WO2023120305A1 - 射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物、樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０である、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。 成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂 成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種 成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体

Description

射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物、樹脂成形体およびその製造方法

　本発明は、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物と、この射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を成形した樹脂成形体およびその製造方法に関する。

　（メタ）アクリル樹脂は、その優れた外観、耐傷付性、耐熱性、透明性から、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネル、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、エンブレムといった車両の内外装材料等の車両用部材；建築部材；洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備部材；レンズ、導光体等の光学部材、化粧品等の容器、キュベット等の医療用部材など、多くの用途に広く用いられている。特に、メタクリル系樹脂は、その透明性から意匠部品に使用されることが多く、優れた透明性が求められる。

　このような用途において、人や物との接触により製品に傷が付くことがあるため、（メタ）アクリル樹脂にはより優れた耐傷付性が求められている。

　（メタ）アクリル樹脂の射出成形または押出成形では、熱により溶けた溶融樹脂が金型内に充填され、冷却され固化される。固化後、特に、金型付近の溶融樹脂は脆くなりやすく、これは樹脂成形体の耐傷付性悪化の要因の一つになっている。溶融樹脂の脆化を防止するためには、金型温度や射出速度を調整する必要がある。特に金型温度については、７０℃より低い温度での成形では、脆化を防止することは困難とされていた。

　耐傷付性や耐薬品性を改善した上で、成形性を向上させ外観不良を抑制するために、特許文献１には、アクリル樹脂とシリコーン化合物と溶融弾性付与剤を含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
　特許文献２には、樹脂成形体の耐傷付性に優れるメタクリル系樹脂組成物として、アクリル樹脂と、特定の分子量のポリエステル変性シリコーンを含むメタクリル系樹脂組成物が開示されている。

特開２０１７－１８６３９２号公報 特開２０２１－０９５４８２号公報

　特許文献１に開示されている熱可塑性樹脂組成物では、アクリル樹脂にシリコーン化合物を配合することで、耐傷付性や耐薬品性を改善しているが、アクリル樹脂とシリコーン化合物とは相溶性が不十分である。また、アクリル樹脂とシリコーン化合物は、屈折率が異なるため、透明性が低下するといった課題があり、透明用途や濃色系着色用途への適用が困難であった。

　特許文献２に開示されているメタクリル系樹脂組成物は、十分な耐傷付性を担保するには、７０℃以上の金型温度での成形が必要であるという課題を有している。

　本発明は上記従来技術の課題を解決し、７０℃よりも低い金型温度においても、透明性、耐傷付性に優れた樹脂成形体を得ることができる射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を提供することを目的とする。

　本発明者は、アクリル樹脂（Ａ）に対し、ポリエステル変性シリコーンを用いることなく、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）と、質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を、特定の比率で含有させることで、耐傷付性が顕著に発現され、７０℃よりも低い金型温度においても、透明性、耐傷付性に優れた樹脂成形体を得ることができることを見出した。
　即ち、本発明は以下を要旨とする。

［１］　下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０である、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体

［２］　前記成分（Ｂ）の含有量が、前記成分（Ａ）１００質量部に対して０．０１～１０質量部である、［１］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［３］　前記成分（Ｂ）の含有量が、前記成分（Ａ）１００質量部に対して０．１～３．０質量部である、［２］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［４］　前記成分（Ｃ）の含有量が、前記成分（Ａ）１００質量部に対して０．０１～８質量部である、［１］～［３］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［５］　前記成分（Ａ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む重合体である、［１］～［４］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［６］　前記成分（Ａ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を７０質量％以上含む重合体である、［５］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［７］　前記成分（Ａ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を９０質量％以上含む重合体である、［６］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［８］　前記成分（Ｃ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む重合体である、［１］～［７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［９］　前記成分（Ｃ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を７０質量％以上含む重合体である、［８］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１０］　前記成分（Ｃ）が、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体である、［１］～［９］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１１］　前記アクリル酸エステルがブチルアクリレートである、［１０］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１２］　前記成分（Ｂ）の炭素数が１０～２５である、［１］～［１１］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１３］　前記成分（Ｂ）が、ステアリルアルコール、パルミチン酸、及びステアリン酸アミドより選ばれる１種又は２種以上である、［１２］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１４］　さらに、下記成分（Ｄ）を含まないか、または、含む場合、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物１００質量部に対し、前記成分（Ｄ）の含有量が、０質量部より多く１５質量部以下である、［１］～［１３］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
成分（Ｄ）：多層構造を有するゴム粒子

［１５］　前記成分（Ｄ）の含有量が、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物１００質量部に対して１０質量部以下である、［１４］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１６］　前記成分（Ｄ）を含まない、［１４］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１７］　前記成分（Ａ）および前記成分（Ｃ）と前記成分（Ｄ）とが異なる成分である、［１４］又は［１５］に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。

［１８］　下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０であるメタクリル系樹脂組成物を、射出成形または押出成形して樹脂成形体を得る、樹脂成形体の製造方法。
成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体

