JP2000079547A - リセス皿におけるレンズ貼り付け方法および装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 リセス皿の基準面にレンズを高精度に貼り付
けることができるリセス皿におけるレンズ貼り付け方法
およびその装置を提供する。 【解決手段】 レンズ貼り付け装置は、レンズＬを位置
決めする基準面３を形成した位置決め凹所２とこの凹所
２を下方中央部に連通させる吸引孔２ａ、４ａを有する
リセス皿１を着脱自在に装着可能なリセス皿受け部５
と、リセス皿受け部５に配管６を介して連通する真空ポ
ンプ７と、圧力計８を備えており、リセス皿１の基準面
３に塗布した接着剤１５上にレンズＬを載置し、このリ
セス皿１をリセス皿受け部５に装着する。その後に、真
空ポンプ７を作動させて、配管６から吸引孔２ａ、４ａ
を介してレンズＬを真空引きし、レンズＬをリセス皿１
の基準面３に完全に密着させて接着し貼り付ける。この
ように貼り付けられたレンズを加工することにより、そ
の寸法精度を高精度に加工することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、レンズを加工する
際に、リセス皿に対してレンズを貼り付けるためのリセ
ス皿におけるレンズ貼り付け方法およびその装置に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】レンズ等の光学素子を研磨あるいは研削
加工する場合、リセス皿にレンズ等の光学素子を貼り付
け、このリセス皿に貼り付けられた光学素子に研磨工具
等を押圧し相対回転させることによりレンズ等を加工し
ている。この時、リセス皿に対してレンズを貼り付ける
方法としては、従来は、図５の（ａ）に示すように、基
準面１０３となる段差部を有する位置決め凹所１０２を
備えたリセス皿１０１を用い、基準面１０３上に接着剤
１０５を施し、この接着剤１０５上にレンズＬを指で摘
んで載置し、そして、レンズＬを矢印Ｎ方向へ押圧しな
がら適宜回転させて、レンズＬを基準面１０３に貼り付
けている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、レンズを加
工する場合、高度な光学特性を維持するために、レンズ
中心の肉厚の寸法精度等を高精度に加工する必要があ
り、さらに、レンズ中心の肉厚の寸法精度を高精度に加
工するには、研磨装置等の加工装置の精度のみならず、
レンズのリセス皿に対する貼り付け精度が高精度である
ことが要求される。

【０００４】しかしながら、前述した従来のレンズの貼
り付け方法によれば、レンズＬを指で摘んで接着剤１０
５を介在させた基準面１０３に押し付けているために、
図５の（ｂ）に示すように、レンズＬの球面が基準面１
０３に密着しなかったり、接着剤１０５が固化しない間
に動いてしまい、Ａ部分のようにレンズＬと基準面１０
３の間に隙間が生じてしまい、レンズＬが基準面１０３
に対して傾いた状態で貼り付けられる恐れがある。この
ように基準面１０３に対して傾いた状態で貼り付けられ
たレンズＬを研磨加工装置等により加工すると、図５の
（ｃ）に示すように、レンズ中心の肉厚Ｔの寸法精度が
悪くなるばかりでなく、レンズ周辺部の肉厚にも厚い部
分Ｔ１と薄い部分Ｔ２ができてしまい、高度な光学特性
を有するレンズを得ることができないという未解決な課
題があった。

【０００５】そこで、本発明は、前述した従来技術の有
する未解決の課題に鑑みてなされたものであって、リセ
ス皿の基準面にレンズを高精度に貼り付けることができ
るリセス皿におけるレンズ貼り付け方法およびその装置
を提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、レンズを位置決めする基準面を有するリセス皿に接
着剤を塗布し、該接着剤を介してリセス皿にレンズを接
着して貼り付けるレンズ貼り付け方法において、リセス
皿に接着剤を塗布した後に前記接着剤上にレンズを載置
し、前記リセス皿中心部下方より真空引きして前記レン
ズを前記リセス皿に接着し貼り付けることを特徴とす
る。

【０００７】本発明のリセス皿におけるレンズ貼り付け
方法においては、リセス皿に接着剤を塗布する前に、前
記リセス皿を所定温度に加熱しておくことが好ましい。

【０００８】本発明のリセス皿におけるレンズ貼り付け
方法においては、リセス皿下方よりの真空引きが規定圧
力に達するまで、前記リセス皿の真空引きを行なうこと
が好ましい。

