JP2000009686A - 一酸化炭素検出センサ及びそれを用いた一酸化炭素検出方法 - Google Patents

一酸化炭素検出センサ及びそれを用いた一酸化炭素検出方法

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JP2000009686A
JP2000009686A JP10174600A JP17460098A JP2000009686A JP 2000009686 A JP2000009686 A JP 2000009686A JP 10174600 A JP10174600 A JP 10174600A JP 17460098 A JP17460098 A JP 17460098A JP 2000009686 A JP2000009686 A JP 2000009686A
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真之 小原
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猛彦 齋木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被検出ガス中の一酸化炭素を高精度で検出で
き、かつ電極のクリーニングが不要で連続検出が可能な
製造能率の高い一酸化炭素検出センサを提供する。 【解決手段】 酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4
の第一処理空間15に面する電極11,12を、一酸化
炭素の酸化反応に対する触媒活性が高い材質(例えばP
t)で構成し、酸素濃淡電池素子4の第二処理空間16
に面する電極13を上記触媒活性が低い材質(例えばP
t−Au合金)で構成する。そして、上記第一処理空間
15と第二処理空間16とに一酸化炭素と酸素とを含有
した被検出ガスを導入すると、酸素濃淡電池素子4の両
側で一酸化炭素酸化による酸素消費量に差が生じ、濃淡
電池起電力が発生する。酸素ポンプ素子3は処理空間に
酸素を汲み込み、濃淡電池起電力が一定の目標値ECと
なるように制御する。このときの酸素ポンプ素子3に流
れる電流に基づいて、一酸化炭素の濃度を検出すること
ができる。なお、上記電極12、13が、酸素濃淡電池
素子4の片面に隣接して形成されるので、工程が少なく
てすみ、製造能率を高くすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一酸化炭素検出セ
ンサ及びそれを用いた一酸化炭素検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、天然ガスや石油等の化石燃料を
使用する燃焼器や内燃機関において、不完全燃焼時に発
生する一酸化炭素を検出するために、従来より各種構成
の一酸化炭素検出センサが提案されている。例えば特開
平9−152416号公報には、部分安定化ジルコニア
等の酸素イオン伝導性固体電解質層の表面に1対の多孔
質電極を形成し、そのうちの第一電極を被測定ガスに対
して露出させる一方、第二電極を一酸化炭素の酸化触媒
で覆った構造のセンサが開示されている。該構造のセン
サにおいては、第一電極側では一酸化炭素が電極に吸着
された酸素と結合して二酸化炭素となる一方、第二電極
側では一酸化炭素が電極に到達する前に酸化触媒により
酸化されてしまうので、両電極間には濃淡電池起電力が
生じる。この起電力を測定することにより、被測定ガス
中の一酸化炭素濃度を知ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構
造の一酸化炭素検出センサでは、長期間の使用によりセ
ンサの感度が経時的に劣化しやすい欠点がある。そのた
め、特開平9−89835号公報には、上記構成のセン
サにおいて電極間に、分極のための電圧印加を所定時間
行うクリーニング処理を定期的に行い、センサ感度を回
復させる技術が提案されている。しかしながらこの方法
では、センサ感度を良好に維持するために頻繁にクリー
ニングを行わなければならず、かつクリーニング中は測
定ができないので、連続した一酸化炭素濃度検出が不可
能である欠点がある。
【0004】本発明の課題は、被検出ガス中の一酸化炭
素を高精度で検出でき、かつ電極のクリーニングが不要
で連続検出が可能な一酸化炭素検出センサと、それを用
いた一酸化炭素検出方法とを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】本発明の
一酸化炭素検出センサは、上記課題を解決するために、
一酸化炭素と酸素とを含有する被測定雰囲気からの被測
定ガスが出入り可能な状態で第一処理空間及び第二処理
空間が形成され、さらに、酸素イオン伝導性固体電解質
により構成されるとともに、その表面に酸素透過性を有
する2つの電極が形成され、それら電極の一方が第一処
理空間に面して配置され、他方が第二処理空間に面して
配置される酸素濃淡電池素子と、酸素イオン伝導性固体
電解質により構成されるとともに、その表面に酸素透過
性を有する2つの電極が形成され、それら電極の一方が
第一処理空間に面して配置され、酸素濃淡電池素子に生
ずる濃淡電池起電力の絶対値が減少する方向に、第一処
理空間に対する酸素の汲込み又は汲出しを行う酸素ポン
プ素子と、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子とを予め
定められたセンサ作動温度に加熱する加熱素子とを備
え、酸素ポンプ素子の第一処理空間に面する側の電極を
第一電極、酸素濃淡電池素子の第一処理空間に面する側
の電極を第二電極、酸素濃淡電池素子の第二処理空間に
面する電極を第三電極として、第一処理空間と第二処理
空間との間で、導入された被検出ガス中の一酸化炭素の
燃焼消費量に差が生じるように、それら第一〜第三電極
の酸化触媒活性が調整されており、酸素濃淡電池素子の
濃淡電池起電力の絶対値が所定の起電力目標値ECに到
達したときの酸素ポンプ素子に流れる電流値を、被検出
ガス中の一酸化炭素濃度を反映した情報として取り出す
ようにしたことを特徴とする。
【0006】また、本発明の一酸化炭素検出方法は、被
測定雰囲気から区画された第一処理空間及び第二処理空
間と、それら第一処理空間及び第二処理空間に対し、一
酸化炭素と酸素とを含有する被測定雰囲気からの被測定
ガスをそれぞれ導く第一ガス導入部及び第二ガス導入部
とを有し、さらに、酸素イオン伝導性固体電解質により
構成されるとともに、その表面に酸素透過性を有する2
つの電極が形成され、それら電極の一方が第一処理空間
に面して配置され、他方が第二処理空間に面して配置さ
れる酸素濃淡電池素子と、酸素イオン伝導性固体電解質
により構成されるとともに、その表面に酸素透過性を有
する2つの電極が形成され、それら電極の一方が第一処
理空間に面して配置され、酸素濃淡電池素子に生ずる濃
淡電池起電力の絶対値が減少する方向に、第一処理空間
に対する酸素の汲込み又は汲出しを行う酸素ポンプ素子
と、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子とを予め定めら
れたセンサ作動温度に加熱する加熱素子とを備え、酸素
ポンプ素子の第一処理空間に面する側の電極を第一電
極、酸素濃淡電池素子の第一処理空間に面する側の電極
を第二電極、酸素濃淡電池素子の第二処理空間に面する
電極を第三電極として、第一処理空間と第二処理空間と
の間で、導入された被検出ガス中の一酸化炭素の燃焼消
費量に差が生じるように、それら第一〜第三電極の酸化
触媒活性が調整された一酸化炭素検出センサを用い、酸
素濃淡電池素子の濃淡電池起電力の絶対値が所定の起電
力目標値ECに到達したときの酸素ポンプ素子に流れる
電流値を、被検出ガス中の一酸化炭素濃度を反映した情
報として取り出すようにしたことを特徴とする。
【0007】本発明によれば、一酸化炭素と酸素とを含
有した被検出ガスが第一処理空間と第二処理空間とに導
入される一方、第一処理空間に面して配置された第一電
極及び第二電極、第二処理空間に面して配置された第三
電極の一酸化炭素に対する酸化触媒活性が、第一処理空
間と第二処理空間とで一酸化炭素の燃焼消費量に差が生
ずるように調整されている。その結果、第一処理空間と
第二処理空間とで、一酸化炭素が多く消費される側では
酸素も多く消費されるので、酸素濃淡電池素子の両側に
は酸素濃度差が生じ、それに基づく濃淡電池起電力が発
生することとなる。酸素ポンプ素子は、例えば第一処理
空間側が低酸素濃度側となる場合には該処理空間に酸素
を汲み込み、逆に高酸素濃度側となる場合には該処理空
間から酸素を汲み出して、上記濃淡電池起電力を起電力
目標値ECになるように制御する。そして、濃淡電池起
電力が起電力目標値ECに到達したときの酸素ポンプ素
子に流れる電流(以下、ポンプ電流という)は、被検出
ガス中の一酸化炭素の濃度値をほぼ反映した値となるこ
とから、これに基づいて上記一酸化炭素の濃度を検出す
ることができる。
【0008】上記構成の一酸化炭素検出センサによれ
ば、一酸化炭素濃度変化に対するポンプ電流値の変化も
大きく、感度が良好である。また、電極のクリーニング
が不要であり、長期間連続的にしかも精度よく一酸化炭
素を検出することができる。本発明の一酸化炭素検出セ
ンサにおいて、上記のごとき効果が達成される理由は以
下のように推測される。すなわち、従来の一酸化炭素検
出センサでは、酸素濃淡電池素子に生ずる濃淡電池起電
力をセンサ出力として取り出すようにしていたが、この
方式では起電力の発生方向が一方向であるため、起電力
の発生状態が長時間続くと固体電解質に分極が生じた
り、あるいは電極上の酸素量が経時的に減少したりとい
ったことが起こり、これが原因となってセンサ感度が経
時変化を起こすものと考えられる。しかしながら、上記
本発明のセンサの構成では、酸素ポンプ素子により第一
処理空間に対する酸素の汲出し又は汲込みを行って、酸
