WO2023189795A1 - 分散組成物、フッ素系樹脂フィルム、金属張積層板及びその製造方法 - Google Patents

分散組成物、フッ素系樹脂フィルム、金属張積層板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

(A)フッ素系樹脂パウダー、(B)無機フィラーを含有し、さらに、(X)脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー及びアミド系オリゴマーよりなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー、(Y)フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂、のいずれか片方、又は、両方を含有するとともに、成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上である。

Description

分散組成物、フッ素系樹脂フィルム、金属張積層板及びその製造方法
 本発明は、分散組成物、フッ素系樹脂フィルム、金属張積層板及びその製造方法に関する。
 近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
 FPCは、材料となる銅張積層板(CCL)などの金属張積層板の金属層をエッチングして配線加工することによって製造される。現在は、金属張積層板として、金属箔と接する絶縁樹脂層に耐熱性の高いポリイミドを用いたものが汎用されている。しかし、近年の通信機器の高速化に伴い、5G通信、更には6G通信の開発が進んでおり、回路基板材料についても、高速通信規格に対応可能なミリ波レーダー用基板、アンテナ基板などに向けて材料の検討が行われている。そのような材料の中で、フッ素系樹脂は、低い誘電正接を有し、信号の伝送損失の低減が期待できることから注目を浴びている。
 フッ素系樹脂は熱膨張係数が大きいため、低誘電正接という特性を活かしながら、回路基板用の絶縁材料としての要求特性である低熱膨張化を図るため、無機フィラーを配合する検討が行われている(例えば、特許文献1、2)。
特許第6997104号公報 国際公開WO2021/024883号
 フッ素系樹脂パウダーと無機フィラーとを含有する分散液を金属箔上に塗工して得られる塗布膜は、有機溶媒量が低下すると粉落ちや割れが発生しやすい。このような塗布膜の粉落ちや割れは、無機フィラーが高濃度に配合され、かつ、厚みの大きな塗布膜を形成しようとする場合に特に発生しやすくなる。
 また、上記塗布膜をフッ素系樹脂の融点以上の温度で熱処理し、得られた片面金属張積層板のフッ素系樹脂層どうしを向かい合わせにして熱圧着を行うと、金属箔の粗化表面の微細な凸部が折れてしまい、金属箔とフッ素系樹脂層との密着性が低下するという問題があった。
 従って、本発明の目的は、フッ素系樹脂パウダーと無機フィラーを含有する分散組成物であって、塗工後の塗布膜の粉落ちや割れの発生が抑えられ、かつ、熱圧着時に金属箔表面の微細な凸部の折れを抑制して密着性を確保できる分散組成物を提供することである。
 本発明者らは鋭意検討した結果、フッ素系樹脂パウダーと無機フィラーを含有する組成物に、所定の成分を配合することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明の分散組成物は、下記の成分(A)及び成分(B);
 (A)フッ素系樹脂パウダー、
及び、
 (B)無機フィラー、
を含有し、成分(A)及び成分(B)が分散している分散組成物である。
 本発明の分散組成物は、さらに、下記の成分(X)及び成分(Y);
 (X)脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー及びアミド系オリゴマーよりなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(ここで、オリゴマーを構成する炭素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、末端もしくは側鎖に置換基又は反応性基を有していてもよい。)、
 (Y)フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂、
のいずれか片方、又は、両方を含有する。
 そして、本発明の分散組成物は、成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上である。
 本発明の分散組成物は、成分(X)として、含フッ素化合物もしくはカテコール基含有化合物を、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、1重量部以上含んでいてもよい。
 本発明の分散組成物は、成分(A)、成分(X)及び成分(Y)の合計量100重量部に対し、成分(X)及び成分(Y)の合計量が5重量部以上であってもよい。
 本発明の分散組成物は、全固形分量100重量部に対する成分(B)の重量割合が55重量部以上であってもよい。
 本発明の分散組成物は、さらに、下記の成分(F);
(F)有機溶媒、
を含有してもよい。
 本発明のフッ素系樹脂フィルムは、下記の成分(A1)及び成分(B);
 (A1)フッ素系樹脂、
及び、
 (B)無機フィラー、
を含有する。
 本発明のフッ素系樹脂フィルムは、さらに、下記の成分(X)及び成分(Y);
 (X)脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー及びアミド系オリゴマーよりなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(ここで、オリゴマーを構成する炭素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、末端もしくは側鎖に置換基又は反応性基を有していてもよい。)、
 (Y)フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂、
のいずれか片方、又は両方を含有する。
 そして、本発明のフッ素系樹脂フィルムは、成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A1)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上である。
 本発明のフッ素系樹脂フィルムは、全固形分量100重量部に対する成分(B)の重量割合が55重量部以上であってもよい。
 本発明の金属張積層板は、単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の片面もしくは両面に積層されている金属層と、を備えている金属張積層板であって、前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、上記フッ素系樹脂フィルムからなるフッ素系樹脂層である。
 本発明の金属張積層板の製造方法は、絶縁樹脂層の両面に金属層が積層されている金属張積層板を製造する方法である。
 そして、本発明の金属張積層板の製造方法は、以下の工程a及びb;
a)上記分散組成物を、十点平均粗さ(Rzjis)が0.3μm~1.5μmである粗化表面を有する金属箔上に塗工し、得られた塗布膜に熱処理を行うことによって、金属箔上に絶縁樹脂層が形成された片面金属張積層板を作製する工程、
b)2つの前記片面金属張積層板の絶縁樹脂層どうしを向かい合わせに配置して熱圧着を行う工程、
