WO2023210583A1 - 冷間鍛造品の製造方法 - Google Patents

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    • C10M169/04Mixtures of base-materials and additives

Abstract

環境負荷を低減しつつも、製造適性が良好な冷間鍛造品の製造方法を提供すること。 被鍛造部材5の表面処理を行う表面処理工程、表面処理工程後に、被鍛造部材5の表面に潤滑剤3を付着させる付着工程、付着工程後に、工具4を使用して被鍛造部材5を冷間鍛造する鍛造工程を含み、表面処理工程が、ウェットブラスト加工による表面処理であり、被鍛造部材5として鉄(Fe)成分を含む被鍛造部材を使用し、潤滑剤3として、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3を使用する。

Description

冷間鍛造品の製造方法
 本発明は、冷間鍛造品の製造方法に関する。
 各種部品の製造方法として採用される冷間鍛造法は、同形のものを量産でき、強度が得られ、加工時間が短く、材料が節減できる等の多くのメリットを有する。冷間鍛造法とは、金型等の工具を用いて、被鍛造部材の一部または全体を加熱せずに圧縮又は打撃する加工法である。このような冷間鍛造法においては、工具からの型離れを良好なものとし、加工時に生じる熱や接触圧力による工具の破損、被鍛造部材そのものの破損を防止する目的で、被鍛造部材の表面に潤滑膜を形成することが行われている。
 ところで、被鍛造部材表面への潤滑膜の定着性が十分でない場合には、被鍛造部材から潤滑膜が剥離しやすくなる。潤滑膜の剥離は、加工時における工具と被鍛造部材との焼き付きの要因となり、歩留まりの低下等、冷間鍛造品を製造するときの製造適性の低下につながる。
 このような状況下、被鍛造部材と潤滑膜との密着性を向上させる種々の試みがなされており、例えば、特許文献1には、成形素材の表面に対して、ボンデ処理等による潤滑用化成皮膜処理を施した後、化成皮膜上に二硫化モリブデン等による固体潤滑皮膜処理を施す冷間鍛造成形方法が提案されている。しかしながら、化成皮膜処理は、廃棄物や、消費エネルギー等の観点において環境負荷が高く、環境負荷を低減しつつも、製造適性が良好な冷間鍛造品の製造方法が望まれている。
特開平9-220633号公報
 本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、環境負荷を低減しつつも、製造適性が良好な冷間鍛造品の製造方法の提供を主たる課題とする。
 本開示の実施の形態に係る冷間鍛造品の製造方法は、被鍛造部材の表面処理を行う表面処理工程、前記表面処理工程後に、前記被鍛造部材の表面に潤滑剤を付着させる付着工程、前記付着工程後に、工具を使用して前記被鍛造部材を冷間鍛造する鍛造工程、を含み、前記表面処理工程が、ウェットブラスト加工による表面処理であり、前記被鍛造部材として、鉄(Fe)成分を含む被鍛造部材を使用し、前記潤滑剤として、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤を使用する。
 上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
 本発明によれば、環境負荷を低減しつつも、製造適性よく冷間鍛造品を製造できる。
本発明の冷間鍛造品の製造方法の一例を示す模式図である。 XAFS測定結果である。 XAFS測定結果である。 XAFS測定結果である。 ボール通し試験装置の概略図である。 最大荷重測定結果である。 リン成分残存量測定結果である。
 以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
 <<冷間鍛造品の製造方法>>
 本発明の実施の形態に係る冷間鍛造品の製造方法(以下、一実施形態の製造方法という)は、表面処理工程、付着工程、及び鍛造工程を含む。以下、各工程について一例を挙げて説明する。図1は、一実施形態の製造方法の一例を示す模式図である。
 <表面処理工程>
 表面処理工程は、被鍛造部材5を表面処理する工程である。一実施形態の製造方法では、表面処理工程において、被鍛造部材5の表面をウェットブラスト加工する。
 (被鍛造部材)
 一実施形態の製造方法で使用する被鍛造部材5は、鉄(Fe)成分を含む。被鍛造部材5は、鉄のみからなるものでもよく、鉄と他の成分との混合物でもよく、鉄と他の成分との合金でもよい。被鍛造部材5としては、S10C、S15C、S45C、S50C、S60C等の炭素鋼、及びSCM435等のクロムモリブデン鋼等を例示できる。一例としての被鍛造部材5は、鉄成分を50質量%より多く含む。
