WO2022097324A1

WO2022097324A1 - 板ガラスの製造方法、その製造装置及び板ガラス

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Publication number: WO2022097324A1
Application number: PCT/JP2021/023505
Authority: WO
Inventors: 康之三宅; 清伸平川
Original assignee: 日本電気硝子株式会社
Priority date: 2020-11-06
Filing date: 2021-06-22
Publication date: 2022-05-12
Also published as: JPWO2022097324A1; CN116261507A; KR20230098772A

Abstract

板ガラスＧの製造方法は、第一領域Ｇ１と第二領域Ｇ２とが幅方向に隣接して配列され、且つ、それら領域Ｇ１、Ｇ２の境界部の表面Ｇａ、Ｇｘ側にスクライブ線Ｓが形成された縦姿勢の板ガラスＧにつき、第一領域Ｇ１を裏面Ｇｂ側から裏面支持部材３により接触支持させた状態で、第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう力を作用させて、板ガラスＧをスクライブ線Ｓに沿って折り割り、第二領域Ｇ２を切り出す折割工程を備える。折割工程では、第一領域Ｇ１と裏面支持部材３とを接触させることで、スクライブ線Ｓの形成領域Ｇｓに表面Ｇａ、Ｇｘ側が凸になる上下方向に沿う湾曲部Ｇｗｓを形成する。

Description

板ガラスの製造方法、その製造装置及び板ガラス

　本発明は、板ガラスをスクライブ線に沿って折り割る技術を含む板ガラスの製造技術の改良に関する。

　周知のように、板ガラスは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ＥＬディスプレイ等のディスプレイ用のガラス基板や、有機ＥＬ照明用のカバーガラスなどに代表されるように各種分野で利用されている。この種の板ガラスを製造する際には、ガラスリボンから所定長さの板ガラスを順々に切り出す工程や、板ガラスの辺に沿う不要領域を除去する工程などが実行される。これらの工程では、ガラスリボンや板ガラスにスクライブ線を形成した後、それらをスクライブ線に沿って折り割ることで所望の板ガラスを得ることができる。

　折り割りにより板ガラスを得る方法の具体例としては、特許文献１に開示された方法が挙げられる。同文献に開示の方法は、板ガラスの幅方向に隣接して配列された第一領域と第二領域との境界部の表面側にスクライブ線を形成し、第一領域を裏面側から裏面支持部材により接触支持させた状態で、第二領域を転動体で裏面側に押し込む。これにより、板ガラスをスクライブ線に沿って折り割り、第二領域を切り出すものである。この時の折り割りは、板ガラスを縦姿勢で支持して行われる。

特開２０１７－２２６５４９号公報

　特許文献１に開示のように、板ガラスを縦姿勢で支持すると、縦方向の反りが発生する場合がある。この反りの発生は、近年における板ガラス（例えばディスプレイ等に用いられる板ガラス）の薄肉化に伴って顕著になる。特許文献１に開示の手法では、この種の板ガラスを折り割る際に以下に示すような問題が生じる。

　すなわち、板ガラスに発生する縦方向の反りの形状は一様でないため、板ガラスの第一領域を裏面側から裏面支持部材により接触支持させた際には、両者の接触状態が上下方向で一様に定まらない。この接触状態の影響を受けて、スクライブ線の形成領域の形状も上下方向で一様に定まらない。そのため、前記両者を接触させて第二領域を裏面側に押し込む過程では、スクライブ線の形成領域に適正な曲げ応力を一様に作用させることが困難になる。その結果、板ガラスを折り割った際にチッピングや割れ等が発生しやすくなる。

　以上の観点から、本発明は、裏面支持部材を用いて縦姿勢の板ガラスを折り割る際にスクライブ線の形成領域に適正な曲げ応力が一様に作用するようにして、チッピングや割れ等の発生を抑止することを課題とする。

　上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、第一領域と第二領域とが幅方向に隣接して配列され、且つ、それら領域の境界部の表面側にスクライブ線が形成された縦姿勢の板ガラスにつき、前記第一領域を裏面側から裏面支持部材により接触支持させた状態で、前記第二領域に裏面側に向かう力を作用させることで、前記板ガラスを前記スクライブ線に沿って折り割り、前記第二領域を切り出す折割工程を備えた板ガラスの製造方法であって、前記折割工程では、前記第一領域と前記裏面支持部材とを接触させることで、前記スクライブ線の形成領域に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成することに特徴づけられる。

　ここで、スクライブ線の形成領域（以下、スクライブ線形成領域という）とは、板ガラスにおけるスクライブ線が形成された部位及びその周辺領域を意味し、例えば、スクライブ線から幅方向両側にそれぞれ５０～１００ｍｍだけ離れた両部位の相互間の領域を意味する（以下、同様）。

　この方法によれば、折割工程で縦姿勢の板ガラスを折り割る際には、第一領域と裏面支持部材とを接触させることで、スクライブ線形成領域に強制的に湾曲部が形成される。具体的には、スクライブ線形成領域に、表面側が凸になるように上下方向に沿って湾曲する湾曲部が強制的に形成される。この強制的な湾曲部の形成によって、折り割りを行う際のスクライブ線形成領域の形状は一様に定まる。そして、スクライブ線形成領域に上述の湾曲部を形成した状態で、第二領域に裏面側に向かう力を作用させた場合には、スクライブ線形成領域の湾曲部の頂部周辺に他の部位よりも大きな曲げ応力が一様に作用する。これにより、板ガラスの折り割り時に、スクライブ線にクラックを発生させ且つそのクラックを伸展させる動作を適正に行わせることができる。その結果、板ガラスを折り割った際の割断位置のズレや割断不良等が生じ難くなり、チッピングや割れ等の発生が抑止される。

　この方法において、前記裏面支持部材は、前記スクライブ線形成領域の上下方向中間部に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成するための中間凸部を有するようにしてもよい。

