JP2004359516A - アルカリ金属塩化物、アルカリ金属水酸化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】都市ゴミ又は産業廃棄物の焼却炉からの排ガスから飛灰を分離・除去した後に、ナトリウム炭酸塩粉体を噴霧して生成した副生塩を排ガスから分離し、その副生塩に対してアルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解しうる量でかつ副生塩を全量溶解しない量の水又はアルカリ金属塩化物の水溶液を添加して、アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解させ、得られたスラリを固液分離して該アルカリ金属塩化物を固体成分として回収すること。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物焼却由来のアルカリ金属塩化物を主成分とする副生塩から、例えば、工業用製品として利用できるような精製したアルカリ金属塩化物及びアルカリ金属水酸化物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、塩化ナトリウムは、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを製造するための原料として、また、融雪剤、ブライン等として使用されている。塩化ナトリウムを用いた水酸化ナトリウムの製造方法には、イオン交換膜を隔膜として用いる電気分解法(以下、IM電解法という。)、水銀を電極とする電気分解法(以下、水銀法という。)、電気透析法等がある。また、塩化ナトリウムを用いた炭酸ナトリウムの製造方法としてはアンモニアソーダ法や塩化アンモニウムソーダ法等がある。
【0003】
塩化ナトリウムは、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを製造するための原料として使用される場合、不純物が少ないことが要求される。
例えば、アンモニアソーダ法等により炭酸ナトリウムを製造する場合は、製品の品質を高め、各工程において設備に付着するスケールを防止するため、カルシウム、マグネシウム、SO4 2−の含有量の少ない高純度の塩化ナトリウムが要求される。
【0004】
また、IM電解法による水酸化ナトリウムの製造においては、イオン交換膜の劣化を防止すると共に、製品の水酸化ナトリウムの品質の保持のために、さらに高純度の塩化ナトリウムが要求される。具体的には、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウム、鉄、鉛、水銀、銅、ニッケル、クロム、コバルト、バナジウム、タングステン、マンガン、亜鉛、チタン、モリブデン、スズ、タンタル、バリウム、ハフニウム、銀、カドミウム、ガリウム、ビスマス、セリウム、リチウム、カリウム、硫黄(SO4 2−、HSO3 − など)、フッ素、ヨウ素、臭素、ホウ素、リン、セレン、ヒ素、ケイ素(シリカなど)、または塩化物イオン以外の塩素化合物(ClO3 − など)や、有機物等の含有量のきわめて少ない塩化ナトリウムが必要である。
【0005】
また、塩化ナトリウム水溶液を蒸発させて塩化ナトリウム結晶を得る場合においても、塩化ナトリウムの品質への影響と蒸発装置への付着物の防止のため、塩化ナトリウム水溶液中の不純物の低減が必要である。塩化ナトリウムの高純度化と同様に、炭酸カリウムや水酸化カリウム等を得るための原料である塩化カリウムについても同様に高純度化が必要である。
【0006】
従来、都市ゴミや産業廃棄物等の焼却時に発生する塩化水素、硫黄酸化物等の酸性ガスは、水酸化カルシウムを中和剤として用いて除去されることが多かった。しかし、この場合、生成した塩化カルシウムから水酸化カルシウムを製造してリサイクル使用することは工業的には非常に困難である。水酸化カルシウム以外に、ナトリウム化合物やカリウム化合物も中和剤として使用されている。特にナトリウム化合物は安価で入手しやすく、特に炭酸水素塩及び炭酸塩は一般的に潮解性も低く中和剤として優れる。具体的には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが例示され、これらは合成品も天然品も使用できる。
【0007】
この場合、ガス処理によって、塩化ナトリウムを主とし、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム等の塩が混じった副生塩が生成する。副生塩(主として塩化ナトリウム)は、キレート法、硫化物や水酸化物にして沈澱させる沈殿法、限外濾過法、電気透析法、イオン交換膜法等で精製され濃縮固形化されるが、なお不純物として金属硫酸塩、塩化カリウム、ヨウ化物、重金属等、飛灰、ダイオキシンの除去に用いられる活性炭等を含んでいる。そのため、精製して塩化ナトリウムとしてリサイクル使用することが非常に困難なために、現在は、得られた固形の副生塩は再利用できず埋立て処分されているが、一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分場の残容量が減少していることから、その処分方法が近年大きな社会問題となっている。
【0008】
そこで、このような副生塩を原料として、再度アルカリ性化合物を生成し、循環使用することが好ましい。