を含んでいる。
 本発明の分散組成物は、成分(A)及び成分(B)に加え、成分(X)及び成分(Y)のいずれか片方又は両方を含有するため、塗工後の塗布膜の粉落ちや割れの発生が抑えられ、かつ、熱圧着時に金属箔表面の微細な凸部の折れを抑制できる。そのため、本発明の分散組成物を使用して得られる金属張積層板は、金属層との密着性が確保され、信頼性が高く、フッ素系樹脂による優れた誘電特性と、無機フィラーの高濃度添加による低熱膨張性との両立が図られており、フッ素系樹脂層の厚膜化も可能である。
 したがって、本発明の分散組成物を使用して得られる金属張積層板は、高速通信規格に対応可能な回路基板材料として有用である。
[分散組成物]
 本発明の一実施の形態に係る分散組成物は、下記の成分(A)及び成分(B);
 (A)フッ素系樹脂パウダー、
及び、
 (B)無機フィラー、
を含有し、さらに、後述する成分(X)及び/又は成分(Y)を含有する。分散組成物中では、成分(A)及び成分(B)が分散している。
成分(A):
 成分(A)はフッ素系樹脂パウダーである。ここで、「パウダー」とは、例えば、平均粒子径(D50)が0.05~100μmの範囲内、好ましくは0.5~50μmの範囲内、より好ましくは0.5~10μmの範囲内の粒子の集合体を意味する。なお、フッ素系樹脂パウダーの平均粒子径(D50)は、例えばレーザー回折・散乱法によって粉粒の粒度分布を測定し、その粉粒の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径を測定することで求めることが可能である。
 フッ素系樹脂は、フッ素原子を含むポリマーであり、その種類は特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、フッ素系樹脂の一部に官能基を有するパーフルオロオレフィンに基づくモノマー単位を含んでいてもよい。官能基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基が好ましい。
 これらのフッ素系樹脂の中でも、低い誘電正接を示すものとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)がより好ましい。
成分(B):
 成分(B)は、無機フィラーであり、その種類は特に限定されないが、フッ素系樹脂フィルムの熱膨張係数を低下させる観点から、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ベリリウム、酸化ニオブ、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、タルク、ガラス、チタン酸バリウム等が好ましい。これらは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱膨張係数が低いものとして、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、ガラス等がより好ましい。
 成分(B)の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、回路基板で使用される場合の絶縁樹脂層の厚みとの比率を考慮するとともに、絶縁樹脂層の穴あけ加工性を担保するの観点から、例えば、0.05~50μmの範囲内、好ましくは0.1~20μmの範囲内がよい。また、比表面積は、特に限定されないが、誘電正接悪化抑制の観点から0.1~20m/gの範囲内、好ましくは0.1~10m/gの範囲内がよい。
 なお、無機フィラーの平均粒子径は、例えばレーザー回折・散乱法によって粉粒の粒度分布を測定し、その粉粒の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径を測定することで求めることが可能であり、比表面積についてはBET法によって測定することが可能である。
 成分(B)の形状は、特に限定されないが、厚み方向と面方向の熱膨張係数の差を低減する観点から、例えば、球状、破砕球状等が好ましい。また、成分(B)は中空状であってもよい。
 成分(B)は、カップリング剤等により表面処理されていることが好ましい。表面処理に用いるカップリング剤としては、例えば3-アミノプロピルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルエトキシシランまたはヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
 本実施の形態の分散組成物は、さらに、成分(X)の特定のオリゴマー及び/又は成分(Y)の特定の樹脂を含有する。成分(X)及び成分(Y)は、いずれも、結着作用及び応力緩和作用を有する成分である。成分(X)及び/又は成分(Y)を配合することによって、塗布膜の粉落ちや割れの発生を防止できるとともに、熱圧着時に金属箔の粗化表面の微細な凸部の折れを抑制し、金属箔との密着性を確保できる。特に、厚さが50μm以上の塗布膜では、厚み方向の膨張・収縮応力差が大きくなりやすいため、成分(X)及び/又は成分(Y)を配合することによって、割れを防止する効果が大きく発揮される。このような結着作用及び応力緩和作用を効果的に発現させるために、成分(X)及び成分(Y)は、有機溶媒に溶解した状態で分散組成物中に含まれていることが好ましい。成分(X)及び成分(Y)は、後述する成分(F)の有機溶媒に直接可溶であってもよいし、成分(F)の有機溶媒以外の任意の有機溶媒に一旦溶解させた状態で、成分(F)の有機溶媒と混合してもよい。
成分(X):
 成分(X)としては、脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー、アミド系オリゴマー等を例示できる。これらのオリゴマーは、低弾性率を示す有機溶媒可溶成分である、という点で共通する特徴を有し、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であることが好ましい。この特徴が結着作用及び応力緩和作用に寄与しているものと推測される。
 また、上記オリゴマーは、構成する炭素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、結着作用及び応力緩和作用を損なわない範囲で、オリゴマーの末端もしくは側鎖に置換基又は反応性基を有していてもよい。ここで、反応性基としては、例えば、マレイミド基、水酸基、グリシジル基、アクリル基、イソシアネート基等の一般的な反応基であれば制限はなく、置換基としても特に制限はない。
 成分(X)のオリゴマーの具体例としては、以下のとおりである。
 炭化水素系オリゴマーとしては、脂肪族炭化水素系オリゴマーでも半芳香族炭化水素系オリゴマーでもよいが、脂肪族炭化水素系オリゴマーであることがより好ましい。脂肪族炭化水素系オリゴマーとして、例えばエチレンポリプロピレンオリゴマーやヘキサフルオロプロペンオリゴマーが好ましく、半芳香族炭化水素系オリゴマーとして、例えばスチレンオリゴマーが好ましい。なお、「半芳香族」とは、脂肪族基と芳香族基の両方を含有する意味である。
 また、アクリル系オリゴマーとしては、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレートが好ましい。
 また、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー、アミド系オリゴマーとしては、公知のものを使用できる。
 以上のオリゴマーは2種以上を併用することができる。
