WO2023189616A1 - 腐食性ガス混合物充填容器及び腐食性ガス組成物 - Google Patents

腐食性ガス混合物充填容器及び腐食性ガス組成物 Download PDF

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Abstract

腐食性ガス混合物充填容器は、密閉容器と、密閉容器内に充填され、腐食性ガスを含むガスとを備える。腐食性ガス混合物充填容器においては、ガス中の気相の水分濃度が400モルppm以下であり、密閉容器は、腐食性ガス混合物に接する内面を有する金属層を有する円筒胴部を含み、円筒胴部の金属層の内面における表面粗さの最大高さが50μm以下である。

Description

腐食性ガス混合物充填容器及び腐食性ガス組成物
 本発明は、腐食性ガス混合物充填容器及び腐食性ガス組成物に関する。
 液化ガス及び圧縮ガスの貯蔵及び輸送に用いる容器は、一般に鋼や合金などの金属によって構成され、様々な産業においてガスの貯蔵及び供給に使用されている。液化ガスの中でも硫化水素や二酸化硫黄などの腐食性ガスは近年半導体製造プロセスにて需要が高まっているが、腐食性ガスは金属への腐食性を持ち、密閉容器を腐食させるため、この性質はガス中の微量金属不純物問題を惹起する可能性があり、半導体製造プロセスにおいて問題となる懸念がある。この課題の解決策として、充填する腐食性ガスの不純物濃度を制限することによって密閉容器や配管に耐食性を付与する例が存在する。例えば下記特許文献1では、気相の水分濃度を0.001モルppm以上75モルppm未満とした硫化水素混合物により、密閉容器を腐食させにくくすることが提案されている。また、下記特許文献2では、気相の水分濃度を0.005モルppm以上5000モルppm未満とした二酸化硫黄混合物により、金属腐食を抑制することが提案されている。
国際公開第2017-221594号 国際公開第2021-182045号
 しかしながら、上記特許文献1に記載の硫化水素混合物および上記特許文献2に記載の二酸化硫黄混合物は、以下に示す課題を有していた。
 すなわち、上記特許文献1に記載の硫化水素混合物および上記特許文献2に記載の二酸化硫黄混合物は、硫化水素および二酸化硫黄に耐食性を持つことが一般的に知られているステンレス鋼からなる密閉容器での使用を前提としており、密閉容器の金属材質に制限されずに使用できるものではない。別言すると、上記硫化水素混合物或いは二酸化硫黄混合物を用いる場合、密閉容器がステンレス鋼以外の金属材質で構成される場合には、密閉容器が腐食するおそれがあった。
 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、腐食性ガス混合物による密閉容器の腐食を抑制できる腐食性ガス混合物充填容器及び腐食性ガス組成物を提供することを目的とする。
 本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、腐食性ガス混合物中の気相の水分濃度を特定の範囲としつつ、密閉容器の円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さを特定の範囲とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
 すなわち、本発明の一側面は、金属製の密閉容器と、上記密閉容器内に充填され、腐食性ガス及び気相の水分を含む腐食性ガス混合物とを備える、腐食性ガス混合物充填容器であって、上記腐食性ガス混合物中の上記水分の濃度が400モルppm以下であり、上記密閉容器が円筒胴部を含み、上記円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さが50μm以下である、腐食性ガス混合物充填容器を提供する。尚、本発明における円筒胴部はJIS B 0190:2010記載の定義に従う。
 上記腐食性ガス混合物充填容器によれば、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、腐食性ガス混合物による密閉容器の腐食を抑制できる。
 なお、本発明によって密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、腐食性ガス混合物による密閉容器の腐食が抑制できる理由については定かではないが、本発明者らは以下の理由によるものと推察する。