副生塩中の不純物を除去する際、従来は、例えばSO4 2−の除去には塩化カルシウムを添加して硫酸カルシウムとして固液分離する方法、バリウムを添加して硫酸バリウムとして固液分離する方法が行われている。また、重金属やヨウ素等の除去については液中のpHを高め水酸化物として沈殿させる方法、イオン交換樹脂を用いて除去する方法等が使用されている。
【0009】
しかし、これらの方法のみでは、例えばゴミ焼却場からの副生塩中に多量に含まれる塩化カリウムをはじめヨウ素などは除去できないため、アンモニアソーダ法による炭酸ナトリウム製造には使用できても、塩化アンモニウムソーダ法による炭酸ナトリウムの製造や水銀法による水酸化ナトリウムの製造、IM電解法による水酸化ナトリウムの製造、電気透析法による水酸化ナトリウムの製造等には使用できない。
【0010】
また、通常これらの製造工程では、製品を取り出す以外、廃液は原料に戻されて循環されるので、製造工程の系外から新たに別途に水が入ると系内の液量が増加し、増加分の液を排出する必要が生じる。そのため、固形の塩化ナトリウムが必要であるが、上記の従来の方法では塩化ナトリウムを水溶液として処理しているためそのままでは使用できず、大量のエネルギを消費して水分を蒸発させ固形化しなければならない。
【0011】
すなわち、副生塩は固形で搬入されるが、上記方法の場合、副生塩を一度水に溶解して水溶液として処理しなければならず、さらに固体塩化ナトリウムを原料とするプロセスに適用する場合は、精製後に再度蒸発乾固させ固形化しなければならない。また、SO4 2−の除去を塩化カルシウムや塩化バリウムで行う操作では、固形の硫酸カルシウムや硫酸バリウムという固形廃棄物が新たに発生する問題もある。
【0012】
そのような問題を解決する方法として、本発明者等により、先に、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中にナトリウムの炭酸塩粉体を噴霧して得た副生塩に対し、他の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解しうる量でかつ前記塩化ナトリウムを全量溶解しない量の、水又は前記塩化ナトリウムの水溶液を添加して、前記他の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解させ、得られたスラリを固液分離して固体成分を回収することを特徴とする塩化ナトリウムの精製方法が開示されている(特許文献1参照)。
該方法においては、例えば塩化ナトリウムと塩化カリウムの組み合わせのようなアルカリ金属塩化物どうしの分離を良好に行ない、硫酸ナトリウム等の水溶性金属硫酸塩を新たな固形廃棄物として発生させずに除去し、さらにヨウ化物のように許容濃度がきわめて低い物質の除去を良好に行なうことにより、副性塩から精製した塩化ナトリウム、特に、工業的にIM電解法の原料とできるまでに高純度に精製した塩化ナトリウムを得るする方法である。
【特許文献1】
特開2002−167218号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
その後、本発明者等は、ゴミ焼却場からの排ガス中の塩化水素をより除去し、さらにこれより塩化ナトリウムを回収し、これを精製してリサイクル使用することが望まれる場合があることを見いだした。
そこで、本発明は、上記飛灰に基づく不純物の問題を解決することにより、先に提案した方法におけるよりもより容易に精製されたアルカリ金属塩化物を製造する方法を提供すること、特に、工業的にIM電解法の原料としても利用できる高度に精製したアルカリ金属塩化物を製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記のようにして得られたアルカリ金属塩化物の水溶液を、イオン交換膜を隔膜として用いて電気分解することを特徴とするアルカリ金属水酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、最初に排ガス中に含まれている飛灰を分離し、分離した排ガスにアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧して得た副性塩を排ガスから回収した後に、その副性塩に対し特定の手段を適用することにより上記の目的を達成するものである。
【0015】
即ち、本発明の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法は、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中に含まれている飛灰を分離・除去した後、分離後の排ガスにアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧し、アルカリ金属炭酸塩粉体と該排気ガス中の酸性成分とを反応させて生成した1種のアルカリ金属塩化物と、他の水溶性無機塩とを含有する副生塩を該排気ガスから分離・回収し、該副生塩中の該アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩を分離・除去することにより精製した該アルカリ金属塩化物を製造する方法であって、該副生塩に対して該アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解しうる量でかつ該副生塩を全量溶解しない量の水又は該アルカリ金属塩化物の水溶液を添加して、該アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解させ、得られたスラリを固液分離して該アルカリ金属塩化物を固体成分として回収することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法では、アルカリ金属炭酸塩粒子が、平均粒子径で30μm以下であることが好ましい。平均粒子径が20μm以下の場合はさらに好ましく、特に10μm以下が好ましい。