 また、成分(X)のオリゴマーは、フッ素系樹脂パウダーに対する分散作用を有する含フッ素化合物もしくはカテコール基含有化合物であってもよい。この場合、結着作用及び応力緩和作用を発現するための量は、分散作用を発現するための量よりも多く必要である。
 成分(X)のオリゴマーの分子量は、特に限定する意味ではないが、有機溶媒への溶解性や結着作用の観点から、例えば数平均分子量が1000~30000の範囲内が好ましく、1000~10000の範囲内であることがより好ましい。また、成分(X)のオリゴマーは、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド等の極性有機溶媒に可溶であることが好ましい。
成分(Y):
 成分(Y)は、フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂(このような貯蔵弾性率を有する樹脂を「低弾性樹脂」と記すことがある)である。ここで、「フィルム化したときに」とは、低弾性樹脂を単独でフィルム状態にすることを意味する。低弾性樹脂は、フィルム状態で50℃、及び、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率が十分に低いことから、成分(A)及び成分(B)を用いて形成したフッ素系樹脂フィルムに対して優れた結着作用及び応力緩和作用を奏する。このような観点から、50℃での貯蔵弾性率が、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは500MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が、好ましくは500MPa以下、より好ましくは100MPa以下である樹脂を用いることがよい。
 低弾性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、スチレン樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、スチレン-マレイミド共重合体、マレイミド-ビニル化合物共重合体、又は(メタ)アクリル共重合体、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂及びシアネートエステル樹脂等の樹脂が挙げられ、これらの中から、上記貯蔵弾性率を満たすものを選択したり、あるいは、満たすように設計したりして使用することができる。これらの低弾性樹脂は2種以上を併用することができる。上記の低弾性樹脂の中でも、低弾性と耐熱性の両方の性質を有しているという観点から、熱可塑性ポリイミド、シリコーン樹脂などが好ましく、原料として脂肪族ジアミンを使用するポリイミドがより好ましい。
 また、上記低弾性樹脂の重量平均分子量は、特に限定する意味ではないが、溶剤への溶解性の観点から、例えば数平均分子量が10000~300000の範囲内が好ましく、10000~100000の範囲内であることがより好ましい。また、成分(Y)の低弾性樹脂は、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、N,N‐ジメチルアセトアミド等の極性有機溶媒に可溶であることが好ましい。
 本実施の形態の分散組成物は、成分(X)及び成分(Y)のいずれか片方のみを含んでいてもよいが、塗工後の塗布膜の粉落ちや割れの抑制とプレス後の密着性の双方を向上させる観点から、両方を含有することが好ましい。
 本実施の形態の分散組成物は、任意成分として、成分(F)の有機溶媒を含有してもよい。成分(F)の有機溶媒の種類は特に限定されないが、25℃で液状である有機溶媒が好ましい。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン等が好ましい。これらの中でも、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の高沸点溶媒がより好ましい。
 分散組成物は、任意成分として、例えば、分散剤、有機フィラー、硬化剤、可塑剤、エラストマー、カップリング剤、顔料、難燃剤等を含有することができる。
(組成比)
 分散組成物中の成分(A)のフッ素系樹脂パウダーの重量割合は、フィルム化したときの誘電正接を下げ、高周波信号伝送への対応を図る観点から、分散組成物の全固形分量100重量部に対し、15~40重量部の範囲内であることが好ましく、20~35重量部の範囲内であることがより好ましい。なお、分散組成物中の固形分とは、溶媒を除いた成分の合計を意味する(本発明において同様である)。
 また、分散組成物中の成分(B)の無機フィラーの重量割合は、フィルム化したときの熱膨張係数(CTE)を下げ、回路基板へ適用したときの寸法安定性を担保する観点から、全固形分量100重量部に対し、55重量部以上であることが好ましく、55~75重量部の範囲内であることがより好ましく、60~70重量部の範囲内であることがさらに好ましい。成分(B)の重量割合が、全固形分量100重量部に対して55重量部未満であるとフィルム化したときの熱膨張係数(CTE)の制御が不十分となる。
 また、分散組成物中の成分(X)のオリゴマー及び成分(Y)の低弾性樹脂の合計量は、結着作用及び応力緩和作用を効果的に発現させる観点から、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上であり、3.5~14.0重量部の範囲内であることが好ましく、4.5~11.5重量部の範囲内であることがより好ましい。成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部未満であると、塗布膜の粉落ちや割れの発生を防止する効果や、熱圧着時に金属箔の粗化表面の微細な凸部の折れを抑制する効果が十分に得られない。一方、成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して14.0重量部を超える場合は、CTE制御が困難となる懸念がある。
 また、分散組成物は、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(X)としての含フッ素化合物もしくはカテコール基含有化合物を1重量部以上含むことが好ましく、1~10重量部の範囲内で含むことがより好ましい。含フッ素化合物及びカテコール基含有化合物は、結着作用及び応力緩和作用に加えて成分(A)及び成分(B)に対する分散作用を有することから、これらを1重量部以上配合することによって、良好な分散性とともに結着作用及び応力緩和作用が得られる。
 また、分散組成物中の成分(X)及び成分(Y)の合計量は、成分(A)、成分(X)及び成分(Y)の合計量100重量部に対し、5重量部以上であることが好ましく、10~50重量部の範囲内であることがより好ましい。成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A)、成分(X)及び成分(Y)の合計量100重量部に対して5重量部以上であることによって、フィルム化したときに、成分(B)の無機フィラーを除く樹脂マトリックスの弾性率を低下させることが可能となり、フィルムの熱膨張に関して、弾性率が高い成分(B)の無機フィラーの影響力を高めることが可能となる。また、樹脂マトリックスの弾性率の低下により、加熱、冷却時における膨張収縮応力を低減し、熱圧着時に金属箔の粗化部位での応力集中を緩和することができる。
