JP2022011017A - パウダー分散液及び積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと所定のフッ素系液状分散媒と、非フッ素系液状分散媒とを所定の割合で含み、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない、分散安定性とハンドリング性とに優れたパウダー分散液の提供。【解決手段】本発明のパウダー分散液は、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、表面張力がテトラフルオロエチレン系ポリマーの表面張力±10mN/mの範囲にあるフッ素系液状分散媒と、非フッ素系液状分散媒とを含有する。フッ素系液状分散媒の含有量と非フッ素系液状分散媒の含有量との合計に対するフッ素系液状分散媒の含有量の比率は1~25質量%である。また、かかるパウダー分散液は、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない。【選択図】なし

Description

本発明は、パウダー分散液及び積層体の製造方法に関する。
高周波信号の伝送に用いられるプリント配線基板は、優れた伝送特性が要求される。伝送特性の高いプリント配線基板の絶縁層材料として、比誘電率及び誘電正接が低い、テトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。かかるポリマーを含む絶縁層を形成する材料として、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと液状分散媒とを含むパウダー分散液が知られている。
テトラフルオロエチレン系ポリマーの表面張力は概して低く、そのパウダーは分散性が低い。パウダー分散液の分散安定性を向上するために、特許文献1及び2には、所定のフッ素系界面活性剤の配合が、それぞれ提案されている。
国際公開2016/159102号 特開2011-225710号公報
しかし、フッ素系界面活性剤を含むパウダー分散液から形成される成形物には、フッ素系界面活性剤の残留により、その物性(電気特性等)が損なわれやすいという課題がある。
さらに、かかるパウダー分散液は、フッ素系界面活性剤の強い界面活性作用のために、泡立ちやすく、それ自体を調合する際や、それと他の成分(樹脂ワニス等)とを混合する際や、それを塗工する際の、ハンドリング性が低いという課題がある。
本発明の目的は、フッ素系界面活性剤を実質的に含まずとも、分散安定性とハンドリング性とに優れたパウダー分散液の提供にある。かかるパウダー分散液からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性(電気特性等)に優れた成形物を容易に形成できる。
本発明は、下記の態様を有する。
<1> テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、表面張力が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの表面張力±10mN/mの範囲にあるフッ素系液状分散媒と、非フッ素系液状分散媒とを含有し、前記フッ素系液状分散媒の含有量と前記非フッ素系液状分散媒の含有量に対する前記フッ素系液状分散媒の含有量の比率が1~25質量%であり、かつ、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない、パウダー分散液。
<2> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位又はヘキサフルオロプロピレンに基づく単位を含むテトラフルオロエチレン系ポリマーである、<1>のパウダー分散液。
<3> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、<1>又は<2>のパウダー分散液。
<4> 前記パウダーの平均粒子径が、1μm以上である、<1>~<3>のいずれかのパウダー分散液。
<5> 前記パウダーの比表面積が、1~8m/gである、<1>~<4>ののいずれのパウダー分散液。
<6> 前記パウダーの含有量が、10質量%以上である、<1>~<5>ののいずれかのパウダー分散液。
<7> 前記フッ素系液状分散媒が、フルオロアルコール、ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種の液状分散媒である、<1>~<6>のいずれかのパウダー分散液。
<8> 前記非フッ素系液状分散媒が、水、アルコール、芳香族炭化水素、アミド、ケトン及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の液状分散媒である、<1>~<7>のいずれかのパウダー分散液。
<9> 前記フッ素系液状分散媒がハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンであり、かつ、前記非フッ素系液状分散媒が芳香族炭化水素、アミド、ケトン又はエステルである、<1>~<8>のいずれかのパウダー分散液。
<10> 前記フッ素系液状分散媒が、フルオロアルコールであり、かつ、前記非フッ素系液状分散媒が、水又はアルコールである、<1>~<9>のいずれかのパウダー分散液。
<11> さらに、芳香族性ポリマーを含む、<1>~<10>のいずれかのパウダー分散液。
<12> さらに、無機フィラーを含む、<1>~<11>のいずれかのパウダー分散液。
<13> さらに、非フッ素系界面活性剤を含む、<1>~<12>のいずれかのパウダー分散液。
