JP2000078037A - 増幅器のプリディストータと増幅装置 - Google Patents

増幅器のプリディストータと増幅装置

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JP2000078037A JP10248153A JP24815398A JP2000078037A JP 2000078037 A JP2000078037 A JP 2000078037A JP 10248153 A JP10248153 A JP 10248153A JP 24815398 A JP24815398 A JP 24815398A JP 2000078037 A JP2000078037 A JP 2000078037A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は移動体通信などに用いる増幅器のプリ
ディストータに関し、信号の広帯域化に起因する隣接チ
ャネル漏洩電力の低減を目的とする。 【解決手段】増幅器出力の隣接チャネル漏洩電力を低減
するために、増幅器に入力される入力信号を増幅器の入
力対出力特性の逆特性により予め変形するプリディスト
ータであって、入力信号の微分または積分またはその両
方の値に対応する補正係数を決定し、その補正係数にも
基づいて入力信号を変形して最終的なプリディストーシ
ョン信号とするように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は移動体通信などに用
いる増幅器のプリディストータとこのプリディストータ
を用いた増幅装置に関する。このプリディストータは広
帯域信号を扱う高周波電力増幅器に適用して特に有用で
ある。
【0002】
【従来の技術】移動体通信では、隣接するチャネルに妨
害を与えないように隣接チャネル漏洩電力(ACP)の
低い電力増幅器が要求される。この要求を満たすため
に、従来は、増幅器の出力電力を隣接チャネル漏洩電力
が少なくなる程度まで抑える出力バックオフ法を用いた
り、増幅器の入出力特性の逆特性で送信信号を予め変形
して増幅器に入力するプリデイストーション法(特願平
09−297297号「歪補償回路」)を用いるなどし
て、送信信号を線形化する手法がとられている。
【0003】前者の出力バックオフ法では、増幅器は出
力が大きいほど効率が高いものであるのに出力バックオ
フ法はその動作出力を小さくするものであるため、効率
の高い動作ができないという問題があるので、後者のプ
リディストーション法の採用が望まれる。
【0004】図15には、この後者のプリディストーシ
ョン法を行うプリディストータが示される。図15にお
いて、入力したベースバンド信号はプリディストータ2
1において変形され、その変形された入力信号はD/A
変換器22を介して送信機23に入力される。この送信
機23は入力信号電力を送信電力まで増幅するための電
力増幅器を内蔵するものであり、この電力増幅器は一般
に非線形特性f(x) を有している。プリディストータ2
1はこの非線形特性f(x) の逆特性f(x) -1で入力信号
を変形する回路であり、よってこの変形された入力信号
は送信機23における増幅器の非線形特性f(x) で変形
されることで、元の線形な入力信号の形に線形化される
ことになる。
【0005】図16にはこのプリディストータ21の従
来例が示される。この従来例はベーバンド信号として直
交変調されたIチャネル信号とQチャネル信号が入力さ
れる場合のものである。図16において、振幅値演算部
1はベースバンド帯の入力信号I、Qの振幅値をI2
2 の演算により求める。逆特性付加部2は後段の増幅
器(図示しない)の入力対出力特性f(x) の逆特性f
(x) -1で振幅値(I2 +Q2 )をあらかじめ変形させ
る。乗算部5,6は、入力したベースバンド信号I,Q
に逆特性付加部2で逆特性を付加した信号をそれぞれ
乗じて最終的なプリディストーション信号Ipd、Qpdと
する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の高