 また、分散組成物中に成分(F)の有機溶媒を含有する場合は、良好な分散性や良好な塗工性を得るために、分散組成物の全量に対して、成分(A)及び成分(B)の合計量が50~80重量%の範囲内となるようにすることが好ましく、60~70重量%の範囲内となるようにすることがより好ましい。
(粘度)
 分散組成物の粘度は特に限定されないが、例えば30μm以上の厚膜塗工を目的とする場合は、500~50000cPの範囲内であることが好ましく、500~30000cPの範囲内がより好ましい。粘度が500cP未満では、分散組成物を任意の基材上にキャストするときに、流動性が高くなりすぎるため、厚膜での塗膜形成が困難となる。特に、高周波伝送用途向けに30~150μmの範囲内の比較的厚い塗膜の形成が不可能となる。また、粘度が500cP未満では、固形分の沈降や凝集が生じることがある。一方、分散組成物の粘度が50000cPを超える場合は、粘性が高すぎてキャストによる塗膜形成が困難となる。
 なお、分散組成物の粘度は、E型粘度計を用い、温度25℃で測定することができる。
(分散組成物の調製)
 分散組成物は、成分(A)及び成分(B)と、成分(X)及び成分(Y)のいずれか片方又は両方を混合することによって製造できる。各成分の混合は、成分(F)の有機溶媒中で行うことが好ましい。また、成分(X)及び成分(Y)は任意の有機溶媒に溶解させた状態で配合することが好ましい。
[フッ素系樹脂フィルム]
 本実施の形態のフッ素系樹脂フィルムは、上記分散組成物をフィルム状に加工したものである。
 すなわち、フッ素系樹脂フィルムは、下記の成分(A1)及び成分(B);
 (A1)フッ素系樹脂、
 (B)無機フィラー、
を含有する。フッ素系樹脂フィルムは、さらに、下記の成分(X)及び成分(Y);
 (X)脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー及びアミド系オリゴマーよりなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(ここで、オリゴマーを構成する炭素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、末端もしくは側鎖に置換基又は反応性基を有していてもよい。)
 (Y)フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂、
のいずれか片方、又は両方を含有する。フッ素系樹脂フィルムは、成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A1)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上である。
 本実施の形態のフッ素系樹脂フィルムは、実質的に有機溶媒を含まない固形のフィルム状であり、分散組成物中の成分(A)のフッ素系樹脂パウダーが、無定形となって成分(A1)のフッ素系樹脂(マトリックス樹脂の主成分)となっている以外は、分散組成物と同様の組成である。なお、フッ素系樹脂フィルムのマトリックス樹脂は、成分(A1)のフッ素系樹脂とともに成分(X)及び/又は成分(Y)を含有する。
 また、本実施の形態のフッ素系樹脂フィルムは、全固形分量100重量部に対する成分(B)の重量割合が55重量部以上であることが好ましく、55~75重量部の範囲内であることがより好ましく、60~70重量部の範囲内であることがさらに好ましい。成分(B)の重量割合が、全固形分量100重量部に対して55重量部未満であるとフッ素系樹脂フィルムの熱膨張係数(CTE)の制御が不十分となる。
 フッ素系樹脂フィルムは、温度24~26℃、湿度45~55%の条件のもと24時間調湿後に、スプリットシリンダ共振器により測定される60GHz以下における誘電正接(Df)が好ましくは0.0025以下であり、より好ましくは0.0020未満である。また、同条件で測定される比誘電率(Dk)が好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下であることがよい。誘電正接(Df)及び比誘電率(Dk)が上記数値を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の増大に繋がり、周波数がGHz帯域(例えば1~80GHz)の高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
 また、フッ素系樹脂フィルムの熱膨張係数(CTE)は、寸法安定性を確保するため、10~60ppm/Kの範囲内が好ましく、15~30ppm/Kの範囲内であることがより好ましい。
 フッ素系樹脂フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、回路基板の絶縁樹脂層として用いる場合は、高周波信号伝送への適用を考慮して、好ましくは30~150μmの範囲内、より好ましくは75~150μmの範囲内がよい。
 なお、本実施の形態のフッ素系樹脂フィルムには、任意の樹脂層が積層されていてもよい。
[金属張積層板]
 本実施の形態の金属張積層板は、単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の片面もしくは両面に積層されている金属層と、を備えており、絶縁樹脂層の少なくとも1層が、上記フッ素系樹脂フィルムからなるフッ素系樹脂層である。本実施の形態の金属張積層板は、片面金属張積層板でもよいし、両面金属張積層板でもよい。
 金属層の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
 金属層の表面粗度は、特に限定されるものではないが、フッ素系樹脂層との密着性を担保と導体損失の低減を両立させる観点から、十点平均粗さ(Rzjis)が0.3μm~1.5μmの範囲内である粗化表面を有することが好ましい。
 金属層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。
 金属箔として銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよく、例えば厚みが5μm以下の薄銅箔とキャリア箔の間に離形層を形成したピーラブル銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
 金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
 金属張積層板におけるフッ素系樹脂層の構成及び厚みは、上記フッ素系樹脂フィルムと同様である。なお、本実施の形態の金属張積層板は、フッ素系樹脂層以外の任意の樹脂層を含むことができる。
 本実施の形態の金属張積層板は、回路基板材料として好ましく用いられる。すなわち、金属張積層板の片側または両側の金属層をエッチングなどにより配線回路加工することによって、片面回路基板又は両面回路基板などの回路基板を製造することができる。
[フッ素系樹脂フィルム及び金属張積層板の製造方法]
 分散組成物を使用してフッ素系樹脂フィルムを製造する方法については特に限定されないが、以下の方法を例示できる。
(塗布膜形成工程)
 本工程では、分散組成物を任意の基材に塗布して塗布膜を形成する。
 すなわち、任意の基材の上に、熱処理工程後に所望の厚みとなるように、分散組成物を塗工し、乾燥させることによって、基材上に塗布膜を形成する。使用する基材としては、特に限定されないが、耐熱性を有する素材として、例えば銅箔などの金属箔、接着層付き銅箔やポリイミドフィルムを用いることが好ましい。分散組成物を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