【0017】
また、本発明の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法の好ましい態様では、前記アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上が、水溶性金属硫酸塩、水溶性金属ヨウ化物及び該アルカリ金属塩化物とは異なるアルカリ金属の塩化物からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法の別の好ましい態様では、前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、前記水又は前記アルカリ金属塩化物の水溶液を、水に対して硫酸ナトリウムがSO4 換算で12質量%以下の濃度となるように、又は塩化カリウム濃度が塩化カリウム換算で35質量%以下となるように、又はヨウ化ナトリウムがヨウ素換算で5質量%以下となるように、該副生塩に混合することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法の別の好ましい態様では、前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、前記副生塩は、他の水溶性無機塩として硫酸ナトリウムを前記アルカリ金属塩化物に対して0.15倍モル以下含むか、又は他の水溶性無機塩として塩化カリウムを該アルカリ金属塩化物に対して1.0倍モル以下含むか、又は他の水溶性無機塩としてヨウ化ナトリウムを該アルカリ金属塩化物に対して0.01倍モル以下含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法の別の好ましい態様では、前記スラリを固液分離して得られた固体成分を再び水に溶解した後、再び固液分離して水に溶解しない不純物を除去して前記アルカリ金属塩化物を水溶液として回収することを特徴とする。
【0021】
また、本発明のアルカリ金属水酸化物の製造方法においては、上記のアルカリ金属塩化物の水溶液を、イオン交換膜を用いて電気分解することにより、アルカリ金属水酸化物を製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明においては、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中に含まれている飛灰を分離・除去した後、分離後の排ガスにアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧し、アルカリ金属炭酸塩粉体と該排気ガス中の酸性成分とを反応させて生成した1種のアルカリ金属塩化物と、他の水溶性無機塩とを含有する副生塩を該排気ガスから分離・回収し、該副生塩に対し、水又はアルカリ金属塩化物の水溶液を用いて、回収するアルカリ金属塩化物と他の水溶性無機塩との相互溶解度を利用し、除去すべき1種以上の他の水溶性無機塩が実質的に全量水溶液中に溶解し、アルカリ金属塩化物は一部が水溶液中に溶解しており大部分は溶解できずに固体として存在するスラリの状態をつくる操作を行う。
【0023】
本発明においては、都市ゴミ焼却場や産業廃棄物焼却場からの燃焼ガス中の塩化水素を含む酸性ガスを中和して副生塩を生成させるためのアルカリ金属炭酸塩としては、酸性ガス成分との高い反応性、工業的規模での入手の容易性、保管時の安定性などから例えば、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、これらは合成品及び天然品ともに使用できる。アルカリ金属炭酸塩の種類によりこの副生塩の生成工程に差はあるが、副生塩は、酸性ガスと未反応のアルカリ残量が異なる程度で基本的には同様な組成となる。これらのアルカリ金属炭酸塩は、乾式のガス処理設備によってガス中の酸性ガスと反応して塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等が混合した副生塩が生成される。この副生塩には、通常塩化カリウムや金属ヨウ化物が不純物として含まれる。
【0024】
ここで、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中に含まれている飛灰の排ガスからの分離、または分離後の排ガスにアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧し、アルカリ金属炭酸塩粉体と該排気ガス中の酸性成分とを反応させて生成した1種のアルカリ金属塩化物と、他の水溶性無機塩とを含有する副生塩の排ガスからの分離は、公知のガス類からのダストを除去する手段により行なうことができ、特に限定されるものではない。例えば、バクフィルター、電気集塵器、サイクロン等が挙げられるが、中でもバクフィルターが分離性能が高く、かつ濾布に捕捉されたアルカリ金属炭酸塩粒子が酸性ガスとの反応に寄与するため酸性ガスの除去効率が高いので好ましい。