周波電力増幅器では、増幅器の入力対出力特性の非線形
性に基づいて歪が発生することが知られているが、さら
に、送信信号が広帯域信号となる場合には、増幅器のバ
イアス回路の周波数特性、増幅器の周波数偏差、増幅器
の高調波負荷特性偏差などの、上記入力対出力特性の非
線形性以外の要因によっても歪が大きくなる。このた
め、狭帯域と同じ隣接チャネル漏洩電力特性を得るに
は、増幅器の出力を下げなければならず、結果として効
率が劣化するという問題がある。
【0007】図9と図10は狭帯域信号と広帯域信号の
隣接チャネル漏洩電力(ACP)を比較するための図で
あり、図9には狭帯域信号の隣接チャネル漏洩電力のス
ペクトラムの例が示され、図10には広帯域信号の隣接
チャネル漏洩電力のスペクトラムの例が示される。これ
らの図から明らかなように、この例では、狭帯域の場合
(図9)に比較して広帯域の場合(図10)では、同じ
隣接チャネル漏洩電力特性を得るのに約─6dBの出力バ
ックオフが必要である。
【0008】しかしながら、従来の線形化手法だけで
は、このような広帯城化に起因した隣接チャネル漏洩電
力を低減することができなかった。
【0009】また、線形補償をする場合に、送信機の出
力電力や周波数や温度などが変化すると隣接チャネル漏
洩電力の低減効果が安定して得られなかったり、元々線
形な領域では増幅器の効率が向上しないという問題もあ
った。
【0010】本発明は上述の問題点に鑑みてなされたも
のであり、広帯域化に起因する隣接チャネル漏洩電力の
低減を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】上述の課題を
解決するために、本発明においては、増幅器出力の隣接
チャネル漏洩電力を低減するために、増幅器に入力され
る入力信号を増幅器の入力対出力特性の逆特性により予
め変形するプリディストータであって、入力信号の微分
または積分またはその両方の値に対応する補正係数を決
定し、その補正係数にも基づいて入力信号を変形して最
終的なプリディストーション信号とするように構成した
増幅器のプリディストータが提供される。信号が広帯域
化した場合の増幅器のバイアス回路の周波数特性、増幅
器周波数偏差、増幅器の高調波負荷特性偏差などの要因
による歪に対しては、周波数応答に対応する入力信号の
微分値または積分値またはその両方の値に応じた補正係
数を決定し、この補正係数も用いて上記入力信号を変形
することによって、広帯域化に起因した隣接チャネル漏
洩電力を低減することができる。
【0012】上述のプリディストータは、入力信号の微
分または積分またはその両方の値にかえて、入力信号の
時系列における前回値と今回値との差信号に基づいて補
正係数を決定するように構成できる。このように構成す
ることで、メモリの節減や処理時間の高速化に対応した
より現実的な装置を実現できる。
【0013】上記のプリディストータにおいて、補正係
数は、予め測定された入力対2波相互変調歪特性に合う
ように予め決定されて記憶手段に保持されるように構成
できる。補正係数を解析的に求めることは容易ではない
ので、このような構成とすることで、プリディストータ
をより簡単に実現することができる。
【0014】また本発明においては、他の形態として、
上記のプリディストータを用いて増幅器に入力する入力
信号を変形するように構成した増幅装置において、該増
幅器の出力電力に応じて係数を決定し、その係数をプリ
ディストータの入力信号に演算することにより、プリデ
ィストーション信号に与える変形を増幅器の出力電力に
応じて変化させるように構成した増幅装置が提供され
る。この増幅装置においては、目標とする出力電力の大
きさに応じて、プリディストーション信号を計算するプ
リディストータに入力する入力信号に、係数を乗じてプ
リディストーション信号を可変することができ、これに
よって広い出力範囲に対して隣接チャネル漏洩電力の低
減を行うことができる。
【0015】また本発明においては、また他の形態とし
て、上記のプリディストータを用いて増幅器に入力する