【０００９】そして、本発明のリセス皿におけるレンズ
貼り付け装置は、レンズを位置決めする基準面を有する
リセス皿を着脱自在に装着可能なリセス皿受け部と、該
リセス皿受け部に配管を介して連通され、前記リセス皿
にレンズを載置した状態で真空状態を確保しうる真空ポ
ンプと、真空状態を計測しかつ表示する圧力計を備えて
いることを特徴とする。

【００１０】本発明のリセス皿におけるレンズ貼り付け
装置においては、リセス皿にレンズを載置した状態にお
ける真空状態が所定の規定値に到達しない場合に警告を
発する機能を備えることが好ましい。

【００１１】本発明のリセス皿におけるレンズ貼り付け
装置においては、リセス皿はレンズを載置する基準面を
形成した位置決め凹所と該位置決め凹所を下方中央部に
連通させる吸引孔を有していることが好ましい。

【００１２】

【作用】本発明のリセス皿におけるレンズ貼り付け方法
およびその装置によれば、リセス皿の基準面に接着剤を
塗布した後に接着剤上にレンズを載置して、リセス皿中
心部下方より真空引きするようになし、レンズと基準面
との間に介在する接着剤層を均一化させ、レンズをリセ
ス皿の基準面に完全に密着させた状態で貼り付けること
ができる。このように貼り付けられたレンズを研削ある
いは研磨加工することにより、レンズの寸法精度を高精
度に加工することが可能となる。

【００１３】また、リセス皿に接着剤を塗布する前にリ
セス皿を所定温度に加熱しておくことにより、リセス皿
さらには塗布する接着剤を軟化させることができ、レン
ズのリセス皿への接着を完全にかつスムーズに密着させ
ることが可能となる。

【００１４】さらに、リセス皿の真空系に真空状態を管
理する圧力計を付設することにより、真空系の真空圧力
が所定時間内に所定の規定圧力に達しない場合にレンズ
の貼り付け不良の発生を知ることができ、レンズの貼り
付け状態を事前に確認することができ、レンズの加工品
質の安定化と生産性の向上を図ることができる。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。

【００１６】図１は、本発明に係るリセス皿におけるレ
ンズ貼り付け装置の概略図であり、レンズ貼り付け装置
は、リセス皿１の軸部４を着脱自在に嵌挿しうる内径部
５ａを有する筒状のリセス皿受け部５と、配管６を介し
てリセス皿受け部５に連通された真空ポンプ７と、真空
状態を計測しかつ表示する圧力計８を備え、さらに、所
定時間を設定するためのタイマー９と、所定時間内に真
空圧が所定の規定値に達しない場合に警告を発する警報
装置１０、および配管６の内部を大気に開放することが
できる弁１１が配管６に付設されている。そして、リセ
ス皿受け部５の上面５ｂは、リセス皿１の軸部４を筒状
のリセス皿受け部５の内径部５ａに嵌挿させるときに、
リセス皿１を支持するように構成されており、リセス皿
受け部５の上面５ｂのリセス皿１との当接面には、下方
から真空引きされる際に気密を保持するためのＯリング
５ｃが配設されている。

【００１７】また、リセス皿１は、下方に軸部４を有す
るとともに、上面にはレンズＬの基準面３となる段差部
を有する位置決め凹所２が少なくとも１個以上形成され
ており、これらの位置決め凹所２の各々には、レンズＬ
を真空引きするための吸引孔３ａがリセス皿１の中心部
に向けてそれぞれ穿設されており、これらの吸引孔３ａ
は軸部４の形成された中央吸引孔４ａに連通されてい
る。

【００１８】次に、前述したレンズ貼り付け装置を用い
たリセス皿に対するレンズの貼り付け方法について工程
に沿って説明する。

【００１９】１） 予めリセス皿１を所定の温度に加熱
する。

【００２０】２） その後、リセス皿１の各位置決め凹
所２内の基準面３上および少なくともその近傍に接着剤
１５を塗布し、そして、位置決め凹所２内の接着剤１５
上にレンズＬを載置する。