 被鍛造部材5の形状、大きさについて限定はなく、鍛造工程で使用する工具4、及び製造する冷間鍛造品1の大きさ等に応じて適宜決定すればよい。一例としての被鍛造部材5の形状は円柱状である(図1(A)参照)。
 一実施形態の製造方法では、表面処理工程において、被鍛造部材5の表面を粗面化する(図1(B)参照)。換言すれば、表面処理工程において、被鍛造部材5の表面に微細な凹凸を形成する。一実施形態の製造方法では、粗面化による被鍛造部材5の表面積の拡大により、後述する潤滑膜3との密着性を良好なものとできる。また、化成処理を行わないことで、環境負荷を低減できる。
 一実施形態の製造方法では、表面処理工程において、鉄成分を含む被鍛造部材5の活性面を暴露できる。一実施形態の製造方法は、暴露した被鍛造部材5の活性面に、後述する潤滑剤3を付着させることで、被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性を良好なものとできる。
 (ウェットブラスト加工)
 一実施形態の製造方法では、被鍛造部材5の表面の粗面化、及び被鍛造部材5の活性面の暴露を、ウェットブラスト加工で行う。
 本願明細書でいうウェットブラスト加工(ウェットブラスト処理と称してもよい)とは、加工対象物に、スラリー6を圧縮エアで加速させ、スラリーを加工対象物に衝突させて、加工対象物の表面を研削しながら粗面化させる加工法である。一例としてのスラリーは、液体と、砥粒(研磨剤と称してもよい)との混合物である。一例としての液体は、水である。一例としてのスラリーは、スラリーの総質量に対して水を50質量%より多く含む。一例としての砥粒は、ステンレス砥粒である。スラリーは、脱脂剤や、防錆剤等の各種添加剤を含んでもよい。ウェットブラスト加工に限定はなく、従来公知の加工法を適宜選択して使用できる。
 なお、ウェットブラスト加工以外のブラスト加工としては、ショットブラスト加工、エアーブラスト加工、サンドブラスト加工等のドライブラスト加工が知られているが、ドライブラスト加工を行った場合の被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性は、ウェットブラスト加工を行った場合と比較して低いものとなる。ウェットブラスト加工により、被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性を極めて良好なものとできる理由は以下のように推察される。
 ウェットブラスト加工では、液体を含むスラリーを使用することから、被鍛造部材5の活性面を暴露させつつも、当該暴露した活性面をスラリーに含まれる液体で直ちに覆うことができる。つまり、スラリーに含まれる液体を、被鍛造部材5の活性面の保護膜(液体膜と称してもよい)として利用できる。なお、被鍛造部材5の活性面は、大気中で酸化し、その活性は徐々に低下していく傾向にあるものの、暴露した活性面を、保護膜(スラリーに含まれる液体)で保護することにより、被鍛造部材5の活性面の意図しない酸化を抑制でき、被鍛造部材5の活性面の活性を良好に維持できる。被鍛造部材5の活性面の活性を維持できるウェットブラスト加工は、付着工程における被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性の向上を実現できる。
 一例としての製造方法は、ウェットブラスト加工で、被鍛造部材5の表面処理を行うとともに、付着工程を行うまで、被鍛造部材5の表面を覆う液体(スラリーに含まれる液体)を除去しない。
 <付着工程>
 付着工程は、表面処理工程後に、被鍛造部材5に潤滑剤3を付着させる工程である(図1(C)参照)。付着工程は、被鍛造部材5の表面に潤滑膜3を形成する工程である。本願明細書でいう潤滑膜3とは、付着させた潤滑剤3を乾燥させたものを意味する。潤滑剤3の乾燥方法としては、自然乾燥、冷風乾燥、熱風乾燥、及び赤外線等の光加熱を例示できる。また、潤滑剤3の付着前、又は付着後に被鍛造部材5を昇温させて潤滑剤3を乾燥させてもよい。例えば、表面処理工程後に、90℃前後の湯水を使用して、スラリーに含まれる砥粒を洗い流すことで、砥粒の除去とともに、被鍛造部材5を昇温できる。また、電磁誘導加熱等で被鍛造部材5を昇温させてもよい。
 潤滑剤3の付着方法に限定はなく、各種の塗布方法を適宜選択して使用できる。塗布方法としては、スプレー塗布、及びディップコート等を例示できる。潤滑剤3の付着量に限定はない。一例としての潤滑剤3の付着量は、乾燥後の付着重量で2g/m以上である。
 (潤滑剤)
