリ
ウム5ppm、塩素4ppm、電気伝導度7μS/c
m) 樹脂E:直鎖型PPS樹脂(呉羽化学工業社製、品番
「W-214」、溶融粘度:210Pa・s /パラレルプレー
ト法、300℃、100rad/secで測定、イオン性不純
物:ナトリウム84ppm、塩素19ppm、電気伝導
度49μS/cm) ・グラフト共重合体 (グラフト共重合体Aの製造:製造例1)内容積5リッ
トルのステンレス製オートクレーブに、純水2500g
を入れ、更に懸濁剤として、ポリビニルアルコール2.
5gを溶解させた。この中にエチレン/アクリル酸エチ
ル/無水マレイン酸共重合体(アクリル酸エチル含有量
12重量%、無水マレイン酸含有量3重量%、ペレット
状、日本石油化学(株)製「ボンダイン」)700gを
入れ、攪拌して分散させた。別にラジカル重合開始剤と
してベンゾイルペルオキシド(商品名「ナイパーB」、
日本油脂(株)製、10時間半減期74℃)1.5g、
ラジカル(共)重合性有機過酸化物として、t−ブチル
ペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート6g
を、アクリロニトリル90g、スチレン180g、n−
オクテニル無水コハク酸30gに溶解させ、この溶液を
前記オートクレーブ中に投入攪拌した。次いで、オート
クレーブを60〜65℃に昇温し、2時間撹拌しなが
ら、ラジカル重合開始剤、ラジカル(共)重合性有機過
酸化物、不飽和単量体を、エチレン/アクリル酸エチル
/無水マレイン酸共重合体に含浸させた。そして、温度
を80〜85℃に上げ、その温度で7時間維持して重合
を完結させ、水洗及び乾燥してグラフト共重合体の前駆
体を得た。これを280℃の溶融化で混練することによ
り、グラフト共重合体A[エチレン/アクリル酸エチル
/無水マレイン酸共重合体(重量比85/12/3)7
0重量部に対してアクリロニトリル/スチレン/n−オ
クテニル無水コハク酸共重合体(重量比30/60/1
0)30重量部をグラフト共重合したグラフト共重合
体:ホ゜リ(E/EA/MAH=85/12/3)70−ク゛ラフト−コホ゜リ(AN/ST/
OSA=30/60/10)30]を得た。 (グラフト共重合体B〜Eの製造:製造例2〜5)上記
製造例1における、エチレン/アクリル酸エチル/無水
マレイン酸共重合体700g、アクリロニトリル90
g、スチレン180g、n−オクテニル無水コハク酸3
0gの部分を表1(表1中の数値はg数)に示すように
変更して、製造例1と同様に行いグラフト共重合体B〜
Eを得た。
【0082】
【表1】 ここで、製造例2からは、グラフト共重合体B[エチレ
ン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体(重量
比85/12/3)70重量部に対してアクリロニトリ
ル/スチレン/ドデセニル無水コハク酸共重合体(重量
比30/60/10)30重量部をグラフト共重合した
グラフト共重合体:ホ゜リ(E/EA/MAH=85/12/3)70−ク゛ラフト
−コホ゜リ(AN/ST/DSA=30/60/10)30]を得た。
【0083】製造例3からは、グラフト共重合体C[エ
チレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体
(重量比85/12/3)70重量部に対してアクリロ
ニトリル/スチレン/ペンタデセニル無水コハク酸共重
合体(重量比30/60/10)30重量部をグラフト
共重合したグラフト共重合体:ホ゜リ(E/EA/MAH=85/12/
3)70−ク゛ラフト−コホ゜リ(AN/ST/PDSA=30/60/10)30]を得
た。
【0084】製造例4からは、グラフト共重合体D[エ
チレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体
(重量比85/12/3)70重量部に対してスチレン
/n−オクテニル無水コハク酸共重合体(重量比90/
10)30重量部をグラフト共重合したグラフト共重合
体:ホ゜リ(E/EA/MAH=85/12/3)70−ク゛ラフト−コホ゜リ(ST/OSA
=90/10)30]を得た。
【0085】製造例5からは、グラフト共重合体E[エ
チレン/アクリル酸エチル共重合体(重量比80/2
0)70重量部に対してアクリロニトリル/スチレン/
n−オクテニル無水コハク酸共重合体(重量比30/6
0/10)30重量部をグラフト共重合したグラフト共
重合体:ホ゜リ(E/EA=80/20)70−ク゛ラフト−コホ゜リ(AN/ST/OS
A=30/60/10)30]を得た。 ・無機充填材 無機充填材A:ミルドファイバー(日本板硝子社製、品
番「REV8」:アミノシラン処理、繊維径13μm、平均
繊維長70μm、アスペクト比5.6) 無機充填材B:ミルドファイバー(日本板硝子社製、品
番「REV12」:アミノシラン処理、繊維径6μm、平均
繊維長50μm、アスペクト比8.3) 無機充填材C:ミルドファイバー(日本板硝子社製、品
番「REV4」:無処理、繊維径13μm、平均繊維長70
μm、アスペクト比5.6) 無機充填材D:球状シリカ(電気化学工業社製、品番
「FB60」:平均粒径20μm) 無機充填材E:球状シリカ(アドマテックス社製、品番
「SO25R」:平均粒径0.6μm) ・カップリング剤 カップリング剤A:アミノシラン系カップリング剤(日