　このようにすれば、第一領域と裏面支持部材とを接触させた際には、裏面支持部材の中間凸部の存在によって、スクライブ線形成領域の上下方向中間部に、表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部が形成される。この状態で、第二領域に裏面側に向かう力を作用させた場合には、スクライブ線形成領域の上下方向中間部に他の部位よりも大きな曲げ応力を作用させることができる。その結果、板ガラスの折り割り時には、スクライブ線の上下方向中間部にクラックを発生させ且つそのクラックを上下両側に向かって適正に伸展させることができる。これにより、チッピングや割れ等の発生をより一層確実に抑止できる。

　この方法において、前記中間凸部は、上下方向の中央部から両端側に向かって突出する長さが漸次短くなるように湾曲していてもよい。

　このようにすれば、中間凸部の形状が滑らかに湾曲した形状になるため、第一領域と裏面支持部材とを接触させた場合にスクライブ線形成領域の上下方向中間部に形成される湾曲部も滑らかに湾曲した形状になる。そのため、より一層適正に板ガラスの折り割りを行うことが可能となる。

　この方法において、前記中間凸部は、前記第一領域の上端部を保持する保持部材と上下方向で重複しない位置に配設されるようにしてもよい。

　このようにすれば、第一領域の上端部周辺に不当な応力が作用することを抑止できる。詳述すると、第一領域の上端部は、保持部材により保持されることで平面状部になる場合がある。この場合に、仮に中間凸部と保持部材とが上下方向で重複する位置関係にあると、第一領域の上下方向中間部の湾曲部と、上述の平面状部とが干渉するため、第一領域の上端部周辺にねじれ等を生じさせる不当な応力が作用し得る。ここでの構成によれば、そのような不具合を回避できる。

　以上の方法において、前記折割工程では、前記第一領域の表面側に配置された押え部材が、前記第一領域を前記裏面支持部材に押し付けるようにしてもよい。

　このようにすれば、第一領域は、押え部材と裏面支持部材とによって挟持されることになるため、スクライブ線形成領域に湾曲部を形成する際に板ガラスに揺れが生じることを抑止できる。これにより、第一領域と裏面支持部材との接触状態を安定させることができる。

　この方法において、前記押え部材は、前記スクライブ線形成領域の上端部に平面状部を形成するための上側凸部を有するようにしてもよい。

　このようにすれば、押え部材が第一領域を裏面支持部材に押し付けた際には、押え部材の上側凸部によって、スクライブ線形成領域の上端部に平面状部が形成される。これにより、押さえ部材による押し付けが確実なものとなる。その結果、第一領域と裏面支持部材との接触状態をより一層確実に安定させることができる。

　この方法において、前記上側凸部は、前記第一領域の上端部を保持する保持部材と上下方向で重複する位置に配設されていてもよい。

　このようにすれば、押え部材の上側凸部と裏面支持部材との挟持によって第一領域に形成される平面状部と、保持部材による保持によって第一領域に形成される平面状部とを、第一領域の上端部で幅方向に沿って配列させることができる。その結果、第一領域の上端部周辺に不当な応力が作用することをより一層確実に抑止できる。

　この方法において、前記裏面支持部材は、前記スクライブ線形成領域の上下方向中間部に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成するための中間凸部を有し、前記上側凸部は、前記中間凸部と上下方向で重複しない位置に配設されるようにしてもよい。

　このようにすれば、押え部材の上側凸部と裏面支持部材との挟持によって第一領域の上端部に形成される平面状部と、裏面支持部材の中間凸部と押え部材との挟持によって第一領域の上下方向中間部に形成される湾曲部とが干渉することを回避できる。その結果、第一領域の上端部と上下方向中間部との相互間周辺に不当な応力が作用することを抑止できる。

　この方法において、前記押え部材は、前記スクライブ線形成領域の下端部に平面状部を形成するための下側凸部を有するようにしてもよい。

　このようにすれば、押え部材が第一領域を裏面支持部材に押し付ける際には、押え部材の下側凸部によって、スクライブ線形成領域の下端部に平面状部が形成される。これにより、押さえ部材による押し付けが確実なものとなる。その結果、第一領域と裏面支持部材との接触状態をより一層確実に安定させることができる。

　この方法において、前記裏面支持部材は、前記スクライブ線形成領域の上下方向中間部に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成するための中間凸部を有し、前記下側凸部は、前記中間凸部と上下方向で重複しない位置に配設されるようにしてもよい。

　このようにすれば、押え部材の下側凸部と裏面支持部材との挟持によって第一領域の下端部に形成される平面状部と、裏面支持部材の中間凸部と押え部材との挟持によって第一領域の上下方向中間部に形成される湾曲部とが干渉することを回避できる。その結果、第一領域の下端部と上下方向中間部との相互間周辺に不当な応力が作用することを抑止できる。

　上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、第一領域と第二領域とが幅方向に隣接して配列され、且つ、それら領域の境界部の表面側にスクライブ線が形成された縦姿勢の板ガラスにつき、前記第一領域を裏面側から裏面支持部材により接触支持させた状態で、前記第二領域に裏面側に向かう力を作用させることで、前記板ガラスを前記スクライブ線に沿って折り割り、前記第二領域を切り出す構成とされた折割装置を備える板ガラスの製造装置であって、前記折割装置は、前記第一領域と前記裏面支持部材とを接触させることで、前記スクライブ線形成領域に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成する構成とされることに特徴づけられる。

　これによれば、この製造装置と実質的に構成が同一である既述の製造方法と同一の作用効果を得ることができる。

　上記課題を解決するために創案された本発明の第三の側面は、第一の方向に延びる２つの第一辺と、前記第一の方向と異なる方向に延びる２つの第二辺とを有する矩形状の板ガラスであって、表面および／または裏面に前記第一の方向に延びる複数のスジを有し、少なくとも１つの前記第一辺における一方の端部から他方の端部に向かってその全長の２５％以上で７５％以下の範囲内に、クラックオリジンを有することに特徴づけられる。ここで、クラックオリジンとは、クラックの破壊起点をいう。