［１９］　［１］～［１７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、樹脂成形体。

［２０］　［１］～［１７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、車両用部材。

［２１］　［１］～［１７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、住宅設備部材。

［２２］　［１］～［１７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、光学部材。

［２３］　［１］～［１７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、医療用部材。

［２４］　［１］～［１７］のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、容器。

［２５］　下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０であるメタクリル系樹脂組成物の射出成形または押出成形への使用。
成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体

［２６］　下記成分（Ａ）と成分（Ｂ）と成分（Ｃ）を、［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０となるように混合し、混合物を射出成形または押出成形することで得られる、樹脂成形体。
成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体

［２７］　下記成分（Ａ）と成分（Ｂ）と成分（Ｃ）を、［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０となるように混合し、混合物を射出成形または押出成形することで樹脂成形体を得る、樹脂成形体の製造方法。
成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物によれば、得られる樹脂成形体の耐傷付性を良好なものにでき、さらに透明性にも優れたものとすることができる。また、成形性に優れることから、十分な耐傷付性を発揮する上で成形条件や金型構造の制約の問題を改善することができる。

　以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
　本発明において「～」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
　「（メタ）アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも１種を意味する。
　「（メタ）アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる少なくとも１種を意味する。
　「単量体」は未重合の化合物を意味し、「繰り返し単位」は単量体が重合することによって重合体内に形成された前記単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
　「質量％」および「質量部」と「重量％」および「重量部」はそれぞれ同義であり、「質量％」は、全体量１００質量％中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。

〔射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物〕
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される値が０．０１～５０であることを特徴とする。
成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂（以下、「アクリル樹脂（Ａ）」と称す場合がある。）
成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種（以下、「脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）」と称す場合がある。）
成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体（以下、「質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）」と称す場合がある。）

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、アクリル樹脂（Ａ）に対して、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）と質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を特定の比率で含有することにより、この射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体（以下、適宜「得られる樹脂成形体」という。）は７０℃よりも低い金型温度においても透明性、耐傷付性が優れたものとなる。
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、更に、下記成分（Ｄ）を含まないか、或いは、所定の割合以下で含むものとすることができる。
　成分（Ｄ）：多層構造を有するゴム粒子（以下、「多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）」と称す場合がある。）

［アクリル樹脂（Ａ）］
　成分（Ａ）の質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂（Ａ）は、本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の構成成分の１つである。
　本発明におけるアクリル樹脂（Ａ）は、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位（以下、「メチルメタクリレート単位」という。）を、アクリル樹脂（Ａ）の総質量に対して５０質量％以上含むことが好ましく、７０質量％以上含むことがより好ましく、８０質量％以上含むことがさらに好ましく、９０質量％以上含むことが特に好ましく、９９．５質量％以上含むことが最も好ましい。

　本発明におけるアクリル樹脂（Ａ）の一実施形態としては、メチルメタクリレートの単独重合体であるか、又は、アクリル樹脂（Ａ）に占めるメチルメタクリレート単位の含有割合が５０質量％以上１００質量％未満、より好ましくは７０質量％以上１００質量％未満、さらに好ましくは８０質量％以上１００質量％未満、特に好ましくは９０質量％以上１００質量％未満、最も好ましくは９９．５質量％以上１００質量％未満であるメチルメタクリレート共重合体（以下、適宜「重合体（Ａ１）」とも言う。）を挙げることができる。

＜重合体（Ａ１）＞
　重合体（Ａ１）は、メチルメタクリレートの単独重合体、又は、５０質量％以上１００質量％未満、より好ましくは７０質量％以上１００質量％未満、さらに好ましくは８０質量％以上１００質量％未満、特に好ましくは９０質量％以上１００質量％未満、最も好ましくは９９．５質量％以上１００質量％未満のメチルメタクリレート単位と、０質量％を超え５０質量％以下、より好ましくは０質量％を超え３０質量％以下、さらに好ましくは０質量％を超え２０質量％以下、特に好ましくは０質量％を超え１０質量％以下、最も好ましくは０質量％を超え０．５質量％以下の、メチルメタクリレートと共重合可能な他の単量体（以下、「他の単量体」という。）由来の繰り返し単位（以下、「他の単量体単位」という。）を含有するメチルメタクリレート共重合体である。

