JP2000026177A - 珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法 - Google Patents

珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法

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JP2000026177A
JP2000026177A JP10210324A JP21032498A JP2000026177A JP 2000026177 A JP2000026177 A JP 2000026177A JP 10210324 A JP10210324 A JP 10210324A JP 21032498 A JP21032498 A JP 21032498A JP 2000026177 A JP2000026177 A JP 2000026177A
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silicon carbide
carbon
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Akira Sugano
晃 菅野
Shigeaki Kuroi
茂明 黒井
Kotaro Kitayama
幸太郎 北山
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Coorstek KK
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Toshiba Ceramics Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭素粉末や多量の有機結合剤を配合すること
なく、しかも、Si含浸反応焼結時における該Siの浸
透が充分に行われ、得られるセラミックス基材の組織が
均質緻密で、強度、耐熱衝撃性に優れ、また組織内に残
留未反応炭素の凝集部分が存在しないため、炭素の脱離
に基づくダストの発生を回避することができる珪素・炭
化珪素セラミックスの製造方法を提供する。 【解決手段】 原料炭化珪素に対し1.5乃至11重量
%の結合剤を配合した混合物を成形し、得られた多孔質
成形体を1500℃以上で仮焼し、引き続き若しくは冷
却後、該仮焼多孔質成形体に、該成形体の炭化珪素粒子
表面を分解してその表面に遊離炭素を生成させる遊離炭
素生成化処理を施し、その後、該処理成形体に溶融珪素
を含浸させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、珪素・炭化珪素セ
ラミックスの製造方法に関し、より詳細には、組織が均
質緻密で、強度、耐熱衝撃性に優れているだけでなく組
織内に残留未反応炭素の凝集部分が存在しないため、炭
素の脱離に基づくダストの発生が回避され、特に半導体
製造工業分野における炉芯管や支持台用部材として好適
な珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭化珪素系セラミックスは、耐熱性、高
熱伝導性、耐食性、強度、耐摩耗性等の数多くの物性に
優れているため高温構造材、発熱体、抵抗体等の他に耐
食性材、耐摩耗材、研磨材、研削材等の用途に広く使用
されている。特に炭化珪素(SiC)・炭素(C)成形
体に珪素(Si)を含浸させ反応焼結により緻密化した
珪素・炭化珪素(Si−SiC)セラミックスは、半導
体製造工業分野において半導体シリコン単結晶ウエハの
熱処理用炉芯管や支持台等に使用され半導体工業を支え
る重要な材料となっている。
【0003】珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法と
しては、従来、SiC粉末、フェノールレジン等の有機
結合剤の他に炭素粉末を添加混合し、これらの混合物を
混練造粒し、ラバープレス、押出、スリップキャストな
どの成形方法によって炭化珪素・炭素質多孔成形体と
し、これを約1600℃程度の温度で仮焼した後に珪素
を含浸させて反応焼結し、珪素・炭化珪素(Si−Si