　このような構成によれば、板ガラスの当該辺の長手方向中央部の所定範囲内にクラックオリジンが存在しているため、板ガラスの切断時にクラックが板ガラスの長手方向中央部から長手方向両端部に向かって進展したことになる。すなわち、板ガラスの辺の長手方向中央部にクラックが進展する起点（クラックオリジン）が形成され、この起点を開始点としてクラックが長手方向両端部に向かって円滑に進展したことになる。そのため、この板ガラスは、適正に割断されていることになり、割断不良等に起因する板ガラスへのガラス粉の付着なども阻止されており、高い品位を備えていることになる。

　本発明によれば、裏面支持部材を用いて縦姿勢の板ガラスを折り割る際にスクライブ線形成領域に適正な曲げ応力を一様に作用させることが可能となり、チッピングや割れ等の発生が抑止される。

本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の要部を示す斜視図である。図１のＢ－Ｂ線に従って切断した縦断側面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の作用を示す斜視図である。図３のＣ－Ｃ線に従って切断した縦断側面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の要部を示す縦断側面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置を用いて板ガラスを折り割る手順を時系列で示す要部横断下面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置を用いて板ガラスを折り割る手順を時系列で示す要部横断下面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置を用いて板ガラスを折り割る手順を時系列で示す要部横断下面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の全体構成を示す要部横断下面図である。本発明の実施形態に係る板ガラスの概略斜視図である。

　以下、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法及び製造装置並びに板ガラスについて添付図面を参照しつつ説明する。

　図１は、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる折割装置１を例示している。同図に示すように、板ガラスＧは、幅方向に隣接して配列された第一領域Ｇ１と第二領域Ｇ２とを有する。この実施形態では、第一領域Ｇ１は、板ガラスＧの製品になる領域であり且つ全域にわたって板厚が均等である。第二領域Ｇ２は、板ガラスＧから切り出されて廃棄される領域であり且つ幅方向外端部（図例では左端部）に第一領域Ｇ１よりも板厚が厚い耳部Ｇｅを有する。第一領域Ｇ１と第二領域Ｇ２との境界部の表面Ｇａ、Ｇｘ側には、スクライブ線Ｓが形成されている。図例では、スクライブ線Ｓは、板ガラスＧの上端及び下端に到達していない。なお、スクライブ線Ｓは、それら上端及び下端に到達していてもよい。以下の説明では、便宜上、第一領域Ｇ１を有効領域といい、第二領域Ｇ２を不要領域という。また、図示しないが、上下方向に延びる多数のスジが板ガラスＧの表面Ｇａ、Ｇｘおよび／または裏面Ｇｂ、Ｇｙに形成されている。なお、これらのスジは、例えばオーバーフロー法により板ガラスＧを製造した場合、板引き方向に沿って形成される。また、これらのスジは、暗室で板ガラスＧの角度を調整しながら光源（例えばキセノンライト）から光を照射し、その透過光をスクリーンに投影することで、筋状の縞模様として観測できる。

　板ガラスＧは、スクライブ線Ｓが上下方向を向くように縦姿勢で吊り下げ支持されている。板ガラスＧの板厚（耳部Ｇｅを除く領域の板厚）は、例えば、５０～２０００μｍとされるが、この板厚の上限値は、好ましくは５００μｍであり、より好ましくは４００μｍである。この実施形態では、板ガラスＧは可撓性を有する。板ガラスＧには、縦方向の反りが発生している。反りの具体的な形状は、板ガラスＧの表面Ｇａ、Ｇｘにおけるスクライブ線Ｓ及びこれと平行な任意の仮想直線が湾曲する形状である。また、板ガラスＧに発生する縦方向の反りの形状は一様でなく、ランダムな形状となる。

　折割装置１は、不要領域Ｇ２を除去するために板ガラスＧをスクライブ線Ｓに沿って折り割るものである。詳述すると、折割装置１は、有効領域Ｇ１の上端部を把持する把持機構２と、有効領域Ｇ１の裏面Ｇｂ側に配置された裏面支持部材３と、有効領域Ｇ１の表面Ｇａ側で裏面支持部材３と対向して配置された押え部材４と、不要領域Ｇ２の裏面Ｇｙ側に配置された吸着機構５と、不要領域Ｇ２の表面Ｇｘ側で吸着機構５と対向して配置された押込部材６とを備える。

　把持機構２は、一対の把持片２ａと、この一対の把持片２ａを互いに接近及び離反させる駆動部２ｂとを有する。駆動部２ｂの構成は、図示例のものに限定されない。一対の把持片２ａは、互いに接近して閉状態になることで有効領域Ｇ１の上端部を把持し、互いに離反して開状態になることで有効領域Ｇ１の上端部の把持を解除する。なお、一対の把持片２ａは、開脚することで開状態になり、閉脚することで閉状態になる構成であってもよい。ここで、開脚とは、一対の把持片２ａが支点（支軸）の廻りに開く方向に回転することであり、閉脚とは、一対の把持片２ａが支点（支軸）の廻りに閉じる方向に回転することである。

　把持機構２は、板ガラスＧの上方を幅方向に沿って延びるレール（図示略）にスライド可能に保持され、板ガラスＧを折り割り位置に搬送する役割を果たす。折り割り位置で板ガラスＧを折り割る際には、把持機構２は、有効領域Ｇ１の上端部を把持したままで停止した状態になる。この場合、板ガラスＧの下端部は、保持されずに開放されている。なお、把持機構２は、有効領域Ｇ１の上端部における幅方向の複数箇所（この実施形態では二箇所（一箇所は図示略））を把持している。

