JP2000034343A - ポリエステル重縮合触媒の回収方法 - Google Patents

ポリエステル重縮合触媒の回収方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】ポリエステルの製造工程において発生する留出
物から、ポリエステル重縮合触媒を回収再利用する方法
を提供する。 【解決手段】エステル化工程と重縮合工程を含むポリエ
ステルの製造工程において、重縮合工程から回収される
重縮合触媒を含んだグリコールを、蒸留工程、熱水溶解
工程、濾過工程、濃縮工程の順で処理し、重縮合触媒を
分離回収することを特徴とする重縮合触媒の回収方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル重縮
合触媒の回収方法に関し、さらに詳しくはポリエステル
の製造工程において発生する留出物からポリエステル重
縮合触媒を回収再利用する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ポリエチレンテレフタレート(以
下PETと記す)に代表されるポリエステルは、優れた
機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有するために繊維、フ
ィルム、シートとして広く使用されている。
【0003】ポリエステルの製造は、ジカルボン酸とグ
リコールをエステル化工程においてジカルボン酸のジエ
ステルを合成し、次いで重縮合工程において重縮合触媒
の存在下、ジエステルの置換エステル化反応によってグ
リコールを系外に放出しつつ重縮合を進める方法が一般
的である。
【0004】前記重縮合工程において、系外に放出され
るグリコールには重縮合触媒が多量に含まれており、こ
の重縮合触媒を回収再利用することは経済的に大きな利
点となる。
【0005】しかしながら、重縮合工程において系外に
放出されるグリコールには重縮合触媒の他にポリエステ
ル製造の際に発生する副反応生成物(例えば環状オリゴ
マーなど)や未反応のジカルボン酸、さらにはアルデヒ
ド類などの不純物を含んでいる。そのため放出されたグ
リコールをポリエステルの原料及び重縮合触媒として使
用すると、ポリエステルの品質低下の原因となるため再
利用することは困難であった。
【0006】このような問題を解決する方法として、特
開昭57−26632号公報には、ポリエステルの製造
工程で生じた重縮合触媒を含む回収エチレングリコール
をカチオン交換樹脂で脱色処理した後、ポリエステル製
造工程に再利用する方法が提案されている。しかしなが
ら、この方法では不純物を充分に除去することができ
ず、回収触媒を用いて重合したポリエステルの色調が著
しく低下する。
【0007】又特開平8−113633号公報には、不
純物除去のために重縮合触媒を含む回収ジヒドロキシ化
合物を、蒸留工程、解重合工程、濾過工程、脱色工程、
除鉄工程によって精製処理した後、ポリエステル製造工
程に再利用する方法が提案されている。しかしながら、
このような複雑な工程を必要とする回収方法は回収設備
の建設コスト及び操業維持コストが高くなり非経済的で
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の従来技術の問題点を解消し、簡便でかつ回収効率の優
れたポリエステル重縮合触媒の回収方法を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、エステル化
工程と重縮合工程を含むポリエステルの製造工程におい
て、重縮合工程から回収される重縮合触媒を含んだグリ
コールを、下記の工程順で処理し、重縮合触媒を分離回
収することを特徴とする重縮合触媒の回収方法によって
達成される。 (1)蒸留工程 (2)熱水溶解工程 (3)濾過工程 (4)濃縮工程
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のポリエステル製造工程
は、ジカルボン酸とグリコールを原料とし、エステル化
工程と重縮合工程を含む製造工程である。
【0011】本発明で用いられるジカルボン酸として
は、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレ
フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジ
フェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シク
ロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ダ
イマー酸などが挙げられる。これらは単独でも2種以上
を使用することもできる。
【0012】本発明で用いられるグリコールとしては、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジ
オール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコー
ル、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ビスフェ
ノールAまたはビスフェノールSのジエトキシ化合物な
どが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用する
こともできる。
【0013】本発明のエステル化工程は、ジカルボン酸
とグリコールを240〜280℃の温度で、0.2〜3
kg/cm2の圧力において行われる。この際、グリコ
ールは還流され、エステル化反応によって生成した水の
み系外に放出される。
【0014】本発明のエステル化工程において、塩基性
化合物を少量添加した場合、副反応生成物の少ないポリ
エステルが得られる。このような塩基性化合物として、
トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルメチル
アミンなどの3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニ
ウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメ
チルベンジルアンモニウムなどの4級アミンなどが挙げ
られる。
【0015】本発明の重縮合工程は、重縮合触媒の存在
下、250〜300℃の温度で、13.3〜665Pa
の減圧下において行われる。重縮合工程では、上記エス
テル化工程において得られたジカルボン酸とジヒドロキ
シ化合物との低次縮合物から、未反応のグリコールおよ
び重縮合触媒を含む留出物を系外に留去させる。
【0016】本発明で用いられる重縮合触媒としては、
二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、
ゲルマニウムテトラブトキシドなどのゲルマニウム化合
物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酒石酸アン
チモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、テト
ラブチルチタネートなどのチタン化合物などが挙げられ
る。中でも、得られる樹脂の色調および透明性の点でゲ
ルマニウム化合物が好ましい。重縮合触媒は、所定触媒
濃度の水溶液またはグリコール溶液として添加される。
【0017】重縮合触媒の添加量は、得られるポリエス
テルに対して金属原子量換算で10〜300ppmの量
であることが、重縮合反応速度の点から好ましい。
【0018】本発明の重縮合工程において、ポリエステ
ルの熱分解などの副反応を防止するために安定剤を添加
しても良い。安定剤としては、トリメチルリン酸、トリ
エチルリン酸、トリフェニルリン酸などのリン酸エステ
ル、亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物、ヒンダー
ドフェノール系の化合物などが挙げられる。
【0019】安定剤の添加量は、得られるポリエステル
に対して金属原子量換算で10〜100ppmの量であ
ることが、熱分解防止効果および重縮合反応速度の点か
ら好ましい。
【0020】本発明の重縮合工程で得られるポリエステ
ルの極限粘度は、0.40〜0.70dl/gである。
又、必要に応じて固相重縮合により極限粘度0.60〜
1.00dl/gのポリエステルを得ることもできる。
固相重縮合は、160〜220℃の温度で、減圧下また
は不活性ガス雰囲気下、5〜40時間行われる。
【0021】本発明の重縮合工程において系外に留去さ
れた留出物には、重縮合触媒が金属原子量換算値で0.
02〜0.05重量%、グリコール成分が80〜95重
量%、水分が5〜20重量%、ポリエステルの低次縮合
物(オリゴマー)が0.5〜5重量%、その他に安定
剤、鉄分などが含まれている。
【0022】本発明のポリエステル重縮合触媒の回収方
法は、(1)蒸留工程、(2)熱水溶解工程、(3)濾
過工程、(4)濃縮工程からなる。重縮合工程における
留出物は、(1)、(2)、(3)、(4)の順で処理
される。
【0023】本発明の蒸留工程では、重縮合工程で回収
された留出物中の水分、低沸成分、グリコールを除去す
ると同時に重縮合触媒とグリコールを反応せしめグリコ
ール配位錯化合物を生成する。蒸留工程は、好ましくは
150〜210℃の温度で、より好ましくは180〜2
10℃の温度で、且つ好ましくは1330〜66500
Paの減圧下、より好ましくは1330〜13300P
aの減圧下で、好ましくは1〜10時間、より好ましく
は1〜5時間行なわれる。蒸留工程において、重縮合工
程で回収された留出物は水分、低沸成分、グリコールか
らなる溶液と重縮合触媒を含む固形残渣に分別される。
【0024】本発明の熱水溶解工程は、蒸留工程後の固
形残渣に純水を加え50℃〜110℃の温度で1〜5時
間保持させることにより行われる。蒸留工程において生
成した重縮合触媒のグリコール配位錯化合物は水に容易