<14> 24時間静置後の分離率が、50%以下である、<1>~<13>のいずれかのパウダー分散液。
<15> <1>~<14>のいずれかのパウダー分散液を、基材層の表面に塗布し加熱して、ポリマー層を形成し、前記基材層と前記ポリマー層とを、この順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、所定のフッ素系液状分散媒と、非フッ素系液状分散媒とを所定の割合で含有し、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない、パウダー分散液が得られる。また、本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性(電気特性等)に優れた積層体が得られる。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「ポリマーの溶融粘度」は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター及び2Φ-8Lのダイを用い、予め測定温度にて5分間加熱しておいたポリマーの試料(2g)を0.7MPaの荷重にて測定温度に保持して測定した値である。
「ポリマーのガラス転移点」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる対象物(パウダー又は無機フィラー)の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって対象物の粒度分布を測定し、対象物の粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「D90」は、同様にして測定される対象物の体積基準累積90%径である。
「パウダーの比表面積」は、ガス吸着(定容法)BET多点法によりNOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「パウダー分散液及び液状分散媒の粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「パウダー分散液のチキソ比」とは、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。
ポリマーにおける「単位」は、モノマーから直接形成された原子団であってもよく、得られたポリマーを所定の方法で処理して、構造の一部が変換された原子団であってもよい。ポリマーに含まれる、モノマーAに基づく単位を、単に「モノマーA単位」とも記す。
本発明のパウダー分散液(以下、「本分散液」とも記す。)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)のパウダー(以下、「Fパウダー」とも記す。)と、表面張力がFポリマーの表面張力±10mN/mの範囲にあるフッ素系液状分散媒(以下、「F分散媒」とも記す。)と、非フッ素系液状分散媒(以下、「非F分散媒」とも記す。)とを含む。
本分散液中のF分散媒の含有量と非F分散媒の含有量との合計に対するF分散媒の含有量の比率は、1~25質量%である。また、本分散液は、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない。
本分散液は、Fパウダーが粒子状に分散した分散液であり、フッ素系界面活性剤を含まずとも分散安定性とハンドリング性とに優れる。本分散液からは、電気特性等の、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性に優れた成形物を容易に形成できる。
その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
フッ素系界面活性剤は、その界面活性作用により、Fパウダーの表面に対して高度に相互作用して、Fパウダーの分散安定性を向上させると考えられる。しかし、フッ素系界面活性剤は、分散液の液表面に集合して、その表面張力を弱める。そのため、分散液の消泡性を特に低下させ、結果として、そのハンドリング性を損なってしまう。
本分散液は、Fポリマーに近接した範囲にある表面張力のF分散媒が所定の割合にて含まれる。かかるF分散媒は、フッ素原子を有するため、Fポリマーと同質的であり親和性が高い。そのため、F分散媒とFポリマーとが高度に溶媒和して、Fパウダーの分散安定性を向上させていると考えられる。また、F分散媒は、フッ素系界面活性剤とは異なり、親水性部及び疎水性部を有さないか、両親媒性が低い。そのため、本分散液の消泡性を低下させにくく、そのハンドリング性を向上させていると考えられる。
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を含むポリマーである。
Fポリマーは、熱溶融性であってもよく、非熱溶融性であってもよい。Fポリマーは、熱溶融性であるのが好ましい。
熱溶融性Fポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200~325℃がより好ましく、280~320℃がさらに好ましい。
Fポリマーの380℃における溶融粘度は、1×10~1×10Pa・sが好ましい。
Fポリマーのガラス転移点は、30~150℃が好ましく、75~125℃がより好ましい。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましく、16~20mN/がより好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、濡れ指数試薬(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