C)セラミックスを得る方法が一般的であった。この従
来の製造方法では、炭化珪素(SiC)粉末の他にカー
ボン粉末、グラファイト粉末等の炭素(C)質粉末を添
加して多孔質体とし、珪素(Si)含浸を行っている。
この炭素(C)粉末は、Si含浸時に、Siが多孔質体
中に浸入するとき、SiC表面との濡れ性を良くする目
的、即ちSi浸透促進剤として使用されるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の目的
を達成するために充分な量の炭素(C)粉末を添加する
と、該炭素粉末が成形体中で充分均質に分散せず、往々
にして炭素粒子が凝集した局所凝集部分を生ずる。この
炭素粒子の局所凝集部分が存在すると、Si含浸後の珪
素(Si)と炭素(C)との反応で消費されなかった過
剰な炭素(C)が未反応残留炭素として多孔質体中に残
る。この未反応凝集炭素がセラミック基材中に多く残存
すると、例えば、該基材を半導体製造装置用部材として
使用した際に、ダストが発生するという不都合があっ
た。
【0005】また、前記Si含浸反応焼結の際の珪素
(Si)と炭素(C)との反応が、局部的に炭素(C)
が密集したこの部分に集中して起こるため、珪素(S
i)が炭化珪素(SiC)となる際の体積膨張により該
部分に歪みが発生し、極端な場合にはクラックが生ず
る。このような材質の基材(焼結成形体)は、部分的に
強度等に強弱を生じ、基体の物性が不均一となり、全体
として特性の劣ったものであった。このため、従来法で
作製されたこの種の基材にはハンドリングの際に変形や
破損を招来するという不都合がしばしば発生した。
【0006】更に、使用する炭素粉末は微粉末であるた
めに吸湿性があり、成形からSi含浸迄の長い工程中に
多孔成形体の性質、例えば強度、含水量などが変化し、
品質管理が難しいという問題があった。
【0007】一方、カーボン粉末、グラファイト粉末等
炭素粉末を添加せずに前記珪素・炭化珪素セラミックス
を製造する方法に関しては、既にいくつかの方法が提案
されている。例えば、特公昭54−8370号公報に
は、炭化珪素粉末70乃至83重量部にフェノール・フ
ォルムアルデヒド樹脂、フェノール・フルフラール樹
脂、ポリベンズイミダゾール樹脂等の芳香族系樹脂をバ
インダーとして30乃至17重量部配合して混合し、該
混合物を金型中に導入して加熱昇温して成形体とし、得
られ(残炭率:約6〜18重量%)た成形体中の硬化樹
脂成分を熱分解させて炭素化し、この炭素化後の成形体
を常法により珪化してセラミックスを得る炭化珪素品の
製造方法が開示されている。
【0008】また、特開昭62ー12666号公報に
は、特定の平均粒径を有する微粒及び粗粒の2種類の炭
化珪素粉末を特定量比で組み合わせ配合し、これに有機
結合剤を添加した混合物を混練、造粒後成形し、得られ
た成形体を焼成した後、珪素含浸して珪化する半導体炉
芯管用の複合セラミックスの製造方法が開示されてい
る。
【0009】上記の炭素粉末を添加しない製法で作製さ
れた珪素・炭化珪素(Si−SiC)セラミックスにお
いては、確かに、炭素粉末を添加する従来の製造方法で
得られる成形体に比較すると成形体中の炭素成分の分散
性は改善される。
【0010】しかしながら、上記した炭素粉末を添加し
ない製法においては、何れも炭素粉末の替わりに炭素源
としてフェノール樹脂等の有機バインダーを15重量%
以上使用しており、成形体の仮焼後の残炭率が6重量%
以上となっている。そのため、やはり成形体の仮焼段階
で該バインダーに由来する残留炭素分が局所的に固まっ
て存在する部分を生じ、この部分が珪素(Si)と反応
して炭化珪素(SiC)となる際の体積膨張により、成
形体のこの部分に歪みやクラック等が生じてしまうとい
う技術的課題が依然として存在する。
【0011】本発明は上記技術的課題を解決するために
なされたものであり、上記従来法の不都合が解消された
珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法を提供するこ
と、即ち炭素粉末や多量の有機結合剤を配合することな
く、しかも、Si含浸反応焼結時における該Siの浸透
が充分に行われ、得られるセラミックス基材の組織が均