　裏面支持部材３は、板ガラスＧの折り割り時に有効領域Ｇ１を裏面Ｇｂ側から接触支持するものであり、有効領域Ｇ１のスクライブ線Ｓ側の端部に配置されている。裏面支持部材３は、エアシリンダ等の流体圧シリンダやボールねじ機構或いはロボットアーム等の駆動手段（図示略）の動作によって、有効領域Ｇ１の裏面Ｇｂに対して接近移動及び離反移動する。裏面支持部材３は、上下方向に長尺な柱状体または板状体（定盤）である。裏面支持部材３とスクライブ線Ｓとの幅方向の離間距離（裏面支持部材３が有効領域Ｇ１に接触した場合の離間距離）は、例えば１０～３０ｍｍであり、好ましくは１０～２０ｍｍである。図例では、裏面支持部材３は、有効領域Ｇ１の上端及び下端から延び出しているが、それら上端及び下端から延び出していなくてもよい。

　押え部材４は、板ガラスＧの折り割り時に有効領域Ｇ１を裏面支持部材３に押し付けるものである。押え部材４は、エアシリンダ等の流体圧シリンダやボールねじ機構或いはロボットアーム等の駆動手段（図示略）の動作によって、有効領域Ｇ１の表面Ｇａに対して接近移動及び離反移動する。この実施形態では、押え部材４は、上下方向に長尺な柱状体または板状体である。なお、押え部材４の上下方向の長さは、裏面支持部材３についての既述の事項と同一である。

　吸着機構５は、上下方向に長尺な保持基体５ａと、保持基体５ａの上端部及び下端部にそれぞれ取り付けられた吸着パッド５ｂとを備える。保持基体５ａは、ロボットアーム等の駆動手段（図示略）の動作によって回転（例えば矢印Ａ方に回転）する。吸着パッド５ｂは、不要領域Ｇ２の裏面Ｇｙを負圧により吸着保持するものであり且つ伸縮可能なゴムや樹脂等の弾性部材で形成されている。上側の吸着パッド５ｂは、有効領域Ｇ１の上端部を把持する把持片２ａと同程度の高さ位置に配設されている。下側の吸着パッド５ｂは、板ガラスＧの上下方向中央を基準に、上側の吸着パッド５ｂと同程度の長さだけ離れた下側の位置に配設されている。吸着パッド５ｂは、保持基体５ａの上下方向に三個以上配列されていてもよいが、実質的に不要領域Ｇ２の裏面Ｇｙの吸着保持に使用されるのは、図例と同一の位置に配列される二個の吸着パッドである。

　押込部材６は、不要領域Ｇ２の表面Ｇｘに接触する平面部６ａ（図５参照）を有しており、この実施形態では上下方向に長尺な板状をなす。押込部材６は、ロボットアーム等の駆動手段（図示略）の動作によって回転（例えば矢印Ａ方に回転）することで、不要領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう押込み力を作用させる。図例では、押込部材６は、不要領域Ｇ２の上端及び下端から延び出しているが、それら上端及び下端から延び出していなくてもよい。

　図２は、図１のＢ－Ｂ線に従って切断した縦断側面図である。同図に示すように、裏面支持部材３は、板ガラスＧ（有効領域Ｇ１）の裏面Ｇｂと対向する対向部位３ｘの上下方向中央部に中間凸部７を有する。詳述すると、裏面支持部材３は、柱状または板状の支持基材３ｙを有する。支持基材３ｙの表面部には、表面が湾曲形状をなす中間凸部７が固設されている。中間凸部７は、上下方向の中央側から両端側にかけて突出する長さがそれぞれ漸次短くなるように滑らかに湾曲している。中間凸部７は、スクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部に、表面Ｇａ、Ｇｘ側が凸になる上下方向に沿う湾曲部Ｇｗ（詳細は後述する）を形成する役割を果たす。

　中間凸部７の上下方向長さは、板ガラスＧの上下方向長さの１／４～３／４である。中間凸部７は、有効領域Ｇ１の上端部を把持する把持片２ａと上下方向で重複しない位置に配設されている。すなわち、中間凸部７の上端７ｘは、把持片２ａの下端２ｙよりも下方に位置している。中間凸部７の下端７ｙは、板ガラスＧの上下方向中央を基準に、中間凸部７の上端７ｘと同程度の長さだけ下側に離れて位置している。中間凸部７は、板ガラスＧ及び支持基材３ｙよりも軟質で且つ弾力性または緩衝性に優れており、例えば、プラスチック段ボールやパロニアに代表される多孔質樹脂もしくは発泡樹脂、またはＦＣナイロンなどで形成されている。支持基材３ｙ及び中間凸部７の表面には、それらを覆う一枚の覆設シート８が貼り付けられている。この覆設シート８は、中間凸部７よりも軟質であり、例えば、スポンジ或いは低反発スポンジに代表される多孔質樹脂もしくは発泡樹脂などで形成されている。

　押え部材４は、板ガラスＧ（有効領域Ｇ１）の表面Ｇａと対向する対向部位４ｘの上端部に上側凸部９を有し、その対向部位４ｘの下端部に下側凸部１０を有する。詳述すると、押え部材４は、柱状または板状の支持基材４ｙを有する。支持基材４ｙの表面部の上下二箇所には、上側凸部９及び下側凸部１０が固設されている。上側凸部９及び下側凸部１０は、何れも、支持基材４ｙの上下方向の中央側から両端側に向かって突出する長さが漸次長くなる楔状をなしている。上側凸部９及び下側凸部１０は、スクライブ線形成領域ＧＳの上端部及び下端部にそれぞれ上側平面状部Ｇｃｓ及び下側平面状部Ｇｄｓ（詳細は後述する）を形成する役割を果たす。