素濃淡電池素子に発生する濃淡電池起電力の絶対値を減
少させる(すなわち濃淡電池起電力を打ち消す)処理が
行われるので、上記のような固体電解質の分極等が生じ
にくくなり、出力の経時変化が抑制されて安定した作動
が実現されるものと推測される。
【0009】酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電池素子は、
酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成され
る。そのような固体電解質としては、YないしC
aOを固溶させたZrOが代表的なものであるが、そ
れ以外のアルカリ土類金属元素ないし希土類金属元素の
酸化物とZrOとの固溶体を使用してもよい。また、
ベースとなるZrOにはHfOが含有されていても
よい。
【0010】また、上記本発明のセンサにおいては、第
一処理空間及び第二処理空間に対し、被検出ガスを一定
の拡散抵抗のもとに導く拡散規制流通部を設けることが
できる。該拡散規制流通部は、例えば小孔、スリット、
及び多孔質セラミック又は多孔質金属により構成された
多孔質連通部の少なくともいずれかを含むものとして構
成できる。これにより、被検出ガス中の一酸化炭素濃度
が急変した場合でも、各処理空間内の一酸化炭素濃度は
それほど急激には変化しないので、安定した検出が可能
となる。
【0011】次に、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子
とは互いに対向して配置される板状に形成することがで
きる。この場合、第一処理空間と第二処理空間とを、そ
れら酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との間において
板面方向に隣接して形成し、第一電極を、第一処理空間
に面する位置において酸素ポンプ素子の対応する板面上
に形成し、第二電極と第三電極とを、それぞれ第一処理
空間及び第二処理空間に面する位置において酸素濃淡電
池素子の対応する板面上に隣接して形成することができ
る。この構成によれば、酸素濃淡電池素子の第二電極及
び第三電極が板状の固体電解質層の片面に形成されるの
で、各電極を電極材料ペーストの厚膜印刷及び焼成によ
り形成する場合に印刷回数が少なくてすみ、製造能率が
高い利点がある。
【0012】上記構成においては、加熱素子を、酸素濃
淡電池素子に対し酸素ポンプ素子とは反対側から対向配
置することができる。これにより、酸素濃淡電池素子を
均一に加熱することが可能となり、第二電極と第三電極
との間の温度ばらつきも小さくなるので、一酸化炭素の
検出精度を向上させることができる。
【0013】この場合、前記した拡散規制流通部は、酸
素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間において、各処
理空間と被測定雰囲気とを連通させるものとなるよう、
素子の板面方向に沿う形態で形成することができる。こ
の構成によれば、例えばカーボンペーストパターンの厚
膜印刷・焼失や、多孔質セラミックペーストパターンの
厚膜印刷・焼成により、拡散規制流通部を容易にかつ均
質に形成することができ、また、その形成寸法等の調整
も、ペーストパターンの面積あるいは厚さ調整等により
容易に行うことができる利点がある。
【0014】また、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子
とは、第一処理空間及び第二処理空間の形成部を除いた
残余の領域において、対向する板面同士を絶縁性セラミ
ック層により互いに接合した構造とすることができる。
これにより、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との組
立工数を減ずることができ、その機械的強度も向上させ
ることができる。
【0015】一方、酸素ポンプ素子は、例えば、被検出
ガスの流通が許容された処理空間としての所定量の隙間
が酸素濃淡電池素子との間に形成されるように、該酸素
濃淡電池素子に対向配置することができる。この場合、
該隙間の大きさは、例えば1mm以下に設定するのがよ
い。隙間の大きさが1mmを超えると、隙間による新たな
被検出ガスの流入規制効果が小さくなり、センサの検出
精度が低下する場合がある。また、第一電極の面積Sp
と第二電極の面積Ssとの比Sp/Ssを1以上とすれ
ば、第二電極付近の酸素濃度を一定にすることができ、
ひいてはセンサ出力の精度及び安定性を向上させること
ができる。この場合、上記隙間が第一処理空間となり、
酸素濃淡電池素子を挟んで上記隙間とは反対側に位置す
る空間(以下、反対空間ともいう)が第二処理空間とな
る。
【0016】次に、本発明のセンサにおいては、第一処
理空間が、一酸化炭素酸化の触媒として機能する電極が
これに面して対向配置されるから、一酸化炭素酸化量が
大きくなる側の空間として利用しやすくなる。従って、
第二電極を高活性側電極とし、第三電極を低活性側電極
とすれば、酸素濃淡電池素子の両側における酸素消費量
に差を付けやすくなり、センサ感度を高める上で有利と
なる。また、第二電極の上記酸化触媒活性が第三電極よ
りも大きくなるようにすれば、被検出ガス中の一酸化炭
素の濃度に対するセンサ出力の直線性が高められ、ひい
ては一酸化炭素の検出精度をさらに向上できる場合があ
る。なお、該構成において酸素ポンプ素子は、酸素濃淡
電池素子に生ずる濃淡電池起電力の絶対値が減少するよ
うに、隙間に酸素を汲み込むものとされる。ここで、第
一電極及び第二電極の双方について、一酸化炭素に対す
る酸化触媒活性を第三電極よりも大きくすると、上記隙
間と反対空間との間の一酸化炭素の消費量の差がさらに
大きくなり、一酸化炭素の検出感度を高めることができ
る。
【0017】より具体的には、第二電極と第三電極と
は、次のように定義される被検出成分転換率ηの差が2
0%以上となるものを組み合わせて使用することが望ま
しい。すなわち、直径12mm×厚さ1mmの酸素イオン伝
導性固体電解質の円板上に、第二電極ないし第三電極と
同一の材質及び条件により直径8mmの円板状の多孔質電
極を形成した試料を、ガスの入口と出口とを有した筒状
体内に配置するとともにこれをセンサ作動温度に加熱
し、その状態で該筒状体に対し、酸素300ppmと被
検出成分350ppmと水蒸気3%とを含有し、残部が
アルゴンからなる試験ガスを入口から流速100ml/
分で導入して、これを出口から排出させたときの、排出
後の試験ガス中の被検出成分濃度をCs(単位:pp
m)として、上記被検出成分転換率η(%)を、次式: η={(350−Cs)/350}×100 ‥‥(1) により求める。
【0018】すなわち、試験ガス中に含まれる被検出成
分が、電極を酸化触媒として酸化され消費されると、排
出後の試験ガス中の被検出成分濃度Csは減少すること
から、上記被検出成分転換率ηは大きくなる。従って該
ηを、センサ中の各電極の被検出成分に対する酸化触媒
活性を表すパラメータ、ひいては隙間ないし反対空間に
おける被検出成分の消費量を反映したパラメータとして
用いることができる。そして、第二電極と第三電極との
間で、上記ηの値の差を20%以上とすることにより、
隙間と反対空間との間の被検出成分の消費量の差が大き
くなり、センサ出力レベルが高められて、被検出成分の
検出感度を向上させることができる。例えば第二電極を
第三電極よりも酸化触媒活性の高いものとして構成する
場合は、第二電極を、その被検出成分転換率ηが第三電
極のそれよりも20%以上高くなるように構成するのが
よい。なお、ηの値の差はより望ましくは30%以上と
するのがよい。
【0019】ここで、電極の上記ηの値はセンサ作動温
度に応じて変化する。そして、センサ作動温度は、上記
ηの差が20%以上、望ましくは30%以上となるよう
に設定するのが望ましいといえる。この場合、印加電圧
を一定とした場合の酸素ポンプ素子のポンプ電流値がな
るべく高くなるように、センサ作動温度を設定すれば、
被検出成分の検出感度はさらに向上する。
【0020】例えば、本発明の一酸化炭素検出センサに
おいては、第一電極及び第二電極を、構成金属が実質的
にPtからなるPt系多孔質電極とし、第三電極を、金
属成分がPtを主体としてAuを2〜30重量%含有す
るPt−Au合金からなるPt−Au系多孔質電極とす
ることができる。この構成では、Pt系多孔質電極の一
酸化炭素の酸化(燃焼)に対する触媒活性が、Pt−A
u系多孔質電極と比較して相当に大きいことから、第一
処理空間側において一酸化炭素の燃焼量すなわち酸素の
消費量が顕著に大きくなり、センサの感度が良好とな
る。なお、第三電極中のAuの含有量が2重量%未満に
なると、第一電極及び第二電極との間の一酸化炭素に対
する酸化触媒能の差が小さくなり過ぎ、センサ感度が低
下することにつながる。他方、Auの含有量が30重量
%を超えると多孔質電極の焼成温度が低下して、Pt系
多孔質電極として構成された第一電極及び第二電極との
同時焼成が不可能となり、製造工数の増大を招くことに
つながる。なお、第三電極の構成金属はPt−Au合金
以外にも、Pd−Au系合金、Pd−Pb系合金、Pt
−Pb系合金、Pt−Pb−Au系合金、Pd−Pb−
Au系合金等を一酸化炭素検出用の多孔質電極として好
適に使用することができる。
【0021】また、上記構成の一酸化炭素検出センサに
おいては、酸素濃淡電池素子の濃淡電池起電力の絶対値
が10mV以下に設定された起電力目標値ECに到達し
たときの、上記酸素ポンプ素子に流れる電流値を、被検
出ガス中の一酸化炭素の濃度を反映した情報として取り
出すことができる。
【0022】一方、酸素を1体積%以上含有し、かつセ
ンサ作動温度において酸素と反応する成分を実質的に含
有しない試験ガスを上記隙間及び反対空間に導入したと
きの、酸素濃淡電池素子に生ずるオフセット起電力の絶
対値をEOS(単位:mV)とし、これに対応して起電力
目標値ECが(EOS−5.0)mV以上(EOS+5.