本ユニカー社製、品番「A1100」:γ−アミノプロピル
トリエトキシシラン) カップリング剤B:エポキシシラン系カップリング剤
(信越シリコーン社製、品番「KBM403」:γ−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン) カップリング剤C:メルカプトシラン系カップリング剤
(東芝シリコーン社製、品番「TSL8380E」:3−メルカ
プトプロピルトリメトキシシラン) カップリング剤D:ビニルシラン系カップリング剤(東
レシリコーン社製、品番「SZ6300」:ビニルトリメトキ
シシラン) ・無機イオン交換体 無機イオン交換体A:Sb2Bi1.4O6.4(OH)0.9(NO30.4
・0.6H2O 無機イオン交換体B:Sb2Bi1.3O6.6(OH)0.8(NO30.06
・0.6H2O
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】 上記の実施例1〜28及び比較例1〜5で得られた封止
成形品の物性試験は次の方法で評価した。 (1)耐湿信頼性(PCT) チップサイズが3mm角でガラス系保護膜付きの電子部品
ゲートアレイ素子を42アロイよりなるリードフレーム
に銀ペーストを用いて実装し、ついで、この電子部品チ
ップを16DIP成形用金型を用いて、シリンダー温度
300℃で金型温度130℃で各実施例及び比較例の電
子部品封止用樹脂組成物を射出成形し、評価用サンプル
の封止電子部品を得た。このようにして得られた評価用
封止電子部品を121℃、100%RHの条件下で、1
000時間の処理を実施した。この試験を終えたサンプ
ルについて、ゲートアレイ素子の動作確認を行い、動作
不良が生じているサンプルを不良とした。得られた結果
を(不良個数/試験したサンプル数)として上記表2〜
6に示した。 (2)耐湿信頼性(THB) 上記と同様の操作で得られた評価用封止電子部品を85
℃、85%RHの条件下で30Vの電圧をかけ、200
0時間の連続通電試験を実施した。この通電試験を終え
たゲートアレイ素子について抵抗値を調べ、試験前の抵
抗の初期値から大きく抵抗の変化したサンプルを不良と
した。得られた結果を(不良個数/試験したサンプル
数)として上記表2〜6に示した。 (3)成形性 上記と同様の操作で作製した評価用封止電子部品の外観
状態(充填性、ボイド)及びワイヤーの断線状態を軟X
線で確認して、未充填、ボイド発生、ワイヤー断線の発
生したものを成形不良とした。得られた結果を(不良個
数/試験したサンプル数)として上記表2〜6に示し
た。
【0091】上記の表2〜6にみられるように、各実施
例のものは、耐湿信頼性、成形性のいずれも極めて優れ
るものであった。尚、実施例25はn=50のうち15
個にワイヤー断線、実施例26はn=50のうち40個
にワイヤー断線、実施例27はn=50のうち40個に
ワイヤー断線が発生するものであった。
【0092】
【発明の効果】上記のように本発明は、(A)直鎖型ポ
リアリーレンスルフィド樹脂、(B)無機イオン交換
体、(C)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のアルキ
ルエステルと無水マレイン酸、あるいはα−オレフィン
とα,β−不飽和酸のアルキルエステルからなる少なく
とも一方のオレフィン系共重合体セグメント(a)と、
上記一般式[化1]で示される不飽和基を有する無水コ
ハク酸単位からなる重合体セグメント(b)が、分岐、
または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体、
(D)無機充填材からなるので、(B)無機イオン交換
体や、(C)グラフト共重合体の配合によって、耐湿信
頼性や成形性に優れた熱可塑性樹脂の電子部品封止用樹
脂組成物を得ることができるものである。
【0093】またこの電子部品封止用樹脂組成物を用い
て電子部品を封止することによって、成形性良く耐湿信
頼性に優れた封止電子部品を製造することができるもの
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大津 正明 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 Fターム(参考) 4J002 BN052 BN062 BN112 BN122 CN011 CN031 DE136 DE137 DE147 DE237 DE286 DF017 DF036 DJ006 DJ017 DJ037 DJ047 DJ057 DL007 FA047 FA087 FB097 FB137 FB147 FB157 FD017 FD206 GQ05

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)直鎖型ポリアリーレンスルフィド
    樹脂、(B)無機イオン交換体、(C)α−オレフィン
    とα,β−不飽和酸のアルキルエステルと無水マレイン
    酸、あるいはα−オレフィンとα,β−不飽和酸のアル
    キルエステルからなる少なくとも一方のオレフィン系共
    重合体セグメント(a)と、下記一般式[化1]で示さ
    れる不飽和基を有する無水コハク酸単位からなる重合体
    セグメント(b)が、分岐、または架橋構造的に化学結
    合したグラフト共重合体、(D)無機充填材からなるこ