　上側凸部９及び下側凸部１０は、何れも、裏面支持部材３の中間凸部７と上下方向で重複しない位置に配設されている。すなわち、上側凸部９の下端９ｙは、中間凸部７の上端７ｘよりも上方に位置し、且つ、下側凸部１０の上端１０ｘは、中間凸部７の下端７ｙよりも下方に位置している。また、上側凸部９は、有効領域Ｇ１の上端部を把持している把持片２ａと上下方向で重複する位置に配設されている。すなわち、上側凸部９の上端９ｘは、把持片２ａの上端２ｘよりも上方に位置し、且つ、上側凸部９の下端９ｙは、把持片２ａの下端２ｙよりも下方に位置している。なお、上側凸部９は、把持片２ａと上下方向の一部のみで重複する位置に配設されていてもよい。この実施形態では、上側凸部９の上端９ｘ及び下側凸部１０の下端１０ｙは、板ガラスＧの上端及び下端とそれぞれ同一の高さ位置に存在しているが、これらの凸部９、１０は、板ガラスＧの上端及び下端からそれぞれ食み出していてもよく、食み出していなくてもよい。上側凸部９及び下側凸部１０は、何れも、板ガラスＧ及び支持基材４ｙよりも軟質で且つ弾力性または緩衝性に優れており、例えば、プラスチック段ボールやパロニア（登録商標）に代表される多孔質樹脂もしくは発泡樹脂、またはＦＣナイロンなどで形成されている。支持基材４ｙ、上側凸部９及び下側凸部１０の表面には、それらを覆う一枚の覆設シート１１が貼り付けられている。この覆設シート１１は、上側凸部９及び下側凸部１０よりも軟質であり、例えば、スポンジ或いは低反発スポンジに代表される多孔質樹脂もしくは発泡樹脂などで形成されている。

　次に、以上のように構成された製造装置を用いた板ガラスの製造方法を説明する。

　まず、図１に示す位置よりも上流側の工程において、板ガラスＧを把持機構２により吊り下げ支持した状態で、ホイールカッターによる押圧やレーザーの照射等により、板ガラスＧにスクライブ線Ｓを形成する。詳しくは、板ガラスＧの有効領域Ｇ１と不要領域Ｇ２との境界部の表面Ｇａ、Ｇｘ側にスクライブ線Ｓを形成する。次に、スクライブ線Ｓが形成された板ガラスＧを把持機構２により吊り下げ支持した状態のまま幅方向に搬送することで、板ガラスＧを図１に示す折り割り位置に到達させる。この時点では、押え部材４及び裏面支持部材３は、有効領域Ｇ１の表面Ｇａ及び裏面Ｇｂからそれぞれ離れており、押込部材６及び吸着機構５も、不要領域Ｇ２の表面Ｇｘ及び裏面Ｇｙからそれぞれ離れている。この状態の下では、板ガラスＧに縦方向の反りが発生している。

　この後、裏面支持部材３が有効領域Ｇ１に向かって移動すると共に、押え部材４も有効領域Ｇ１に向かって移動する。この両者３、４の移動が完了した時点で、押え部材４が有効領域Ｇ１を裏面支持部材３に押し付ける。これにより、図３に示すように、有効領域Ｇ１の押し付けられた部位（以下、押し付け部位という）に湾曲部Ｇｗが形成され（詳細は図４参照）、これに伴ってスクライブ線形成領域Ｇｓにも湾曲部Ｇｗｓが形成される。詳しくは、押し付け部位及びスクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部に、表面Ｇａ、Ｇｘ側が凸になる上下方向に沿う湾曲部Ｇｗ、Ｇｗｓがそれぞれ形成される。この実施形態では、不要領域Ｇ２の上下方向中央部にも同様の湾曲部Ｇｗｔが形成され、さらには有効領域Ｇ１の把持片２ａによる把持部の周辺領域の上下方向中央部にも同様の湾曲部Ｇｗｕが形成される。加えて、押え部材４が有効領域Ｇ１を裏面支持部材３に押し付けた場合には、押し付け部位の上端部及び下端部にそれぞれ上側平面状部Ｇｃ及び下側平面状部Ｇｄが形成され（詳細は図４参照）、これに伴ってスクライブ線形成領域Ｇｓの上端部及び下端部にもそれぞれ上側平面状部Ｇｃｓ及び下側平面状部Ｇｄｓが形成される。この実施形態では、不要領域Ｇ２の上端部及び下端部にもそれぞれ同様の上側平面状部Ｇｃｔ及び下側平面状部Ｇｄｔが形成され、さらには有効領域Ｇ１の把持片２ａによる把持部の周辺領域の上端部及び下端部にもそれぞれ同様の上側平面状部Ｇｃｕ及び下側平面状部Ｇｄｕが形成される。

　図４は、図３のＣ－Ｃ線に従って切断した縦断側面である。同図に示すように、有効領域Ｇ１（押し付け部位）の上下方向中央部には、中間凸部７との接触によって、湾曲部Ｇｗが形成される。詳述すると、湾曲部Ｇｗは、上下方向中央から両端側に向かって表面Ｇａ側への凸の度合いが漸次小さくなるように滑らかに湾曲している。これに伴って、有効領域Ｇ１の上下方向中央部に発生していた縦方向の反りが消え失せる。また、有効領域Ｇ１の上端部及び下端部には、上側凸部９及び下側凸部１０との接触によって、上側平面状部Ｇｃ及び下側平面状部Ｇｄがそれぞれ形成される。これに伴って、有効領域Ｇ１の上端部及び下端部に発生していた反りも消え失せる。この場合、上側平面状部Ｇｃの下端は、把持片２ａの下端２ｙと同程度の高さ位置に存在している。なお、同図に示すように、有効領域Ｇ１が、裏面支持部材３と押え部材４との間に挟持された状態の下では、中間凸部７は僅かに圧縮変形するだけであるのに対し、上側凸部９、下側凸部１０及び覆設シート８、１１は大きく圧縮変形する。

　この状態の下で、吸着機構５が不要領域Ｇ２に向かって移動すると共に、押込部材６も不要領域Ｇ２に向かって移動する。この両者５、６の移動が完了した時点で、図５に示すように、吸着機構５の二つの吸着パッド５ｂが不要領域Ｇ２の裏面Ｇｙを吸着保持すると共に、押込部材６が不要領域Ｇ２の表面Ｇｘに接触する。この場合、二つの吸着パッド５ｂは、不要領域Ｇ２の上側平面状部Ｇｃｔ及び下側平面状部Ｇｄｔを吸着保持する。押込部材６は、不要領域Ｇ２の上下方向中央部に形成されている湾曲部Ｇｗｔの頂部周辺に接触する。