 すなわち、腐食性ガス混合物中の水分の濃度が400モルppm以下である場合に密閉容器の円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さを50μm以下とすることで、腐食性ガス混合物中の水分が円筒胴部の内面の凹部に捕捉されにくくなり、捕捉されても脱離しやすくなる。そのため、水分に溶け込む腐食性ガスの量が低減され、水分と腐食性ガスとの反応による腐食性物質の生成が抑制される。こうして、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、密閉容器の腐食が抑制されるのではないかと本発明者らは推察する。
 また、本発明の別の一側面は、上述した腐食性ガス混合物充填容器から取り出して得られる腐食性ガス組成物を提供する。
 上記密閉容器内に充填されている腐食性ガス混合物によれば、円筒胴部を含み、円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さが50μm以下である金属製の密閉容器の腐食を抑制できる。このため、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、密閉容器の腐食を抑制できる。したがって、、密閉容器の腐食抑制により、腐食性ガス混合物中に金属成分が混入することを抑制できる。よって、腐食性ガス混合物充填容器から取り出して得られる腐食性ガス組成物は、金属成分の含有量が少ないことが求められる半導体製造プロセスなどにおいて有用である。
 上記腐食性ガス混合物充填容器においては、上記腐食性ガス混合物中の上記水分の濃度が110モルppm以下であり、上記円筒胴部の上記内面における表面粗さの最大高さが6μm以下であることが好ましい。
 上記腐食性ガス混合物充填容器においては、上記腐食性ガス混合物中の上記水分の濃度が10モルppm以下であることがより好ましい。
 上記腐食性ガス混合物充填容器においては、上記腐食性ガス混合物中の上記水分の濃度が1モルppm以下であることがさらに好ましい。
 上記腐食性ガス混合物充填容器においては、上記密閉容器を構成する金属は合金鋼を含んでよい。
 上記合金鋼はマンガン鋼或いはクロムモリブデン鋼であってよい。
 上記腐食性ガス混合物充填容器においては、上記腐食性ガスは硫黄系ガスであってよい。
 上記硫黄系ガスは硫化水素或いは二酸化硫黄であってよい。
 本発明によれば、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、腐食性ガス混合物による密閉容器の腐食を抑制できる腐食性ガス混合物充填容器及び腐食性ガス組成物が提供される。
本発明の腐食性ガス混合物充填容器の一実施形態を概略的に示す部分断面図である。 実験例で用いられる耐食性試験装置の一例を示すフロー図である。 実験例1~13における硫化水素混合ガス中の気相の水分濃度とテストピースにおけるS(硫黄)濃度との関係を示すグラフである。 実験例14~19における二酸化硫黄混合ガス中の気相の水分濃度とテストピース表面からの深さ10~40nmでの平均S濃度との関係を示すグラフである。
 以下、図面を参照しながら、本発明の腐食性ガス混合物充填容器の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
 図1は、本発明の腐食性ガス混合物充填容器の一実施形態を概略的に示す部分断面図である。図1に示すように、腐食性ガス混合物充填容器100は、密閉容器10と、密閉容器10内に充填され、腐食性ガス及び気相の水分を含む腐食性ガス混合物20とを備える。
 腐食性ガス混合物20中の気相の水分濃度は400モルppm以下であり、密閉容器10は円筒胴部11を備えている。また、円筒胴部11の内面10aにおける表面粗さの最大高さRzは50μm以下となっている。
 腐食性ガス混合物充填容器100によれば、密閉容器10の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、腐食性ガス混合物による密閉容器10の腐食を抑制できる。
 以下、密閉容器10及び腐食性ガス混合物20についてより詳細に説明する。
<密閉容器>
 密閉容器10は円筒胴部11を備える。具体的には、図1に示すように、密閉容器10は、円筒胴部11の下端に設けられる底部12と、円筒胴部11の上端側に設けられ、腐食性ガス混合物20を充填又は排出させるためのバルブが設けられるガス排出部13と、ガス排出部13と円筒胴部11とを連結する肩部14とをさらに備える。
 密閉容器10は、金属製であればよく、単一の金属層で構成されてもよく、2種以上の金属層の積層体で構成されていてもよい。
 円筒胴部11の内面10aにおける表面粗さの最大高さRzは50μm以下であればよい。円筒胴部11の内面10aにおける表面粗さの最大高さRzは、腐食性ガス混合物20による密閉容器10の腐食をより抑制する観点からは、好ましくは6μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。
