JP2000030741A - 六フッ化リン酸リチウムを含有する有機電解液の処理方 法 - Google Patents

六フッ化リン酸リチウムを含有する有機電解液の処理方 法

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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】一般式 Cn 2n+1OH ──(A) で表わされる炭素数nが2〜5の一級、二級あるいは三
級のアルコール類を主成分とする溶剤と、フッ化カリウ
ムを主成分とする薬剤とを加えることにより、六フッ化
リン酸リチウムをフッ化リチウムと六フッ化リン酸カリ
ウムとして分離する。フッ化カリウムに代えてフッ化ア
ンモニウムを主成分とする薬剤を加えることにより、六
フッ化リン酸リチウムをフッ化リチウムと六フッ化リン
酸アンモニウムとして分離する。 【効果】リチウムイオン電池およびリチウム電池用に使
用されている六フッ化リン酸リチウムを含有する有機電
解液中の六フッ化リン酸リチウムの有用な処理方法を提
供することができる。また、本処理により産業的に有用
な六フッ化リン酸塩とフッ化リチウムとして回収して、
再利用を可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現在リチウムイオ
ン電池用およびリチウム電池用に多量に使用されている
六フッ化リン酸リチウムを含有する有機電解液中の六フ
ッ化リン酸リチウムの処理に関するものであり、また、
この処理により回収した六フッ化リン酸塩とフッ化リチ
ウムを分離することにより、これらの化合物を工業的に
再利用する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】リチウムイオン二次電池用およびリチウ
ム二次電池用の電解質としては、主としてエチレンカー
ボネートやプロピレンカーボネートに代表される環状エ
ステル類と、ジエチルカーボネートやジメチルカーボネ
ートに代表される鎖状カーボネート類を組み合わせた混
合溶剤に、六フッ化リン酸リチウムを溶質として溶かし
た物が通常用いられている。不要になったこれらの有機
電解液を処理するには、通常、焼却処理される場合が多
いが、含有されている六フッ化リン酸リチウムにより焼
却炉の炉材の消耗が著しい。また、この電解質中におい
て、六フッ化リン酸アニオンは比較的安定しており、水
溶液系に溶解している六フッ化リン酸アニオンを難溶性
の塩として固定する一般的な方法、例えば、四級アンモ
ニウム塩や四級ホスホニウム塩などの大きなカチオンを
有する塩類を加えて、溶解度が小さい六フッ化リン酸塩
として回収する方法は、それらの塩が有機溶剤に溶けや
すいために、多量の水で希釈した場合を除いて回収が困
難である。多量の水に溶解したのち、強酸条件下で加水
分解することによりリン酸とフッ酸とし、消石灰などの
カルシウム塩類を加えてフッ化カルシウムとリン酸アパ
タイトとして固定することはできるが、有機溶剤を処理
できないという問題が残る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、各種の電子機器
の小型化およびポータブル化に伴い、小型で軽量かつ高
いエネルギー密度を有する二次電池の需要が急速に伸び
ている。その代表がリチウムイオン二次電池である。そ
の電解液として、主にエチレンカーボネートやプロピレ
ンカーボネートに代表される環状エステル類と、ジエチ
ルカーボネートやジメチルカーボネートに代表される鎖
状カーボネート類の混合溶剤に、六フッ化リン酸リチウ
ムを溶質として溶かした物が通常用いられている。リチ
ウムイオン二次電池および近い将来商品化されるであろ
うリチウム二次電池の需要が増加するに伴い、不要にな
った六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液の処理、
および、廃棄されるリチウム電池およびリチウムイオン
電池中に含まれる六フッ化リン酸リチウムを含有する電
解液の処理が大きな問題となる。さらに、この問題に関
する有効な処理方法は、未だ確立されていない。本発明
は、リチウム電池用に使用されている六フッ化リン酸リ
チウムを含有する有機電解液中の六フッ化リン酸リチウ
ムの有効な固定化処理方法を提供することを目的とする
ものである。また、本発明は、この処理により回収した
化合物を工業的に再利用できる技術を提供することを目
的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等はかかる目的
を達成するために鋭意検討した結果、六フッ化リン酸リ
チウムを含有する有機電解液にある種の有機溶剤を加え
ることにより電解液の液性を変化せしめ、フッ化カリウ
ムまたはフッ化アンモニウムなどのフッ化物塩を加える
ことにより、電解液中の六フッ化リン酸リチウムを六フ
ッ化リン酸カリウムまたは六フッ化リン酸アンモニウム
として固定できることを見い出した。また、対カチオン
であるリチウムはフッ化リチウムとして固定でき、ろ別
により回収した六フッ化リン酸塩とフッ化リチウムをさ