0)mV以下の範囲内で設定されるとともに、酸素濃淡
電池素子の濃淡電池起電力の絶対値が上記起電力目標値
ECに到達したときの酸素ポンプ素子に流れる電流値
を、被検出ガス中の一酸化炭素の濃度を反映した情報と
して取り出すこともできる。
【0023】例えば、酸素濃淡電池素子を挟んで第一処
理空間側と第二処理空間側とで、酸素濃度が互いに等し
くなるように、酸素ポンプ素子による隙間への酸素の汲
み込みないしは汲み出しを行うようにすれば、それら両
空間での一酸化炭素の消費量の差に対し、ポンプ電流が
直接的に対応することになるから、一酸化炭素の濃度を
さらに精度よく検出することができ、また検出結果の解
析も容易となる。この場合、第一処理空間側と第二処理
空間側との酸素濃度が等しくなれば、酸素濃淡電池素子
の濃淡電池起電力は理論上は0となるから、酸素ポンプ
素子は、該濃淡電池起電力が0となるように第一処理空
間に対する酸素の汲み込みないしは汲み出しを行うこと
となる。しかしながら、酸素濃淡電池素子の両側の酸素
濃度が等しくなっても、通常は、酸素濃淡電池素子の起
電力は0にはならず、一定のオフセット起電力が残るこ
とが多い。
【0024】本発明者らは、一般に使用されているほと
んどの酸素イオン伝導性固体電解質について、該固体電
解質により酸素濃淡電池素子を構成した場合のオフセッ
ト起電力の絶対値が10mV以下の範囲に収まっている
ことに着眼するとともに、本発明の一酸化炭素検出セン
サの構成において、起電力目標値ECを10mV以下に
設定し、濃淡電池起電力の絶対値が該起電力目標値EC
に到達したときの酸素ポンプ素子に流れる電流値を検出
信号として採用することで、被検出ガス中の一酸化炭素
の濃度を正確に検出できることを見い出したのである。
なお、測定雰囲気の酸素濃度範囲が判っている場合は、
その範囲の最大酸素濃度におけるオフセット起電力を起
電力目標値とするのが望ましい。
【0025】一方、本発明者らは鋭意検討の結果、次の
ことを見い出し、一酸化炭素検出センサの以下の構成を
完成するに至ったのである。すなわち、酸素濃淡電池素
子のオフセット起電力が、検出に係る被検出ガス中の酸
素濃度が低くなるほど変動しやすくなり、一定以下の酸
素濃度におけるオフセット起電力を基準として起電力目
標値ECを設定すると、センサ出力が被検出ガス中の酸
素濃度の影響を受けやすくなる。そしてこれを解決する
ためには、酸素を1体積%以上含有し、かつセンサ作動
温度において酸素と反応する成分を実質的に含有しない
試験ガスを第一処理空間及び反対空間に導入したとき
の、酸素濃淡電池素子に生ずるオフセット起電力の絶対
値をEOS(単位:mV)とし、これを基準として起電力
目標値ECを(EOS−5.0)mV以上(EOS+5.
0)mV以下の範囲内で設定することが有効となる。そ
して、起電力目標値ECを上記範囲で設定することで、
被検出ガス中の酸素濃度の影響を受けない、より安定し
たセンサ出力を得ることができる。この場合、起電力目
標値ECは、なるべくEOSに近い値として設定すること
が、センサの検出精度を高める上で望ましい。なお、E
OSを決定するための試験ガス中の酸素濃度は、望ましく
は10%以上のものを使用するか、あるいは大気を使用
するのがよい。また、起電力目標値ECを、第一の構成
と同様に10mV以下に設定することにより、より安定
で精度の高いセンサ出力を得ることができる。
【0026】それぞれ両面に電極が形成された酸素ポン
プ素子と酸素濃淡電池素子とを対向配置するセンサ構成
においては、素子間に形成される隙間(第一処理空間)
は、これをなるべく小さくして(望ましくは1mm以
下)当該隙間による新たな被検出ガスの流入規制効果を
なるべく高めることが、センサの検出精度を向上させる
上で有利である。逆に言えば、該隙間の寸法が大きすぎ
ると、触媒活性を有した電極上での一酸化炭素と酸素と
の反応が不安定化し、酸素濃淡電池起電力が小さくなっ
てセンサ出力が十分に得られなくなることもありうる。
この傾向は、測定対象となる被検出ガス中の酸素濃度の
変動が大きかったり、あるいはガス中の水蒸気濃度が高
い場合に特に著しくなる。また、酸素濃淡電池素子の第
三電極の形成された側に、該酸素濃淡電池素子との間に
所定の隙間(別の隙間)を形成する隙間形成部材を配置
する場合は、その隙間の大きさも同様の理由によりなる
べく小さくすることが望ましい(望ましくは1mm以
下)。
【0027】しかしながら、上記素子間の隙間量を小さ
くし過ぎると、今度は焼成により酸素ポンプ素子、酸素
濃淡電池素子あるいは隙間形成部材を製造した際に、焼
成時の僅かな変形が隙間形成量に大きな影響を及ぼし、
センサ個体間で出力のばらつきやすくなる問題が生ずる
こともある。そこで、これを解決するためには次のよう
なセンサ構造とすることが有効である。すなわち、酸素
ポンプ素子の隙間側の電極を第一電極、酸素濃淡電池素
子の隙間側の電極を第二電極、酸素濃淡電池素子の反対
空間側の電極を第三電極として、第二電極及び第三電極
の少なくともいずれかに対し、これと接するように測定
室を形成し、また、測定室の壁部を被測定雰囲気側から
測定室側へ貫くようにガス連通部を形成する。そして、
このガス連通部を、小孔、スリット、及び多孔質セラミ
ック又は多孔質金属により構成された多孔質連通部の少
なくともいずれかを含む拡散規制流通部として構成する
ようにする。
【0028】このようにすれば、隙間の大きさをある程
度以上に大きくした場合でも、被検出ガスは拡散規制流
通部から拡散を規制されつつ測定室に流入し、また測定
室に導入された後は同じく拡散規制流通部により拡散を
規制されつつ被測定雰囲気中へ排出される。従って、一
旦導入された被検出ガスの測定室内での滞留時間が長く
なり、その間に被検出雰囲気中の被検出ガス組成(特に
酸素あるいは水蒸気量)が変化しても、測定室内のガス
への影響が小さくなるので、安定で高いセンサ出力を得
ることができ、ひいてはセンサの検出精度を高めること
ができる。
【0029】測定室及び拡散規制流通部の組は、酸素濃
淡電池素子の第二電極側に形成しても第三電極側に形成
してもいずれでもよいが、酸素ポンプ素子と酸素濃淡電
池素子との隙間及び反対空間のうち、少なくともその触
媒活性の高くなる側、すなわち酸素と一酸化炭素との反
応がより活発に起こる側に上記組を形成することが、セ
ンサ出力を図るうえで一層望ましく、該組を双方の側に
形成すればさらによい。
【0030】次に、測定室及び拡散規制流通部の形成形
態であるが、酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間
の隙間側に形成する場合は、第二電極の周囲を取り囲む
ように壁部を形成し、その壁部内面と酸素濃淡電池素子
及び酸素ポンプ素子の各対向面とによって囲まれた空間
を測定室とすることができる。また、拡散規制流通部
は、壁部及び酸素濃淡電池素子の少なくともいずれかに
対しこれを被測定雰囲気側から測定室側へ貫通する形態
で形成され、それら被測定雰囲気と測定室とを互いに連
通させるスリット又は小孔とすることができる。なお、
上記隙間と被測定雰囲気との間で気体の流通を許容する
前述の多孔質セラミック体(あるいは多孔質金属体でも
よい)も、拡散規制流通部として機能しうる。
【0031】拡散規制流通部として上記スリットを形成
する場合、例えば酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子と
の間に、上記壁部の少なくとも一部を構成する壁部形成
体を配置し、その壁部形成体と酸素濃淡電池素子及び酸
素ポンプ素子の少なくともいずれかとの間に上記スリッ
トを、それら酸素濃淡電池素子ないし酸素ポンプ素子の
板面に沿う形態で形成することができる。これにより、
スリットを介して測定室内に被検出ガスをスムーズにか
つ空間的な偏りを生ずることなく導入することができ
る。
【0032】次に、上記スリットの幅(間隔)をd、酸
素濃淡電池素子及び酸素ポンプ素子の対向方向における
測定室の寸法(以下、測定室の高さという)をhとした
場合、d/hは1/100〜1/4の範囲で調整するの
がよい。d/hが1/4を超えるとスリットにおける被
検出ガスの拡散規制効果が不十分となり、センサ出力が
十分に得られなくなる場合がある。d/hが1/100
未満になると測定室へのガスの流入速度、あるいは測定
室からのガスの流出速度が小さくなり過ぎ、センサの検
出精度が却って低下してしまう場合がある。d/hは、
より望ましくは1/20〜1/8の範囲で設定するのが
よい。なお、スリット内の空間体積Vに対するスリット
内周面の面積の比S/Vは、同様の理由により4〜10
0、望ましくは20〜50の範囲で調整するのがよい。
【0033】一方、スリット幅dの絶対値は、0.01
〜1.0mmの範囲で調整するのがよい。dが1.0m
mを超えると、スリットにおける被検出ガスの拡散規制
効果が不十分となり、センサ出力が十分に得られなくな
る場合がある。一方、dが0.01mm未満になると測
定室へのガスの流入速度、あるいは測定室からのガスの
流出速度が小さくなり過ぎ、センサの検出精度が却って