【0025】
まず、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中から飛灰を分離・除去し、次いで、分離後の排ガスにアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧し、アルカリ金属炭酸塩粉体と該排気ガス中の酸性成分とを反応させて生成した副生塩を分離し、その分離した副生塩に対して、水又はアルカリ金属塩化物の水溶液を用いた次の処理を施すことにより、飛灰や、主成分となる酸性成分とは別の不純物の混入を充分に少なくすることができる。
【0026】
また、前記の水又はアルカリ金属塩化物の水溶液を用いた処理操作において、除去すべき他の1種以上の水溶性無機塩を実質的に全量溶解させるとは、回収するアルカリ金属塩化物に必要とされる目標の純度に達する程度まで上記水溶性無機塩を溶解させることをいう。次いで当該スラリを濾過等により固液分離し、好ましくは上記他の水溶性無機塩を実質的に含まない液(水等)で洗浄すると、固体成分は上記他の水溶性無機塩を実質的に含まないアルカリ金属塩化物となる。
【0027】
ここで、回収するアルカリ金属塩化物は、2種以上のアルカリ金属塩化物の混合物ではなく1種のアルカリ金属と塩素とからなる塩化物であるから、除去すべき他の水溶性無機塩として、当該アルカリ金属塩化物以外のアルカリ金属塩化物も除去の対象となる。例えば、1種のアルカリ金属塩が塩化ナトリウムの場合は、塩化カリウムも除去の対象となる。すなわち、本発明の方法により、従来は困難であった異なるアルカリ金属塩化物どうしの分離を容易に行って精製したアルカリ金属塩化物を得ることができる。
また、本発明において、スラリを形成するための水又はアルカリ金属塩化物の水溶液の添加は、分割して行うこともできる。すなわち、スラリ形成及び固体成分の回収の操作を繰り返し実施すると、アルカリ金属塩化物の純度を高めることができる。特に、もともとの混合物中の濃度が低くかつアルカリ金属塩化物中の目標の許容濃度がきわめて低い水溶製無機塩の除去については繰り返しの実施が有効である。
【0028】
以下においては、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中に含まれている飛灰を分離・除去した後、分離後の排ガス中にアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧し、アルカリ金属炭酸塩粉体と該排気ガス中の酸性成分とを反応させて生成した1種のアルカリ金属塩化物と、他の水溶性無機塩とを含有する副生塩として、塩化ナトリウムを主成分とし、除去すべき不純物として硫酸ナトリウムと塩化カリウムと水に不溶の成分とが含まれる副性塩の場合を例にとって説明するが、本発明における該1種のアルカリ金属塩化物は、塩化ナトリウムに限られるものではない。
【0029】
塩化カリウムの除去は、塩化ナトリウムをIM電解法で使用した場合に得られる水酸化ナトリウム中のカリウムの濃度上昇を抑制するために必要である。通常、イオン交換膜に対する微量のカリウムの混入により運転性能が低下することはないが、得られる水酸化ナトリウム中のカリウム濃度は、電解槽に供給される原料中のカリウムの濃度が上昇すれば相関して高くなる。
【0030】
まず、前記副生塩を水又は塩化ナトリウム水溶液(以下、まとめて水等とい
う。)と混合する。ここで塩化ナトリウム水溶液は海水であってもよく、IM電解法において陽極側より流出する希薄な塩水(以下、淡塩水という。)であってもよい。塩化ナトリウム水溶液を用いる場合、水溶液中には上記不純物はできるだけ含まれない方が、操作効率を高める上で好ましい。
【0031】
このとき、水(又は上記水溶液中の水)の量は、副生塩が全量溶解できる量ではなく、塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムと塩化カリウムの相互溶解度を考慮して、硫酸ナトリウムと塩化カリウムのほぼ全量が溶解できるぎりぎりの量又はそれより多少多い量例えば1〜2倍量とすることが好ましい。水の量をこのように調整すると、塩化ナトリウムの回収ロスを最低限におさえられる。次いでこれを固液分離すると、スラリの固体成分には過飽和となって溶解しない塩化ナトリウムが含まれており、硫酸ナトリウムと塩化カリウムを実質的に含まない塩化ナトリウム(固形物)が得られる。液体中には硫酸ナトリウムと塩化ナトリウムと塩化カリウムが存在している。
【0032】
固液分離の方法としては、遠心分離、減圧濾過、加圧濾過、沈降分離等が採用できる。また、固液分離により得られた固体成分には母液(スラリ中の液体)が付着しているので、水等で洗浄して付着する母液を除去すると、塩化カリウムや硫酸ナトリウムを含まない固体の塩化ナトリウムを得られるので好ましい。ここで、他の水溶性無機塩が共存する場合の塩化ナトリウムの相互溶解度は、通常、塩化ナトリウムと水のみが存在する場合の塩化ナトリウムの溶解度より低い。この点は、塩化ナトリウムを固体で回収することに関しては有利に働く。
【0033】
次に得られた固体成分を水等に溶解すると、固液分離することにより、水に不溶の不純物を除去した塩化ナトリウム水溶液が得られる。得られた塩化ナトリウム水溶液は、溶媒を蒸発させて高純度の塩化ナトリウム結晶を製造することができる。
