WO2022249577A1

WO2022249577A1 - 温熱具

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Publication number: WO2022249577A1
Application number: PCT/JP2022/005681
Authority: WO
Inventors: 穂貴高桑; 大樹樋渡
Original assignee: 花王株式会社
Priority date: 2021-05-24
Filing date: 2022-02-14
Publication date: 2022-12-01
Also published as: TW202306554A; JPWO2022249577A1; US20240238119A1; CN117295475A; KR20240012350A; EP4349307A1

Abstract

本発明は、使用者の肌に近い側に位置する表面シート（５）と、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シート（６）と、これらのシート（５，６）の間に保持されている発熱体（３）とを備える温熱具（１）に関する。発熱体（３）は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含み、発熱に伴って該発熱体自体から蒸気を発生するように構成されている。表面シート（５）は、通気性の繊維シートから構成されている。表面シート（５）はＰＥＴ樹脂を少なくとも含有する繊維を含んで構成される。また表面シートは、その平面視において走査型電子顕微鏡観察によって測定される繊維径が１５μｍ超である第１繊維を含む。

Description

温熱具

　本発明は、温熱具に関する。

　本出願人は先に、目及び目の周囲に温熱水蒸気を供給することのできる目用水蒸気発生温熱シートを提案した（特許文献１参照）。この目用水蒸気発生温熱シートは、着用者の肌側に第一の透湿性シート及び第２の透湿性シートを有し、水蒸気発生組成物が第１の透湿性シートと第２の透湿性シートで順次覆われている。

ＵＳ２００４／０３５４１０Ａ１

　本発明は、温熱具に関する。
　前記温熱具は、使用者の肌に近い側に位置する表面シートと、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シートと、該表面シートと該裏面シートとの間に保持されている発熱体とを備えることが好ましい。
　前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含むことが好ましい。
　前記発熱体は、発熱に伴って該発熱体自体から蒸気を発生するように構成されていることが好ましい。
　前記表面シートは、その肌対向面が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を少なくとも含有する繊維を含む通気性の繊維シートから構成されていることが好ましい。
　前記表面シートは、その平面視において走査型電子顕微鏡観察によって測定される繊維径が１５μｍ超である第１繊維を含むことが好ましい。

図１は、本発明の温熱具の実施形態を示す平面図である。図２は、図１に示す温熱具の分解斜視図である。図３は、図１に示す温熱具の長手方向である横方向に沿う断面図である。図４は、図３に示す温熱具の拡大断面図である。図５は、温熱具の別の実施形態における横方向に沿う拡大断面図である。図６は、温熱具から発生した蒸気量を測定する装置の概略図である。図７は、本発明の温熱具の別の実施形態を示す平面図である。

発明の詳細な説明

　特許文献１の記載の温熱具は、典型的には、包装材内に圧縮状態で包装されているので、温熱具を構成するシート材が押しつぶされてしまい、該シート材の製造直後に発現している嵩高さの回復性に関して改善の余地があった。またこれに伴って、シート材の嵩高さに起因する、温熱具の使用時のフィット性や使用感について更なる改善の余地があった。

　したがって、本発明は、開封後の嵩高さの回復性が良好であり、使用直後からフィット性及び使用感が高い温熱具に関する。

　以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の温熱具は、その使用時に加熱対象体に当接させて、該加熱対象体に対して温熱を付与するために用いられる。

　図１には、本発明の温熱具の一実施形態が示されている。同図に示す温熱具１は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、その使用時に加熱対象体であるヒトの両眼を覆うように当接させて、目及びその周囲に温熱を付与するために用いられるものである。
　温熱具１は、所定温度に加熱された水蒸気が発生するようになされており、これによって、加熱対象体に対して温熱を付与することができる。以下の説明では、特に断りのない限り、加熱対象体として使用者の肌や眼を例にとり説明する。

　図１に示すように、温熱具１は、使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する横方向Ｘに長い本体部２と、本体部２内に保持された発熱体３と、一対の耳掛け部４，４とを備えている。
　耳掛け部４は、本体部２の横方向Ｘの両外端域に設けられており、横方向Ｘの外方へ向けて反転可能となっている。これによって、各耳掛け部４，４を使用者の耳にそれぞれ掛けて、本体部２による使用者の両眼の被覆状態を維持できるようになっている。
　装着性の向上の観点から、耳掛け部４を構成するシート材は、伸縮性を有するシートであることが好ましい。以下の説明では、温熱具１の長手方向に相当する方向を横方向Ｘともいい、横方向Ｘに直交する方向を縦方向Ｙともいう。

　図２には、温熱具１の分解斜視図が示されている。また図３には、温熱具１の横方向Ｘ（長手方向）に沿う断面図が示されている。これらの図に示す温熱具１における本体部２は、一方向に長い寸法を有する。
　本体部２は、使用者の肌に近い側に位置する表面シート５と、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シート６とを備える扁平のものである。
　表面シート５は、温熱具１の使用時において、ヒトの両眼等の加熱対象体と当接する面を構成することが好ましい。
　裏面シート６は、使用者の肌から遠い側の面であり、温熱具１の外面を形成している。つまり、図２及び図３中、上方が使用者の肌に近い側であり、同図中下方が使用者の肌から遠い側である。

　図２及び図３に示す表面シート５及び裏面シート６は、これらを重ね合わせた状態でホットメルト接着剤等の接着剤７によって互いに接合されており、これによって、両シート５，６の間に２つの発熱体３，３が横方向Ｘに互いに離間して収容されている。
　表面シート５及び裏面シート６のうち、少なくとも表面シート５における肌等の加熱対象体と対向する面（以下、「肌対向面」ともいう。）は、通気性を有する繊維シートから構成されることが好ましく、表面シート５全体が繊維シートで構成されていることがより好ましい。また、表面シート５及び裏面シート６は、それぞれ独立して、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。
　各シート５，６の詳細な説明は後述する。繊維シートは、複数の構成繊維が絡合、融着及び接合の少なくとも一種の態様によりシート状に保形された構成繊維の集合体である。

　本体部２における表面シート５及び裏面シート６の間に保持される発熱体３は、空気中の酸素と反応して発熱して、発熱に伴って、所定温度に加熱された水蒸気が発生するように構成されている。つまり、本開示の発熱体３は、発熱に伴って該発熱体３自体から蒸気を発生する。
　詳細には、発熱体３は、空気中の酸素との酸化反応に伴う発熱を生じさせる被酸化性金属、酸化反応の触媒となる活性炭等の炭素材料、電解質及び水を含む発熱部３ａを備える。被酸化性金属及び炭素材料は、好ましくはいずれも粉末である。

　発熱部３ａとしては、例えば被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水に加えて、繊維材料を更に含む繊維シートから構成された発熱シートや、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含むペースト状又は粉体状の発熱組成物の層を備えたものを用いることができる。
　発熱体３の発熱によって水蒸気の発生量を高めることができる水を十分に保持させる観点から、発熱体３は、発熱部３ａに隣接するように、吸水性ポリマー等の保水剤を含む保水剤層を更に備えることが好ましい。これに代えて、前記発熱シート又は前記発熱組成物内に、保水剤が混合されていることも好ましい。

　発熱シート及び発熱組成物は、これらを単独で使用してもよく、発熱シート及び発熱組成物の少なくとも一方を複数のシート材を貼りあわせた袋体内に収容したものを用いることができる。発熱シートや発熱組成物を構成する各種材料としては、例えば特開２００３－１０２７６１号公報及び特開２００６－３４０９２８号公報に記載の材料を用いることもできる。

　図３に示す断面図には、発熱部３ａが袋体３ｂ内に収容されて形成された扁平状の発熱体３の固定状態が示されている。同図に示す発熱体３は、その袋体３ｂの外面と、温熱具１における裏面シート６の内側の面とが、接着剤７によって形成された接着固定部７ａ，７ａによって固定されており、それ以外の面は裏面シート６と固定されていない。各接着固定部７ａ，７ａは、温熱具１の横方向Ｘの中央域に設けられており、温熱具１の縦方向Ｙに沿って延びている。このような構成を有していることによって、温熱具１の使用時に使用者の両眼及びその近傍等の加熱対象体に発熱体３が柔軟性高く且つ密着するように配されて、効率良く温熱を加熱対象体に付与できるようになる。

　図２に戻ると、同図に示す耳掛け部４はシート材からなり、該シート材に、横方向Ｘに延びる挿通部４Ａが形成されている。挿通部４Ａは、耳掛け部４を耳に掛ける際に耳を通すための穴である。これに代えて、挿通部４Ａは、耳を通すことができる貫通スリット等によって形成されていてもよい。
　図２及び図４に示すように、耳掛け部４は、横方向Ｘの両外端域において、本体部２における表面シート５の外面に接合されており、これによって、本体部２と耳掛け部４とが接合された接合領域９が形成されている。接合領域９は、接合端部９ｓを軸として、耳掛け部４を反転させるときの折り曲げ部としても機能する。

　図４は、発熱体３、表面シート５、裏面シート６及び接合領域９の配置関係の一実施形態を示す断面図である。図２及び図４に示す本体部２と耳掛け部４との接合領域９は、接合領域９における横方向Ｘの内側端である接合端部９ｓから本体部２の横方向Ｘの外端部まで連続的に接合されており、半楕円の形状となっている。
　図４に示すように、接合領域９は、表面シート５と耳掛け部４とが接合して形成されたものである。接合領域９は、接合端部９ｓを軸として、耳掛け部４を反転させるときの折り曲げ部としても機能する。図２及び図４に示す接合領域９は連続的に接合されて形成されているが、これに代えて、間欠的に接合されて形成されていてもよい。

　上述した構成を有する温熱具１は、使用時に加熱対象体に当接する部位である表面シート５が、所定の構成を有する繊維を含むことが好ましい。以下の説明では、表面シート５の好適な態様である通気性の繊維シートを例にとり説明する。

　詳細には、表面シート５は、該シートを構成する繊維が、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）樹脂を少なくとも含有することが好ましい。つまり、表面シート５は、その構成繊維の一種としてＰＥＴ樹脂を少なくとも含有する繊維の集合体である。
　ＰＥＴ樹脂を少なくとも含有する繊維は、他の熱可塑性樹脂を含有する繊維と比較して剛性が高くなりやすいので、ＰＥＴ樹脂を少なくとも含有する繊維を含む表面シート５を用いることによって、温熱具１が包装や流通等の使用前の過程でシート厚み方向に圧縮されてしまった場合でも、包装袋を開封して圧縮状態を解除したときに、表面シート５の嵩高さが容易に且つ早期に回復し、使用直後から柔軟性、フィット性及び使用感が高いものとなる。