に溶解する。一方、固形残渣に含まれるポリエステルの
低次縮合物、安定剤、鉄分などは水に不溶性であるた
め、重縮合触媒のみが水中に溶出する。
【0025】本発明の濾過工程は、熱水溶解工程後の固
形物を含む溶液を、ポリエステルの低次縮合物、安定
剤、鉄分などからなる固形物と重縮合触媒を含む水とに
分別する。使用される濾過装置は、カートリッジフィル
ター、ストレーナーなどの簡便な濾過器で充分である
が、必要であれば加圧濾過器、真空濾過器などを使用し
ても良い。濾過工程は、50〜90℃の温度で行うこと
が濾過速度を速くする上で好ましい。濾過後の水溶液に
は、高純度の重縮合触媒が溶出している以外の不純物は
ほとんど含有されていない。
【0026】本発明の濃縮工程は、濾過工程後の重縮合
触媒を含む水溶液を90〜110℃の温度で、好ましく
は1330〜66500Paの減圧下、より好ましくは
1330〜13300Paの減圧下で、1〜5時間行
い、所望の触媒含有濃度の水溶液に濃縮するかあるいは
固形物の形で取り出す。濃縮された回収触媒の水溶液ま
たは固形物は、未使用の触媒と同様に重縮合触媒工程に
添加使用でき、ポリエステルの品質を低下させることは
ない。
【0027】
【発明の効果】本発明の重縮合触媒回収方法は、簡便で
かつ回収効率の優れたポリエステル重縮合触媒の回収方
法であり、得られた回収触媒は未使用の触媒と同様に重
縮合触媒工程に添加使用可能で、ポリエステルの生産コ
ストを低下させることができる。
【0028】
【実施例】以下、実施例によって本発明を詳細に説明す
る。各物性の測定および評価は下記の方法に従った。
【0029】(1)極限粘度(IV) ポリエステル樹脂をフェノール/テトラクロロエタン=
60/40(重量比)の混合液に溶かし、自動粘度測定
装置(柴山科学製 SS−270LC)を用いて20℃
にて測定した。
【0030】(2)カラー ポリエステル樹脂を、色差計(スガ試験機製 色差計S
M−4,SM−5)にて測定した。L値は明度(値が大
きいほど明るい)、a値は赤〜緑系の色相(+は赤味、
−は緑味)、b値は黄〜青系の色相(+は黄味,−は青
味)を表す。色調は、L値が大きいほど、a値は0に近
いほど、b値は0〜−1の範囲が良好である。
【0031】(3)ヘーズ ポリエステル樹脂を厚さ5mmの段付角板に成形し、ヘ
ーズメーター(日本電色製 ヘーズメーター300A)
によりJIS K 7105に準じて測定した。
【0032】(4)金属分析 ポリエステル樹脂を硫酸に溶解し、IPC発光分析装置
(セイコー電子工業製SPS1500VR)により測定
した。
【0033】参考例1 ポリエステルの製造工程 ステンレス製オートクレーブに所定量のテレフタル酸
と、エチレングリコールをグリコール成分が酸成分に対
してモル比1.2となるように仕込み、250℃、2.
0kg/cm2にてエステル化反応を行った。エステル
化反応終了後、二酸化ゲルマニウムをゲルマニウム原子
量換算値90ppm(対ポリマー重量)、トリメチルリ
ン酸をリン原子量換算値35ppm(対ポリマー重量)
を加え、285℃、133Paの減圧下で重縮合反応を
行なった。二酸化ゲルマニウムは0.8重量%の水溶液
で、トリメチルリン酸は、7.0重量%エチレングリコ
ール溶液として添加した。得られたポリエチレンテレフ
タレートの物性を表1に示す。
【0034】留出物(A) ポリエステルの製造工程において、重縮合反応時に発生
した留出物はゲルマニウム触媒をゲルマニウム原子量換
算値で213ppm、リン化合物をリン原子量換算値で
109ppm,水分を12.4重量%、エチレングリコ
ール成分を87.1重量%、不溶性オリゴマーを0.5
重量%含んでいた。
【0035】実施例1 重縮合触媒の回収工程 製造工程で発生した留出物100mlを、210℃、1
330Paで4時間蒸留し、水分、低沸成分、エチレン
グリコールを除去し、固形残渣を分離した。この固形残
渣中には、ゲルマニウム触媒がゲルマニウム原子量換算
値で1220ppm含まれていた。
【0036】得られた固形残渣に純水100mlを加
え、95℃、常圧下で2時間加熱溶解した後、不溶性成
分をメンブランフィルター(5.0μm)を用いて50
℃で濾過した。濾液中に含まれるゲルマニウム触媒は、
ゲルマニウム原子量換算値で200ppmであった。
【0037】得られた濾液を、95℃、66500Pa
で2時間濃縮し、ゲルマニウム濃度0.8重量%の水溶
液とした。
【0038】回収触媒の再利用工程 参考例1と同様に、ステンレス製オートクレーブに所定
量のテレフタル酸と、エチレングリコールをグリコール
成分が酸成分に対してモル比1.2となるように仕込
み、250℃、2.0kg/cm2にてエステル化反応
を行った。エステル化反応終了後、回収ゲルマニウム触
媒をゲルマニウム原子量換算値90ppm(対ポリマー
重量)、トリメチルリン酸をリン原子量換算値35pp
m(対ポリマー重量)を加え、285℃、133Paの
減圧下で重縮合反応を行なった。回収ゲルマニウム触媒
は0.8重量%の水溶液で、トリメチルリン酸は、7.
