WO2024069711A1

WO2024069711A1 - エレベーターの主ロープの交換方法および交換補助具

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Publication number: WO2024069711A1
Application number: PCT/JP2022/035743
Authority: WO
Inventors: 哲朗関; 正雄明石; 淳哉安富
Original assignee: 三菱電機ビルソリューションズ株式会社
Priority date: 2022-09-26
Filing date: 2022-09-26
Publication date: 2024-04-04

Abstract

作業員の負荷をより軽減できるエレベーターの主ロープの交換方法および交換補助具を提供する。複数の主ロープ（７）を備えるエレベーター（１）の上部領域において、切断された既設の主ロープ（７）の上部領域側の部分に替えて新設の主ロープ（７）が配置され、下方に垂れる新設の主ロープ（７）の折返し部（３３）が動滑車（２２）に掛けられる。動滑車（２２）に、切断された既設の主ロープ（７）の上部領域および下部領域の間にわたって配置された部分が接続される。一対のガイド環（２３）は、折返し部（３３）の上下方向の周りの回転を抑えるように、交換対象の他の主ロープ（７）の釣合い錘シーブ（１６）から見て両側の部分にそれぞれ掛けられる。既設の主ロープ（７）を下部領域において回収しながら、新設の主ロープ（７）の折返し部（３３）は、ガイド環（２３）が掛けられた他の主ロープ（７）をガイドとして、下部領域まで下ろされる。

Description

エレベーターの主ロープの交換方法および交換補助具

　本開示は、エレベーターの主ロープの交換方法および交換補助具に関する。

　特許文献１は、エレベーターの主ロープの交換補助具の例を開示する。交換補助具は、横バー部材と、案内部材と、金車と、ロープ接続手段と、を備える。横バー部材は、釣合い錘のガイドレールの間にわたって設けられる。案内部材は、横バー部材の両端部に設けられ、ガイドレール上を摺動する。金車は、新設の主ロープを巻き掛けた状態で横バー部材に装着される。ロープ接続手段は、横バー部材に設けられ、既設の主ロープを接続する。

日本特開２０１３－１５１３６４号公報

　しかしながら、特許文献１の交換補助具は、ガイドレールの間にわたる横バー部材などの大型の部品を含むため、重量が重くなる。このため、交換補助具の取付けおよび取外しなどの際の作業員の負荷が大きい。

　本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、作業員の負荷をより軽減できるエレベーターの主ロープの交換方法および交換補助具を提供する。

　本開示に係るエレベーターの主ロープの交換方法は、第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法であり、既設の前記第１ロープの前記第１部分および前記第２部分の各々を前記上部領域において切断する上部切断工程と、前記上部領域において既設の前記第１ロープを新設の前記第１ロープに替え、前記上部領域において下方に垂れる折返し部を設ける上部配置工程と、前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分に張力を与える張線工程と、前記上部配置工程より後に、前記上部領域において新設の前記第１ロープの前記折返し部に動滑車の溝車を掛け、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記第１ロープの前記第１部分および前記第２ロープの前記第１部分に第１ガイド環を、前記第１ロープの前記第２部分および前記第２ロープの前記第２部分に第２ガイド環をそれぞれ掛ける補助具取付け工程と、前記上部切断工程および前記補助具取付け工程より後に、前記上部切断工程において切断した既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分を、前記上部領域において前記動滑車に接続する接続工程と、前記張線工程および前記接続工程より後に、前記第２ロープの前記第１ガイド環が掛けられた前記第１部分および前記第２ガイド環が掛けられた前記第２部分をガイドとして、既設の前記第１ロープを前記下部領域において回収しながら新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記下部領域まで下ろす設置回収工程と、前記設置回収工程より後に、前記下部領域において、新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記動滑車の前記溝車から外して前記下部シーブに掛ける下部配置工程と、を備える。
　本開示に係るエレベーターの主ロープの交換方法は、第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法であり、既設の前記第１ロープの前記第１部分および前記第２部分の各々を前記上部領域において切断する上部切断工程と、前記上部領域において既設の前記第１ロープを新設の前記第１ロープに替え、前記上部領域において下方に垂れる折返し部を設ける上部配置工程と、前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分に張力を与える張線工程と、前記上部配置工程より後に、前記上部領域において新設の前記第１ロープの前記折返し部に動滑車の溝車を掛け、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記動滑車に取り付けられた第１ガイド環に前記第２ロープの前記第１部分を、前記動滑車に取り付けられた第２ガイド環に前記第２ロープの前記第２部分をそれぞれ掛ける補助具取付け工程と、前記上部切断工程および前記補助具取付け工程より後に、前記上部切断工程において切断した既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分を、前記上部領域において前記動滑車に接続する接続工程と、前記張線工程および前記接続工程より後に、前記第２ロープの前記第１ガイド環が掛けられた前記第１部分および前記第２ガイド環が掛けられた前記第２部分をガイドとして、既設の前記第１ロープを前記下部領域において回収しながら新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記下部領域まで下ろす設置回収工程と、前記設置回収工程より後に、前記下部領域において、新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記動滑車の前記溝車から外して前記下部シーブに掛ける下部配置工程と、を備える。

　本開示に係るエレベーターの主ロープの交換補助具は、第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法に用いられる交換補助具であり、前記上部領域から下方に垂れる新設の前記第１ロープの折返し部が掛けられる溝車、ならびに、前記上部領域において切断された既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分が接続される接続部、を有する動滑車と、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記第１ロープの前記第１部分および張力が与えられた前記第２ロープの前記第１部分に掛けられる第１ガイド環と、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記第１ロープの前記第２部分および張力が与えられた前記第２ロープの前記第２部分に掛けられる第２ガイド環と、を備える。
　本開示に係るエレベーターの主ロープの交換補助具は、第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法に用いられる交換補助具であり、前記上部領域から下方に垂れる新設の前記第１ロープの折返し部が掛けられる溝車、ならびに、前記上部領域において切断された既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分が接続される接続部、を有する動滑車と、前記動滑車に取り付けられ、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、張力が与えられた前記第２ロープの前記第１部分に掛けられる第１ガイド環と、前記動滑車に取り付けられ、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、張力が与えられた前記第２ロープの前記第２部分に掛けられる第２ガイド環と、を備える。