らに分離することによりそれぞれを再利用する技術を見
い出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】すなわち、本発明では、不要になった六フ
ッ化リン酸リチウムを含有する電解液の処理、および、
廃棄されたリチウム電池およびリチウムイオン電池中に
含まれる六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液の処
理に関して、一般式(A) Cn 2n+1OH ──(A) で表わされる炭素数nが2〜5の一級、二級あるいは三
級のアルコール類、例えば、2−プロパノールで代表さ
れる一連のアルコール類(一級、二級および三級のアル
コール類で炭素数が2〜5のもの)を主成分とする溶剤
を用いて前記電解液を希釈または洗浄することにより、
電解液の液性を変化させ、電解液中の六フッ化リン酸リ
チウムとフッ化カリウムまたはフッ化アンモニウムの反
応を円滑に起こさせると共に、添加剤(フッ化カリウム
またはフッ化アンモニウム)と生成物(フッ化リチウム
と六フッ化リン酸カリウムまたは六フッ化リン酸アンモ
ニウム)のいずれもが固形物として存在することを見い
出した。これらの固形物は、一般的なろ別方法で容易に
分離することができ、大部分の六フッ化リン酸アニオン
は固形物中に固定されていた。
【0006】本発明をさらに具体的に説明する。リチウ
ムイオン二次電池用およびリチウム二次電池用の電解質
としては、非プロトン性の溶剤、エチレンカーボネー
ト、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、
ジメチルカーボネート、1,2−ジエトキシエタン、ジ
メチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクト
ン、テトラヒドロフランなどの混合溶剤に、六フッ化リ
ン酸リチウムを溶質として溶かした物が主として用いら
れている。溶剤の種類や組み合わせは電池メーカーによ
りかなり異なるが、六フッ化リン酸リチウムを十分に溶
解させ得ること、六フッ化リン酸リチウムを安定に保持
すること、高い電気伝導度を有することなどの条件か
ら、電解液の基本的な特性や液性にはさほど差はない。
したがって、本発明は、溶剤の種類に関係なく、六フッ
化リン酸リチウムを含有するすべての電解液に適用する
ことができる。
【0007】本発明では、六フッ化リン酸リチウムを含
有する電解液の代表的な例として、50wt%−エチレ
ンカーボネート−50wt%−ジエチルカーボネート、
および、50wt%−プロピレンカーボネート−50w
t%−ジエチルカーボネートに六フッ化リン酸リチウム
を溶解させて11.5wt%の溶液に調製した2種の電
解液について種々の検討を行った。まず、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、アンモニア、フッ化カリウム、
フッ化ソーダ、フッ化アンモニウムなどの無機化合物を
加えることにより六フッ化リン酸アニオンの固定を試み
たが、いずれもうまく行かなかった。そこで、別の有機
溶剤を加えることにより電解液の液性を変化させ、これ
に無機塩類を加えることにより六フッ化リン酸アニオン
を固定する方法を試みた。その結果、工業的に使用され
ている溶剤の中で、塩化メチレンと一連のアルコール類
(エタノール、1−プロピルアルコール、2−プロピル
アルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブ
タノールおよびオクタノール)を用いた場合に効果が見
られた。また、無機塩類として、フッ化ナトリウム、フ
ッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウムなど
のアルカリ金属フッ化物とフッ化アンモニウムを用いた
場合に効果が見られた。
【0008】スクリーンニング実験として、11.5%
の六フッ化リン酸リチウムを含有するエチレンカーボネ
ートとジエチルカーボネート混合溶液(重量比1:1)
50gと有機溶剤50gとフッ化カリウム4gを200
mlのテフロン瓶に入れ、20℃で2時間マグネチック
スターラーで攪拌した後、固形分をろ別し、ろ液に含ま
れるフッ素分を分析して六フッ化リン酸リチウムの除去
率(以下、単に除去率という)を求めた。その結果の一
部を表1に示す。
【0009】
【表1】
【0010】塩化メチレンは高い除去率を示したが、排
水規制の問題やオゾン層の破壊の問題から将来溶剤とし
て使用することは困難である。アルコール類の内、メタ
ノールおよびヘキサノールよりも分子量の大きなアルコ
ール類については効果が見られなかった。溶剤の量と除
去率との関係は、溶剤量の増加と共に除去率は増加す
る。11.5%の六フッ化リン酸リチウムを含有するエ
チレンカーボネートとジエチルカーボネート混合溶液
(重量比1:1)50gとフッ化カリウム4gを固定
し、溶剤である2−プロピルアルコール量を変化させ
て、20℃で2時間マグネチックスターラーで攪拌した
後、固形分をろ別した。ろ別後のろ液中の除去率を表2