　これらの重合体（Ａ１）の中でも、アクリル樹脂本来の性能を損ないにくいことから、メチルメタクリレートの単独重合体がより好ましい。

　他の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチル（メタ）アクリレート、ｎ－プロピル（メタ）アクリレート、ｉｓｏ－プロピル（メタ）アクリレート、ｎ－ブチル（メタ）アクリレート、ｉｓｏ－ブチル（メタ）アクリレート、ｓｅｃ－ブチル（メタ）アクリレート、ｔｅｒｔ－ブチル（メタ）アクリレート、ｎ－ヘキシル（メタ）アクリレート、シクロヘキシル（メタ）アクリレート、ｎ－オクチル（メタ）アクリレート、２－エチルヘキシル（メタ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレート、グリシジル（メタ）アクリレート、テトラヒドロフルフリル（メタ）アクリレート、ノルボルニル（メタ）アクリレート、アダマンチル（メタ）アクリレート、ジシクロペンテニル（メタ）アクリレート、ジシクロペンタニル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレート等のメチルメタクリレート以外の（メタ）アクリレート化合物；（メタ）アクリル酸；（メタ）アクリロニトリル；（メタ）アクリルアミド、Ｎ－ジメチル（メタ）アクリルアミド、Ｎ－ジエチル（メタ）アクリルアミド、メチレンビス（メタ）アクリルアミド等の（メタ）アクリルアミド化合物；スチレン、α－メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物；ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、２－ヒドロキシエチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物；酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル化合物；エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン等のオレフィン化合物等が挙げられる。これらの他の単量体は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　これらの他の単量体の中でも、アクリル樹脂本来の性能を損なわないことから、メチルメタクリレート以外の（メタ）アクリレート化合物が好ましく、得られる樹脂成形体の耐熱分解性に優れることから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ｎ－ブチルアクリレートがより好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレートが更に好ましい。

　重合体（Ａ１）に他の単量体単位が含まれる場合、重合体（Ａ１）１００質量％に占める他の単量体単位の含有割合は、アクリル樹脂本来の性能を損ないにくいことから、０質量％を超えて５０質量％以下が好ましく、０質量％を超えて３０質量％以下がより好ましく、０質量％を超えて２０質量％以下がさらに好ましく、０質量％を超えて１０質量％以下が特に好ましく、０質量％を超えて０．５質量％以下が最も好ましい。

　重合体（Ａ１）の製造方法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等が挙げられる。これらの重合方法の中でも、生産性に優れることから、塊状重合法、懸濁重合法が好ましく、塊状重合法がより好ましい。

　重合体（Ａ１）等のアクリル樹脂（Ａ）の質量平均分子量は、２００，０００未満であり、２０，０００～２００，０００が好ましく、５０，０００～１５０，０００がより好ましく、５０，０００～１００，０００がさらに好ましい。重合体（Ａ１）等のアクリル樹脂（Ａ）の質量平均分子量が２０，０００以上であると、得られる樹脂成形体の機械特性に優れる。重合体（Ａ１）等のアクリル樹脂（Ａ）の質量平均分子量が２００，０００未満であると、溶融成形時の流動性に優れる。

　本明細書において、アクリル樹脂（Ａ）及び後述の質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の質量平均分子量は、標準試料として標準ポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー（ＧＰＣ）を用いて測定した値とする。
　アクリル樹脂（Ａ）及び質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の各々単独のＧＰＣ測定ではなく、アクリル樹脂（Ａ）と質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を含む樹脂組成物についてＧＰＣ測定を行うと、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー溶出曲線において、存在量が最も多いピークとして、分子量２０万未満に対応する領域に一つ、分子量２０万以上に対応する領域に一つ、それぞれピークが出現する。このうち、分子量２０万未満の領域に出現するピークがアクリル樹脂（Ａ）の分子量に該当し、分子量２０万以上の領域に出現するピークが質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の分子量に該当する
。

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の総質量（１００質量％）に占めるアクリル樹脂（Ａ）の含有割合の下限は、得られる樹脂成形体が、透明性、耐熱性及び耐侯性等のアクリル樹脂本来の性能を損ないにくい観点から、５５質量％以上が好ましく、７０質量％以上がより好ましく、９０質量％以上がさらに好ましく、９３質量％以上が特に好ましい。アクリル樹脂（Ａ）の含有割合の上限値は、得られる樹脂成形体の耐傷付性に優れる観点から、９９質量％以下が好ましく、９８質量％以下がより好ましく、９７質量％以下がさらに好ましく、９６質量％以下が特に好ましい。
　上記の好ましい上限及び好ましい下限は任意に組み合わせることができる。例えば、本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の総質量（１００質量％）に占めるアクリル樹脂（Ａ）の含有割合は、５５質量％以上９９質量％以下が好ましく、７０質量％以上９８質量％以下がより好ましく、９０質量％以上９７質量％以下がさらに好ましく、９３質量％以上９６質量％以下が特に好ましい。

［脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）］
　脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）は、本発明のメタクリル系樹脂組成物の構成成分の一つである。
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、成分（Ｂ）としての脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含むことで、溶融樹脂の粘度を下げることができ、かつ、後述する質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）と相互作用することで、得られる樹脂成形体の耐傷付性をより優れたものにできる。

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）と後述する質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を併用することにより、耐傷付性の効果が顕著に向上し、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の含有量を増量することなく、得られる樹脂成形体の耐傷付性をさらに良好なものにできるので、透明性、耐熱性及び耐侯性等のアクリル樹脂本来の性能を損ないにくい。