　本開示に係る交換方法または交換補助具によれば、エレベーターの主ロープの交換作業を行う作業員の負荷がより軽減される。

実施の形態１に係るエレベーターの構成図である。実施の形態１に係るエレベーターの主ロープの端末装置の正面図である。実施の形態１に係る交換補助具の斜視図である。実施の形態１に係る交換補助具を用いた主ロープの交換作業の例を示す図である。実施の形態１に係る交換補助具を用いた主ロープの交換作業の例を示す図である。実施の形態１に係る交換補助具を用いた主ロープの交換作業の例を示す図である。実施の形態１に係る交換補助具を用いた主ロープの交換作業の例を示す図である。実施の形態１に係る交換補助具を用いた主ロープの交換作業の例を示す図である。実施の形態２に係る交換補助具の斜視図である。

　本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。

　実施の形態１．
　図１は、実施の形態１に係るエレベーター１の構成図である。

　エレベーター１は、例えば複数の階床を有する建物に適用される。建物において、エレベーター１の昇降路２が設けられる。昇降路２は、複数の階床にわたる上下方向に長い空間である。各々の階床において、乗場３が設けられる。乗場３は、昇降路２に隣接する場所である。この例において、昇降路２の上方に機械室４が設けられる。昇降路２の底部において、ピット５が設けられる。エレベーター１は、巻上機６と、主ロープ７ａと、主ロープ７ｂと、かご８と、釣合い錘９と、を備える。ここで、主ロープ７ａ、および主ロープ７ｂなどを特に区別しない場合に、単に主ロープ７と表記する場合がある。エレベーター１は、主ロープ７ａおよび主ロープ７ｂを含む複数の主ロープ７を備える。エレベーター１は、図示されない他の主ロープを備えていてもよい。すなわち、エレベーター１は、３本以上の主ロープ７を備えていてもよい。エレベーター１は、例えば２：１ローピングのエレベーターである。

　巻上機６は、例えば機械室４に配置される。巻上機６は、昇降路２の上部などに配置されてもよい。巻上機６は、モーターおよび駆動シーブを備える。巻上機６のモーターは、駆動力を発生させる装置である。巻上機６の駆動シーブは、巻上機６のモーターが発生させる駆動力によって回転するシーブである。

　各々の主ロープ７は、例えば、ストランドを撚り合わせたワイヤロープなどである。各々の主ロープ７は、巻上機６の駆動シーブに巻き掛けられる。この例において、各々の主ロープ７は、機械室４に配置された反らせ車１０に巻き掛けられる。各々の主ロープ７は、巻上機６の駆動シーブの一方側においてかご８の荷重を支持する。各々の主ロープ７は、巻上機６の駆動シーブの他方側において釣合い錘９の荷重を支持する。各々の主ロープ７の一方の端部は、エレベーター１の上部領域において端末装置１１ｐによって固定されている。また、各々の主ロープ７の他方の端部は、エレベーター１の上部領域において端末装置１１ｑによって固定されている。ここで、端末装置１１ｐ、および端末装置１１ｑなどを特に区別しない場合に、単に端末装置１１と表記する場合がある。エレベーター１の上部領域は、例えば最上階に対応する部分を含む昇降路２の上端部などである。エレベーター１の上部領域は、昇降路２の上部に設けられた機械室４を含んでもよい。

　かご８は、昇降路２を上下方向に走行することでエレベーター１の利用者などを複数の階床の間で輸送する装置である。かご８は、昇降路２に設けられた一対のかごガイドレール１２の間に配置される。各々のかごガイドレール１２は、上下方向に沿って互いに平行に配置される。かご８は、かごシーブ１３と、複数のかごガイドシュー１４と、を備える。かご８の荷重は、かごシーブ１３に巻き掛けられた複数の主ロープ７によって支持される。各々のかごガイドシュー１４は、いずれかのかごガイドレール１２に向けて配置される。かご８は、巻上機６のモーターが発生させる駆動力によって巻き上げられる複数の主ロープ７を介して、各々のかごガイドシュー１４を通じて一対のかごガイドレール１２に案内されながら、上下方向に走行する。

　釣合い錘９は、巻上機６の駆動シーブの両側にかかる荷重の釣合いをかご８との間でとる機器である。釣合い錘９は、昇降路２に設けられた一対の釣合い錘ガイドレール１５の間に配置される。各々の釣合い錘ガイドレール１５は、上下方向に沿って互いに平行に配置される。釣合い錘９は、釣合い錘シーブ１６と、複数の釣合い錘ガイドシュー１７と、を備える。釣合い錘９の荷重は、釣合い錘シーブ１６に巻き掛けられた複数の主ロープ７によって支持される。各々の釣合い錘ガイドシュー１７は、いずれかの釣合い錘ガイドレール１５に向けて配置される。釣合い錘９は、巻上機６のモーターが発生させる駆動力によって巻き上げられる複数の主ロープ７を介して、各々の釣合い錘ガイドシュー１７を通じて一対の釣合い錘ガイドレール１５に案内されながら、昇降路２においてかご８の走行方向の反対側に走行する。

　図２は、実施の形態１に係るエレベーター１の主ロープ７の端末装置１１の正面図である。

　各々の主ロープ７の端末装置１１は、ロッド１８と、スプリング１９と、ナット２０と、を備える。ロッド１８は、主ロープ７のストランドを撚り合わせた部分などに接続される棒状の部分である。ナット２０は、ロッド１８のネジ状の部分に通される。スプリング１９は、ロッド１８に通されている。ナット２０を締めまたは緩めることによって、ロッド１８の上下方向の位置などが調整される。また、端末装置１１の例えばロッド１８などの回転によって、主ロープ７のストランドを撚り合わせた部分などの撚りが調整される。

