WO2023176268A1 - 封口体及び電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
熱酸化劣化が抑制された封口体、及びこの封口体を備える電解コンデンサを提供する。封口体は、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔及び陰極箔が対向し、電解液が含浸されたコンデンサ素子を収容したケースの開口を封じる。この封口体は、ブチルゴム等のエラストマーを含むエラストマー部材を備える。エラストマーは、初期の架橋密度が1.8×10-3mol/g以上であり、エラストマー部材全体に対する含有量が30wt%以下である。
Description
本発明は、電解コンデンサのケースを封口する封口体、及びこの封口体を備える電解コンデンサに関する。
電解コンデンサは、タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用金属を陽極箔及び陰極箔として備えている。陽極箔は、弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にすることで拡面化され、拡面化された表面に誘電体酸化皮膜を有する。陽極箔と陰極箔の間には電解液が介在する。電解液は、陽極箔の凹凸面に密接し、真の陰極として機能する。この電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜の誘電分極作用により陽極側容量を得ている。
この電解コンデンサでは、電解質が添加されて成る電解液の蒸散を抑制するために、陽極箔と陰極箔の間に電解液を充填して構成されたコンデンサ素子をケースと封口体とで密閉している(例えば、特許文献1参照。)。封口体は、コンデンサ素子を収容した有底筒状のケースの開口を封止する部材である。この封口体は、加締め加工によりケースの開口に密着しており、シール性向上のために適度な硬度の弾性部材により構成される。例えば、封口体には、ブチルゴム等のエラストマー部材が備えられる。エラストマー部材は、架橋反応させるために加硫にて作成される。
電解コンデンサは、車載用途等のように高温環境下における使用も想定される。高温環境下においては、封口体は、ケース外部側に熱酸化劣化の虞が生じる。即ち、エラストマー分子のC-H結合が開裂してラジカルが発生する。第1に、このラジカルがエラストマー分子の別のC-H結合にアタックして更なる開裂を促す。また、第2に、このラジカルに酸素が付加されて過酸化物が生じる。この過酸化物が熱で分解してラジカルを加速的に発生させ、このラジカルがエラストマー分子の別のC-H結合にアタックして更なる開裂を促す。
これが繰り返されると、エラストマーの分子の鎖長が短くなっていき、エラストマー部材が軟化していく。低分子化したエラストマーは気化し易くなる。また、鎖長が短く切断されたエラストマーが再結合したときに、エラストマーの密度が高まる。そのため、エラストマー部材は収縮していく。エラストマー部材の収縮は、熱や酸素に晒されやすい封口体のケース外部側で顕著であり、封口体のケース外部側からケース内部側へ向けて収縮の度合いが薄れていく。
一方で、封口体のケース内部側では電解液によるエラストマー部材の膨潤化が生じている。そうすると、封口体内で収縮箇所と膨張箇所が生じ、封口体のエラストマー部材に割れが生じてしまう。封口体に割れが生じると、電解液の液漏れ、電解液の蒸散量増加、及び電解コンデンサへの水分等の混入が発生し易くなり、電解コンデンサが短寿命化してしまう。
そこで、特許文献1のように、エラストマー部材に加えて、エラストマー部材のうちの電解液側の面部分にフッ素樹脂を一体接合上にラミネート形成した封口体が提案されている。また、特許文献2のように、エラストマーの架橋密度を0.5~10mol/cm3×10-4にすることが提案されている。
特許文献1の提案は、フッ素樹脂により、封口体のケース内部側で電解液とエラストマー部材との接触機会を減らし、エラストマー部材の膨潤化を抑制するものである。また、特許文献2の提案は、架橋密度を小さくすることにより、熱酸化劣化を受けても、エラストマー部材の伸縮性を残存させるものである。これら特許文献1及び特許文献2の提案は、熱酸化劣化を前提にした対策であり、熱酸化劣化の抑制には至っていない。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、熱酸化劣化が抑制された封口体、及びこの封口体を備える電解コンデンサを提供することにある。
上記の課題を解決すべく、本発明の封口体は、エラストマーを含むエラストマー部材を備え、前記エラストマーは、初期の架橋密度が1.8×10-3mol/g以上であり、前記エラストマー部材全体に対する含有量が30wt%以下であること、を特徴とする。
初期の架橋密度が1.8×10-3mol/g以上であると、熱エネルギーによるエラストマーの振動を架橋が抑え、エラストマーに開裂が生じ難くなる。即ち、エラストマー部材が軟化し難くなる。しかし、この架橋密度は経時的に簡単に低下してしまう。一方、エラストマーの含有量をエラストマー部材全体に対して30wt%以下にすると、架橋密度の低下が抑制される。これにより、エラストマーの開裂が長期間抑制される。そして、エラストマーの長期間に亘る開裂抑制により、エラストマーの気化や再結合の発生度合いも少なくなり、エラストマー部材の収縮は緩慢になる。即ち、熱酸化劣化を長時間抑制できる。
