JP2023019614A - 組成物、及び該組成物から形成される層を有する積層体の製造方法 - Google Patents

組成物、及び該組成物から形成される層を有する積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分散安定性、塗工性、造膜性に優れ、得られる成形物が低誘電率、低誘電正接等の電気特性、耐屈曲性等の柔軟性や、金属箔等の基材との接着性と密着性に優れ、厚く平滑なポリマー層を形成できるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む組成物の提供、及びかかる組成物から形成されるポリマー層を有し、耐屈曲性等の柔軟性、金属箔等の基材との接着性と密着性に優れた積層体の製造方法の提供。【解決手段】フッ素含有量が65~76質量%の、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む、組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む組成物、及びかかる組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れており、種々の産業用途に利用されている。前記物性を基材表面に付与するために用いるコーティング剤として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液が知られており、かかる分散液は、高周波帯域の周波数に対応するプリント基板の誘電体層を形成する材料としても注目されている。
一方、かかる分散液の物性を向上する試みとして、特許文献1~4には、フッ素系添加剤、ポリビニルアセタール、ウレタン構造を有するポリマー、ウレタン微粒子や微粒子セラミックスを添加した、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む非水系分散液が記載されている。
特開2020-186351号公報 特開2017-210548号公報 特開2017-210549号公報 特開2016-194017号公報
表面張力が概して低いテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液は、分散状態が悪いため、基材に塗工し焼成してポリマー層を形成する際に、前記粒子のパッキングが粗くなりやすい。また、厚いポリマー層を形成させる観点で分散液中のテトラフルオロエチレン系ポリマーの濃度を高めようとすると、分散液のレオロジー調整が難しい場合が多い。その結果、特に、厚いポリマー層を形成しようとすると、ポリマー層の緻密性に問題が生じやすい。
具体的には、ロール・トゥー・ロールのような連続生産プロセスで金属箔等の基材表面に前記ポリマー層を形成させると、ポリマー層にクラックやピンホールが発生しやすくなる。また、テトラフルオロエチレン系ポリマーが低線膨張性であることに起因して、前記ポリマー層と基材とからなる積層体が反りやすくなる。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む組成物は分散安定性に優れることを知見した。また、かかる組成物からは厚く平滑な成形物を形成可能なこと、さらに得られる成形物は緻密であり、低誘電正接等の電気特性、耐屈曲性等の柔軟性に優れると共に、金属箔等の基材との接着性と密着性が改善されることを知見した。
本発明の目的は、分散安定性、塗工性、造膜性に優れ、得られる成形物が低誘電率、低誘電正接等の電気特性、耐屈曲性等の柔軟性や、金属箔等の基材との接着性と密着性に優れ、厚く平滑なポリマー層を形成できるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む組成物の提供、及びかかる組成物から形成されるポリマー層を有し、耐屈曲性等の柔軟性や、金属箔等の基材との接着性と密着性に優れた積層体の製造方法の提供である。
本発明は、下記の態様を有する。
<1> フッ素含有量が65~76質量%の、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む、組成物。
<2> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが有する酸素含有極性基の量が、主鎖の炭素数1×10個あたり、100~10000個である、<1>の組成物。
<3> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが有する酸素含有極性基が、カルボニル基含有基である、<1>又は<2>の組成物。
<4> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が20質量%以上である、<1>~<3>のいずれかの組成物。
<5> 前記ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対して5質量%以下である、<1>~<4>のいずれかの組成物。
<6> 前記ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子が、エーテル系ポリウレタン又は多糖類系ポリウレアである、<1>~<5>のいずれかの組成物。
<7> さらに芳香族樹脂を含む、<1>~<6>のいずれかの組成物。
<8> さらに非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む、<1>~<7>のいずれかの組成物。
<9> さらに多価アルコールを含む、<1>~<8>のいずれかの組成物。
<10> さらに界面活性剤を含有する、<1>~<9>のいずれかの組成物。
<11> 前記液状分散媒が水である、<1>~<10>のいずれかの組成物。
<12> 前記液状分散媒が水であり、pHが7より大きい、<1>~<11>のいずれかの組成物。
<13> <1>~<12>のいずれかの組成物を、基材の表面に塗布し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
<14> 前記基材の表面の十点平均粗さが0.1μm未満である、<13>の製造方法。
<15> 前記ポリマー層の厚さが10μm以上である、<13>又は<14>の製造方法。
本発明によれば、分散安定性、塗工性、造膜性等に優れ、厚く平滑なポリマー層を形成できるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む組成物、及びかかる組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法を提供できる。本発明の組成物から形成される積層体は、低誘電率、低誘電正接等の電気特性、耐屈曲性等の柔軟性、金属箔等の基材との接着性と密着性、表面平滑性に優れ、例えばプリント基板の構成材料として有用である。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、対象物(粒子)の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
対象物のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「組成物の粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で測定される粘度である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
本発明の組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、フッ素含有量が65~76質量%の、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む組成物である。