　ここで、エレベーター１の主ロープ７は、例えば修理または保守などの際に、既設の主ロープ７から新設の主ロープ７に交換される。主ロープ７の交換作業において、図２に図示されない交換補助具が用いられる。

　図３は、実施の形態１に係る交換補助具２１の斜視図である。

　交換補助具２１は、動滑車２２と、一対のガイド環２３と、を備える。

　動滑車２２は、溝車２４と、外枠２５と、軸部２６と、フック２７と、を備える。溝車２４は、交換する主ロープ７が巻き掛けられる部材である。外枠２５は、溝車２４を収納する部材である。外枠２５は、例えば一対の側板などからなる。この例において、外枠２５は、一対の側板の間に溝車２４を収納する。軸部２６は、外枠２５に設けられる。軸部２６は、溝車２４を回転可能に支持する。フック２７は、外枠２５に取り付けられる。この例において、動滑車２２は、主ロープ７を溝車２４に容易に掛けうるように、溝車２４の下方を開放しうるように構成される。フック２７は、例えばヒンジ２８を介して外枠２５の側板に取り付けられる。フック２７は、着脱可能に外枠２５に取り付けられていてもよい。

　各々のガイド環２３は、１本以上の主ロープ７を環内に通すことができる環状の部材である。各々のガイド環２３は、例えばカラビナなどの、開閉が可能な環状の部材である。一方のガイド環２３は、第１ガイド環の例である。他方のガイド環２３は、第２ガイド環の例である。

　続いて、図４から図８を用いて、交換補助具２１を用いた主ロープ７の交換作業の例を説明する。交換作業は、例えば複数の作業員によって行われる。交換作業の各工程は、可能な場合はその順序を入れ替えて行われてもよいし、可能な場合は例えば１人または複数の作業員によって並行して行われてもよい。図４から図８において、既設の主ロープ７は、太い点線で示される。また、図４から図８において、新設の主ロープ７は、太い実線で示される。
　図４から図８は、実施の形態１に係る交換補助具２１を用いた主ロープ７の交換作業の例を示す図である。

　まず、交換作業を行う作業員は、図４に示されるように、釣合い錘９をエレベーター１の下部領域まで移動させる。エレベーター１の下部領域は、例えば最下階に対応する部分を含む昇降路２の下端部などである。エレベーター１の下部領域は、例えば建物の外部からの資材の搬出入が可能な地上階に対応する部分を含んでもよい。この例において、作業員は、釣合い錘９を最下階まで移動させる。このとき、かご８は最上階まで移動する。

　このとき、各々の主ロープ７を一方の端部から他方の端部まで辿ると、上部領域から下部領域まで下り、下部領域にある釣合い錘シーブ１６で折り返して、下部領域から上部領域まで上る。すなわち、各々の主ロープ７について、釣合い錘シーブ１６から見て端末装置１１ｐ側および端末装置１１ｑ側の２筋の平行な部分は、昇降路２において上部領域および下部領域の間にわたって配置されている。ここで、釣合い錘シーブ１６は、エレベーター１の下部領域にある下部シーブの例である。各々の主ロープ７について、下部領域にある釣合い錘シーブ１６から上部領域にわたって配置される、釣合い錘シーブ１６から見て一方側の部分は、第１部分の例である。また、各々の主ロープ７について、下部領域にある釣合い錘シーブ１６から上部領域にわたって配置される、釣合い錘シーブ１６から見て他方側の部分は、第２部分の例である。例えば、各々の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て端末装置１１ｐ側の部分は、第１部分の例である。このとき、各々の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て端末装置１１ｑ側の部分は、第２部分の例である。

　この例において、作業員は、複数の主ロープ７を順次、既設のものから新設のものに交換する。この例において、作業員は、複数の主ロープ７のうち、主ロープ７ａを新設のものに交換した後に、主ロープ７ｂを新設のものに交換する。複数の主ロープ７のうち、既設のものを撤去して新設のものを設置する交換対象の主ロープ７は、第１ロープの例である。複数の主ロープ７のうち、第１ロープの他の少なくとも１本は、第２ロープの例である。ここで、作業員は、まず既設の主ロープ７ａを撤去して新設の主ロープ７ａを設置する。このとき、主ロープ７ａが第１ロープの例となる。また、主ロープ７ｂが第２ロープの例となる。

　作業員は、上部領域において、例えばチェーンブロック２９などを用いてかご８の荷重を昇降路２内の構造物などに支持させる。作業員は、下部領域において、例えばパイプサポート３０などに釣合い錘９の荷重を支持させる。これにより、各々の主ロープ７において、かご８および釣合い錘９の荷重によって与えられる張力が解放される。

　その後、作業員は、下部領域において、既設の主ロープ７の各々を、釣合い錘シーブ１６から見て端末装置１１ｐ側および端末装置１１ｑ側の２筋の平行な部分を分割するように、釣合い錘シーブ１６の近傍の切断箇所Ｗで切断する。

　続いて、作業員は、図５に示されるように、下部領域において切断箇所Ｗで切断した既設の主ロープ７の各々について、端末装置１１ｐ側の切断端および端末装置１１ｑ側の切断端の両方を、例えばロープクリップなどを用いて昇降路２内の構造物などに固定する。このとき、作業員は、既設の主ロープ７の各々について、端末装置１１ｐ側の切断端および端末装置１１ｑ側の切断端の各々を、例えば張線器３１などによって長手方向に引っ張ることで、端末装置１１ｐ側の部分および端末装置１１ｑ側の部分に張力を与える。

　作業員は、釣合い錘シーブ１６の上方の上部領域において、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｐ側の部分を切断箇所Ｘで切断する。また、作業員は、釣合い錘シーブ１６の上方の上部領域において、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｑ側の部分を切断箇所Ｙで切断する。このとき、作業員は、上部領域において切断された既設の主ロープ７ａの切断箇所Ｘの下方側の切断端および切断箇所Ｙの下方側の切断端を、昇降路２の下方に落下しないように上部領域において昇降路２の構造物などに仮固定する。作業員は、上部領域において切断された既設の主ロープ７ａの切断箇所Ｘの上方側の切断端、および切断箇所Ｙの上方側の切断端を接続する。作業員は、切断箇所Ｘおよび切断箇所Ｙの下方側の仮固定、ならびに切断箇所Ｘおよび切断箇所Ｙの上方側の接続の後に、切断箇所Ｘおよび切断箇所Ｙの切断を行ってもよい。

