WO2023095784A1 - カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法及び、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤 - Google Patents

Abstract

従来の化学農薬の使用量を低減し、使用者や自然環境及び生態系への負荷が小さい、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法及び、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤の提供を課題とする。解決手段として、下記成分（Ａ）から選択される１種以上の成分を、殺虫剤と併用することを特徴とする、カメムシに対する前記殺虫剤の殺虫活性増強方法を提供する。　成分（Ａ）：１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン、プロピオンアルデヒド、２－アセチルナフタレン、ブチルアルデヒド、１－オクタノール、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン及びベンズアルデヒド。

Description

カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法及び、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤

　本発明は、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法及び、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤に関する。詳しくは、特定の化合物を有効成分とするカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法及び、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤に関する。

　カメムシ目昆虫の中には、吸汁により農作物に被害を与える害虫が含まれており、吸汁された農産物の品質は著しく低下するため、農業に大きな損害を与えることがある。このような農産物への被害を防ぐ目的で、従来から有機リン系殺虫剤が使用されてきたが、自然環境及び生態系への負荷が大きい。
　一方、カメムシは、強烈な臭いを出すことで知られる不快害虫でもあり、危険を感知すると、敵の撃退や仲間に危険を知らせるために、アルデヒド系の警報フェロモンを放出する。このフェロモンが悪臭の根源である。
　近年、カメムシの生息域と人間の住居とが接近するようになり、悪臭や、その悪臭故の生理的嫌悪感などから不快害虫としても注目されるようになった。そして、その防除要請は増加傾向にあることから、カメムシを防除するために従来公知の殺虫剤の効力を増強する手段が各種提案されている。例えば、２種類のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いる害虫防除成分の効力増強剤（特許文献１等）、アミノ酸（塩）を用いる殺虫効力増強剤（特許文献２等）、ノルマルパラフィンを用いるメンタン骨格を有する化合物の害虫に対する活性増強剤（特許文献３等）、３，４－メチレンジオキシベンゼン誘導体又はレゾルシノール誘導体を用いるピレスロイド系殺虫剤の効力増強剤（特許文献４等）などが提案されている。
　しかしながら、何れも未だ充分な効果が得られておらず、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性を増強する手法の提案が求められている。

特開２００１－１９９８０８号公報 特開２００２－１６７３０４号公報 特開２０１６－１５３３８０号公報 特開平０７－３３０５１３号公報

　本発明では、従来の化学農薬の使用量を低減し、使用者や自然環境及び生態系への負荷が小さい、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法及び、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤の提供を目的としている。

　本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特異的にカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性を増強する成分を見出し、上記課題を解決するに至ったものである。

　本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
１．下記成分（Ａ）から選択される１種以上の成分を、殺虫剤と併用することを特徴とする、カメムシに対する前記殺虫剤の殺虫活性増強方法。
　成分（Ａ）：１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン、プロピオンアルデヒド、２－アセチルナフタレン、ブチルアルデヒド、１－オクタノール、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン及びベンズアルデヒド
２．下記成分（Ａ）から選択される１種以上の成分を有効成分とする、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤。
　成分（Ａ）：１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン、プロピオンアルデヒド、２－アセチルナフタレン、ブチルアルデヒド、１－オクタノール、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン及びベンズアルデヒド

　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤は、従来公知の殺虫剤と併用することにより、カメムシに対する当該殺虫剤の殺虫活性を増強するという効果が得られるものである。しかも、本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤は、ヒトに対する安全性が高い化合物も多く、従来公知の殺虫剤の使用量を低減することが出来るので、自然環境及び生態系への負荷が小さいという点において、極めて有用である。

　以下、本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤について詳細に説明する。
＜カメムシ＞
　本発明におけるカメムシとしては、カメムシ目（半翅目）のカメムシ亜目（異翅亜目）に属する昆虫を意味し、例えば、クサギカメムシ、スコットカメムシ、ツヤアオカメムシ、カイネクロカメムシ（クロカメムシ）、ウズラカメムシ、トゲシラホシカメムシ、シラホシカメムシ、ブチヒゲカメムシ、アオクサカメムシ、ミナミアオカメムシ、イネカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、イネクロカメムシなどのカメムシ科に属するカメムシ、ヒメナガカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシなどのナガカメムシ科に属するカメムシ、ホソヘリカメムシ、クモヘリカメムシなどのホソヘリカメムシ科に属するカメムシ、ホソハリカメムシなどのヘリカメムシ科に属するカメムシ、アカヒメヘリカメムシ、ブチヒゲヘリカメムシなどのヒメヘリカメムシ科に属するカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメなどのカスミカメムシ科に属するカメムシ、マルカメムシなどのマルカメムシ科に属するカメムシなどのカメムシが挙げられる。