　図６ａ、図６ｂ及び図６ｃは、この後に板ガラスＧを折り割る手順を示すものであって、これら各図は何れも、折割装置１の要部及び板ガラスＧの要部を下方より視た横断下面図である。図６ａは、折割工程の初期段階における態様を示し、板ガラスＧのスクライブ線形成領域Ｇｓ及び不要領域Ｇ２は、強制的に既述の形状とされている。この状態から、図６ｂに示すように、吸着機構５及び押込部材６を矢印Ａ方向に回転させることで、押込部材６が、不要領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう押し込み力を作用させる。これにより、不要領域Ｇ２は、裏面支持部材３を支点として裏面Ｇｙ側に曲げられていく。なお、吸着機構５は、不要領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう引き込み力を実質的に作用させない。この過程で、スクライブ線形成領域Ｇｓに幅方向の湾曲変形が生じ、これに起因してスクライブ線形成領域Ｇｓに曲げ応力が作用する。この段階では、スクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部に湾曲部Ｇｗが形成されている。そのため、スクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部に最も大きな曲げ応力が作用している。この後、吸着機構５及び押込部材６のさらなる回転に伴い、スクライブ線形成領域Ｇｓに作用する曲げ応力が十分に大きくなった時点で、図６ｃに示すように、板ガラスＧがスクライブ線Ｓに沿って折り割られる。板ガラスＧが折り割られて不要領域Ｇ２が切り出された後は、不要領域Ｇ２は把持機構２により把持された状態で退避位置まで搬送され、その後、把持機構２による把持が解除されて落下回収される。

　以上の折割装置１及び折割工程では、板ガラスＧの幅方向一端部の不要領域Ｇ２を対象にして説明したが、不要領域Ｇ２は、板ガラスＧの幅方向両端部にそれぞれ形成されるのが通例である。この板ガラスＧに対して不要領域Ｇ２を除去するための折り割りを行うには、以下に示すような構成が採用される。すなわち、図７に示すように、この板ガラスＧは、幅方向中央側領域が有効領域Ｇ１で且つその幅方向両側が不要領域Ｇ２である。有効領域Ｇ１と各不要領域Ｇ２との二つの境界部には、スクライブ線Ｓがそれぞれ形成されている。この二本のスクライブ線Ｓに沿う板ガラスＧの折り割りは、各不要領域Ｇ２にそれぞれ対応して配置された折割装置１によって行われる。この二つの折割装置１は、何れも、有効領域Ｇ１の表面Ｇａ側及び裏面Ｇｂ側にそれぞれ配置される押え部材４及び裏面支持部材３と、不要領域Ｇ２の表面Ｇｘ側及び裏面Ｇｙ側にそれぞれ配置される押込部材６及び吸着機構５とを有する。押込部材６及び吸着機構５は、二箇所の何れもが、矢印Ａ方向に回転する構成とされる。二つの折割装置１の詳細な構成は、既述の折割装置１と同一である。この場合、二つの折割装置１による折り割りは同時に行われてもよく、或いは一方の折割装置１による折り割りが完了した後に他方の折割装置１による折り割りが行われてもよい。また、これとは別に、一方の折割装置１と他方の折割装置１とを、板ガラスＧの幅方向の長さよりも長い距離を隔てて配置し、一方の不要領域Ｇ２を一方の折割装置１により折り割って除去した後、板ガラスＧを幅方向に移動させ、然る後、他方の不要領域Ｇ２を他方の折割装置１により折り割って除去するようにしてもよい。さらに、これとは別に、折割装置１を１つとして、一方の不要領域Ｇ２を当該折割装置１により折り割って除去した後、板ガラスＧを平面視で１８０度回転させ、然る後、他方の不要領域Ｇ２を当該折割り装置１により折り割って除去するようにしてもよい。

　図８は、このような動作によって切り出された矩形状の板ガラスＧ（有効領域Ｇ１）を示す斜視図である。同図に示すように、板ガラスＧは、第一の方向に延びる２つの辺１２ｘと、第一の方向と異なる方向（図例では第一の方向と直交する方向）に延びる２つの辺１２ｙとを有する。これら４つの辺１２ｘ、１２ｙは、板ガラスＧの４つの端面でもある。第一の方向に延びる１つの辺（１つの端面）１２ｘには、押え部材４と中間凸部７とが接触することに起因して形成されたクラックオリジンＤが存在する。このクラックオリジンＤは、当該辺１２ｘにおける一方の端部１２ｘａから他方の端部１２ｘｂに向かってその全長Ｌｘの２５％以上で７５％以内の範囲（Ｌｘｘ）内に存在する。図例では、第一の方向に延びる１つの辺１２ｘのみにクラックオリジンＤが存在しているが、第一の方向に延びる他の辺１２ｘについても同様のクラックオリジンが存在していてもよい。この第一の方向は、板引き方向に沿う方向である。そのため、板ガラスＧの表裏面のうちの一方の面１２ｚａまたは他方の面１２ｚｂもしくはそれら双方の面１２ｚａ、１２ｚｂには、第一の方向に延びる複数のスジが存在している。本実施形態では、クラックオリジンＤは、板ガラスＧの表裏面のうちの一方の面１２ｚａを一端（図例では上端）として当該辺１２ｘに形成され、板ガラスＧの他方の面１２ｚｂには到達していない。ここで、上記一方の面１２ｚａは、板ガラスＧの裏面（表面よりも品位が劣る面）に相当する。なお、クラックオリジンＤは、電子顕微鏡で確認する方法、電子顕微鏡で確認できない場合は、板ガラスＧに発生したリブマークやウォルナー線より推定する方法により特定または推定できる。例えば、クラックオリジンＤの位置に近いほど、隣り合うリブマークの間隔が狭くなっている。そのため、リブマークの間隔に基づいてクラックオリジンＤの位置を推定できる。なお、クラックオリジンＤは、当該辺１２ｘにおける一方の端部１２ｘａから他方の端部１２ｘｂに向かってその全長Ｌｘの３０％以上で７０％以内の範囲（Ｌｘｘ）内に存在することが好ましく、全長Ｌｘの３５％以上で６５％以内の範囲（Ｌｘｘ）内に存在することがより好ましい。