質緻密で、強度、耐熱衝撃性に優れ、また組織内に残留
未反応炭素の凝集部分が存在しないため、炭素の脱離に
基づくダストの発生を回避することができる珪素・炭化
珪素セラミックスの製造方法を提供することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、原料炭
化珪素に対し下記仮焼後の残炭率が0.005〜5.0
%重量%となるように1.5乃至11重量%の結合剤を
配合した混合物を成形し、得られた多孔質成形体を15
00℃以上で仮焼し、引き続き若しくは冷却後、該仮焼
多孔質成形体に、該成形体の炭化珪素粒子表面を分解し
てその表面に遊離炭素を生成させる遊離炭素生成化処理
を施し、その後、該処理成形体に溶融珪素を含浸させる
ことを特徴とする珪素・炭化珪素セラミックスの製造方
法が提供される。また、本発明によれば、本発明の上記
方法の第1態様として、前記遊離炭素生成化処理が、塩
素系ガス雰囲気下における熱処理である珪素・炭化珪素
セラミックスの製造方法が提供される。
【0013】更に、上記方法の第2態様として、前記遊
離炭素生成化処理が、5Torr以下の真空中における
温度1700℃以上での熱処理である珪素・炭化珪素セ
ラミックスの製造方法が提供される。また、上記方法の
第3態様として、前記遊離炭素生成化処理が、不活性ガ
ス雰囲気下における温度1700℃以上での熱処理であ
る珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法が提供され
る。
【0014】本発明の珪素・炭化珪素セラミックスの製
造方法は、従来法のように原料に炭素粉末を配合せず、
また結合剤(バインダー)の添加量も従来法に比較して
少量であること、及び従来法の成形体仮焼工程とSi含
浸反応焼結工程との間に遊離炭素生成化処理を施す工程
が挿入され、該処理により仮焼成形体のSiC粒子表面
層を薄く分解してその表面に遊離炭素を生成させてから
溶融Siを含浸させ、反応焼結する点が顕著な構成上の
特徴である。
【0015】本発明の珪素・炭化珪素セラミックスの製
造方法は、前記したように遊離炭素生成化処理を行うこ
とにより、従来法のように原料炭化珪素粉末にカーボン
粉末、グラファイト粉末等の炭素(C)質粉末を添加配
合したり、フェノール樹脂等の有機バインダーを15重
量%以上(残炭率:6重量%以上)も多量に配合しなく
ても、仮焼成形体のSiC粒子表面層に充分に炭素
(C)微粒子を存在させることができる。また、本発明
の方法にあっても、この炭素のSi浸透促進作用、即
ち、該炭素(C)微粒付着によるSiC表面の濡れ性の
向上に基づくSi浸透促進作用によりSi含浸が充分に
行われ、反応焼結を支障無く遂行することができる。
【0016】本発明の方法においては、上記遊離炭素生
成化処理は、具体的には、前記仮焼成形体を、 a)塩素系ガス雰囲気下に熱処理する、 b)5Torr以下の真空中、温度1700℃以上で熱
処理する、 c)不活性ガス雰囲気下に温度1700℃以上で熱処理
する、 等の方法により達成される。
【0017】即ち、仮焼多孔質成形体の細孔内表面組織
のSiC粒子上で、上記a)の場合には、 SiC(s)+2Cl2 (g) → SiCl4 (g)
+C(s) 等のSiC塩素化分解反応により、また、上記b)、
c)の場合には、 SiC(s) → Si(g)+C(s) のSiC熱分解反応により、それぞれSiC粒子表面に
遊離炭素微粒子の極薄い層が、均質に付着形成される。
【0018】本発明の方法においては、溶融Siを仮焼
体全体に万遍なく行き渡るように含浸させるための炭素
源は、基本的にSiCの遊離炭素(フリーカーボン)生
成化処理によって充当される。このため、炭素粉末の添
加や多量の有機バインダーの配合を必要とせず、既に詳
述した残留炭素の局部凝集の存在による弊害を回避する
ことができる。また得られた珪素・炭化珪素セラミック
スは、組織が均質緻密で、強度、耐熱衝撃性に優れ、且
つ炭素の脱離に基づくダストの発生が無いため、半導体
製造用炉芯管や支持台部材として好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の珪素・炭化珪素