【００２１】３） 次いで、レンズＬが載置されたリセ
ス皿１をレンズ貼り付け装置のリセス皿受け部５に装着
する。すなわち、リセス皿１の軸部４をリセス皿受け部
５の内径部５ａに挿入し、そして、リセス皿１の下面を
リセス皿受け部５の上面５ｂにＯリング５ｃを介して当
接させる。これにより、リセス皿１の各位置決め凹所２
は、吸引孔２ａおよび中央吸引孔４ａを介してリセス皿
受け部５の内径部５ａに連通し、さらに配管６を介して
真空ポンプ７に連通される。

【００２２】４） その後、真空ポンプ７を作動させ、
配管６およびリセス皿受け部５の内径部５ａを介してリ
セス皿１の各位置決め凹所２内を真空引きし、これらを
真空状態として、リセス皿１の各位置決め凹所２内のレ
ンズＬを真空吸引する。そして、その真空状態が所定の
規定値に達することで、リセス皿１の基準面３に載置し
たレンズＬは、真空吸引され、均一な層厚になった接着
剤１５を介して基準面３に密着する。

【００２３】このとき、リセス皿１の基準面３とレンズ
Ｌが、なんらかの理由で、密着しない場合には、自ずと
その真空状態が所定の規定値に達することができない。
すなわち、タイマー９によりセットされた所定時間内に
真空圧が所定の規定値に達しない場合には、異常事態の
発生とみなして、警報装置１０が作動して警告を発す
る。これにより、作業者等は、レンズの加工前にレンズ
の貼り付け不良を確認することが可能となる。

【００２４】５） レンズＬが接着剤１５を介して基準
面３に完全に密着した後に、弁１１を開放して真空圧を
徐々に大気開放する。

【００２５】６） その後、リセス皿１をレンズ貼り付
け装置のリセス皿受け部５から外し、リセス皿１および
接着剤１５を常温冷却により固化させる。

【００２６】以上のように、レンズＬは、リセス皿１の
各位置決め凹所２内の基準面３に確実にかつ精度良く密
着して貼り付けられ、これを研磨加工等の加工機にて加
工することができる。

【００２７】次に、本発明のリセス皿におけるレンズ貼
り付け方法を用いてレンズの貼り付けを行ない、レンズ
の研磨を行なった具体例について説明する。

【００２８】図２は、研磨加工を行なったレンズＬの形
状の一例を示すものであり、レンズＬは、直径Φ９．８
０ｍｍ、研磨する面の曲率半径がＲ１２．２０４ｍｍ、
反対側の面の曲率半径がＲ１９４．５ｍｍ、中心部の厚
みが１．８ｍｍの凸レンズである。

【００２９】図３は、本具体例に用いたリセス皿の具体
的形状を示す断面図であり、リセス皿１には、レンズＬ
を収容するための直径Φ９．８０ｍｍの位置決め凹所２
が複数設けられており、これらの位置決め凹所２には、
レンズＬを貼り付けるための幅１．２ｍｍの基準面３が
それぞれ形成されている。

【００３０】図１に図示するレンズ貼り付け装置を用
い、本発明のレンズ貼り付け方法に基づいて、図３に図
示するリセス皿１の位置決め凹所２の基準面３上にレン
ズＬを貼り付けた。このとき、予めリセス皿を８０〜１
２０℃に加熱して軟化させ、また、接着剤としては松ヤ
ニとタールを混合したものを使用した。そして、リセス
皿１にレンズＬを接着した後に、リセス皿１をレンズ貼
り付け装置に装着し、真空ポンプ７を作動させて、リセ
ス皿１を４０ｍｍＨｇ圧に達するまで真空引きし、４０
ｍｍＨｇ圧に達した後に、リセス皿１をリセス皿受け部
５から外し、その後常温冷却し固化した。

【００３１】このようにしてリセス皿１に貼り付けられ
たレンズＬを研磨加工機により研磨加工したところ、図
４の（ａ）に示すようなレンズの中心厚精度が得られ
た。図４において、（ａ）は、本発明のレンズの貼り付
け方法を適用した場合のレンズの中心肉厚の分布状態を
示すものであり、一方、（ｂ）は、従来技術のように真
空吸着することなく手作業でレンズを貼り付けた場合の
レンズの中心肉厚の分布状態を示すものである。すなわ
ち、本発明のレンズの貼り付け方法を適用してレンズを
貼り付けた場合には、図４の（ａ）に見られるように、
加工したレンズの中心肉厚は、全て±０．０４ｍｍの公
差内に収まっている。しかしながら、従来技術のように
単に手作業でレンズを貼り付けた場合には、レンズがリ
セス皿の基準面から浮きあがって、レンズの肉厚がバラ
ツキ許容範囲を外れるものが見られた。このように、本
発明のレンズの貼り付け方法によりレンズをリセス皿に
貼り付けることにより、レンズが確実にリセス皿の基準
面にぴったりと密着して貼り付けられることが確認でき
た。