　なお、板引き方向に沿って発生している複数のスジは、暗室で板ガラスＧの角度を調整しながら光源（例えばキセノンライト）から光を照射し、その透過光をスクリーンに投影することで、筋状の縞模様として観測できる。

　以上のように構成された本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置及びこれを用いた板ガラスの製造方法によれば、以下に示すような作用効果が得られる。

　上記実施形態では、折割工程で縦姿勢の板ガラスＧを折り割る際には、有効領域Ｇ１と裏面支持部材３とを接触させることで、スクライブ線形成領域Ｇｓに強制的に湾曲部Ｇｗｓが形成される。この強制的な湾曲部Ｇｗｓの形成によって、折り割りを行う際のスクライブ線形成領域Ｇｓの形状は、上下方向中央部に表面Ｇａ、Ｇｘ側が凸になる湾曲部Ｇｗｓが形成された形状に一様に定まる。この状態で、不要領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう力を作用させた場合には、スクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部に他の部位よりも大きな曲げ応力を一様に作用させることができる。これにより、板ガラスＧの折り割り時に、スクライブ線Ｓの上下方向中央部にクラックオリジンを発生させ且つそのクラックオリジンを上下両側に向かって適正に伸展させることができる。その結果、板ガラスＧを折り割った際の割断位置のズレや割断不良等が生じ難くなり、チッピングや割れ等の発生が抑止される。

　上記実施形態では、折り割り工程で、有効領域Ｇ１が押え部材４と裏面支持部材３とによって挟持されるため、スクライブ線形成領域Ｇｓに強制的に湾曲部Ｇｗｓを形成する際の板ガラスＧの揺れをなくすことができる。これにより、有効領域Ｇ１と裏面支持部材３との接触状態を安定させることができる。

　上記実施形態では、中間凸部７の形状が滑らかに湾曲した形状であるため、スクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部に形成される湾曲部Ｇｗｓも滑らかに湾曲した形状になり、板ガラスの折り割りをより一層適正に行うことが可能となる。

　上記実施形態では、中間凸部７が、有効領域Ｇ１の上端部を把持する把持片２ａと上下方向で重複しない位置に配設されているため、有効領域Ｇ１の上端部周辺に不当な応力が作用することを抑止できる。詳述すると、仮に中間凸部７と把持片２ａとが上下方向で重複する位置関係にあると、有効領域Ｇ１の上下方向中央部の湾曲部Ｇｗと、把持片２ａにより有効領域Ｇ１の上端部に形成される平面状部（符号Ｇｃｕの近傍）とが干渉するため、有効領域Ｇ１の上端部周辺にねじれ等を生じさせる不当な応力が作用し得る。上記実施形態によれば、そのような不具合を回避できる。

　上記実施形態では、上側凸部９が、把持片２ａと上下方向で重複する位置に配設されているため、有効領域Ｇ１の押し付け部位での上側平面状部Ｇｃと、把持片２ａにより有効領域Ｇ１に形成される平面状部とが、有効領域Ｇ１の上端部で幅方向に沿って配列される。その結果、有効領域Ｇ１の上端部周辺に不当な応力が作用することをより一層確実に抑止できる。

　上記実施形態では、中間凸部７が、上側凸部９及び下側凸部１０と上下方向で重複しない位置に配設されているため、有効領域Ｇ１の上下方向中央部の湾曲部Ｇｗが、有効領域Ｇ１の上側平面状部Ｇｃ及び下側平面状部Ｇｄの何れとも干渉しなくなる。その結果、有効領域Ｇ１の上下方向両端部と上下方向中央部との各相互間周辺に不当な応力が作用することを抑止できる。

　上記実施形態では、不要領域Ｇ２の上下方向中央部にも湾曲部Ｇｗｔが形成されるため、押込部材６による押し込み力を、不要領域Ｇ２の上下方向中央部に集中して作用させることができる。したがって、この集中した押し込み力の作用に伴い、スクライブ線形成領域Ｇｓの上下方向中央部により一層大きな曲げ応力を作用させることができる。その結果、スクライブ線Ｓの上下方向中央部にクラックを発生させ且つそのクラックを上下両側に向かって伸展させる動作をより一層適正に行わせることができる。

　以上、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法及び板ガラスの製造装置並びに板ガラスについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々のバリエーションが可能である。

　上記実施形態では、第二領域Ｇ２を、耳部Ｇｅを有する不要領域としたが、第二領域Ｇ２は、耳部を有しない不要領域であってもよく或いは製品となる有効領域（第一領域Ｇ１と同じ板厚の有効領域）であってもよい。

　上記実施形態では、裏面支持部材３と押え部材４とを使用してスクライブ線形成領域Ｇｓに強制的に湾曲部Ｇｗｓを形成するようにしたが、押え部材４を使用せず、裏面支持部材３に第一領域Ｇ１の裏面Ｇｂを接触させるだけで、スクライブ線形成領域Ｇｓに強制的に湾曲部Ｇｗｓを形成するようにしてもよい。この場合は、折割工程の初期段階で、第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう力を作用させて、スクライブ線形成領域Ｇｓに強制的に湾曲部Ｇｗｓを形成した状態とし、この状態で、さらに第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう力を作用させるようにすればよい。

　上記実施形態では、中間凸部７を、裏面支持部材３の対向部位３ｘの上下方向中央部に設けたが、中間凸部７は、裏面支持部材３の対向部位３ｘの上下方向中間部であれば、上下方向中央部から上方に偏倚した位置或いは下方に偏倚した位置に設けるようにしてもよい。これに伴って、スクライブ線形成領域Ｇｓの湾曲部Ｇｗｓも、上下方向中央部に形成されることに限られず、上下方向中間部であれば、上下方向中央部から上方に偏倚した位置或いは下方に偏倚した位置に形成されるようにしてもよい（他の湾曲部Ｇｗ、Ｇｗｓ、Ｇｗｔ、Ｇｗｕも同様）。