 一実施形態の製造方法で使用する潤滑剤3は、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む。潤滑成分としては、潤滑剤3の分野で従来公知のものを適宜選択して使用できる。潤滑成分としては、水性潤滑剤、及び潤滑油等を例示できる。水性潤滑剤としては、無機金属塩、高分子化合物、ワックス、及び固体潤滑剤等の1つ、又はこれらの混合物を例示できる。潤滑油としては、鉱油、及び合成油等を例示できる。潤滑剤3に含まれる潤滑成分は1種でもよく、2種以上でもよい。
 (極圧添加剤)
 潤滑剤3に含まれる極圧添加剤としては、リン系、塩素系、硫黄系、及び有機モリブデン系を例示できる。これ以外の極圧添加剤を使用してもよい。
 リン系の極圧添加剤としては、リン酸エステル、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛等を例示できる。
 塩素系の極圧添加剤としては、塩素化パラフィン、及びメチルトリクロロステアレート等を例示できる。
 硫黄系の極圧添加剤としては、硫化脂肪エステル、アルキルポリサルファイド、及び硫化オレフィン等を例示できる。
 有機モリブデン系の極圧添加剤としては、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、及びジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等を例示できる。
 潤滑剤3に含まれる極圧添加剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。極圧添加剤の含有量に限定はなく、極圧添加剤を含有しない潤滑剤3を使用した場合と比較して、被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性や、潤滑膜3の潤滑性を良好なものとできる。
 一実施形態の製造方法は、表面処理工程において、ウェットブラスト加工により被鍛造部材5の表面を粗面化させ、被鍛造部材5の活性面を暴露させる。また、一実施形態の製造方法は、ウェットブラストの液体で被鍛造部材5の暴露した活性面を保護し、活性面の酸化を抑制できる。これに加え、一実施形態の製造方法は、潤滑剤3に含まれる極圧添加剤と、表面処理工程において暴露させるとともに、その活性が維持された被鍛造部材5の活性面との作用により、被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性、及び潤滑膜3の潤滑性をより良好なものとできる。
 詳細なメカニズムは現時点では明らかとはなっていないが、一実施形態の製造方法では、(i)表面処理工程により鉄を含む被鍛造部材5の活性面を暴露させ、(ii)暴露した被鍛造部材5の活性面をウェットブラストの液体で保護でき、活性面の活性を維持でき、(iii)活性が維持された被鍛造部材5の活性面と、潤滑剤3に含まれる極圧添加剤の反応で、鉄と極圧添加剤の構成元素とを含む化合物が生成され、この生成された化合物が、凝着抑制効果に作用する、又は生成された化合物が被鍛造部材5の表面と潤滑膜3との親和性を高めることで、上記の効果が発現するものと推察される。特に、活性面の活性を維持できるウェットブラスト加工を行う一実施形態の製造方法は、ウェットブラスト加工以外のブラスト加工を行った場合と比較して、鉄と極圧添加剤の構成元素とを含む化合物を多く生成できる。
 以下、極圧添加剤として、リン系の極圧添加剤を使用した場合を中心に説明する。以下、リン化鉄、リン酸鉄とある記載を、鉄と極圧添加剤の構成元素との反応物と読み替えてもよい。
 リン系の極圧添加剤を含む潤滑剤3を使用した場合に生成される化合物としては、リン酸鉄、及びリン化鉄等を例示できる。これらの化合物の中でも、リン酸鉄は、被鍛造部材5と潤滑膜3との密着性の向上、及び潤滑膜3の潤滑性の向上に大きく寄与するものと推察される。一実施形態の製造方法では、生成されるリン酸鉄により所謂トライボフィルムが形成されているものと推察される。
 また、一実施形態の製造方法では、鍛造工程の前の段階、換言すれば、付着工程により潤滑膜3を形成した段階で、リン酸鉄を生成でき、鍛造工程の初期段階から、被鍛造部材5と潤滑膜3との良好な密着性、及び良好な潤滑性を発現できる。換言すれば、高面圧や、高温といった条件下でなくともリン酸鉄を生成できる。なお、ブラスト加工による表面処理を行わなかった場合には、被鍛造部材5の活性面を暴露させることができず、付着工程により潤滑膜3を形成した段階では、十分な量のリン酸鉄を生成できない。
 <鍛造工程>
 鍛造工程は、付着工程後に、工具4を使用して被鍛造部材5を冷間鍛造する工程である(図1(D)、(E)参照)。本工程を経ることで、冷間鍛造品1を製造できる(図1(F)参照)。一実施形態の製造方法は、冷間鍛造品1の製造時において、工具4と被鍛造部材5との焼き付きを抑制できる。また、被鍛造部材5の表面に形成した潤滑膜3の良好な潤滑性により、工具4、及び被鍛造部材5の破損を抑制できる。図示する形態では、製造された冷間鍛造品1の表面に、潤滑膜3が存在しているが、潤滑膜3を除去する工程を含んでもよい。