　作業員は、切断された既設の主ロープ７ａの部分のうち、上部領域に残っている部分を、例えば次のように撤去する。切断された既設の主ロープ７ａの上部領域に残っている部分は、端末装置１１ｐ側の端部、および端末装置１１ｑ側の端部を含む。ここで、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｑ側の端部を含む部分は、端末装置１１ｑに近い方から順に、かごシーブ１３、巻上機６の駆動シーブ、および反らせ車１０に巻き掛けられている。作業員は、既設の主ロープ７ａのかごシーブ１３から引き出されている２筋の部分のうち、端末装置１１ｑ側の部分を切断箇所Ｚで切断する。作業員は、例えば最上階の乗場３などの上部領域における作業場所に、ドラム３２ｓに巻かれた新設の主ロープ７ａを搬入する。作業員は、既設の主ロープ７ａの切断箇所Ｚのかごシーブ１３側の切断端、およびドラム３２ｓから巻き出された新設の主ロープ７ａの端部を接続する。作業員は、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｐ側の端部を、例えば端末装置１１ｐ側に引いて回収することで撤去する。ここで、既設の主ロープ７ａの切断箇所Ｘおよび切断箇所Ｙの上方側の切断端は、互いに接続されている。このため、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｐ側の端部、切断箇所Ｘの上方側の切断端、切断箇所Ｙの上方側の切断端、および切断箇所Ｚのかごシーブ１３側の切断端は、端末装置１１ｐ側で順に回収される。また、作業員は、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｑ側の端部を撤去する。

　作業員は、新設の主ロープ７ａを上部領域に配置する。既設の主ロープ７ａの切断箇所Ｚの端末装置１１ｑ側の切断端、および新設の主ロープ７ａの端部は接続されているので、既設の主ロープ７ａの端末装置１１ｐ側の端部の回収によって、新設の主ロープ７ａは、既設の主ロープ７ａに替えて上部領域に配置される。

　作業員は、図６に示されるように、新設の主ロープ７ａの端部のうち既設の主ロープ７ａに接続されていた側の端部を端末装置１１ｐに接続する。このとき、新設の主ロープ７ａは、端末装置１１ｐに近い方から順に、反らせ車１０、巻上機６の駆動シーブ、およびかごシーブ１３に巻き掛けられている。このとき、作業員は、上部領域において新設の主ロープ７ａに折返し部３３を設ける。折返し部３３は、新設の主ロープ７ａの下方に垂れる部分である。折返し部３３は、例えば下方に向けてＵ字状に垂れる。ここで、作業員は、新設の主ロープ７ａの撚りが解けないように、例えば新設の主ロープ７ａを上部領域に設けた図示されない補助シーブに掛けることなどによって新設の主ロープ７ａに張力を掛けてもよい。

　続いて、作業員は、図７に示されるように、上部領域において、新設の主ロープ７ａの折返し部３３に交換補助具２１の動滑車２２の溝車２４を掛ける。作業員は、交換補助具２１の一方のガイド環２３を、動滑車２２の溝車２４から引き出される新設の主ロープ７ａの部分のうち端末装置１１ｐ側の部分、ならびに上部領域および下部領域の間にわたって配置される既設の主ロープ７ｂの部分のうち端末装置１１ｐ側の部分に掛ける。作業員は、交換補助具２１の他方のガイド環２３を、動滑車２２の溝車２４から引き出される新設の主ロープ７ａの部分のうちドラム３２ｓ側の部分、ならびに上部領域および下部領域の間にわたって配置される既設の主ロープ７ｂの部分のうち端末装置１１ｑ側の部分に掛ける。この例において、作業員は、各々のガイド環２３を、動滑車２２の軸部２６より上方に掛ける。このとき、動滑車２２に掛けられた新設の主ロープ７ａおよび張力が与えられた既設の主ロープ７ｂの組が、溝車２４の両側において一対のガイド環２３によって連結されているので、折返し部３３の上下方向の周りの回転が抑えられる。

　作業員は、切断された既設の主ロープ７ａの部分のうち、上部領域において切断された既設の主ロープ７ａの切断箇所Ｘの下方側の切断端および切断箇所Ｙの下方側の切断端を、上部領域において動滑車２２に接続する。作業員は、例えば既設の主ロープ７ａをフック２７に掛けることなどによって、既設の主ロープ７ａおよび動滑車２２を接続する。このとき、動滑車２２のフック２７は、接続部の例である。

　作業員は、例えば最下階の乗場３などの下部領域における作業場所に、既設の主ロープ７ａを巻き取るドラム３２ｔを搬入する。作業員は、下部領域において切断箇所Ｗで切断した既設の主ロープ７ａの切断端の両方を、下部領域に搬入したドラム３２ｔに接続する。作業員は、既設の主ロープ７ａを下部領域のドラム３２ｔにおいて回収しながら、新設の主ロープ７ａを上部領域のドラム３２ｓから繰り出す。このとき、新設の主ロープ７ａの折返し部３３は、一対のガイド環２３を介して、上部領域および下部領域の間に張られた既設の主ロープ７ｂの２筋の部分をガイドとして下部領域まで下ろされる。このとき、新設の主ロープ７ａの折返し部３３において動滑車２２を通じて既設の主ロープ７ａの荷重が掛かるため、新設の主ロープ７ａを繰り出す作業員の負荷が軽減される。

