WO2022070920A1

WO2022070920A1 - 乗物用シート

Info

Publication number: WO2022070920A1
Application number: PCT/JP2021/033918
Authority: WO
Inventors: 直人山内
Original assignee: テイ・エステック株式会社
Priority date: 2020-09-29
Filing date: 2021-09-15
Publication date: 2022-04-07
Also published as: CN116194018A; US20230365041A1; EP4223188A1

Abstract

【要約】【課題】パッド部材と、パッド部材の表面に設けられ、膨張収縮可能なエアセルとを備え、着座した乗員それぞれが自らに適した温度にすることのできる乗物用シートを提供する。【解決手段】　パッド部材（１２）及びパッド部材を覆う表皮材（１３）を備えたシートバック（６）及びシートクッション（８）の少なくとも一方を備えた乗物用シート（１、１０１、２０１）であって、パッド部材の表面側と表皮材との間に設けられたシート状のヒータ（３８）及び、複数のエアセル（３２）を有する。【選択図】　図６

Description

乗物用シート

　本発明は、乗物用シートに関する。

　乗物用シートであって、膨張収縮が可能な空気袋を備えたものが公知である（例えば、特許文献１）。特許文献１の乗物用シートでは、空気袋はそれぞれ、シートクッション及びシートバック内部のパッド部材の表面側（乗員が着座する側）に設けられている。

　各空気袋は、パッド部材の表面に設けられた凹部を跨ぐように設けられている。空気袋が膨張すると、空気袋を覆うスラブ及び表皮が車両上方側へ膨出膨張して乗員の体の一部を押圧する。これにより、乗員の腰部や背部及び大腿部などがマッサージされ、乗員をリラックス又はリフレッシュさせる。

特開２０１８－４７８６２号公報

　車両には車室内の温度をコントロールする空気調節装置（エアコン）が設けられる場合がある。しかし、快適と感じる温度は乗員ごとに異なるため、全ての乗員に快適な温度環境を提供することが難しい。

　そこで、本発明は以上の背景を鑑み、パッド部材と、パッド部材の表面に設けられ、膨張収縮可能なエアセルとを備え、着座した乗員それぞれが自らに適した温度にすることのできる乗物用シートを提供することを課題とする。

　上記課題を解決するために、本発明の一態様は、パッド部材（１２）及び前記パッド部材を覆う表皮材（１３）を備えたシートバック（６）及びシートクッション（８）の少なくとも一方を備えた乗物用シート（１、１０１、１５１）であって、前記パッド部材の表面側と前記表皮材との間に設けられたシート状のヒータ（３８）及び、複数のエアセル（３２）を有する。

　この態様によれば、エアセルを膨張させることによって、乗員に押圧することができる。更に、ヒータを駆動させることで表皮材を温めることができるため、乗員それぞれが着座する乗物用シートを自らに適した温度にすることができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは前記表皮材の裏面に結合され、前記エアセルは前記パッド部材の表面に結合されている。

　この態様によれば、乗物用シートの組立作業性が向上する。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータ及び前記エアセルは、表裏方向に互いに重なり合わない位置にある。

　この態様によれば、ヒータとエアセルとが表裏方向に重なり合わないため、乗物用シートの表裏方向の厚みを抑えることができ、乗物用シートの小型化を図ることができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータを前記エアセルによる膨張によって変形する変形容易部（１０３、１６０）が設けられている。

　この態様によれば、エアセルの膨張に追従してヒータが変形可能となるため、エアセルの膨張がヒータによって阻害されることが防止できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部は前記ヒータに設けられたスリット（１０２、１５５）を含む。

　この態様によれば、変形容易部を容易に構成することができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記スリットは前記エアセルに表裏方向に重なり合う。

　この態様によれば、変形容易部がエアセルの近傍に配置されるため、ヒータがエアセルの膨張により追従し易くなる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは、シート状の基布（６８）と、前記基布の面に沿って配置されたヒータ線（７０）とを有し、前記ヒータ線の間に前記スリットが設けられている。

　この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータがシート状の基布（６８）及び前記基布上に設けられたヒータ線（７０）を含み、前記変形容易部において、前記ヒータ線は第１の方向に蛇行しながら延び、前記第１の方向に直交する第２の方向に繰り返し折り返すように配置されている。

　この態様によれば、変形容易部において、ヒータ線が第１方向及び第２の方向に変形し易くなる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部の前記基布には、前記ヒータ線と重ならない位置にスリット（１５５）が設けられている。

　また、上記態様において、好ましくは、前記スリットが前記第１の方向に延びる第１の部分と、前記第１の部分に直交する第２の部分とを含む。

　この態様によれば、基布がエアセルの膨張に追従するように変形し易くなる。

　また、乗物用シートであって、着座者側の面から空気を吹き出し可能に構成されたものが公知である（例えば、特開２０２０－５５３９４号公報）。このような乗物用シートでは、シートクッションの内部に通気路が設けられている。送風装置が通気路に向けて送風すると、空気が通気路内を通過して、シート本体の着座者側の面から吹き出す。本願の発明者は、このような乗物用シートに通気路を設けて流体封入部材であるエアセルを膨張・収縮させ、乗員のマッサージや姿勢制御を行うことに思い至った。しかし、本願発明者らは、エアセルが膨張すると、パッドが変形して、エアセルがパッド側に移動し、エアセルからの圧力が乗員に加わり難くなる場合があることにも気が付いた。

　よって、パッド部材と、パッド部材の表面側に設けられ、膨張収縮可能な流体封入部材とを備えたシートにおいて、流体封入部材から乗員に圧力を加わり易くすることが課題となる場合がある。