セラミックスの製造方法を更に詳細に説明する。本発明
の方法においては、SiC粉末等の炭化珪素原料に、例
えばフェノールレジン等の有機結合剤を該原料に対し下
記仮焼後の残炭率が0.005〜5.0重量%となるよ
うに添加して混合し、これらの混合物に水を加えて混練
してスラリーとし、該スラリーをラバープレス、押出、
スリップキャストなどの成形方法によって多孔成形体と
する。これを1500℃以上の温度で仮焼して仮焼多孔
質成形体とした後に、この成形体に本発明の遊離炭素生
成化処理を施する。その後、珪素を含浸させて珪素・炭
化珪素(Si−SiC)セラミックスを得る。炭化珪素
原料としては、特に限定されるものでなく、通常この種
の炭化珪素系セラミックスの製造において用いられるそ
れ自体公知の炭化珪素粉末等からなる原料を用いて良
い。
【0020】このような炭化珪素原料粉末として、例え
ば、純度90%程度以上、平均粒径0.1乃至200μ
m程度の市販品SiC粉末を例示することができるが、
純度97%以上、平均粒径0.1乃至20μm程度のも
のが好適に使用される。特に、半導体製造工業部材用セ
ラミックスの場合には、周辺への汚染防止の観点から、
高純度のものを使用することが必要で、通常純度99%
以上、平均粒径5乃至20μm程度の粉末の使用が好ま
しい。また、微粒粉末と粗粒粉末を適当な割合で混合し
た混合粉末を用いても良い。
【0021】本発明において、炭化珪素原料に添加する
結合剤(バインダー)としては、これも特に限定される
ものでなく一般に有機バインダーとして用いられる、例
えばフェノール・フォルムアルデヒド樹脂、フェノール
・フルフラール樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポ
リフェニレン等の芳香族系樹脂バインダー、ポリビニル
アルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ
リアクリル系樹脂等の脂肪族系樹脂バインダー、及びシ
リコーン樹脂、タールピッチ等の各種有機バインダーを
使用することができる。この有機バインダーの配合量
は、下記仮焼後の残炭率が0.005〜5.0重量%と
なるように結合剤の種類及び量を調整する。
【0022】有機バインダーの配合量が下記仮焼後の残
炭率で0.005重量%未満の場合は、上記成形体の曲
げ強度を維持することができないため、取扱に不都合を
生ずる。この信頼性をより高めるためには、0.01重
量%以上とすることが好ましい。一方、下記仮焼後の残
炭率で5.0重量%を越えると、得られる複合材セラミ
ック基材に、既に述べた残留炭素局部凝集に起因する従
来法によって製造された製品と同様の不都合を招来す
る。この信頼性をより高めるためには3.0重量%以
下、さらには1.0重量%以下とすることが好ましい。
【0023】本発明においては、前記炭化珪素原料とバ
インダーから成る混合物を成形した多孔質体を仮焼する
が、この仮焼温度は、少なくとも1500℃以上、好ま
しくは1600℃乃至2000℃で実施する。バインダ
ー量が従来の場合に比較して少ない本発明にかかる成形
体では、仮焼温度が1500℃未満では、仮焼後の多孔
質成形体の強度が低くなって取り扱いが困難となるため
好ましくない。また、原因は充分に解明されていない
が、例え、上記有機バインダーの量を過当量とし、次工
程の遊離炭素生成化処理及び溶融珪素の含浸処理を適切
に行ったとしてもSi−SiCにおいて微細空隙が形成
されることが確認されている。このような空隙はSi−
SiCを高温環境化で長時間、もしくは繰り返し使用し
た場合、マイクロクラックや爆裂の要因となるので、実
質的に存在しない(気孔率の実測値で0.1%以下)こ
とが重要である。
【0024】本発明の遊離炭素生成化処理は、前記仮焼
後の成形体の炭化珪素粒子表面を分解してその表面に遊
離炭素を生成させるために実施されるものである。この
遊離炭素生成化処理の第1態様である仮焼成形体を塩素
系ガス雰囲気下に熱処理する方法の場合においては、塩
素系ガスとして塩素ガス、塩化水素ガス、塩素ガスと塩
化水素ガスとの混合ガスのいずれかを用い、このガス雰
囲気下に、SiCの分解が実質的に進行する700℃以
