JP2022163538A - 分散液及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】分散安定性に優れ、得られる成形物が電気特性、耐屈曲性等の柔軟性、金属箔等の基材との接着性・密着性及び低線膨張性に優れており、また厚く平滑なポリマー層を形成できる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液の提供。【解決手段】テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーと、液状分散媒とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多い、分散液。【選択図】なし

Description

本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーとを含む分散液、かかる分散液から形成されるポリマー層を有する積層体、及びテトラフルオロエチレン系ポリマーと無機粒子を含むポリマー層を有する積層体に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れており、種々の産業用途に利用されている。前記物性を基材表面に付与するために用いるコーティング剤として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液が知られており、かかる分散液は、高周波帯域の周波数に対応するプリント基板の誘電体層を形成する材料としても注目されている。
一方、かかる分散液の物性を向上する試みとして、特許文献1~4には、フッ素系添加剤、ポリビニルアセタール、ウレタン構造を有するポリマー、ウレタン微粒子や微粒子セラミックスを添加した、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む非水系分散液が記載されている。
特開2020-186351号公報 特開2017-210548号公報 特開2017-210549号公報 特開2016-194017号公報
表面張力が概して低いテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液は、分散状態が悪いため、基材に塗工し焼成してポリマー層を形成する際に、前記粒子のパッキングが粗くなりやすい。その結果、特に、厚いポリマー層を形成しようとすると、ポリマー層の緻密性に問題が生じやすい。
具体的には、ロール・トゥー・ロールのような連続生産プロセスで金属箔等の基材表面に前記ポリマー層を形成させると、ポリマー層にクラックやピンホールが発生しやすくなる。また、テトラフルオロエチレン系ポリマーが低線膨張性であることに起因して、前記ポリマー層と基材とからなる積層体が反りやすくなる。
前記分散液に無機粒子を配合して、形成される成形物の線膨張係数を調整する場合、分散液の分散性や取扱い性が低下し、塗工に際して前記粒子や無機粒子の脱落(粉落ち)が発生しやすくなる。また、形成される成形物の基材との密着性も低下しやすくなる。
この傾向は、特許文献4の段落番号0019の記載からも、無機粒子の含有量が多い場合に特に顕著である。
本発明者らは、鋭意検討した結果、無機粒子の含有量がテトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多い分散液において、ウレタン系ポリマーをさらに含有させた分散液は、分散安定性に優れることを知見した。また、かかる分散液からは厚く平滑な成形物を形成可能なこと、さらに得られる成形物は緻密であり、低誘電正接等の電気特性、耐屈曲性等の柔軟性、低線膨張性に優れると共に、金属箔等の基材との接着・密着性が改善されることを知見した。
本発明の目的は、分散安定性に優れ、得られる成形物が電気特性、耐屈曲性等の柔軟性、低線膨張性や、金属箔等の基材との接着性・密着性に優れ、厚く平滑なポリマー層を形成できるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液、かかる分散液から形成されるポリマー層を有する積層体、及び耐屈曲性等の柔軟性、低線膨張性や、金属箔等の基材との接着性・密着性に優れた積層体の提供である。
本発明は、下記の態様を有する。
<1> テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーと、液状分散媒とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多い、分散液。
<2> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、<1>の分散液。
<3> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が、熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む、<1>又は<2>の分散液。
<4> 前記無機粒子が、シリカ粒子である、<1>~<3>のいずれかの分散液。
<5> 前記無機粒子の平均粒子径が、0.1μm超10μm未満である、<1>~<4>のいずれかの分散液。
<6> 前記無機粒子の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対して100質量%超300質量%以下である、<1>~<5>のいずれかの分散液。
<7> 前記ウレタン系ポリマーがエーテル系ポリウレタンである、<1>~<6>のいずれかの分散液。
<8> 前記ウレタン系ポリマーの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対して10質量%未満である、<1>~<7>のいずれかの分散液。
<9> 前記液状分散媒が水である、<1>~<8>のいずれかの分散液。
<10> さらに芳香族樹脂を含む、<1>~<9>のいずれかの分散液。
<11> さらに界面活性剤を含む、<1>~<10>のいずれかの分散液。
<12> <1>~<11>のいずれかの分散液を、基材の表面に塗布し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多いポリマー層を形成し、前記基材と前記層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
<13> 基材と、前記基材の表面に、テトラフルオロエチレン系ポリマーと無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多いポリマー層とを有する、積層体。
<14> 前記基材の表面の十点平均粗さが0.1μm未満である、<13>の積層体。
<15> 前記ポリマー層の厚さが25μm以上である、<13>又は<14>の積層体。
本発明によれば、分散安定性に優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む分散液、かかる分散液から形成されるポリマー層を有する積層体、及びテトラフルオロエチレン系ポリマーと無機粒子を含むポリマー層を有する積層体を提供できる。本発明の分散液から形成される積層体及び本発明の積層体は、低誘電正接等の電気特性、耐屈曲性等の柔軟性、金属箔等の基材との接着性・密着性、表面平滑性に優れ、例えばプリント基板の構成材料として有用である。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、対象物(粒子)の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