また、上記塩化ナトリウム水溶液は、アンモニアソーダ法や塩化アンモニウムソーダ法により炭酸ナトリウムを製造したりするための原料にも利用できる。
【0034】
特に、本発明の方法は、水酸化ナトリウムの主要な製造方法であり高純度な製品を生産できるIM電解法には好適に使用できる。IM電解法では、電気分解後に陽極から流出する淡塩水は再び塩化ナトリウムを溶解するための液として循環再利用され、廃液を極力少なくするように運転されている。そのため、プロセス系内に別途水を持ち込むと、系内の水が不必要に増加し系内の水が増加し原料である塩化ナトリウムを含む塩水を系外に不必要に廃棄しなくてはならなくなってしまうので、原料としては固体の塩化ナトリウムを使用する。
本発明の方法により他の水溶性無機塩が除去されて固形物として得られる塩化ナトリウムは、淡塩水と混合して溶解した後固液分離して、固体の不純物を除去して次いで既存の方法で精製することによりIM電解法に用いることができる。
【0035】
前記排ガスから分離した副生塩の水や淡塩水等(以下、単に水等という)への溶解の操作において、硫酸ナトリウムは水溶液中における濃度が、水に対してSO4 2−換算で12質量%以下、特に9質量%以下となるように水等を加えると、そのほぼ全量が溶解するので好ましい。また、塩化カリウムは、水溶液中の塩化カリウム濃度が、水に対して35質量%以下、特に15質量%以下となるように水等を加えると、そのほぼ全量が溶解するので好ましい。また、この操作の速度と効果を高めるため、あらかじめ副生塩を粉砕してから処理してもよい。
【0036】
本発明において、塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムを含む副生塩から硫酸ナトリウムの除去を効果的に行うには、副生塩中の塩化ナトリウムに対する硫酸ナトリウムのモル比、硫酸ナトリウム/塩化ナトリウムが0.15以下、特に0.10以下であることが好ましい。上記モル比が0.15を超えると、硫酸ナトリウムの除去を充分に行うには塩化ナトリウムの量が少なすぎ、塩化ナトリウムの大部分が溶液中に溶解するため、塩化ナトリウムの回収率が低くなる。一方、上記モル比が0.001未満の場合は、硫酸ナトリウムを除去しなくてもこのままでもIM電解法に使用できるため、この除去操作はあまり必要とされない。
また同様に、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを含む副生塩から塩化カリウムの除去を効果的に行うには、副生塩中の塩化ナトリウムに対する塩化カリウムのモル比、塩化カリウム/塩化ナトリウムは1.0以下、特に0.7以下であることが好ましい。上記モル比が1.0を超えると、塩化カリウムの除去を充分に行うには塩化ナトリウムの量が少なすぎ、塩化ナトリウムの大部分が溶液中に溶解するため、塩化ナトリウムの回収率が低くなる。副生塩中の塩化カリウム濃度はできるだけ低い方が好ましいので、副生塩に塩化カリウムが少しでも含まれている(上記モル比が0超)場合は、この除去操作を行うことは有効である。
【0037】
以上、水溶性無機塩が塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムの2成分系又は塩化ナトリウムと塩化カリウムの2成分系の場合に、塩化ナトリウムの純度を向上させるための他の水溶性無機塩とのモル比の好ましい範囲について記載したが、例えば塩化ナトリウムと塩化カリウムと硫酸ナトリウムの3成分系で塩化ナトリウムを生成する場合は、3成分の相互溶解度を勘案して決定する。
【0038】
また、副生塩を水又は塩化ナトリウム水溶液に溶解させるときの温度は、硫酸ナトリウムが含まれている場合は、0℃〜50℃、特に15℃〜35℃が、硫酸ナトリウムの析出が少なく、塩化ナトリウムの回収率が高いので好ましい。
この温度範囲は、求める塩と不純物との相互溶解度の温度依存性を考慮して決定されるものであり、求める塩と不純物との組み合わせにより最適な温度範囲は異なる。塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムの場合、上記温度範囲において硫酸ナトリウムの水への溶解度が高いので好ましい。
【0039】
塩化ナトリウムを主体とする副生塩から塩化カリウムと硫酸ナトリウムとを除去し純度を高める場合、本発明においては塩化カリウムを完全に除去するように水等の量を調整し、硫酸ナトリウムは全量を除去せずに従来の脱硫技術を用いて除去することもできる。すなわち、塩化ナトリウムの回収コスト等を勘案して、塩化カリウムは本発明により除去し、硫酸ナトリウムは本発明では副生塩全質量の1.0質量%以下とするにとどめ、従来のSO4 2−を除去する技術を併用してもよい。
すなわち、塩化カリウムを除去した後の副生塩を水に溶解した水溶液に水酸化カルシウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、重金属やカルシウムやマグネシウム等の、硫酸塩と反応して水に対する溶解度の低い化合物を生成する物質を1種以上添加し、固液分離することにより、SO4 2−は除去され、高純度の塩化ナトリウム水溶液が得られる。