表面張力が低く、フッ素含有量が高いFポリマーは、電気物性等の物性に優れる反面、分散性が著しく低いが、本分散液においては、上述の作用機構により、かかるFポリマーを含む場合でも、分散性に優れる。
Fポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーが挙げられ、PFA又はFEPが好ましく、PFAがより好ましい。上記ポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF又はCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましい。この場合、本分散液は、分散安定性に優れやすく、本分散液から成形する成形物(ポリマー層等)が、電気特性、表面平滑性等の物性に優れやすい。
上記酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマー単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として上記酸素含有極性基を有するFポリマーが挙げられる。
酸素含有極性基は、水酸基含有基又はカルボニル基含有基が好ましく、カルボニル基含有基がより好ましい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH又はC(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)又はカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーの好適な態様としては、TFE単位及びPAVE単位を含み、酸素含有極性基を有するポリマー(1)、又は、TFE単位及びPAVE単位を含み、全モノマー単位に対してPAVE単位を2.0~5.0モル%含み、酸素含有極性基を有さないポリマー(2)が挙げられる。これらのポリマーは、成形物(ポリマー層等)中において微小球晶を形成するため、得られる成形物の特性が向上しやすい。
ポリマー(1)は、TFE単位と、PAVE単位と、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するモノマーとを含むポリマーが好ましい。ポリマー(1)は、全単位に対して、TFE単位を90~99モル%、PAVE単位を0.5~9.97モル%、及び上記モノマーに基づく単位を0.01~3モル%、それぞれ含むのが好ましい。
また、上記モノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸;以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。
ポリマー(1)の具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
ポリマー(2)は、TFE単位及びPAVE単位のみからなり、全モノマー単位に対して、TFE単位を95.0~98.0モル%、PAVE単位を2.0~5.0モル%含有するのが好ましい。
ポリマー(2)におけるPAVE単位の含有量は、全モノマー単位に対して、2.1モル%以上が好ましく、2.2モル%以上がより好ましい。
なお、ポリマー(2)が酸素含有極性基を有さないとは、ポリマー主鎖を構成する炭素原子数の1×10個あたりに対して、ポリマーが有する酸素含有極性基の数が、500個未満であることを意味する。酸素含有極性基の数は、100個以下が好ましく、50個未満がより好ましい。酸素含有極性基の数の下限は、通常、0個である。
ポリマー(2)は、ポリマー鎖の末端基として酸素含有極性基を生じないような、重合開始剤や連鎖移動剤等を使用して製造してもよく、酸素含有極性基を有するFポリマーをフッ素化処理して製造してもよい。フッ素化処理の方法としては、フッ素ガスを使用する方法(特開2019-194314号公報等を参照)が挙げられる。
本発明におけるFパウダーは、Fポリマーを含有するパウダーであり、Fパウダー中のFポリマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
Fパウダーは、Fポリマーとは異なるポリマーを含んでもよい。異なるポリマーとしては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、マレイミドが挙げられる。
Fパウダーは、無機物を含んでもよい。無機物としては、酸化物、窒化物、金属単体、合金及びカーボンが好ましく、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、及びメタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)がより好ましく、シリカ及び窒化ホウ素がさらに好ましく、シリカが特に好ましい。この場合、本分散液の分散性が向上しやすい。無機物を含むFパウダーは、Fポリマーをコアとし、このコアの表面に、無機物を有するのが好ましい。かかるFパウダーは、例えば、Fポリマーのパウダーと無機物のパウダーとを合着(衝突、凝集等)させて得られる。
FパウダーのD50は、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。FパウダーのD50は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。また、FパウダーのD90は、100μm未満が好ましく、90μm以下がより好ましい。