対象物のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「分散液の粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で測定される粘度である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
本発明の分散液(以下、「本分散液」とも記す。)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーと、液状分散媒とを含み、無機粒子の含有量がFポリマーの含有量よりも多い分散液である。
本分散液は分散安定性に優れる。また、本分散液から形成される成形物(焼成物)は、電気特性等のFポリマーに基づく物性及び線膨張性等の無機粒子に基づく物性に優れ、表面平滑性に優れると共に、耐屈曲性等の柔軟性や、基材との接着性・密着性、低線膨張性にも優れる。
本分散液の分散安定性が向上する理由は、必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推定している。
表面エネルギーが概して低いFポリマーの粒子であるF粒子は、無機粒子と相互作用しにくいため、F粒子及び無機粒子は、分散液中でそれぞれ凝集しやすい状態にあるともみなせる。かかる傾向は、分散液中の無機粒子のFポリマーに対する含有量が多い場合に顕著である。本分散液においては、ウレタン系ポリマーが本分散液中でF粒子及び無機粒子の分散剤として作用し、これらの凝集を抑制していると考えられる。さらに、ウレタン系ポリマーが本分散液のレオロジー調整剤としても作用して、本分散液の分散安定性と塗工性を向上させていると考えられる。
そのため、本分散液を塗工しFポリマーを焼成して成形物(ポリマー層)を形成すると、塗工に際してF粒子と無機粒子が粉落ちすることなく高度にパッキングしやすくする。
その結果、本分散液は分散安定性、塗工性に優れ、本分散液からは電気特性、耐屈曲性、基材との密着性、低線膨張性、平滑性等に優れ、粉落ちが起こりにくく、Fポリマーの物性と無機粒子の物性とを高度に具備した成形物を容易に形成できたと考えられる。
本分散液におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を含むポリマーである。Fポリマーは、熱溶融性であっても非熱溶融性であってもよいが、熱溶融性であるのが好ましい。Fポリマーは1種類を単独で用いても2種類以上を用いてもよく、その場合は、Fポリマーの少なくとも1種は熱溶融性であるのが好ましい。
かかる場合、本分散液から形成される成形物が柔軟性及び、基材との接着性・密着性に優れやすい。なお、熱溶融性とは荷重49Nの条件下、ポリマーの溶融温度よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が1から1000g/10分となる温度が存在する溶融流動性のポリマーを意味する。
Fポリマーが熱溶融性である場合、その溶融温度は、200℃以上が好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。かかる場合、本分散液から形成される成形物が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーにおけるフッ素原子含有量は、70質量%以上であるのが好ましく、70~76質量%であるのがより好ましい。本分散液は、上述した作用機構により、かかるフッ素原子含有量の高いFポリマーの粒子の水中分散性を特に向上させやすい。
Fポリマーのガラス転移点は、75~125℃が好ましく、80~100℃がより好ましい。
Fポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位及びエチレンに基づく単位を含むポリマー(ETFE)、TFE単位及びペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)を含むポリマー(PFA)、TFE単位及びヘキサフルオロプロペン(HFP)に基づく単位を含むポリマー(FEP)が挙げられる。ETFE、PFA及びFEPのそれぞれは、さらに他の単位を含んでいてもよい。PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(PPVE)が好ましく、PPVEがより好ましい。
Fポリマーは、PFA又はFEPであるのが好ましく、PFAであるのがより好ましい。
Fポリマーの少なくとも1種は、酸素含有極性基を有するのが好ましい。この場合、Fポリマーと、無機粒子及びウレタン系ポリマーとの親和性が向上するため、本分散液は分散安定性に優れやすい。
酸素含有極性基は、Fポリマー中の単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られる、酸素含有極性基を有するFポリマーが挙げられる。酸素含有極性基は、水酸基含有基、カルボニル基含有基及びホスホノ基含有基が好ましく、本分散液の分散安定性の観点から、水酸基含有基及びカルボニル基含有基がより好ましく、カルボニル基含有基がさらに好ましい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH、-C(CFOH及び1,2-グリコール基(-CH(OH)CHOH)がより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーがカルボニル基含有基を有する場合、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましく、800~1500個がさらに好ましい。なお、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
Fポリマーとしては、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有するポリマーが好ましく、TFE単位、PAVE単位及び、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有するモノマーに基づく単位を含むポリマーであるのがより好ましく、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.5~9.97モル%、0.01~3モル%、含むポリマーであるのがさらに好ましい。
また、カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。
かかるポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
これらのFポリマーは、その粒子が分散安定性に優れるだけでなく、本分散液から得られる成形物(ポリマー層等)中において、より緻密かつ均質に分布しやすい。さらに、成形物中において微小球晶を形成しやすく、他の成分との密着性が高まりやすい。その結果、電気特性等の各種物性に優れた成形物を、より得られやすい。
本分散液において、F粒子のD50は0.1~25μmであるのが好ましい。F粒子のD50は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。F粒子のD50は0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。この範囲のD50において、F粒子の流動性と分散性とが良好となりやすい。
本分散液の分散安定性の観点から、F粒子の嵩密度は0.15g/m以上が好ましく、0.20g/m以上がより好ましい。F粒子の嵩密度は0.50g/m以下が好ましく、0.35g/m以下がより好ましい。