入力信号を変形するように構成した増幅装置において、
増幅器の出力信号における隣接チャネルの信号をモニタ
し、その隣接チャネルの信号のレベルが低くなるように
該プリディストータの補正係数を変更する帰還回路を備
えた増幅装置が提供される。隣接チャネル漏洩電力のレ
ベルをモニタすることによってそのレベルが低くなるよ
うに上記係数を適応可変する帰還回路を用いれば、周波
数、入力レベル、温度などの外乱に強い隣接チャネル漏
洩電力の低い増幅装置が実現できる。
【0016】また本発明においては、また他の形態とし
て、上記のプリディストータを用いて増幅器に入力する
入力信号を変形するように構成した増幅装置において、
増幅器の出力電流をモニタし、隣接チャネル漏洩電力が
低い場合には、電源電圧またはバイアス値を変更して電
流値を下げ、隣接チャネル漏洩電力が許容値を越えない
範囲で増幅器の効率を上げるように構成した増幅装置が
提供される。このように、増幅器の電流値をモニタして
隣接チャネル漏洩電力が規定の範囲内におさまるように
増幅器の電源電圧やバイアス値を変更して電流値を下げ
ることによって、増幅器の効率を向上することができ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態を説明する。図1には本発明の一実施例としての
プリディストータの構成が示される。このプリディスト
ータは、IチャネルとQチャネルの直交変調を行う送信
機に適用されるものであり、送信するIチャネルとQチ
ャネルのIQ信号(I信号とQ信号)を、あらかじめ増
幅器の入力対出力特性の逆特性で変形して、その変形さ
れたプリディストーション信号を増幅器に入力するもの
であるが、本発明では、このプリディストーション信号
をさらに広帯域化の影響を補償するための補正係数で変
形して最終的なプリディストーション信号(Ipd, Qp
d)とするものである。
【0018】図1において、振幅値演算部1はベースバ
ンド帯の入力信号I、Qの振幅値をI2 +Q2 の演算に
より求めるものである。逆特性付加部2は後段の増幅器
(図示しない)の入力対出力特性f(x) の逆特性f(x)
-1で振幅値(I2 +Q2 )をあらかじめ変形させるもの
であり、ここでは逆特性f(x) -1を振幅値(I2
2 )に乗算する処理を行うものとする。
【0019】微分積分演算部3は逆特性付加部2で逆特
性f(x) -1でプリディストーションされた信号を微分し
て微分信号aとして出力し、また積分して積分信号bと
して出力するものである。
【0020】係数発生部4は微分積分演算部3からの微
分信号aの値に応じて係数αを、また積分信号bの値に
応じて係数βをそれぞれ発生するものであり、この係数
発生部4は係数α,βを微分信号a,積分信号bにそれ
ぞれ対応させて予め記憶したメモリテーブルの形態で実
現される。
【0021】5、6は、入力したベースバンド信号I,
Q に逆特性付加部2において逆特性f(x) -1でプリデ
ィストーションした信号をそれぞれ乗じるとともに、係
数発生部4で発生した係数αとβも乗じる乗算部であ
り、この乗算部5,6の出力信号がそれぞれ最終的なプ
リディストーション信号Ipd、Qpdとなって後段の増幅
器に入力される。
【0022】かかる構成とすることで、ベースバンド入
力信号I,Qを、増幅器の逆特性f(x) -1でプリディス
トーションすることで増幅器の非線形性に起因する歪を
補償するとともに、補正係数αおよびβによってもプリ
ディストーションすることで送信信号の広帯域化に起因
する歪を補償して、これらの歪を除去するものである。
【0023】この実施例の動作原理を以下に説明する。
増幅器の整合回路やバイアス回路は周波数特性を持つ。
例えば、図2の様な非常に簡単化したバイアス回路を考
える。図2中、E0 は電圧原、Lはバイアス回路のイン
ダクタンス、R(t) は増幅素子に相当する抵抗である。
通常、増幅素子は電流源と見なすが、ここでは、入力電
力によって変化する抵抗R(t) と見なすと、原理が分か
りやすい。