低下してしまう場合がある。なお、dは、より望ましく
は0.02〜0.5mmの範囲で設定するのがよい。
【0034】スリットは、壁部形成体の厚さ方向(酸素
濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との積層方向)中間部に
形成する態様も可能であるが、壁部形成体と酸素濃淡電
池素子及び酸素ポンプ素子の少なくともいずれかとの間
に形成する構成がセンサの製造上より有利である。すな
わち、前者の場合は、壁部形成体となるべきセラミック
成形体(以下、壁部形成用成形体という)に予めスリッ
トとなるべき隙間を穿設しておくか、あるいは該セラミ
ック成形体を厚さ方向に隣接する2部分に形成し、それ
ら部分の間に隙間を生じさせた状態で焼成するなど、若
干の工数増加が不可避となる。一方、後者の場合は、壁
部形成用成形体と酸素濃淡電池素子ないし酸素ポンプ素
子となるべきセラミック成形体(以下、素子形成用成形
体という)との間に所定量の隙間を形成して焼成するの
みで、上記構造の一酸化炭素検出センサを簡単に製造す
ることができる。
【0035】上記スリットは、例えばスリット形成が予
定された領域において壁部形成用成形体と素子形成用成
形体との間に、焼成により焼失する材料(例えばカーボ
ンペーストなど)で形成された層を挟み込み、その積層
体を焼成して該層を焼失させることにより形成すること
ができる。この場合、形成されるスリットの幅は、形成
する層の厚さに応じて自由に調整することができる。
【0036】次に、壁部形成体は、酸素ポンプ素子及び
酸素濃淡電池素子の少なくともいずれかと焼成により一
体化することができる。焼成によりこれらを一体化する
ことで、センサの機械的強度を向上させることができ
る。なお、壁部形成体と酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電
池素子のいずれか一方との間にのみスリットを形成する
場合には、スリットを形成しない側では壁部形成用成形
体と素子形成用成形体とをそれらの積層面のほぼ全面に
おいて一体化する一方、スリットの形成側においては、
上記シートを積層面に対し部分的に挟み込むことでスリ
ットを形成し、該シートを介在させない積層面領域で壁
部形成用成形体と素子形成用成形体とを一体化する構成
が可能である。この場合、壁部形成体酸素ポンプ素子な
いし酸素濃淡電池素子とは、スリットの形成側において
もスリット形成領域以外の部分で互いに一体化するの
で、センサの強度を一層高めることができる。
【0037】一方、スリットに代えて小孔により拡散規
制流通部を形成する場合には、該小孔を、例えば壁部形
成体に形成できる。この場合、被検出ガスを測定室に対
し偏りなく流入させるには、複数の小孔を、例えば板状
の酸素ポンプ素子ないし酸素濃淡電池素子の板面方向に
所定の間隔で形成するのがよい。また、小孔は、酸素濃
淡電池素子を厚さ方向に貫く形で形成することもでき
る。この場合、該小孔は複数のものを、第二電極ないし
第三電極の周縁に沿って所定の間隔で形成することが、
偏りのない被検出ガスの流入状態を形成する上で望まし
い。
【0038】次に、酸素ポンプ素子及び前記酸素濃淡電
池素子は横長板状に形成でき、拡散規制流通部は、それ
ら酸素ポンプ素子及び酸素濃淡電池素子の板面幅方向両
側に形成されたスリットないし所定間隔で配列する複数
の小孔群とすることができる。こうすれば、上記スリッ
トないし小孔群の一方のものから測定室内に流入した被
検出ガスは、他方のものから排出されるので、測定室内
にスムーズな被検出ガスの流れが形成され、ひいてはセ
ンサ出力の応答性を向上させることができる。
【0039】次に、上記一酸化炭素検出センサにおいて
は、酸素濃淡電池素子の前記隙間に面しているのとは反
対側に測定室を形成するようにしてもよい。すなわち、
酸素濃淡電池素子の上記反対側と対向して該酸素濃淡電
池素子との間に別の隙間を形成する前述の隙間形成部材
を配置し、その隙間形成部材と酸素濃淡電池素子との間
に第三電極の周囲を取り囲むように壁部を形成し、その
壁部内面と隙間形成部材及び酸素濃淡電池素子の各対向
面とによって囲まれた空間を測定室とする。
【0040】この場合も拡散規制流通部は、前述の酸素
ポンプ素子と酸素濃淡電池素子との間に測定室を形成す
る場合とほぼ同様の態様で形成できる。すなわち、該拡
散規制流通部は、壁部及び隙間形成部材の少なくともい
ずれかに対しこれを被測定雰囲気側から測定室側へ貫通
する形態で形成され、それら被測定雰囲気と測定室とを
互いに連通させるスリット又は小孔として構成できる。
また、隙間形成部材と酸素濃淡電池素子との間に、壁部
の少なくとも一部を構成する壁部形成体を配置でき、該
壁部形成体と隙間形成部材及び酸素濃淡電池素子の少な
くともいずれかとの間に上記スリットを、それら隙間形
成部材ないし酸素濃淡電池素子の板面に沿う形態で形成
することができる。
【0041】また、壁部形成体は、隙間形成部材及び酸
素濃淡電池素子の少なくともいずれかと焼成により一体
化することができる。さらに、隙間形成部材及び酸素濃
淡電池素子は横長板状に形成することができ、拡散規制
流通部は、それら隙間形成部材及び酸素濃淡電池素子の
板面幅方向両側に形成されたスリットとすることができ
る。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に示すいくつかの実施例を参照して説明する。 (実施例1)図1は、本発明の一実施例としての一酸化
炭素検出センサ1を示している。すなわち、一酸化炭素
検出センサ1は、それぞれ横長板状に形成された酸素ポ
ンプ素子3、酸素濃淡電池素子4及び加熱素子5がこの
順序で積層されたものとして構成されている。酸素ポン
プ素子3及び酸素濃淡電池素子4は、酸素イオン伝導性
を有する固体電解質により構成されている。そのような
固体電解質としては、YないしCaOを固溶させ
たZrOが代表的なものであるが、それ以外のアルカ
リ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrOとの固
溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO
はHfOが含有されていてもよい。本実施例では、Y
ないしCaOを固溶させたZrO固体電解質セ
ラミックが使用されているものとする。一方、加熱素子
5は、公知のセラミックヒータで構成されている。
【0043】図1のA−A断面を図5に示している。す
なわち、酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4とは互
いに対向して配置される横長の板状に形成されている。
それら酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4との間に
おいて、それらの長手方向の一方の端部寄りには、第一
処理空間15と第二処理空間16とが板面方向に隣接し
た形で形成されている。そして、第一処理空間15に面
する位置において酸素ポンプ素子3の対応する板面上に
は第一電極11が形成されており、これと反対側には外
側電極10が形成されている。また、酸素濃淡電池素子
4の第一処理空間15に面する位置には第二電極12が
形成され、同じく第二処理空間16に面する位置には第
三電極13が形成されている。
【0044】上記酸素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子
4とは、第一処理空間15及び第二処理空間6の形成部
を除いた残余の領域において、対向する板面同士が例え
ばアルミナで構成された絶縁性セラミック層30により
互いに接合されている。絶縁性セラミック層30は、酸
素ポンプ素子3と酸素濃淡電池素子4との間を電気的に
絶縁する一方、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子
4とともに第一処理空間15と第二処理空間16とを、
周囲から区画する壁部形成体の役割を果たす。
【0045】一方、上記多孔質電極10〜13は、上述
の酸素分子の解離ないし再結合を行う役割のほかに、こ
れと接する排気ガス中の一酸化炭素と酸素との結合反
応、すなわち一酸化炭素の燃焼反応を促進する酸化触媒
としても機能する。そして、本発明の一酸化炭素検出セ
ンサでは、上記4つの電極10〜13のうち、第一電極
11、第二電極12及び第三電極13の3つのものにつ
いて、一酸化炭素に対する酸化触媒活性が、第一処理空
間15と第二処理空間16との間において酸素との反応
による一酸化炭素の消費量に差が生じるように調整され
る。
【0046】具体的には、第一電極11及び第二電極1
2は、金属成分が実質的にPtからなるPt系多孔質電
極とされ、第三電極13は、金属成分がPtを主体とし
てAuを2〜30重量%含有するPt−Au合金(例え
ばPt−10重量%Au合金)からなるPt−Au系多
孔質電極とされている。この場合、一酸化炭素に対する
酸化触媒活性はPt系多孔質電極のほうがPt−Au系