前記エラストマーは、初期の架橋密度が2.5×10-3mol/g以上であるようにしてもよい。初期の架橋密度が2.5×10-3mol/g以上になると、強固な架橋が架橋密度の低下を抑え、エラストマーの含有量をエラストマー部材全体に対して30wt%以下にすることによる架橋密度の低下抑制効果と相俟って、エラストマーの開裂が更に抑制され、エラストマー部材の収縮が更に緩慢になる。即ち、熱酸化劣化を更に長時間抑制できる。
前記エラストマー部材は、更にカーボン及び無機充填剤を含むようにしてもよい。エラストマーとカーボン又は無機充填剤の相互作用によっても、架橋密度の低下抑制効果が発揮される。前記無機充填剤として、扁平無機充填剤を含むようにしてもよい。前記扁平無機充填剤は、タルク、マイカ又はこれらの両方であるようにしてもよい。扁平無機充填剤は、エラストマーとの相互作用による架橋密度低下抑制効果を更に向上させる。
前記エラストマーは樹脂架橋されているようにしてもよい。エラストマーに対する架橋のうち、樹脂架橋は強固であり、強固な架橋が架橋密度の低下を抑える。
前記エラストマーは、ブチルゴムであるようにしてもよい。ブチルゴムは他のエラストマーと比べて耐熱性が高いために酸化劣化がし難く、またブチルゴムは非極性であるのに対して、電解液に使用される有機溶媒は極性を有する。そのため、ブチルゴムは他のエラストマーと比べると電解液によって膨潤し難い。そうすると、エラストマーがブチルゴムである場合には、熱酸化劣化によって収縮する封口体のケース外部側と比べて封口体のケース内部側の体積に差が生じ難くなる。よって、封口体に割れが生じ難くなる。
150℃の温度環境下に500時間晒された際の架橋密度の変化率は、初期と比べて-60%以内に収まるようにしてもよい。これにより、150℃の温度環境下に1000時間晒された際の硬度変化が初期と比べて-2以内に収まるようにしてもよい。硬度変化が初期と比べて-2以内に収まると、封口体の収縮が緩慢になる。
前記封口体と、前記封口体によって封口されるケースと、前記ケースに収容され、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔及び陰極箔が対向し、電解液が含浸されたコンデンサ素子と、を備える電解コンデンサも本発明の一態様である。
封口体の収縮が緩慢になり、封口体の熱酸化劣化が長時間抑制されることにより、封口体を通じて電解コンデンサから外部への電解液の蒸散が抑制される。そのため、電解コンデンサの静電容量の経時的な悪化や誘電正接(tanδ)の経時的な悪化が低減する。従って、電解コンデンサは長寿命化する。
前記コンデンサ素子内に形成され、導電性ポリマーを含む固体電解質層を更に備えるようにしてもよい。
架橋密度の低下抑制効果は、エラストマー部材の収縮が緩慢となり、熱酸化劣化を長時間抑制し、外部から電解コンデンサ内部への酸素侵入を阻む。そのため、封口体の熱酸化劣化に加え、電解コンデンサの導電性ポリマーの酸化劣化も抑制される。これにより、導電性ポリマーの酸化劣化を原因とする静電容量の経時的な悪化や誘電正接(tanδ)の経時的な悪化を低減させることができる。従って、電解液と共に固体電解質層を有する電解コンデンサは長寿命化する。
本発明によれば、封口体の熱酸化劣化を抑制できる。
以下、本発明の実施形態に係る封口体及び電解コンデンサについて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
(電解コンデンサ概要)
電解コンデンサは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。電解コンデンサのコンデンサ素子は、陽極箔、陰極箔、セパレータ及び電解液を備え、巻回形又は積層形を採る。陽極箔の表面には誘電体酸化皮膜が形成されている。陽極箔と陰極箔はセパレータを介して対向する。電解液は、コンデンサ素子の空隙部に充填され、誘電体酸化皮膜と密着し、真の陰極として機能する。電解コンデンサの電解質としては、電解液が含まれていればよく、固体電解質が併用されていてもよい。また、電解液は液体状を保っていても、ゲル化されていてもよい。
電解コンデンサは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。電解コンデンサのコンデンサ素子は、陽極箔、陰極箔、セパレータ及び電解液を備え、巻回形又は積層形を採る。陽極箔の表面には誘電体酸化皮膜が形成されている。陽極箔と陰極箔はセパレータを介して対向する。電解液は、コンデンサ素子の空隙部に充填され、誘電体酸化皮膜と密着し、真の陰極として機能する。電解コンデンサの電解質としては、電解液が含まれていればよく、固体電解質が併用されていてもよい。また、電解液は液体状を保っていても、ゲル化されていてもよい。
コンデンサ素子は、ケースに収容され、封口体で密封されている。ケースは、コンデンサ素子を収容する有底筒状であり、例えばアルミニウム製である。封口体は、ケースの開口に加締め加工により取り付けられ、ケースの開口を封止する。陽極箔と陰極箔には引出端子が接続され、その接続端子には外部端子が電気的に接続されている。外部端子が封口体の貫通孔を通って外部に導出されている。