　また、新設の主ロープ７ａの折返し部３３が下方に移動するにつれて、新設の主ロープ７ａの撚りによって、折返し部３３に上下方向の周りの回転、すなわちねじれを生じさせる力が生じる。このとき、新設の主ロープ７ａの折返し部３３は、上部領域および下部領域の間に張られた主ロープ７ｂの２筋の部分に一対のガイド環２３を通じて連結されるので、上下方向の周りの回転が抑えられる。一方、上部領域から折返し部３３までの長さが長くなるにつれて、新設の主ロープ７ａの撚りによってねじれを生じさせる力が大きくなる。このため、作業員は、新設の主ロープ７ａの撚りによるねじれを抑えるように、新設の主ロープ７ａを繰り出した長さに応じて、端末装置１１ｐ側の端部を回転させながら新設の主ロープ７ａを繰り出す。この例において、作業員は、新設の主ロープ７ａを繰り出した長さに比例する回転量で、端末装置１１ｐ側の端部を回転させながら新設の主ロープ７ａを繰り出す。

　その後、作業員は、図８に示されるように、下部領域において、新設の主ロープ７ａの折返し部３３から動滑車２２を外す。作業員は、新設の主ロープ７ａの折返し部３３を、下部領域にある釣合い錘シーブ１６に掛ける。作業員は、下部領域において新設の主ロープ７ａを例えば張線器３１などによって長手方向外に引っ張ることで、新設の主ロープ７ａに張力を与える。新設の主ロープ７ａに張力が与えられることで、新設の主ロープ７ａの撚りが解けることが抑えられる。作業員は、上部領域および下部領域の間に張られた新設の主ロープ７ａの２筋の部分のうち、釣合い錘９が上昇するときに上昇する側の部分を下部領域において引っ張る。ここで、上部領域および下部領域の間に張られた新設の主ロープ７ａの２筋の部分は、釣合い錘シーブ１６に掛けられた部分を通じて繋がっているため、一方の部分を引っ張ることで両方の部分に張力が与えられる。

　作業員は、下部領域において、各々のガイド環２３を新設の主ロープ７ａおよび既設の主ロープ７ｂから取り外す。作業員は、上部領域において、新設の主ロープ７ａの端部のうちドラム３２ｓ側の端部を端末装置１１ｑに接続する。このように、主ロープ７ａは、既設のものから新設のものに交換される。

　その後、作業員は、既設の主ロープ７ｂを撤去して新設の主ロープ７ｂを設置する。このとき、主ロープ７ｂが第１ロープの例となる。また、主ロープ７ａが第２ロープの例となる。

　作業員は、主ロープ７ａに対する手順と同様にして、上部領域において既設の主ロープ７ｂを切断する。その後、作業員は、既設の主ロープ７ｂに替えて新設の主ロープ７ｂを上部領域に配置する。このとき、作業員は、上部領域において新設の主ロープ７ｂに折返し部３３を設ける。

　その後、作業員は、上部領域において、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３に交換補助具２１の動滑車２２の溝車２４を掛ける。作業員は、交換補助具２１の一方のガイド環２３を、動滑車２２の溝車２４から引き出される新設の主ロープ７ｂの部分のうち端末装置１１ｐ側の部分、ならびに上部領域および下部領域の間にわたって配置される新設の主ロープ７ａの部分のうち端末装置１１ｐ側の部分に掛ける。作業員は、交換補助具２１の他方のガイド環２３を、動滑車２２の溝車２４から引き出される新設の主ロープ７ｂの部分のうちドラム３２ｓ側の部分、ならびに上部領域および下部領域の間にわたって配置される新設の主ロープ７ａの部分のうち端末装置１１ｑ側の部分に掛ける。このとき、動滑車２２に掛けられた新設の主ロープ７ｂおよび張力が与えられた新設の主ロープ７ａの組が、溝車２４の両側において一対のガイド環２３によって連結されているので、折返し部３３の上下方向の周りの回転が抑えられる。

　作業員は、切断された既設の主ロープ７ｂの部分のうち、上部領域において切断された既設の主ロープ７ｂの下方側の切断端を、上部領域において動滑車２２に接続する。作業員は、下部領域において切断箇所Ｗで切断した既設の主ロープ７ｂの切断端の両方を、下部領域に搬入したドラム３２ｔに接続する。作業員は、既設の主ロープ７ｂを下部領域のドラム３２ｔにおいて回収しながら、新設の主ロープ７ｂを上部領域のドラム３２ｓから繰り出す。このとき、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３は、一対のガイド環２３を介して、上部領域および下部領域の間に張られた新設の主ロープ７ａの２筋の部分をガイドとして下部領域まで下ろされる。このとき、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３において動滑車２２を通じて既設の主ロープ７ｂの荷重が掛かるため、新設の主ロープ７ｂを繰り出す作業員の負荷が軽減される。

　また、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３が下方に移動するにつれて、新設の主ロープ７ｂの撚りによって、折返し部３３に上下方向の周りの回転、すなわちねじれを生じさせる力が生じる。このとき、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３は、上部領域および下部領域の間に張られた主ロープ７ａの２筋の部分に一対のガイド環２３を通じて連結されるので、上下方向の周りの回転が抑えられる。また、作業員は、新設の主ロープ７ｂの撚りによるねじれを抑えるように、新設の主ロープ７ｂを繰り出した長さに応じて、端末装置１１ｐ側の端部を回転させながら新設の主ロープ７ｂを繰り出す。この例において、作業員は、新設の主ロープ７ｂを繰り出した長さに比例する回転量で、端末装置１１ｐ側の端部を回転させながら新設の主ロープ７ｂを繰り出す。

　その後、作業員は、下部領域において、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３から動滑車２２を外す。作業員は、新設の主ロープ７ｂの折返し部３３を、下部領域にある釣合い錘シーブ１６に掛ける。作業員は、下部領域において新設の主ロープ７ｂを例えば張線器３１などによって長手方向外に引っ張ることで、新設の主ロープ７ｂに張力を与える。新設の主ロープ７ｂに張力が与えられることで、新設の主ロープ７ｂの撚りが解けることが抑えられる。