　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における、有効成分である成分（Ａ）について説明する。
＜成分（Ａ）＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、成分（Ａ）から選択される１種以上の成分であり、成分（Ａ）は１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン、プロピオンアルデヒド、２－アセチルナフタレン、ブチルアルデヒド、１－オクタノール、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン及びベンズアルデヒドから構成されるものである。成分（Ａ）に含まれる成分のうち、１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン以外は、食品添加物として指定された化合物である。
　成分（Ａ）の中でも、２－アセチルナフタレン、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、ベンズアルデヒドはミツバチの忌避効果が高いことが、別途確認されている。殺虫剤施用によるミツバチの被害を低減する観点から、本発明においては、２－アセチルナフタレン、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール及びベンズアルデヒドの何れか１種以上の成分を殺虫剤と併用することが好ましい。さらにこの中でも、２－メチル－１－プロパノール、ベンズアルデヒドは、施用面に対するミツバチの忌避効果はもとより、施用面の上部空間におけるミツバチの忌避効果（空間忌避効果）が高いことが別途確認されており、殺虫剤施用によるミツバチの被害を低減する観点から２－メチル－１－プロパノール及びベンズアルデヒドの何れか１種以上の成分を殺虫剤と併用することがさらに好ましい。
　成分（Ａ）に含まれる成分は、後述するカメムシに対する殺虫活性増強効果の確認試験において、顕著な増強効果を示す成分である。

　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、上記（Ａ）に属する成分のみに留まらない。下記実施例において、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強効果等については詳細に説明するが、以下成分（Ｂ）、（Ｃ）の化合物群も、本発明における有効成分である。
＜成分（Ｂ）＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、成分（Ｂ）から選択される１種以上の成分とするものであっても良い。成分（Ｂ）は、ベンゾチアゾール、Ｎ－メチルアントラニル酸メチル、２－エチル－３－メチルピラジン、３－メチル－１－ブタノール、２－アセチルチアゾール、２，３－ジエチルピラジン、２－メチルピラジン、３－エチルピリジン、５－メチル－２－フルアルデヒド、４－キノリンカルボン酸及び５－メチルキノキサリンから構成されるものである。成分（Ｂ）に含まれる成分のうち、５－メチル－２－フルアルデヒド、４－キノリンカルボン酸以外は、食品添加物として指定された化合物である。
　成分（Ｂ）の中でも、ベンゾチアゾール、Ｎ－メチルアントラニル酸メチル、２－エチル－３－メチルピラジン、５－メチルキノキサリンはミツバチの忌避効果が高いことが、別途確認されている。殺虫剤施用によるミツバチの被害を低減する観点から、本発明においては、ベンゾチアゾール、Ｎ－メチルアントラニル酸メチル、２－エチル－３－メチルピラジン及び５－メチルキノキサリンの何れか１種以上の成分を殺虫剤と併用することが好ましい。さらにこの中でも、ベンゾチアゾールは、施用面に対するミツバチの忌避効果はもとより、施用面の上部空間におけるミツバチの忌避効果（空間忌避効果）が高いことが別途確認されており、殺虫剤施用によるミツバチの被害を低減する観点からベンゾチアゾールを殺虫剤と併用することがさらに好ましい。
　成分（Ｂ）に含まれる成分は、後述するカメムシに対する殺虫活性増強効果の確認試験において、増強効果を示す成分である。