 (工具)
 一実施形態の製造方法で使用する工具4に限定はなく、製造する冷間鍛造品1の形状を考慮して決定すればよい。工具4としては、冷間鍛造の分野で従来公知のものを適宜選択して使用できる。一例としての工具4は金型である。図1に示す形態の工具4は、上下一対の金型である。
 本発明の他の実施形態に係る冷間鍛造品の製造方法(以下、他の実施形態の製造方法という)は、表面処理工程、及び鍛造工程を含む。
 他の実施形態の製造方法は、鍛造工程において、工具4と被鍛造部材5との間に、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3を位置させた状態で行う。一実施形態の製造方法が、表面処理工程後の被鍛造部材5に潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3を付着させているのに対し、他の実施形態の製造方法は、鍛造工程を、工具4と、表面処理工程後の鍛造部材との間に、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3を位置させた状態で行っている点において、相違する。この相違点以外は、一実施形態の製造方法で説明した構成を適宜選択して使用できる。
 一例としての鍛造工程は、工具4側に、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3を付着させる。
 一例としての鍛造工程は、工具4と被鍛造部材5との間に、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3を流し込みながら(供給しながら)、又は潤滑剤3を流し込んだ後に行う。
 他の実施形態の製造方法においても、鍛造工程において、被鍛造部材5の暴露した活性面と、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤3とを接しさせることができ、上記で説明した一実施形態の製造方法と同様に、冷間鍛造品1を製造適性よく製造できる。
 <<潤滑剤の付着方法>>
 本発明に係る一実施形態の潤滑剤3の付着方法(以下、一実施形態の付着方法という)は、表面処理工程、付着工程を含む。
 一実施形態の付着方法は、鍛造工程を除いて、上記一実施形態の冷間鍛造品の製造方法と共通する。
 以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
 (サンプル1、2の作製)
 被鍛造部材として、炭素鋼(S10C)を直径10mm、高さ15mmに切削加工したものを準備した。この被鍛造部材に、下表1に示す条件で表面処理を行い、次いで、表面処理後の被鍛造部材を、潤滑成分、及び極圧添加剤(リン系)を含む潤滑剤に浸漬により付着させた。潤滑剤を付着後、潤滑剤を乾燥し、被鍛造部材に潤滑膜を形成することでサンプル1、2を作製した。サンプル1は、表面処理として、ウェットブラスト加工を行ったサンプルであり、サンプル2は、表面処理として、脱脂処理を行ったサンプルである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 (サンプル3、4の作製)
 サンプル3(サンプル4)は、サンプル1(サンプル2)と同様にして潤滑膜を形成し、その後、潤滑膜を形成した被鍛造部材を、上下平坦な型を使用して、厚みが4mm(圧縮率74%)になるまで、油圧プレスにより平均速度10mm/sで圧縮したものである。サンプル3は、サンプル1を圧縮したものである。サンプル4は、サンプル2を圧縮したものである。
 (XAFS測定(X線吸収微細構造解析))
 サンプル1~4のXAFS測定を行った。各サンプルについて、XAFS測定前にアルカリ溶液中で超音波洗浄を行った。XAFS測定は、あいちシンクロトロン光センターBL6N1において、部分蛍光収量法と転換電子収量法にて行った。測定範囲は、約3mm×1mmである。図2、図4(A)は、サンプル1、2のXAFS測定結果であり、図3、図4(B)は、サンプル3、4のXAFS測定結果である。図2~図4における横軸は、吸収エネルギーを示し、縦軸は規格化したX線の吸収量を示している。説明の便宜上、図2、図3では、図の縦方向に位相をずらしている。図2、図3では、潤滑膜、リン酸鉄(FePO)、リン化鉄(FeP、及びFeP)のXAFS測定結果も併せて示している。