　作業員は、下部領域において、各々のガイド環２３を新設の主ロープ７ｂおよび新設の主ロープ７ａから取り外す。作業員は、上部領域において、新設の主ロープ７ｂの端部のうちドラム３２ｓ側の端部を端末装置１１ｑに接続する。このように、主ロープ７ｂは、既設のものから新設のものに交換される。

　作業員は、全ての主ロープ７を既設のものから新設のものに交換した後に、チェーンブロック２９およびパイプサポート３０などを撤去して、かご８および釣合い錘９の荷重による張力を各々の主ロープ７に与える。このとき、作業員は、新設の主ロープ７に張力を与えていた張線器３１などを撤去する。

　なお、主ロープ７が３本以上あるエレベーター１において、ガイド環２３は、動滑車２２が折返し部３３に掛けられた新設の主ロープ７および他の複数の主ロープ７を含む３本以上の主ロープ７に掛けられてもよい。すなわち、一本の第１ロープに対して、複数の第２ロープが用いられてもよい。このとき、他の複数の主ロープ７は、既設の主ロープ７のみであってもよいし、既に交換された新設の主ロープ７のみであってもよいし、既設の主ロープ７および新設の主ロープ７が混在していてもよい。張力が与えられた複数の主ロープ７によって折返し部３３の吊り下ろしがガイドされるので、折返し部３３のねじれがより効果的に抑えられる。

　以上に説明したように、実施の形態１に係るエレベーター１の主ロープ７の交換方法は、複数の主ロープ７を有するエレベーター１に適用される。各々の主ロープ７の両端部は、エレベーター１の上部領域において固定される。各々の主ロープ７は、釣合い錘シーブ１６に巻き掛けられる。当該交換方法は、釣合い錘シーブ１６がエレベーター１の下部領域にあり、かつ、各々の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分が、昇降路２において上部領域および下部領域の間にわたって配置された状態で行われる。下部領域は、上部領域の下方の領域である。交換方法は、上部切断工程と、上部配置工程と、張線工程と、補助具取付け工程と、接続工程と、設置回収工程と、下部配置工程と、を備える。上部切断工程において、作業員は、既設の交換対象の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分を、上部領域において切断する。上部配置工程において、作業員は、既設の交換対象の主ロープ７を新設の交換対象の主ロープ７に替え、上部領域において下方に垂れる折返し部３３を設ける。張線工程において、作業員は、他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分に張力を与える。補助具取付け工程は、上部配置工程より後に行われる。補助具取付け工程において、作業員は、上部領域において新設の交換対象の主ロープ７の折返し部３３に動滑車２２の溝車２４を掛ける。補助具取付け工程において、作業員は、折返し部３３の上下方向の周りの回転を抑えるように、交換対象の主ロープ７および他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分にそれぞれ、ガイド環２３を１つずつ掛ける。接続工程は、上部切断工程および補助具取付け工程より後に行われる。接続工程において、作業員は、上部切断工程において切断した既設の交換対象の主ロープ７の、上部領域および下部領域の間にわたって配置された部分を、上部領域において動滑車２２に接続する。設置回収工程は、張線工程および接続工程より後に行われる。設置回収工程において、作業員は、既設の交換対象の主ロープ７を下部領域において回収しながら、ガイド環２３が掛けられた他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分をガイドとして、新設の交換対象の主ロープ７の折返し部３３を下部領域まで下ろす。下部配置工程は、設置回収工程より後に行われる。下部配置工程において、作業員は、下部領域において、新設の交換対象の主ロープ７の折返し部３３を動滑車２２の溝車２４から外して釣合い錘シーブ１６に掛ける。
　また、実施の形態１に係るエレベーター１の主ロープ７の交換補助具２１は、動滑車２２と、一対のガイド環２３と、を備える。動滑車２２は、溝車２４と、フック２７と、を備える。溝車２４に、新設の交換対象の主ロープ７の折返し部３３が掛けられる。フック２７に、上部領域において切断された既設の交換対象の主ロープ７の、上部領域および下部領域の間にわたって配置された部分が接続される。一対のガイド環２３は、折返し部３３の上下方向の周りの回転を抑えるように、交換対象の主ロープ７および他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て一方側の部分、ならびに交換対象の主ロープ７および他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て他方側の部分に、それぞれ掛けられる。

　このような構成により、交換対象の主ロープ７の上下方向の周りの回転は、他の主ロープ７のガイドによって抑えられる。他の主ロープ７は交換対象の主ロープ７に隣接して平行に張られているため、釣合い錘ガイドレール１５などの主ロープ７から離れた位置にある長尺物まで届くように交換補助具２１を構成する必要がない。このため、交換補助具２１は、腕または横バー部材などの長尺の部品を必要としないので、より軽量によりコンパクトになる。このため、交換補助具２１を交換対象の主ロープ７に取り付ける作業員の作業負荷がより軽減される。また、交換補助具２１が軽量化されるため、その取付けなどのために作業用の足場を組む必要性が抑えられる。これにより、主ロープ７の交換作業の作業効率がより高められる。また、設置回収工程において繰出される新設の主ロープ７と、回収される既設の主ロープ７との釣合いがとられているので、新設の主ロープ７を繰り出す作業員の負荷が軽減される。また、既設の主ロープ７の上側の切断端は新設の主ロープ７および動滑車２２によって吊り下ろされるため、交換作業において既設の主ロープ７を吊り下ろすウィンチなどの装置が必要とされない。

　また、設置回収工程は、新設の交換対象の主ロープ７の撚りによるねじれを抑えるように、当該主ロープ７を繰り出した長さに応じて、少なくとも一方の端部を回転させながら当該主ロープ７を繰り出す手順を含む。

　このような構成により、高揚程で昇降路２が長く、上部領域から折返し部３３までの長さが長くなるエレベーター１においても、新設の主ロープ７の撚りによる捻じれの発生が抑えられる。これにより、新設の主ロープ７の品質を劣化させることなく、より確実に交換作業が行えるようになる。