(熱処理工程)
 本工程では、塗布膜形成工程で得た塗布膜を熱処理することによりフッ素系樹脂層を形成する。
 すなわち、塗布膜を基材とともに熱処理し、成分(A)のフッ素系樹脂パウダーを溶融させた後、冷却して固化させることによってフィルム化し、基材上にフッ素系樹脂層を形成する。フッ素系樹脂パウダーを溶融させるための熱処理温度としては、フッ素系樹脂の融点以上であればよく、上限は樹脂種に応じて適宜定めることができるが、例えば融点より10℃~80℃の範囲内で高い温度とすることが好ましい。
 複数のフッ素系樹脂層を形成する場合は、分散組成物を塗布、乾燥する毎に熱処理してもよいし、分散組成物を塗布、乾燥する工程を複数回繰り返した後、一括して熱処理してもよい。
 必要に応じて基材を剥離することによって、フッ素系樹脂フィルムを得ることができる。
 また、本製法では、基材として金属箔を用いることによって、フッ素系樹脂層と金属層とを備えた金属張積層板を製造できる。例えば、基材として金属箔を用いる場合、そのまま金属層の片面にフッ素系樹脂層を有する片面金属張積層板となる。また、基材として金属箔を用いるとともに、フッ素系樹脂フィルムの基材とは反対側の面に別の金属層を形成することによって、両面金属張積層板とすることも可能である。
 また、金属層とフッ素系樹脂層とを有する片面金属張積層板どうしを貼り合わせることによって、両面金属張積層板を製造することも可能である。
 例えば、以下の工程a及びb;
a)分散組成物を、十点平均粗さ(Rzjis)が0.3μm~1.5μmである粗化表面を有する金属箔上に塗工し、得られた塗布膜に熱処理を行うことによって、金属箔上に絶縁樹脂層が形成された片面金属張積層板を作製する工程、
b)2つの前記片面金属張積層板の絶縁樹脂層どうしを向かい合わせに配置して熱圧着を行う工程、
を実施することによって、両面金属張積層板を製造することができる。
 工程bの熱圧着条件としては、例えばフッ素系樹脂の融点より10℃~80℃の範囲内で高い温度とすることが好ましい。圧力としては、例えば2~12MPaの範囲内とすることが好ましい。本発明の分散組成物を使用することによって、工程aでは、塗布膜の粉落ちや割れの発生を抑制できるとともに、工程bでは、熱圧着時に金属箔の粗化表面の微細な凸部の折れを抑制し、金属層との密着性を確保できる。
 本実施の形態の金属張積層板は、主にFPC、リジッド・フレックス回路基板などの回路基板材料として有用である。
[回路基板]
 以上のようにして得られる本実施の形態の金属張積層板の金属層をエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面回路基板又は両面回路基板などの回路基板を製造することができる。
 以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
 E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。
[ポリイミドの重量平均分子量(Mw)の測定]
 重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC-8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた。
[貯蔵弾性率の測定]
5mm×70mmのサイズのフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:TAインスツルメント社製、商品名;RSA G2)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分で昇温し、50℃及び180℃から260℃での貯蔵弾性率の最大値を求めた。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
 3mm×20mmのサイズにカットしたフッ素系樹脂フィルムを、サーモメカニカルアナライザー(日立ハイテクテクノロジー社(旧セイコーインスツルメンツ社製)、商品名;TMA/SS6100)にセットした。この際、装置治具間の距離(測定有効長さ)は15mmとした。次に5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から260℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
[誘電正接の測定]
 ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;E8363C)及びスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用いて、周波数20GHzにおけるフィルムの誘電正接(Df)を測定した。
 また、上記と同様にスプリットシリンダ共振器(SCR共振器)を用いて60GHzにおけるフィルムの誘電正接(Df)を測定した。
 なお、調湿時のDfは、測定に使用したフィルムを温度;22~24℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置した後に測定したものである。
[銅箔の表面粗度の測定]
 銅箔の表面粗度は、AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名;Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名;TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m)を用いて、タッピングモードで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲で測定し、十点平均粗さ(Rzjis)を求めた。
[ピール強度の測定]
 両面銅張積層板の一方の面の銅箔を10mm間隔でフッ素系樹脂の塗工方向に幅1mmに回路加工した後、幅;8cm×長さ;4cmに切断した。この際、もう一方の面の銅箔は回路加工等せずに全面に残した。ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、切断した測定サンプルの銅箔を全面に残した面を両面テープによりアルミ板に固定し、回路加工された銅箔を180°方向に50mm/分の速度で剥離していき、ポリイミド層から10mm剥離したときの中央値強度を求め、ピール強度とした。
合成例及び分散組成物作製例に用いた化合物を以下に示す。
フッ素系樹脂パウダー(1):Fluon+(Fluonは登録商標) EA-2000PW 10:AGC製フッ素系樹脂パウダー、平均粒子径(D50);2~3μm、融点;300℃
シリカフィラー(1):SC70-2:日鉄ケミカル&マテリアル製非晶質シリカフィラー、平均粒子径(D50);11.7μm、比表面積1.1m/gに対して、シリカ重量の0.12重量%のヘキサメチルジシラザン処理を行ったもの
オリゴマー(1):フタージェント710FL:ネオス製ノニオン系フッ素含有オリゴマー(オリゴマー成分;50重量%、酢酸エチル;50重量%)
オリゴマー(2):U-103:ユニケム社製、親水基・親油性基含有オリゴマー(オリゴマー成分;30重量%、2-プロパノール;70重量%)
オリゴマー(3):サーフロンS-651:AGCセイミケミカル社製、ノニオン系オリゴマー(オリゴマー成分;99重量%以上)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;205mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