(封口体)
この封口体は、加締め加工によるケースとの密着性向上のため、また絶縁性確保のために、弾性力を備えたエラストマー部材を備えている。エラストマー部材は、エラストマーを含む。エラストマーとしては、ブチルゴムとも呼ばれるイソブチレンイソプレンゴム、EPDMとも呼ばれるエチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、天然ゴムが挙げられる。これらエラストマーは、樹脂加硫、過酸化物加硫、硫黄加硫、キノイド加硫及びポリオール加硫等の加硫にて作製され、また熱可塑性エラストマーも挙げられる。エラストマーは、1種又は2種以上が用いられてもよい。
この封口体は、加締め加工によるケースとの密着性向上のため、また絶縁性確保のために、弾性力を備えたエラストマー部材を備えている。エラストマー部材は、エラストマーを含む。エラストマーとしては、ブチルゴムとも呼ばれるイソブチレンイソプレンゴム、EPDMとも呼ばれるエチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、天然ゴムが挙げられる。これらエラストマーは、樹脂加硫、過酸化物加硫、硫黄加硫、キノイド加硫及びポリオール加硫等の加硫にて作製され、また熱可塑性エラストマーも挙げられる。エラストマーは、1種又は2種以上が用いられてもよい。
加硫剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5ジメチル-2,5ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類等が挙げられる。また、架橋促進剤には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化鉛、ジベンゾチアジル、ジスルフィド、1,2-ポリブタジエン、トリアリルシアヌレートメタクリル酸及びアクリル酸の金属塩及びエステルステアリン酸N,N’-メタフェニルレンジマレインシド等が挙げられる。これら加硫剤と架橋促進剤の単独又は複数を組み合わせ、またエラストマーの種類ごとに選択されることにより、エラストマーの初期の架橋密度を調整できる。
このエラストマー部材には、エラストマーの他、カーボン及び無機充填剤が含まれるようにしてもよい。カーボン及び無機充填剤が添加されると、エラストマーが開裂し難くなり、エラストマー部材の軟化が抑えられる。無機充填剤としては、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、チタニア、アルミナ及びこれらの混合が挙げられ、扁平形状を有するタルクやマイカ等が好ましい。扁平形状を有する無機充填剤は、架橋を促進し、架橋密度を調整するために好適である。
このようなエラストマー部材において、エラストマーの初期の架橋密度は、1.8×10-3mol/g以上に調整される。初期の架橋密度とは、封口体を高温空気環境下に長時間晒す前の架橋密度である。具体的には、初期の架橋密度には、封口体を製造した段階や、製造した封口体を電解コンデンサに組み込んだ段階の架橋密度も含まれる。また、電解コンデンサはエージング工程やリフロー工程において高温環境下に晒されるが、これらの工程は最大でも数秒~6時間程度という比較的短い時間であるため架橋密度は大きく変化しない。エージング工程やリフロー工程を行った後の電解コンデンサの封口体の架橋密度も初期の架橋密度に含まれる。架橋密度は、下記式(1)で示されるFlory-Rehner式により算出される。尚、膨潤後体積vは、シクロヘキサン溶液中にエラストマーを浸漬し、摂氏20度以上25度以下の室温環境に設定されている暗所に72時間静置した後に測定する。
更に、エラストマーの含有量は、エラストマー部材全体に対して30wt%以下に調整される。エラストマーの含有量がエラストマー部材全体に対して30wt%以下であると、経時的な架橋密度の低下が抑制される。そのため、エラストマーの初期の架橋密度が1.8×10-3mol/g以上であり、エラストマーの含有量をエラストマー部材全体に対して30wt%以下にすると、高い架橋密度が長期間維持される。即ち、架橋密度が高いと、熱エネルギーによるエラストマーの振動を架橋が良好に抑え、エラストマーに開裂が生じ難くなる。そして、高い架橋密度を長期間維持できると、その期間のエラストマーの開裂の進度が緩慢になり、エラストマーの再結合の進度も緩慢になり、その結果、封口体の収縮の進度も緩慢になる。即ち、封口体の熱酸化劣化が抑制される。
また、エラストマーがブチルゴムである場合、加硫として樹脂加硫を選択することが好ましい。ブチルゴムを樹脂加硫すると、強固な架橋構造を有し、架橋密度の低下を抑制する効果がある。
エラストマーの初期の架橋密度は、2.5×10-3mol/g以上が好ましい。2.5×10-3mol/g以上という更に高い初期の架橋密度に調整されている場合、エラストマーの含有量がエラストマー部材全体に対して30wt%以下に調整されることにより、その期間のエラストマーの開裂が更に緩慢になる。即ち、エラストマー部材の軟化を大きく抑制できる。また、エラストマーの含有量をエラストマー部材全体に対して27wt%以下が好ましい。エラストマーの含有量が27wt%以下であると、高い架橋密度が更に長期間維持され、エラストマー部材の最終的な軟化が軽度に抑えられる。