また、F粒子の比表面積は、1~8m/gが好ましく、1~3m/gがより好ましい。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種のF粒子を用いる場合、F粒子は、非熱溶融性のFポリマー(好適にはPTFE)の粒子と、熱溶融性のFポリマー(好適には溶融温度が200~320℃であるポリマー、より好適には前記したTFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有するポリマー)の粒子とを含むのが好ましい。そして、前者の粒子の含有質量が後者の粒子の含有質量よりも多い方がより好ましい。
この場合、前者の粒子と後者の粒子との合計に占める後者の粒子の割合は、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、この場合の割合は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。
かかる本分散液は、分散安定性と取扱い性と長期保管安定性に優れやすい。また、本分散液の調製時や成形物の形成時において、PTFEが適度にフィブリル化し、その結果、無機粒子が成形物中に担持されやすくなり、PTFEに基づく物性に優れた高強度の成形物を形成しやすい。
また、この場合、非熱溶融性のFポリマーの粒子のD50が0.1~1μmであり、熱溶融性のFポリマーの粒子のD50が0.1~1μmである態様、非熱溶融性のFポリマーの粒子のD50が0.1~1μmであり、熱溶融性のFポリマーの粒子のD50が1~4μmである態様が好ましい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂又は無機物を含んでいてもよいが、Fポリマーを主成分とするのが好ましい。F粒子におけるFポリマーの含有量は80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
上記樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、(熱可塑性)ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、マレイミド等の耐熱性樹脂が挙げられる。無機物としては、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、メタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)が挙げられる。無機物は、その表面の少なくとも一部が表面処理されていてもよい。
Fポリマー以外の樹脂又は無機物を含むF粒子は、Fポリマーをコアとし、Fポリマー以外の樹脂又は無機物をシェルに有するコア-シェル構造を有するか、Fポリマーをシェルとし、Fポリマー以外の樹脂又は無機物をコアに有するコア-シェル構造を有していてもよい。かかるF粒子は、例えば、Fポリマーの粒子と、Fポリマー以外の樹脂又は無機物とを合着(衝突、凝集等)させて得られる。
本分散液におけるF粒子の含有量は、本分散液の全体質量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。F粒子の含有量は、本分散液の全体質量に対して45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
本分散液が含有する無機粒子としては、窒化物粒子又は無機酸化物粒子が好ましく、窒化ホウ素粒子、酸化ベリリウム粒子、ケイ酸塩粒子(シリカ粒子、ウォラストナイト粒子、タルク粒子)、金属酸化物(酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)粒子又はメタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)粒子がより好ましく、シリカ粒子がさらに好ましい。これらの無機粒子は、焼成されたセラミックス粒子であってもよい。
無機粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の無機粒子を混合して用いる場合、2種のシリカ粒子を混合して用いてもよく、シリカ粒子と、他の無機粒子を混合して用いてもよい。
本分散液が無機粒子を含むことで、本分散液から生成する成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。また、本分散液は無機粒子を含んでいても上述した作用機構により分散安定性に優れており、緻密な成形物を得やすい。そのため、本分散液からは、Fポリマー及び無機粒子のそれぞれの物性を高度に具備した成形物を形成しやすい。
無機粒子は、その表面の少なくとも一部が、シランカップリング剤(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)で表面処理されているのが好ましい。かかる無機粒子はF粒子との親和性に優れ、本分散液の分散性を向上させやすい。
無機粒子のD50は0.1μm超が好ましく、0.25μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。D50は10μm未満が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。また、無機粒子の比表面積は1~20m/gが好ましく、5~8m/gがより好ましい。
無機粒子の形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機粒子の具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられ、略真球状又は鱗片状であるのが好ましい。
なお、略真球状の無機粒子とは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した際に、長径に対する短径の比が0.7以上である球形の粒子の占める割合が95%以上である無機粒子を意味する。
無機粒子は、中でも、無機粒子のD50が0.10μm超10μm未満であり、かつ、粒子径3μm以上の粒子を実質的に含まない略真球状であるか、又は、平均長径が1μm以上、かつ、アスペクト比が5以上である鱗片状であるのがより好ましく、前者の略真球状であるのがさらに好ましい。
かかる場合、本分散液中で無機粒子が濡れやすくなり、F粒子との相互作用が亢進しやすい。また、本分散液より形成される成形物において、無機粒子とFポリマーとがより均一に分布しやすく、両者の物性がバランスよく発現しやすい。
無機粒子の好適な具体例としては、シリカ粒子(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカ粒子(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルク粒子(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイト粒子(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素粒子(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
本分散液において、無機粒子の含有量はFポリマーの含有量よりも多い。具体的には、無機粒子の含有量はFポリマーの含有量に対して、100質量%超300質量%以下であるのが好ましい。無機粒子の含有量はFポリマーの含有量に対して200質量%以下がより好ましい。また、かかる含有量は120質量%以上が好ましく、150質量%以上がより好ましい。
無機粒子を多量に含む場合にも、上述の作用機構により本分散液は分散安定性と塗工性に優れやすい。また、本分散液から厚い成形物を粉落ち等の欠点なく容易に形成でき、かつ得られる成形物の物性が向上しやすい。