本組成物は分散安定性に優れる。また、本組成物から形成される成形物(焼成物)は、電気特性等のFポリマーに基づく物性に優れ、表面平滑性に優れると共に、耐屈曲性等の柔軟性や、基材との接着性と密着性にも優れる。
本組成物の分散安定性が向上する理由は、必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推定している。
フッ素含有量が高いテトラフルオロエチレン系ポリマーは表面エネルギーが著しく低く、その粒子は液状分散媒中で凝集しやすい状態にあるともみなせる。かかる傾向は、液状分散媒に対するテトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量が多い場合に顕著である。そこで、液状分散媒を含む本組成物では、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(Fポリマー)と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子とを用いるという構成を採る。これにより、本組成物においては、前記高分子が有するウレタン結合又はウレア結合と、Fポリマーが有する酸素含有極性基との間で形成される水素結合等の相互作用が生じ、前記高分子がF粒子の分散剤として作用してF粒子の凝集を抑制していると考えられる。特に、Fポリマーの酸素含有極性基がカルボニル基含有基である場合、水酸基等の他の酸素含有極性基による水素結合と比べ、カルボニル基の分極による水素結合はより多次元のネットワーク(高分子マトリックス)を形成しやすいことから、先の相互作用が一層顕著になると考えられる。
さらに、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子が本来有するレオロジー調整作用が、本組成物の分散安定性と塗工性を向上させていると考えられる。
そのため、本組成物を塗工しFポリマーを焼成して成形物(ポリマー層)を形成すると、塗工に際してF粒子が粉落ちすることなく高度にパッキングしやすくする。
その結果、本組成物は分散安定性、塗工性に優れ、電気特性、耐屈曲性、基材との密着性等に優れる、厚く平滑なポリマー層(成形物)を容易に形成できたと考えられる。
本組成物におけるFポリマーは、フッ素含有量が65~76質量%の、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマー、すなわちテトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を含むポリマーである。Fポリマーは、熱溶融性であっても非熱溶融性であってもよいが、熱溶融性であるのが好ましい。Fポリマーは1種類を単独で用いても2種類以上を用いてもよく、その場合は、Fポリマーの少なくとも1種は熱溶融性であるのが好ましい。
かかる場合、本組成物から形成される成形物が柔軟性及び基材との接着性と密着性に優れやすい。なお、熱溶融性とは荷重49Nの条件下、ポリマーの溶融温度よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が1から1000g/10分となる温度が存在する溶融流動性のポリマーを意味する。
Fポリマーが熱溶融性である場合、その溶融温度は、200℃以上が好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。かかる場合、本組成物から形成される成形物が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーにおけるフッ素含有量は、70~76質量%であるのがより好ましい。本組成物は、上述した作用機構により、かかるフッ素含有量の高いFポリマーの粒子の分散性、特に液状分散媒が水である場合の分散性を向上させやすい。
Fポリマーのガラス転移点は、75~125℃が好ましく、80~100℃がより好ましい。
TFE単位を含むポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位及びエチレンに基づく単位を含むポリマー(ETFE)、TFE単位及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)を含むポリマー(PFA)、TFE単位及びヘキサフルオロプロペン(HFP)に基づく単位を含むポリマー(FEP)が挙げられる。ETFE、PFA及びFEPのそれぞれは、さらに他の単位を含んでいてもよい。PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(PPVE)が好ましく、PPVEがより好ましい。
TFE単位を含むポリマーは、PFA又はFEPであるのが好ましく、PFAであるのがより好ましい。
酸素含有極性基は、Fポリマー中の単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られる、酸素含有極性基を有するFポリマーが挙げられる。
Fポリマーが有する酸素含有極性基の量は、主鎖の炭素数1×10個あたり、100~10000個であるのが好ましく、500~5000個がより好ましい。
酸素含有極性基は、水酸基含有基、カルボニル基含有基及びホスホノ基含有基が好ましく、本組成物の分散安定性の観点から、水酸基含有基及びカルボニル基含有基がより好ましく、カルボニル基含有基がさらに好ましい。この場合、Fポリマーとウレタン結合又はウレア結合を有する高分子との親和性が向上するため、本組成物は分散安定性に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH、-C(CFOH及び1,2-グリコール基(-CH(OH)CHOH)がより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーがカルボニル基含有基を有する場合、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましく、800~1500個がさらに好ましい。なお、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
Fポリマーとしては、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有するポリマーが好ましく、TFE単位、PAVE単位及び、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有するモノマーに基づく単位を含むポリマーであるのがより好ましく、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.5~9.97モル%、0.01~3モル%、含むポリマーであるのがさらに好ましい。
また、カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。
かかるポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
これらのFポリマーは、その粒子が分散安定性に優れるだけでなく、本組成物から得られる成形物(ポリマー層等)中において、より緻密かつ均質に分布しやすい。さらに、成形物中において微小球晶を形成しやすく、他の成分との密着性が高まりやすい。その結果、電気特性等の各種物性に優れた成形物を、より得られやすい。
本組成物において、F粒子のD50は0.1~25μmであるのが好ましい。F粒子のD50は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。F粒子のD50は0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。この範囲のD50において、F粒子の流動性と分散性とが良好となりやすい。