＜成分（Ｃ）＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、成分（Ｃ）から選択される１種以上の成分を有効成分とするものであっても良い。成分（Ｃ）は、４－ヒドロキシ安息香酸、４’－メチルアセトフェノン、４－メトキシベンジルアルコール、５，６，７，８－テトラヒドロキノキサリン、ｎ－オクタナール、２－メチル－２－ブテナール、アセトフェノン、アニスアルデヒド、オクタン酸エチル、ノナデカン、フェニル酢酸イソブチル、フルフラール、ペンタデカン酸エチル、酢酸テルピニル、酢酸メンチル及び酪酸ブチルから構成されるものである。成分（Ｃ）に含まれる成分のうち、４－ヒドロキシ安息香酸、４－メトキシベンジルアルコール、ノナデカン、フルフラール、ペンタデカン酸エチル以外は、食品添加物として指定された化合物である。
　成分（Ｃ）の中でも、４－ヒドロキシ安息香酸、４’－メチルアセトフェノン、ｎ－オクタナール、アニスアルデヒド、フェニル酢酸イソブチル、ペンタデカン酸エチル、酢酸テルピニル、酢酸メンチルはミツバチの忌避効果が高いことが、別途確認されている。殺虫剤施用によるミツバチの被害を低減する観点から、本発明においては、４－ヒドロキシ安息香酸、４’－メチルアセトフェノン、ｎ－オクタナール、アニスアルデヒド、フェニル酢酸イソブチル、ペンタデカン酸エチル、酢酸テルピニル及び酢酸メンチルの何れか１種以上の成分を殺虫剤と併用することが好ましい。さらにこの中でも、４’－メチルアセトフェノン、ｎ－オクタナールは、施用面に対するミツバチの忌避効果はもとより、施用面の上部空間におけるミツバチの忌避効果（空間忌避効果）が高いことが別途確認されており、殺虫剤施用によるミツバチの被害を低減する観点から４’－メチルアセトフェノン及びｎ－オクタナールの何れか１種以上の成分を殺虫剤と併用することがさらに好ましい。
　成分（Ｃ）に含まれる成分は、後述するカメムシに対する殺虫活性増強効果の確認試験において、ある程度の増強効果を示す成分である。

　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、成分（Ａ）から選択される１種以上の成分と、上記成分（Ｂ）及び／又は成分（Ｃ）から選択される１種以上の成分とを併用しても良い。
　また、本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、成分（Ｂ）から選択される１種以上の成分及び／又は成分（Ｃ）から選択される１種以上の成分としても良い。

＜製剤＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤の形態としては、上記の成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）から選択される有効成分以外に、必要に応じて一般的に製剤に添加される成分と共に製剤化したものと、製剤化したものを水で希釈したものが含まれる。中でも、製剤化した固形製剤や液状製剤が、コンパクトであり、かつ保存安定性に優れるため、移送時や保管時において有利であり、好適である。中でも、本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤は、液状のものとして使用することが好ましいため、水で希釈する場合には希釈しやすく、溶け残りが少ない点において液状製剤が好適である。
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における、上記の成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）から選択される有効成分の含有量としては、使用時における施用薬剤全体に対して０．００１ｗ／ｖ％以上含有することが好ましく、０．０１ｗ／ｖ％以上含有することがより好ましく、０．１ｗ／ｖ％以上含有することがさらに好ましい。この有効成分の含有量が０．００１ｗ／ｖ％より少ない場合は、殺虫剤の殺虫活性を増強する効果を十分に発揮できない場合がある。また、この含有量が１０ｗ／ｖ％を超えると、製剤化やその安定性に課題が出てくるため、含有量は１０ｗ／ｖ％以下であることが好ましい。

＜農薬＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における、併用する農薬としては、農作物に施用する殺虫・殺ダニ剤であれば良い。具体的には、特に制限されず、公知化合物、例えば、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムなどのネオニコチノイド系農薬、アレスリン、レスメトリン、ｄ－フェノトリン、テトラメトリン、シペルメトリン、デルタメトリン、フェンバレレート、ペルメトリン、エトフェンプロックスなどのピレスロイド系農薬、エチプロール、フィプロニルなどのフェニルピラゾール系農薬、ジクロルボス、トリクロルホン、シアノホス、フェニトロチオン、クロルピリホス、ダイアジノン、マラチオン、アセフェート、イソキサチオン、ホキシムなどの有機リン系農薬等の殺虫・殺ダニ剤、ペンチオピラドなどのピラゾール系農薬等の殺菌剤、ブタミホスなどの有機リン系農薬等の除草剤が挙げられる。

＜界面活性剤＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における製剤化に際し、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の何れでも特に制限なく使用することができるが、中でも、非イオン性界面活性剤又は陰イオン性界面活性剤が好適である。
　具体的には、例えば、非イオン性界面活性剤としては、糖エステル型、脂肪酸エステル型、植物油型、アルコール型、アルキルフェノール型、ポリオキシエチレン－ポリオキシプロピレンブロックポリマー型、アルキルアミン型、ビスフェノール型、多環芳香族型のものが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型のものが挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、アンモニウム型、ベンザルコニウム型のものが挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型のものが挙げられる。
　これらの界面活性剤は、単独もしくは２種以上を混合したもの何れも用いることができる。