上の温度、好ましくは750乃至1500℃で熱処理す
る。この温度とすることによって、後述する熱処理後の
遊離炭素量を得ることを容易に制御することが可能とな
るからである。該塩素系ガス雰囲気下での熱処理は、前
記仮焼多孔質成形体のSiC粒子が僅かに分解される程
度で良く、熱処理後の多孔成形体中の遊離炭素量が上記
結合剤の炭化分も含め0.5乃至5重量%程度、より好
ましくは2乃至3重量%に成るように熱処理する。塩素
系ガスの供給態様は、フロー、オシレート、減圧状態の
何れでも良い。
【0025】遊離炭素生成化処理の第2の態様である真
空中で熱処理する方法の場合においては、真空度5To
rr以下、好ましくは1Torr以下で熱処理する。処
理温度は、真空中でのSiC粒子表面の分解が始まる1
700℃以上で実施する。この熱処理において、該被処
理多孔質成形体の強度の向上を優先目的とする場合に
は、1850℃以上の高温で処理するのが好ましい。該
熱処理の程度は、前記第1態様の場合と同等になるよう
にする。この熱処理においては、高温で熱処理される関
係上、熱処理終了後の炉出し時の温度は750℃以下で
あることが、熱処理成形体のSiC表面が空気に曝され
ることにより酸化、あるいは窒化され該表面に酸化膜や
窒化膜が生成するのを回避する観点から好ましい。
【0026】遊離炭素生成化処理の第3の態様である不
活性ガス雰囲気下に熱処理する方法の場合においては、
不活性ガスとしてHeガス、Neガス、Arガス、Kr
ガス、Xeガス、前記した不活性ガスの混合ガスのいず
れかを使用し、処理温度は、SiC粒子表面の分解が始
まる1700℃以上で実施する。これら不活性ガスの中
で、入手、取扱等の容易性等の理由からArガスの使用
が好ましい。
【0027】この熱処理において、該被処理多孔質成形
体の強度の向上を優先目的とする場合には、1850℃
以上の高温で処理するのが好ましい。該熱処理の程度
は、他の態様の場合と同等になるようにする。この熱処
理においても、高温で熱処理される関係上、熱処理終了
後の炉出し時の温度は750℃以下であることが上記第
2態様の場合と同様の理由から好ましい。不活性ガスの
供給態様は、フロー、オシレート、減圧状態の何れでも
良い。
【0028】本発明の方法においては、上記の遊離炭素
生成化処理を施した多孔質成形体を、常法に従い溶融S
iを含浸させて反応焼結する。この時、本発明の遊離炭
素生成化処理により生成した多孔質成形体SiC粒子表
面の微粒炭素の濡れ作用により、溶融Siは、該多孔質
成形体の細孔から隈無く全体に浸透する。その結果、緻
密で均質な組織を有し、組織中に残留未反応炭素の凝集
部分等の存在しない、強度、耐熱衝撃性に優れてた珪素
・炭化珪素セラミックスとなる。なお、前記遊離炭素生
成化処理により生成したSiC粒表面の炭素や、バイン
ダーとして配合した樹脂等に由来する少量の残留炭素
は、該組織内に浸透した溶融Siと反応しSiCとな
る。
【0029】
【実施例】「実施例1」SiC粉末100重量部に対
し、純水20重量部、アクリル系樹脂バインダー1.5
重量部を配合して混練し、スラリーを調製した。これを
スリップキャスト成形法によって成形し、板状の炭化珪
素多孔質成形体(40mm×40mm×13mm)を得
た。この成形体を、1500℃で仮焼した後、塩化水素
ガス雰囲気下に1500℃で30分熱処理し、溶融Si
含浸を行った。このとき、仮焼後の成形体の残炭率は、
0.015重量%であり、曲げ強度は17MPaであっ
た。またSi含浸後の含浸体は、Siの未含浸部分が無
く、均質緻密な組織を有するSiーSiCセラミックス
となった(密度:3.02g/cm3 、気孔率:0.1
%以下)。
【0030】「実施例2」SiC粉末100重量部に対
し、フェノール樹脂バインダー3重量部を添加し、この
混合物をラバープレス成形法によって成形し、板状の炭
化珪素多孔質成形体(40mm×40mm×13mm)
を得た。この成形体を、1700℃で仮焼した後、塩素
ガス雰囲気下に1200℃で30分熱処理し、溶融Si
含浸を行った。このとき、仮焼後の成形体の残炭率は
1.5重量%であり、曲げ強度は25Mpaであった。
またSi含浸後の含浸体は、気孔や未含浸部分が無く、
均質緻密な組織を有するSiーSiCセラミックスとな