エラストマーとしては、ブチルゴムとも呼ばれるイソブチレンイソプレンゴムが特に好ましい。ブチルゴムを含むエラストマー部材には電解液が浸透し難く、エラストマー部材のケース内部側の膨潤が抑制される。そのため、ブチルゴムを含むエラストマー部材においては、電解液の浸透を受けて膨潤するケース内部側と、熱酸化劣化により収縮するケース外部側との体積変化の差が小さくなる。従って、エラストマー部材の割れが発生し難くなる。
封口体は、エラストマー部材に硬質樹脂板を積層し、または硬質樹脂板をエラストマー部材で内包させるようにして備えていてもよい。硬質樹脂板は、電解コンデンサ内の密閉性を高め、エラストマー部材を電解液や熱から保護する。
(電解コンデンサ)
このような封口体を、コンデンサ素子を収容したケースの開口に嵌め込むことで、電解コンデンサは作製される。電解コンデンサの陽極箔及び陰極箔は、弁作用金属を材料とする箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、酸化ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。純度は、陽極箔に関して99.9%以上が望ましく、陰極箔に関して99%程度以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
このような封口体を、コンデンサ素子を収容したケースの開口に嵌め込むことで、電解コンデンサは作製される。電解コンデンサの陽極箔及び陰極箔は、弁作用金属を材料とする箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、酸化ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。純度は、陽極箔に関して99.9%以上が望ましく、陰極箔に関して99%程度以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
陽極箔は、箔一面又は箔両面に拡面構造を有する拡面層が形成されている。陰極箔は、拡面層のないプレーン箔であってもよいし、陽極箔と同じように拡面層が形成されていてもよい。拡面層は、トンネル状のピット、海綿状のピット、又は密集した粉体間の空隙により成る。この拡面層は、電解エッチング、ケミカルエッチング若しくはサンドブラスト等により形成され、又は箔体に金属粒子等を蒸着若しくは焼結することにより形成される。
陽極箔の誘電体酸化皮膜は、典型的には、陽極箔の表層に形成される酸化皮膜であり、陽極箔がアルミニウム製であれば拡面層を酸化させた酸化アルミニウムである。この誘電体酸化皮膜は、ハロゲンイオン不在の溶液中で電圧印加する化成処理により意図的に形成される。ハロゲンイオン不在の溶液は、例えばアジピン酸、ホウ酸又はリン酸等の水溶液等である。陰極箔の表層にも、この化成処理によって意図的に酸化皮膜が形成され、又は自然的に酸化皮膜が形成されていてもよい。
電解液の溶媒は、特に限定されるものではないが、プロトン性の有機極性溶媒又は非プロトン性の有機極性溶媒を用いることができる。プロトン性の極性溶媒として、一価アルコール類、及び多価アルコール類、オキシアルコール化合物類、水などが代表として挙げられる。非プロトン性の極性溶媒としては、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、スルホキシド系などが代表として挙げられる。
一価アルコール類としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
スルホン系としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等が挙げられる。アミド系としては、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。ラクトン類、環状アミド系としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等が挙げられる。ニトリル系としては、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等が挙げられる。スルホキシド系としてはジメチルスルホキシド等が挙げられる。
電解液は溶質を含んでもよい。電解液に含まれる溶質は、アニオン及びカチオンの成分が含まれ、典型的には、有機酸若しくはその塩、無機酸若しくはその塩、又は有機酸と無機酸との複合化合物若しくはその塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を溶質成分として別々に電解液に添加してもよい。