 円筒胴部11以外の部分(例えば底部12、ガス排出部13及び肩部14)の内面における表面粗さの最大高さRzは、特に制限されるものではなく、50μm以下であってもよく、50μmより大きくてもよい。
 円筒胴部11の内面10aにおける表面粗さの最大高さRzは、例えば未研磨容器の内面を研磨することで実現することができる。研磨の方法としては、例えばブラスト研磨、バフ研磨、遠心バレル研磨などの物理研磨方法、薬品による処理を行う化学研磨方法、電解研磨溶液と接触させて通電し研磨する電解研磨方法が挙げられる。研磨の方法は特に上記研磨方法に限定されるものではない。
 本発明における円筒胴部11の内面10aにおける表面粗さの最大高さRzは、JIS B 0633:2001及びJIS B 0651:2001に準拠して測定することができる。
 具体的に、表面粗さの最大高さRzを測定する場合、測定器メーカーより販売されている表面粗さ測定器を用いることができる。このような表面粗さ測定器としては、例えば株式会社ミツトヨ製の表面粗さ測定器などが挙げられる。
 密閉容器10を構成する金属は、特に制限されるものではなく、マンガン鋼、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼などの合金鋼、炭素鋼、及び、アルミニウム合金などが挙げられる。
 中でも、合金鋼が好ましい。この場合、合金鋼以外の金属を用いる場合と比較して、機械的性質の面で有利となる。合金鋼の中でもマンガン鋼或いはクロムモリブデン鋼が好ましい。この場合、マンガン鋼或いはクロムモリブデン鋼以外の合金鋼を用いる場合と比較してコスト面で有利となる。
<腐食性ガス混合物>
 腐食性ガス混合物20は、腐食性ガス及び気相の水分を含む。
 腐食性ガスは、金属を腐食させる性質をもつガスであれば特に制限されるものではなく、硫化水素、二酸化硫黄などの硫黄系ガス、塩化水素や臭化水素などのハロゲン系ガス、アンモニアなどが挙げられる。
 腐食性ガス混合物20中の気相の水分濃度は400モルppm以下であればよい。ここで、腐食性ガス混合物20中の気相の水分濃度は、五酸化リン式露点計又はキャビティリングダウン分光法(CRDS:cavity ring-down spectroscopy)によって測定される値である。ここで、測定は20~25℃(腐食性ガス混合物を通気する配管は40℃)、大気圧の条件で行う。
 腐食性ガス混合物20中の気相の水分濃度は、好ましくは110モルppm以下であり、より好ましくは10モルppm以下で、更に好ましくは1モルppm以下である。
 ここで、特に表面粗さの最大高さRzが6μm以下である場合に、腐食性ガス混合物による密閉容器10の腐食を効果的に抑制できる。
 腐食性ガスは、液化ガスであっても非液化ガスであってもよいが、通常は液化ガスである。
 腐食性ガス混合物20の充填の方法は特に限定されないが、密閉容器10内に水分が残存していると、充填した腐食性ガス混合物20中の水分濃度が上昇してしまう。そのため、密閉容器10内の残存水分量が1モルppm以下となるように、あらかじめ密閉容器10に乾燥した不活性ガスを通気するか、密閉容器10に対して加熱減圧処理などを施していてもよい。
<腐食性ガス組成物>
 腐食性ガス組成物は、腐食性ガス混合物充填容器100から取り出して得られる組成物である。
 上記密閉容器10内に充填されている腐食性ガス混合物によれば、円筒胴部11を含み、円筒胴部11の内面10aにおける表面粗さの最大高さが50μm以下である金属製の密閉容器10の腐食を抑制できる。このため、密閉容器10の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、密閉容器10の腐食を抑制できる。したがって、密閉容器10の腐食抑制により、腐食性ガス混合物中に金属成分が混入することを抑制できる。よって、腐食性ガス混合物充填容器100から取り出して得られる腐食性ガス組成物は、金属成分の含有量が少ないことが求められる半導体製造プロセスなどにおいて有用である。
実験例
 以下、実験例について説明する。
[テストピース]