本組成物の分散安定性の観点から、F粒子の嵩密度は0.15g/m以上が好ましく、0.20g/m以上がより好ましい。F粒子の嵩密度は0.50g/m以下が好ましく、0.35g/m以下がより好ましい。
また、F粒子の比表面積は、1~8m/gが好ましく、1~3m/gがより好ましい。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂又は無機物を含んでいてもよいが、Fポリマーを主成分とするのが好ましい。F粒子におけるFポリマーの含有量は80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
上記樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、(熱可塑性)ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、マレイミド等の耐熱性樹脂が挙げられる。無機物としては、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、メタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)が挙げられる。無機物は、その表面の少なくとも一部が表面処理されていてもよい。
Fポリマー以外の樹脂又は無機物を含むF粒子は、Fポリマーをコアとし、Fポリマー以外の樹脂又は無機物をシェルに有するコア-シェル構造を有するか、Fポリマーをシェルとし、Fポリマー以外の樹脂又は無機物をコアに有するコア-シェル構造を有していてもよい。かかるF粒子は、例えば、Fポリマーの粒子と、Fポリマー以外の樹脂又は無機物とを合着(衝突、凝集等)させて得られる。
本組成物におけるF粒子の含有量は、本組成物の全体質量に対して、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。F粒子の含有量は、本組成物の全体質量に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
本組成物においては、F粒子の含有量を高めても良好な分散性や塗工性と造膜性を保ち、また得られる成形物にクラック等の欠陥が生じ難い。
本組成物におけるウレタン結合又はウレア結合を有する高分子は、1分子内に1個以上のウレタン結合[-NH-C(=O)O-]、又は1分子内に1個以上のウレア結合(-NH-C(=O)-NH-]を有する。かかるウレタン結合又はウレア結合は、高分子の主鎖に存在していても側鎖に存在していてもよい。
本組成物におけるウレタン結合又はウレア結合を有する高分子は、エーテル系ポリウレタン又は多糖類系ポリウレアであるのが好ましい。この場合、本組成物中でのF粒子の沈降を抑制でき、F粒子の分散性がより向上し、本組成物の造膜性が向上する。また、本組成物から得られる成形物が、電気特性、耐屈曲性、基材との密着性、低線膨張性、平滑性に優れやすい。
ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子は、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の官能基を有していてもよい。
エーテル系ポリウレタンとしては、例えば、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとの反応生成物、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとポリエーテルモノアルコールとの反応生成物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
これらは1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種又は2種以上を常法により付加重合したものが挙げられ、具体的には、ポリアルキレンオキシドや、テトラヒドロフランを強酸触媒の存在下に開環重合したポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエーテルモノアルコールは、炭素数15~24の直鎖アルキル基を有する1価飽和アルコールに、ポリアルキレンオキシドが付加した構造を有しているものが好ましい。かかる1価飽和アルコールとしては、例えばステアリルアルコールが挙げられる。また、前記ポリアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド単位に対するエチレンオキシド単位の比が1~2であるランダム共重合体であるのが好ましい。かかるポリエーテルモノアルコールは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ともいえる。
エーテル系ポリウレタンとして、粉末、水溶液又はエマルジョンの形態で調製された市販品を用いてもよく、例えばアデカ社製の「アデカノールUH」シリーズ(-462、-752、-140S、-420、-438、-450、-450VF、-472、-540、-550、-541VF、-526、-530等);RHEOX社製の「RHEOLATE」シリーズ(-266、-288、-244、-255、-278等);サンノプコ社製の「SNシックナーA」シリーズ(-803、-804、-807、-812、-814等);ダウ(旧ローム・アンド・ハース)社製の「プライマルRM」シリーズが挙げられる。
多糖類系ポリウレアとは、本明細書において、前記したポリイソシアネート単量体又はそのアダクト体と有機アミンとの反応物がさらに多糖類で変性されている、「多糖類で変性されているウレア」である。ここで多糖類としては、グルコース由来であるデキストリン、β-グルカン;フルクトース由来のフルクタン、イヌリン;N-アセチルグルコサミン由来であるキチンが挙げられる。
多糖類系ポリウレアはエタノール、イソプロパノール、イソブタノール、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ソルベントナフサ、アルキルシクロヘキサン等の溶剤を含んでいてもよい。
多糖類系ポリウレアとして市販品を用いてもよく、例えば、ビックケミー社の「RHEOBYK H4675VF」が挙げられる。
ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の重量平均分子量(Mw)は、5000~50000の範囲が好ましく、7000~20000の範囲がより好ましい。
ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子は、1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本組成物における、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の含有量は、Fポリマーの含有量に対して5質量%以下であるのが好ましく、3質量%以下であるのがより好ましい。ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の含有量は、Fポリマーの含有量に対して0.2質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上であるのがより好ましい。
また、本組成物における、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の含有量は、本組成物の全体質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。本組成物におけるウレタン系ポリマーの含有量は3質量%以下が好ましい。