(合成例1)
<可溶性ポリイミドワニス(1)の調製>
 窒素導入管、攪拌機、熱電対、ディーンスタークトラップ、冷却管を付した500mLの4ッ口フラスコに、45.11gのBTDA(0.139モル)、75.08gのDDA(0.141モル)、168gのNMP及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、留出する水及びキシレンを系外に除去した。その後、100℃まで冷却し、112gのキシレンを加え撹拌し、更に30℃まで冷却することでイミド化を完結した可溶性ポリイミドワニス(1)(固形分;31.0重量%、重量平均分子量;75,700)を調製した。
 可溶性ポリイミドワニス(1)を基材に塗布し、乾燥した後、剥離して得られたポリイミドフィルムの貯蔵弾性率を測定したところ、50℃での貯蔵弾性率が26MPaであり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が6.5MPaであった。
(分散組成物作製例1)
 プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業株式会社)のT.K.HIVIS MIX(型式2P-03)の容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を70.4g、シリカフィラー(1)を169.6g、オリゴマー(1)を18g(オリゴマー成分9g)及びDMAcを26.7g加え、20rpmで5分間撹拌した。その後装置を停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。前記の撹拌と装置停止後の撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを3回実施した。
 次に、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の全量に対する割合を微調整するため、DMAcを混練物に少量加え、30rpmで5分間撹拌し、混錬物の状態確認を行った。この作業を混練物に粉状部分がない塊状になるまで繰り返し実施した。なお本検討では、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して81重量%となった際に塊状となり、混錬物の塊内部にも粉状部分は観察されなかった。前記塊状になった状態から30rpmでの固練りを開始し、15分間隔で停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。この作業を計4回、合計60分間の固練りを行い、分散組成物1-1を得た。分散組成物1-1は、流動性がなく粘度の測定ができないため、「固体」と判断した。
 その後、分散組成物1-1について、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して70重量%となるようにDMAcで段階的な希釈及び撹拌を行い、100rpmで測定時の粘度620cPの分散組成物1-2を得た。
(分散組成物作製例2)
 プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業株式会社)のT.K.HIVIS MIX(型式2P-03)の容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を70.4g、シリカフィラー(1)を169.6g、オリゴマー(1)を24g(オリゴマー成分12g)及びDMAcを26.7g加え、20rpmで5分間撹拌した。その後装置を停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。前記の撹拌と装置停止後の撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを3回実施した。
 次に、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の全量に対する割合を微調整するため、DMAcを混練物に少量加え、30rpmで5分間撹拌し、混錬物の状態確認を行った。この作業を混練物に粉状部分がない塊状になるまで繰り返し実施した。なお本検討では、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して81重量%となった際に塊状となり、混錬物の塊内部にも粉状部分は観察されなかった。前記塊状になった状態から30rpmでの固練りを開始し、15分間隔で停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。この作業を計4回、合計60分間の固練りを行い、分散組成物2-1を得た。分散組成物2-1は、流動性がなく粘度の測定ができないため、「固体」と判断した。
 その後、分散組成物2-1について、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して70重量%となるようにDMAcで段階的な希釈及び撹拌を行い、100rpmで測定時の粘度1080cPの分散組成物2-2を得た。
(分散組成物作製例3)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を16.3g、シリカフィラー(1)を43.6g、可溶性ポリイミドワニス(1)を3.0g、オリゴマー(1)を6g(オリゴマー成分3g)、DMAcを14.8g、及びキシレンを9.9g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度250cPの分散組成物3を得た。
(分散組成物作製例4)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を12.7g、シリカフィラー(1)を43.6g、可溶性ポリイミドワニス(1)を9.0g、オリゴマー(1)を5.6g(オリゴマー成分2.8g)、DMAcを12.0g、及びキシレンを8.0g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度570cPの分散組成物4を得た。
(分散組成物作製例5)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を9.0g、シリカフィラー(1)を43.5g、可溶性ポリイミドワニス(1)を15.0g、オリゴマー(1)を5.3g(オリゴマー成分2.65g)、DMAcを9.1g、及びキシレンを6.1g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度1430cPの分散組成物5を得た。
(分散組成物作製例6)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を20.0g、シリカフィラー(1)を38.4g、オリゴマー(1)を5.8g(オリゴマー成分2.9g)及びDMAcを19.2g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度1480cPの分散組成物6を得た。
(分散組成物作製例7)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を14.0g、シリカフィラー(1)を38.3g、可溶性ポリイミドワニス(1)を9.9g、オリゴマー(1)を5.2g(オリゴマー成分2.6g)DMAcを10.7g、及びキシレンを7.1g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度1270cPの分散組成物7を得た。