【００３２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
次に記載するような効果を奏することができる。

【００３３】（１）レンズをリセス皿の基準面に完全に
密着させた状態で貼り付けることができるために、レン
ズの寸法精度を高精度に加工することが可能となる。

【００３４】（２）作業者等による貼り付けミスがなく
なり、レンズの寸法精度をバラツキなく高精度に加工す
ることが可能となる。

【００３５】（３）レンズの貼り付け不良が発生してい
る場合には真空圧力が一定値に達しないこととなり、レ
ンズの貼り付け状態を事前に確認することができ、レン
ズの加工品質の安定化と生産性の向上を図ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るリセス皿におけるレンズ貼り付け
装置の概略図である。

【図２】本発明に基づき具体的に研磨加工を行なったレ
ンズ形状の一例を示す概略図である。

【図３】本発明に基づいてレンズを貼り付けたリセス皿
の具体的形状を示す断面図である。

【図４】（ａ）は本発明に基づいてリセス皿にレンズを
貼り付けて実際に研磨加工した場合のレンズの中心肉厚
の分布状態を示す図であり、（ｂ）は従来技術によりリ
セス皿にレンズを貼り付けて実際に研磨加工した場合の
レンズの中心肉厚の分布状態を示す図である。

【図５】（ａ）および（ｂ）は、従来のリセス皿に対す
るレンズの貼り付け方法を説明する断面図であり、特
に、（ｂ）はレンズがリセス皿の基準面に完全に密着し
ていない状態を示す模式断面図であり、（ｃ）は、
（ｂ）に図示するようにリセス皿の基準面から浮いた状
態で固定されたレンズを加工した際に生じるレンズの不
良品の形状を示す図である。

【符号の説明】

Ｌ レンズ １ リセス皿 ２ 位置決め凹所 ２ａ 吸引孔 ３ 基準面 ４ 軸部 ４ａ 中央吸引孔 ５ リセス皿受け部 ５ａ 内径部 ５ｂ 上面 ５ｃ Ｏリング ６ 配管 ７ 真空ポンプ ８ 圧力計 ９ タイマー １０ 警報装置 １１ 弁 １５ 接着剤

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 レンズを位置決めする基準面を有するリ
   セス皿に接着剤を塗布し、該接着剤を介してリセス皿に
   レンズを接着して貼り付けるレンズ貼り付け方法におい
   て、リセス皿に接着剤を塗布した後に前記接着剤上にレ
   ンズを載置し、前記リセス皿中心部下方より真空引きし
   て前記レンズを前記リセス皿に接着し貼り付けることを
   特徴とするリセス皿におけるレンズ貼り付け方法。
2. 【請求項２】 リセス皿に接着剤を塗布する前に、前記
   リセス皿を所定温度に加熱しておくことを特徴とする請
   求項１記載のリセス皿におけるレンズ貼り付け方法。
3. 【請求項３】 リセス皿下方よりの真空引きが規定圧力
   に達するまで、前記リセス皿の真空引きを行なうことを
   特徴とする請求項１または２記載のリセス皿におけるレ
   ンズ貼り付け方法。
4. 【請求項４】 レンズを位置決めする基準面を有するリ
   セス皿を着脱自在に装着可能なリセス皿受け部と、該リ
   セス皿受け部に配管を介して連通され、前記リセス皿に
   レンズを載置した状態で真空状態を確保しうる真空ポン
   プと、真空状態を計測しかつ表示する圧力計を備えてい
   ることを特徴とするリセス皿におけるレンズ貼り付け装
   置。
5. 【請求項５】 リセス皿にレンズを載置した状態におけ
   る真空状態が所定の規定値に到達しない場合に警告を発
   する機能を備えていることを特徴とする請求項４記載の
   リセス皿におけるレンズ貼り付け装置。
6. 【請求項６】 リセス皿は、レンズを載置する基準面を
   形成した位置決め凹所と、該位置決め凹所を下方中央部
   に連通させる吸引孔を有していることを特徴とする請求
   項４または５記載のリセス皿におけるレンズ貼り付け装
   置。