本組成物では上記した作用機構により、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の含有量を少なくできる。そのため、本組成物から形成される成形物においてFポリマーに基づく物性を発現しやすい。また、F粒子の含有量を高めてもその凝集抑制作用やレオロジー調整作用がバランスし、本組成物が分散安定性に優れやすい。
本組成物における液状分散媒としては、大気圧下、25℃にて液体である化合物、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、水、アルコール、アミド、ケトン及びエステルが挙げられる。液状分散媒の沸点は50~240℃の範囲が好ましい。また、液状分散媒は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコールが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
これらの液状分散媒の中でも、水が特に好ましい。
本組成物における液状分散媒の含有量は、本組成物の全体質量に対して20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。液状分散媒の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。かかる範囲において、本組成物は好適には分散液状である液状、又はペースト状として取り扱うことができ、その分散安定性と塗工性がより向上しやすい。
本組成物は、さらに芳香族樹脂を含んでいてもよい。芳香族樹脂は、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。芳香族樹脂は、その前駆体として本組成物に含まれていてもよい。芳香族樹脂は、本組成物中に溶解していてもよく、溶解せず分散していてもよい。芳香族樹脂は、水溶性であるのが好ましい。
芳香族樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂、フェノール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂(液晶性芳香族ポリエステル等)、芳香族ポリエステルアミド(液晶性芳香族ポリエステルアミド等)、芳香族マレイミド、ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリイミド、芳香族ポリイミド前駆体(ポリアミック酸又はその塩)、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリアミドイミド前駆体、芳香族ポリエーテルイミド及び芳香族ポリエーテルイミド前駆体が挙げられ、芳香族ポリイミド前駆体、芳香族ポリアミドイミド又は芳香族ポリアミドイミド前駆体が好ましく、水溶性の芳香族ポリアミドイミドの前駆体又は水溶性の芳香族ポリイミドの前駆体がより好ましい。
この場合、芳香族樹脂がFポリマーと相互作用しやすく、さらに本組成物から形成される成形物が、金属箔等の基材との接着性やUV吸収性に優れやすい。
芳香族ポリイミド前駆体としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中で重合させたポリアミック酸や、該ポリアミック酸と、アンモニア水又は有機アミンを反応させたポリアミック酸塩が挙げられる。ポリアミック酸塩を水に溶解させることで、ポリアミック酸の水溶液を調製できる。芳香族ポリイミド樹脂またはその前駆体の具体例としては、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「ユピア(登録商標)-AT」シリーズ(宇部興産社製)が挙げられる。
芳香族ポリアミドイミド樹脂又はその前駆体としては、ジイソシアネート及び/又はジアミンと、酸成分としての三塩基酸無水物(又は三塩基酸クロリド)とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂又はその前駆体が挙げられる。
芳香族ポリアミドイミド樹脂またはその前駆体の具体例としては、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(以上、昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
本組成物が芳香族樹脂をさらに含む場合、その含有量は、本組成物の全体質量に対して0.01質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。芳香族樹脂の含有量は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
本組成物中の芳香族樹脂の含有量は、本組成物中のFポリマーの含有量に対して10質量%未満であるのが好ましく、5質量%以下がより好ましい。芳香族樹脂の含有量は、Fポリマーの含有量に対して0.1質量%以上であるのが好ましい。
芳香族樹脂の含有量が、かかる低い範囲にあれば、F粒子の分散安定性が向上し、本組成物から得られる成形物の物性が向上しやすい。その理由は必ずしも明確ではないが、芳香族樹脂が、低親水性のF粒子の分散剤かつ結着剤として高度に機能しやすくなる、すなわちF粒子の表面に付着し、成形物の形成に際してF粒子の緻密な焼成を促すためであると考えられる。
本組成物は、さらに非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含んでいてもよい。非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粒子が好ましい。本組成物が非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子としてPTFEの粒子を含む場合、その含有量は本組成物中のF粒子の含有量よりも多い方がより好ましく、PTFEの粒子とF粒子との合計に占めるF粒子の割合は、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、この場合の割合は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。
かかる本組成物は、分散安定性と取扱い性と長期保管安定性に優れやすい。また、本組成物の調製時や成形物の形成時において、PTFEが適度にフィブリル化し、PTFEに基づく物性に優れた高強度の成形物を形成しやすい。
また、この場合、PTFEの粒子のD50が0.1~1μmであり、F粒子のD50が0.1~1μmである態様、PTFEの粒子のD50が0.1~1μmであり、F粒子のD50が1~4μmである態様が好ましい。
本組成物は、さらに多価アルコールを含んでいてもよい。多価アルコールとしては、アルコール性の水酸基を2個または3個含有し、窒素原子を含有しない、沸点100℃以上の脂肪族多価アルコールが好ましい。多価アルコールの沸点は150℃以上が好ましく、200℃以上が好ましい。沸点は340℃以下であるのが好ましい。
また、多価アルコールは、水と混和するものが好ましい。
多価アルコールとしては、エチレングリコ一ル(198℃)、1,2-プロパンジオール(188℃)、1,3-プロパンジオール(214℃)、1,2-ブタンジオール(190℃)、1,3-ブタンジオール(208℃)、1,4-ブタンジオール(229℃)、1,5-ペンタンジオール(242℃)、2-ブテン-1,4-ジオール(235℃)、グリセリン(290℃)、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(295℃)、1,2,6-へキサントリオール(178℃/666Pa)が挙げられる。なお、括弧内は各々の多価アルコールの沸点である。
多価アルコールとしては、グリセリンが好ましい。この場合、本組成物中でのF粒子の分散性がより向上し、得られる成形物において、電気特性、耐屈曲性、基材との密着性、低線膨張性が向上しやすい。