(分散組成物作製例8)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を20.0g、シリカフィラー(1)を31.1g、オリゴマー(1)を5.1g(オリゴマー成分2.55g)及びDMAcを16.8g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度1370cPの分散組成物8を得た。
(分散組成物作製例9)
 310mlのポリプロピレン容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を14.1g、シリカフィラー(1)を31.2g、可溶性ポリイミドワニス(1)を10.0g、オリゴマー(1)を4.5g(オリゴマー成分2.25g)DMAcを8.8g、及びキシレンを5.9g加えたサンプルを2つ作製した。次に前記サンプル2つを自公転撹拌機[写真化学(株)SK-350G]にセットし、公転1060rpm、自転1060rpmの条件で4分間撹拌し、100rpmで測定時の粘度2750cPの分散組成物9を得た。
(分散組成物作製例10)
 プライミクス株式会社(旧社名:特殊機化工業株式会社)のT.K.HIVIS MIX(型式2P-03)の容器内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を70.4g、シリカフィラー(1)を169.6g、オリゴマー(1)を7.2g(オリゴマー成分3.6g)及びDMAcを26.7g加え、20rpmで5分間撹拌した。その後装置を停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。前記の撹拌と装置停止後の撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを3回実施した。
 次に、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の全量に対する割合を微調整するため、DMAcを混練物に少量加え、30rpmで5分間撹拌し、混錬物の状態確認を行った。この作業を混練物に粉状部分がない塊状になるまで繰り返し実施した。なお本検討では、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して81重量%となった際に塊状となり、混錬物の塊内部にも粉状部分は観察されなかった。前記塊状になった状態から30rpmでの固練りを開始し、15分間隔で停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。この作業を計4回、合計60分間の固練りを行い、分散組成物10-1を得た。分散組成物10-1は、流動性がなく粘度の測定ができないため、「固体」と判断した。
 その後、分散組成物10-1について、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して70重量%となるようにDMAcで段階的な希釈及び撹拌を行い、100rpmで測定時の粘度280cPの分散組成物10-2を得た。
 分散組成物1-2、2-2、分散組成物3~9及び分散組成物10-2における成分(A)及び(B)の合計100重量部に対する成分(X)及び成分(Y)の重量比率を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
<実施例1>
銅箔(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の十点平均粗さ(Rzjis);0.6μm)の上に、分散組成物1-2を塗工後、熱風オーブンを用いて80℃で1分、120℃で3分の乾燥処理を行った。この際乾燥処理を行った分散組成物1-2の塗布膜に割れは見られなかった。次に280℃で3分、340℃で6分の熱処理を行い、片面銅張積層板1を得た。得られた片面銅張積層板1の誘電体層に割れや凝集物等の外観上の異常は見られなかった。なお、乾燥処理後の熱処理は大気雰囲気下で実施した。
 次に片面銅張積層板1を2枚準備し、樹脂面同士を重ね合わせたものをバッチプレス機に投入後、真空下で360℃まで加熱し、360℃に到達後、5分間、8MPaの圧力でプレスを実施することで、誘電体層の厚み127μmの両面銅張積層板1を得た。得られた両面銅張積層板1について、片面の銅箔を1mm配線状に加工し、ピール強度の測定をした結果、0.2kN/mであった。
続いて、塩化第二鉄水溶液を用いて両面銅張積層板1の銅箔をエッチング除去して、フッ素系樹脂フィルム1を調製した。
 フッ素系樹脂フィルム1のCTEは51.4ppm/Kであった。また、SPDR法により20GHzで測定した誘電正接及びSCR法により60GHzで測定した誘電正接は、いずれも0.0020未満であった。その結果を表2に示す。
<実施例2~実施例9及び比較例1>
 実施例1と同様にして分散組成物2-2、分散組成物3~分散組成物9及び分散組成物10-2について、片面銅張積層板2~10、両面銅張積層板2~10及びフッ素系樹脂フィルム2~10を作製し、評価を実施した。なお、実施例2及び比較例1については、乾燥処理後の熱処理は大気雰囲気下で実施し、実施例3~実施例9は窒素雰囲気で実施した。その結果を表2、表3に示す。
 なお、乾燥処理後の塗布膜の割れの発生有無については、割れが発生しなかったものを○(良)、割れが発生したものを×(不良)とした。同様に熱処理後の誘電体層の外観の異常(割れや凝集物)の発生がなかったものを○(良)、外観の異常が発生したものを×(不良)とした。また、SPDR法により20GHzで測定した誘電正接及びSCR法により60GHzで測定した誘電正接がいずれも0.0020未満のものを○(良)とした。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
(分散組成物作製例11)
 プライミクス社(旧:特殊機化工業社)製のT.K.HIVIS MIX(型式2P-03)の容器(以下、容器1)内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を70.4g、シリカフィラー(1)を169.6g、オリゴマー(2)を40g(オリゴマー成分12g)及びDMAcを10.7g加え、20rpmで5分間撹拌した。その後装置を停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。前記の撹拌と装置停止後の撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを3回実施した。
 次に、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の全量に対する割合を微調整するため、DMAcを混練物に少量加え、30rpmで5分間撹拌し、混錬物の状態確認を行った。この作業を混練物に粉状部分がない塊状になるまで繰り返し実施した。
 ここで、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して81重量%となった際に塊状となり、混錬物の塊内部にも粉状部分は観察されなかった。