＜液体担体＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における製剤化に際し、液体担体を配合することができる。液体担体としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定されるものではなく、上記の成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｃ）から選択される有効成分とは異なる公知の各種液体を担体として用いることができる。
　希釈に際しては例えば、精製水、水道水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、地下水、井戸水等が用いられる。
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における製剤化に際し、上記界面活性剤や液体担体のほか、必要に応じて、一般的に製剤に添加される助剤成分を配合することができる。一般的に製剤に添加される助剤成分の例としては、安定化剤、防腐剤、着色料、誤飲・誤食防止剤等が挙げられる。安定化剤の例としては、ジブチルヒドロキシトルエン（ＢＨＴ）やブチルヒドロキシアニソール（ＢＨＡ）等の酸化防止剤、アスコルビン酸等が挙げられる。防腐剤の例としては、ソルビン酸、ソルビン酸塩、パラヒドロキシ安息香酸エステル類、チアベンダゾール、塩化ナトリウム等が挙げられる。着色料としては、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、紅花色素、フラボノイド色素、赤色２号、赤色３号、黄色４号、黄色５号等が挙げられる。誤飲・誤食防止剤としては、安息香酸デナトニウム等が挙げられる。

　以下、処方例および試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
　なお、実施例において、特に明記しない限り、数値はｗ／ｖ％を意味する。

＜カメムシに対する殺虫活性増強効果の確認試験＞
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における、カメムシに対する殺虫活性の増強効果を確認するために、以下の試験を行った。
（１）試験検体の調製
・試験検体１：「殺虫剤＋殺虫活性増強剤」を含有する試験検体
　トレボンエアー（エトフェンプロックス１０重量％、残量は水及び界面活性剤）３．３重量部、成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）から１成分２．０重量部及び、全体量が１００ｍＬとなるように水を配合し、農薬と本発明の殺虫活性増強剤を含有する試験検体を試験検体１とした。
・試験検体２：「殺虫剤のみ（殺虫活性増強剤なし）」を含有する試験検体
　トレボンエアー（エトフェンプロックス１０重量％、残量は水及び界面活性剤）３．３重量部に、全体量が１００ｍＬとなるように水を配合し、本発明の殺虫活性増強剤である成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）を含有しない試験検体を試験検体２とした。
・試験検体３：「殺虫活性増強剤のみ」を含有する試験検体
　さらに、成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）から１成分２．０重量部及び、全体量が１００ｍＬとなるようにエタノールを配合し、農薬を含有せず本発明の殺虫活性増強剤を含有する試験検体を試験検体３とした。
（２）供試虫
　供試虫として、ミナミアオカメムシ３頭を各試験に使用した。
（３）試験方法１
　ＫＰカップ（直径１００ｍｍ×高さ９０ｍｍ）の内壁全体に、炭酸カルシウム／エタノール分散液を塗布し風乾させたのち、このＫＰカップ内の底面に、ろ紙（直径９０ｍｍ）を静置した。前記ろ紙に、試験検体３を３００μＬ均一に処理した後、同じろ紙に試験検体２を３００μＬ均一に処理して、「殺虫剤＋殺虫活性増強剤」を処理した試験装置とした。
　また、前記ろ紙とは別のろ紙に、試験検体２を３００μＬ均一に処理した物、試験検体３を３００μＬ均一に処理した物をそれぞれ用意して試験装置とした。
　上記試験装置に供試虫（ミナミアオカメムシ）３頭を放ち、２４時間後の瀕死状態の供試虫数を確認した。
　２－ナフタレンチオール、エチルバニリン、ベンズアルデヒド、４－キノリンカルボン酸、５－メチルキノキサリン、こはく酸（－）－メンチル、１，５－ジメチルナフタレンは、試験方法１により試験を実施した。
（４）試験方法２
　ＫＰカップ（直径１００ｍｍ×高さ９０ｍｍ）の内壁全体に、炭酸カルシウム／エタノール分散液を塗布し風乾させたのち、このＫＰカップ内の底面に、ろ紙（直径９０ｍｍ）を静置した。前記ろ紙に、試験検体１～３の各試験検体３００μＬを均一に別々に処理したものを試験装置とした。
　上記試験装置に供試虫（ミナミアオカメムシ）３頭を放ち、２４時間後の瀕死状態の供試虫数を確認した。
　上記試験検体１～３の瀕死状態の供試虫数を、表１、２に示す。
　表１、２に示す成分のうち、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン、ベンズアルデヒド、４－キノリンカルボン酸、５－メチルキノキサリン、こはく酸（－）－メンチル、１，５－ジメチルナフタレン以外は、試験方法２により試験を実施した。