本分散液におけるF粒子と無機粒子の合計含有量は、本分散液の全体質量に対して20質量%以上であるのが好ましい。前記合計含有量は30質量%以上であるのがより好ましい。前記合計含有量は70質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。
この場合、本分散液から塗膜等の成形物を厚く、かつ均一性高く形成でき、Fポリマーによる物性と無機粒子による物性を高度に発現しやすい。すなわち、F粒子及び無機粒子の含有量がかかる高い範囲にあっても、上述した作用機構により、本分散液は、分散安定性に優れ、その成形物の物性を向上させることができる。
本分散液におけるウレタン系ポリマーは、1分子内に1個以上のウレタン結合(-NH-COO-)を有する。かかるウレタン結合はウレタン系ポリマーの主鎖に存在していても側鎖に存在していてもよい。
ウレタン系ポリマーとしては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物、ポリイソシアネートとポリオールと鎖伸長剤との反応生成物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
これらは1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量300~6000)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体等のグリコール成分とコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のジヒドロキシカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体等の酸成分とから脱水縮合反応によって得られるポリエステルや、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、及びこれらの共重合ポリエステルが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種又は2種以上を常法により付加重合したもの、具体的には、テトラヒドロフランを強酸触媒の存在下に開環重合したポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールとジフェニルカーボネート、ホスゲンとの反応によって得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
鎖伸長剤としては、分子量300以下の、分子内に少なくとも2個以上の活性水素を含有する化合物が用いられ、例えばポリエステルポリオールの原料として前記したグリコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物;エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-プロパンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンが挙げられる。
本分散液において、ウレタン系ポリマーは、ポリエーテルポリオールをポリオールとして用いる、エーテル系ポリウレタンであるのが好ましい。この場合、本分散液中でのF粒子及び無機粒子の分散性がより向上し、本分散液から得られる成形物が、電気特性、耐屈曲性、基材との密着性、低線膨張性、平滑性に優れやすい。
ウレタン系ポリマーは、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の官能基を有していてもよい。
ウレタン系ポリマーは市販品を用いてもよく、例えばビックケミー社製DISPERBYKシリーズ、BASF社製Efkaシリーズ、DIC社製バーノックシリーズ、Lubrizol社製Solsperseシリーズなどが挙げられる。
また、エーテル系ポリウレタンとして、DIC社製ハイドランWLS-201や同312B、日華化学社製エバファノールHA-15、第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Elementis社製Rheolate288;ポリエステル系ポリウレタンとして、DIC社製ハイドランADS-110、第一工業製薬社製スーパーフレックス210や同500M;ポリカーボネート系ポリウレタンとして、DIC社製ハイドランWLS-210、第一工業製薬社製スーパーフレックス420や同460、日華化学社製エバファノールHA-107Cや同50C;などが挙げられる。
ウレタン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5000~50000の範囲が好ましく、7000~20000の範囲がより好ましい。
ウレタン系ポリマーは、1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本分散液におけるウレタン系ポリマーの含有量は、本分散液の全体質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。本分散液におけるウレタン系ポリマーの含有量は5質量%以下が好ましく、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
本分散液におけるウレタン系ポリマーの含有量は、Fポリマーの含有量に対して10質量%未満であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。ウレタン系ポリマーの含有量は、Fポリマーの含有量に対して0.2質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上であるのがより好ましい。
この場合、ウレタン系ポリマーの凝集抑制作用、レオロジー調整作用がバランスし、本分散液が分散安定性に優れやすい。
本分散液における液状分散媒としては、大気圧下、25℃にて液体である化合物、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、水、アルコール、アミド、ケトン及びエステルが挙げられる。液状分散媒の沸点は50~240℃の範囲が好ましい。また、液状分散媒は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコールが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
これらの液状分散媒の中でも、水が特に好ましい。
本分散液における液状分散媒の含有量は、本分散液の全体質量に対して20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。液状分散媒の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。かかる範囲において、本分散液は液状又はペースト状として取り扱うことができ、その分散安定性と塗工性がより向上しやすい。
本分散液は、さらに芳香族樹脂を含んでいてもよい。芳香族樹脂は、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。芳香族樹脂は、その前駆体として本分散液に含まれていてもよい。芳香族樹脂は、本分散液中に溶解していてもよく、溶解せず分散していてもよい。芳香族樹脂は、水溶性であるのが好ましい。