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物に含まれる脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の含有量の下限は、得られる樹脂成形体の耐傷付性に優れる観点から、アクリル樹脂（Ａ）の総質量１００質量部に対して０．０１質量部以上が好ましく、０．１質量部以上がより好ましく、０．２質量部以上がさらに好ましい。一方、前記含有量の上限は、得られる樹脂成形体がアクリル樹脂本来の性能を損なわない観点から、アクリル樹脂（Ａ）の総質量１００質量部に対し、１０質量部以下が好ましく、３．０質量部がより好ましく、１質量部以下がさらに好ましい。
　上記の好ましい上限及び好ましい下限は任意に組み合わせることができる。例えば、本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物に含まれる脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の含有量は、アクリル樹脂（Ａ）の総質量１００質量部に対し、０．０１質量部以上１０質量部以下が好ましく、０．１質量部以上３．０質量部以下がより好ましく、０．２質量部以上１質量部以下がさらに好ましい。

　脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の炭素数の下限は、アクリル樹脂（Ａ）との相溶性に優れ、得られる樹脂成形体の耐傷付性に優れる観点から、１０以上が好ましく、１５以上がより好ましく、１７以上がさらに好ましい。一方、前記炭素数の上限は、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物中への脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の分散性が良好となり、得られる樹脂成形体の耐傷付性を良好に維持できる観点から、２５以下が好ましく、２４以下がより好ましく、２３以下がさらに好ましい。
　上記の好ましい上限及び好ましい下限は任意に組み合わせることができる。例えば、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の炭素数は、１０～２５が好ましく、１５～２４がより好ましく、１７～２３がより好ましい。

＜脂肪酸誘導体＞
　脂肪酸誘導体としては、脂肪酸アミド、脂肪酸アルキル、脂肪酸グリセリド等が挙げられ、中でも、脂肪酸アミド化合物（以下、適宜「脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）」という。）が好ましい。

（脂肪酸アミド）
　脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）としては、例えば、飽和脂肪酸アミド化合物、不飽和脂肪酸アミド化合物、ビス脂肪酸アミド化合物等が挙げられる。これらの脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。これらの脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）の中でも、得られる樹脂成形体の耐傷付性に優れることから、飽和脂肪酸アミド化合物及び不飽和脂肪酸アミドが好ましく、飽和脂肪酸アミド化合物がより好ましい。

　飽和脂肪酸アミド化合物としては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。これらの飽和脂肪酸アミド化合物は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。これらの飽和脂肪酸アミド化合物の中でも、得られる樹脂成形体の耐傷付性に優れることから、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、及びベヘン酸アミドから選ばれる少なくとも１種が好ましい。

　不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等が挙げられる。これらの不飽和脂肪酸アミド化合物は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。これらの不飽和脂肪酸アミド化合物の中でも、得られる樹脂成形体の耐傷付性に優れることから、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドが好ましく、エルカ酸アミドがより好ましい。

　ビス脂肪酸アミド化合物としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミド；ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。これらのビス脂肪酸アミド化合物は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）としては、ステアリン酸アミドが特に好ましい。

（脂肪酸アルキル）
　脂肪酸アルキルは、通常炭素数１０～２２程度の脂肪酸と炭素数１～１０程度の１価の脂肪族アルコールとが脱水縮合した構造を有する化合物である。脂肪酸アルキルとしては、例えば、ラウリル酸メチル、ラウリル酸エチル、ラウリル酸ブチル、ラウリル酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチルの如き飽和脂肪酸アルキル；オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸ブチル、リノール酸オクチルの如き不飽和脂肪酸アルキル；等が挙げられる。これらの脂肪酸アルキルは、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。中でも、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル等のステアリン酸アルキルが好ましく、ステアリン酸メチルがより好ましい。

（脂肪酸グリセリド）
　脂肪酸グリセリドは、通常炭素数１０～２５程度の脂肪酸とグリセリンとが脱水縮合した構造を有する化合物である。脂肪酸グリセリドとしては、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。脂肪酸グリセリドの具体例としては、ラウリル酸モノグリセリド、ラウリル酸ジグリセリド、ラウリル酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリドの如き飽和脂肪酸グリセリド；オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノール酸トリグリセリドの如き不飽和脂肪酸グリセリド；等が挙げられる。これらの脂肪酸グリセリドは、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。中でも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリドの如きステアリン酸グリセリドが好ましく、ステアリン酸モノグリセリドがより好ましい。

＜脂肪族アルコール＞
　脂肪族アルコール（以下、適宜「脂肪族アルコール（Ｂ－２）」という。）は、通常炭素数１０～２５の脂肪族アルコール（Ｂ－２）であり、１価アルコールであってもよく、多価アルコールであってもよい。脂肪族アルコール（Ｂ－２）の具体例としては、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールの如き飽和脂肪族アルコール；オレイルアルコール、リノリルアルコールの如き不飽和脂肪族アルコール；等が挙げられる。これらの脂肪族アルコール（Ｂ－２）は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。中でも、ステアリルアルコールが好ましい。