　表面シート５は、所定の繊維径を有する第１繊維を含む。詳細には、表面シート５に含まれる第１繊維は、その繊維径が好ましくは１５μｍ超、より好ましくは２０μｍ以上、更に好ましくは２５μｍ以上であり、好ましくは６０μｍ以下、より好ましくは５０μｍ以下、更に好ましくは４５μｍ以下、一層好ましくは４０μｍ以下である。別の実施形態では、更に一層好ましくは３０μｍ以下とすることもできる。
　第１繊維がこのような繊維径を有することによって、例えば温熱具が包装袋に収容されるなどして厚み方向に圧縮された状態であっても、包装袋から取り出す等して圧縮が解除されたあとすぐに、温熱具を構成する表面シートの嵩高さが回復し、使用時のフィット性が向上する。

　なお、上述した「ＰＥＴ樹脂を少なくとも含有する構成繊維」は、上述した繊維径を有する第１繊維そのものであってもよく、表面シートを構成する第１繊維以外の他の繊維であってもよく、表面シートを構成する第１繊維及び他の繊維のすべての繊維であってもよい。柔軟性、フィット性及び使用感の向上の点から、好ましくは少なくとも第１繊維がＰＥＴ樹脂を含む。この場合、第１繊維に含まれるＰＥＴ樹脂の割合は、２０質量％以上であることが好ましく、４０質量％以上であることが更に好ましく、７０質量％以上であることが一層好ましく、１００質量％であることが最も好ましい。

　表面シート５に含まれる第１繊維の繊維径は、例えば以下の方法で、表面シートの平面視における走査型電子顕微鏡（ＳＥＭ）による観察を行って、測定することができる。なお、この繊維径の測定方法は、本明細書に記載のすべての繊維の繊維径を測定する方法として共通して適用される。
　まず表面シートが、１種類の繊維径のみの繊維を含むものか、又は複数の繊維径の繊維を更に含むか否かを繊維本数の頻度と繊維径の分布とのヒストグラム（以下、これを単に「ヒストグラム」ともいう。）を作成して判断する。
　詳細には、温熱具にコールドスプレーを吹き付けて接着剤を固化させ丁寧に剥離するか、又は温熱具から直接切り出すなどして、測定対象の表面シートの測定サンプルを得る。この測定サンプルは、２ｃｍ×２ｃｍの寸法とする。このとき、測定サンプルは、肌対向面と、使用者の肌から遠い側に這い側に配される面（以下、これを「非肌対向面」ともいう。）を任意の方法で区別できるようにしておく。上述した表面シートからの測定サンプルの取り出し方法は、本開示における他の方法でも共通とする。

　次いで、この測定サンプルから、ヒストグラムを作成するための繊維径及び繊維本数を測定する。繊維径及び繊維本数は、測定サンプルの一方の面を対象として、該サンプルの平面視におけるＳＥＭ観察によって、繊維を例えば２０００倍に拡大して観察し、その二次元画像から導出する。繊維の本数は、得られた二次元画像の範囲で連続している繊維を１本として計測する。そして、繊維の本数が１００本以上になるまでＳＥＭ観察の位置を変えて繰り返し観察を行う。なお、この観察は、画像解析ソフトウエアを用いることもできる。例えば、画像解析ソフトウエアとしては、Ｐｈｏｔｏｓｈｏｐ（アドビ（株））製を用いることができる。
　繊維径は、繊維の塊、繊維の交差部分、ポリマー液滴といった欠陥を除いた繊維における繊維の長手方向に直交する線を引いたときの最大差し渡し長さを読み取った値とする。

　上述した測定を測定サンプルの肌対向面を対象として行い、ヒストグラムを作成するための繊維径の階級の幅を０．１～０．５μｍの範囲から選択し、測定結果に基づいて、繊維本数の頻度と繊維径の分布とのヒストグラムを作成する。
　作成したヒストグラムにおいて、繊維径分布のピークが１つのみ存在する場合には、表面シートにおける測定面側は単一の繊維のみで構成されていると判断する。これに代えて、繊維径分布のピークが２つ以上存在する場合には、表面シートにおける測定面側は複数種の繊維が存在すると判断する。ピークとは、繊維本数の頻度において正から負に転じる頂点における繊維径の位置である。

　表面シートを構成する繊維層が単一であるか、又は複数有するかは、例えば測定サンプルの断面を、マイクロスコープやＳＥＭ等によって観察して、繊維径や繊維構造の違いによって繊維層の有無及びその境界を確認したり、繊維の染色等によって確認したりすることができる。
　繊維層が複数存在するか否かを目視によって確認することが困難である場合は、測定サンプルの他方の面（非肌対向面）においても上述の方法でヒストグラムを作成し、測定サンプルの一方の面（肌対向面）におけるヒストグラムの形状と、測定サンプルの他方の面におけるヒストグラムの形状とを比較する。これらのヒストグラムのピークの個数又は出現位置が互いに異なる場合は、繊維層が複数存在すると判断する。一方、これらのヒストグラムのピークの個数及び出現位置が同等である場合には、繊維層が単一であると判断する。

　上述した方法で、表面シートが、第１繊維のみを含むものであるか、又は第１繊維以外の繊維を更に含むか否かを判断する。繊維径分布のピークが１つのみ存在する場合、前記ヒストグラムにおけるピークがある繊維径の位置を、第１繊維の繊維径とする。繊維径分布のピークが２つ以上存在する場合、繊維径分布のピークのうち、最も繊維径が大きい側に位置するピークが示す繊維径の位置を第１繊維の繊維径とする。

　一般的に、鉄の酸化反応によって発生する熱を利用する温熱具は、酸素との接触を遮断して、意図しない鉄の酸化反応を進行させないようにするために、温熱具の使用前の状態では、外気の侵入を遮断する包装袋に、酸素非存在下且つ圧縮された状態で封入されている。この場合、表面シートの製造時において、表面シートが柔軟性やフィット性を発現できるように構成したとしても、表面シートを備える温熱具の包装袋への封入時又は封入後、あるいは、包装袋内に封入された温熱具の流通時に、シートがその厚み方向に圧縮されやすく、表面シートに起因する柔軟性やフィット性が設計通りに発現しにくい場合があり、改善の余地があった。

　本実施形態によれば、表面シート５の構成繊維として、所定の繊維径を有し且つＰＥＴ樹脂を含む繊維を用いることによって、ＰＥＴが有する高い剛性が圧縮抵抗性を発現させて、包装や流通等の使用前の過程でシート厚み方向に圧縮されてしまった場合でも、包装袋を開封して圧縮状態を解除したときに、表面シートの嵩高さが容易に回復し、使用直後からフィット性及び使用感が高く、肌触りが良好なものとなる。
　これに加えて、使用時の熱及び水蒸気の発生及び熱によって温まった空気によって、表面シート５を構成する繊維の繊維間距離を更に広げて、シートを効率的に嵩高くさせることができる。その結果、温熱具１の使用開始から使用終了までの長時間にわたって、柔軟性及びフィット性が高いレベルで発現する。

　表面シート５の嵩高さの早い回復性と、使用時における柔軟性、フィット性及び使用感とを兼ね備えつつ、繊維の毛羽立ちを抑制して、肌との当接面における肌触りを良好にする観点から、表面シート５は上述した第１繊維に加えて、第１繊維とは繊維の種類が異なる他の繊維を一種又は二種以上更に含むことが好ましい。

　表面シート５の繊維の存在態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。詳細には、（ｉ）肌等の加熱対象体に当接する部位において、第１繊維と、第１繊維以外の他の繊維とが均一に混合されて存在する態様、（ii）肌等の加熱対象体に当接する部位を平面視したときに、当該部位が、第１繊維のみが存在する部位と、第１繊維以外の他の繊維のみが存在する部位とから構成されている態様、又は（iii）表面シート５が２つ以上の繊維層を有する複層構造で構成されており、いずれか１つの繊維層にのみ第１繊維が含まれている態様等が挙げられる。

　これらのうち、繊維の毛羽立ちを抑制してシートの肌触りを更に良好にして、柔軟性とフィット性とをより効果的に発現させる観点から、表面シート５は、上述した（iii）に示す態様であることが好ましい。
　また同様の観点から、表面シートを構成する繊維シートは、構成繊維どうしが互いに接触した接触部を有するように、これらの繊維が融着及び絡合のうち少なくとも一種の態様によってシート形態が維持された状態であることが好ましい。
　特に、上述のシート形態は、不織布からなることが好ましい。繊維が絡合した不織布の例としては、スパンレース不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布等が挙げられる。上述した（iii）に示す態様とするためには、２枚以上の繊維ウエブ又は不織布を、絡合又は融着する方法が挙げられる。例えば、エアスルー不織布であれば、上述した接触部は、構成繊維どうしが単に接触して絡合した部位に加えて、繊維の一部どうしが融着した部位も含んで形成されているので、構成繊維どうしが固定されやすくなり、構成繊維の毛羽立ちや脱落が低減される点で有利である。
　これに加えて、上述した不織布又はその構成繊維に対して、シリコーンや界面活性剤等で表面処理したものを用いてもよい。

　更に、上述した不織布に加えて、ポリエチレンやポリウレタン等の熱可塑性樹脂を原料とする発泡シート等を用いたりすることができる。また、これらのシート材は、繊維の原料、繊維径、繊維の捲縮の度合い等が異なる繊維を複数混合して用いたり、シート材を複数組み合わせたりして、所望の性質を発現させることもできる。

　表面シート５の好適な態様として、表面シート５が２つ以上の繊維層を有する複層構造で構成されている場合、図５に示すように、第１繊維を含む第１繊維層５１と、第１繊維とはその繊維径が異なる繊維を第１繊維以外の他の繊維として含む第２繊維層５２とを少なくとも有することが好ましい。具体的には、本実施形態のように、第１繊維よりも繊維径の小さい繊維である第２繊維を含む第２繊維層５２を有することが好ましい。
　これに加えて、第１繊維層５１は第２繊維を含まないことが好ましく、また第２繊維層５２は第１繊維を含まないことが好ましい。すなわち、表面シート５は、第１繊維を含んで構成された繊維層と、第１繊維を除く他の繊維で構成された繊維層とを少なくとも有することが好ましい。
　このように繊維径が異なる繊維を含む繊維層を複数設けることによって、温熱具は、第１繊維を含む繊維層ではシート嵩高さの回復の機能を発現させ、第２繊維を含む繊維層では表面シートの良好な肌触りや質感を発現させるという、各繊維層で目的とする機能を具備させることができる。その結果、表面シート５は、上述した複数の機能を効率的且つ同時に発現できる構成となり、またそのような表面シートの製造効率が更に向上する。