 表面粗さの最大高さRzが1μmである直方体形状(10mm×50mm×6mm)のマンガン鋼(150M36-S)、表面粗さの最大高さRzが40μmである直方体形状(10mm×50mm×6mm)のマンガン鋼(150M36-S)、表面粗さの最大高さRzが145μmである直方体形状(10mm×50mm×6mm)のマンガン鋼(150M36-S)、表面粗さの最大高さRzが2μmである直方体形状(20mm×50mm×6mm)のクロムモリブデン鋼(SAE4130-S)、表面粗さの最大高さRzが35μmである直方体形状(20mm×50mm×6mm)のクロムモリブデン鋼(SAE4130-S)、表面粗さの最大高さRzが125μmである直方体形状(20mm×50mm×6mm)のクロムモリブデン鋼(SAE4130-S)、をテストピースとしてそれぞれ用意した。テストピースの表面粗さの最大高さRzは、JIS B 0633:2001及びJIS B 0651:2001に準拠した接触式表面粗さ測定器を用いて測定した。接触式表面粗さ測定器としては、最大高さRzが1μm、2μm、35μm、40μmのテストピースについては株式会社ミツトヨ製、SJ-210を用いた。最大高さRzが125μm、145μmのテストピースについては株式会社ミツトヨ製、SJ-412を用いた。なお、テストピースは、密閉容器の円筒胴部の内面の表面粗さの最大高さの値による効果を調べるために、密閉容器の代わりに用いられるものである。
[実験例1]
 表面粗さの最大高さRzが1μmであるマンガン鋼製テストピースを、表面がテフロン(登録商標)で覆われたフックに吊るして図2の耐食性試験装置AにおけるSUS304製の保管容器3内に設置して保管容器3を密閉した。続いて、保管容器3に窒素ガスを2L/minで12時間以上通気させて保管容器3内部の水分を除去した。
 次に、気相の水分濃度が1モルppmであり、硫化水素を含有する硫化水素混合ガス原料1を硫化水素混合ガスとして、保管容器3に、2L/minで30分以上通気させた。このとき、硫化水素混合ガスの流量は流量調整器2で調整した。また、保管容器3から排出される硫化水素混合ガスについては水分計4で気相の水分濃度を測定し、気相の水分濃度が1モルppmであることを確認した。
 続いて、保管容器3を、内圧が0.02MPaGとなるように封止し、保管容器3内に硫化水素混合ガスを充填させた。
 そして、上記硫化水素混合ガスを約30日間室温(25℃)で保管した後、窒素ガスで保管容器3内を十分置換した。その後、保管容器3を開放してテストピースを取り出し、SEM-EDS分析によりS(硫黄)濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、SEM-EDS分析は、SEM-EDS分析装置(日本電子株式会社製、JSM-IT200)を用いて行い、対象元素は、C、O、Al、Si、S、Ca、Mn、Feとした。また、表1においては、以下の評価基準に基づいて、腐食性ガス混合物によるテストピースの腐食の抑制の程度を評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
○:テストピースにおけるS濃度が15質量%以下であること
×:テストピースにおけるS濃度が15質量%より大きいこと
[実験例2~13]
 テストピースとして、表面粗さの最大高さRzが表1に示す値であるマンガン鋼製テストピース或いはクロムモリブデン鋼製テストピースを用い、かつ、硫化水素混合ガス原料1として、気相の水分濃度が表1に示す値であり、硫化水素を含む硫化水素混合ガス原料1を用いたこと以外は実験例1と同様にして保管容器3内に硫化水素混合ガスを充填させた。
 そして、実験例1と同様にして硫化水素混合ガスを保管した後、窒素ガスで保管容器3内を十分置換した。その後、保管容器3を開放してテストピースを取り出し、実験例1と同様にしてSEM-EDS分析によりS(硫黄)濃度を測定した。結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1に示す結果に基づき、硫化水素混合ガス中の気相の水分濃度に対してSEM-EDS分析によるテストピースにおけるS濃度をプロットした結果を図3に示す。図3において、横軸が硫化水素混合ガス中の気相の水分濃度であり、縦軸がテストピースにおけるS濃度である。
 表1及び図3に示すテストピースの試験結果は、金属製の密閉容器に対しても同様に適用することができる。すなわち、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さRzが50μm以下である場合は、気相の水分濃度が400モルppm以下の硫化水素混合ガスによる密閉容器の腐食が抑制されると考えられる。
[実験例14]
 表面粗さの最大高さRzが40μmであるマンガン鋼製テストピースを、表面がテフロン(登録商標)で覆われたフックに吊るして図2の耐食性試験装置AにおけるSUS304製の保管容器3内に設置して保管容器3を密閉した。続いて、保管容器3に窒素ガスを2L/minで12時間以上通気させて保管容器3内部の水分を除去した。