に示す。
【0011】
【表2】
【0012】六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液
に対する溶剤の量は、0.5倍以下ではほとんど効果が
無く、また多量に使用することは経済的に不利である。
したがって、六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液
に対して、0.5倍〜40倍量の溶剤を用いるのが好ま
しい。不要になった六フッ化リン酸リチウムを含有する
電解液の処理の場合は比較的少な目の溶剤を、そして、
廃棄されたリチウム電池およびリチウムイオン電池中に
含まれる六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液の処
理に関してはかかる溶剤を用いて洗い出すために多目の
溶剤を使うのが好ましい。使用する溶剤は、主成分が上
述した一連のアルコール類であれば良いのであって、不
純物の存在は六フッ化リン酸リチウムや電解液溶液を分
解させたりしない限りは全く制限を受けない。本処理で
使用した溶剤をろ液から蒸留回収して再利用することも
できるし、他のプロセスで排出されるこれらのアルコー
ル類を含む廃液も使用することができる。これらのアル
コール類の混合溶剤を用いてもよい。
【0013】無機塩類としては、フッ化ナトリウム、フ
ッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウムなど
のアルカリ金属フッ化物とフッ化アンモニウムに効果が
見られた。特に、フッ化セシウム、フッ化ルビジウムを
用いた場合表1に示した除去率を上回る効果が見られた
が、これらの化合物は非常に高価なために、本目的には
適していない。一方、フッ化ナトリウムは非常に安価で
あるが、除去率がフッ化カリウムやフッ化アンモニウム
に及ばないこと、生成した六フッ化リン酸ナトリウムが
湿気を含む大気中で不安定なことなどの問題がある。こ
れらの理由から、フッ化カリウムまたはフッ化アンモニ
ウムを主成分とする薬剤を用いるのが最適である。この
添加量は、反応がスムーズに起こるため電解液に含まれ
る六フッ化リン酸リチウムに対して1.0倍当量から
2.0倍当量あれば十分であるが、それ以上加えても何
ら問題はない。フッ化カリウムまたはフッ化アンモニウ
ムは固体あるいは濃厚な水溶液のいずれの形態でも使用
することができるが、水溶液の形態で用いた場合には除
去率が減少するから、固体の形態で用いるのが好まし
い。
【0014】六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液
に対して、溶剤とフッ化カリウムまたはフッ化アンモニ
ウムを添加する順序はどれからでもよく、これらの三成
分が少なくとも混じり合えばよい。処理後、六フッ化リ
ン酸リチウムは、難溶性固体(フッ化リチウムと六フッ
化リン酸カリウム、または、フッ化リチウムと六フッ化
リン酸アンモニウム)となり、未反応のフッ化カリウム
またはフッ化アンモニウムと共にろ別により容易に分離
できる。溶剤による希釈率の高い電解液の処理におい
て、この希釈液をフッ化カリウムまたはフッ化アンモニ
ウムを充填したカラムに通す方法が有効である。流速を
調整することにより六フッ化リン酸アニオンを完全に固
定化することができる。ろ別して得られた固形物は、フ
ッ化リチウムと六フッ化リン酸カリウムとフッ化カリウ
ム、または、フッ化リチウムと六フッ化リン酸アンモニ
ウムとフッ化アンモニウムの混合物であり、これらの3
成分は水系で処理することによりそれぞれ高純度の化合
物として回収することができた。
【0015】フッ化リチウムと六フッ化リン酸カリウム
とフッ化カリウム系の場合を例に挙げて、この分離方法
の詳細を述べる。ろ別で回収した固形物(フッ化リチウ
ムと六フッ化リン酸カリウムとフッ化カリウム)を乾燥
後、熱水に溶解させると溶解度の小さなフッ化リチウム
だけが固形物として存在する。このスラリー溶液を熱ろ
過−水洗することにより高純度のフッ化リチウムを回収
することができた。熱水に溶解させる代わりに、ろ別で
回収した固形物に水を加えて加熱する方式を採ってもよ
い。一方、六フッ化リン酸カリウムとフッ化カリウムは
熱ろ過したろ液に残るが、室温付近での六フッ化リン酸
カリウムとフッ化カリウムの溶解度の差が大きいため
に、冷却すると六フッ化リン酸カリウムのみが結晶とし
て析出し、ろ別により回収することができた。この純度
は98%以上であり、工業用六フッ化リン酸カリウムと
して十分再利用できるものであった。
【0016】六フッ化リン酸アニオンを固定化するに当
って、フッ化カリウムに代えてフッ化アンモニウムを主
成分とする薬剤を用いることもできる。フッ化アンモニ
ウムを主成分とする薬剤を用いた場合も、フッ化カリウ
ムを主成分とする薬剤を用いた場合と同様の原理によ
り、高純度のフッ化リチウムを回収することができ、ま
た、六フッ化リン酸アンモニウムとフッ化アンモニウム
は冷却により六フッ化リン酸アンモニウムのみが結晶と
して析出し、ろ別により回収することができる。フッ化