【0024】バイアス回路のインダクタンスLにより、
増幅素子にかかる電圧V(t) は V(t) =R(t) ・I(t) =E0 −L・(dI(t) /dt) (第1式) 電流値I(t) はこの微分方程式を解いて得られる。変調
周波数が低い場合は2項目における電流値I(t) の微係
数(dI(t) /dt) は非常に小さいので、0とみなすこと
ができる。一方、広帯域信号の場合、変調周波数が高い
ので、インダクタンスLの影響がでてくる。
【0025】すなわち、前出の第1式を抵抗R(t) で除
算すると、 I(t) =E0 /R(t) −〔 (L/R(t))・(dI(t) /dt) 〕 (第2式) となる。ここで、 I=I0 +ΔI (第3式) I0 =E0 /R(t) (第4式) (ただし、I0 はインダクタンスLの影響がないとした
場合の電流)として、ΔIが小さいとすると、 I=I0 〔1+( L/R(t) 2 ) ・(dR(t) /dt) 〕 〈第5式) となる。抵抗R(t) は入力電力Pi の関数として測定さ
れるので、 I=I0 〔1+(L/R(t) 2 ) ・(dR(t) / dPi ) ・(dPi /dt) 〕 (第6式) となる。
【0026】つまり、広帯域信号でインダクタンスLの
影響があるときに増幅素子を流れる電流は、インダクタ
ンスLの影響のない場合の電流値I0 を係数倍すること
で求められる。その係数は第6式の括弧の中のようにな
る。ここで、電流値Iの変化の割合は利得の変化の割合
とほぼ等しいので、第6式によって広帯域信号に関する
増幅器の利得特性を知ることができ、この利得特性に基
づいて増幅器の出力から歪を除去できるよう増幅器の入
力信号をその歪と逆特性で変形することで、最終的な増
幅器出力から広帯域化に起因した歪を除去することがで
きる。
【0027】つまり、あらかじめ搬送波CWの入出力特
性から抵抗Rとその入力電力Pi に対する微係数(dR
(t) / dPi ) を求めておけば、この微係数に対応した
第6式の括弧内の値(L/R(t) 2 ) ・(dR(t) / dP
i ) の逆数を補正値として予めメモリに蓄えておき、入
力電力Pi の微分値(dPi /dt) をそのメモリにアドレ
スとして入力することで、それに対応する補正値が求ま
る。それによって歪を補正できる。
【0028】なお、実際の増幅素子とそのバイアス回路
は、図3にその等価回路を示すように、キャパシタCを
含む高周波の負荷回路などが影響したりするので、 Ic +(1/C)・∫Ic dt =I・R (第7式) のように積分が必要になったりする。このため、図1の
実施例では、入力信号I 2 +Q2 を微分するだけでなく
積分もして、その微分積分結果に対して補正値(係数
α,β)を発生している。
【0029】このように、実際の回路は、入力信号の微
分だけでなく積分が必要になったり、あるいは第3式の
ような近似ができなくなったりするので、補正値を解析
的に求めるのは非常に困難である。
【0030】そこで、かかる解析的手法による係数の決
定法にかえて、図4に示すような係数決定法が有用であ
る。この係数決定法は、入力信号に対して数MHz離れた
2波のIMD(相互変調歪)特性を予め測定してメモリ
に蓄えておき、その測定したIMD特性と合うように係
数を決定するものである。
【0031】図4において、入力信号x(t) としては、
ベースバンド信号I,Qの振幅(I 2 +Q2 )が入力さ
れる。入出力特性演算部10はこの入力信号x(t) に対
して、後段増幅器の振幅の特性関数f(x) と位相の特性
関数g(x) とを付与して乗算部15に入力する。
【0032】また、入力信号x(x) は微分演算部11に
入力され、その微分結果である微分信号aは係数α決定
部13に入力される。同様に、入力信号x(x) は積分演
算部12に入力され、その積分結果である積分信号bは
係数β決定部14に入力される。
【0033】係数α決定部13は、入力された微分信号
aに対応して係数α α=A+Ba+Ca2 +Da3 +Ea4 +・・・ の各定数A,B,C,D・・・を後述の方法で決定し、