有機酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等のカルボン酸、フェノール類、スルホン酸が挙げられる。また、無機酸としては、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、炭酸、ケイ酸等が挙げられる。有機酸と無機酸の複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジ蓚酸、ボロジグリコール酸等が挙げられる。
これら有機酸の塩、無機酸の塩、ならびに有機酸と無機酸の複合化合物の塩としては、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。四級アンモニウム塩の四級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。四級化アミジニウムとしては、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。アミン塩のアミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミンが挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジブチルアミン等、三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。
さらに、電解液には他の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリセリン、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物、ホウ酸エステル、ニトロ化合物、リン酸エステル、コロイダルシリカなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ニトロ化合物は、電解コンデンサ内の水素ガスの発生量を抑制する。ニトロ化合物としては、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール等が挙げられる。
ゲル電解質を構成する場合、このような電解液を保持するポリマーは、1種のモノマーの単重合体又は2種以上のモノマーの共重合体であり、架橋されて三次元網目構造を有する。モノマーとしては特に限定されず、例えばヒドロキシエチルアクリルアミド、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル、N-イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸又はメトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられ、これらの群から1種又は2種以上が選ばれる。
固体電解質層を併用する場合、固体電解質層は、導電性ポリマーを含む層である。導電性ポリマーは、共役系高分子又はドーピングされた共役系高分子である。共役系高分子としては、公知のものを特に限定なく使用することができる。例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これら共役系高分子は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせても良く、更に2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
上記の共役系高分子のなかでも、チオフェン又はその誘導体が重合されて成る共役系高分子が好ましく、3,4-エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン)、3-アルキルチオフェン、3-アルコキシチオフェン、3-アルキル-4-アルコキシチオフェン、3,4-アルキルチオフェン、3,4-アルコキシチオフェン又はこれらの誘導体が重合された共役系高分子が好ましい。チオフェン誘導体としては、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択された化合物が好ましく、チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。アルキル基やアルコキシ基の炭素数は1~16が適しているが、特に、EDOTと呼称される3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体、即ち、PEDOTと呼称されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。また、3,4-エチレンジオキシチオフェンにアルキル基が付加された、アルキル化エチレンジオキシチオフェンでもよく、例えば、メチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-メチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)、エチル化エチレンジオキシチオフェン(すなわち、2-エチル-2,3-ジヒドロ-チエノ〔3,4-b〕〔1,4〕ジオキシン)などが挙げられる。