    とを特徴とする電子部品封止用樹脂組成物。 【化1】 (ただし、式中のR1、R2はアルキル基または、水素原
    子を示し、R1とR2の炭素の合計数は6〜17である)
  2. 【請求項2】 上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフ
    ィド樹脂が、パラフェニレンスルフィド単位を70重量
    %以上有するポリパラフェニレンスルフィドである請求
    項1記載の電子部品封止用樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフ
    ィド樹脂において、溶融粘度が、パラレルプレート法に
    よる温度300℃、角速度100rad/sの条件で、1〜
    30Pa・sであることを特徴とする請求項1記載また
    は請求項2記載の電子部品封止用樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 上記(A)直鎖型ポリアリーレンスルフ
    ィド樹脂において、抽出水中のイオン性不純物が、樹脂
    重量換算した値でナトリウム含量5ppm以下、塩素含
    量5ppm以下であり、同抽出水の電気伝導度が、10
    μS/cm以下であることを特徴とする請求項1ないし
    請求項3何れか記載の電子部品封止用樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 上記(B)無機イオン交換体が、下記一
    般式[化2]で示されるものであることを特徴とする請
    求項1ないし請求項4何れか記載の電子部品封止用樹脂
    組成物。 【化2】 (ただし、式中のa,bはそれぞれ1〜2、cは1〜
    7、dは0.2〜3、eは0.05〜3、nは0〜2で
    ある。)
  6. 【請求項6】 上記(C)グラフト共重合体において、
    上記一般式[化1]で示される不飽和基を有する無水コ
    ハク酸単位からなる重合体セグメント(b)が、下記一
    般式[化3]で示される繰り返し単位を包含する共重合
    体である請求項1ないし請求項5何れか記載の電子部品
    封止用樹脂組成物。 【化3】 (ただし、R3は水素、またはC数1〜3の低級アルキ
    ル基、X1は、−COOCH3、−COOC2H5、−COOC4H9、−COO
    CH2CH(C2H5)C4H9、−C6H5、−C6H4−CH3、−C6H 4−C2
    H5、−CNから選ばれた1種または2種以上の基を表
    す)
  7. 【請求項7】 上記(C)グラフト共重合体において、
    α−オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求
    項1ないし請求項6何れか記載の電子部品封止用樹脂組
    成物。
  8. 【請求項8】 上記(D)無機充填材が、アミノ基、又
    はエポキシ基、又はメルカプト基を有するカップリング
    剤で処理されていることを特徴とする請求項1ないし請
    求項7何れか記載の電子部品封止用樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 上記(D)無機充填材が、ガラス繊維で
    あり、繊維径5〜15μm、平均繊維長30〜100μ
    m、アスペクト比20以下であることを特徴とする請求
    項1ないし請求項8何れか記載の電子部品封止用樹脂組
    成物。
  10. 【請求項10】 上記(D)無機充填材が、球状シリカ
    であり、平均粒径0.5〜40μmであることを特徴と
    する請求項1ないし請求項9何れか記載の電子部品封止
    用樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 上記(D)無機充填材が、(A)〜
    (D)の合計中、30〜70重量%であることを特徴と
    する請求項1ないし請求項10何れか記載の電子部品封
    止用樹脂組成物。
  12. 【請求項12】 上記(D)無機充填材において、ガラ
    ス繊維と球状シリカの重量比が100/0〜30/70
    であることを特徴とする請求項1ないし請求項11何れ
    か記載の電子部品封止用樹脂組成物。
  13. 【請求項13】 上記(A)直鎖型ポリアリーレンスル
    フィド樹脂100重量部に対して、上記(B)無機イオ
    ン交換体が0.5〜5重量部であり、上記(C)グラフ
    ト共重合体が1〜15重量部であることを特徴とする請
    求項1ないし請求項12何れか記載の電子部品封止用樹
    脂組成物。
  14. 【請求項14】 請求項1ないし請求項13何れか記載
    の電子部品封止用樹脂組成物において、上記(A)〜
    (D)の成分を混練することを特徴とする電子部品封止
    用樹脂組成物の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項1ないし請求項13何れか記載
    の電子部品封止用樹脂組成物を用いて電子部品を封止し
    てなることを特徴とする封止電子部品。
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