多孔質電極よりも高くなる。すなわち、酸素との反応に
よる一酸化炭素の消費量は、第一処理空間15側におい
て第二処理空間16よりも大きくなる。なお、外側電極
10はPt系多孔質電極で構成されているが、酸素分子
に対する解離反応あるいは酸素原子の再結合反応に対す
る触媒活性を有するものであれば、他の材質でもよい。
【0047】次に、図2及び図3に示すように、酸素ポ
ンプ素子3の各多孔質電極10,11からは、該素子3
の長手方向に沿って一酸化炭素検出センサ1の取付基端
側に向けて延びる電極リード部10a,11aがそれぞ
れ一体に形成されており、該基端側において酸素ポンプ
素子3には接続端子10b,11bの一端が結合されて
いる。また、図4に示すように、酸素濃淡電池素子4の
各多孔質電極12,13にも同様に電極リード部12a
及び13aが一体に形成されており、それぞれ接続端子
12b,13bが取り付けられている。
【0048】また、酸素濃淡電池素子4と酸素ポンプ素
子3との間には、それぞれ第一測定空間15及び第二測
定空間16と外側の被検出雰囲気とを連通させる拡散流
通規制部としての細孔33,35が、例えば各素子の板
面幅方向に沿って絶縁性セラミック層30の一部を切り
欠く形で形成されている。なお、本実施例では、各細孔
33,35は、それぞれ1ずつ形成されているが、これ
を複数本ずつ形成してもよい。この場合、被検出ガスの
各測定空間への流入速度を、各細孔の形成本数にて調整
することができる。
【0049】上記一酸化炭素検出センサ1の要部をなす
酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4の一体積層体
は、例えばそれぞれ上記各部3,4となるべきセラミッ
クグリーンシート(成形体)を積層して焼成することに
より製造することができる。以下、その製造方法の一例
を図6を用いて説明する(なお、括弧内に、後述する実
験例で用いる試験品を作製するための条件を併記してい
る)。
【0050】(1)酸素濃淡電池素子側積層体CAの作
製: 酸素濃淡電池素子となるべきセラミックグリーンシー
ト4’(厚さ0.35mm、幅5mm、長さ25mm)
に対し、電極形成部を除く領域に、リード部と固体電解
質層との間を絶縁するための絶縁コート30d’を、ア
ルミナペーストを用いて形成する。 Ptペーストを用いて第二電極パターン12’(幅
1.5mm、長さ4mm:以下、他の電極パターンにつ
いても同寸法)及びリード部パターン12a’を形成す
る。また、PtとAuとの混合粉末ペーストを用いて第
三電極パターン13’を形成し、Ptペーストを用いて
リード部パターン13a’を形成する。なお、本実施例
では、各パターン形成にはスクリーン印刷法を用いる。
【0051】カーボンペーストを用いて、細孔パター
ン33’,35’を形成する(厚さ:約40μm)。焼
成時に該カーボンペーストのパターン33’,35’は
焼失し、細孔33,35となる。 カーボンペーストを用いて、第二電極パターン12’
及び第三電極パターン13’上に、第一処理空間15及
び第二処理空間16となるべきパターン15’,16’
を形成する(それぞれ厚さ30μm)。このうち、パタ
ーン15’の厚さは15〜80μmの範囲で調整するの
がよい。該厚さが15μm未満になると、焼成時の収縮
により第一電極11と第二電極12との間に短絡を生ず
る心配がある。パターン15’の厚さは40〜80μm
の範囲で調整するのがよい。なお、パターン15’,1
6’の形成厚さは、カーボンペーストの塗布回数により
調整することができる。 リード部パターン12a’及び13a’の末端に、接
続端子12b,13bとなるべき金属線12b’,13
b’(Pt−13重量%Rh合金線、線径2mm:他の
接続端子についても同様)の一端を重ね合わせ、Ptペ
ーストを用いて仮止めする。
【0052】(2)酸素ポンプ素子側積層体PAの作
製。 酸素ポンプ素子となるべきセラミックグリーンシート
3’(厚さ0.35mm、幅5mm、長さ25mm)の
片面に対し、電極形成部を除く領域に、リード部と固体
電解質層との間を絶縁するための絶縁コート40’を、
アルミナペーストを用いて形成する。 上記絶縁コート40’の上から、Ptペーストを用い
て外側電極パターン10’及びリード部パターン10
a’を形成する。 セラミックグリーンシート3’の他方の面に対し、P
tペーストを用いて第一電極パターン11’及びリード
部パターン11a’を形成する。
【0053】アルミナペーストを用いて絶縁コート3
0b’を、積層体CA側のカーボンペーストのパターン
15’,16’に対応する厚さで形成する。絶縁コート
30b’は、絶縁性セラミック層30の要部となる。 リード部パターン10a’の末端に、接続端子10b
となるべき金属線10b’の一端を重ね合わせ、Ptペ
ーストを用いて仮止めする。 リード部パターン11a’の末端に、接続端子11b
となるべき金属線11b’の一端を重ね合わせ、Ptペ
ーストを用いて仮止めする。
【0054】(3)組立・焼成 酸素濃淡電池素子側積層体CAと酸素ポンプ素子側積
層体PAとの一方にアルミナペーストを用いて貼合せコ
ートを施し、ペーストが半乾燥状態で両積層体を重ね圧
着して張り合わせる。 貼合わせ後の積層体を脱脂炉にて脱脂後、所定の温度
(1500℃)にて焼成して、酸素ポンプ素子3及び酸
素濃淡電池素子4の一体積層体を得る。なお、この一体
積層体の酸素濃淡電池素子4側に、無機接着剤等を用い
て加熱素子5を接合し、さらに各接続端子10b〜13
bにリード線を取り付ければ、センサが完成する。
【0055】一酸化炭素検出センサ1の作動原理の概要
は以下の通りである。すなわち、図1の一酸化炭素検出
センサ1は、例えば排気管に設けられた取付部に対し、
検出部が該排気管内に位置するように取り付けられる。
図7に示すように、この状態で酸素ポンプ素子3には、
多孔質電極10,11の一方が正、他方が負となるよう
に電圧が印加される。そして、極性が正となる多孔質電
極においては、これと接する排気ガス中の酸素分子が該
電極上で解離され、上記印加された電圧が駆動力となっ
て解離された酸素がイオンの形で素子3内に送り込まれ
る。また、上記電圧印加により素子3内を輸送される酸
素イオンは、極性が負となる多孔質電極上で電子を受け
取り、さらに酸素分子に再結合して雰囲気中に放出され
る。
【0056】また、酸素濃淡電池素子4においては、多
孔質電極12,13には電圧が印加されず、それら電極
12,13とそれぞれ接する排気ガス中の酸素分子が該
電極12,13上で解離され、それぞれ酸素イオンの形
で素子4内に拡散する。そして、電極12側と13側と
で酸素濃度に差がある場合には、素子4内に酸素イオン
の濃度勾配が生じ、その濃度勾配に応じた濃淡電池起電
力が両電極12,13間に生ずることとなる。
【0057】そして、細孔33,35を経て第一処理空
間15及び第二処理空間16に、それぞれ一酸化炭素と
酸素とを含有する排気ガスが導入されると、第一処理空
間15側に位置する電極11,12がいずれも一酸化炭
素の酸化に対する触媒活性が高く、第二処理空間16側
に位置する電極13は上記触媒活性が低いことから、該
排気ガス中の一酸化炭素の酸化による消費量は、第一処
理空間15側において第二処理空間16側よりも大きく
なる。一酸化炭素の消費量の大きい側においては、排気
ガス中の酸素の消費量も大きくなることから、第二処理
空間16内の酸素濃度は第一処理空間15内のそれより
も高くなり、酸素濃淡電池素子4には第二処理空間16
側を正とする濃淡電池起電力が生ずる。
【0058】そして、上記濃淡電池起電力の絶対値が例
えば10mV以下の一定値となるように、酸素ポンプ素
子3により隙間14側から第一処理空間15側へ酸素を
汲み込むと、該酸素ポンプ素子3を流れる電流(以下、
酸素ポンプ電流あるいはポンプ電流という)は、一酸化
炭素の酸化に消費された酸素量を反映した値となる。ま
た、排気ガス中の一酸化炭素の濃度が高くなると、その
酸化により消費される酸素量は増大し、結果としてポン
プ電流も大きくなる。従って、ポンプ電流を測定するこ
とにより、排気ガス中の一酸化炭素の濃度を知ることが
できる。
【0059】以下、上記一酸化炭素検出センサを使用し
たセンサシステムについて説明する。図7は、一酸化炭
素検出センサ1を用いたセンサシステムの一例の電気的
構成を示すブロック図である。すなわち、該センサシス
テム50は、上記一酸化炭素検出センサ1と、マイクロ
プロセッサ51と、それら一酸化炭素検出センサ1とマ
イクロプロセッサ51とを接続する周辺回路50aとか
ら構成されている。
【0060】一酸化炭素検出センサ1の酸素濃淡電池素
子4は第二電極12が接地される一方、第三電極13は
反転増幅用のオペアンプ61(ポンプ電流制御手段)の
負端子側に接続されている。一方、オペアンプ61の正
端子側には起電力目標値ECを与えるための電源回路6
5が接続されている。該電源回路65は、起電力目標値
ECの設定値を一定の範囲で変更可能に構成されてい
る。例えば図に示す例においては、3つの固定抵抗66
