JP2000068042A - 電磁調理器用器物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 安価で使い捨て可能であり、かつ発熱体等の
別部材を必要とせず、電磁調理器を用いて簡便に被調理
物の調理ができる電磁調理器用器物を提供する。 【解決手段】 被調理物を収容する収容部を有する器物
であって、少なくとも前記収容部の底面部が、アルミニ
ウム薄層と、最外層として非導電性の保持層とを有する
電磁調理器用器物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電磁誘導加熱を利
用する電磁調理器用の鍋等の器物、特に安価で使い捨て
可能な電磁調理器用器物に関する。

【０００２】

【従来の技術】電磁誘導加熱を利用する電磁調理器は、
内蔵するコイルより磁力線を発生させ、この磁力線が鍋
等の器物に作用し、器物に渦電流を発生させて、発熱さ
せる。従って、器物はその底面が導電性素材で形成され
ていることが必要だが、発熱は渦電流値と素材の抵抗値
により決定されるため、比抵抗の小さいアルミニウムは
同じ断面積を有する鉄に比較して発熱しにくく、通常上
記のような電磁調理器では、一般的な底面部の厚みを有
する器物としては、主に底面が鉄を多く含む素材からな
る器物のみが使用できるようになっている。

【０００３】一方、旅館等で使い捨ての紙鍋の卓上使用
が一般に行われているが、従来は難燃性の紙で形成され
た鍋を固形燃料等による直火で加熱する方法が用いられ
ていた。この方法は、直接、固形燃料を燃焼させるた
め、着火装置で着火する必要があり、また煙や臭い、余
分な熱が発生し、情緒を損ないやすい。電磁調理器を用
いる紙鍋も存在するが、上記のような理由により、紙鍋
内に、鉄を多く含む素材からなる厚板状の発熱体を予め
収容した状態で使用するため、取り扱いが不便である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決するために、安価で使い捨て可能であり、かつ発
熱体等の別部材を必要とせず、電磁調理器を用いて簡便
に被調理物の調理ができる電磁調理器用器物の提供を目
的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、電磁調理
器が、一般の底面部が厚板状のアルミニウム層を有する
鍋を加熱できなくても、アルミニウム箔等の厚みが小さ
いアルミニウム素材は加熱可能なことから本発明を完成
させるに至った。

【０００６】即ち、本発明は、被調理物を収容する収容
部を有する器物であって、少なくとも前記収容部の底面
部が、アルミニウム薄層と、最外層として非導電性の保
持層を有する電磁調理器用器物を提供する。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下に図面を用いて本発明をさら
に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。 ［実施形態１］図１、２に本発明の電磁調理器用器物の
実施形態の一例である電磁調理器用鍋を示す。図１は、
電磁調理器用鍋の構成を示す底面部に垂直な面での断面
図、図２は図１の電磁調理器用鍋の外観を示す斜視図で
ある。

【０００８】図１の電磁調理器用鍋１は、底面部２と側
面部３からなる上部が開放された収容部４を有する。底
面部２は、収容部４側のアルミニウム薄層５と、収容部
４の最外層として、耐水性および耐熱性を有する和紙か
らなる保持層６との２層から構成されている。アルミニ
ウム薄層５は、市販されているアルミニウム箔と同種の
素材からなり、厚みもアルミニウム箔と同等の１５μｍ
厚で均一に形成されている。

【０００９】なお、底面部２は、使用時に電磁調理器の
磁力線発生面に密着するよう平坦な平面状に成形されて
いる。側面部３は、被調理物を収容できる高さを有し、
底面部の保持層６と同一素材の和紙から形成されてい
る。電磁調理器用鍋１全体の形状は、図２に示されるよ
うに通常一般に使用される鍋と同様の浅型円筒形状であ
る。

【００１０】図１の電磁調理器用鍋の作用を図３に示
す。電磁調理器用鍋の収容部４に被調理物（１０）を入
れて、市販されている電磁調理器１１の磁力線発生面上
に電磁調理器用鍋１を載置し、電磁調理器を作動させる
と、電磁調理器より発生した磁力線１２が電磁調理器用
鍋１のアルミニウム薄層５に作用し、渦電流を発生させ
る。アルミニウム薄層は、一般のアルミニウム製等の厚
板状のアルミニウム層を有する鍋に比較して厚みが十分
薄いため、抵抗値が大きくなり、渦電流により発熱す
る。アルミニウム薄層５は、被調理物１０と直接接して
おり、発生した熱１３が伝わって被調理物１０が加熱さ
れる。アルミニウム薄層５は、非常に厚みが小さいが、
保持層６により保持されているため、調理時や運搬時に
底面部が破損するなどして、収容されている被調理物が
こぼれるたり、加熱機能が損なわれることはない。