芳香族樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂、フェノール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂(液晶性芳香族ポリエステル等)、芳香族ポリエステルアミド(液晶性芳香族ポリエステルアミド等)、芳香族マレイミド、ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリイミド、芳香族ポリイミド前駆体(ポリアミック酸又はその塩)、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリアミドイミド前駆体、芳香族ポリエーテルイミド及び芳香族ポリエーテルイミド前駆体が挙げられ、芳香族ポリイミド前駆体、芳香族ポリアミドイミド又は芳香族ポリアミドイミド前駆体が好ましく、水溶性の芳香族ポリアミドイミドの前駆体又は水溶性の芳香族ポリイミドの前駆体がより好ましい。
この場合、芳香族樹脂がFポリマーと相互作用しやすく、さらに本分散液から形成される成形物が、金属箔等の基材との接着性やUV吸収性に優れやすい。
芳香族ポリイミド前駆体としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中で重合させたポリアミック酸や、該ポリアミック酸と、アンモニア水又は有機アミンを反応させたポリアミック酸塩が挙げられる。ポリアミック酸塩を水に溶解させることで、ポリアミック酸の水溶液を調製できる。芳香族ポリイミド樹脂またはその前駆体の具体例としては、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「ユピア(登録商標)-AT」シリーズ(宇部興産社製)が挙げられる。
芳香族ポリアミドイミド樹脂又はその前駆体としては、ジイソシアネート及び/又はジアミンと、酸成分としての三塩基酸無水物(又は三塩基酸クロリド)とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂又はその前駆体が挙げられる。
芳香族ポリアミドイミド樹脂またはその前駆体の具体例としては、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(以上、昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
本分散液が芳香族樹脂をさらに含む場合、その含有量は、本分散液の全体質量に対して0.01質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。芳香族樹脂の含有量は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
本分散液中の芳香族樹脂の含有量は、本分散液中のFポリマーの含有量に対して10質量%未満であるのが好ましく、5質量%以下がより好ましい。芳香族樹脂の含有量は、Fポリマーの含有量に対して0.1質量%以上であるのが好ましい。
芳香族樹脂の含有量が、かかる低い範囲にあれば、F粒子の分散安定性が向上し、本分散液から得られる成形物の物性が向上しやすい。その理由は必ずしも明確ではないが、芳香族樹脂が、低親水性のF粒子の分散剤かつ結着剤として高度に機能しやすくなる、すなわちF粒子の表面に付着し、成形物の形成に際してF粒子の緻密な焼成を促すためであると考えられる。
本分散液は、F粒子及び無機粒子の分散性を向上させる観点から、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤はノニオン性であるのが好ましい。
界面活性剤は、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種のノニオン性界面活性剤を用いる場合のノニオン性界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤とグリコール系界面活性剤とであるのが好ましい。
界面活性剤の具体例としては、「フタージェント」シリーズ(株式会社ネオス社製 フタージェントは登録商標)、「サーフロン」シリーズ(AGCセイミケミカル社製 サーフロンは登録商標)、「メガファック」シリーズ(DIC株式会社製 メガファックは登録商標)、「ユニダイン」シリーズ(ダイキン工業株式会社製 ユニダインは登録商標)、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業株式会社製)、「Tergitol」シリーズ(ダウケミカル社製、「Tergitol TMN-100X」等。)が挙げられる。
本分散液は、本分散液から形成される成形物の接着性と低線膨張性を向上させる観点から、Fポリマー、上記した芳香族樹脂以外の樹脂材料をさらに含んでいてもよい。かかる樹脂材料は熱硬化性であっても熱可塑性であってもよく、変性されていてもよく、本分散液中に溶解していてもよく、溶解せず分散していてもよい。
かかる樹脂材料としては、芳香族性を有さない、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミック酸、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。
本分散液が液状分散媒として水を含む場合、本分散液のpHは5~10の範囲であるのが好ましく、7~9の範囲であるのがより好ましい。この場合、本分散液が分散安定性と保存安定性に優れやすい。
本分散液は、さらにpH調整剤又はpH緩衝剤を含んでもよい。
pH調整剤としては、アミン、アンモニア、クエン酸が挙げられる。
pH緩衝剤としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムが挙げられる。
本分散液は、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、各種フィラー等の他の成分をさらに含んでいてもよい。
本分散液の粘度は10mPa・s以上が好ましく、30mPa・s以上がより好ましく、50mPa・s以上がさらに好ましい。本分散液の粘度は10000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下がさらに好ましい。
本分散液のチキソ比は1.0以上が好ましい。本分散液のチキソ比は3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。この場合、本分散液は塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物(ポリマー層等)を形成しやすい。
本分散液においては、分散層率が60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。ここで、分散層率とは、分散液(18mL)をスクリュー管(内容積:30mL)に入れ、25℃にて14日静置した際、静置前後の、スクリュー管中の分散液全体の高さと沈降層(分散層)の高さとから、以下の式により算出される値である。なお、静置後に沈降層が確認されず、状態に変化がない場合には、分散液全体の高さに変化がないとして、分散層率は100%とする。
分散層率(%)=(沈降層の高さ)/(分散液全体の高さ)×100
本分散液は、上述した作用機構により、分散安定性、特に長期貯蔵安定性に優れている。本分散液を25℃にて30日間静置した場合における、本分散液のチキソ比の変動幅(絶対値)は、3以下が好ましく、1未満が好ましい。
本分散液は、F粒子と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーと、液状分散媒とを混合して調製できる。混合方法としては、各成分を一括添加又は順次添加して混合する方法;F粒子と液状分散媒、無機粒子とウレタン系ポリマーと液状分散媒をそれぞれ予め混合し、得られた二種の混合物をさらに混合する方法;F粒子と無機粒子とを混合して粉体組成物とし、さらにウレタン系ポリマーと液状分散媒を含む組成物を添加して混合する方法等が挙げられる。