　また、主ロープ７の交換方法は、下部切断工程を備える。下部切断工程において、作業員は、既設の交換対象の他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分を分割するように下部領域において切断する。張線工程は、下部切断工程より後に行われる。張線工程は、下部切断工程において下部領域で切断された既設の他の主ロープ７の両側の切断端の各々を引っ張ることで、当該主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分に張力を与える手順を含む。

　このような構成により、上部領域および下部領域の間にわたって既に配置されている既設の他の主ロープ７をガイドとして用いるので、ガイド用の長尺物などを昇降路２に配置する必要がない。このため、主ロープ７の交換作業の作業効率がより高められる。

　または、張線工程は、新設の交換対象の他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分のうち、釣合い錘９が上昇するときに上昇する側の部分を引っ張ることで、当該主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分に張力を与える手順を含む。

　このような構成により、上部領域および下部領域の間にわたって先に配置された新設の他の主ロープ７をガイドとして用いるので、ガイド用の長尺物などを昇降路２に配置する必要がない。また、新設の主ロープ７において張力を与えるように引っ張る箇所は釣合い錘シーブ１６を通過しないので、新設の主ロープ７にかかる負荷が抑えられる。

　なお、下部領域にある下部シーブは、釣合い錘シーブ１６でなくてもよい。例えば、巻上機６が昇降路２の下部領域に設けられるエレベーター１において、巻上機６の駆動シーブを下部シーブとして主ロープ７の交換方法を適用してもよい。

　実施の形態２．
　実施の形態２において、実施の形態１で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態２で説明しない特徴については、実施の形態１で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。

　図９は、実施の形態２に係る交換補助具２１の斜視図である。

　交換補助具２１の動滑車２２は、例えば外枠２５の左右の両側において、耳部３４を有する。左右の耳部３４は、溝車２４の左右の外側に設けられる。この例において、動滑車２２は、主ロープ７を溝車２４に容易に掛けうるように、溝車２４の左右を開放しうるように構成される。左右の耳部３４の一方は、例えば、外枠２５を構成する側板のうちの１つに設けられる。このとき、左右の耳部３４の他方は、外枠２５を構成する側板のうちの１つに設けられる。各々の耳部３４は同じ側板に設けられてもよいし、一対の側板に１つずつ耳部３４が設けられてもよい。なお、左右の耳部３４は、例えばヒンジ２８を介して外枠２５の側板に取り付けられていてもよい。

　左右の各々の耳部３４において、孔が設けられる。左右の耳部３４の孔の間の幅は、一対の釣合い錘ガイドレール１５の間の幅より短い。左右の耳部３４の孔の間の幅は、釣合い錘シーブ１６の直径程度である。この例において、左右の耳部３４の孔の間の幅は、釣合い錘シーブ１６の直径より短い。一方のガイド環２３は、左側の耳部３４において、孔に掛けられるように取り付けられる。他方のガイド環２３は、右側の耳部３４において、孔に掛けられるように取り付けられる。

　この交換補助具２１を用いる場合に、作業員は、上部領域において設けられた新設の主ロープ７ａの折返し部３３に交換補助具２１の動滑車２２の溝車２４を掛ける。作業員は、動滑車２２に取り付けられた一方のガイド環２３を、動滑車２２の溝車２４から引き出される新設の主ロープ７ａの部分のうち端末装置１１ｐ側の部分、ならびに上部領域および下部領域の間にわたって配置される既設の主ロープ７ｂの部分のうち端末装置１１ｐ側の部分に掛ける。作業員は、動滑車２２に取り付けられた他方のガイド環２３を、動滑車２２の溝車２４から引き出される新設の主ロープ７ａの部分のうちドラム３２ｓ側の部分、ならびに上部領域および下部領域の間にわたって配置される既設の主ロープ７ｂの部分のうち端末装置１１ｑ側の部分に掛ける。このとき、動滑車２２は、左右の両側に取り付けられたガイド環２３によって、張力が与えられた既設の主ロープ７ｂに左右の両側で連結されているので、折返し部３３の上下方向の周りの回転が抑えられる。

　以上に説明したように、実施の形態２に係るエレベーター１の主ロープ７の交換方法の補助具取付け工程において、作業員は、折返し部３３の上下方向の周りの回転を抑えるように、交換対象の他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分にそれぞれ、動滑車２２に取り付けられたガイド環２３を１つずつ掛ける。
　また、実施の形態２に係るエレベーター１の主ロープ７の交換補助具２１において、各々のガイド環２３は、動滑車２２に取り付けられる。一対のガイド環２３は、折返し部３３の上下方向の周りの回転を抑えるように、交換対象の他の主ロープ７の釣合い錘シーブ１６から見て両側の部分に、それぞれ掛けられる。

　このような構成により、一対のガイド環２３が動滑車２２に取り付けられているので、交換対象の新設の主ロープ７にガイド環２３が干渉しにくくなる。また、ガイド環２３が、溝車２４に掛けられた交換対象の主ロープ７とともに溝車２４に巻き込まれにくくなる。また、ガイド環２３は動滑車２２に取り付けられているので、が動滑車２２より上方において交換対象の主ロープ７または他の主ロープ７にガイド環２３が引っ掛かりにくくなる。これにより、主ロープ７の交換作業がよりスムーズに行われるようになる。

　なお、一対のガイド環２３は、動滑車２２に固定されるものであってもよいし、動滑車２２と一体に設けられるものであってもよい。

　本開示に係る主ロープの交換方法は、複数の主ロープを有するエレベーターに適用できる。本開示に係る交換補助具は、当該交換方法に適用できる。

　１　エレベーター、　２　昇降路、　３　乗場、　４　機械室、　５　ピット、　６　巻上機、　７、７ａ、７ｂ　主ロープ、　８　かご、　９　釣合い錘、　１０　反らせ車、　１１、１１ｐ、１１ｑ　端末装置、　１２　かごガイドレール、　１３　かごシーブ、　１４　かごガイドシュー、　１５　釣合い錘ガイドレール、　１６　釣合い錘シーブ、　１７　釣合い錘ガイドシュー、　１８　ロッド、　１９　スプリング、　２０　ナット、　２１　交換補助具、　２２　動滑車、　２３　ガイド環、　２４　溝車、　２５　外枠、　２６　軸部、　２７　フック、　２８　ヒンジ、　２９　チェーンブロック、　３０　パイプサポート、　３１　張線器、　３２ｓ、３２ｔ　ドラム、　３３　折返し部、　３４　耳部、　Ｗ、Ｘ、Ｙ、Ｚ　切断箇所