　上記実施形態では、第二領域Ｇ２の全域が、上記所定の形状に湾曲する場合を例に挙げたが、スクライブ線形成領域Ｇｓが上記所定の形状に湾曲するのであれば、第二領域Ｇ２の幅方向外端部の周辺などは、上記所定の形状に湾曲していなくてもよい。また、有効領域Ｇ１の把持片２ａによる把持部の周辺領域も、上記所定の形状に湾曲していなくてもよい。

　上記実施形態では、押込部材６と吸着機構５とを使用して、第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう押し込み力を作用させるようにしたが、押込部材６を使用せず、吸着機構５によって第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう引き込み力を作用させるようにしてもよい。また、押込部材６と吸着機構５とを使用して、第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう押し込み力を作用させるようにしたが、押込部材に代えて、第二領域を引込部材によって裏面Ｇｙ側に引き込む部材を用いてもよい。またこれに代えて、第二領域Ｇ２の上端部及び下端部をそれぞれ把持片等の保持部材によって保持した状態で、保持部材を裏面Ｇ側に移動させることで、第二領域Ｇ２に裏面Ｇｙ側に向かう力を作用させるようにしてもよい。なお、上記実施形態において、押込部材６の形状は、平面部６ａを有する板状に限らず、平面部を有する角柱状などであってもよく、また平面部を有しない柱状や丸棒状などであってもよい。

　上記実施形態では、第一領域Ｇ１の上端部を、把持機構２の把持片２ａで保持するようにしたが、これに代えて、例えば吸盤等の他の保持部材で保持するようにしてもよい。

１     板ガラスの製造装置（折割装置）
２     把持機構
２ａ   把持片
３     裏面支持部材
４     押え部材
５     吸着機構
５ｂ   吸着パッド
６     押込部材
７     中間凸部
９     上側凸部
１０   下側凸部
Ｄ     クラックオリジン
Ｇ     板ガラス
Ｇ１   第一領域（有効領域）
Ｇａ   第一領域の表面
Ｇｂ   第一領域の裏面
Ｇ２   第二領域（不要領域）
Ｇｘ   第二領域の表面
Ｇｙ   第二領域の裏面
Ｇｓ   スクライブ線の形成領域（スクライブ線形成領域）
Ｇｗｓ湾曲部（スクライブ線形成領域の湾曲部）
Ｇｃｓ平面状部（スクライブ線形成領域の上側平面状部）
Ｇｄｓ平面状部（スクライブ線形成領域の下側平面状部）
Ｓ     スクライブ線

Claims

　第一領域と第二領域とが幅方向に隣接して配列され、且つ、それら領域の境界部の表面側にスクライブ線が形成された縦姿勢の板ガラスにつき、前記第一領域を裏面側から裏面支持部材により接触支持させた状態で、前記第二領域に裏面側に向かう力を作用させることで、前記板ガラスを前記スクライブ線に沿って折り割り、前記第二領域を切り出す折割工程を備えた板ガラスの製造方法であって、
　前記折割工程では、前記第一領域と前記裏面支持部材とを接触させることで、前記スクライブ線の形成領域に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成することを特徴とする板ガラスの製造方法。
　前記裏面支持部材は、前記スクライブ線の形成領域の上下方向中間部に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成するための中間凸部を有する請求項１に記載の板ガラスの製造方法。
　前記中間凸部は、上下方向の中央部から両端側に向かって突出する長さが漸次短くなるように湾曲している請求項２に記載の板ガラスの製造方法。
　前記中間凸部は、前記第一領域の上端部を保持する保持部材と上下方向で重複しない位置に配設されている請求項２または３に記載の板ガラスの製造方法。
　前記折割工程では、前記第一領域の表面側に配置された押え部材が、前記第一領域を前記裏面支持部材に押し付ける請求項１～４の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
　前記押え部材は、前記スクライブ線の形成領域の上端部に平面状部を形成するための上側凸部を有する請求項５に記載の板ガラスの製造方法。
　前記上側凸部は、前記第一領域の上端部を保持する保持部材と上下方向で重複する位置に配設されている請求項６に記載の板ガラスの製造方法。
　前記裏面支持部材は、前記スクライブ線の形成領域の上下方向中間部に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成するための中間凸部を有し、
　前記上側凸部は、前記中間凸部と上下方向で重複しない位置に配設されている請求項６または７に記載の板ガラスの製造方法。
　前記押え部材は、前記スクライブ線の形成領域の下端部に平面状部を形成するための下側凸部を有する請求項５～８の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
　前記裏面支持部材は、前記スクライブ線の形成領域の上下方向中間部に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成するための中間凸部を有し、
　前記下側凸部は、前記中間凸部と上下方向で重複しない位置に配設されている請求項９に記載の板ガラスの製造方法。
　第一領域と第二領域とが幅方向に隣接して配列され、且つ、それら領域の境界部の表面側にスクライブ線が形成された縦姿勢の板ガラスにつき、前記第一領域を裏面側から裏面支持部材により接触支持させた状態で、前記第二領域に裏面側に向かう力を作用させることで、前記板ガラスを前記スクライブ線に沿って折り割り、前記第二領域を切り出す構成とされた折割装置を備える板ガラスの製造装置であって、
　前記折割装置は、前記第一領域と前記裏面支持部材とを接触させることで、前記スクライブ線の形成領域に表面側が凸になる上下方向に沿う湾曲部を形成する構成とされることを特徴とする板ガラスの製造装置。
　第一の方向に延びる２つの第一辺と、前記第一の方向と異なる方向に延びる２つの第二辺とを有する矩形状の板ガラスであって、
　表面および／または裏面に前記第一の方向に延びる複数のスジを有し、
　少なくとも１つの前記第一辺における一方の端部から他方の端部に向かってその全長の２５％以上で７５％以下の範囲内に、クラックオリジンを有することを特徴とする板ガラス。