a〜66cと1つの可変抵抗66dを各辺に備えるブリ
ッジ回路66と、これに接続された電源67とを含んで
構成されている。可変抵抗66dの抵抗レンジをRmin
〜Rmaxとして、Rmin<Re<Rmaxとなるある抵抗値R
eにおいてブリッジが平衡し、オペアンプ61の端子へ
の出力電圧が0となるように、固定抵抗66a〜66c
の各抵抗値が調整されている。そして、可変抵抗66d
の抵抗値をReからそれぞれRmin又はRmax側にずらせ
ることにより、起電力目標値ECは0Vを挟んでそれぞ
れ正負両側に一定の範囲で変更可能となる。
【0061】次に、オペアンプ61は、周辺の抵抗器6
1a〜61dとともに差動増幅器を構成し、その出力側
は電流検出用の抵抗器62を介して酸素ポンプ素子3の
外側電極10に接続されている。一方、酸素ポンプ素子
3の第一電極11側は、酸素濃淡電池素子4の第二電極
12と共通接地されている。これにより、オペアンプ6
1は、酸素濃淡電池素子4の濃淡電池起電力入力Em
と、起電力目標値ECとの差電圧Em−ECを反転増幅し
て酸素ポンプ素子3の第一電極11側に印加することと
なる。なお、抵抗器61a及び61bの電気抵抗値をそ
れぞれR1及びR2とすれば、オペアンプ61の電圧ゲイ
ンはA1=R1/R2である。
【0062】ここで、図8に示すように、Em>ECであ
ればEm−EC>0であるから、オペアンプ61の出力電
圧−A1(Em−EC)は負となり、酸素ポンプ素子3に
は第一電極11側が負となるように電圧が印加され、酸
素ポンプ素子3には第一処理空間15に酸素を汲み込む
方向にポンプ電流Idが流れる。このポンプ電流Idは、
電流検出用抵抗器62(抵抗値R3)の両端電圧差の形
で、周辺の抵抗器64a〜64dとともに差動増幅器を
構成するオペアンプ64により電圧信号として取り出さ
れ、さらに図4に示すように、ダイポーラ型のA/D変
換器70でデジタル化されてマイクロプロセッサ51に
入力される。なお、64a,64bは、オペアンプ64
のゲイン調整用抵抗器(それぞれ抵抗値R5、R6)であ
る。
【0063】次に、酸素濃淡電池素子4の第三電極13
側の電圧信号Vsは、電圧フォロワ73を経た後ダイポ
ーラ型のA/D変換器71でデジタル変換され、マイク
ロプロセッサ51に入力されるようになっている。ま
た、一酸化炭素検出センサ1の加熱素子5は、例えば共
通のヒータ通電回路72を介してマイクロプロセッサ5
1に接続されている。図9(a)にヒータ通電回路72
の一例を示している。該ヒータ通電回路72は、マイク
ロプロセッサ51から与えられるヒータ制御値をアナロ
グ変換するD/A変換器80と、これに接続された電流
増幅用のトランジスタ82とを備え、このトランジスタ
82に加熱素子5が接続されている。トランジスタ82
は能動領域で作動し、与えられるヒータ制御値に応じて
加熱素子5の通電電流を増加させる。
【0064】一方、図9(b)は、PWM(pulse widt
h modulation)制御方式を採用したヒータ通電回路72
の例を示すものである。この回路72の主体をなすのは
PWM制御回路85であり、マイクロプロセッサ51か
ら与えられるヒータ制御電圧値をアナログ変換するD/
A変換器86と、三角波(あるいはのこぎり波)発生回
路87と、それらD/A変換器86及び三角波発生回路
87からの出力がそれぞれ入力されるオペアンプ88と
を含んで構成されている。オペアンプ88は単電源型の
もので、ヒータ制御電圧値と三角波入力値との大小関係
に応じてゼロ及びゼロでない所定電圧Vのいずれかを出
力するコンパレータとして作動する。この場合、そのコ
ンパレータ出力のデューティ比がヒータ制御電圧値に応
じて変化する形となり、加熱素子5の発熱が調整され
る。また、加熱素子5は定電圧電源回路により一定の温
度に加熱されるようにしてもよい。
【0065】なお、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池
素子4の温度は、例えば酸素濃淡電池素子4の内部抵抗
測定により検出することができ、その検出温度情報を用
いて加熱素子5の発熱制御を行うことができる。
【0066】図7に戻り、マイクロプロセッサ51は、
周辺回路50aとの間の出入力インターフェースとなる
I/Oポート52と、これに接続されたCPU53、R
AM54及びROM55等により構成されている。その
RAM54には、CPU53のワークエリア54aと、
一酸化炭素の濃度算出値の格納エリア54bとが形成さ
れている。また、ROM55には、センサシステム50
の被検出成分の出力値決定の演算とその出力制御を司る
制御プログラム55aと、該制御プログラム55aが使
用する濃度変換テーブル55bとが格納されている。な
お、CPU53は、ROM55に格納された制御プログ
ラム55aにより、濃度決定手段の主体として機能す
る。
【0067】なお、図8において、センサ1が排気ガス
と接触するに伴い、第一処理空間15内では一酸化炭素
と酸素とが反応することで、酸素濃度が減少し、酸素濃
淡電池素子4には第三電極13側を正とする濃淡電池起
電力Emが発生する。ここで、オペアンプ61に入力さ
れる起電力目標値ECが例えば0であるとすれば、Em−
EC>0であるから、オペアンプ61の出力電圧−A1
(Em−EC)は負となり、酸素ポンプ素子3には第一電
極11側が負となるように電圧が印加され、酸素ポンプ
素子3には第一処理空間15に酸素を汲み込む方向にポ
ンプ電流Idが流れる。すると、酸素ポンプ素子3によ
る第一処理空間15への酸素の汲み込みが進み、濃淡電
池起電力Emは次第に小さくなるから、酸素ポンプ電流
Idは小さくなる方向に制御される。その結果、最終的
には濃淡電池起電力Emはほぼ0に近づくように酸素ポ
ンプ電流が制御され、そのときの酸素ポンプ電流Idの
平衡値から一酸化炭素の濃度を知ることができる。ポン
プ電流Idの信号は、前述の通りオペアンプ64により
電流検出用抵抗器62の両端電圧の差を取ることで電圧
信号に変換され、A/D変換器70でデジタル化されて
マイクロプロセッサ51に入力される。しかしながら、
起電力目標値ECは実際には必ずしも0に設定されると
は限らない。その理由について以下に説明する。
【0068】まず、濃淡電池起電力が0であるというこ
とは、理論上は酸素濃淡電池素子4の両側(すなわち、
第一処理空間15及び16)の酸素濃度が等しくなって
いることを意味する。このことは、ポンプ電流が第一処
理空間15と第二処理空間16とにおける一酸化炭素の
消費量の差に直接的に対応していることも意味するか
ら、一酸化炭素の濃度を精度よく検出でき、また検出結
果の解析も容易になる。しかしながら通常は、第一処理
空間15及び第二処理空間16の酸素濃度が等しくなっ
ても、酸素濃淡電池素子4の起電力は実際には0にはな
らず、一定のオフセット起電力が残ることが多い。この
場合は、上記オフセット起電力に対応する起電力目標値
ECを10mV以下の範囲で設定し、濃淡電池起電力の
絶対値が該起電力目標値ECに到達したときの酸素ポン
プ素子3に流れる電流値を検出信号として採用すること
で、排気ガス中の一酸化炭素の濃度をより正確に検出で
きる。
【0069】また、酸素濃淡電池素子4のオフセット起
電力は、検出に係る排気ガス中の酸素濃度が低くなるほ
ど変動しやすくなり、一定以下の酸素濃度におけるオフ
セット起電力を基準として起電力目標値ECを設定する
と、センサ出力が排気ガス中の酸素濃度の影響を受けや
すくなる。そこで、酸素を例えば1体積%以上(望まし
くは10体積%以上)含有し、かつセンサ作動温度にお
いて酸素と反応する成分を実質的に含有しない試験ガス
を、第一処理空間15及び第二処理空間16にそれぞれ
導入したときのオフセット起電力の絶対値をEOS(単
位:mV)とし、これを基準として起電力目標値ECを
(EOS−5)mV以上(EOS+5)mV以下の範囲内で
設定することが有効である。
【0070】この起電力目標値ECの変更・調整は、前
述の通り電源回路65の可変抵抗66dの調整により行
うことができる。なお、酸素濃淡電池素子4のオフセッ
ト起電力は、酸素濃淡電池素子4毎に互いに異なる値と
はなっても、同一の酸素濃淡電池素子4においては比較
的長期に亙って安定した値を示し続けることが多い。そ
こで、可変抵抗66dは、例えば装置50の出荷時等に
おいて、使用されている酸素濃淡電池素子4の固有のオ
フセット起電力に対応して一旦抵抗値を調整してしまえ
ば、後は変更の必要性がなくなることも十分に考えられ
る。この場合は、可変抵抗66dを半固定抵抗器により
構成しておけば便利である。
【0071】以下、センサシステム50の作動につい
て、マイクロプロセッサ51のCPU53からみた処理
の流れにより説明する。図10は、濃度変換テーブル5
5bの内容の一例を示すものであり、一酸化炭素濃度の
各値C1、C2、C3、‥‥に対応する酸素ポンプ素子3
の出力電流値Id1、Id2、Id3、‥‥の値を記憶してい
る。これらの値は、実験等により予め定められたもので
ある。そして、図7に示すCPU53は、制御プログラ