＜脂肪酸＞
　脂肪酸（以下、適宜「脂肪酸（Ｂ－３）」という。）の炭素数は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数１０～２５の脂肪酸を用いることができる。脂肪酸（Ｂ－３）としては、具体的には、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチル酸、ベヘン酸のような飽和脂肪酸；オレイン酸、リノール酸のような不飽和脂肪酸；等が挙げられる。これらの脂肪酸（Ｂ－３）は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。これらの脂肪酸（Ｂ－３）の中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、及びミリスチル酸が好ましく、パルミチン酸がより好ましい。

［質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）］
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を含む。
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物が、質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂（Ａ）と脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）を含み、さらに成分（Ｃ）の質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）が共存することで、成分（Ａ）と成分（Ｃ）または成分（Ｃ）同士が絡まり合いやすくなり、疑似架橋点を作ることで溶融樹脂の脆性を改善することができる。即ち、成分（Ｃ）は、このようにして溶融樹脂の脆性を改善するための添加剤である。従って、質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を配合することで得られる樹脂成形体の耐傷付性を改善することができる。また、質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）はアクリル樹脂（Ａ）との相溶性に優れるため、得られる樹脂成形体の透明性が良好となる。

　質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）は、質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂（Ａ）との相溶性に優れることから、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含むことが好ましく、５５質量％以上含むことがより好ましく、６０質量％以上含むことがさらに好ましく、６５質量％以上含むことが特に好ましく、７０質量％以上含むことが最も好ましい。
　本発明における質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の一実施形態としては、質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）に占めるメチルメタクリレート単位の含有割合が５０質量％以上１００質量％未満、より好ましくは、５５質量％以上１００質量％未満、さらに好ましくは、６０質量％以上１００質量％未満、特に好ましくは、６５質量％以上１００質量％未満、最も好ましくは、７０質量％以上１００質量％未満であるメチルメタクリレート共重合体（以下、適宜「重合体（Ｃ１）」とも言う。）を挙げることができる。

　重合体（Ｃ１）の一実施形態として、アクリル樹脂（Ａ）との相溶性に優れることから、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む重合体（Ｃ１）が好ましい。
　重合体（Ｃ１）の質量平均分子量は、５００，０００～８，０００，０００が好ましく、１，０００，０００～６，０００，０００がより好ましい。重合体（Ｃ１）の質量平均分子量が５００，０００以上であると、成形体の耐傷付性に優れる。また、重合体（Ｃ１）の質量平均分子量が８，０００，０００以下であると、溶融成形時の流動性に優れる。

　重合体（Ｃ１）はさらに、直鎖状重合体であることで、上述した成分（Ａ）と成分（Ｃ）または成分（Ｃ）同士が絡まり合いやすくなるため好ましい。

　重合体（Ｃ１）等の質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の質量平均分子量は好ましくは５００，０００以上であり、５００，０００～８，０００，００００がより好ましく、１，０００，０００～６，０００，０００がさらに好ましい。重合体（Ｃ１）等の質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の質量平均分子量が５００，０００以上であると、得られる樹脂成形体の耐薬品性に優れる。また、重合体（Ｃ１）等の質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の質量平均分子量が８，０００，０００以下であると、溶融成形時の流動性に優れる。

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物中の質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の含有量は、アクリル樹脂（Ａ）１００質量部に対して、０．１質量部～８質量部が好ましく、０．５質量部～５質量部がより好ましく、特に０．５質量部～４．５質量部が好ましい。質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の含有量が０．１質量部以上であると、成形不良を抑制することができ、得られる樹脂成形体の外観に優れる。質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の含有量が８質量部以下であると、溶融成形時の流動性に優れる。

［［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］］
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率、即ち、［質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の質量］／［脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の質量］が５０以下である。透明性の観点から［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］は好ましくは４０以下であり、より好ましくは３０以下であり、さらに好ましくは１０以下で、特に４．５以下が好ましい。一方、耐傷付性の観点から［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］は０．０１以上であり、好ましくは０．２以上、より好ましくは１以上、さらに好ましくは、２以上、特に好ましくは２．５以上である。
　上記の好ましい上限及び好ましい下限は任意に組み合わせることができる。例えば、［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］は、０．０１以上５０以下の範囲であり、好ましくは０．２以上４０以下であり、１以上３０以下がより好ましく、２以上１０以下がさらに好ましく、２．５以上４．５以下が特に好ましい。

　［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］を上記範囲内とすることによる本発明の効果のメカニズムについては定かではないが、上記比率の範囲で、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）と質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）をアクリル樹脂（Ａ）に混合することで、成分（Ｂ）によりアクリル樹脂（Ａ）の粘度を下げ、また、そこに成分（Ｃ）が存在することで成分（Ａ）と成分（Ｃ）または成分（Ｃ）同士が絡まり合いやすくなり、疑似架橋点を作ることで溶融樹脂の脆性が改善されると考えられる。また、成分（Ｂ）および成分（Ｃ）はアクリル樹脂（Ａ）との相溶性がよいことから、透明性を悪化させることなく、７０℃よりも低い金型温度においても得られる樹脂成形体の耐傷付性を著しく向上させることができる。