った(密度:3.01g/cm3、気孔率:0.1%以
下)。
【0031】「比較例1」実施例1と同様の板状炭化珪
素多孔質成形体(40mm×40mm×13mm)を、
実施例1と同様に仮焼した後、Si含浸を行ったところ
試料成形体内部にSiCの未含浸部分が確認された。ま
たこの試料片は、密度:2.90g/cm3 、気孔率
1.1%であった。
【0032】「比較例2」SiC粉末100重量部に対
し、カーボン粉末15重量部、純水20重量部、アクリ
ル系樹脂バインダー1.5重量部を配合して混練し、ス
ラリーを調製した。これをスリップキャスト成形法によ
って成形し、板状の炭化珪素多孔質成形体(40mm×
40mm×13mm)を得た。この成形体を、1700
℃で仮焼した後、溶融Si含浸を行ったところ試料含浸
体内部に未反応カーボンが確認された。
【0033】「実施例3」SiC粉末100重量部に対
し、純水20重量部、アクリル系樹脂バインダー1.5
重量部を配合して混練し、スラリーを調製した。これを
スリップキャスト成形法によって成形し、板状の炭化珪
素多孔質成形体(40mm×40mm×13mm)を得
た。このとき、仮焼後の成形体の残炭率は、0.013
重量%であり、曲げ強度は21MPaであった。またこ
の成形体を、1700℃で仮焼した後、1Torr以下
の真空下で1900℃、60分熱処理し、溶融Si含浸
を行った。Si含浸後の含浸体は、Siの未含浸部分が
無く、均質緻密な組織を有するSiーSiCセラミック
スとなった(密度:3.02g/cm3 、気孔率:0.
1%以下)。
【0034】「実施例4」SiC粉末100重量部に対
し、フェノール樹脂バインダー3重量部を添加し、この
混合物をラバープレス成形法によって成形し、板状の炭
化珪素多孔質成形体(40mm×40mm×13mm)
を得た。この成形体を、1700℃で仮焼した後、Ar
ガス雰囲気下(雰囲気圧500Torr)に、1950
℃で60分熱処理し、溶融Si含浸を行った。このと
き、仮焼後の成形体の残炭率は、1.5重量%であり、
曲げ強度は25MPaであった。またSi含浸後の含浸
体は、気孔や未含浸部分が無く、均質緻密な組織を有す
るSiーSiCセラミックスとなった(密度:3.01
g/cm3 、気孔率:0.1%)。
【0035】「実施例5」実施例4と同様の方法によっ
て作製した炭化珪素多孔質成形体(40mm×40mm
×13mm)を、実施例4と同様に仮焼した後、該仮焼
成形体試料を6×10×40のサイズに加工し、3点曲
げ強度試験を行ったところ従来法によって得られたSi
ーSiCセラミックスに比べて強度が25%以上向上し
たことが確認された。
【0036】「比較例3」実施例3と同様の板状炭化珪
素多孔質成形体(40mm×40mm×13mm)を、
真空中(1Torr)、1500℃で焼成した後、Si
含浸を行ったところ試料成形体内部にSiCの未含浸部
分が確認された。
【0037】「比較例4」フェノール樹脂バインダーの
添加量を12重量部としたこと以外は、すべて実施例2
と同様にし、含浸体を得た。このときの仮焼後の成形体
の残炭率は6重量%であり、曲げ強度は30MPaであ
った。また、Si含浸後の含浸体には、残留炭素局部疑
集による未含浸部分が確認された。
【0038】「比較例5」アクリル素樹脂バインダーの
配合量を0.5重量部としたこと以外は、すべて実施例
1と同様にし、仮焼体を得た。このときの仮焼した成形
体の曲げ強度は40MPaであり、極めて強度の低いも
のであった。
【0039】「比較例6」仮焼温度を1300℃とした
こと以外は、すべて実施例1と同様にし、含浸体を得
た。このときのSi含浸後の含浸体には、直径20〜1
00μmの空洞部が多数確認された。
【0040】
【発明の効果】上記の通り、本発明の珪素・炭化珪素セ
ラミックスの製造方法は、SiC自体が炭素を供給する
ため従来法のように原料に炭素粉末を配合する必要が無
く、また結合剤(バインダー)量も従来法に比較して少
量の添加で済ますことができる。また、生成した炭素は
微粒子としてSiC粒子表面にのみ極薄く存在し、この
SiC表面に存在する炭素は、溶融Si含浸時に浸透た
Siと反応しSiCに転化されてしまうため、成形体組