また、処理すべき塩化ナトリウム水溶液をキレート樹脂と接触させることにより、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、水銀等を低減させることができるので、さらに高純度の塩化ナトリウム水溶液が得られる。
【0040】
上記では、塩化ナトリウムから硫酸ナトリウムと塩化カリウムを除去する手段について具体的に説明したが、本発明はこれらの手段にに限定されず、本発明によれば少量ずつ混入している種々の水溶性無機成分を同時に除去できる。すなわち、従来の塩化カルシウム添加法やイオン交換樹脂法では除去が困難であった、重金属塩素化合物や臭化ナトリウムのような臭素化合物、ヨウ素化合物、フッ素化合物、塩素酸ナトリウムのようなナトリウム炭酸塩等の水溶性無機成分の除去ができる。
特に、塩化ナトリウムをIM電解法に適用する場合、塩化ナトリウム中のヨウ素の許容濃度はきわめて低いが、本発明によれば、水溶性金属ヨウ化物をきわめて低い濃度まで除去することができ好ましい。
【0041】
以下、水溶性金属ヨウ化物がヨウ化ナトリウムである場合について具体的に説明する。
塩化ナトリウムを含む副生塩からヨウ化ナトリウムを除去する場合、副生塩と水等を混合し、塩化ナトリウムを部分的に溶解させ、他の水溶性無機塩を実質的に全量溶解させる操作では、ヨウ化ナトリウムがヨウ素換算で水に対して5質量%以下、特に2質量%以下となるように水等を加えることが好ましい。水等の量をこのように調整することにより、ヨウ化ナトリウムはほぼ全量が溶解する。また、副生塩中の塩化ナトリウムに対するヨウ化ナトリウムのモル比、ヨウ化ナトリウム/塩化ナトリウムは、0.01以下、特に0.005以下であることが好ましい。塩化ナトリウムをIM電解法における原料として使用するには、一般的にヨウ素が1質量ppm以下であることが必要とされている。したがって、副生塩中のヨウ素の含有量が多い場合、本発明におけるこの操作は、複数回繰り返す必要が生じ、特に上記モル比が0.01を超える場合5回以上の繰り返しが必要となり、工程に時間がかかる。副生塩中の水溶性金属ヨウ化物の含有量や他の成分の含有量によっては、水溶性金属ヨウ化物をこの操作では一部除去し、キレート樹脂等で除去するなど、従来のヨウ素を除去する技術と併用してもよい。副生塩中のヨウ化ナトリウム濃度はできるだけ低い方が好ましいので、副生塩にヨウ化ナトリウムが少しでも含まれている(上記モル比が0超)場合は、本発明のこの操作を行うことは有効である。
【0042】
さらに、本発明において、処理すべき副生塩中に水に不溶の不純物が含まれている場合は、上記処理により得られた固形の塩化ナトリウムを水に溶解し、再度固液分離すれば、水に不溶性の不純物が除去された塩化ナトリウム水溶液を得られる。
【0043】
上記では、塩化ナトリウムを例示し説明したが、本発明は全く同様の原理によって、塩化カリウムや塩化リチウム等のアルカリ金属塩化物において、他のアルカリ金属塩化物、SO4 2−、重金属、その他の不純物の除去に適用できる。
例えば塩化カリウムをIM電解法による水酸化カリウムの製造に使用できるように、塩化カリウム中のナトリウムの混入を低減できる。
【0044】
本発明により得られる固形の塩化ナトリウムは、IM電解法や水銀電解法や電気透析法での電気分解による水酸化ナトリウムの製造、塩化ナトリウム水溶液の蒸発による塩化ナトリウム結晶の製造、又はアンモニアソーダ法や塩化アンモニウムソーダ法による炭酸ナトリウムの製造に用いることができる。また、ヨウ素濃度に制約がある水酸化ナトリウム水溶液のIM電解法での製造に使用する場合でも、脱ヨウ素イオン交換樹脂等を用いる設備が不要又はその設備の規模を小さくできる。すなわち、従来の方法に比較し設備コストやランニングコストを小さくできる。
【0045】
次に、図面を参照しながら本発明について説明する。
図1は、例えば都市ゴミ焼却場で発生する排ガスを乾式で中和処理し、副生塩を得る、排ガスの乾式中和処理工程を示す図である。ゴミ熱分解炉11より発生したガスG1は、溶融炉12で燃焼された後、廃熱ボイラ13を通して熱回収された後、排ガス冷却塔14に送られる。排ガス冷却塔14で排ガスG2はダイオキシンの合成温度以下に冷却された後、第1バグフィルタ15により飛灰が除去される。除去された飛灰16は、溶融炉12に循環使用される。飛灰が除去された排ガス中に、粉末中和剤17及び必要に応じて添加された活性炭が噴霧される。粉末中和剤(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又はセスキ炭酸ナトリウム等)は、排ガスG2中の塩化水素、硫黄酸化物等と反応して副生塩19を生成する。生成した副生塩19は、第2バグフィルタ18で排ガスと分離され、分離後の排ガスは、誘引通風機を経て、煙突より排出される。活性炭が添加された場合には、活性炭により排ガスからダイオキシン類が除去される。また、粉末中和剤には水酸化カルシウム等が混合併用されてもよい。
【0046】
図2は、例えば、図1の工程により処理されて生成された副生塩19(S2)を、水酸化ナトリウム水溶液のIM電解法による製造プロセスへ適用できる程度まで精製する工程を示しており、本発明の一態様であり、副生塩の精製プロセスを示す図である。まず、副生塩S2は、混合槽41に送られ、ここに水又は淡塩水等の塩化ナトリウムを含む水溶液が投入され、副生塩S2が部分的に溶解したスラリSL1を得る。スラリSL1では、水溶性無機塩のうち、ほぼ塩化ナトリウムのみが固体成分として存在しており、他の水溶性無機塩はほぼ液中に溶解している。