　なお説明の便宜上、以下の説明では、図５に示す第１繊維層５１と第２繊維層５２とが隣接して配された２層構造の表面シート５の形態（図５参照）を例にとり説明するが、本発明の効果が奏される限り、繊維層の層数は特に制限されない。例えば、実施形態の例（例１）として、第１繊維層５１及び第２繊維層５２が隣接して配され、且つ第１繊維層５１及び第２繊維層の少なくとも一方の外面に１層以上の他の繊維層を設けることができる。あるいは、別の実施形態の例（例２）として、第１繊維層５１と第２繊維層５２との間に、１層以上の他の繊維層を更に設けることもできる。
　隣接して配される互いの繊維層に含まれる繊維は、その繊維径が互いに異なるものを含むことが好ましい。したがって、例１の場合において、第３繊維層が、第１繊維層５１の外面に設けられる場合、第３繊維層の繊維径は、第２繊維層の繊維径と同じであってもよいし、第１繊維層の繊維径と第２繊維層の繊維径といずれも異なるものであってもよい。

　また説明の便宜上、図５に示す表面シート５は、表面シート５を構成する繊維層どうしの境界が明瞭となって図示されているが、この形態に限られない。すなわち、表面シートが複層構造を有する場合、各繊維層の境界面は明瞭となって存在していてもよく、各繊維層の境界面が不明瞭となって存在していてもよい。
　いずれの場合であっても、表面シート５を厚み方向に沿って見たときに、各繊維層における構成繊維の存在割合が階段状に、連続的に、又はその組み合わせで変化していることが、表面シートの製造時及び使用時の取り扱い性の観点から好ましい。

　また、本開示における「繊維を含まない」とは、当該繊維を意図的に繊維層に含有させないことを意味し、当該繊維が繊維層に全く含有しないこと、及び繊維層に繊維が不可避的に混入することの双方を包含する。後者の場合、例えば第１繊維層５１を構成する第１繊維が、繊維層どうしの境界を越えて、意図せず第２繊維層側に入り込むなどして、意図しない他の繊維が不可避的に混入する態様が挙げられる。

　表面シート５が第１繊維層５１と第２繊維層５２とを少なくとも有する場合、第２繊維層５２を構成する第２繊維は、その繊維径が好ましくは６μｍ以上、より好ましくは１０μｍ以上、更に好ましくは１３μｍ以上であり、好ましくは３０μｍ以下、より好ましくは２５μｍ以下、更に好ましくは２０μｍ以下、特に好ましくは１７μｍ以下である。
　また第２繊維の繊維径は、第１繊維の繊維径よりも細いことも好ましい。
　第２繊維がこのような繊維径を有することによって、繊維の剛性を低減して、表面シートが肌に当接したときに、良好な肌触りや滑らかな質感が得られる。
　第２繊維の繊維径は、第１繊維の繊維径と同様の測定方法で、表面シートを平面視における走査型電子顕微鏡による観察を行って、測定することができる。

　また、表面シート５が第１繊維層５１と第２繊維層５２とを少なくとも有する場合、その配置位置に関して、第１繊維層５１は、図５に示すように、温熱具の使用時において、使用者の肌から遠い側の面に配されていることが好ましい。また同図に示すように、第２繊維層５２は、使用時において使用者の肌に直接接触する面である肌当接面に配されていることも好ましい。
　すなわち、第２繊維層５２は肌対向面を構成し、使用者の肌に当接するように配されていることが好ましい。
　また第１繊維層５１は使用者の肌に当接しない位置に配されていることが好ましい。図５に示す実施形態においては、第１繊維層５１は、表面シート５の非肌対向面を構成しており、発熱体３と最も近い側の位置に配され、且つ発熱体３と隣接するように配されている。
　各繊維層がこのような配置関係となっていることによって、ＰＥＴ樹脂の含有によって剛性が比較的高くなっている第１繊維が使用者の肌に直接接触することを低減できるので、表面シートの柔軟性及び滑らかな質感を使用者が知覚することができる。

　表面シート５が第１繊維層５１を有する場合、第１繊維層５１は、第１繊維に加えて、第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太い第３繊維を更に含むことが好ましい。すなわち、第１繊維層５１は、第１繊維と第３繊維とを少なくとも含む複数の繊維が含有されていることが好ましく、不可避的に混入する繊維を除き、第１繊維及び第３繊維のみからなり、第２繊維を含まないことが更に好ましい。
　このような所定の繊維径の関係を有する第３繊維を第１繊維層５１に含有させることによって、剛性の高い第１繊維のみの構成に比べて、表面シートの柔軟性を高めることができ、使用時にフィット性が更に向上する。

　第１繊維層５１が第３繊維を更に含む場合、第３繊維の繊維径は、第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太いことを条件として、好ましくは１５μｍ以上、より好ましくは１８μｍ以上、更に好ましくは２０μｍ以上であり、好ましくは５０μｍ以下、より好ましくは４０μｍ以下、更に好ましくは３０μｍ以下、一層好ましくは２４μｍ以下である。
　第３繊維がこのような繊維径を有することによって、繊維径が相対的に大きい第１繊維に比べて剛性が低くなり、表面シートの柔軟性を高めることができ、温熱具の肌触り及び使用感が更に向上する。
　第３繊維の繊維径は、第１繊維の繊維径と同様の測定方法で、表面シートを平面視における走査型電子顕微鏡による観察を行って、測定することができる。
　第１繊維層５１に第１繊維及び第３繊維が含まれている場合、両繊維は混合状態で存在していてもよく、あるいは第１繊維層５１は、第１繊維から実質的になる層と、第３繊維から実質的になる層との多層構造になっていてもよい。

　以下に、表面シート５の好適な態様として、非肌対向面を構成する第１繊維層５１と、肌対向面を構成する第２繊維層５２の二層構造を有する場合には、例えば以下の方法で構成繊維の繊維径を測定することができる。
　まず上述した測定方法にて繊維層が２層あることを確認し、ヒストグラムを作成する。
　例えば、第１繊維層５１が第１繊維のみで構成されている場合には、測定サンプルの肌対向面におけるヒストグラムはピークが１つのみ存在するので、当該ピーク頂点が示す繊維径の位置が第１繊維の繊維径である。一方、第１繊維層５１が第１繊維及び第３繊維で構成されている場合には、測定サンプルの肌対向面におけるヒストグラムはピークが２つ存在するので、当該ピークのうち、繊維径が大きい側に位置するピーク示す繊維径の位置を第１繊維の繊維径とし、繊維径が小さい側に位置するピーク示す繊維径の位置が第３繊維の繊維径とする。
　また、第２繊維層５２が第２繊維のみで構成されている場合には、測定サンプルの非肌対向面におけるヒストグラムはピークが１つのみ存在するので、当該ピーク頂点が示す繊維径の位置を第２繊維の繊維径とする。

　温熱具１の使用時における嵩高さの回復に起因する柔軟性及びフィット性を向上させる観点から、表面シートにおける、第１繊維層５１に対する第３繊維の質量割合は、好ましくは１０質量％以上、より好ましくは２５質量％以上、更に好ましくは４０質量％以上であり、好ましくは９０質量％以下、より好ましくは７５質量％以下、更に好ましくは６０質量％以下である。
　同様の観点から、表面シートにおける、第１繊維層５１に対する第１繊維の質量割合は、好ましくは１０質量％以上、より好ましくは２５質量％以上、更に好ましくは４０質量％以上であり、好ましくは９０質量％以下、より好ましくは７５質量％以下、更に好ましくは６０質量％以下である。

　一方、表面シートにおける、第２繊維層５２に対する第２繊維の質量割合は、好ましくは８０質量％以上、より好ましくは９０質量％以上、更に好ましくは９５質量％以上であり、一層好ましくは１００質量％である。つまり、第２繊維層５２は、不可避的に混入する繊維を除き、第２繊維のみから構成されることが好ましい。
　このような構成となっていることによって、表面シートが肌に当接したときに、剛性が比較的低い第２繊維が当接しやすくなるので、良好な肌触りや滑らかな質感が効果的に得られる。

　表面シート５を構成する第１繊維、第２繊維及び第３繊維の各割合は、例えば以下のように測定できる。
　第１繊維と第３繊維の各割合は第１繊維層５１をデジタルマイクロスコープで無作為に１００本の繊維を選択し、平面視した際の横幅を繊維径として計測する。そして、１００本の繊維径の算術平均値を算出した後、各繊維の繊維径が算術平均値よりも２μｍ以上差がある場合は別の繊維であると判断し、算術平均値よりも繊維径が大きい繊維を第１繊維とし、算術平均値よりも繊維径が小さい繊維を第３繊維とする。なお、繊維径が平均値より２μｍ未満である繊維は第１繊維とする。繊維径を測定後に第１繊維と第３繊維とに仕分けをし、それぞれの重量を測定し無作為に選択した１００本あたりにおける第１繊維と第３繊維の割合を算出する。次に第１繊維層５１と第２繊維層５２をそれぞれ１ｃｍ×１ｃｍに切り出し、それぞれの重量を測定し、第１繊維層５１と第２繊維層５２の割合を算出する。上記の測定から第１繊維、第２繊維及び第３繊維の各割合を算出する。

　以下に、第１繊維、第２繊維及び第３繊維の好適な構成原料について説明する。第１繊維、第２繊維及び第３繊維はいずれも、熱可塑性樹脂を含んで構成されることが、温熱具の製造の利便性及びコストの面の観点で好ましい。

　各繊維に用いられる熱可塑性樹脂としては、それぞれ独立して、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）及びポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ）等のポリエステル樹脂；エチレンプロピレン共重合体等のエチレン‐αオレフィン共重合体；ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等のビニル系樹脂；ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル酸系樹脂；ポリアミド樹脂；、並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。その他の例としては、特開平９－２９６３２５号公報等に記載のものが挙げられる。

　上述の熱可塑性樹脂を組み合わせて用いる場合、構成成分の異なる二種以上の熱可塑性樹脂が混合された状態で繊維中に存在してもよく、あるいは、構成成分の異なる二種類の熱可塑性樹脂を成分とする同心芯鞘型若しくは偏心芯鞘型の複合繊維又はサイドバイサイド型複合繊維のように、熱可塑性樹脂どうしの境界が明瞭な状態で繊維中に存在してもよい。
　芯鞘繊維における芯／鞘の組み合わせ、又はサイドバイサイド複合繊維における第１の樹脂／第２の樹脂の組み合わせとして、ポリプロピレン／ポリエチレン、ポリプロピレン／エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート／ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート／ポリプロピレンなどの組み合わせからなる繊維等が挙げられる。これらは単独で又は複数種組み合わせて用いることができる。
　本発明においては、繊維を構成する熱可塑性樹脂の種類は、示差走査熱量分析法（ＤＳＣ法）による融点の測定によって判断できる。