 次に、気相の水分濃度が1モルppmであり、二酸化硫黄を含有する二酸化硫黄混合ガス原料1を二酸化硫黄混合ガスとして、保管容器3に、2L/minで30分以上通気させた。このとき、二酸化硫黄混合ガスの流量は流量調整器2で調整した。また、保管容器3から排出される二酸化硫黄混合ガスについては水分計4で気相の水分濃度を測定し、気相の水分濃度が1モルppmであることを確認した。
 続いて、保管容器3を、内圧が0.02MPaGとなるように封止し、保管容器3内に二酸化硫黄混合ガスを充填させた。
 そして、上記二酸化硫黄混合ガスを約30日間室温(25℃)で保管した後、窒素ガスで保管容器3内を十分置換した。その後、保管容器3を開放してテストピースを取り出し、XPS(X線光電子分光)分析によりテストピース表面からの深さ方向に沿ったS(硫黄)濃度を測定した。対象元素は、C、O、S、Mn、Feとした。
 なお、深さのSiO熱酸化膜換算は、具体的には、同じ条件でSiOの熱酸化膜を測定した場合の深さ方向に沿った距離を示す。
 また、S濃度の測定結果に基づいて、テストピースにおける表面からの深さ10~40nm(SiO熱酸化膜換算)での平均S濃度を算出した。結果を表2に示す。ここで、平均S濃度は、水分と二酸化硫黄ガスとの反応による腐食性物質の生成量の指標となるものであり、低いほど腐食性物質の生成量が少ないこと、すなわちテストピースの腐食が抑制されていることを意味する。
 さらに、上記のようにして算出された平均S濃度については、以下の評価基準に基づいて、二酸化硫黄混合物によるテストピースの腐食の抑制の程度を評価した。結果を表2に示す。
<評価基準>
○:テストピースにおける表面からの深さ10~40nm(SiO熱酸化膜換算)での平均S濃度が1.40atomic%以下であること
×:テストピースにおける表面からの深さ10~40nm(SiO熱酸化膜換算)での平均S濃度が1.40atomic%より大きいこと
[実験例15~19]
 テストピースとして、表面粗さの最大高さRzが表2に示す値であるマンガン鋼製テストピース或いはクロムモリブデン鋼製テストピースを用い、かつ、二酸化硫黄混合ガス原料1として、気相の水分濃度が表2に示す値であり、二酸化硫黄を含む二酸化硫黄混合ガス原料1を用いたこと以外は実験例14と同様にして保管容器3内に二酸化硫黄混合ガスを充填させた。
 そして、実験例14と同様にして二酸化硫黄混合ガスを保管した後、窒素ガスで保管容器3内を十分置換した。その後、保管容器3を開放してテストピースを取り出し、実験例14と同様にしてXPS分析によりテストピース表面からの深さ方向に沿ったS(硫黄)濃度を測定した。また、実験例14と同様にして、S濃度の測定結果に基づいて、テストピースにおける表面からの深さ10~40nm(SiO熱酸化膜換算)での平均S濃度を算出した。結果を表2に示す。
 さらに、上記のようにして算出された平均S濃度については、前記の評価基準に基づいて、二酸化硫黄混合物によるテストピースの腐食の抑制の程度を評価した。結果を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 XPS分析によるテストピースにおける深さ10~40nm(SiO熱酸化膜換算)での平均S濃度をプロットした結果を図4に示す。図4において、横軸が気相の水分濃度であり、縦軸がテストピースにおける深さ10~40nm(SiO熱酸化膜換算)での平均S濃度である。
 表2及び図4に示すテストピースの試験結果は、金属製の密閉容器に対しても同様に適用することができる。すなわち、密閉容器の金属材質をステンレス鋼以外にした場合でも、円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さRzが50μm以下である場合は、気相の水分濃度が400モルppm以下の二酸化硫黄混合ガスによる密閉容器の腐食が抑制されると考えられる。
 なお、本発明の概要は以下のとおりである。
[1]金属製の密閉容器と、
 前記密閉容器内に充填され、腐食性ガス及び気相の水分を含む腐食性ガス混合物とを備える、腐食性ガス混合物充填容器であって、
 前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が400モルppm以下であり、
 前記密閉容器が円筒胴部を含み、
 前記円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さが50μm以下である、腐食性ガス混合物充填容器。
[2]前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が400モルppm以下であり、