織中に残留炭素として残らない。従って、本発明の珪素
・炭化珪素セラミックスの製造方法によって、製造され
た珪素・炭化珪素セラミックスは、従来品のように炭素
の局部的凝集を生ずることがない。その上、Si含浸直
前までの工程では、炭素が存在しないため、その間の多
孔質成形体の管理が容易となる。また、多孔質成形体の
強度が向上するため、多孔質成形体の変形が低減し、ハ
ンドリングによる破損を回避でき、また目的とする珪素
・炭化珪素セラミックスセラミックスの強度も従来品に
比較して格段に向上する等、数多くの利点を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北山 幸太郎 山形県西置賜郡小国町大字小国町378番地 東芝セラミックス株式会社小国製造所内 Fターム(参考) 4G001 BA22 BB22 BB60 BC17 BC71 BD04 BD07 BD14 BD38 BE11 BE33

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料炭化珪素に対し下記仮焼後の残炭率
    が0.005〜5.0重量%となるように1.5乃至1
    1重量%の結合剤を配合した混合物を成形し、得られた
    多孔質成形体を1500℃以上で仮焼し、引き続き若し
    くは冷却後、該仮焼多孔質成形体に、該成形体の炭化珪
    素粒子表面を分解してその表面に遊離炭素を生成させる
    遊離炭素生成化処理を施し、その後、該処理成形体に溶
    融珪素を含浸させることを特徴とする珪素・炭化珪素セ
    ラミックスの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記遊離炭素生成化処理が、塩素系ガス
    雰囲気下における熱処理であることを特徴とする請求項
    1に記載された珪素・炭化珪素セラミックスの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記熱処理に使用される塩素系ガスが、
    塩素ガス、塩化水素ガス、塩素ガスと塩化水素ガスの混
    合ガスのいずれかであることを特徴とする請求項2に記
    載された珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記熱処理が、温度750乃至1500
    ℃で行われることを特徴とする請求項2または請求項3
    に記載された珪素・炭化珪素セラミックスの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記遊離炭素生成化処理が、5Torr
    以下の真空中における温度1700℃以上での熱処理で
    あることを特徴とする請求項1に記載された珪素・炭化
    珪素セラミックスの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記遊離炭素生成化処理が、不活性ガス
    雰囲気下における温度1700℃以上での熱処理である
    ことを特徴とする請求項1に記載された珪素・炭化珪素
    セラミックスの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記不活性ガスがHe、Ne、Ar、K
    r及びXeから選ばれた少なくとも1種であることを特
    徴とする請求項6に記載された珪素・炭化珪素セラミッ
    クスの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001247368A (ja) * 2000-03-03 2001-09-11 Hitachi Chem Co Ltd 炭化珪素焼結体及びその製造法
CN100454507C (zh) * 2004-03-30 2009-01-21 许行彪 改良的半导体芯片与引出线焊接模
CN115057707A (zh) * 2022-06-15 2022-09-16 中国科学院上海硅酸盐研究所 一种高性能低游离硅含量反应烧结碳化硅陶瓷材料及其制备方法

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