その結果求められる係数αを乗算部15に入力して入出
力特性演算部10の出力信号に乗じる。
【0034】同様に、係数β決定部14は、入力された
積分信号bに対応して係数β β=A´+B´b+C´b2 +D´b3 +E´b4 +・・・ の各定数A´,B´,C´,D´・・・を後述の方法で
決定し、その結果求められる係数βを乗算部15に入力
して入出力特性演算部10の出力信号に乗じる。
【0035】FFT部16は乗算部15の出力信号に対
して高速フーリエ変換(FFT)を施して周波数成分に
変換する回路であり、その出力信号を減算部17に入力
する。
【0036】減算部17には他方の入力信号として前述
した入力対2波IMD特性が入力されており、減算部1
7はFFT部16の出力信号とこの入力対2波IMD特
性との差分を求める。この差分信号は前述の係数α決定
部13と係数β決定部14とに最適化のための信号とし
て入力される。係数α決定部13と係数β決定部14と
は、この差分信号が「0」若しくは最小値化されるよう
に、それぞれの定数A,B,C,D・・・と定数A´,
B´,C´,D´・・・の値を適宜変えてそれらの値を
決定するものである。
【0037】図5には、微分積分値を単位時間前の信号
との差Δとすることによって、メモリの節約や処理時間
の高速化に対応したより現実的な実施例が示される。図
5において、振幅値演算部1、逆特性付加部2、乗算部
5,6は前述の図1の実施例と同じ機能のものである。
この実施例では、逆特性付加部2からの出力信号は乗算
部5,6に入力されるとともに、遅延部8と減算部7に
入力される。遅延部8は入力信号を単位時間遅延させる
回路である。減算部7は逆特性付加部2の出力信号から
遅延部8の出力信号を減算する回路であり、その差信号
Δは係数発生器9に入力される。この係数発生器9は、
入力した差信号Δに応じて係数h(Δ)を発生し、それ
を乗算部5,6にそれぞれ入力してベースバンド入力信
号I,Qに乗じる。これによりベースバンド信号I,Q
に対して、増幅器の非線形性に基づく歪と送信信号の広
帯域化に基づく歪の補正が行われる。
【0038】図6には、前述の図4の係数決定回路と同
様にして、係数h(Δ)を決定するための回路が示され
る。図6において、入出力特性演算部10、乗算部1
5、FFT部16、減算部17の構成は図4のものと同
じである。相違点として、入力信号x(t) (=I2 +Q
2 )は、信号を単位時間遅延させる遅延部18と減算部
19に入力され、減算部19でその差信号Δが求めら
れ、その差信号Δは係数決定部20に入力される。係数
決定部20は、係数h(Δ) h(Δ)=A+BΔ+CΔ2 +DΔ3 +EΔ4 +・・・ の各定数A,B,C,D,E・・・を、減算部17の出
力信号が「0」若しくは最小値化されるように決定す
る。
【0039】図7と図8はこの図5の実施例により広帯
域信号の補正を考慮したプリディストーションを行った
場合と行わない場合の隣接チャネル漏洩電力を比較する
図である。図7は上記補正を考慮していないプリディス
トーションの結果を示すもので、図中の(I)は逆特性
f(x) -1による補償も行わないプリディストーション無
しの場合の特性、(II)は逆特性f(x) -1による補償だ
けで差分Δに応じた係数による補償を行っていないプリ
ディストーションの場合の特性である。図8は上記補正
を考慮したプリディストーションの結果を示すもので、
図中の(I)は逆特性f(x) -1による補償も行わないプ
リディストーション無しの場合の特性、(II)は逆特性
f(x) -1による補償だけでなく差分Δに応じた係数によ
る補償も含めたプリディストーションの場合の特性であ
る。
【0040】これらの図からも明らかなように、本発明
の手法を用いることによって、広帯域信号についての補
正を考慮していない図7の特性では、隣接チャネル漏洩
電力の低減効果が現れないが、この補正を考慮した図8
の特性では隣接チャネル漏洩電力の低滅効果が現れる。
【0041】図14にはこの図5のプリディストータの
考え方を更に発展させたプリディストータの構成例が示