本組成物が多価アルコールをさらに含む場合、多価アルコールは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
本組成物が多価アルコールをさらに含む場合、多価アルコールの液状分散媒(好適には水)に対する含有質量比は、0.2以上であるのが好ましく、0.25以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。かかる含有質量比は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。含有質量比がかかる範囲の場合、多価アルコールの凝集抑制作用とレオロジー調整作用がバランスよく発揮され、本組成物が分散安定性に優れやすい。
また、本組成物における多価アルコールの含有量は、本組成物の全体質量に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。多価アルコールの含有量は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
かかる範囲において、本組成物は液状又はペースト状として取り扱うことができ、その分散安定性と塗工性がより向上しやすい。
本組成物は、F粒子の分散性を向上させる観点から、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤はノニオン性であるのが好ましい。
界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のグリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種のノニオン性界面活性剤を用いる場合のノニオン性界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤とグリコール系界面活性剤とであるのが好ましい。
界面活性剤の具体例としては、「フタージェント」シリーズ(株式会社ネオス社製 フタージェントは登録商標);「サーフロン」シリーズ(AGCセイミケミカル社製 サーフロンは登録商標);「メガファック」シリーズ(DIC株式会社製 メガファックは登録商標);「ユニダイン」シリーズ(ダイキン工業株式会社製 ユニダインは登録商標);「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製);「KF-6011」、「KF-6043」(以上、信越化学工業株式会社製);「Tergitol」シリーズ(ダウケミカル社製、「Tergitol TMN-100X」等。)が挙げられる。
本組成物は、本組成物から形成される成形物の接着性と低線膨張性を向上させる観点から、Fポリマー、上記した芳香族樹脂以外の樹脂材料をさらに含んでいてもよい。かかる樹脂材料は熱硬化性であっても熱可塑性であってもよく、変性されていてもよく、本組成物中に溶解していてもよく、溶解せず分散していてもよい。
かかる樹脂材料としては、芳香族性を有さない、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。
本組成物は、無機粒子をさらに含んでいてもよい。無機粒子としては、窒化物粒子又は無機酸化物粒子が好ましく、窒化ホウ素粒子、酸化ベリリウム粒子、ケイ酸塩粒子(シリカ粒子、ウォラストナイト粒子、タルク粒子)、金属酸化物(酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)粒子又はメタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)粒子がより好ましく、シリカ粒子がさらに好ましい。これらの無機粒子は、焼成されたセラミックス粒子であってもよい。
無機粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の無機粒子を混合して用いる場合、2種のシリカ粒子を混合して用いてもよく、シリカ粒子と、他の無機粒子を混合して用いてもよい。
本組成物が無機粒子をさらに含む場合、本組成物から生成する成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。また、本組成物は無機粒子を含んでいても上述した作用機構により分散安定性に優れており、緻密な成形物を得やすい。そのため、本組成物からは、Fポリマー及び無機粒子のそれぞれの物性を高度に具備した成形物を形成しやすい。
無機粒子は、その表面の少なくとも一部が、シランカップリング剤(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)で表面処理されているのが好ましい。かかる無機粒子はF粒子との親和性に優れ、本組成物の分散性を向上させやすい。
無機粒子のD50は0.1μm超が好ましく、0.25μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。D50は10μm未満が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。また、無機粒子の比表面積は1~20m/gが好ましく、5~8m/gがより好ましい。
無機粒子の形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機粒子の具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられ、略真球状又は鱗片状であるのが好ましい。
なお、略真球状の無機粒子とは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した際に、長径に対する短径の比が0.7以上である球形の粒子の占める割合が95%以上である無機粒子を意味する。
無機粒子は、中でも、無機粒子のD50が0.10μm超10μm未満であり、かつ、粒子径3μm以上の粒子を実質的に含まない略真球状であるか、又は、平均長径が1μm以上、かつ、アスペクト比が5以上である鱗片状であるのがより好ましく、前者の略真球状であるのがさらに好ましい。
かかる場合、本組成物中で無機粒子が濡れやすくなり、F粒子との相互作用が亢進しやすい。また、本組成物より形成される成形物において、無機粒子とFポリマーとがより均一に分布しやすく、両者の物性がバランスよく発現しやすい。
無機粒子の好適な具体例としては、シリカ粒子(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛粒子(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ粒子(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン粒子(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン粒子(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカ粒子(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルク粒子(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイト粒子(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素粒子(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
本組成物が無機粒子をさらに含む場合、その含有量はFポリマーの含有量に対して、100質量%超300質量%以下であるのが好ましい。無機粒子の含有量はFポリマーの含有量に対して200質量%以下がより好ましい。また、かかる含有量は120質量%以上が好ましく、150質量%以上がより好ましい。