ドーパントは、公知のものを特に限定なく使用することができる。例えば、ホウ酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アスコット酸、酒石酸、スクアリン酸、ロジゾン酸、クロコン酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、1,2-ジヒドロキシ-3,5-ベンゼンジスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ボロジサリチル酸、ビスオキサレートボレート酸、スルホニルイミド酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。また、ポリアニオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などが挙げられる。
導電性ポリマーとして、代表的には、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたPEDOTと呼称されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。
この固体電解質層は、導電性ポリマーが溶媒中に分散して成る分散液にコンデンサ素子を浸漬して乾燥させることにより形成される。陽極箔、陰極箔及びセパレータを組立て前に別々に分散液に浸漬させてもよいし、滴下塗布したり、スプレー塗布等してもよい。
セパレータは、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
この電解コンデンサは、封口体の収縮が緩慢になり、封口体の熱酸化劣化が長時間抑制されることにより、長寿命化する。即ち、封口体を通じて電解コンデンサから外部への電解液の蒸散が抑制されるため、電解コンデンサの静電容量の経時的な悪化や誘電正接(tanδ)の経時的な悪化が低減する。
また、架橋密度の低下抑制効果は、エラストマー部材の収縮が緩慢となり、熱酸化劣化を抑制するため、外部から電解コンデンサ内部への酸素侵入を阻む。従って、電解コンデンサが電解液と共に固体電解質層を有する所謂ハイブリッドタイプの場合、導電性ポリマーの酸化劣化も抑制できる。即ち、導電性ポリマーの酸化劣化を原因とする静電容量の経時的な悪化や誘電正接(tanδ)の経時的な悪化も低減させることができ、このハイブリッドタイプの電解コンデンサでは特に長寿命化を達成できる。
以下、実施例に基づいて本発明の封口体及び電解コンデンサをさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1及び実施例2並びに比較例1及び比較例2)
実施例1及び2並びに比較例1及び2の封口体を作製した。各封口体は、エラストマー部材のみを有する。エラストマー部材は、ブチルゴムポリマー、カーボン及び無機充填剤、加硫剤としてアルキルフェノール・アルデヒド樹脂を混合した後、樹脂加硫にて架橋し作製された。実施例1及び2並びに比較例2は、無機充填剤としてタルクを用いた。比較例1については無機充填剤としてクレーを用いた。また、実施例1及び2並びに比較例1及び2には、残りの組成としてステアリン酸、亜鉛華及びシランカップリング剤が混合された。
実施例1及び2並びに比較例1及び2の封口体を作製した。各封口体は、エラストマー部材のみを有する。エラストマー部材は、ブチルゴムポリマー、カーボン及び無機充填剤、加硫剤としてアルキルフェノール・アルデヒド樹脂を混合した後、樹脂加硫にて架橋し作製された。実施例1及び2並びに比較例2は、無機充填剤としてタルクを用いた。比較例1については無機充填剤としてクレーを用いた。また、実施例1及び2並びに比較例1及び2には、残りの組成としてステアリン酸、亜鉛華及びシランカップリング剤が混合された。
実施例1及び2並びに比較例1及び2の封口体は、下表1に示すように、ブチルゴムポリマーとカーボンと無機充填剤の組成比を調整し、また架橋密度を調整して作製された。各組成比は、エラストマー部材全体重量に対する。
(表1)
(表1)
架橋密度の算出に際し、厚さ約2mmで1cm×1cmサイズで1試験片あたり約0.3gの各実施例及び比較例のエラストマー部材を作製した。このエラストマー部材について、初期重量及び比重からエラストマー部材の膨潤前体積v0を算出した。エラストマー部材を15mlのシクロヘキサン溶液中に入れ、暗所で摂氏20度~25度の室温環境下に72時間静置した。この静置が終了した後、エラストマー部材の膨潤後重量を測定した。測定後、エラストマー部材を摂氏100度の真空環境下で1時間乾燥させ、シクロヘキサンを除去した。
エラストマー部材の乾燥後重量と膨潤後重量とから、エラストマー部材に含浸したシクロヘキサンの体積を算出した。シクロヘキサンの体積から膨潤後のエラストマー部材の体積を算出し、このエラストマー部材の体積とシクロヘキサンの体積を足し合わせた体積を膨潤後体積vとした。尚、シクロヘキサンの分子量を84.16g/mol、密度を0.78g/cm3、及びブチルゴムポリマーとシクロヘキサンの相互作用係数χを0.44として計算された。
(熱老化後の物性変化)