Fパウダーの比表面積は、1~8m/gが好ましく、1~5m/gがより好ましく、1~3m/gがさらに好ましい。
FパウダーのD50、D90及び比表面積が、上記範囲にあれば、本分散液が分散安定性に優れやすい。
本発明におけるF分散媒は、大気圧下、常温(20~30℃;以下、同様である。)において液体であり、非F分散媒と相溶する、フッ素系界面活性剤とは異なる含フッ素液状分散媒である。
常温におけるF分散媒の表面張力は、Fポリマーの表面張力±10mN/mの範囲にある。この場合、F分散媒がFポリマーと相互作用しやすく、本分散液が分散安定性に優れやすい。
F分散媒の表面張力は、10mN/m以上が好ましい。F分散媒の表面張力は、30mN/m以下が好ましく、27mN/m以下がより好ましい。
F分散媒の沸点は、非F分散媒の沸点より低いのが好ましく、非F分散媒の沸点-10℃以下であるのがより好ましい。この場合、本分散液から成形物(ポリマー層等)を形成する際に、非F分散媒に比較して、Fパウダーとより強く相互作用するF分散媒が除去されやすく、その成形物の表面平滑性が向上しやすい。
F分散媒の沸点は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。沸点は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。この場合、本分散液から成形物を形成する際に、Fパウダーが、高度に流動して緻密にパッキングし、その結果、緻密な成形物が形成されやすい。
F分散媒の分子量は、50以上が好ましく、70以上がより好ましい。F分散媒の分子量は、500以下が好ましく、400以下がより好ましい。
F分散媒の粘度は、0.4mPa・s以上が好ましく、0.5mPa・s以上がより好ましい。F分散媒の粘度は、50mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。この場合、本分散液が分散安定性とハンドリング性とに優れやすい。
F分散媒は、プロトン性であってもよく、非プロトン性であってもよい。
F分散媒としては、フルオロアルコール、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロオレフィン、トリ(フルオロアルキル)アミンが挙げられる。
F分散媒は、フルオロアルコール、ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種の液状分散媒が好ましい。
フルオロアルコールの具体例としては、CFCHOH、CFCFCHOH、CHFCFCHOHが挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルの具体例としては、CHOCFCF、CHO(CFCF、CFCFCHOCHF、CFCHFCFOCH、CHFCFOCHF、(CFCHCFOCH、(CFCFCFOCH、CFCFCHOCHCHF、CFCHFCFOCHCF、F(CFOCH、F(CFOCHCH、CHFCFOCHCF、CHFCFCHOCFCHFが挙げられる。
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、F(CFCHCH、F(CFH、F(CFCHCH、CFCHCFCH、CF(CHF)CFCF、CF(CFCHFが挙げられる。
トリフルオロアルキルアミンの具体例としては、(CF(CHN、(CF(CFN、(CF(CFNが挙げられる。
F分散媒の具体例としては、「アサヒクリン(登録商標)-AC6000」、「アサヒクリン(登録商標)-AC2000」、「アサヒクリン(登録商標)-AE3000」が挙げられる。
F分散媒は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
本発明における非F分散媒は、大気圧下、常温において液体である、F分散媒とは異なるフッ素原子を有さない液状分散媒である。
非F分散媒は、プロトン性であってもよく、非プロトン性であってもよい。
非F分散媒は、水、アルコール、芳香族炭化水素、アミド、ケトン及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の液状分散媒であるのが好ましい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、クメン、1,3,5-トリメチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、ナフタレンが挙げられ、トルエンが好ましい。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられ、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテートが挙げられる。
非F分散媒は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
本分散液におけるF分散媒がプロトン性である場合、非F分散媒もプロトン性であるのが好ましい。この場合、非F分散媒の表面張力は、50~100mN/mであるのが好ましい。
本分散液におけるF分散媒が非プロトンである場合、非F分散媒も非プロトン性であるのが好ましい。この場合、非F分散媒の表面張力は、20~60mN/mであるのが好ましい。