カリウムとフッ化アンモニウムを用いた場合の除去率に
差はほとんど認められなかった。しかしながら、爾後の
工程であるフッ化リチウムと六フッ化リン酸カリウムと
フッ化カリウムに分離する場合と、フッ化リチウムと六
フッ化リン酸アンモニウムとフッ化アンモニウムに分離
する場合とを比べたとき、水に対する六フッ化リン酸カ
リウムの溶解度が六フッ化リン酸アンモニウムの溶解度
より小さい分だけ回収操作が容易であるから、フッ化ア
ンモニウムを主成分とする薬剤を用いるよりもフッ化カ
リウムを主成分とする薬剤を用いる方が、より有利であ
る。
【0017】
【実施例】次に具体的な実施例を挙げて、本発明をさら
に説明する。 (実施例1)六フッ化リン酸リチウム11.5wt%を
含有するエチレンカーボネートとジエチルカーボネート
(重量比1:1)混合溶剤2000gと、2−プロパノ
ール2000gと、フッ化カリウム160gを撹拌器を
備えた5000mlポリエチレン製反応器に入れ、2時
間処理した。処理後、ろ過して固形物を除去した結果、
液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ化リン酸リチ
ウム換算)は1.18%に減少した。六フッ化リン酸リ
チウムの除去率は80%であった。
【0018】(実施例2)六フッ化リン酸リチウム1
1.5%を含有するプロピレンカーボネートとジエチル
カーボネート(重量比1:1)混合溶剤2000gと、
2−プロパノール2000gと、フッ化カリウム160
gを撹拌器を備えた5000mlポリエチレン製反応器
に入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を除
去した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ
化リン酸リチウム換算)は1.02%に減少した。六フ
ッ化リン酸リチウムの除去率は82%であった。
【0019】(実施例3)六フッ化リン酸リチウム1
1.5%を含有するエチレンカーボネートとジエチルカ
ーボネート(重量比1:1)混合溶剤1000gと、2
−プロパノール2000gと、フッ化カリウム80gを
撹拌器を備えた5000mlポリエチレン製反応器に入
れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を除去し
た結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ化リ
ン酸リチウム換算)は0.31%に減少した。六フッ化
リン酸リチウムの除去率は92%であった。
【0020】(実施例4)六フッ化リン酸リチウム1
1.5%を含有するエチレンカーボネートとジエチルカ
ーボネート(重量比1:1)混合溶剤333gと、2−
プロパノール3000gと、フッ化カリウム27.6g
を撹拌器を備えた5000mlポリエチレン製反応器に
入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を除去
した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ化
リン酸リチウム換算)は0.01%以下に減少した。六
フッ化リン酸リチウムの除去率は99%以上であった。
【0021】(実施例5)六フッ化リン酸リチウム1
1.5%を含有するエチレンカーボネートとジエチルカ
ーボネート(重量比1:1)混合溶剤333gと、2−
プロパノール6000gを混合した溶液を、フッ化カリ
ウム50gを充填したカラムに10ml/分の速度で通
過させた。カラムを通過した溶液中の六フッ化リン酸イ
オン濃度(六フッ化リン酸リチウム換算)は0.01%
以下に減少した。
【0022】(実施例6)六フッ化リン酸リチウム1
1.5%を含有するエチレンカーボネートとジエチルカ
ーボネート(重量比1:1)混合溶剤1000gと、2
−プロパノール2000gと、フッ化アンモニウム51
gを攪拌機を備えた5000mlポリエチレン製容器に
入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を除去
した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ化
リン酸リチウム換算)は0.47%に減少した。六フッ
化リン酸リチウムの除去率は88%であった。
【0023】(実施例7)六フッ化リン酸リチウム1
1.5%を含有するエチレンカーボネートとジエチルカ
ーボネート(重量比1:1)混合溶剤333gと、2−
プロパノール3000gと、フッ化カリウム17.6g
を攪拌機を備えた5000mlポリエチレン製容器に入
れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を除去し
た結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ化リ
ン酸リチウム換算)は0.02%に減少した。六フッ化
リン酸リチウムの除去率は98%であった。
【0024】(実施例8)実施例1と2とにおいて、ろ