　第１繊維は、上述のとおりＰＥＴ樹脂を少なくとも含むことが好ましく、ＰＥＴ樹脂のみからなる繊維であるか、又はＰＥＴ樹脂とＰＥＴ樹脂以外の熱可塑性樹脂とのみからなる繊維であることがより好ましく、ＰＥＴ樹脂のみからなる繊維であることが更に好ましい。
　このような構成となっていることによって、温熱具の圧縮状態を解除したときに、第１繊維の剛性に起因して表面シートの嵩高さが容易に回復し、柔軟性の効果的な発現に好適な厚みを十分に維持することができる。これに加えて、表面シートの厚みの変化量も大きくなり使用時のフィット性が向上する。

　第２繊維は、ＰＥ樹脂を含むことが好ましく、ＰＥ樹脂に加えて、ＰＥＴ樹脂又はＰＰ樹脂を含むことがより好ましく、ＰＥ樹脂と、ＰＥＴ樹脂又はＰＰ樹脂とのみからなる繊維であることが更に好ましい。
　このような構成となっていることによって、表面シートにおける繊維の毛羽立ちを抑えることで肌等に良好な滑らかさを知覚させることができ、使用感が更に向上する。このことは、表面シートの製造工程においてエアスルー処理等による熱の付与を行った際に、上述した構成を有する第２繊維どうしが熱融着して、得られるシートにおいて繊維の毛羽立ちを低減できる点でも有利である。更に、温熱具の製造過程において表面シートを搬送した場合であっても、表面シートの繊維剥離片や繊維脱落片、並びに構成繊維由来の微粒子（以下、これらを総称して「紙粉」ともいう。）が発生したり、紙粉がシート表面に付着したりすることを低減できるので、シート表面のざらつきを防いで、良好な触感を有する温熱具を得られる。またこれに加えて、シートの破棄量の低減や生産効率性の上昇が可能である。

　第１繊維がＰＥＴ樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を更に含む場合、紙粉の発生及び付着を低減しつつ、柔軟性の向上と繊維の毛羽立ち低減とに起因するシートの肌触り及び温熱具の使用感を一層向上させる観点から、第１繊維は、ＰＥＴ樹脂及び他の熱可塑性樹脂からなる芯鞘繊維であることが一層好ましい。
　また紙粉の発生及び付着を低減しつつ、柔軟性の向上と繊維の毛羽立ち低減とに起因するシートの肌触り及び温熱具の使用感を一層向上させる観点から、第２繊維は、ＰＥ樹脂及び他の熱可塑性樹脂からなる芯鞘繊維であることが一層好ましい。

　第３繊維は、ＰＥＴ樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ＰＥ樹脂を含むことがより好ましく、ＰＥ樹脂に加えて、ＰＥＴ樹脂又はＰＰ樹脂を含むことが更に好ましく、ＰＰ樹脂及びＰＥ樹脂のみからなることが一層好ましい。また第２繊維と第３繊維とは、その成分が互いに異なる樹脂を含むことも好ましい。
　このような構成となっていることによって、表面シートにおける繊維の毛羽立ちを抑えることで肌等に良好な滑らかさを知覚させることができ、使用感が更に向上する。このことは、表面シートの製造工程においてエアスルー処理等による熱の付与を行った際に、上述した構成を有する第２繊維どうしが熱融着して、得られるシートにおいて繊維の毛羽立ちを低減できる点でも有利である。更に、温熱具の製造過程において表面シートを搬送した場合であっても、紙粉が発生したり、紙粉がシート表面に付着したりすることを低減できるので、シート表面のざらつきを防いで、良好な触感を有する温熱具を得られる。またこれに加えて、シートの破棄量の低減や生産効率性の上昇が可能である。

　第３繊維がＰＥＴ樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を更に含む場合、紙粉の発生及び付着を低減しつつ、柔軟性の向上と繊維の毛羽立ち低減とに起因するシートの肌触り及び温熱具の使用感を一層向上させる観点から、第３繊維は、ＰＰ樹脂及び他の熱可塑性樹脂からなる芯鞘繊維であることが一層好ましい。その場合、第３繊維は、芯がＰＰ樹脂であり、鞘がＰＥ樹脂であることが好ましい。

　本発明の効果が奏される限り、上述した繊維に加えて、又はこれに代えて、表面シート５は、熱可塑性樹脂を含む繊維以外の他の繊維を含んでいてもよい。
　このような他の繊維としては、例えば、木材パルプ、コットン及び麻等の天然繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生繊維等が挙げられる。これらは単独で又は複数種組み合わせて用いることができる。

　以下に、本開示の温熱具に共通して適用される事項について説明する。発熱体３、耳掛け部４、表面シート５及び裏面シート６に用いられ得るシート材は、これらの通気性、透湿性、風合い、伸縮性、強度や、発熱シート及び発熱組成物の構成材料の漏れ出し防止等の性質を考慮して適宜決定すればよく、例えば不織布、織布、紙などの繊維シート、樹脂発泡シート、金属シート又はこれらの組み合わせ等が用いられる。

　通気性が高いシート材としては、メルトブローン不織布が好適に用いられる。風合いを良好にする目的で用いられるシート材としては、エアスルー不織布やサーマルボンド不織布が好適に用いられる。
　伸縮性を発現させる目的で用いられるシート材としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維を含むエアスルー不織布やスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布等が用いられる。
　強度を付与する目的で用いられるシート材としては、スパンボンド不織布やスパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布等が好適に用いられる。

　上述した不織布に加えて、又はこれに代えて、不織布をシリコーンや界面活性剤等で表面処理したものを用いたり、ポリエチレンやポリウレタン等の熱可塑性樹脂を原料とする発泡シート等を用いたりすることができる。また、これらのシート材は、繊維の原料、繊維径、繊維の捲縮の度合い等が異なる繊維を複数混合して用いたり、シート材を複数組み合わせたりして、所望の性質を発現させることもできる。
　発熱体３、耳掛け部４、表面シート５及び裏面シート６は、単層及び多層を問わない一枚のシート材のみからなる単一構造であってもよく、二種以上のシート材を重ね合わせた積層構造であってもよい。

　表面シート５は、上述のとおり繊維シートを用いることが好ましく、熱可塑性樹脂を含む繊維シートを容易に得やすくする観点から、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、及びケミカルボンド不織布の少なくとも一種を好ましく用いることができる。表面シート５をシート材の積層体とし、且つ各シート材に捲縮繊維を含む場合、上述した捲縮率及び捲縮数は、各シート材がそれぞれ独立して満たすものとする。

　表面シート５として通気性の繊維シートを用いる場合、表面シート５の通気度は、０．０１秒／１００ｍＬ以上であることが好ましく、５０秒／１００ｍＬ以上であることがより好ましく、２０００秒／１００ｍＬ以上であることが更に好ましい。また表面シート５の通気度は、１５０００秒／１００ｍＬ以下であることが好ましく、５００００秒／１００ｍＬ以下であることがより好ましく、１００００秒／１００ｍＬ以下であることが更に好ましい。通気度は、ＪＩＳ　Ｐ８１１７に記載の方法によって測定される。通気度が小さいことは、空気の通過に時間がかからないことを意味しているので、通気性が高いことを意味している。

　裏面シート６として不織布を用いる場合、表面シート５よりも通気度が高い繊維シートを用いることが好ましい。すなわち、裏面シート６は、ＪＩＳ　Ｐ８１１７に記載の方法によって測定される通気度が、表面シート５よりも大きいことが好ましい。詳細には、裏面シート６の通気度は高ければ高いことが好ましく、表面シート５よりも通気度が大きいことを条件として、５０秒／１００ｍＬ以上が好ましく、４０００秒／１００ｍＬ以上であることがより好ましく、２００００秒／１００ｍＬ以上であることが更に好ましく、非通気のシートであることが一層好ましい。

　表面シート５及び裏面シート６として不織布を用いる場合、表面シート５の坪量は、シート全体の坪量として、１０ｇ／ｍ^２以上であることが好ましく、２０ｇ／ｍ^２以上であることがより好ましく、３０ｇ／ｍ^２以上であることが更に好ましい。表面シート５の坪量は、２００ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、１３０ｇ／ｍ^２以下であることがより好ましく、９０ｇ／ｍ^２以下であることが更に好ましい。このような構成となっていることによって、シートの厚みと柔軟性とを両立することができ、良好な感触及びフィット性を発現できる。

　表面シート５が第１繊維層５１を有する場合、第１繊維層５１の坪量は、１０ｇ／ｍ^２以上であることが好ましく、１５ｇ／ｍ^２以上であることがより好ましく、２０ｇ／ｍ^２以上であることが更に好ましい。第１繊維層５１の坪量は、１００ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、８０ｇ／ｍ^２以下であることより好ましく、６０ｇ／ｍ^２以下であることが更に好ましい。
　このような構成となっていることによって、包装袋を開封して圧縮状態を解除したときに、表面シートの嵩高さが容易に回復し、使用直後から厚みの変化量も大きく、フィット性及び使用感が高く、肌触りが良好なものとなる。

　表面シート５が第２繊維層５２を有する場合、第２繊維層５２の坪量は、５ｇ／ｍ^２以上であることが好ましく、１０ｇ／ｍ^２以上であることがより好ましく、１５ｇ／ｍ^２以上であることが更に好ましい。第２繊維層５２の坪量は、５０ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、４０ｇ／ｍ^２以下であることより好ましく、３０ｇ／ｍ^２以下であることが更に好ましい。このような構成となっていることによって、第１繊維層５１を構成する第１繊維などの剛性の高い繊維が第２繊維層５２側や肌対向面に意図せず突き出すことを防いで、肌等の加熱対象体との当接面において、シート表面の良好な滑らかさを得ることができる。

　表面シート５が第１繊維層５１を有する場合、第１繊維層５１の繊維の存在密度が、好ましくは１５００本／ｃｍ^２以下、より好ましくは１０００本／ｃｍ^２以下、更に好ましくは７００本／ｃｍ^２以下であり、１５０本／ｃｍ^２以上が現実的である。このような構成となっていることによって、シートの厚みが増大し、良好なフィット性を得ることができる。