無機粒子を多量に含む場合にも、上述の作用機構により本組成物は分散安定性と塗工性に優れやすい。また、本組成物から厚い成形物を粉落ち等の欠点なく容易に形成でき、かつ得られる成形物の物性が向上しやすい。
本組成物が無機粒子をさらに含む場合、F粒子と無機粒子の合計含有量は、本組成物の全体質量に対して20質量%以上であるのが好ましい。前記合計含有量は30質量%以上であるのがより好ましい。前記合計含有量は70質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。
この場合、本組成物から塗膜等の成形物を厚く、かつ均一性高く形成でき、Fポリマーによる物性と無機粒子による物性を高度に発現しやすい。すなわち、F粒子及び無機粒子の含有量がかかる高い範囲にあっても、上述した作用機構により、本組成物は、分散安定性に優れ、その成形物の物性を向上させることができる。
本組成物は、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、各種フィラー等の他の成分をさらに含んでいてもよい。
本組成物の粘度は10mPa・s以上が好ましく、30mPa・s以上がより好ましく、50mPa・s以上がさらに好ましい。本組成物の粘度は10000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下がさらに好ましい。
本組成物のチキソ比は1.0以上が好ましい。本組成物のチキソ比は3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。この場合、本組成物は塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物(ポリマー層等)を形成しやすい。
本組成物が液状分散媒として水を含む場合、本組成物のpHは7より大きいのが好ましく、8~13の範囲であるのがより好ましい。この場合、本組成物が分散安定性と保存安定性に優れやすい。
上記の範囲にpHを調節する観点から、本組成物は、さらにpH調整剤又はpH緩衝剤を含んでいてもよい。pH調整剤としては、アミン、アンモニア、クエン酸が挙げられる。pH緩衝剤としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムが挙げられる。
本組成物においては、分散層率が60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。ここで、分散層率とは、分散液の態様である本組成物(18mL)をスクリュー管(内容積:30mL)に入れ、25℃にて14日静置した際、静置後の、スクリュー管中の本組成物全体の高さと沈降層(分散層)の高さとから、以下の式により算出される値である。なお、静置後に沈降層が確認されず、状態に変化がない場合には、本組成物全体の高さに変化がないとして、分散層率は100%とする。
分散層率(%)=(沈降層の高さ)/(組成物全体の高さ)×100
本組成物は、上述した作用機構により、分散安定性、特に長期貯蔵安定性に優れている。本組成物を25℃にて30日間静置した場合における、本組成物のチキソ比の変動幅(絶対値)は、3以下が好ましく、1未満が好ましい。
本組成物は、F粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを混合して調製できる。混合方法としては、各成分を一括添加又は順次添加して混合する方法;F粒子と液状分散媒、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と液状分散媒をそれぞれ予め混合し、得られた二種の混合物をさらに混合する方法等が挙げられる。
なお、芳香族樹脂、非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子、多価アルコール、界面活性剤、無機粒子、任意に添加してもよい他の成分等を、本組成物にさらに含有させる場合は、F粒子を液状分散媒に予め分散させる際に同時に添加するか、F粒子を分散させる前に、液状分散媒に予め添加しておくのが好ましい。本組成物が芳香族樹脂を含む場合、芳香族樹脂のワニスとしてF粒子と混合してもよい。ワニスを構成する溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、トルエンが挙げられる。
本組成物がさらに非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む場合、F粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む混合物に、非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む混合物を添加してもよい。
本組成物を調製する際の混合方法としては、例えば、プロペラブレード、タービンブレード、パドルブレード、シェル状ブレード等のブレード(撹拌翼)を一軸あるいは多軸で備える撹拌装置や、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー又はプラネタリーミキサー、自転公転撹拌機による撹拌;ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル(ガラスビーズ又は酸化ジルコニウムビーズなどの粉砕媒体を用いたビーズミル)、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル又はアジテーターミル等のメディアを使用する分散機による混合;マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザーなどの高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等の、メディアを使用しない分散機を用いた混合が挙げられる。
中でも、混合に使用する装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、自転公転撹拌機又はプラネタリーミキサーが好ましく、プラネタリーミキサーがより好ましい。
本組成物は、F粒子とウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と液状分散媒とを含有する組成物を混合して混合物を得て、混合物に、さらに液状分散媒を添加して粘度を調整してもよい。
この場合、芳香族樹脂、非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子、多価アルコール、界面活性剤、無機粒子、任意に添加してもよい他の成分等は、混合前の組成物に添加してもよく、混合物とウレタン系ポリマー又は液状分散媒を混合する際に添加してもよい。
本組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成する用途、車載エンジンにおけるセラミックス部品や金属部品同士を接着する用途、熱交換器や、それを構成するフィン又は管に耐腐蝕性を付与する用途、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイルに含浸し乾燥して熱伝導性耐熱被覆層を形成する用途、医療用バイアル、シリンジ等のガラス容器内外をコーティングする用途に使用できる。
本組成物は、分散安定性及び長期保存安定性に優れており、本組成物からは、耐屈曲性等の柔軟性、すなわち耐クラック性や低線膨張性に優れ、基材に対して強固な接着性を示し、粉落ちし難い成形品を形成できる。