実施例1及び2並びに比較例1及び2の封口体の熱酸化劣化の程度を観察した。即ち、各実施例及び比較例の封口体を摂氏150度の空気雰囲気下に晒した。そして、摂氏150度の空気雰囲気下に晒し続けて各時間経過後の硬度変化(ΔHS)と熱収縮率(ΔDiameter)を測定した。硬度変化の結果を下表2に示し、熱収縮率の結果を下表3に示す。また、下表2に基づき、横軸に経過時間及び縦軸に硬度変化を取ったグラフを図1に示し、下表3に基づき、横軸に経過時間及び縦軸に熱収縮率を取ったグラフを図2に示す。
実施例1及び2並びに比較例1及び2の封口体の熱酸化劣化の程度を観察した。即ち、各実施例及び比較例の封口体を摂氏150度の空気雰囲気下に晒した。そして、摂氏150度の空気雰囲気下に晒し続けて各時間経過後の硬度変化(ΔHS)と熱収縮率(ΔDiameter)を測定した。硬度変化の結果を下表2に示し、熱収縮率の結果を下表3に示す。また、下表2に基づき、横軸に経過時間及び縦軸に硬度変化を取ったグラフを図1に示し、下表3に基づき、横軸に経過時間及び縦軸に熱収縮率を取ったグラフを図2に示す。
表2及び図1に示すように、比較例1及び比較例2は、500時間経過後に軟化が約-5まで進行していることがわかる。一方、実施例1の軟化は1000時間経過後も軟化が約-1.7に留まっており、これ以上の軟化は生じていない。これらから、比較例1及び比較例2の封口体については、エラストマーの開裂がかなり進行したが、実施例1の封口体については、エラストマーの開裂が抑制されていることが確認できる。更に、実施例2は硬度変化が正の値であり、エラストマーの開裂が硬度変化に表れないほど抑制されていることがわかる。
そして、表3及び図2に示すように、比較例1及び比較例2の封口体の熱収縮の大きさに比べて、実施例1及び実施例2の封口体の熱収縮は小さいことがわかる。尚、比較例1の封口体は、2000時間が経過した段階で割れが発生してしまった。表2及び表3並びに図1及び図2を併せると、実施例1及び実施例2は、エラストマーの開裂が抑制されたため、気化したエラストマーが少なく、また短鎖のエラストマーの再結合も少なく、封口体の収縮が抑制されたことがわかる。
(架橋密度の変化)
ここで、比較例2の架橋密度は実施例1の架橋密度よりも高い。しかしながら、比較例2よりも、実施例1の軟化は抑えられ、その結果として熱収縮率も抑えられた。そこで、実施例1及び2並びに比較例2の封口体の架橋密度の変化を測定した。即ち、各実施例及び比較例の封口体を摂氏150度の温度環境下に晒し、この温度環境下に晒す前の架橋密度と、この温度環境下に晒し続けて500時間及び1000時間後の架橋密度とを測定し、架橋密度の変化率を計算した。この測定結果を下表4に示す。
ここで、比較例2の架橋密度は実施例1の架橋密度よりも高い。しかしながら、比較例2よりも、実施例1の軟化は抑えられ、その結果として熱収縮率も抑えられた。そこで、実施例1及び2並びに比較例2の封口体の架橋密度の変化を測定した。即ち、各実施例及び比較例の封口体を摂氏150度の温度環境下に晒し、この温度環境下に晒す前の架橋密度と、この温度環境下に晒し続けて500時間及び1000時間後の架橋密度とを測定し、架橋密度の変化率を計算した。この測定結果を下表4に示す。
表4に示すように、実施例1よりも初期の架橋密度が高かった比較例2は、500時間後には架橋密度が大きく低下し、実施例1の架橋密度を下回ることとなった。これにより、比較例2の封口体は、高い架橋密度を長時間維持することなく、早々に架橋密度が低下してしまったために、換言すればエラストマーの開裂抑制が短時間しか続かず、エラストマーの開裂が激しくなり、収縮が実施例1よりも大きくなったことが確認された。
実施例1と比較例2の相違は、エラストマーのエラストマー部材への含有比である。換言すれば、比較例2のように、エラストマーの初期の架橋密度を1.8×10-3mol/g以上にするだけでなく、実施例1や2のように、更にエラストマー部材全体に対するエラストマーの含有量を30wt%以下にすることにより、架橋密度の変化が緩慢になり、エラストマーの開裂が抑制され、エラストマー部材の収縮が抑制されたことが確認された。即ち、熱酸化劣化が抑制されたことが確認された。
尚、実施例2が示すように、エラストマー部材全体に対するエラストマーの含有量を27wt%以下にすると、更に架橋密度の変化が抑制され、初期の架橋密度が2.5×10-3mol/g以上であると、殆ど軟化が観察されず、収縮も最も良好に抑制されていることが確認された。
(実施例3及び4並びに比較例3)
実施例1及び2並びに比較例2の封口体を用いて実施例3及び4並びに比較例3の電解コンデンサを作製した。これら電解コンデンサは、電解液と共に固体電解質層が併用される所謂ハイブリッドタイプである。
実施例1及び2並びに比較例2の封口体を用いて実施例3及び4並びに比較例3の電解コンデンサを作製した。これら電解コンデンサは、電解液と共に固体電解質層が併用される所謂ハイブリッドタイプである。
実施例3及び4並びに比較例3の電解コンデンサにおいて、陽極箔及び陰極箔は、アルミニウム箔であり、エッチング処理により拡面化し、化成処理により酸化皮膜を形成した。化成処理では、アジピン酸水溶液中で電圧を印加した。陽極箔の酸化皮膜は、電解コンデンサの誘電体酸化皮膜となる。
陽極箔と陰極箔の各々にリード線を接続し、セルロース系セパレータを介して陽極箔と陰極箔を対向させて巻回した。コンデンサ素子は、同一濃度のリン酸二水素アンモニウム水溶液に10分間浸漬されることで、修復化成が行われた。