される。図5の差分を用いる方法では、差分の取りうる
値だけメモリー量が必要だけが、差分の取りうる値を正
の数と負の数、つまり信号が増加するときと滅少すると
きのふたつに大別して、その二種類の場合に対応する逆
特性f1(x) -1 ,f2(x) -1 を記憶したメモリを持つ事
によっても、ある程度の隣接チャネル漏洩電力の低減が
期待でき、メモリを節約できる。
【0042】図14中、振幅値演算部1、乗算部5,6
は前述のものと同じである。遅延部41は信号を1単位
時間遅延させるもの、比較器40は振幅値演算部1から
の信号と遅延部41からの信号とを比較してその正負を
判定してその正負結果を振幅(I2 +Q2 )とともに出
力するもの、逆特性付加部37は比較器40の比較結果
が正の時の逆特性f1 (x) -1を振幅値(I2 +Q2 )に
付加するもの、逆特性付加部38は比較器40の比較結
果が負の時の逆特性f2 (x) -1を振幅値(I2+Q2
に付加するもの、セレクタ39は比較器40の比較結果
が正の時には逆特性付加部37の出力信号を、負の時に
は逆特性付加部38の出力信号を選択してそれぞれ乗算
部5,6に送出するものである。
【0043】次に、上述のプリディストータを用いて、
送信機の出力電力や周波数や温度などの変化に対しても
安定した隣接チャネル漏洩電力の低減効果が得られるよ
うな構成を付加した実施例について説明する。
【0044】図11には送信機の出力電力の変化を補償
できるようにした実施例が示される。送信機23の出力
電力を可変する場合は、通常、送信機23に入力される
IQ信号(I信号とQ信号)の振幅を小さくするもので
あるが、しかし、そうすると信号のダイナミックレンジ
がとれなくなり、信号雑音比が劣化する。これを避ける
ためにIQ信号は一定の強度としておき、送信機23内
で、電力増幅器の前段に置かれた減衰器や可変利得増幅
器で出力電力を可変する。このような減衰器や可変利得
増幅器を用いた結果、電力増幅器に入力する電力が小さ
くなると、この電力増幅器の歪は通常小さくなる。その
ため、入力されたIQ信号にプリデイストーションが施
されたままだと、かえって隣接チャネル漏洩電力が大き
くなってしまう。
【0045】これを避けるために、送信機23の目標出
力値に対して、その減衰器や可変利得増幅器のゲイン
(減衰量や増幅度)を記憶した減衰量メモリ24を設け
ておいて、その出力で送信機23の減衰器や可変利得増
幅器のゲインを制御するとともに、その減衰量メモリ2
4の出力値に応じてプリディストータ50に入力される
ベースバンド入力信号の振幅値を調整するようにしてい
る。
【0046】すなわち、送信機23の出力電力を小さく
する場合は、プリデイストーションを計算するプリディ
ストータ50に目標とする出力値を係数メモリ25を介
して入力し、出力が小さい場合には、その出力が小さく
なる分に応じて入力信号の振幅値を小さくするような係
数を係数メモリ25にテーブルとして持ち、その値をI
Q信号の振幅値を計算する振幅値演算部1の入力側の信
号に乗じたうえで、プリディストーションの係数を求め
ることによって、この問題を解決することができる。
【0047】図12には上述の送信電力の変化に加え
て、増幅器の温度や周波数による変化も補償できるよう
にした実施例が示される。この実施例では、増幅器の温
度や周波数による変化に対応するために、送信機23の
出力の一部をモニタし、送信帯域f0 と隣接チャネル帯
域f0 ±facp をフイルタ26〜28で分離して各電力
を検出器29〜31で検出する。そしてそれらの電力を
OR回路32と減算器3で比較する。送信帯域の信号
は、隣接チャネル漏洩電力が既定の値(許容値を超えな
い範囲の値)になるだけ減衰させる。送信帯城の電力が
隣接チャネル帯域の電力よりも小さければ、目標の出力
に対応した係数を求めるメモリ25の値を変更し、計算
上の目標とする出力値を最適化するようにIQ信号に乗
ずる係数テーブルを変更する。
【0048】図13には上述の送信電力、増幅器の温度
や周波数による変化に加えて、電力増幅器に流れる電流