本分散液におけるF分散媒が、ハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンである場合、非F分散媒は、芳香族炭化水素、アミド、ケトン又はエステルであるのが好ましく、芳香族炭化水素又はアミドであるのがより好ましい。
本分散液におけるF分散媒が、フルオロアルコールである場合、非F分散媒は、水又はアルコールであるのが好ましく、水であるのがより好ましい。
上記組み合わせの場合、F分散媒と非F分散媒との相溶性が高く、相互作用しやすいため、本分散液が分散安定性とハンドリング性とに優れやすい。
本分散液は、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない。なお、本発明において、フッ素系界面活性剤とは、親水部位(水酸基含有基、カルボニル基含有基、スルホ基含有基等)と、炭素数が4以上の含フッ素基を含む疎水部位とを有する化合物を意味する。
本分散液中のフッ素系界面活性剤の含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。含有量の下限は0質量%である。
この場合、上述した作用機構により、本分散液のハンドリング性が向上しやすい。また、本分散液から形成される成形物が電気特性等の物性に優れやすい。
本分散液中のFパウダーの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。Fパウダーの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
本分散液中のF分散媒の含有量と非F分散媒の含有量との合計は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。含有量の合計は、90質量%以下が好ましい。
F分散媒の含有量と非F分散媒の含有量との合計に対するF分散媒の含有量の比率は、1~25質量%である。上記比率は、2質量%以上が好ましい。上記比率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。この場合、上述した作用機構による、本分散液の分散安定性とハンドリング性とが高度にバランスしやすい。
本分散液中のF分散媒の含有量は、0.1~10質量%が好ましい。
本分散液中の非F分散媒の含有量は、40~80質量%が好ましい。
本分散液は、さらに、他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、固形分であってもよく、非固形分であってもよい。他の成分は、成形物の接着性と低線膨張性とを向上させる観点からは芳香族性ポリマーであるのが、成形物の電気特性と低線膨張性とを向上させる観点からは無機フィラーであるのが、本分散液の分散安定性を一層向上させる観点からは非フッ素系界面活性剤であるのが、それぞれ好ましい。
芳香族性ポリマーは、芳香族ポリイミド、芳香族マレイミド、スチレンエラストマー等の芳香族エラストマー又は芳香族ポリアミック酸が好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族マレイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンエラストマー等の芳香族エラストマーがより好ましく、芳香族ポリイミド又は芳香族ポリアミック酸がさらに好ましい。芳香族ポリイミドは、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。熱可塑性のポリイミドとは、イミド化が完了した、イミド化反応がさらに生じないポリイミドを意味する。
芳香族ポリイミドの具体例としては、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「ユピア(登録商標)-AT」シリーズ(宇部興産社製)が挙げられる。
スチレンエラストマーとしては、スチレン-ブタジエン共重合体、水添-スチレン-ブタジエン共重合体、水添-スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。
無機フィラーは、窒化物フィラー又は無機酸化物フィラーが好ましく、窒化ホウ素フィラー、ベリリアフィラー(ベリリウムの酸化物のフィラー)、ケイ酸塩フィラー(シリカフィラー、ウォラストナイトフィラー、タルクフィラー)、又は金属酸化物(酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)フィラーがより好ましく、シリカフィラーがさらに好ましい。
無機フィラーは、その表面の少なくとも一部が、シランカップリング剤(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)で表面処理されているのが好ましい。
無機フィラーのD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。D50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
無機フィラーの形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機フィラーの具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。