次に、導電性高分子として同一製品のポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)の分散液を調製した。この分散液にコンデンサ素子を浸漬し、コンデンサ素子を引き上げ、150℃で30分間乾燥させた。これにより、コンデンサ素子に固体電解質層を形成した。
電解液の溶媒としてエチレングリコールを選択した。また、電解液の溶質としてイオン解離性塩であるアゼライン酸アンモニウムを選択した。電解液に対してアゼライン酸アンモニウムが5wt%の割合で溶媒と溶質とを混合した。固体電解質が形成されたコンデンサ素子をこの電解液に浸漬し、コンデンサ素子内に電解液を含浸させた。
そして、このコンデンサ素子を同一寸法及び同一形状のアルミニウムケースに収容した。アルミニウムケースの開口端部には、実施例3の電解コンデンサには、実施例1の封口体を装着し、加締め加工によって封止した。実施例4の電解コンデンサには、実施例2の封口体を装着し、加締め加工によって封止した。比較例3の電解コンデンサには、比較例2の封口体を装着し、加締め加工によって封止した。
尚、コンデンサ素子から引き出されるリード線は封口体から引き出しておき、電解コンデンサに通電できるようにした。115℃の温度環境下にて45分間の電圧印加を行い、各電解コンデンサに対してエージング処理を施した。各電解コンデンサのコンデンサ素子のサイズは直径6.3mm、高さ5.8mmであり、各電解コンデンサの定格耐電圧は35WVであり、定格容量47μFである。
実施例3及び4並びに比較例2の電解コンデンサを170℃の高温環境下に晒した。そして、高温環境下に晒す直前、及び高温環境下に1200時間晒した段階での誘電正接(tanδ)、静電容量(Cap)及び電解液の抜け量(ΔWt)を測定した。また、高温環境下に晒す直前の静電容量に対する、2000時間経過後の静電容量の減少率(ΔCap)を計算した。
表5に示すように、実施例3及び4並びに比較例3の電解コンデンサの初期特性は同等である。しかしながら、電解コンデンサが170℃といった高温環境下に晒されると、実施例3及び4の群と比較例3とは特性に違いが生じた。即ち、1200時間後においては、実施例3及び4の電解コンデンサからの電解液の抜け量ΔWtは、比較例3よりも少なかった。また、1200時間後においては、実施例3及び4の電解コンデンサのCapの減少及びtanδの悪化は、比較例3と比べて抑制されていた。
このように、エラストマーの収縮が緩慢になり、封口体の熱酸化劣化が長期間抑制されることにより、封口体を通じた電解液の蒸散も抑制されることが確認された。そして、電解コンデンサの静電容量の経時的な悪化や誘電正接(tanδ)の経時的な悪化が低減するに到った。また、導電性ポリマーの酸化劣化も抑制され、導電性ポリマーの酸化劣化を原因とする静電容量の経時的な悪化や誘電正接(tanδ)の経時的な悪化も低減できることが確認された。
Claims (11)
- エラストマーを含むエラストマー部材を備え、
前記エラストマーは、初期の架橋密度が1.8×10-3mol/g以上であり、前記エラストマー部材全体に対する含有量が30wt%以下であること、
を特徴とする封口体。 - 前記エラストマーは、初期の架橋密度が2.5×10-3mol/g以上であること、
を特徴とする請求項1記載の封口体。 - 前記エラストマー部材は、更にカーボン及び無機充填剤を含むこと、
を特徴とする請求項1又は2記載の封口体。 - 前記無機充填剤として、扁平無機充填剤を含むこと、
を特徴とする請求項3記載の封口体。 - 前記扁平無機充填剤は、タルク、マイカ又はこれらの両方であること、
を特徴とする請求項4記載の封口体。 - 前記エラストマーは樹脂架橋されていること、
を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の封口体。 - 前記エラストマーは、ブチルゴムであること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の封口体。 - 150℃の温度環境下に500時間晒された際の架橋密度の変化率は、初期と比べて-60%以内に収まること、
を特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の封口体。 - 150℃の温度環境下に1000時間晒された際の硬度変化は、初期と比べて-2以内に収まること、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の封口体。 - 請求項1乃至9の何れかに記載の封口体と、
前記封口体によって封口されるケースと、
前記ケースに収容され、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔及び陰極箔が対向し、電解液が含浸されたコンデンサ素子と、
を備えること、
を特徴とする電解コンデンサ。 - 前記コンデンサ素子内に形成され、導電性ポリマーを含む固体電解質層を更に備えること、
を特徴とする請求項10記載の電解コンデンサ。
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