なお、界面活性剤、芳香族樹脂や他の樹脂材料等を、本分散液にさらに含有させる場合は、F粒子と無機粒子とを液状分散媒に予め分散させる際に同時に添加するか、F粒子と無機粒子とを分散させる前に、液状分散媒に予め添加しておくのが好ましい。本分散液が芳香族樹脂を含む場合、芳香族樹脂のワニスとしてF粒子と混合してもよい。ワニスを構成する溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、トルエンが挙げられる。F粒子が2種のF粒子を含む場合、第1のF粒子と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーと、液状分散媒とを含む混合物に、第2のF粒子と液状分散媒とを含む混合物を添加してもよい。
本分散液を調製する際の混合方法としては、例えば、プロペラブレード、タービンブレード、パドルブレード、シェル状ブレード等のブレード(撹拌翼)を一軸あるいは多軸で備える撹拌装置や、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー又はプラネタリーミキサーによる撹拌;ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル(ガラスビーズ又は酸化ジルコニウムビーズなどの粉砕媒体を用いたビーズミル)、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル又はアジテーターミル等のメディアを使用する分散機による混合;マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザーなどの高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等の、メディアを使用しない分散機を用いた混合が挙げられる。
中でも、混合に使用する装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー又はプラネタリーミキサーが好ましく、プラネタリーミキサーがより好ましい。
プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を有し、撹拌槽中の混練物を撹拌、混練する構造を有している。そのため、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少なく、羽根の負荷を軽減して、高度に組成物を混練できる。つまり、F粒子の凝集を抑制しつつ、液状分散媒でF粒子を濡らしながら、F粒子と無機粒子とウレタン系ポリマーとを高度に相互作用させながら混練できる。また、本分散液の成分濃度を調整しやすく、本分散液から表面平滑性と均一性に優れた厚い成形物(ポリマー層等)を形成しやすい。
本分散液は、F粒子と液状分散媒とを含有する組成物を混合して混合物を得て、混合物に、さらに液状分散媒を添加して粘度を調整してもよい。
この場合、無機粒子は混合前の組成物に添加してもよく、混合物とウレタン系ポリマー又は液状分散媒を混合する際に添加してもよい。
本分散液は、プリント配線板の絶縁層を形成する用途、車載エンジンにおけるセラミックス部品や金属部品同士を接着する用途、熱交換器や、それを構成するフィン又は管に耐腐蝕性を付与する用途、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイルに含浸し乾燥して熱伝導性耐熱被覆層を形成する用途、医療用バイアル、シリンジ等のガラス容器内外をコーティングする用途に使用できる。
本分散液は、分散安定性及び長期保存安定性に優れており、本分散液からは、耐屈曲性等の柔軟性、すなわち耐クラック性や低線膨張性に優れ、基材に対して強固な接着性を示し、粉落ちし難い成形品を形成できる。
本分散液を基材の少なくとも一方の表面に付与して液状被膜を形成し、この液状被膜を加熱して分散媒を除去して乾燥被膜を形成し、さらに乾燥被膜を加熱してFポリマーを焼成すれば、Fポリマーと無機粒子とを含み、無機粒子の含有量がFポリマーの含有量よりも多いポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を基材の表面に有する積層体が得られる。
基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン及びそれらの合金で構成される金属箔等の金属基板、テトラフルオロエチレン系ポリマー、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド等の耐熱性樹脂で構成される耐熱フィルム、繊維強化樹脂基板の前駆体であるプリプレグが挙げられる。中でも金属基板が好ましく、銅箔であるのがより好ましい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.1μm未満が好ましく、0.05μm以下がより好ましい。前記十点平均粗さは、0.001μm以上が好ましい。かかる無粗化基材であっても、本分散液からは剥離強度に優れた積層体が得られ、かかる積層体から伝送特性に優れたプリント基板等を形成できる。なお、基材の表面の十点平均粗さは、JIS B 0601:2013の附属書JAで規定される値である。
基材の厚さは、2~100μmが好ましい。基材が金属箔である場合には、基材の厚さは1~35μmであるのが好ましい。また、基材は、剥離層を介してキャリア銅箔上に積層された極薄銅箔(厚さ2~5μm)であるキャリア付銅箔であってもよい。
本分散液を金属基板(基材)の表面に付与する方法としては、金属基板の表面に本分散液からなる安定した液状被膜(ウェット膜)が形成される方法であればよく、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法を用いれば、簡単な設備で効率よく金属基板の表面に液状被膜を形成できる。
塗布法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
液状被膜を乾燥する際は、液状被膜を液状分散媒が揮発する温度で加熱し、乾燥被膜を金属基板(基材)の表面に形成する。かかる乾燥における加熱の温度は、液状分散媒の沸点+50℃以下が好ましく、液状分散媒の沸点以下がより好ましく、液状分散媒の沸点-50℃以下の温度がさらに好ましい。乾燥時の温度は、120℃~200℃が好ましい。なお、液状分散媒を除去する工程で空気を吹き付けてもよい。
乾燥時に、液状分散媒は、必ずしも完全に揮発させる必要はなく、保持後の層形状が安定し、自立膜を維持できる程度まで揮発させればよい。
Fポリマーの焼成の際は、Fポリマーの溶融温度以上の温度で乾燥被膜を加熱するのが好ましい。かかる加熱の温度は380℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
それぞれの加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。加熱は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。また、加熱雰囲気は、酸化性ガス雰囲気(酸素ガス等)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等)、不活性ガス雰囲気(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)のいずれであってもよい。
加熱時間は0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