無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーの好適な具体例としては、シリカフィラー(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカフィラー(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルクフィラー(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイトフィラー(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
非フッ素系界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤が挙げられる。
本分散液は、上述した他の成分以外にも、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本分散液がさらに無機フィラーを含む場合、本分散液中の無機フィラーの含有量は、5~40質量%が好ましい。
本分散液がさらに芳香族性ポリマーを含む場合、本分散液中の芳香族性ポリマーの含有量は、1~20質量%が好ましい。
本分散液がさらに非フッ素系界面活性剤を含む場合、本分散液中の非フッ素系界面活性剤の含有量は、1~10質量%が好ましい。
本分散液の粘度は、100mPa・s以上が好ましい。本分散液の粘度は、50000mPa・s以下が好ましく、20000mPa・s以下がより好ましい。
本分散液のチキソ比は、1.0以上が好ましい。本分散液のチキソ比は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
本分散液は、上述した作用機構により、粘度が高くとも分散安定性とハンドリング性とに優れ、そのチキソ性も任意に調整しやすい。
本分散液の24時間静置後の分離率は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。分離率の下限は0%である。なお、分離率とは、本分散液を平底の円柱形の容器に入れ、5分間振盪し、25℃にて24時間静置したときに形成される透明な上澄みの割合であり、下式により求められる。
分離率(%)=上澄みの厚さ(cm)/全体での液面までの高さ(cm)×100
本分散液は、上述した作用機構により、他の成分(芳香族性ポリマー等)を含む場合においても、かかる範囲の分離率を示しやすい。
本分散液は、Fパウダーと、非F分散媒と、F分散媒とを混合して製造できる。本分散液は、Fパウダー及びF分散媒を含む混合物と、非F分散媒とを混合して製造するのが好ましい。この場合、本分散液の分散安定性が、特に向上しやすい。上記混合物は、ペースト状であってもよい。
さらに、無機フィラーを含む本分散液は、上記混合物と、無機フィラー及び非F分散媒を含む液状組成物とを混合して製造するのが好ましい。
さらに、芳香族性ポリマーを含む本分散液は、上記混合物と、芳香族性ポリマー及び非F分散媒を含む組成物(ワニス)とを混合して製造するのが好ましい。
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、本分散液を、基材層の表面に塗布し加熱して、ポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を形成し、基材層とF層とを、この順で有する積層体を得る、積層体の製造方法である。
積層体の好適な態様としては、金属箔とその少なくとも一方の表面に形成されたF層とを有する金属張積層体、樹脂フィルムとその少なくとも一方の表面に形成されたF層とを有する多層フィルムが挙げられる。
金属張積層体における金属箔は、銅箔であるのが好ましい。かかる金属張積層体は、プリント基板材料として特に有用である。
多層フィルムにおける樹脂フィルムは、ポリイミドフィルムであるのが好ましい。かかる多層フィルムは、電線被覆材料、プリント基板材料として有用である。
本法においては、基材層の少なくとも片面にF層が形成されればよく、基材層の片面のみにF層が形成されてもよく、基材層の両面にF層が形成されてもよい。基材層の表面は、シランカップリング剤等により表面処理されていてもよい。
本分散液の塗布に際しては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法の塗布方法を使用できる。
F層は、加熱によりF分散媒及び非F分散媒等の揮発成分を除去した後に、さらに加熱によりFポリマーを焼成して形成するのが好ましい。
液状成分を除去する温度は、できるだけ低温が好ましく、F分散媒及び非F分散媒の沸点より低い温度が好ましく、両者の沸点より50℃以上低い温度がより好ましい。例えば非F分散媒として、沸点が約200℃のN-メチル-2-ピロリドンを用いる場合、150℃以下の温度、好ましくは100~120℃の温度で、本分散液を加熱することが好ましい。
分散媒を除去する工程で空気を吹き付けるのが好ましい。この場合、F層が表面平滑性に優れやすい。
F層は、F分散媒及び非F分散媒を除去した後、基材層をFポリマーが焼成する温度領域に加熱して形成するのが好ましく、例えば300~400℃の温度でFポリマーを焼成するのが好ましい。F層は、Fポリマーの焼成物を含むのが好ましい。
本法では、上述の通り、本分散液の塗布、乾燥、焼成の工程を経て、F層が形成される。各工程は1回のみ行ってもよく、上記工程の少なくとも1つは2回以上行ってもよい。例えば、本分散液を基材層の表面に塗布して液状被膜を形成し、液状被膜の加熱によりF分散媒及び非F分散媒を除去して乾燥被膜を形成し、さらに、形成した乾燥被膜の上に本分散液を塗布して液状被膜を形成し、液状被膜の加熱によりF分散媒及び非F分散媒を除去して乾燥被膜の厚さを増大させ、その後の加熱によりFポリマーを焼成して、F層を形成してもよい。表面平滑性に優れたF層が得られやすい観点から、本分散液の塗布、乾燥、焼成の少なくとも1つの工程を複数回行うのが好ましい。