［多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）］
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物には、更に成分（Ｄ）として多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）を含まなくてもよく、含んでいてもよい。多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）は、前記メタクリル系樹脂組成物１００質量部に対し、成分（Ｄ）の含有量が、０質量部より多く１５質量部以下の範囲であれば配合することができる。多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）の含有量は、成分（Ａ）、成分（Ｂ）および成分（Ｃ）の併用により得られる耐傷付性と透明性の効果を維持する観点から、本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物１００質量部に対して０質量部より多く１０質量部以下が好ましく、０質量部より多く５質量部以下がより好ましく、０質量部より多く３質量部以下がさらに好ましく、含まないことが特に好ましい。

　なお、多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）は、前述の成分（Ａ）および成分（Ｃ）とは異なる成分である。
　多層構造を有するゴム粒子（Ｄ）としては、公知の耐衝撃性改良剤を用いることができ、例えば、国際公開第２０１８／０１６４７３号に開示されている、衝撃補強材（Ｄ）を使用することができる。

［カーボンブラック（Ｅ）］
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、カーボンブラック（Ｅ）を配合することができる。カーボンブラック（Ｅ）を配合することで、得られる樹脂成形体の漆黒性をより優れたものとすることができる。
　カーボンブラック（Ｅ）としては、例えば、アクリル樹脂（Ａ）との相溶性を向上させて、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物中へのカーボンブラック（Ｅ）の分散性を高め、得られる樹脂成形体がより深みのある漆黒性を発現できる観点から、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラックが好ましい。

　前記表面コーティング剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミドからなる群より選ばれる１種以上が好ましい。これらの表面コーティング剤は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

［他の添加剤］
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、上記した成分以外にも、得られる樹脂成形体の性能を損なわない配合量の範囲で、他の添加剤を含んでもよい。

　他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、老化防止剤、光安定剤、可塑剤、光拡散剤、艶消剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、流動性改質剤、摺動性付与剤、顔料や染料等の着色剤等が挙げられる。これらの他の添加剤は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

［射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の製造方法］
　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、アクリル樹脂（Ａ）、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）、及び質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）、必要に応じて用いられるその他の成分を常法に従って混合することで製造することができ、その方法には特に制限はない。

　各成分の混合方法としては、例えば、アクリル樹脂（Ａ）、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）、及び質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）、必要に応じて用いられるその他の成分を、単軸押出機や二軸押出機に入れて２２０～２８０℃程度で加熱溶融混練により混合する方法が挙げられる。
　また、本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、アクリル樹脂（Ａ）の原料単量体であるメチルメタクリレートを主体とする単量体及び質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の原料単量体であるメチルメタクリレートを主体とする単量体に、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）を加えた後、これを塊状重合する方法によっても製造することができる。即ち、アクリル樹脂（Ａ）と質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）の製造と脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の混合を同時に行う方法である。
　更に本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、予め製造されたアクリル樹脂（Ａ）のペレット及び／又は質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）のペレットの表面に、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）を付着させておき、成形時に成形と共に脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）の混合を行う方法でも製造することができる。

〔樹脂成形体〕
　本発明の樹脂成形体は、本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体である。
　本発明の樹脂成形体を得るための成形方法としては、射出成形または押出成形が挙げられる。中でも、射出成形が好ましい。また、得られる樹脂成形体に、更に圧空成形や真空成形等の二次成形を施してもよい。成形温度、成形圧力等の成形条件は、適宜設定すればよい。

　本発明の樹脂成形体は、例えばアクリル樹脂（Ａ）、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）、及び質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を含む射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を、射出成形又は押出成形する際の、押出機や金型温度を適宜設定することで得ることができる。

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）と質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）とを所定の割合でアクリル樹脂（Ａ）に配合したことによる効果により、７０℃以下の金型温度であっても透明性、耐傷付性等に優れた樹脂成形体を得ることができる。
　この成形時の金型温度は、例えば６０～９０℃とすることができるが、何らこの温度に限定されるものではなく、４０～１００℃程度の金型温度であってもよい。

〔用途〕
　本発明の樹脂成形体は、耐傷付性に優れることから、例えば、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネル、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、エンブレムといった車両の内外装材料等の車両用部材；建築部材；洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備部材；レンズ、導光体等の光学部材、化粧品等の容器、キュベット等の医療用部材などに好適である。