値の大きさも考慮できるようにした実施例が示される。
この実施例では送信機23の電力増幅器に流れる電流値
を電流値モニタ36でモニターして制御回路34に通知
するようにしておく。この制御回路34は、隣接チャネ
ル帯域の方が大きければ、目標の出力に対応した係数を
求める減衰量メモリ24の出力値を係数メモリ35によ
り変更して計算上の出力値を上げ、電力増幅器の電源電
圧またはバイアス電圧を変更し、増幅器の電流を下げる
ようにする。このようにすれば、電流を下げることによ
って増大した隣接チャネル漏洩電力分を、係数メモリ2
5によりプリディストータ50でのプリディストーショ
ンの係数を変更することで改善し、効率を向上すること
ができる。この場合、電力増幅器の利得は低下するが、
その分は電力増幅器の前段の減衰器または可変利得増幅
器の利得を上げることによって、全体の利得の低下を防
ぐようにする。
【0049】
【発明の効果】このようにして、本発明では、増幅器の
非線形性に起因した隣接チャネル漏洩電力を低減するに
あたって、信号が広帯域化することによって起こる隣接
チャネル漏洩電力も低滅することができる。
【0050】また、周波数や温度などの変化による増幅
器の特性が変化しても隣接チャネル漏洩電力を低減する
ことができ、電流値を下げることによって増幅器の効率
も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としてのプリディストータの
構成例を示す図である。
【図2】簡素化した増幅素子とバイアス回路の等価回路
を示す図である。
【図3】増幅素子とバイアス回路のより実際に近い等価
回路を示す図である。
【図4】実施例のプリディストータの係数決定手法の例
を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例としてのプリディストータ
の構成例を示す図である。
【図6】他の実施例のプリディストータの係数決定手法
の例を示す図である。
【図7】本発明による隣接チャネル漏洩電力の低減効果
を従来法と比較するための図であって、従来法によるプ
リディストーションの結果を示す図である。
【図8】本発明による隣接チャネル漏洩電力の低減効果
を従来法と比較するための図であって、本発明によるプ
リディストーションの結果を示す図である。
【図9】狭帯城信号と広帯域信号の隣接チャネル漏洩電
力の比較を行うための図であって、狭帯域信号の隣接チ
ャネル漏洩電力のスペクトラムの例である。
【図10】狭帯城信号と広帯域信号の隣接チャネル漏洩
電力の比較を行うための図であって、広帯域信号の隣接
チャネル漏洩電力のスペクトラムの例である。
【図11】送信機の送信電力の変化を補償して隣接チャ
ネル漏洩電力低減を行う構成の例を示す図である。
【図12】送信機の送信電力や、増幅器の温度や周波数
による変化等を補償して隣接チャネル漏洩電力低減を行
う構成の例を示す図である。
【図13】送信機の送信電力や出力電流、増幅器の温度
や周波数による変化等を補償して隣接チャネル漏洩電力
低減を行う構成の例を示す図である。
【図14】本発明のプリディストータの考えかたを更に
発展させたプリディストータの構成例を示す図である。
【図15】従来のプリディストーション法を説明するた
めの図である。
【図16】従来のプリディストータの構成例を示す図で
ある。
【符号の説明】
1 振幅値演算部 2 逆特性付加部 3 微分積分演算部 4 係数発生部 5,6 乗算部 7 減算部 8 遅延部 9 係数h(Δ)発生部 10 入出力特性演算部 11 微分演算部 12 積分演算部 13 係数α決定部 14 係数β決定部 15 乗算部 16 FFT(高速フーリエ変換)部 17 減算部 18 遅延部 19 減算部 20 係数h(Δ)決定部 21,50 プリディストータ 22 D/A変換器 23 送信機 24 減衰量メモリ 25,35 係数メモリ 26〜28 フィルタ 29〜31 電力検出器 32 OR回路 33 減算器 34 制御回路 35 