以上のような条件で加熱すれば、高い生産性を維持しつつ、F層を好適に形成できる。
F層の厚さは0.1~200μmが好ましく、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
厚いF層を得る目的で、本分散液の塗布、乾燥、焼成の工程を複数回繰り返してF層を形成してもよい。
例えば、本分散液を基材に塗布し、加熱により液状分散媒を除去し膜を形成する。形成した膜の上にさらに本分散液を塗布して液状分散媒を除去し、さらに加熱によりFポリマーを焼成してF層を形成してもよい。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本分散液を用いれば、F層におけるFポリマーの物性を損なわずに、このように剥離強度に優れる積層体を容易に形成できる。
F層の空隙率は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。空隙率は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。本分散液からはかかる空隙率の低いF層を形成しやすい。なお、空隙率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される成形物の断面におけるSEM写真から、画像処理にてF層の空隙部分を判定し、空隙部分が占める面積をF層の面積で除した割合(%)である。空隙部分が占める面積は空隙部分を円形と近似して求められる。
本分散液は、基材の一方の表面にのみ付与してもよく、基材の両面に付与してもよい。前者では、前記基材で構成される基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者では、前記基材で構成される基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。後者の積層体は、より反りが発生しにくいため、その加工に際する取扱い性に優れる。
かかる積層体の具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。これらの積層体は、電気特性等の諸物性に優れるのでプリント基板材料等として好適であり、フレキシブルプリント基板やリジッドプリント基板の製造に使用できる。
基材の最表面は、積層体の低線膨張性や接着性を一層向上させるために、さらに表面処理されてもよい。
表面処理の方法としては、アニール処理、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、エキシマ処理、シランカップリング処理が挙げられる。
アニール処理における条件は、温度を120~180℃とし、圧力を0.005~0.015MPaとし、時間を30~120分間とするのが好ましい。
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴン等)、水素ガス、アンモニアガス、酢酸ビニルが挙げられる。これらのガスは、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
積層体の最表面には、さらに他の基板を積層してもよい。
他の基板としては、金属基板、耐熱性樹脂フィルム、繊維強化樹脂板の前駆体であるプリプレグ、耐熱性樹脂フィルム層を有する積層体、プリプレグ層を有する積層体が挙げられる。
金属基板としては、上記した金属基板が挙げられる。耐熱性樹脂フィルムは、1種以上の耐熱性樹脂を含むフィルムであり、耐熱性樹脂としては、上記した樹脂が挙げられる。
F層と他の基材との積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。
本発明の積層体(以下、「本積層体」とも記す。)は、基材と、基材の表面に、Fポリマーと無機粒子とを含み、無機粒子の含有量がFポリマーの含有量よりも多いポリマー層を有する。
本積層体におけるFポリマー、無機粒子の定義及び範囲は、その好適な態様も含めて、本分散液におけるFポリマー、無機粒子のそれらと同様である。
また、本積層体の基材、ポリマー層の定義及び範囲は、その好適な態様も含めて、本分散液から形成できる、上述した積層体の、基材、F層のそれらと同様である。
本積層体のポリマー層は、本分散液に含まれていてもよい成分及びかかる成分に由来する成分(分解物等)を含んでもよい。
本積層体は、本分散液から形成されてもよく、他の方法で形成されてもよい。具体的には、テトラフルオロエチレン系ポリマーと無機粒子とを溶融押出して得られたフィルムを、基材と積層して得てもよい。
以上、本分散液、本分散液から形成されるポリマー層を有する積層体、及び本積層体について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本分散液は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。また、本分散液から形成される層を有する積層体及び本発明の積層体は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加で有してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の詳細
[F粒子]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するポリマー(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.1μm)
F粒子2:非熱溶融性のPTFEからなる粒子(D50:0.3μm)
[F分散液]
F分散液1:F粒子2を60質量%の割合で含む水分散液(AGC社製、「品番AD-911E」)
[無機粒子]
無機粒子1:略真球状のシリカ粒子(D50:1.0μm、98%粒径:2.0μm)
[ウレタン系ポリマー]
ウレタンポリマー1:エーテル系ポリウレタン(Elementis社製、商品名Rheolate288)
[界面活性剤]
界面活性剤1:ノニオン性界面活性剤(ビックケミー・ジャパン社製、「BYK-3450」)
[芳香族系樹脂のワニス]
ワニス1:水溶性の芳香族ポリアミドイミド(PAI1)の前駆体を含む水ワニス
2.分散液の製造例
[例1-1]
ポットに、F粒子1、無機粒子1、ウレタンポリマー1、ワニス1、界面活性剤1、アンモニア水、及び炭酸水素アンモニウムを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、液状組成物を調製した。
さらに別のポットに、調製した液状組成物と、F分散液1とを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がし、全体としてF粒子1(18質量部)、F粒子2(20質量部)、無機粒子1(60質量部)、ウレタンポリマー1(0.5質量部)、PAI1(1.5質量部)、界面活性剤1(1質量部)及び水(60質量部)を含む、分散液1(粘度:600mPa・s、pH:8.0)を得た。
[例1-2]~[例1-3]
F粒子1、F粒子2、無機粒子1、ウレタンポリマー1、ワニス1、界面活性剤1の量を表1に示す通り変更した以外は、例1-1と同様にして分散液2~3を得た。
Figure 2022163538000001
3.積層体の製造例
[例2-1]
ロール・トゥー・ロールプロセスにより、無粗化銅箔(表面の十点平均粗さ:0.05μm以下、厚さ:18μm)の表面に、分散液1を、小径グラビアリバース法で塗布してウェット膜を形成した。続いて、ウェット膜が形成された銅箔を、通風乾燥炉(炉温120℃)に通して乾燥被膜を形成させ、さらに窒素ガス雰囲気の380℃の焼成炉に通して加熱し、F粒子1及びF粒子2を焼成した。