　以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

＜耐傷付性試験＞
　射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の耐傷付性の指標として、耐傷付性試験前後の色調の差（ΔＬ＊）を下記の方法に従って評価した。
（試験片の作製）
　実施例又は比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物の１００質量部と、公知の黒色着色剤として、三菱（登録商標）カーボンブラック＃４５の０．０２部、ダイアレジン（登録商標）グリーンＣ（Ｓｏｌｖｅｎｔ　Ｇｒｅｅｎ３）の０．０５質量部、マクロレックス（登録商標）イエロー３Ｇ（Ｓｏｌｖｅｎｔ　Ｙｅｌｌｏｗ　９３）の０．１４質量部及びダイアレジン（登録商標）ブルーＧ（Ｓｏｌｖｅｎｔ　Ｖｉｏｌｅｔ１３）の０．１８質量部を、二軸押出機（機種名「ＰＣＭ４５」、（株）池貝製）に供給し、２５０℃で混練し、メタクリル系樹脂組成物の黒色ペレットを得た。得られた黒色ペレットを、射出成形機（機種名「ＦＡＳ－Ｔ１００Ｄ」、ファナック（株）製）に供給し、下記成形条件１又は成形条件２で射出成形し、それぞれの成形条件で樹脂成形体（幅１４０ｍｍ、長さ１４０ｍｍ、厚さ３ｍｍ）を得た。
成形条件１：
　成形温度：２４０℃
　金型温度：６０℃
　射出速度：２０ｍｍ／ｓｅｃ
成形条件２：
　成形温度：２４０℃
　金型温度：６０℃
　射出速度：５０ｍｍ／ｓｅｃ

（耐傷付性）
　成形条件１又は成形条件２で得られたそれぞれの樹脂成形体を、平台に設置し、学振型摩擦試験機（染色物摩擦堅牢度試験機、機種名「ＲＴ－２００」、（株）大栄科学精器製作所製）を用い、摩擦子としてエコノミー洗車用タオルＹＰ１３８－Ａ（商品名、（株）ジョイフル製）を用い、荷重１０００ｇの条件で樹脂成形体表面上の距離１００ｍｍを１００往復させ、耐傷付性試験を行った。耐傷付性試験前後の樹脂成形体について、分光色彩計（機種名「ＳＤ７０００」、日本電色工業（株）製）を用い、摩擦子を往復させた方向に対して平行な方向に光線を入射させ、入射光束を直径１２．７ｍｍ、Ｄ６５光源・１０°視野、反射測定・ＳＣＥ方式の条件で、ΔＬ＊（Ｌ＊ａ＊ｂ＊表色系における明度差）を測定し、下記基準で評価した。
　◎：ΔＬ＊が０．４未満
　○：ΔＬ＊が０．４以上０．８未満
　△：ΔＬ＊が０．８以上１．０未満
　×：ΔＬ＊が１．０以上

＜透明性の評価＞
　射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の耐傷付性の指標として、耐傷付性試験前後の色調の差（ΔＬ＊）を下記の方法に従って評価した。
（試験片の作製）
　実施例又は比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物の１００質量部を、射出成形機（機種名「ＦＡＳ－Ｔ１００Ｄ」、ファナック（株）製）に供給し、下記成形条件１で射出成形し、樹脂成形体（幅１４０ｍｍ、長さ１４０ｍｍ、厚さ３ｍｍ）を得た。
成形条件１：
　成形温度：２４０℃
　金型温度：６０℃
　射出速度：２０ｍｍ／ｓｅｃ
（透明性）
　上記成形条件１で得られた試験片について、ヘーズメーター（機種名：ＨＭ－１５０Ｌ２Ｎ、（株）村上色彩技術研究所（株）製）を用いて、ＩＳＯ　１３４６８に準拠して全光線透過率（％）を測定すると共に、ＩＳＯ　１４７８２に準拠してヘーズ値（％）を測定し、下記基準で評価した。
　○：全光線透過率９０％以上かつ、ヘーズ値１％未満
　×：全光線透過率９０％未満、またはヘーズ値１％以上

＜原材料＞
・アクリル樹脂（Ａ－１）：アクリペット（登録商標）ＶＨ５（商品名、三菱ケミカル（株）製、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を９５質量％以上含むアクリル樹脂、質量平均分子量：８０，０００）
・脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）：ＩｎｃｒｏＭａｘＰＳ（商品名、ＣＲＯＤＡ製、ステアリン酸アミドを主成分とする脂肪酸アミド）
・脂肪族アルコール（Ｂ－２）：カルコール８６８８（商品名、花王（株）製、ステアリルアルコールを主成分とする脂肪族アルコール）
・質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ－１）：メタブレン（登録商標）Ｐ５３０Ａ（商品名、三菱ケミカル（株）製、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む直鎖状重合体、質量平均分子量２，０００，０００以上）
・質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ－２）：メタブレン（登録商標）Ｐ５５１Ａ（商品名、三菱ケミカル（株）製、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む直鎖状重合体、質量平均分子量１，０００，０００以上）

＜実施例１＞
　アクリル樹脂（Ａ－１）１００質量部、脂肪酸アミド化合物（Ｂ－１）１．００質量部及び質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ－１）３．００質量部を二軸押出機（機種名「ＰＣＭ３０」、（株）池貝製）に供給し、２５０℃で混練して、ペレット状の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を得た。得られた射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物の耐傷付性と透明性を評価した。結果を表１に示す。

＜実施例２～９、比較例１～３＞
　表１に示す配合とした以外は、実施例１と同様に操作を行い、ペレット状のメタクリル系樹脂組成物を得た。得られたメタクリル系樹脂組成物の評価結果を表１に示す。