　表面シート５が第２繊維層５２を有する場合、第２繊維層５２の繊維の存在密度が、好ましくは２００本／ｃｍ^２以上、より好ましくは３００本／ｃｍ^２以上、更に好ましくは４００本／ｃｍ^２以上であり、好ましくは１５００本／ｃｍ^２以下、より好ましくは１２００本／ｃｍ^２以下、更に好ましくは１０００本／ｃｍ^２以下である。
　このような構成となっていることによって、第１繊維層５１を構成する第１繊維や第３繊維などの剛性の比較的高い繊維が第２繊維層５２側や肌対向面に意図せず突き出すことを防いで、肌等の加熱対象体との当接面において、シート表面の良好な滑らかさを得ることができる。
　またこのような効果を得る観点から、第２繊維層５２の繊維の存在密度は、第１繊維層の繊維の存在密度よりも高いことが好ましい。

　表面シート５における繊維の存在密度は、以下の方法で測定することができる。
　まず、上述の方法で得た測定サンプルの断面をマイクロスコープやＳＥＭによって観察して、繊維径や繊維構造の違いを確認して、繊維層が２層あることを確認する。その後、測定サンプルから第１繊維層と第２繊維層とを分離して、１ｃｍ×１ｃｍ角に切り取ったシートに存在する繊維本数をＳＥＭ観察して計測する。計測した繊維本数を１ｃｍ^２あたりの繊維の存在密度として算出する。

　また、裏面シート６の坪量は、使用時における適応部位への保温性向上の観点から、裏面シート６の坪量は、合計の坪量として、１０ｇ／ｍ^２以上であることが好ましく、３０ｇ／ｍ^２以上であることが更に好ましい。裏面シート６の坪量は、２００ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、１５０ｇ／ｍ^２以下であることが更に好ましい。

　また表面シート５は、その厚みが発熱開始時点において所定の範囲であることが好ましい。詳細には、温熱具の発熱開始時点における表面シート５の厚みが、好ましくは１．８ｍｍ以上、より好ましくは２．５ｍｍ以上、更に好ましくは３．５ｍｍ以上であり、好ましくは６．０ｍｍ以下、より好ましくは５．５ｍｍ以下、更に好ましくは５．０ｍｍ以下である。
　このような厚みとなっていることによって、表面シート５の嵩高さを使用直後に回復できていることを意味するので、温熱具の使用直後から柔軟性及び肌触りを良好にすることができるとともに、加熱対象物へのフィット性を向上させることができる。

　また表面シート５は、温熱具の発熱開始時点から１０分経過した後における表面シート５の厚みが、好ましくは１．７ｍｍ以上、より好ましくは３．０ｍｍ以上、更に好ましくは４．０ｍｍ以上であり、より更に好ましくは４．５ｍｍ以上であり、好ましくは８．０ｍｍ以下、より好ましくは７．０ｍｍ以下、更に好ましくは６．５ｍｍ以下である。
　このような厚みとなっていることによって、表面シート５の嵩高さを使用中に回復及び維持できていることを意味するので、温熱具の使用中の長期にわたって柔軟性及び肌触りを良好にすることができるとともに、加熱対象物へのフィット性を向上させることができる。

　表面シート５の厚み及びその増加量は、包装袋等に封入されて密封状態となっている未発熱の温熱具１を対象とし、以下の方法で測定することができる。
　パッケージ等に封入されて密封状態となっている未発熱の温熱具において、３．７ｇｆ／ｃｍ^２の荷重をシートに付与して、定圧厚さ測定器等を用いて３箇所以上測定し、その算術平均値を発熱開始時点のシート厚みＴ１（ｍｍ）とする。同様に、１０分経過後時点でのシート厚みを同荷重下で同様に測定し、その算術平均値を１０分経過後時点でのシート厚みＴ２（ｍｍ）とする。
　このとき、該包装袋等の開封を開始して、温熱具１を空気等の酸素含有雰囲気に触れさせ且つ開封開始から平面台上に表面シート５を広げて載置するまでに要する時間、つまり開封開始から３０秒後の時点を「発熱開始時点」と定義する。このとき、本実施形態の表面シート５は、表面シート５の厚みが増加しているか、又は厚みが維持されていることが好ましい。

　本開示において「蒸気が発生する」とは、以下の方法で測定される１０分間での水蒸気の総発生量が１０ｍｇ／１０分以上であることをいう。この水蒸気発生量は、発熱部３ａとして例えば被酸化性金属、炭素材料及び水を含有させたペースト状物を用いることによって容易に達成することができる。
　水蒸気発生量の測定は、例えば図５に示す構成を有する装置１００を用いて測定することができる。装置１００は、アルミニウム製の測定室１０１（容積４．２Ｌ）、測定室１０１の下部に連通して配された流入路１０２、及び測定室１０１の上部に連通して配された流出路１０３を備える。流入路１０２は、空気供給部（図示せず）から供給された除湿空気（湿度２％ＲＨ未満、流量２．１Ｌ／分）を測定室１０１に流入できるようになっている。これに加えて、装置１００は、流入路１０２に設けられた入口温湿度計１０４及び入口流量計１０５、流出路１０３に設けられた出口温湿度計１０６及び出口流量計１０７、測定室１０１内に設けられた温度計（サーミスタ）１０８を備える。温度計１０８としては、好ましくは温度分解能が０．０１℃程度のものを使用する。

　装置１００を用いた水蒸気の総発生量の測定方法は、以下のとおりである。
　まず、酸素遮断袋内に密閉収容した測定対象の温熱具を対象として、酸素遮断袋を開封し、そして、１つの発熱体を取り出す。発熱体が袋体に収容されている場合、発熱体を袋体とともに取り出す。
　取り出した発熱体の袋体の一方の面が外面に向くように測定室１０１に載置し、温度計１０８をその上に載せる。袋体の一方の面と他方の面とが通気性の異なるシート材で構成されている場合、袋体における通気性の高いシート材側の面が外面に向くように測定室１０１に載置し、該面上に温度計１０８を載せる。
　この状態で測定室１０１の下部より流入路１０２を介して除湿空気を流し、入口温湿度計１０４と出口温湿度計１０６とで計測される各温度及び各湿度から、測定室１０１の空気流通前後の絶対湿度の差を求める。更に入口流量計１０５と出口流量計１０７とで計測される空気流量から、発熱具から放出された水蒸気量を算出する。総水蒸気量は、温熱具を酸素遮断袋から取り出して発熱体を空気に接触させた時点を測定開始時点とし、該時点から１０分間に測定された総量（ｍｇ／１０分）とする。

　温熱具１における耳掛け部４の形態は、本体部２を使用者の両眼に固定可能な態様であれば、図１及び図２に示すシート状の部材に限定されない。例えば、図６に示すように、ひも状の部材からなる耳掛け部４を採用したり、糸状又は帯状の部材からなる耳掛け部４を採用したりしてもよい。温熱具のフィット感を高める観点から、ゴムなどの弾性体を用いて、伸縮可能な耳掛け部４とすることが好ましい。

　上述した温熱具１における発熱体３の形態は、２つの発熱体３が離間して保持された形態として説明したが、使用者の両眼及びこれらの周囲に温感を付与可能であれば温熱具の形態は特に限定されない。例えば、使用者の両眼及びその周囲を覆うことができる形状及び大きさを有する１つの発熱体が表面シート５及び裏面シート６の間に保持されていてもよく、３つ以上の発熱体が表面シート５及び裏面シート６の間に保持されていてもよい。

　また、図２及び図３に示す発熱体３は、その一部が温熱具１の横方向Ｘの中央域で固定されているのみであったが、この形態に限られない。例えば、発熱体３と裏面シート６とが前記中央域及び前記中央域以外の領域で接着剤によって連続的に又は間欠的に接合されていてもよく、裏面シート６における発熱体３が配される位置の全面に接着剤を塗布して接合されていてもよい。

　また本開示は、包装袋と、該包装袋内に包装された温熱具とを有する、温熱具の包装体も提供する。
　包装袋は、例えば、酸素不透過性のシート材から構成されており、当該シート材としては、樹脂フィルム単独で用いたり、あるいは該樹脂フィルムにアルミニウム等の金属薄膜を積層したものが挙げられる。これによって、温熱具を包装したときの遮光性や気密性を向上させることができる。

　温熱具をその包装体の形態とする場合、温熱具１は、所定の圧力が付与された状態で包装袋内に収容されていることが好ましい。
　詳細には、包装体においてに温熱具付与された圧力は、保管時及び流通時における包装体の省スペース化の観点から、好ましくは５００Ｐａ以上、より好ましくは１０００Ｐａ以上、更に好ましくは２０００Ｐａ以上である。
　包装袋の開封後に、シート積層体の嵩高さを容易に回復させる観点から、上記の圧力は、好ましくは５０００Ｐａ以下、より好ましくは４０００Ｐａ以下、更に好ましくは３０００Ｐａ以下である。

　上述した温熱具は、例えば以下の方法で製造することができる。温熱具の製造方法は、表面シートを製造する工程を含む。
　表面シートの製造工程の一実施形態として、任意の繊維を含む繊維ウエブに熱風を吹き付ける工程を行って、繊維ウエブを不織布化する方法が挙げられる。当該工程は、いわゆるエアスルー処理である。

　表面シートの好適な態様として、第１繊維を含む第１繊維層５１と、第２繊維を含む第２繊維層５２との２層構造である表面シートを製造する場合には、例えば、以下の方法を採用することができる。
　まず、第１繊維のみで構成するか、又は第１繊維と第３繊維とを混合した繊維ウエブ（以下、これを「第１繊維ウエブ」ともいう）と、第２繊維のみで構成した繊維ウエブ（以下、これを「第２繊維ウエブ」ともいう）とを積層して、積層体を得る。その後、この積層体に対して熱風を吹き付けてエアスルー処理を行い、目的とする表面シートを得る。この表面シートは、いわゆるエアスルー不織布に分類されるものであり、通気性を有する繊維シートである。また、このように製造された表面シートは、一般的には長尺帯状であるが、必要に応じて所定の寸法になるように切断処理が行われてもよい。

　上述した好適な実施形態のように、表面シートの製造工程においてエアスルー処理等による熱の付与を行った際に、第２繊維や第３繊維を含む場合には、ＰＥＴ樹脂を含む第１繊維を含む各繊維どうしが熱融着して、得られるシートにおいて繊維の毛羽立ちを低減できる点で有利である。また表面シートを構成する繊維の融着点が多く形成されるので、以後の温熱具の製造工程に表面シートを搬送した場合であっても、紙粉の発生が低減できるので、シート表面のざらつきを防いで、良好な触感を有する温熱具を生産性高く得られる。これに加えて、紙粉によって要求品質を満たさなくなったシートの破棄量を低減できるので、環境負荷を低減できる。