【００１１】［実施形態２］本発明の電磁調理器用器物
は、少なくとも収容部の底面部において、アルミニウム
薄層と、最外層として非導電性の保持層を有すればよい
が、さらに上記本発明の作用を損なわない範囲で、底面
部に他層を有していてもよい。

【００１２】図４に本発明の電磁調理器用器物の実施形
態の他の例である電磁調理器用鍋の構成を示す。図４の
電磁調理器用鍋１'は、以下に記述する底面部の構成以
外は、上記実施形態１の電磁調理器用鍋１と同様の構成
であり、底面部２'と側面部３'からなる上部が開放され
た収容部４'を有する。底面部２'は、収容部４'側の最
内層として透水性および耐熱性を有する紙からなる保護
層７と、収容部４'の最外層として、耐水性および耐熱
性を有する和紙からなる保持層６と、保護層７および保
持層６の間に介在するアルミニウム薄層５との３層から
構成されている。アルミニウム薄層は、市販されている
アルミニウム箔と同種の素材からなり、厚みもアルミニ
ウム箔と同等の１５μｍ厚で均一に形成されている。

【００１３】上記電磁調理器用鍋１'は、上記実施形態
１の電磁調理器用鍋１に加えて、収容部４'側の最内層
として保護層７を有するため、アルミニウム薄層に直接
固体の被調理物や箸などの他の調理器具が接触せず、ア
ルミニウム薄層の破損や変形がより生じにくくなる。

【００１４】上記実施形態１または２において、アルミ
ニウム薄層は底面部のみに有しているが、図５に示され
るように側面部においてもアルミニウム薄層を有してい
てもよい。

【００１５】本発明の電磁調理器用器物は、上記実施形
態２における保護層の他にも、本発明の作用を損なわな
い範囲で、底面部にさらに他層を有していてもよい。

【００１６】本発明の電磁調理器用器物において、アル
ミニウム薄層の厚みは、通常一般に市販されている電磁
調理器で加熱可能な厚みであれば特に限定されず、所望
の発熱量、強度、コスト等に応じて適宜設定すればよい
が、好ましくは５〜５０μｍ、さらに好ましくは１０〜
３０μｍであるのがよい。５０μｍを超えると電磁調理
器による加熱が難しく、５μｍ未満であると強度および
発熱が不安定になる場合がある。

【００１７】本発明において、保持層を形成する素材と
しては、アルミニウム薄層による発熱を阻害しないよ
う、非導電性の素材であれば特に限定されず、合成紙、
和紙等の紙、木材、布等が挙げられ、これらの複合素材
であってもよい。また、所望の耐水性等を得るために表
面処理を施してあってもよい。保持層を形成する素材
は、本発明の電磁調理器用器物の使用目的上、少なくと
もアルミニウム薄層に接する部分は、アルミニウムの発
熱温度上限以上の耐熱性を有する必要がある。また、耐
水性および不透水性を有するのが好ましい。

【００１８】本発明において、保護層を形成する素材と
しては、アルミニウム薄層による発熱を阻害しないよ
う、非導電性の素材であれば特に限定されず、合成紙、
和紙等の紙、木材、布等が挙げられ、これらの複合素材
であってもよい。保護層を形成する素材は、収容する被
調理物の調理温度に応じて耐熱性を有する必要がある。
本発明の電磁調理器用器物の使用目的上、少なくともア
ルミニウム薄層に接する部分は、アルミニウムの発熱温
度上限以上の耐熱性を有する必要がある。また、水によ
る損傷がない程度の耐水性を有するのが好ましいが、加
えてアルミニウム薄層と水分が直接接触し、熱伝導が向
上するよう透水性を有するのがよい。

【００１９】本発明の電磁調理器用器物は、鍋料理等の
「煮る」、「ゆでる」などの調理に好適である。

【００２０】本発明において、保持層の厚みは、アルミ
ニウム薄層による発熱を阻害せず、アルミニウム薄層の
保持および調理用器物としての強度を有するのであれば
特に限定されない。例えば、和紙を用いる場合、一般的
に紙鍋等に使用される厚みのものを使用できる。

【００２１】本発明において、保護層の厚みは、アルミ
ニウム薄層により発熱した熱の被調理物への伝達を妨げ
ないのであれば特に限定はされない。例えば、和紙を用
いる場合、一般的に紙鍋等に使用される厚みのものを使
用できる。

【００２２】本発明の電磁調理器用器物の製造方法は、
特に限定されず、底面部と側面部を別個に作成して接合
してもよいし、一体に作成してもよい。成形方法も通常
一般に使用される方法を使用でき、使用する素材に応じ
て適宜選択される。底面部、あるいは底面部と側面部の
アルミニウム薄層を有する部分は、保持層と、アルミニ
ウム薄層、必要に応じて保護層等の他層を別個にシート
上に作成し、順次積層してもよいし、例えば保持層上に
直接アルミニウム薄層を蒸着等により形成してもよい。
各層、特にアルミニウム薄層と保持層は密着しているの
が好ましく、各層を順次積層する場合は、本発明の作用
を損なわず、加熱による影響がない範囲で各層間に接着
剤等を使用してもよい。具体的に、アルミニウム薄層を
積層する方法としては、ジュースなどの飲料用包装容器
材として用いられるブリックパックの製造等に用いられ
る一般的な方法を用いることができる。