F層の厚さは、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。厚さの上限は、200μmである。本法によると、この範囲において、耐クラック性に優れたF層を容易に形成できる。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本分散液を用いれば、F層におけるFポリマーに基づく物性を損なわずに、かかる積層体を容易に形成できる。
F層の空隙率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。空隙率は、0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましい。なお、空隙率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される成形物の断面におけるSEM写真から、画像処理にてF層の空隙部分を判定し、空隙部分が占める面積をF層の面積で除した割合(%)である。空隙部分が占める面積は空隙部分を円形と近似して求められる。
基材層の材質としては、金属基板(銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等)、樹脂フィルム(ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド等のフィルム)、プリプレグ(繊維強化樹脂基板の前駆体)が挙げられる。
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられ、さらに、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
上記積層体には、さらに他の基材を積層して多層積層体を構成としてもよい。かかる多層積層体の構成としては、金属基板層/F層/他の基材層/F層/金属基板層、金属基板層/他の基材層/F層/他の基材層/金属基板層等が挙げられる。それぞれの層には、さらに、ガラスクロスやフィラーが含まれていてもよい。
以上のような積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[パウダー]
パウダー1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、酸素含有極性基を有するポリマーからなるパウダー(D50:2.1μm、比表面積:2m/g、表面張力:18mN/m)
[無機フィラー]
フィラー1:球状のシリカフィラー(D50:0.4μm、表面がシランカップリング剤により表面処理されている。)
[芳香族性ポリマー]
ワニス1:熱可塑性の芳香族ポリイミド(PI1)がNMPに溶解したワニス
[F分散媒]
F分散媒1:CFCHOCFCHF(沸点:56℃、表面張力:16mN/m)
F分散媒2:CHFCFCHOH(沸点:106℃、表面張力:26mN/m)
[非F分散媒]
Tol:トルエン(沸点:110℃、表面張力:27mN/m)
NMP:N-メチル-ピロリドン(沸点:202℃、表面張力:41mN/m)
WT :水(沸点:100℃、表面張力:73mN/m)
[界面活性剤]
F界面活性剤1:メガファックF-563(DIC社製)
2.分散液の製造例
(例1)
まず、ポットに、パウダー1とワニス1とF分散媒1とTolとを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、組成物を調製した。別のポットに、フィラー1とTolとを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、組成物を調製した。
さらに別のポットに、両者の組成物を投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、パウダー1(30質量部)と、フィラー1(10質量部)と、PI1(3質量部)と、F分散媒1(1質量部)と、Tol及びNMP(56質量部)とを含む分散液1(粘度:400mPa・s)を得た。分散液1の製造に際して、泡立ちは抑制されていた。
(例2~4)
芳香族性ポリマー、F分散媒、非F分散媒及びF界面活性剤の種類及び量を、下表1に示す通り変更した以外は、例1と同様にして、分散液2~4を製造した。なお、F界面活性剤を使用した場合、分散液中のF界面活性剤の含有量を3質量%とした。
Figure 2022011017000001
3.積層体の製造例
長尺の銅箔(厚さ:18μm)の表面に、バーコーターを用いて分散液1を塗布して、液状被膜を形成した。次いで、この液状被膜が形成された金属箔を、120℃にて5分間、乾燥炉に通し、加熱により乾燥させて、乾燥被膜を得た。その後、窒素オーブン中で、乾燥被膜を380℃にて3分間、加熱した。これにより、金属箔と、その表面にパウダー1の溶融焼成物、PI1及びフィラー1を含む、成形物としてのポリマー層(厚さ:5μm)とを有する積層体1を製造した。
分散液1を、分散液2に変更した以外は、積層体1と同様にして、積層体2を製造した。
4.評価
4-1.分散液の評価
4-1-1.消泡性
それぞれの分散液を調製(製造)する際に、泡立ちが消失するまでの時間を確認し、以下の基準に従って評価した。
[評価基準]
○:3時間未満で泡立ちが消失する。
×:3時間以上経過しても泡立ちが消失しない。
4-1-2.分離率
それぞれの分散液を平底の円柱形の容器に入れ、5分間振盪し、室温にて24時間静置したときの透明な上澄みの割合を分離率とした。