電流値モニタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5J090 AA01 AA41 CA27 FA08 FA17 GN03 GN05 GN06 HA26 HN01 HN02 HN03 HN04 HN06 HN07 HN08 KA13 KA15 KA23 KA25 KA26 KA30 KA31 KA34 KA44 KA55 MA11 NN16 SA14 TA01 TA03 5J100 JA03 LA03 LA04 LA06 LA07 LA08 LA09 LA11 QA01 QA02 SA01 5K060 BB05 BB07 DD04 FF00 HH03 HH33 HH34

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】増幅器出力の隣接チャネル漏洩電力を低減
    するために、増幅器に入力される入力信号を増幅器の入
    力対出力特性の逆特性により予め変形するプリディスト
    ータであって、入力信号の微分または積分またはその両
    方の値に対応する補正係数を決定し、その補正係数にも
    基づいて入力信号を変形して最終的なプリディストーシ
    ョン信号とするように構成した増幅器のプリディストー
    タ。
  2. 【請求項2】該補正係数は、増幅器のバイアス回路の周
    波数特性、増幅器の周波数偏差または増幅器の高調波負
    荷特性偏差またはこれらの組合せを要因とする歪を削減
    するよう決定されるものである請求項1記載の増幅器の
    プリディストータ。
  3. 【請求項3】入力信号の微分または積分またはその両方
    の値にかえて、入力信号の時系列における前回値と今回
    値との差信号に基づいて補正係数を決定するものである
    請求項1または2記載の増幅器のプリディストータ。
  4. 【請求項4】該補正係数は、予め測定された入力対2波
    相互変調歪特性に合うように予め決定されて記憶手段に
    保持されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の
    増幅器のプリディストータ。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載のプリディ
    ストータを用いて増幅器に入力する入力信号を変形する
    ように構成した増幅装置において、該増幅器の出力電力
    に応じて係数を決定し、その係数をプリディストータの
    入力信号に演算することにより、プリディストーション
    信号に与える変形を増幅器の出力電力に応じて変化させ
    るように構成した増幅装置。
  6. 【請求項6】請求項1〜4のいずれかに記載のプリディ
    ストータを用いて増幅器に入力する入力信号を変形する
    ように構成した増幅装置において、増幅器の出力信号に
    おける隣接チャネルの信号をモニタし、その隣接チャネ
    ルの信号のレベルが低くなるように該プリディストータ
    の補正係数を変更する帰還回路を備えた増幅装置。
  7. 【請求項7】請求項1〜4のいずれかに記載のプリディ
    ストータを用いて増幅器に入力する入力信号を変形する
    ように構成した増幅装置において、増幅器の出力電流を
    モニタし、隣接チャネル漏洩電力が低い場合には、電源
    電圧またはバイアス値を変更して電流値を下げ、隣接チ
    ャネル漏洩電力が許容値を越えない範囲で増幅器の効率
    を上げるように構成した増幅装置。
  8. 【請求項8】増幅器出力の隣接チャネル漏洩電力を低減
    するために、増幅器に入力される入力信号を増幅器の入
    力対出力特性の逆特性により予め変形するプリディスト
    ータであって、入力電力が増える場合と減る場合とで、
    入力信号に異なる係数を演算してプリディストーション
    信号とするように構成した増幅器のプリディストータ。
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