　上述した各繊維ウエブは、カード法などの公知のウエブ形成方法で製造することができる。
　また、繊維層を１層（単層構造）とする場合には、第１繊維ウエブのみを用いて、上述の方法を行えばよい。繊維層を３層以上とする場合には、第１及び第２の各繊維ウエブに加えて、他の繊維で構成された他の繊維ウエブを積層して積層体とし、この積層体に対して熱風を吹き付ければよい。
　また、これに代えて、上述した表面シートは、繊維ウエブ又はその積層体に対して、ニードルパンチ処理を行うことによっても得ることができる。この場合、得られる表面シートは、いわゆるニードルパンチ不織布に分類されるものであり、通気性を有する繊維シートである。

　このように製造された表面シートは、以後の工程に供されるように搬送され、所定の加工工程を経て、温熱具が製造される。
　温熱具の製造方法としては、例えば、まず、表面シート及び裏面シートをそれぞれ同一方向に搬送しながら、表面シート又は裏面シートのうち少なくとも一方のシートにおける一方の面に接着剤を塗布する。接着剤の塗布方法は、シートの搬送方向に連続的に又は間欠的に塗布してもよく、該搬送方向に直交する方向においても連続的に又は間欠的に塗布してもよい。またこれに伴って、接着剤の非塗布部が形成されるように接着剤が塗布されていてもよい。
　次いで、接着剤が塗布されたシートにおける接着剤の塗布面上に、別工程にて製造した発熱体３を積層する。その後、発熱体３上に他方のシートを更に積層して、接着剤を介して両シート５，６を接合する。この工程を経て、表面シート５と裏面シート６との間に発熱体３が保持された状態で接合された本体部２が形成される。両シート５，６の接合に当たっては、例えば、第１シート５、発熱体３及び第２シート６を含んで構成される積層体を一対のプレスロールの間に導入して押圧する等して、接合性を高めてもよい。

　以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。

　上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の温熱具を開示する。

＜１＞
　使用者の肌に近い側に位置する表面シートと、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シートと、該表面シートと該裏面シートとの間に保持されている発熱体とを備え、
　前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含み、
　前記発熱体は、発熱に伴って該発熱体自体から蒸気を発生するように構成されており、
　前記表面シートは、ポリエチレンテレフタレート樹脂を少なくとも含有する繊維を含む通気性の繊維シートから構成されており、
　前記表面シートは、その平面視において走査型電子顕微鏡観察によって測定される繊維径が１５μｍ超である第１繊維を含む、温熱具。

＜２＞
　前記第１繊維の繊維径は、より好ましくは２０μｍ以上、更に好ましくは２５μｍ以上であり、好ましくは６０μｍ以下、より好ましくは５０μｍ以下、更に好ましくは４５μｍ以下、一層好ましくは４０μｍ、更に一層好ましくは３０μｍ以下である、前記＜１＞に記載の温熱具。
＜３＞
　前記第１繊維は、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂のみからなる繊維であるか、又はポリエチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂とのみからなる繊維であり、
　更に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂のみからなる繊維である、前記＜１＞又は＜２＞に記載の温熱具。

＜４＞
　前記第１繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、鞘がポリエチレン樹脂である芯鞘繊維である、前記＜１＞～＜３＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜５＞
　前記表面シートは、第１繊維層と第２繊維層とを含む複層構造であり、
　前記いずれか一つの繊維層にのみ第１繊維が含まれおり、
　第１繊維とは繊維径が異なる繊維が、第１繊維が含まれていない繊維層に含まれている、前記＜１＞～＜４＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜６＞
　前記表面シートは、第１繊維層と第２繊維層とのみを有する２層構造である、前記＜５＞に記載の温熱具。

＜７＞
　第１繊維層は、前記第１繊維を含み、
　第２繊維層は、繊維径が前記第１繊維よりも細く且つ該繊維径が６μｍ以上３０μｍ以下の第２繊維を含む、前記＜５＞又は＜６＞に記載の温熱具。
＜８＞
　前記第２繊維の繊維径は、前記第１繊維の繊維径よりも細く、且つ
　より好ましくは１０μｍ以上、更に好ましくは１３μｍ以上であり、より好ましくは２５μｍ以下、更に好ましくは２０μｍ以下、特に好ましくは１７μｍ以下である、前記＜７＞に記載の温熱具。
＜９＞
　第２繊維は、ポリエチレン樹脂を含むことが好ましく、ポリエチレン樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリプロピレン樹脂とを含むことがより好ましく、ポリエチレン樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリプロピレン樹脂とのみからなることが更に好ましく、且つ
　第２繊維の繊維径が６μｍ以上３０μｍ以下である、前記＜７＞又は＜８＞に記載の温熱具。
＜１０＞
　前記第２繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリプロピレン樹脂であり、鞘がポリエチレン樹脂である芯鞘繊維である、前記＜７＞～＜９＞のいずれか一に記載の温熱具。

＜１１＞
　第１繊維層は、使用時において使用者の肌から遠い側の面に配されており、
　第２繊維層は、使用時における肌当接面に配されている、前記＜５＞～＜１０＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜１２＞
　第１繊維層は、第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太い第３繊維を更に含む、前記＜５＞～＜１１＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜１３＞
　第３繊維の繊維径は、第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太いことを条件として、好ましくは１５μｍ以上、より好ましくは１８μｍ以上、更に好ましくは２０μｍ以上であり、好ましくは５０μｍ以下、より好ましくは４０μｍ以下、更に好ましくは３０μｍ以下、一層好ましくは２４μｍ以下である、前記＜１２＞に記載の温熱具。

＜１４＞
　第３繊維は、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリエチレン樹脂を含むことがより好ましく、ポリエチレン樹脂と、ＰＥＴ樹脂又はＰＰ樹脂を含むことが更に好ましく、ＰＰ樹脂及びＰＥ樹脂のみからなることが一層好ましく、且つ
　その繊維径が第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太い、前記＜１２＞又は＜１３＞に記載の温熱具。
＜１５＞
　第３繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリプロピレン樹脂であり、鞘がポリエチレン樹脂である芯鞘繊維である、前記＜１２＞～＜１４＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜１６＞
　第２繊維層は第２繊維を含み、
　第２繊維と第３繊維とは、その成分が互いに異なる樹脂を含む、前記＜１２＞～＜１５＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜１７＞
　第１繊維が、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂とのみからなる繊維であり、
　第３繊維が、ポリエチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む繊維である、前記＜１２＞～＜１６＞のいずれか一に記載の温熱具。

＜１８＞
　第１繊維層の全質量に対する第３繊維の質量割合は、好ましくは１０質量％以上、より好ましくは２５質量％以上、更に好ましくは４０質量％以上であり、好ましくは９０質量％以下、より好ましくは７５質量％以下、更に好ましくは６０質量％以下である、前記＜１２＞～＜１７＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜１９＞
　第１繊維層の全質量に対する第１繊維の質量割合は、好ましくは１０質量％以上、より好ましくは２５質量％以上、更に好ましくは４０質量％以上であり、好ましくは９０質量％以下、より好ましくは７５質量％以下、更に好ましくは６０質量％以下である、前記＜１２＞～＜１８＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２０＞
　第１繊維層はポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレン樹脂を含む第１繊維を含む、前記＜５＞～＜１９＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２１＞
　第２繊維層は第２繊維を含み、
　第２繊維層における第２繊維の含有量は、好ましくは８０質量％以上、より好ましくは９０質量％以上、更に好ましくは９５質量％以上であり、一層好ましくは１００質量％である、前記＜５＞～＜２０＞のいずれか一に記載の温熱具。

＜２２＞
　第１繊維層の繊維の存在密度が、好ましくは１５００本／ｃｍ^２以下、より好ましくは１０００本／ｃｍ^２以下、更に好ましくは７００本／ｃｍ^２以下であり、１５０本／ｃｍ^２以上である、前記＜５＞～＜２１＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２３＞
　第２繊維層の繊維密度が２００本／ｃｍ^２以上１５００本／ｃｍ^２以下である、前記＜５＞～＜２２＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２４＞
　第２繊維層の繊維の存在密度が、より好ましくは３００本／ｃｍ^２以上、更に好ましくは４００本／ｃｍ^２以上であり、好ましくは１２００本／ｃｍ^２以下、より好ましくは１０００本／ｃｍ^２以下である、前記＜５＞～＜２３＞のいずれか一に記載の温熱具。

＜２５＞
　第１繊維層は、不可避的に混入する他の繊維を除き、第１繊維と、第１繊維の繊維径よりも繊維径が細い第３繊維とのみからなり、
　第２繊維層は、不可避的に混入する他の繊維を除き、繊維径が前記第１繊維よりも細く且つ該繊維径が６μｍ以上３０μｍ以下の第２繊維のみからなり、
　第３繊維の繊維径は、第２繊維の繊維径よりも太い、前記＜５＞～＜２４＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２６＞
　第１繊維層の坪量は、１０ｇ／ｍ^２以上であることが好ましく、１５ｇ／ｍ^２以上であることがより好ましく、２０ｇ／ｍ^２以上であることが更に好ましく、
　１００ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、８０ｇ／ｍ^２以下であることより好ましく、６０ｇ／ｍ^２以下であることが更に好ましい、前記＜５＞～＜２５＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２７＞
　第２繊維層の坪量は、５ｇ／ｍ^２以上であることが好ましく、１０ｇ／ｍ^２以上であることがより好ましく、１５ｇ／ｍ^２以上であることが更に好ましく、
　５０ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、４０ｇ／ｍ^２以下であることより好ましく、３０ｇ／ｍ^２以下であることが更に好ましい、前記＜５＞～＜２６＞のいずれか一に記載の温熱具。

＜２８＞
　前記表面シートは、構成繊維どうしが融着及び絡合のうち少なくとも一種によってシート形態が維持された繊維シートであり、
　前記構成繊維どうしが互いに接触した接触部を有する、前記＜１＞～＜２７＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜２９＞
　前記繊維シートは、エアスルー不織布又はニードルパンチ不織布である、前記＜２８＞に記載の温熱具。
＜３０＞
　前記温熱具の発熱開始時点における前記表面シートの厚みが、１．８ｍｍ以上６．０ｍｍ以下である、前記＜１＞～＜２９＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜３１＞
　前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含む層と、該層に隣接して配された吸水性ポリマーを含む保水剤層とを備える、前記＜１＞～＜３０＞のいずれか一に記載の温熱具。
＜３２＞
　前記＜２＞～＜２７＞のいずれか一に記載の温熱具の製造方法であって、
　前記製造方法は表面シートの製造工程を含み、
　前記工程として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む繊維のウエブと、該繊維以外の他の繊維を含むウエブとを積層した積層体をエアスルー処理する、温熱具の製造方法。