ム55aによりRAM54をワークエリアとして、図1
1のフローチャートに示すようなセンサ出力制御を実行
する。
【0072】すなわち、図示しないタイマーにより測定
タイミングを計測し、S1において該タイミングが到来
したら、S2で酸素ポンプ素子3からの出力電流値(ポ
ンプ電流)Idのサンプリングを行う。そして、S3で
そのサンプリングされた値に対応する一酸化炭素濃度の
値を、図10の濃度変換テーブル55bを参照して補間
法により算出し、S4でその算出した値をRAM54の
算出値格納エリア54bに格納する。なお、該エリア5
4bに書き込まれていた値は上書き消去する。そして、
S5において、そのエリア54bに書き込まれた算出値
を、排気ガス中の一酸化炭素濃度の情報としてI/Oポ
ート52より出力する。なお、この出力はそのままデジ
タル出力してもよいし、I/Oポート52に接続された
D/A変換器74でアナログ変換して出力してもよい。
【0073】以下、上記一酸化炭素検出センサ1の各種
変形例について説明する。図12に示す一酸化炭素検出
センサ400では、それぞれ横長板状に形成された第一
加熱素子2、酸素ポンプ素子3、酸素濃淡電池素子4及
び第二加熱素子(加熱素子)5がこの順序で積層された
ものとして構成されている。酸素ポンプ素子3は横長板
状に形成され、その長手方向における一方の端部寄りに
おいてその両面に、外側電極10と第一電極11とが形
成されている。また、酸素濃淡電池素子4には、上記酸
素ポンプ素子3の電極10,11に対応する位置におい
てその両面に、第二電極12及び第三電極13が形成さ
れている。各電極10〜13の材質は、図1のセンサ1
と同様である。
【0074】そして、酸素濃淡電池素子4と酸素ポンプ
素子3との間には、壁部形成体としてのスペーサ部40
1が介挿され、そのスペーサ部401の電極11及び1
2に対応する位置には、厚さ方向にこれを貫通する窓部
401aが形成されている。スペーサ部401は該窓部
401aにより、電極11,12の周囲を取り囲む壁部
401bを形成する。そして、その壁部401bの内面
と酸素濃淡電池素子4及び酸素ポンプ素子3の各対向面
とによって囲まれた空間が測定室403(第一処理空間
15)とされている。そして、上記測定室403に対応
する位置において壁部401bと酸素ポンプ素子3との
間には、該酸素ポンプ素子3の幅方向両側においてそれ
ぞれ測定室403と外側の被検出雰囲気とを連通させる
拡散流通規制部としてのスリット402が形成されてい
る。
【0075】図12(c)に示すように、該スリット4
02は、第二電極12の幅方向両側において壁部401
bの酸素ポンプ素子3との積層面側部分を一定厚さ切り
欠いた形態で形成されており、同図(a)に示すよう
に、電極12の対応する縁に沿って酸素ポンプ素子3の
長手方向に延びている。また、その幅dは測定室403
の高さhよりも小さく設定されており、具体的にはd/
hが1/100〜1/4、より望ましくは1/20〜1
/8の範囲で設定されている。また、スリット幅dの絶
対値は、0.01〜1.0mm、より望ましくは0.0
2〜0.05mmの範囲で設定されている。さらに、ス
リット402内の空間体積Vに対するスリット内周面の
面積Sの比S/Vは4〜100、望ましくは20〜50
の範囲で調整されている。なお、該スリット402は、
同様の形態で壁部401bと酸素濃淡電池素子4との間
に形成してもよい。
【0076】なお、スペーサ部401(壁部401b)
は、酸素濃淡電池素子4に対してはその積層面のほぼ全
面において、また、酸素ポンプ素子3に対しては、上記
スリット402の形成領域を除いて同様にその積層面の
ほぼ全面において、それぞれ焼成により一体化されてい
る。
【0077】一方、第一加熱素子2と酸素ポンプ素子3
との間、及び酸素濃淡電池素子4と第二加熱素子5との
間には、それぞれガラスあるいはセメント等で構成され
たスペーサ6及び8が介挿されており、各素子間には所
定量の隙間14及び隙間16がそれぞれ形成されてい
る。ここで、隙間16は第二処理空間に相当する(以
下、第二処理空間16ともいう)。また、第二加熱素子
5は、隙間形成部材の役割を果たしている。第一処理空
間15及び第二処理空間16の間隔(すなわち、隙間の
大きさ)はそれぞれ1mm以下の範囲で調整される。ま
た、第一電極11の面積Spは第二電極12の面積SSと
等しいか、それよりも大きく設定される。
【0078】酸素ポンプ素子3の各多孔質電極10,1
1からは、該素子3の長手方向に沿って一酸化炭素検出
センサ1の取付基端側に向けて延びる電極リード部10
a,11aがそれぞれ一体に形成されており、該基端側
において酸素ポンプ素子3には接続端子10b,11b
の一端が埋設されている。そして、例えば、接続端子1
0b,11bは、図13に示すように、金属ペーストを
焼結することにより形成された導通部(ビア)10fに
より、電極リード部10a,11aの末端に対して電気
的に接続されている。また、図12に示すように、酸素
濃淡電池素子4の各多孔質電極12,13にも同様に電
極リード部12a及び13aが一体に形成されており、
それぞれ接続端子12b,13bが取り付けられてい
る。
【0079】上記一酸化炭素検出センサ400の要部を
なす酸素ポンプ素子3、スペーサ部401及び酸素濃淡
電池素子4の一体積層体は、例えばそれぞれ上記各部
3,401,4となるべきセラミックグリーンシート
(成形体)を積層して焼成することにより製造すること
ができる。このとき、酸素ポンプ素子3となるべきグリ
ーンシート(セラミック成形体)と、スペーサ部となる
べきグリーンシートとの間においてスリット402の形
成が予定された領域に、焼成温度で焼失する材料(例え
ばカーボンペーストなど)で形成された所定厚さの層を
挟みこんでおけば、焼成時にこの層が焼失して上記スリ
ット402を簡単に形成することができる。
【0080】このようにすれば、測定室403の高さh
(すなわち隙間15の大きさ)をある程度以上に大きく
した場合でも、排気ガスはスリット402において拡散
を規制されつつ測定室403に流入し、また測定室40
3に導入された後は同じくスリット402を通って拡散
を規制されつつ被測定雰囲気中へ排出される。従って、
一旦導入された排気ガスの測定室403内での滞留時間
が長くなり、その間に被検出雰囲気中の排気ガス組成
(特に酸素あるいは水蒸気量)が変化しても、測定室内
のガスへの影響が小さくなるので、センサ1の出力が向
上し、ひいてはセンサ1の検出精度を高めることができ
る。また、酸素ポンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4と
は、スペーサ部401を介して一体化されているから、
センサ400の機械的強度が高められている。
【0081】図14の一酸化炭素検出センサ400にお
いては、第二電極12側と同様のスペーサ部404(窓
部404aを有する)を介して、隙間形成部材としての
隙間形成用セラミック板406が一体化されており、そ
のスペーサ部404による壁部404bの内面と、酸素
濃淡電池素子4及び隙間形成用セラミック板406の各
対向面とによって測定室407が形成されている。ま
た、この測定室407に対応する位置において壁部40
4bと酸素濃淡電池素子4との間には、第二電極12側
と同様のスリット405が形成されている。また、第二
加熱素子5は隙間形成用セラミック板406に積層され
ている。該構成により、さらに安定で高出力のセンサを
実現できる。
【0082】また、図15に示す例においては、酸素ポ
ンプ素子3及び酸素濃淡電池素子4の板面方向において
壁部401bを貫く小孔410が、第一及び第二電極1
1,12の周方向に沿って所定の間隔で複数形成されて
いる。一方、図16に示す例においては、酸素濃淡電池
素子4を厚さ方向に貫く小孔410が、第三電極13の
周縁に沿って所定の間隔で複数形成されている。
【0083】次に、図17に示す構成においては、酸素
濃淡電池素子4に上記スペーサ部401が焼成により一
体化される一方、酸素ポンプ素子3は一体化せずに分離
して構成した例を示す。この場合、スリット402は、
酸素ポンプ素子3の板面と壁部401bの対向面との間
に形成されることとなる。また、第一加熱素子2、酸素
ポンプ素子3、酸素濃淡電池素子4及び第二加熱素子5
がスペーサ6〜8を介して積層されて積層体31が形成
されるとともに、角型の貫通孔32aを有するセラミッ
クストッパ32が、積層体31に対し外側から嵌着され
ている。なお、スペーサ7はスペーサ部401と酸素ポ
ンプ素子3との間に介挿され、両者の間に所定の大きさ
のスリット402を形成する役割を果たす。
【0084】
【実施例】本発明の一酸化炭素検出センサの効果を確認
するために、下記の実験を行った。図1の一酸化炭素検
出センサ1を、Y粉末とZrO粉末とを含有す
るセラミックグリーンシートを用い、各素子3,4が、
を5モル%含有する安定化ZrO焼結体から
なるものとして、前記した条件により作製した。該セン
サ1の初期特性を以下の条件にて測定した。まず、セン