0重量%エチレングリコール溶液として添加した。得ら
れたポリエチレンテレフタレートの物性を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】比較例1 参考例1と同様に、ステンレス製オートクレーブに所定
量のテレフタル酸と、エチレングリコールをグリコール
成分が酸成分に対してモル比1.2となるように仕込
み、250℃、2.0kg/cm2にてエステル化反応
を行った。エステル化反応終了後、ゲルマニウム触媒を
ゲルマニウム原子量換算値90ppm(対ポリマー重
量)、トリメチルリン酸をリン原子量換算値35ppm
(対ポリマー重量)を加え、285℃、133Paの減
圧下で重縮合反応を行なった。ゲルマニウム触媒は留出
物(A)を回収処理せずに使用した。得られたポリエチ
レンテレフタレートの物性を表1に示す。
【0041】実施例2〜4 実施例1と同様に製造工程で発生した留出物100ml
を、表2に示した工程順で重縮合触媒の回収処理を行
い、得られた回収触媒を用いてPETの重縮合を行っ
た。得られたPETの物性を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】比較例2〜4 実施例1と同様に製造工程で発生した留出物100ml
を、表3に示した工程順で重縮合触媒の回収処理を行
い、得られた回収触媒を用いてPETの重縮合を行っ
た。得られたPETの物性を表3に示す。尚、比較例4
においては熱水溶解工程後蒸留工程を行った。
【0044】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J029 AA03 AB07 AD01 BA02 BA03 BA05 BA08 BA09 BA10 BB13A BD07A BF09 BF25 BH02 CA02 CA03 CA04 CA06 CB05A CB06A CB10A CC05A CD03 DB07 JA091 JB131 JB171 JC033 JC093 JF361 JF471 KH08 KJ03 LB02

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エステル化工程と重縮合工程を含むポリ
    エステルの製造工程において、重縮合工程から回収され
    る重縮合触媒を含んだグリコールを、下記の工程順で処
    理し、重縮合触媒を分離回収することを特徴とする重縮
    合触媒の回収方法。 (1)蒸留工程 (2)熱水溶解工程 (3)濾過工程 (4)濃縮工程
  2. 【請求項2】 蒸留工程は、回収グリコールを用いて1
    50〜210℃の温度で1330〜66500Paの減
    圧下、1〜10時間行われることを特徴とする請求項1
    記載の重縮合触媒の回収方法。
  3. 【請求項3】 熱水溶解工程は、蒸留工程後の固形物に
    純水を加えた後、50℃〜110℃の温度で1〜5時間
    行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の重縮
    合触媒の回収方法。
  4. 【請求項4】 濃縮工程は、熱水溶解工程後の濾過液を
    用いて90〜110℃の温度で1330〜66500P
    aの減圧下、1〜5時間行われることを特徴とする請求
    項1〜4いずれかに記載の重縮合触媒の回収方法。
  5. 【請求項5】 重縮合触媒がゲルマニウム化合物である
    ことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の重縮合
    触媒の回収方法。
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