本発明は、本組成物を、基材の表面に塗布し加熱して、Fポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法を包含する。すなわち、本組成物を基材の少なくとも一方の表面に付与して液状被膜を形成し、この液状被膜を加熱して分散媒を除去して乾燥被膜を形成し、さらに乾燥被膜を加熱してFポリマーを焼成すれば、Fポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を基材の表面に有する積層体が得られる。
基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン及びそれらの合金で構成される金属箔等の金属基板、テトラフルオロエチレン系ポリマー、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド等の耐熱性樹脂で構成される耐熱フィルム、繊維強化樹脂基板の前駆体であるプリプレグが挙げられる。中でも金属基板が好ましく、銅箔であるのがより好ましい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.1μm未満が好ましく、0.05μm以下がより好ましい。前記十点平均粗さは、0.001μm以上が好ましい。かかる無粗化基材であっても、本組成物からは剥離強度に優れた積層体が得られ、かかる積層体から伝送特性に優れたプリント基板等を形成できる。なお、基材の表面の十点平均粗さは、JIS B 0601:2013の附属書JAで規定される値である。
基材の厚さは、2~100μmが好ましい。基材が金属箔である場合には、基材の厚さは1~35μmであるのが好ましい。また、基材は、剥離層を介してキャリア銅箔上に積層された極薄銅箔(厚さ2~5μm)であるキャリア付銅箔であってもよい。
本組成物を金属基板(基材)の表面に付与する方法としては、金属基板の表面に本組成物からなる安定した液状被膜(ウェット膜)が形成される方法であればよく、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法を用いれば、簡単な設備で効率よく金属基板の表面に液状被膜を形成できる。
塗布法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
液状被膜を乾燥する際は、液状被膜を液状分散媒が揮発する温度で加熱し、乾燥被膜を金属基板(基材)の表面に形成する。かかる乾燥における加熱の温度は、液状分散媒の沸点+50℃以下が好ましく、液状分散媒の沸点以下がより好ましく、液状分散媒の沸点-50℃以下の温度がさらに好ましい。乾燥時の温度は、120~200℃が好ましい。なお、液状分散媒を除去する工程で空気を吹き付けてもよい。
乾燥時に、液状分散媒は、必ずしも完全に揮発させる必要はなく、保持後の層形状が安定し、自立膜を維持できる程度まで揮発させればよい。
Fポリマーの焼成の際は、Fポリマーの溶融温度以上の温度で乾燥被膜を加熱するのが好ましい。かかる加熱の温度は380℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
それぞれの加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。加熱は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。また、加熱雰囲気は、酸素ガス等の酸化性ガス雰囲気、水素ガス等の還元性ガス雰囲気、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気のいずれであってもよい。
加熱時間は0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
以上のような条件で加熱すれば、高い生産性を維持しつつ、F層を好適に形成できる。
F層の厚さは0.1~200μmが好ましく、10μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
厚いF層を得る目的で、本組成物の塗布、乾燥、焼成の工程を複数回繰り返してF層を形成してもよい。
例えば、本組成物を基材に塗布し、加熱により液状分散媒を除去し膜を形成する。形成した膜の上にさらに本組成物を塗布して液状分散媒を除去し、さらに加熱によりFポリマーを焼成してF層を形成してもよい。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本組成物を用いれば、F層におけるFポリマーの物性を損なわずに、このように剥離強度に優れる積層体を容易に形成できる。
本組成物は、基材の一方の表面にのみ付与してもよく、基材の両面に付与してもよい。前者では、前記基材で構成される基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者では、前記基材で構成される基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。後者の積層体は、より反りが発生しにくいため、その加工に際する取扱い性に優れる。
かかる積層体の具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。これらの積層体は、電気特性等の諸物性に優れるのでプリント基板材料等として好適であり、フレキシブルプリント基板やリジッドプリント基板の製造に使用できる。
基材の最表面は、積層体の低線膨張性や接着性を一層向上させるために、さらに表面処理されてもよい。
表面処理の方法としては、アニール処理、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、エキシマ処理、シランカップリング処理が挙げられる。
アニール処理における条件は、温度を120~180℃とし、圧力を0.005~0.015MPaとし、時間を30~120分間とするのが好ましい。
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴン等)、水素ガス、アンモニアガス、酢酸ビニルが挙げられる。これらのガスは、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
積層体の最表面には、さらに他の基板を積層してもよい。
他の基板としては、金属基板、耐熱性樹脂フィルム、繊維強化樹脂板の前駆体であるプリプレグ、耐熱性樹脂フィルム層を有する積層体、プリプレグ層を有する積層体が挙げられる。
金属基板としては、上記した金属基板が挙げられる。耐熱性樹脂フィルムは、1種以上の耐熱性樹脂を含むフィルムであり、耐熱性樹脂としては、上記した樹脂が挙げられる。
F層と他の基材との積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。
以上、本組成物、及び本組成物から形成されるポリマー層を有する積層体の製造方法について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本組成物は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本組成物から形成される層を有する積層体の製造方法は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加で有してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の詳細
[F粒子]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するポリマー(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.1μm)
F粒子2:TFE単位、PPVE単位及び-CF(CF)CHOH構造を有するフルオロアリルエーテルに基づく単位を、この順に97.0モル%、2.0モル%、1.0モル%含み、水酸基を主鎖炭素数1×10個あたり10000個有するポリマー(溶融温度:305℃)からなる粒子(D50:2.4μm)