　表１、２に示すとおり、本発明における殺虫活性増強剤の有効成分を含有しない、すなわち、殺虫剤のみを使用する場合は、２４時間後に瀕死状態のカメムシを確認しなかった。この結果は、カメムシが殺虫剤に対して殺虫活性が発現し難い難防除害虫の１つであることに起因するものと考えられる。詳しくは、カメムシは、虫体全体に殺虫剤が付着する又は殺虫剤が付着した植物を食した場合には殺虫活性が発現するものの、殺虫剤が付着した植物表面を移動する程度では、殺虫活性が発現し難いことが知られている。本試験は、殺虫剤のみを上記量でろ紙に含浸させたものを使用したことにより、ろ紙上を移動するカメムシは瀕死状態とならなかったものと考える。なお、殺虫剤を倍量（６．６ｗ／ｖ％水溶液）使用した場合は、２４時間後に供試虫の全てが瀕死状態となったことを別途確認している。
　これに対して、本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤の有効成分である成分（Ａ）は、殺虫剤と併用することにより、殺虫剤を単独ではカメムシを瀕死状態と出来なかったにもかかわらず、供試虫全頭を瀕死状態とすることが今回初めて確認された。しかも、有効成分である成分（Ａ）単独、すなわち、殺虫剤と併用しない場合では、カメムシが瀕死状態とならなかった。これらの結果は、有効成分である成分（Ａ）が、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性を顕著に増強することを明確に示すものである。
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強が発現するメカニズムの詳細は、不明であるものの、有効成分である成分（Ａ）は、カメムシに対する殺虫剤の浸透移行性等を向上させたことに起因すると推察している。
　さらに、成分（Ｂ）、成分（Ｃ）も、成分（Ａ）と同様に、単独ではカメムシに対する殺虫活性を示さないものの、殺虫剤と併用することにより、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性を増強し得ることが確認された。
　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤における有効成分は、成分（Ａ）から選択される１種以上の成分と、上記成分（Ｂ）、（Ｃ）から選択される１種以上の成分とを併用することにより、より優れた増強効果が得られることが見込まれる。
　さらに、本発明の有効成分である成分（Ａ）又は、成分（Ｂ）、（Ｃ）による上記殺虫活性増強作用は、殺虫剤との併用時に、その殺虫剤の通常使用量を有意に低減できるという効果を発揮するものと考えられる。

　本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤の有効成分である成分（Ａ）又は、成分（Ｂ）、（Ｃ）は、従来公知の殺虫剤と併用することにより、カメムシに対する当該殺虫剤の殺虫活性を増強するという効果が、さらには、併用する殺虫剤の通常使用量を有意に低減し得るという効果も得られるものである。しかも、本発明のカメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強方法において使用する薬剤や、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤は、ヒトに対する安全性は高く、従来公知の殺虫剤の使用量を低減することが出来るので、自然環境及び生態系への負荷が小さいという点において、極めて有用である。
 

Claims (2)

1. 　下記成分（Ａ）から選択される１種以上の成分を、殺虫剤と併用することを特徴とする、カメムシに対する前記殺虫剤の殺虫活性増強方法：
   　成分（Ａ）：１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン、プロピオンアルデヒド、２－アセチルナフタレン、ブチルアルデヒド、１－オクタノール、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン及びベンズアルデヒド。
2. 　下記成分（Ａ）から選択される１種以上の成分を有効成分とする、カメムシに対する殺虫剤の殺虫活性増強剤：
   　成分（Ａ）：１－ベンジルピロール、２－（メトキシメチル）ピロリジン、プロピオンアルデヒド、２－アセチルナフタレン、ブチルアルデヒド、１－オクタノール、２－メチル－１－プロパノール、２－ナフタレンチオール、エチルバニリン及びベンズアルデヒド。