　以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
　なお、繊維径及び繊維本数はサンプル表面シートの平面視におけるＳＥＭ観察によって、繊維を２０００倍に拡大して観察した。その後、繊維の本数が１００本以上になるまでＳＥＭ観察の位置を変えて繰り返し観察を行って表面シートの層数を確認した。なお、この観察は、画像解析ソフトウエア（Ｐｈｏｔｏｓｈｏｐ、アドビ（株））を用い繊維を色分けして長さを測定した。その後、繊維径の階級の幅を０．１～０．５μｍの範囲から選択し、測定結果に基づいて、繊維本数の頻度と繊維径の分布とのヒストグラムを作成し、ピークの数から表面シートに含まれる繊維が単一であるか、又は複数種含まれるかを判断した。また、各実施例及び比較例の表面シートの層数、及び各層に含まれる繊維径から、繊維の種類と繊維層内の繊維の質量割合とを算出した。
　また特に断りのない限り、以下の説明における「％」は「質量％」を意味する。

　〔実施例１〕
　芯がＰＥＴ樹脂からなり、鞘がＰＥ樹脂からなる芯鞘繊維（各樹脂５０質量％）である第１繊維１００質量％の第１繊維ウエブ（坪量：４０ｇ／ｍ^２）と、芯がＰＥＴ樹脂からなり、鞘がＰＥ樹脂からなる芯鞘繊維（各樹脂５０質量％）である第２繊維１００質量％の第２繊維ウエブとを積層し、積層体とした、この積層体に対して、エアスルー処理を行って、第１繊維層５１及び第２繊維層５２の二層構造を有する表面シート５（エアスルー不織布、坪量：６０ｇ／ｍ^２）を得た。
　また、裏面シート６として、金星製紙（株）製の熱可塑性樹脂のみを含む繊維からなるエアスルー不織布（坪量：３０ｇ／ｍ^２）を単層で用いた。
　表面シート層数：２
　第１繊維層：繊維径２２μｍの繊維１００％
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％

　これとは別に、発熱に伴い蒸気を発生する発熱体３を製造した。まず、電解質として食塩と、増粘剤とを水に溶解した水溶液に、被酸化性金属として鉄粉を投入して攪拌し、更に炭素材料として活性炭を入れて均一分散するまで十分に攪拌して、ペースト状の発熱組成物を得た。
　ポリエチレンをラミネートした薄葉紙に、上述のペースト状の発熱組成物を坪量６００ｇ／ｍ^２で塗布した。次いで、発熱組成物上に、保水材として吸水性ポリマー（アクアリック（登録商標）ＣＡ、（株）日本触媒製）の粒子を坪量７０ｇ／ｍ^２で層状に散布した。そして吸水性ポリマーの層上にクレープ紙（坪量６５ｇ／ｍ^２）を積層して、保水材層を備える発熱部３ａを得た。
　その後、この発熱部３ａを５０ｍｍ×５０ｍｍの大きさにカットした。これとは別に、６３ｍｍ×６３ｍｍにカットした透湿シートと、非透湿シートとで発熱体を挟み、これらのシートの四方をヒートシールして、袋体３ｂ内に発熱部３ａが収容された発熱体３を得た。

　表面シート５は、第１繊維層５１が発熱体３の対向面を構成し、且つ第２繊維層５２が加熱対象体における当接面を構成するように配置した。また、袋体３ｂにおける透湿シートは、表面シート５と対向するように配置した。
　このように各部材を配置して、上述した各シート５，６の間に、発熱に伴い蒸気を発生するように形成された発熱体３を収容するように接合して、図１ないし図３、及び図５に示す構造を有する温熱具を得た。

　〔実施例２～４〕
　以下の表１に示すように、表面シート５を構成する繊維の種類や構成割合を変更した。具体的には、ＰＥＴ樹脂のみからなる第１繊維と、芯がＰＰ樹脂／鞘がＰＥ樹脂（実施例２）であるか、芯がＰＥＴ樹脂／鞘がＰＥ樹脂（実施例３～４）である第３繊維との混合物をカード機に供給して、第１繊維及び第３繊維の混合繊維ウエブを形成し、これを第１繊維ウエブとした。これ以外は、実施例１と同様にして、２層構造のエアスルー不織布である表面シート５を備える温熱具を得た。
＜実施例２＞
　表面シート層数：２　　
　第１繊維層：繊維径２７μｍの繊維３０％、繊維径２２μｍの繊維７０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。
＜実施例３＞
　表面シート層数：２　　
　第１繊維層：繊維径２７μｍの繊維３０％、繊維径２２μｍの繊維７０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。
＜実施例４＞
　表面シート層数：２　　
　第１繊維層：繊維径２７μｍの繊維５０％、繊維径２２μｍの繊維５０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。

　〔実施例５〕
　以下の表１に示すように、表面シート５を構成する繊維の種類や構成割合を変更した。具体的には、芯がＰＰ樹脂からなり、鞘がＰＥ樹脂からなる芯鞘繊維（各樹脂５０質量％）である第２繊維１００質量％の第２繊維ウエブを用いた以外は、実施例１と同様にして、２層構造のエアスルー不織布である表面シート５を備える温熱具を得た。
　表面シート層数：２
　第１繊維層：繊維径２７μｍの繊維５０％、繊維径２２μｍの繊維５０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。

　〔実施例６〕
　以下の表１に示すように、表面シート５を構成する繊維の種類や構成割合を変更した。具体的には、芯がＰＥＴ樹脂／鞘がＰＥ樹脂からなる第１繊維であり、芯がＰＰ樹脂／鞘がＰＥ樹脂である第３繊維との混合物をカード機に供給して、第１繊維及び第３繊維の混合繊維ウエブを形成し、これを第１繊維ウエブとした。これ以外は、実施例１と同様にして、２層構造のエアスルー不織布である表面シート５を備える温熱具を得た。
＜実施例６＞
　表面シート層数：２　　
　第１繊維層：繊維径２７μｍの繊維５０％、繊維径２２μｍの繊維５０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。

　〔実施例７〕
　以下の表１に示すように、表面シート５を構成する繊維の種類や構成割合を変更し、実施例５とは異なる繊維径を有するＰＥＴ樹脂／ＰＥ樹脂の芯鞘繊維を第１繊維として用い、第１繊維のみからなる単層のエアスルー不織布である表面シート５を用いた以外は、実施例１と同様にして温熱具を得た。
＜実施例７＞
　表面シート層数：１　　
　第１繊維層：繊維径２２μｍの繊維１００％。

　〔実施例８〕
　以下の表１に示すように、芯がＰＥＴ樹脂からなり、鞘がＰＥ樹脂からなる芯鞘繊維（各樹脂５０質量％）である第１繊維（坪量：２０ｇ／ｍ^２）と、芯がＰＰ樹脂からなり鞘がＰＥ樹脂からなる第３繊維（坪量：２０ｇ／ｍ^２）とを混合して、第１繊維ウエブ（総坪量：４０ｇ／ｍ^２）とした。本実施例における第１繊維は、実施例１で用いたものとは異なる繊維径のものを用いた。
　これとは別に、芯がＰＰ樹脂からなり、鞘がＰＥ樹脂からなる芯鞘繊維（各樹脂５０質量％）である第２繊維１００質量％の第２繊維ウエブ（坪量：２０ｇ／ｍ^２）を用いた。
　これらの繊維ウエブを用いた以外は、実施例１と同様にして、２層構造のエアスルー不織布である表面シート５を備える温熱具を得た。
＜実施例８＞
　表面シート層数：２　　
　第１繊維層：繊維径４０μｍの繊維５０％、繊維径２２μｍの繊維５０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。

　〔実施例９〕
　以下の表１に示すように、表面シート５を構成する繊維の種類や構成割合を変更し、ＰＥＴ樹脂のみからの芯鞘繊維である第１繊維のみからなる第１繊維ウエブに対して、ニードルパンチ加工を行い、ニードルパンチ不織布としての単層の表面シート５を得た。これ以外は、実施例１と同様にして温熱具を得た。
＜実施例９＞
　表面シート層数：１　　
　第１繊維層：繊維径１９μｍの繊維１００％。

　〔実施例１０〕
　以下の表１に示すように、表面シート５を構成する繊維の種類や構成割合を変更した。具体的には、ＰＥＴ樹脂のみからなる第１繊維と、芯がＰＰ樹脂／鞘がＰＥ樹脂である第３繊維との混合物をカード機に供給して、第１繊維及び第３繊維の混合繊維ウエブを形成し、これを第１繊維ウエブとした。これ以外は、実施例１と同様にして、２層構造のエアスルー不織布である表面シート５を備える温熱具を得た。
＜実施例１０＞
　表面シート層数：２　　
　第１繊維層：繊維径２７μｍの繊維６０％、繊維径２２μｍの繊維４０％。
　第２繊維層：繊維径１５μｍの繊維１００％。

　〔比較例１〕
　以下の表１に示すように、芯がＰＰ樹脂／鞘がＰＥ樹脂である芯鞘繊維である第１繊維と、ＰＰ樹脂のみからなる第３繊維との混合物から繊維ウエブを作製し、この繊維ウエブに対して、ニードルパンチ加工を行い、ニードルパンチ不織布としての単層の表面シート５を得た。これ以外は、実施例１と同様にして温熱具を得た。
＜比較例１＞
　表面シート層数：１　　
　第１繊維層：繊維径２２μｍの繊維３０％、繊維径１２μｍの繊維７０％。

　〔シート厚み及び厚み増加量の測定〕
　各実施例及び比較例の温熱具において、表面シート５の発熱開始時点の厚みＴ１（ｍｍ）、発熱開始時点から１０分経過後のシート厚みＴ２（ｍｍ）をそれぞれ測定及び算出した。測定環境はいずれも、温度２６℃、相対湿度５０％の室内とした。