サ1を、一酸化炭素0〜800ppm、酸素1%、水蒸
気18%、二酸化炭素10%、残部窒素からなる試験ガ
ス中に保持して素子3及び4が700℃になるように加
熱素子5により加熱した。なお、ガス流量は5l/mi
nとした。そして、酸素濃淡電池素子4の起電力目標値
ECを0mVとして酸素ポンプ素子3を作動させ、その
出力電流を測定した。図18にその測定結果を示す(図
中、黒丸印がデータ点を示す)。出力電流値は一酸化炭
素濃度にほぼ比例して増加しており、一酸化炭素濃度が
800ppmのときの電流値も50mAと大きく、一酸
化炭素検出センサとして良好な特性を示していることが
わかる。
【0085】次に、上記センサ1を、一酸化炭素100
0ppm、酸素1%、水蒸気18%、二酸化炭素10
%、残部窒素からなる試験ガス中に250℃にて100
日間エージングし、上記したものと同じ条件にてセンサ
特性を再測定した。図18にその結果を示す(図中、黒
角印がデータ点を示す)。すなわち、センサ1はエージ
ング後の出力低下がわずかであり、長期にわたって安定
したセンサ特性が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一酸化炭素検出センサの一例の要部外
観を模式的に示す斜視図。
【図2】その酸素ポンプ素子の平面図。
【図3】同じく底面図。
【図4】酸素濃淡電池素子の平面図。
【図5】図1の一酸化炭素センサのA−A断面。
【図6】図1の一酸化炭素検出センサの製造工程の一例
を示す説明図。
【図7】図1のセンサを用いた一酸化炭素検出センサシ
ステムの電気的構成の一例を示すブロック図。
【図8】その要部の作動系統を示すブロック図。
【図9】ヒータ通電回路のいくつかの例を示すブロック
図。
【図10】濃度変換テーブルの内容例を示す説明図。
【図11】図4の一酸化炭素検出センサシステムの制御
プログラムの処理の流れを示すフローチャート。
【図12】図1の一酸化炭素検出センサの第一の変形例
を示す平面図、側面図及びそのA−A断面図。
【図13】その端子構造を示す部分断面図。
【図14】図1の一酸化炭素検出センサの第二の変形例
を示す平面図、側面図及びそのA−A断面図。
【図15】同じく第三の変形例を示す部分平面図、及び
そのB−B断面図。
【図16】同じく第四の変形例を示す部分平面図及び底
面図。
【図17】同じく第五の変形例を示す平面図、側面図及
びそのA−A断面図。
【図18】実験で使用した一酸化炭素検出センサの出力
の一酸化炭素濃度依存性を、エージング処理前とエージ
ング処理後とで比較して示すグラフ。
【符号の説明】
1,400 一酸化炭素検出センサ 2 第一加熱素子 3 酸素ポンプ素子 4 酸素濃淡電池素子 5 第二加熱素子(加熱素子) 11 第一電極 12 第二電極 13 第三電極 15 第一処理空間 16 第二処理空間

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被検出ガス中に含まれる一酸化炭素の検
    出を行うための一酸化炭素検出センサであって、 一酸化炭素と酸素とを含有する被測定雰囲気からの被測
    定ガスが出入り可能な状態で第一処理空間及び第二処理
    空間が形成され、さらに、 酸素イオン伝導性固体電解質により構成されるととも
    に、その表面に酸素透過性を有する2つの電極が形成さ
    れ、それら電極の一方が前記第一処理空間に面して配置
    され、他方が前記第二処理空間に面して配置される酸素
    濃淡電池素子と、 酸素イオン伝導性固体電解質により構成されるととも
    に、その表面に酸素透過性を有する2つの電極が形成さ
    れ、それら電極の一方が前記第一処理空間に面して配置
    され、前記酸素濃淡電池素子に生ずる濃淡電池起電力の
    絶対値が減少する方向に、前記第一処理空間に対する酸
    素の汲込み又は汲出しを行う酸素ポンプ素子と、 前記酸素ポンプ素子と前記酸素濃淡電池素子とを予め定
    められたセンサ作動温度に加熱する加熱素子とを備え、 前記酸素ポンプ素子の前記第一処理空間に面する側の電
    極を第一電極、前記酸素濃淡電池素子の前記第一処理空
    間に面する側の電極を第二電極、前記酸素濃淡電池素子
    の前記第二処理空間に面する電極を第三電極として、前
    記第一処理空間と前記第二処理空間との間で、導入され
    た被検出ガス中の一酸化炭素の燃焼消費量に差が生じる
    ように、それら第一〜第三電極の酸化触媒活性が調整さ
    れており、 前記酸素濃淡電池素子の前記濃淡電池起電力の絶対値が
    所定の起電力目標値ECに到達したときの前記酸素ポン
    プ素子に流れる電流値を、前記被検出ガス中の一酸化炭
    素濃度を反映した情報として取り出すようにしたことを
    特徴とする一酸化炭素検出センサ。
  2. 【請求項2】 前記酸素ポンプ素子と前記酸素濃淡電池
    素子とは互いに対向して配置される板状に形成され、 前記第一処理空間と前記第二処理空間とは、それら前記
    酸素ポンプ素子と前記酸素濃淡電池素子との間において
    板面方向に隣接して形成され、 前記第一電極は、前記第一処理空間に面する位置におい
    て前記酸素ポンプ素子の対応する板面上に形成され、 前記第二電極と前記第三電極とは、それぞれ前記第一処
    理空間及び第二処理空間に面する位置において前記酸素
    濃淡電池素子の対応する板面上に隣接して形成されてい
    る請求項1記載の一酸化炭素検出センサ。
  3. 【請求項3】 前記酸素ポンプ素子と前記酸素濃淡電池
    素子とは、前記第一処理空間及び第二処理空間の形成部
    を除いた残余の領域において、対向する板面同士が絶縁
    性セラミック層により互いに接合されている請求項2記
    載の一酸化炭素検出センサ。
  4. 【請求項4】 前記第一電極及び第二電極は、金属成分
    が実質的にPtからなるPt系多孔質電極とされ、前記
    第三電極は、金属成分がPtを主体としてAuを2〜3
    0重量%含有するPt−Au合金からなるPt−Au系
    多孔質電極とされている請求項1ないし3のいずれかに
    記載の一酸化炭素検出センサ。
  5. 【請求項5】 被検出ガス中に含まれる一酸化炭素の検
    出を行う方法であって、 被測定雰囲気から区画された第一処理空間及び第二処理
    空間と、それら第一処理空間及び第二処理空間に対し、
    一酸化炭素と酸素とを含有する前記被測定雰囲気からの
    被測定ガスをそれぞれ導く第一ガス導入部及び第二ガス
    導入部とを有し、さらに、 酸素イオン伝導性固体電解質により構成されるととも
    に、その表面に酸素透過性を有する2つの電極が形成さ
    れ、それら電極の一方が前記第一処理空間に面して配置
    され、他方が前記第二処理空間に面して配置される酸素
    濃淡電池素子と、 酸素イオン伝導性固体電解質により構成されるととも
    に、その表面に酸素透過性を有する2つの電極が形成さ
    れ、それら電極の一方が前記第一処理空間に面して配置
    され、前記酸素濃淡電池素子に生ずる濃淡電池起電力の
    絶対値が減少する方向に、前記第一処理空間に対する酸
    素の汲込み又は汲出しを行う酸素ポンプ素子と、 前記酸素ポンプ素子と前記酸素濃淡電池素子とを予め定
    められたセンサ作動温度に加熱する加熱素子とを備え、 前記酸素ポンプ素子の前記第一処理空間に面する側の電
    極を第一電極、前記酸素濃淡電池素子の前記第一処理空
    間に面する側の電極を第二電極、前記酸素濃淡電池素子
    の前記第二処理空間に面する電極を第三電極として、前
    記第一処理空間と前記第二処理空間との間で、導入され
    た被検出ガス中の一酸化炭素の燃焼消費量に差が生じる
    ように、それら第一〜第三電極の酸化触媒活性が調整さ
    れた一酸化炭素検出センサを用い、 前記酸素濃淡電池素子の前記濃淡電池起電力の絶対値が
    所定の起電力目標値ECに到達したときの前記酸素ポン
    プ素子に流れる電流値を、前記被検出ガス中の一酸化炭
    素濃度を反映した情報として取り出すようにしたことを
    特徴とする一酸化炭素検出方法。
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JP2016138775A (ja) * 2015-01-27 2016-08-04 日本碍子株式会社 ガスセンサ

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WO2009031925A1 (ru) * 2007-08-08 2009-03-12 Zakrytoe Aktsyonernoe Obshhestvo 'veal Sensor' Сенсор и анализатор содержания монооксида углерода
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