【００２３】底面部、あるいは底面部と側面部にアルミ
ニウム薄層を有する部分は、各層を積層したシートを予
め作成し、成形してもよいし、成形後、積層してもよ
い。

【００２４】本発明の電磁調理器用器物は、底面部に素
材の継ぎ目、特にアルミニウム薄層が部分的に複数重な
る継ぎ目がないようにするのが好ましい。素材の継ぎ目
があると、底面部の平坦性が失われ、アルミニウム薄層
の均一な発熱が生じにくい上、アルミニウム薄層が部分
的に複数重なる継ぎ目があると、アルミニウム薄層が重
なる部分の発熱量が増大し、加熱むらが生じやすい。

【００２５】本発明の電磁調理器用器物の形状、サイズ
は、一般に使用される電磁調理器での加熱が可能で、底
面部が平面状であれば、特に限定されない。即ち、直方
体状、円筒体状、略球体状、略楕円体状などの形状であ
ってもよく、深鍋状、浅鍋状、皿状等の形状とすること
ができる。また、必要に応じ、取っ手や蓋体等を有して
いてもよい。本発明の電磁調理器用器物の底面部は、磁
力線による発熱が均一で、効率が良いよう平滑な平面状
であるのが好ましい。

【００２６】

【発明の効果】本発明の電磁調理器用器物は、アルミニ
ウムを薄層化したために、発熱体等の別部材を必要とせ
ず、被調理物を収容して、電磁誘導加熱を利用する電磁
調理器での簡便な加熱調理が可能となる。しかも安価に
製造できるため、使い捨て可能である。アルミニウム
は、薄層化が容易である点からもコスト的に有利であ
る。

【００２７】また、少なくとも最外層として非導電性の
保持層を有するため、強度的にも優れ、調理時や運搬時
に底面部が破損するなどして、収容されている被調理物
がこぼれたり、加熱機能が損なわれることはない。

【００２８】さらに、最内層として保護層を有するもの
については、アルミニウム薄層に直接固体の被調理物や
箸などの他の調理器具が接触せず、アルミニウム薄層の
破損や変形がより生じにくくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態の一例である電磁調理器用鍋
の構成を示す断面図である。

【図２】図１の電磁調理器用鍋の外観斜視図である。

【図３】図１の電磁調理器用鍋の作用の説明図である。

【図４】本発明の実施形態の他の例である電磁調理器用
鍋の構成を示す断面図である。

【図５】本発明の実施形態の他の例である電磁調理器用
鍋の構成を示す断面図である。

【符号の説明】

１、１'、１'' 電磁調理器用鍋（本発明の電磁調理器
用器物） ２、２' 底面部 ３、３' 側面部 ４、４' 収容部 ５ アルミニウム薄層 ６ 保持層 ７ 保護層 １０ 被調理物 １１ 電磁調理器 １２ 磁力線 １３ 熱

フロントページの続き (72)発明者 千代坂 安造 大阪市西区新町１丁目３番12号 株式会社 関電製作所内 (72)発明者 河村 修行 大阪市西区新町１丁目３番12号 株式会社 関電製作所内 Ｆターム(参考） 3K051 AB04 AB05 AC10 AD03 AD05 AD10 AD34 AD35 AD40 CD42 CD43 CD44 4B055 AA09 BA15 BA22 BA39 CA03 DA02 DB14 FA02 FB54 FC08

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被調理物を収容する収容部を有する器物
   であって、少なくとも前記収容部の底面部が、アルミニ
   ウム薄層と、最外層として非導電性の保持層とを有する
   ことを特徴とする電磁調理器用器物。
2. 【請求項２】 被調理物を収容する収容部を有する器物
   であって、少なくとも前記収容部の底面部が、収容部側
   の最内層として非導電性の保護層と、最外層として非導
   電性の保持層と、および前記保護層と前記保持層間に介
   在するアルミニウム薄層とから主としてなることを特徴
   とする電磁調理器用器物。
3. 【請求項３】 前記保護層が、紙からなることを特徴と
   する請求項２記載の電磁調理器用器物。
4. 【請求項４】 前記保持層が、紙からなることを特徴と
   する請求項１乃至３のいずれか１項に記載の電磁調理器
   用器物。
5. 【請求項５】 前記アルミニウム薄層の厚みが、５〜５
   ０μｍであることを特徴とする請求項１乃至４のいずれ
   か１項に記載の電磁調理器用器物。