 前記円筒胴部の前記内面における表面粗さの最大高さが6μm以下である、[1]に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[3]前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が110モルppm以下である、[2]に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[4]前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が10モルppm以下である、[3]に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[5]前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が1モルppm以下である、[4]に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[6]前記密閉容器を構成する前記金属が、合金鋼を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[7]前記合金鋼が、マンガン鋼或いはクロムモリブデン鋼である、[6]に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[8]前記腐食性ガスが硫黄系ガスである[1]~[7]のいずれかに記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[9]前記硫黄系ガスが硫化水素或いは二酸化硫黄である、[8]に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の腐食性ガス混合物充填容器から取り出して得られる、腐食性ガス組成物。
 A…耐食性試験装置、1…硫化水素混合ガス原料或いは二酸化硫黄混合ガス原料、2…流量調整器、3…保管容器、4…水分計、10…密閉容器、10a…内面、11…円筒胴部、12…底部、13…ガス排出部、14…肩部、20…腐食性ガス混合物、100…腐食性ガス混合物充填容器。

 

Claims (10)

  1.  金属製の密閉容器と、
     前記密閉容器内に充填され、腐食性ガス及び気相の水分を含む腐食性ガス混合物とを備える、腐食性ガス混合物充填容器であって、
     前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が400モルppm以下であり、
     前記密閉容器が円筒胴部を含み、
     前記円筒胴部の内面における表面粗さの最大高さが50μm以下である、腐食性ガス混合物充填容器。
  2.  前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が400モルppm以下であり、
     前記円筒胴部の前記内面における表面粗さの最大高さが6μm以下である、請求項1に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  3.  前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が110モルppm以下である、請求項2に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  4.  前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が10モルppm以下である、請求項3に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  5.  前記腐食性ガス混合物中の前記水分の濃度が1モルppm以下である、請求項4に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  6.  前記密閉容器を構成する前記金属が、合金鋼を含む、請求項1に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  7.  前記合金鋼が、マンガン鋼或いはクロムモリブデン鋼である、請求項6に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  8.  前記腐食性ガスが硫黄系ガスである請求項1~7のいずれか一項に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  9.  前記硫黄系ガスが硫化水素或いは二酸化硫黄である、請求項8に記載の腐食性ガス混合物充填容器。
  10.  請求項1に記載の腐食性ガス混合物充填容器から取り出して得られる、腐食性ガス組成物。

     
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