Claims

　第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法であり、
　既設の前記第１ロープの前記第１部分および前記第２部分の各々を前記上部領域において切断する上部切断工程と、
　前記上部領域において既設の前記第１ロープを新設の前記第１ロープに替え、前記上部領域において下方に垂れる折返し部を設ける上部配置工程と、
　前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分に張力を与える張線工程と、
　前記上部配置工程より後に、前記上部領域において新設の前記第１ロープの前記折返し部に動滑車の溝車を掛け、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記第１ロープの前記第１部分および前記第２ロープの前記第１部分に第１ガイド環を、前記第１ロープの前記第２部分および前記第２ロープの前記第２部分に第２ガイド環をそれぞれ掛ける補助具取付け工程と、
　前記上部切断工程および前記補助具取付け工程より後に、前記上部切断工程において切断した既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分を、前記上部領域において前記動滑車に接続する接続工程と、
　前記張線工程および前記接続工程より後に、前記第２ロープの前記第１ガイド環が掛けられた前記第１部分および前記第２ガイド環が掛けられた前記第２部分をガイドとして、既設の前記第１ロープを前記下部領域において回収しながら新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記下部領域まで下ろす設置回収工程と、
　前記設置回収工程より後に、前記下部領域において、新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記動滑車の前記溝車から外して前記下部シーブに掛ける下部配置工程と、
　を備える、エレベーターの主ロープの交換方法。
　第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法であり、
　既設の前記第１ロープの前記第１部分および前記第２部分の各々を前記上部領域において切断する上部切断工程と、
　前記上部領域において既設の前記第１ロープを新設の前記第１ロープに替え、前記上部領域において下方に垂れる折返し部を設ける上部配置工程と、
　前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分に張力を与える張線工程と、
　前記上部配置工程より後に、前記上部領域において新設の前記第１ロープの前記折返し部に動滑車の溝車を掛け、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記動滑車に取り付けられた第１ガイド環に前記第２ロープの前記第１部分を、前記動滑車に取り付けられた第２ガイド環に前記第２ロープの前記第２部分をそれぞれ掛ける補助具取付け工程と、
　前記上部切断工程および前記補助具取付け工程より後に、前記上部切断工程において切断した既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分を、前記上部領域において前記動滑車に接続する接続工程と、
　前記張線工程および前記接続工程より後に、前記第２ロープの前記第１ガイド環が掛けられた前記第１部分および前記第２ガイド環が掛けられた前記第２部分をガイドとして、既設の前記第１ロープを前記下部領域において回収しながら新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記下部領域まで下ろす設置回収工程と、
　前記設置回収工程より後に、前記下部領域において、新設の前記第１ロープの前記折返し部を前記動滑車の前記溝車から外して前記下部シーブに掛ける下部配置工程と、
　を備える、エレベーターの主ロープの交換方法。
　前記設置回収工程は、新設の前記第１ロープの撚りによるねじれを抑えるように、前記第１ロープを繰り出した長さに応じて少なくとも一方の端部を回転させながら前記第１ロープを繰り出す手順を含む、
　請求項１または請求項２に記載のエレベーターの主ロープの交換方法。
　既設の前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分を分割するように前記下部領域において切断する下部切断工程
　を備え、
　前記張線工程は、下部切断工程より後に行われ、前記下部切断工程において前記下部領域で切断された既設の前記第２ロープの前記第１部分側の切断端および前記第２部分側の切断端の各々を引っ張ることで既設の前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分に張力を与える手順を含む、
　請求項１から請求項３のいずれか一項に記載のエレベーターの主ロープの交換方法。
　前記下部シーブは、釣合い錘に設けられたシーブであり、
　前記張線工程は、新設の前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分のうち、前記釣合い錘が上昇するときに上昇する側の部分を引っ張ることで新設の前記第２ロープの前記第１部分および前記第２部分に張力を与える手順を含む、
　請求項１から請求項３のいずれか一項に記載のエレベーターの主ロープの交換方法。
　第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法に用いられる交換補助具であり、
　前記上部領域から下方に垂れる新設の前記第１ロープの折返し部が掛けられる溝車、ならびに、前記上部領域において切断された既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分が接続される接続部、を有する動滑車と、
　前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記第１ロープの前記第１部分および張力が与えられた前記第２ロープの前記第１部分に掛けられる第１ガイド環と、
　前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、前記第１ロープの前記第２部分および張力が与えられた前記第２ロープの前記第２部分に掛けられる第２ガイド環と、
　を備えるエレベーターの主ロープの交換補助具。
　第１ロープおよび第２ロープを含む複数の主ロープの各々の両端部が上部領域において固定されるエレベーターに適用され、前記複数の主ロープの各々が巻き掛けられる下部シーブが前記上部領域の下方の下部領域にあり、かつ、前記複数の主ロープの各々の前記下部シーブから見て一方側の第１部分および前記下部シーブから見て他方側の第２部分が、昇降路において前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された状態で行われる主ロープの交換方法に用いられる交換補助具であり、
　前記上部領域から下方に垂れる新設の前記第１ロープの折返し部が掛けられる溝車、ならびに、前記上部領域において切断された既設の前記第１ロープの、前記上部領域および前記下部領域の間にわたって配置された部分が接続される接続部、を有する動滑車と、
　前記動滑車に取り付けられ、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、張力が与えられた前記第２ロープの前記第１部分に掛けられる第１ガイド環と、
　前記動滑車に取り付けられ、前記折返し部の上下方向の周りの回転を抑えるように、張力が与えられた前記第２ロープの前記第２部分に掛けられる第２ガイド環と、
　を備えるエレベーターの主ロープの交換補助具。