分離率(%)=上澄みの厚さ(cm)/全体での液面までの高さ(cm)×100
以下の基準に従って、それぞれの分散液の分離率を評価した。
[評価基準]
〇:分離率が50%未満である。
×:分離率が50%以上である。
それぞれの評価結果を、下表2にまとめて示す。
Figure 2022011017000002
4-2.積層体の評価
4-2-1.誘電正接
積層体1及び2について、積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して単独のポリマー層を作製し、SPDR(スプリットポスト誘電体共振)法にて、上記ポリマー層の誘電正接(測定周波数:10GHz)を測定し、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:誘電正接が0.0025以下である。
×:誘電正接が0.0025超である。
その結果、積層体1の誘電正接は「〇」、積層体2の誘電正接は「×」であった。
本発明の分散液は、分散安定性とハンドリング性とに優れ、Fポリマー(テトラフルオロエチレン系ポリマー)に基づく物性を具備した成形物(フィルム、プリプレグ等の含浸物、積層板等)の製造に使用できる。本分散液から成形される成形物は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。

Claims (15)

  1. テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、表面張力が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの表面張力±10mN/mの範囲にあるフッ素系液状分散媒と、非フッ素系液状分散媒とを含有し、前記フッ素系液状分散媒の含有量と前記非フッ素系液状分散媒の含有量との合計に対する前記フッ素系液状分散媒の含有量の比率が1~25質量%であり、かつ、フッ素系界面活性剤を実質的に含有しない、パウダー分散液。
  2. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位又はヘキサフルオロプロピレンに基づく単位を含むテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載のパウダー分散液。
  3. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1又は2に記載のパウダー分散液。
  4. 前記パウダーの平均粒子径が、1μm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  5. 前記パウダーの比表面積が、1~8m/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  6. 前記パウダーの含有量が、10質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  7. 前記フッ素系液状分散媒が、フルオロアルコール、ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種の液状分散媒である、請求項1~6のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  8. 前記非フッ素系液状分散媒が、水、アルコール、芳香族炭化水素、アミド、ケトン及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の液状分散媒である、請求項1~7のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  9. 前記フッ素系液状分散媒が、ハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンであり、かつ、前記非フッ素系液状分散媒が、芳香族炭化水素、アミド、ケトン又はエステルである、請求項1~8のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  10. 前記フッ素系液状分散媒が、フルオロアルコールであり、かつ、前記非フッ素系液状分散媒が、水又はアルコールである、請求項1~9のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  11. さらに、芳香族性ポリマーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  12. さらに、無機フィラーを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  13. さらに、非フッ素系界面活性剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  14. 24時間静置後の分離率が、50%以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載のパウダー分散液。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載のパウダー分散液を、基材層の表面に塗布し加熱して、ポリマー層を形成し、前記基材層と前記ポリマー層とを、この順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。

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