 前記塊状になった状態から30rpmでの固練りを開始し、15分間隔で停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。この作業を計4回、合計60分間の固練りを行い、分散組成物11-1を得た。分散組成物11-1は、流動性がなく粘度の測定ができないため、「固体」と判断した。
 その後、分散組成物11-1について、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して70重量%となるようにDMAcで段階的な希釈及び撹拌を行い、100rpmで測定時の粘度1180cPの分散組成物11-2を得た。
(分散組成物作製例12)
 容器1内に、フッ素系樹脂パウダー(1)を70.4g、シリカフィラー(1)を169.6g、オリゴマー(3)を24g(分散剤成分24g)及びDMAcを40.7g加え、20rpmで5分間撹拌した。その後装置を停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。前記の撹拌と装置停止後の撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを3回実施した。
 次に、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の全量に対する割合を微調整するため、DMAcを混練物に少量加え、30rpmで5分間撹拌し、混錬物の状態確認を行った。この作業を混練物に粉状部分がない塊状になるまで繰り返し実施した。
 ここで、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して81重量%となった際に塊状となり、混錬物の塊内部にも粉状部分は観察されなかった。
 前記塊状になった状態から30rpmでの固練りを開始し、15分間隔で停止し、撹拌翼及び容器側壁の混練物のかき取りを実施した。この作業を計4回、合計60分間の固練りを行い、分散組成物12-1を得た。分散組成物12-1は、流動性がなく粘度の測定ができないため、「固体」と判断した。
 その後、分散組成物12-1について、フッ素系樹脂パウダー(1)とシリカフィラー(1)の合計割合が全量に対して70重量%となるようにDMAcで段階的な希釈及び撹拌を行い、100rpmで測定時の粘度1420cPの分散組成物12-2を得た。
 分散組成物11-2及び12-2における成分(A)及び(B)の合計100重量部に対する成分(X)及び成分(Y)の重量比率を表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
<実施例10及び実施例11>
 実施例1と同様にして分散組成物11-2及び分散組成物12-2について、片面銅張積層板11及び12、両面銅張積層板11及び12及びフッ素系樹脂フィルム11及び12を作製し、評価を実施した。なお、いずれも乾燥処理後の熱処理については窒素雰囲気で実施した。結果を表5に示す。
 なお、乾燥処理後の塗布膜の割れの発生有無、外観上の異常の発生の有無及び誘電正接の評価は、前述のとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
 本出願は、2022年3月29日に日本国で出願された特願2022-054476号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容をここに援用する。

 

Claims (9)

  1.  下記の成分(A)及び成分(B);
     (A)フッ素系樹脂パウダー、
    及び、
     (B)無機フィラー、
    を含有し、成分(A)及び成分(B)が分散している分散組成物であって、
     さらに、下記の成分(X)及び成分(Y);
     (X)脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー及びアミド系オリゴマーよりなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(ここで、オリゴマーを構成する炭素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、末端もしくは側鎖に置換基又は反応性基を有していてもよい。)、
     (Y)フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂、
    のいずれか片方、又は、両方を含有するとともに、成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上であることを特徴とする分散組成物。
  2.  成分(X)として、含フッ素化合物もしくはカテコール基含有化合物を、成分(A)及び成分(B)の合計量100重量部に対して、1重量部以上含む請求項1に記載の分散組成物。
  3.  成分(A)、成分(X)及び成分(Y)の合計量100重量部に対し、成分(X)及び成分(Y)の合計量が5重量部以上である請求項1に記載の分散組成物。
  4.  全固形分量100重量部に対する成分(B)の重量割合が55重量部以上である請求項1に記載の分散組成物。
  5.  さらに、下記の成分(F);
    (F)有機溶媒、
    を含有する請求項1に記載の分散組成物。
  6.  下記の成分(A1)及び成分(B);
     (A1)フッ素系樹脂、
     (B)無機フィラー、
    を含有し、
     さらに、下記の成分(X)及び成分(Y);
     (X)脂肪族もしくは半芳香族である炭化水素系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、イミド系オリゴマー、エステル系オリゴマー及びアミド系オリゴマーよりなる群から選ばれる1種以上のオリゴマー(ここで、オリゴマーを構成する炭素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよく、さらに、末端もしくは側鎖に置換基又は反応性基を有していてもよい。)
     (Y)フィルム化したときに、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である樹脂、
    のいずれか片方、又は両方を含有するとともに、
     成分(X)及び成分(Y)の合計量が、成分(A1)及び成分(B)の合計量100重量部に対して3.5重量部以上であるフッ素系樹脂フィルム。
  7.  全固形分量100重量部に対する成分(B)の重量割合が55重量部以上である請求項6に記載のフッ素系樹脂フィルム。
  8.  単層又は複数層からなる絶縁樹脂層と、
     前記絶縁樹脂層の片面もしくは両面に積層されている金属層と、
    を備えている金属張積層板であって、
     前記絶縁樹脂層の少なくとも1層が、請求項6又は7に記載のフッ素系樹脂フィルムからなるフッ素系樹脂層であることを特徴とする金属張積層板。
  9.  絶縁樹脂層の両面に金属層が積層されている金属張積層板を製造する方法であって、
     以下の工程a及びb;
    a)請求項1から5のいずれか1項に記載の分散組成物を、十点平均粗さ(Rzjis)が0.3μm~1.5μmである粗化表面を有する金属箔上に塗工し、得られた塗布膜に熱処理を行うことによって、金属箔上に絶縁樹脂層が形成された片面金属張積層板を作製する工程、
    b)2つの前記片面金属張積層板の絶縁樹脂層どうしを向かい合わせに配置して熱圧着を行う工程、
    を含むことを特徴とする金属張積層板の製造方法。
     
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