これにより、銅箔と、その表面に分散液1から形成されたポリマー層(厚さ:50μm)が形成された積層体1を得た。
[例2-2]~[例2-3]
分散液1を分散液2~3に変更した以外は、例2-1と同様にして積層体2~3を得た。
4.評価
4-1.分散液の分散安定性
それぞれの分散液(18mL)を、をスクリュー管(内容積:30mL)に入れ、25℃にて14日静置した。静置前後の、スクリュー管中の分散液全体の高さと沈降層(分散層)の高さとから、以下の式により分散層率を算出し、下記の基準に従って分散安定性を評価した。
[評価基準]
〇:分散層率が60%以上である
×:分散層率が60%未満である
4-2.分散液の造膜性
それぞれの分散液から積層体を製造する際の、乾燥被膜の表面を目視で観察し、粉落ちの有無を下記の基準に従って評価し、造膜性の評価とした。
[評価基準]
〇:粉落ちが観察されない
×:粉落ちが観察される
4-3.積層体の表面平滑性
それぞれの積層体のポリマー層の表面平滑性を、ポリマー層の短手方向の中央部及び端部の厚さを測定し、端部の厚さ/中央部の厚さの比を求め、下記の基準に従って表面平滑性を評価した。
[評価基準]
〇:厚さの比が1.1以下である
×:厚さの比が1.1超である
4-4.積層体の柔軟性
それぞれの積層体を曲率半径(300μm)の条件で180°折り曲げ、上から荷重(50mN、1分間)をかけた後に折り曲げを戻し、ポリマー層表面のクラックの有無を目視で観察して、下記の基準に従って柔軟性を評価した。
[評価基準]
〇:クラックが発生していない
×:クラックが発生している
4-5.積層体の層間密着性
それぞれの積層体から矩形状(長さ100mm、幅10mm)の試験片を切り出し、試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を固定し、引張り速度50mm/分、長さ方向の片端から試験片に対して90°で、ポリマー層と銅箔とを剥離させた。その際にかかる最大荷重を剥離強度とし、下記の基準に従って層間密着性を評価した。
[評価基準]
〇:剥離強度が10N/cm以上である
×:剥離強度が10N/cm未満である
4-6.積層体の線膨張係数
それぞれの積層体の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して単独のポリマー層を作製した。作成したポリマー層から180mm角の四角い試験片を切り出し、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定し、下記の基準に従って評価した。
[線膨張係数の評価基準]
〇:線膨張係数が75ppm/℃以下である。
×:線膨張係数が75ppm/℃超である。
4-7.積層体の誘電正接
それぞれの積層体から、長さ100mm、幅50mmの矩形状の試験片を切り出し、塩化第二鉄水溶液でエッチングして銅箔を除去し、ポリマー層単体を得た。SPDR(スプリットポスト誘電体共振)法にて、ポリマー層の誘電正接(測定周波数:10GHz)を測定し、下記の基準に従って評価した。
[誘電正接の評価基準]
〇:誘電正接が0.0030未満である
×:誘電正接が0.0030超である
4-1~4-7に記した評価の結果をまとめて表2に示す。なお、4-7.の誘電正接の測定において同時に測定した積層体1の比誘電率は、2.1以下であった。
Figure 2022163538000002
本発明の分散液は分散安定性に優れ、フィルム、繊維強化フィルム、プリプレグ、金属積層板(樹脂付金属箔)に容易に加工できる。得られる加工物品は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、すべり軸受け等の材料として使用できる。

Claims (15)

  1. テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、無機粒子と、ウレタン系ポリマーと、液状分散媒とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多い、分散液。
  2. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の分散液。
  3. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が、熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と非熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む、請求項1又は2に記載の分散液。
  4. 前記無機粒子が、シリカ粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散液。
  5. 前記無機粒子の平均粒子径が、0.1μm超10μm未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散液。
  6. 前記無機粒子の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対して100質量%超300質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の分散液。
  7. 前記ウレタン系ポリマーがエーテル系ポリウレタンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の分散液。
  8. 前記ウレタン系ポリマーの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量に対して10質量%未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の分散液。
  9. 前記液状分散媒が水である、請求項1~8のいずれか1項に記載の分散液。
  10. さらに芳香族樹脂を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の分散液。
  11. さらに界面活性剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の分散液。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の分散液を、基材の表面に塗布し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと前記無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多いポリマー層を形成し、前記基材と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
  13. 基材と、前記基材の表面に、テトラフルオロエチレン系ポリマーと無機粒子とを含み、前記無機粒子の含有量が前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの含有量よりも多いポリマー層とを有する、積層体。
  14. 前記基材の表面の十点平均粗さが0.1μm未満である、請求項13に記載の積層体。
  15. 前記ポリマー層の厚さが25μm以上である、請求項13又は14に記載の積層体。
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WO2024053553A1 (ja) * 2022-09-09 2024-03-14 Agc株式会社 水性分散液、及び水性分散液を用いた積層体の製造方法

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