　表１に示されるように、実施例１～９の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物は、成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される値が０．０１～５０であったため、成形条件にかかわらず樹脂成形体の耐傷付性及び透明性に優れる。
　比較例１のメタクリル系樹脂組成物は、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）も質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）も含まず、アクリル樹脂（Ａ）のみであり、成形条件１でも成形条件２でも耐傷付性に劣る。
　比較例２は、脂肪酸、脂肪酸誘導体および脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種を含む化合物（Ｂ）を含まず、成形条件１でも成形条件２でも耐傷付性は十分ではない。
　比較例３は、質量平均分子量が２０万以上のメタクリル系重合体（Ｃ）を含まず、成形条件１では優れた耐傷付性が得られるが、成形条件２では耐傷付性が劣る。

　本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
　本出願は、２０２１年１２月２０日付で出願された日本特許出願２０２１－２０６１６９に基づいており、その全体が引用により援用される。

　本発明の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物によれば、７０℃よりも低い金型温度においても、透明性に優れ、耐傷付性に優れた樹脂成形体を得ることができる。
　本発明の樹脂成形体は、耐傷付性に優れることから、例えば、洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備向け材料；建築材料；車両の内外装材料等の車両用部材等に用いられ、特に、車両用部材に好適である。
　車両外装材料としては、例えば、メーターカバー、ドアミラーハウジング、ピラーカバー（サッシュカバー）、ライセンスガーニッシュ、フロントグリル、フォグガーニッシュ、エンブレム等が挙げられる。

Claims (27)

1. 　下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０である、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
   成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
   成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
   成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体
2. 　前記成分（Ｂ）の含有量が、前記成分（Ａ）１００質量部に対して０．０１～１０質量部である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
3. 　前記成分（Ｂ）の含有量が、前記成分（Ａ）１００質量部に対して０．１～３．０質量部である、請求項２に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
4. 　前記成分（Ｃ）の含有量が、前記成分（Ａ）１００質量部に対して０．０１～８質量部である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
5. 　前記成分（Ａ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む重合体である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
6. 　前記成分（Ａ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を７０質量％以上含む重合体である、請求項５に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
7. 　前記成分（Ａ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を９０質量％以上含む重合体である、請求項６に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
8. 　前記成分（Ｃ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を５０質量％以上含む重合体である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
9. 　前記成分（Ｃ）が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を７０質量％以上含む重合体である、請求項８に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
10. 　前記成分（Ｃ）が、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
11. 　前記アクリル酸エステルがブチルアクリレートである、請求項１０に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
12. 　前記成分（Ｂ）の炭素数が１０～２５である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
13. 　前記成分（Ｂ）が、ステアリルアルコール、パルミチン酸、及びステアリン酸アミドより選ばれる１種又は２種以上である、請求項１２に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
14. 　さらに、下記成分（Ｄ）を含まないか、または、含む場合、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物１００質量部に対し、前記成分（Ｄ）の含有量が、０質量部より多く１５質量部以下である、請求項１に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
    成分（Ｄ）：多層構造を有するゴム粒子
15. 　前記成分（Ｄ）の含有量が、射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物１００質量部に対して１０質量部以下である、請求項１４に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
16. 　前記成分（Ｄ）を含まない、請求項１４に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
17. 　前記成分（Ａ）および前記成分（Ｃ）と前記成分（Ｄ）とが異なる成分である、請求項１４に記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物。
18. 　下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０であるメタクリル系樹脂組成物を、射出成形または押出成形して樹脂成形体を得る、樹脂成形体の製造方法。
    成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
    成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
    成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体
19. 　請求項１～１７のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、樹脂成形体。
20. 　請求項１～１７のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、車両用部材。
21. 　請求項１～１７のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、住宅設備部材。
22. 　請求項１～１７のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、光学部材。
23. 　請求項１～１７のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、医療用部材。
24. 　請求項１～１７のいずれかに記載の射出成形または押出成形用メタクリル系樹脂組成物を含む、容器。
25. 　下記成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）を含み、かつ［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０であるメタクリル系樹脂組成物の射出成形または押出成形への使用。
    成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
    成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
    成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体
26. 　下記成分（Ａ）と成分（Ｂ）と成分（Ｃ）を、［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０となるように混合し、混合物を射出成形または押出成形することで得られる、樹脂成形体。
    成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
    成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
    成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体
27. 　下記成分（Ａ）と成分（Ｂ）と成分（Ｃ）を、［成分（Ｃ）の質量］／［成分（Ｂ）の質量］で表される比率が０．０１～５０となるように混合し、混合物を射出成形または押出成形することで樹脂成形体を得る、樹脂成形体の製造方法。
    成分（Ａ）：質量平均分子量が２００，０００未満であるアクリル樹脂
    成分（Ｂ）：脂肪酸、脂肪酸誘導体及び脂肪族アルコールから選択される少なくとも１種
    成分（Ｃ）：質量平均分子量が２００，０００以上のメタクリル系重合体