F粒子3:TFE単位及びPPVE単位をこの順に97.5モル%、2.5モル%含み、酸素含有極性基を有さないポリマー(溶融温度:300℃)からなるポリマー(D50:2.0μm)
[ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子]
高分子1(ウレタン型ポリマー):ポリエーテルポリオール変性ポリウレタン(アデカ社製、商品名「アデカノールUH450VF」)
高分子2(ウレア型ポリマー):多糖変性ポリウレア(ビックケミー・ジャパン社製、商品名「RHEOBYK H-4675VF」)
[界面活性剤]
界面活性剤1:ノニオン性界面活性剤(ビックケミー・ジャパン社製、商品名「BYK-3450」)
[芳香族樹脂のワニス]
ワニス1:水溶性の芳香族ポリアミドイミド(PAI1)の前駆体を含む水ワニス(昭和電工マテリアルズ社製、商品名「HPC-1000」)
2.組成物の製造例
[例1-1]
ポットに、F粒子1、高分子1、界面活性剤1、ワニス1、水、アンモニア水、及び炭酸水素アンモニウムを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、全体としてF粒子1(40質量部)、高分子1(0.6質量部)、PAI1(0.2質量部)、界面活性剤1(2質量部)及び水(57.2質量部)を含む、組成物1(粘度:400mPa・s、pH:10)を得た。
[例1-2]~[例1-6]
F粒子の種類と量、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の種類と量を表1に示す通り変更した以外は、例1-1と同様にして組成物2~6を得た。
Figure 2023019614000001
3.積層体の製造例
[例2-1]
ロール・トゥー・ロールプロセスにより、無粗化銅箔(表面の十点平均粗さ:0.05μm以下、厚さ:18μm)の表面に、組成物1を、小径グラビアリバース法で塗布してウェット膜を形成した。続いて、ウェット膜が形成された銅箔を、通風乾燥炉(炉温120℃)に通して乾燥被膜を形成させ、さらに窒素ガス雰囲気の380℃の焼成炉に通して加熱し、F粒子1を焼成した。
これにより、銅箔と、その表面に組成物1から形成されたポリマー層(厚さ:50μm)が形成された積層体1を得た。
[例2-2]~[例2-6]
組成物1を組成物2~6に変更した以外は、例2-1と同様にして積層体2~6を得た。
4.評価
4-1.組成物の分散安定性
それぞれの組成物(18mL)を、をスクリュー管(内容積:30mL)に入れ、25℃にて14日静置した。静置後の、スクリュー管中の組成物全体の高さと沈降層(分散層)の高さとから、以下の式により分散層率を算出し、さらにスクリュー管を手で振るった際の再分散性を確認し、下記の基準に従って分散安定性を評価した。
[評価基準]
〇:分散層率が60%以上で、再分散も容易である
△:分散層率が60%未満であるが、再分散は容易である
×:分散層率が60%未満で、再分散が困難である
4-2.組成物の造膜性
それぞれの組成物から積層体を製造する際の、得られた積層体のポリマー層の表面のクラックの有無を目視で観察して、下記の基準に従って造膜性の評価とした。
[評価基準]
〇:クラックが生じることなく、一度の塗工と焼成でポリマー層を形成できる
△:クラックの発生はごく僅かである
×:クラックが多数観察される
4-3.積層体の誘電正接
それぞれの積層体から、長さ100mm、幅50mmの矩形状の試験片を切り出し、塩化第二鉄水溶液でエッチングして銅箔を除去し、ポリマー層単体を得た。SPDR(スプリットポスト誘電体共振)法にて、ポリマー層の誘電正接(測定周波数:10GHz)を測定し、下記の基準に従って評価した。
[評価基準]
〇:誘電正接が0.0020未満である
△:誘電正接が0.0020以上0.0025以下である
×:誘電正接が0.0025超である
なお、4-3.の誘電正接の測定において同時に測定した積層体1~積層体6の比誘電率は、いずれも2.1以下であった。
4-4.積層体の層間密着性
それぞれの積層体から矩形状(長さ100mm、幅10mm)の試験片を切り出し、試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を固定し、引張り速度50mm/分、長さ方向の片端から試験片に対して90°で、ポリマー層と銅箔とを剥離させた。その際にかかる最大荷重を剥離強度とし、下記の基準に従って層間密着性を評価した。
[評価基準]
〇:剥離強度が12N/cm超である
△:剥離強度が8N/cm以上12N/cm以下である
×:剥離強度が8N/cm未満である
4-1~4-4に記した評価の結果をまとめて表2に示す。
Figure 2023019614000002
本発明の組成物は分散安定性に優れ、フィルム、繊維強化フィルム、プリプレグ、金属積層板(樹脂付金属箔)に容易に加工できる。得られる加工物品は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、すべり軸受け等の材料として使用できる。

Claims (15)

  1. フッ素含有量が65~76質量%の、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子と、液状分散媒とを含む、組成物。
  2. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが有する酸素含有極性基の量が、主鎖の炭素数1×10個あたり、100~10000個である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが有する酸素含有極性基が、カルボニル基含有基である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が20質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対して5質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 前記ウレタン結合又はウレア結合を有する高分子が、エーテル系ポリウレタン又は多糖類系ポリウレアである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. さらに芳香族樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. さらに非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. さらに多価アルコールを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. さらに界面活性剤を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 前記液状分散媒が水である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 前記液状分散媒が水であり、pHが7より大きい、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物を、基材の表面に塗布し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
  14. 前記基材の表面の十点平均粗さが0.1μm未満である、請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記ポリマー層の厚さが10μm以上である、請求項13又は14に記載の製造方法。
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