　詳細には、各実施例及び比較例の温熱具を包装袋に封入して密封状態としたあと、該包装袋を開封して、温熱具を空気等の酸素含有雰囲気に触れさせる。そして、該温熱具から表面シート５のみを１．５ｃｍ四方の寸法でシートを厚み方向に押圧しないように丁寧に切り出したものを測定サンプルとし、該測定サンプルをシートの断面が９０度上を向くようにデジタルマイクロスコープ（ＶＨＸ－１０００　ＫＥＹＥＮＣＥ社製）の平面上に載せた。この操作を包装袋開封開始から３０秒以内に行った。そして開封開始から３０秒後の時点で前記デジタルマイクロスコープを用いて、シート断面の端から端の長さを３か所以上測定し、その算述平均値を発熱開始時点におけるシート厚みＴ１（ｍｍ）とした。また同様の方法で、１０分経過時の温熱具から表面シート５を上述の寸法で押圧しないように丁寧に切り出したものを各測定サンプルとし、発熱開始時点から１０分経過後のシート厚みＴ２（ｍｍ）とした。
　厚み変化量（Ｔ２－Ｔ１）が小さいほど、使用直後から表面シート５の嵩高さの回復性が高く、温熱具１のフィット性及び使用感が高いことを意味する。結果を以下の表１に示す。

　〔官能評価〕
　各実施例及び比較例の温熱具について、手で触ったとき及び着用中及び使用終了後の表面シートの滑らかな感触と、表面シートの柔軟性、温熱具を両眼を覆うように２０分間装着したときのフィット性とを、専門パネラーによって以下の基準でそれぞれ評価してもらった。各評価における専門パネラーの評価点数の算術平均値を、評価結果として表１に示す。各評価結果の点数が高いほど、肌にあたる表面シートの滑らかさ、柔軟性及びフィット性が高い温熱具であるといえる。

　＜表面シートの滑らかさの評価基準＞
　４点：使用前の触感がとても滑らかであり、使用後まで継続して滑らかであり、使用後も繊維の毛羽立ちが確認されない。
　３点：使用前の触感が滑らかであり、使用中は滑らかさが継続しているが、使用後は繊維の毛羽立ちが若干確認される。
　２点：使用前の触感が滑らかであるが、使用中及び使用後は繊維の毛羽立ちを知覚し、滑らかさが劣る。
　１点：使用前、使用中及び使用後のすべてにおいて繊維の毛羽立ちを知覚し、滑らかさが非常に悪い。

　＜表面シートの柔軟性の評価基準＞
　５点：表面シートが非常に柔らかく、使用直後から使用終了までしっかり密着し、柔軟性及び感触が非常に良好である。
　４点：表面シートが柔らかく、使用直後から使用終了まで密着し、柔軟性及び感触が良好である。
　３点：表面シートが適度な剛性を有し、使用中は温熱を感じる程度に密着して、問題の無い感触である。
　２点：表面シートがやや硬く、剛性が若干悪いが使用時には密着する。
　１点：表面シートがとても硬く、剛性が悪く、使用時の密着性に欠ける。

　＜フィット性の評価基準＞
　５点：温熱具を装着している間、目元及びその近傍にしっかり密着しており、使用終了まで優れたフィット性を有している。
　４点：温熱具を装着している間、目元に密着しており、使用終了まで良好なフィット性を有している。
　３点：温熱具を装着している間、目元及びその近傍に保持され、使用終了まで問題のないフィット性を有している。
　２点：温熱具を装着している間、温熱具と目元とがあまり密着せず、使用終了までフィット性が悪い。
　１点：温熱具を装着している間、温熱具と目元とが全く密着せず、使用終了までフィット性が非常に悪い。

　〔紙粉による生産性評価〕
　実施例及び比較例の温熱具１について、実機にて生産を行った際の紙粉破棄量を専門パネラーが目視で判断した。評価結果の点数が高いほど、生産性が良い温熱具であるといえる。
　＜生産性＞
　３点：生産時紙粉が発生せず、原料の破棄も無く良好な製造環境を維持でき、温熱具への影響もない。
　２点：生産時紙粉が若干発生するが、原料の破棄量は問題の無い程度の製造環境であり、温熱具への影響はない。
　１点：生産時紙粉が発生し、原料の破棄量が多めな製造環境であるが、温熱具への影響はない。

　〔３８℃持続時間及び最高到達温度の評価〕
　実施例及び比較例の温熱具について、３８℃持続時間及び最高到達温度を以下の方法で測定した。３８℃持続時間が長いほど発熱持続性が良好であり、最高到達温度が高いほど発熱特性に優れるものであることを示す。結果を以下の表１に示す。

　まず、室温２０℃、湿度５０％ＲＨの環境下において、酸素遮断袋内に密閉収容した測定対象の温熱具を対象として、酸素遮断袋を開封し、そして、１つの発熱体を袋体に収容された状態で温熱具から取り出す。
　これとは別に、データ収集型温度計（ＬＴ－８、Ｇｒａｍ社製）の温度センサーを着用者の上瞼に装着し、サージカルテープで固定する。その後、表面シート５が温度センサーに接触するようにして、温熱具を装着する。
　そして、温度計の測定器を温度センサーに接続した状態で、温度を経時的に測定する。発熱開始時点を測定開始時点として１０秒間隔で温度を測定し、計６０分間測定を行う。
　縦軸を計測温度（℃）、横軸を計測時間（秒）としてプロットした発熱プロファイルから、３８℃以上の温度が計測された時間の長さを３８℃以上保持時間とした。また同温度プロファイルから計測された最高温度を、最高到達温度とした。

　〔水蒸気発生量の評価〕
　実施例及び比較例の温熱具について、１０分間の水蒸気の総蒸気量を上述の方法で測定した。１０分間の水蒸気の総蒸気量の値が高いほど、発熱特性に優れるとともに、水蒸気発生量が高く、加熱対象体に心地よい温感と潤いとを両立して知覚させることができる温熱具であることを示す。結果を以下の表１に示す。

　表１に示すように、ＰＥＴ樹脂を含む繊維を表面シートの構成繊維として用いた各実施例の温熱具は、比較例の温熱具と比較して、使用直後から表面シートの嵩高さが早期に回復し、柔軟性があり、感触が良く、また使用時のフィット性が高いことが判る。特に、水蒸気が１０ｍｇ／１０分以上発生する構成となった発熱体を用いることによって、温熱付与を良好にすることができるので有利である。
　したがって、本開示の温熱具は、開封後の嵩高さの回復性が良好であり、使用直後から柔軟性と、着用者の身体へのフィット性とが両立して優れていることが判る。

　本開示の好適な態様である実施例８の温熱具は、実施例４及び５のものと比較して、表面シートの滑らかさ及び柔軟性、並びに温熱具のフィット性が同等のレベルで優れたものとしつつ、紙粉の発生が低減されたものとなっている。これは、実施例８で用いた第１繊維が、ＰＥＴ樹脂よりも融点が低いＰＥ樹脂を含むことによって、エアスルー処理等の熱によってＰＥ樹脂が溶融して構成繊維どうしの融着点がより多く形成される。その結果、第１繊維を含む構成繊維の脱落や剥離が効果的に低減されたためと考えられる。
　また、紙粉の発生が低減することは、温熱具の製造時において、紙粉の発生や付着に起因する原料の品質低下を防止して、製造時に要求される品質を満たさない原料の意図しない破棄量を低減することができる。その結果、本発明の温熱具は、その製造時において、製造コストの低減及び生産性の向上に配慮されたものとなり、また廃棄物の低減に起因する環境負荷の低減を達成できる点で有利である。これに加えて、紙粉の発生や付着に起因する製造装置や製造環境の汚染や、これに伴うメンテナンスや清掃に要する手間やコストを低減できる点でも有利である。
　更に、本開示の最も好適な態様である実施例１０の温熱具は、実施例８のものと比較して、表面シートの柔軟性が同等のレベルで優れたものとしつつ、表面シートの滑らかさ、温熱具のフィット性、並びに紙粉発生による生産性が特に優れたものとなっている。この理由は、実施例８で用いた第１繊維がＰＥＴ樹脂及びＰＥ樹脂を含むのに対して、実施例１０で用いた第１繊維がＰＥＴ樹脂のみを含むことによって、温熱具の圧縮状態を解除したときに、表面シートの嵩高さが容易に回復し、好適な厚みが十分に維持されたからであると考えられる。

　本発明によれば、開封後の嵩高さの回復性が良好であり、使用直後からフィット性及び使用感が高い温熱具が提供される。

Claims

　使用者の肌に近い側に位置する表面シートと、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シートと、該表面シートと該裏面シートとの間に保持されている発熱体とを備え、
　前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含み、
　前記発熱体は、発熱に伴って該発熱体自体から蒸気を発生するように構成されており、
　前記表面シートは、ポリエチレンテレフタレート樹脂を少なくとも含有する繊維を含む通気性の繊維シートから構成されており、
　前記表面シートは、その平面視において走査型電子顕微鏡観察によって測定される繊維径が１５μｍ超である第１繊維を含む、温熱具。
　前記表面シートは、第１繊維層と第２繊維層とを含む複層構造であり、
　前記いずれか一つの繊維層にのみ第１繊維が含まれており、
　第１繊維とは繊維径が異なる繊維が、第１繊維が含まれていない繊維層に含まれている、請求項１に記載の温熱具。
　第１繊維層は、前記第１繊維を含み、
　第２繊維層は、繊維径が前記第１繊維よりも細く且つ該繊維径が６μｍ以上３０μｍ以下の第２繊維を含む、請求項２に記載の温熱具。
　第１繊維層は、使用時において使用者の肌から遠い側の面に配されており、
　第２繊維層は、使用時における肌当接面に配されている、請求項２又は３に記載の温熱具。
　第１繊維層は、第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太い第３繊維を更に含む、請求項２～４のいずれか一項に記載の温熱具。
　第１繊維層はポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレン樹脂を含む第１繊維を含む、請求項２～５のいずれか一項に記載の温熱具。
　第１繊維が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含み、且つその繊維径が１５μｍ超６０μｍ以下である、請求項２～６のいずれか一項に記載の温熱具。
　第２繊維が、ポリエチレン樹脂を含み、且つその繊維径が６μｍ以上であり３０μｍ以下である、請求項２～７のいずれか一項に記載の温熱具。
　第３繊維が、ポリエチレンフタレート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含み、且つその繊維径が第１繊維の繊維径よりも細く且つ第２繊維の繊維径よりも太い、請求項２～８のいずれか一項に記載の温熱具。
　第２繊維層の繊維密度が２００本／ｃｍ^２以上１５００本／ｃｍ^２以下である、請求項２～９のいずれか一項に記載の温熱具。
　前記表面シートは、構成繊維どうしが融着及び絡合のうち少なくとも一種によってシート形態が維持された繊維シートであり、
　前記構成繊維どうしが互いに接触した接触部を有する、請求項１～１０のいずれか一項に記載の温熱具。
　前記温熱具の発熱開始時点における前記表面シートの厚みが、１．８ｍｍ以上６．０ｍｍ以下である、請求項１～１１のいずれか一項に記載の温熱具。