次いで、スラリSL1は濾過機42で固液分離され、さらに必要に応じて洗浄される。この固液分離操作を工業的に行うには、濾過機42としては水平ベルトフィルタ(真空濾過機)、円筒型真空濾過機、フィルタプレス、バスケット型遠心分離機等、洗浄機能を有しうる分離装置が好ましい。
【0047】
ここでの固液分離によってSO4 2−やカリウムやヨウ素等は液状物L3に含まれて除去される。ここまでのスラリ化と固液分離のプロセスは、図2に破線で示したように、繰り返し行うことができる。
一方、固体として分離された粗精製塩S3は溶解槽43へ送られ、溶解槽43に供給される水又は淡塩水等の塩化ナトリウムを含む水溶液に溶解された後、濾過設備44にて水に不溶解な固形物S4を分離除去する。濾過設備44の濾液はさらに、反応槽45にて水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、キレート液、高分子凝集剤が添加され、カルシウム、マグネシウム、重金属等の水酸化物等の沈殿S5を形成する。次いで清澄槽46へ送られ、ここで沈殿S5は除去される。
ここで、清澄槽46のかわりに、フィルタプレスや真空濾過機等の濾過設備を設置してもよい。清澄槽46からの清澄液L4は濾過設備47へ送られ、微量含まれている固形物を除去する。次いで、キレート樹脂塔48にて、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等をより高度に除去し、高度精製塩水L5を得
る。濾過設備44及び固液分離設備47としては、サンドフィルタ、プレコートフィルタ、カートリッジフィルタ、フィルタプレス等が使用できる。
この高度精製塩水L5は、IM電解法に適用できる純度を有するので、イオン交換膜式電解槽に供給されて、IM電解法により高純度の水酸化ナトリウム水溶液を得ることができる。
【0048】
【実施例】
次に、本発明の実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
図1、図2のガス化溶融炉プロセス、精製プロセスに沿って実施した。
ゴミ熱分解炉11より発生したガスを、溶融炉12で燃焼した後、廃熱ボイラ13を通して熱回収した後、排ガス冷却塔14に送る。排ガス冷却塔14で排ガスをダイオキシンの合成温度以下に冷却した後、第1バグフィルタ15にて飛灰を分離除去する。除去した飛灰は、溶融炉12に循環使用する。
飛灰を除去した排ガス中に、排ガス中の酸性成分の粉末中和剤(脱塩剤)として平均粒子径9μmの炭酸水素ナトリウムを噴霧する。炭酸水素ナトリウムは、排ガス中の塩化水素、硫黄酸化物等と反応して副生塩を生成する。生成した副生塩は、バグフィルタ18で排ガスと分離する。
【0049】
このようにして得た副生塩30kgを、混合槽41にて純水37.5kgと混合し、副性塩が部分的に溶解したスラリを得た。このときの溶媒である純水に対する硫酸ナトリウムのSO4 換算濃度は1.8%、塩化カリウムの濃度は0.046%(塩化カリウム換算)、水溶性金属ヨウ化物のヨウ素換算濃度は0.004%であった。このスラリを5Aの濾紙を使用したヌッチェ(濾過機)42で濾過し、濾過層に対し、試薬特級の塩化ナトリウムを水に溶解した25質量%の飽和水溶液を18kgスプレーして付着している母液を洗浄し除去した。固形物を濾紙より回収し13kgの塩(以下、粗精製塩という。)を回収した。この粗精製塩16kgを、溶解槽43にて純水48kgに溶解し、液中のSO4 2−の濃度が0.2質量%程度となるように固形の硫酸ナトリウムを添加した(以下、粗精製塩水という)。
【0050】
次に、粗精製塩水43kgを5Aの濾紙を使用してヌッチェ(濾過設備)44で濾過し固形物を分離後、反応槽45にて濾液にキレート液(商品名:アクリーンM、旭硝子エンジニアリング社製)を17.2g、塩化鉄11gを添加し30分間撹拌した。これにカチオン系の高分子凝集剤(商品名:クリフィックスCP−933、栗田工業社製)を添加して清澄分離し、5Aの濾紙を使用したヌッチェ(清澄槽46)で濾過し精製塩水(以下、一次精製塩水という。)を得た。
次いで、一次精製塩水を40kg分取し、これに水酸化ナトリウム33g、炭酸ナトリウム8g、高分子凝集剤(商品名:アクアリック、日本触媒社製)を添加し、次いで、5Cの濾紙を使用してヌッチェで濾過して精製塩水(以下、二次精製塩水という。)を得た。
【0051】
次いで、この二次精製塩水を52kg分取して、アミノリン酸型のイオン交換樹脂(商品名:DUOLITE C467、住友化学社製)140gを充填した第1の小型カラムを、通液空塔速度が10m/hとなるように通液した。なお、ここで通液空塔速度は、液流量(m3 /h)をカラムの断面積(m2 )で除した値である。第1の小型カラムを通過した液は、次いでヨウ素を除去するためにスチレン系マクロポーラス型のイオン交換樹脂(商品名:DUOLITE A161TRSO4、住友化学工業社製)140gを充填した第2の小型カラムに通液し、精製塩水(以下、三次精製塩水という。)を得た。副生塩、粗精製塩、一次精製塩水、二次精製塩水、三次精製塩水それぞれの分析値を表1に示す。なお、本例においてIM電解法に適用するための塩化ナトリウム水溶液の純度の目標値は表1のとおりとした。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より、三次精製塩水はIM電解法に充分に使用できる純度を有することが確認された。またアンモニアソーダ法及び塩化アンモニウムソーダ法による炭酸ナトリウムの製造には一次精製塩水で充分に使用できることがわかった。