 図3に示すように、サンプル3、4のスペクトルにも、潤滑膜とは異なるピークと、潤滑膜にはないプリエッジが見られる。このことは、サンプル3、4の表面に潤滑膜が残存してピークが出現しているのではなく、潤滑膜とは異なる化合物が存在することを示している。リン化鉄、及びリン酸鉄の標準試料と比較すると、サンプル表面の化合物は、それらが混成したスペクトルであることがわかる。サンプル3、4においては、圧縮変形時に生じた熱、及び表面積拡大による活性な活性面の発現による反応で、化合物を形成したものと考えられる。このときに、表面処理として、ウェットブラスト加工を行ったサンプル3では、より高いリン酸鉄のピークが発現している。このことから、両者の化合物には混成割合が変わり、ウェットブラスト加工により、潤滑に有効とされるリン酸鉄が増えていると推察できる。
 図2に示すように、圧縮を行っていないサンプル1、2には、リン化鉄、及びリン酸鉄の混成したスペクトルが確認できたが、サンプル2(脱脂処理)は、圧縮を行ったサンプル4(脱脂処理)と比較して、リン酸鉄のピークが著しく低いものとなっている。一方で、サンプル1は、圧縮を行ったサンプル3と同様のスペクトルを示しており、表面処理によって暴露した滑性面により、高面圧や高温といった条件下でなくても、被鍛造部材と潤滑膜との密着性の向上、及び潤滑に有効とされるリン酸鉄を形成できると推察できる。
 ドライブラスト加工に対するウェットブラスト加工の優位性を確認するべく、下記試験を行った。
 (潤滑性評価)
 図5のボール通し試験装置を準備した。
 図5中の円筒状試験片(Cylindrical specimen)の母材は、S10Cであり、その内壁面に、ウェットブラスト加工、又はドライブラスト加工を施し、その後、内壁面に潤滑剤を塗布したものである。
 ウェットブラスト加工、及びドライブラスト加工で使用した砥粒は、ステンレス砥粒(多角形状、粒径140μm)である。
 ウェットブラスト加工は、投射圧力0.35MPaで行った。ウェットブラスト加工に使用したスラリーは、砥粒:水=15:85の比率(体積比)で配合したものである。
 ドライブラスト加工についても、投射圧力0.35MPaの条件で行った。
 潤滑剤は、リン系極圧添加剤を含み、潤滑剤の付着重量は7g/m(乾燥後)である。
 円筒状試験片の内径はφ14.5mmである。
 使用したボールは、SKH51(焼き入れ・焼き戻し)したものであり、ボール径は17.46mmである。
 なお、ウェットブラスト加工、又はドライブラスト加工、並びに潤滑剤の塗布は、円筒状試験片の母材を二つ割にした状態で行い、潤滑剤の塗布後、これを一体化させ円筒状試験片とした。
 ボールを円筒状試験片にパンチで押し込み、このときの最大荷重をロードセルで測定した。ボールを押し通すときの平均速度は370mm・s-1である。
 最大荷重は、潤滑膜の潤滑性を示す指標であり、最大荷重が小さい方が、潤滑膜の潤滑性が良好であることを示す。
 図6は、ウェットブラスト加工、及びドライブラスト加工を施した円柱状試験片に対する最大荷重のグラフである。
 図6の通り、ウェットブラスト加工を施したものは、ドライブラスト加工を施したものと比較して、最大荷重が小さくなっており、ウェットブラスト加工による潤滑性の優位性を確認できた。
 (密着性評価)
 図7は、円筒試験片のボール擦過面のリン(P)成分の残存量分布について、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行った結果を示すグラフである。リン(P)検出量は潤滑膜の残存量を示す指標であり、リン(P)検出量が大きい方が、潤滑膜の残存量が多いことを示し、潤滑膜の残存量が多いほど、被鍛造部材と潤滑膜との密着性が良好であることを示す。
 P検出量は、試験片口元からの距離が大きくなるにつれて減少する。これは、ボール擦過中に潤滑膜が引き延ばされてして薄くなるためである。
 図7の通り、ウェットブラスト加工を施したものは、ドライブラストを施したものと比較して、リン(P)検出量が大きくなっており、ウェットブラスト加工による被鍛造部材と潤滑膜との密着性の優位性を確認できた。
1・・・冷間鍛造品
3・・・潤滑剤(潤滑膜)
4・・・工具
5・・・被鍛造部材
6・・・スラリー

Claims (1)

  1.  冷間鍛造品の製造方法であって、
     被鍛造部材の表面処理を行う表面処理工程、
     前記表面処理工程後に、前記被鍛造部材の表面に潤滑剤を付着させる付着工程、
     前記付着工程後に、工具を使用して前記被鍛造部材を冷間鍛造する鍛造工程、を含み、
     前記表面処理工程が、ウェットブラスト加工による表面処理であり、
     前記被鍛造部材として、鉄(Fe)成分を含む被鍛造部材を使用し、
     前記潤滑剤として、潤滑成分、及び極圧添加剤を含む潤滑剤を使用する、
     冷間鍛造品の製造方法。
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