過・乾燥により回収した固形物(フッ化リチウムと六フ
ッ化リン酸カリウムとフッ化カリウム)150gを50
0gの水に懸濁させ、90℃まで加温し、熱ろ過−水洗
−乾燥により純度99.5%以上のフッ化リチウム1
9.8gを回収した。熱ろ過したろ液を室温まで冷却す
ると六フッ化リン酸カリウムの白色結晶の析出し、これ
をろ過−乾燥することにより純度98.5%の六フッ化
リン酸カリウム75.6gを回収した。
【0025】
【発明の効果】請求項1〜5記載の処理方法によれば、
近い将来に大きな問題になると予想される、リチウムイ
オン電池用およびリチウム電池用に使用されている六フ
ッ化リン酸リチウムを含有する有機電解液中の六フッ化
リン酸リチウムの処理に関し、有用な処理方法を提供す
ることができるだけでなく、本処理により産業的に有用
な六フッ化リン酸塩とフッ化リチウムとして回収して、
再利用を可能とすることができる。
【0026】特に、請求項2記載の処理方法によれば、
適量の溶剤を用いて六フッ化リン酸リチウムを含有する
有機電解液中の六フッ化リン酸リチウムを処理すること
ができる。
【0027】また、請求項3記載の処理方法によれば、
適量のフッ化カリウムまたはフッ化アンモニウムを用い
て六フッ化リン酸リチウムを含有する有機電解液中の六
フッ化リン酸リチウムを処理することができる。
【0028】また、請求項4記載の処理方法によれば、
高純度のフッ化リチウムを有効に回収することができ
る。
【0029】また、請求項5記載の処理方法によれば、
高純度の六フッ化リン酸カリウムまたは六フッ化リン酸
アンモニウムを有効に回収することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年10月13日(1998.10.
13)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正内容】
【0008】スクリーンニング実験として、11.5
%の六フッ化リン酸リチウムを含有するエチレンカー
ボネートとジエチルカーボネート混合溶液(重量比1:
1)50gと有機溶剤50gとフッ化カリウム4gを2
00mlのテフロン瓶に入れ、20℃で2時間マグネチ
ックスターラーで攪拌した後、固形分をろ別し、ろ液に
含まれるフッ素分を分析して六フッ化リン酸リチウムの
除去率(以下、単に除去率という)を求めた。その結果
の一部を表1に示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正内容】
【0010】塩化メチレンは高い除去率を示したが、排
水規制の問題やオゾン層の破壊の問題から将来溶剤とし
て使用することは困難である。アルコール類の内、メタ
ノールおよびヘキサノールよりも分子量の大きなアルコ
ール類については効果が見られなかった。溶剤の量と除
去率との関係は、溶剤量の増加と共に除去率は増加す
る。11.5wt%の六フッ化リン酸リチウムを含有す
るエチレンカーボネートとジエチルカーボネート混合溶
液(重量比1:1)50gとフッ化カリウム4gを固定
し、溶剤である2−プロピルアルコール量を変化させ
て、20℃で2時間マグネチックスターラーで攪拌した
後、固形分をろ別した。ろ別後のろ液中の除去率を表2
に示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】(実施例2)六フッ化リン酸リチウム1
1.5wt%を含有するプロピレンカーボネートとジエ
チルカーボネート(重量比1:1)混合溶剤2000g
と、2−プロパノール2000gと、フッ化カリウム1
60gを撹拌器を備えた5000mlポリエチレン製反
応器に入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物
を除去した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六
フッ化リン酸リチウム換算)は1.02%に減少した。
六フッ化リン酸リチウムの除去率は82%であった。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】(実施例3)六フッ化リン酸リチウム1
1.5wt%を含有するエチレンカーボネートとジエチ
ルカーボネート(重量比1:1)混合溶剤1000g
と、2−プロパノール2000gと、フッ化カリウム8
0gを撹拌器を備えた5000mlポリエチレン製反応
器に入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を
除去した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フ
ッ化リン酸リチウム換算)は0.31%に減少した。六
フッ化リン酸リチウムの除去率は92%であった。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】(実施例4)六フッ化リン酸リチウム1
1.5wt%を含有するエチレンカーボネートとジエチ
ルカーボネート(重量比1:1)混合溶剤333gと、
2−プロパノール3000gと、フッ化カリウム27.