【0054】
次に、上記三次精製塩水を用いてIM電解法に適用した。すなわち、電解面積が縦5cm、横5cmの単極式電解槽にイオン交換膜(商品名:フレミオンF−795、旭硝子社製)を設置して、電流密度3kA/m2 、温度85℃、陰極室の水酸化ナトリウム濃度32質量%、陽極室の塩化ナトリウムとして、上記三次精製塩水を使用し、塩化ナトリウム濃度を210g/Lとして、90日間連続運転した。経過日数と電流効率との関係を表2に示す。電流効率は、90日経過後でも低下していなかった。
【0055】
【表2】
ここで、ガス化溶融プロセスを使用する。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、ゴミ焼却場排ガスなどから得られる副生塩をリサイクル使用するに際して従来の技術では除去が困難または除去工程が複雑となっていた飛灰に起因する不純物を、効率的かつ容易に除去できる。さらに、都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガスから飛灰を分離・除去した後に、ナトリウム炭酸塩粉体を噴霧して生成した副生塩から、IM電解法においても使用することができる程度に高純度のアルカリ金属塩化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における排ガスの乾式中和処理工程を示す図。
【図2】本発明における副生塩の精製処理工程を示す図。
【符号の説明】
11:熱分解炉
12:溶融炉
13:廃熱ボイラ
14:冷却塔
15:バグフィルター
16:飛灰
17:炭酸水素ナトリウム
18:バグフィルター
19:副生塩
41:混合槽
42:濾過機
43:溶解槽
45:反応槽
46:清澄槽
47:濾過設備
48:キレート樹脂塔
Claims (7)
- 都市ゴミあるいは産業廃棄物の焼却炉からの排ガス中に含まれている飛灰を分離・除去した後、分離後の排ガスにアルカリ金属炭酸塩粉体を噴霧し、アルカリ金属炭酸塩粉体と該排気ガス中の酸性成分とを反応させて生成した1種のアルカリ金属塩化物と、他の水溶性無機塩とを含有する副生塩を該排気ガスから分離・回収し、該副生塩中の該アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩を分離・除去することにより精製した該アルカリ金属塩化物を製造する方法であって、該副生塩に対して該アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解しうる量でかつ該副生塩を全量溶解しない量の水又は該アルカリ金属塩化物の水溶液を添加して、該アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上を実質的に全量溶解させ、得られたスラリを固液分離して該アルカリ金属塩化物を固体成分として回収することを特徴とする精製したアルカリ金属塩化物の製造方法。
- 前記アルカリ金属塩化物以外の水溶性無機塩の1種以上が、水溶性金属硫酸塩、水溶性金属ヨウ化物及び該アルカリ金属塩化物とは異なるアルカリ金属の塩化物からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法。
- 前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、前記水又は前記アルカリ金属塩化物の水溶液を、水に対して硫酸ナトリウムがSO4 換算で12質量%以下の濃度となるように、又は塩化カリウム濃度が塩化カリウム換算で35質量%以下となるように、又はヨウ化ナトリウムがヨウ素換算で5質量%以下となるように、該副生塩に混合する、請求項1あるいは2に記載の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法。
- 前記アルカリ金属塩化物が塩化ナトリウムであり、前記副生塩は、前記他の水溶性無機塩として硫酸ナトリウムを前記アルカリ金属塩化物に対して0.15倍モル以下含むか、又は他の水溶性無機塩として塩化カリウムを該アルカリ金属塩化物に対して1.0倍モル以下含むか、又は他の水溶性無機塩としてヨウ化ナトリウムを該アルカリ金属塩化物に対して0.01倍モル以下含む、請求項1〜3のいずれかに記載の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法。
- 前記アルカリ金属炭酸塩粒子が、平均粒子径30μm以下の炭酸水素ナトリウム粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法。
- 前記スラリを固液分離して得られた固体成分を再び水に溶解した後、再び固液分離して水に溶解しない不純物を除去して前記アルカリ金属塩化物を水溶液として回収する、請求項1〜5のいずれかに記載の精製したアルカリ金属塩化物の製造方法。
- 請求項6に記載のアルカリ金属塩化物の水溶液を、イオン交換膜を用いて電気分解することを特徴とするアルカリ金属水酸化物の製造方法。
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