6gを撹拌器を備えた5000mlポリエチレン製反応
器に入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を
除去した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フ
ッ化リン酸リチウム換算)は0.01%以下に減少し
た。六フッ化リン酸リチウムの除去率は99%以上であ
った。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正内容】
【0021】(実施例5)六フッ化リン酸リチウム1
1.5wt%を含有するエチレンカーボネートとジエチ
ルカーボネート(重量比1:1)混合溶剤333gと、
2−プロパノール6000gを混合した溶液を、フッ化
カリウム50gを充填したカラムに10ml/分の速度
で通過させた。カラムを通過した溶液中の六フッ化リン
酸イオン濃度(六フッ化リン酸リチウム換算)は0.0
1%以下に減少した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】(実施例6)六フッ化リン酸リチウム1
1.5wt%を含有するエチレンカーボネートとジエチ
ルカーボネート(重量比1:1)混合溶剤1000g
と、2−プロパノール2000gと、フッ化アンモニウ
ム51gを攪拌機を備えた5000mlポリエチレン製
容器に入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物
を除去した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六
フッ化リン酸リチウム換算)は0.47%に減少した。
六フッ化リン酸リチウムの除去率は88%であった。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正内容】
【0023】(実施例7)六フッ化リン酸リチウム1
1.5wt%を含有するエチレンカーボネートとジエチ
ルカーボネート(重量比1:1)混合溶剤333gと、
2−プロパノール3000gと、フッ化カリウム17.
6gを攪拌機を備えた5000mlポリエチレン製容器
に入れ、2時間処理した。処理後、ろ過して固形物を除
去した結果、液中の六フッ化リン酸イオン濃度(六フッ
化リン酸リチウム換算)は0.02%に減少した。六フ
ッ化リン酸リチウムの除去率は98%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 泉 雅博 大阪府大阪市淀川区東三国3丁目12番10号 森田化 学工業株式会社内 Fターム(参考) 5H029 AJ14 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 CJ01 CJ02 CJ12 CJ14 HJ02 HJ10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リチウムイオン電池用およびリチウム電池
    用に使用されている六フッ化リン酸リチウム含有する有
    機電解液の脱フッ素処理において、一般式(A) Cn 2n+1OH ──(A) で表わされる炭素数nが2〜5の一級、二級あるいは三
    級のアルコール類を主成分とする溶剤と、フッ化カリウ
    ムまたはフッ化アンモニウムを主成分とする薬剤とを加
    えることにより、六フッ化リン酸リチウムを難溶性固体
    に変えて分離することを特徴とする有機電解液の処理方
    法。
  2. 【請求項2】六フッ化リン酸リチウム含有する電解液に
    対して、一般式(A) Cn 2n+1OH ──(A) で表わされる0.5〜40倍量のアルコール類を主成分
    とする溶剤を用いてなる請求項1記載の有機電解液の処
    理方法。
  3. 【請求項3】電解液中に含まれる六フッ化リン酸リチウ
    ム量の1.0〜2.0倍当量のフッ化カリウムまたはフ
    ッ化アンモニウムを主成分とする薬剤を用いてなる請求
    項1記載の有機電解液の処理方法。
  4. 【請求項4】分離した固体に水を加えて加温するか、ま
    たは、熱水を加えることにより、水に難溶性のフッ化リ
    チウム以外のものを溶解させた後、ろ別によりフッ化リ
    チウムを回収することを特徴とする請求項1記載の有機
    電解液の処理方法。
  5. 【請求項5】回収したろ液を冷却することにより、六フ
    ッ化リン酸カリウムまたは六フッ化リン酸アンモニウム
    の結晶を析出させ、ろ別により回収することを特徴とす
    る請求項4記載の有機電解液の処理方法。
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