　上記課題を解決するために、本発明の一態様は、パッド部材（２１３）と、前記パッド部材の表側に設けられ、膨張可能な流体封入部材（２０９）とを備えた乗物用シート（２０１、３０１、４０１、５０１）であって、前記流体封入部材の背部側に設けられ、前記パッド部材よりも変形し難い硬質部材（２１８、４１８）を含み、前記硬質部材が、前記流体封入部材の膨張時に、前記流体封入部材からの圧力に抗して前記パッド部材の変形を抑制する。

　この態様によれば、硬質部材によってパッド部材の変形が抑制される。これにより、流体封入部材の膨張によって生じる荷重がパッド部材に伝わり難くなる。よって、乗員に流体封入部材からの圧力が加わり易くなる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記流体封入部材の背面側を通過する流路（２３８、３３８）が設けられ、前記硬質部材は筒状をなし、前記流路の少なくとも一部を画定する。

　この態様によれば、流体封入部材の膨張による荷重がパッド部材に加わった場合に硬質部材が対抗するため、流路の変形を防止できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記パッド部材は、背部側を構成するパッド本体（２１６）と、前記パッド本体に重ね合わされ、前記硬質部材を収容するスリット（２２５）を備えた流路形成片（２１７）と、前記流路形成片に重ね合わされた上部形成片（２１９）とを含み、前記硬質部材と前記流路形成片とは一体成型品である。

　この態様によれば、乗物用シートの組み立てが簡素になる。

　また、上記態様において、好ましくは、流路（３３８）を備えたシート状の流路形成部材（３１７）を更に有し、前記硬質部材（３１８）は前記パッド部材と前記流路形成部材との間に設けられている。

　この態様によれば、乗物用シートに容易に流路を形成できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記硬質部材と前記流路形成部材とは接着されて一体をなす。

　この態様によれば、乗物用シートの組み立てが容易になる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記パッド部材には前記流体封入部材の背面側を通過する流路が設けられ、前記硬質部材（４１８）が前記流体封入部材の裏面、及び、前記パッド部材の表面の間に設けられ、前記硬質部材の車幅方向の幅は、前記流体封入部材の前記車幅方向の幅よりも大きい。

　この態様によれば、流路が流体封入部材の背面側を通過するため、乗物用シートの小型化を図ることができる。また、流体封入部材を硬質部材によって支持することで、パッド部材に加わる圧力を分散させることができる。これにより、パッド部材の変形により、流路内において流体が流れにくくなることを防止することができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記硬質部材及び前記流体封入部材は表裏方向視で矩形状をなし、前記硬質部材の前記車幅方向に直交する方向の幅は、前記流体封入部材の前記車幅方向に直交する方向の幅よりも大きい。

　この態様によれば、パッド部材に加わる圧力をより分散させることができ、流路内において流体が流れにくくなることをより確実に防止することができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記硬質部材の縁部には前記パッド部材の表面から離反する方向に突出する突出壁（４２０）が設けられている。

　この態様によれば、膨張時の流体封入部材の移動を抑制できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記流体封入部材を複数備え、前記流路は隣接する前記流体封入部材の間に通じている。

　この態様によれば、空気が滞留し易い隣接する流体封入部材の空隙に流路を介してアクセスすることができる。

　自動車等の乗物用のシート装置として、シート装置の着座者に、前後方向に大きい加速度が作用した時に、着座者の下半身がシートクッションから前滑りするサブマリン現象の発生を抑制すべく、シートクッションの前側をエアバッグ装置によって上方に隆起変形させるサブマリン抑制機構を組み込まれたものが知られている（例えば、特開２００５－１９３８４４号公報、特開２００７－１５３０３０号公報）。

　シートクッションは、発泡ポリウレタン等によるパッド部材及びパッド部材を覆う皮革や樹脂シート等による表皮を含んでいる。エアバッグ装置によるパッド部材の隆起変形時に、表皮が突っ張り、表皮がパッド部材の変形を阻害する傾向がある。このことにより、サブマリン抑制作用が低下する。

　そこで、エアバッグ装置によるパッド部材の隆起変形が表皮によって阻害されることを低減し、所要のサブマリン抑制効果が得られるようにすることが課題となる場合がある。

　上記の課題に対して、本発明の一つの実施形態による乗物用シート装置は、フレーム（６１０）と、前記フレーム上に設けられたパッド部材（６４０）及び前記パッド部材を覆う表皮（６４２）を含むシートクッション（６２２）と、前記パッド部材の前部を上向きに隆起するように変形させるべく前記フレームに設けられたエアバッグ装置（６５４）とを有する乗物用シート装置（６１０）であって、前記表皮は、前記パッド部材の隆起変形を許容するように伸長可能な展開部（６４６、６４２Ｃ、６８０Ａ、６４３Ａ、６４５Ａ）を含む。

　この構成によれば、パッド部材の隆起変形が表皮によって阻害されることが低減し、所要のサブマリン抑制効果が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の折返し部（６４６）を含む。

　この構成によれば、簡素な構成で展開部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の互いに重なり合う部分（６４２Ｃ、６８０Ａ）を、前記エアバッグ装置の展開時に破断可能に接合した接合部（６８２）を含む。

　この構成によれば、簡素な構成で展開部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の互いに重なり合う２つの末端部（６４２Ｃ、６８０Ａ）を、前記エアバッグ装置の展開時に破断可能に接合する第１の接合部（６８２）と、前記第１の接合部よりも前記末端部の末端側に位置し、前記表皮の互いに重なり合う前記両末端部を、前記エアバッグ装置の展開時に破断不能に接合した第２の接合部（６８４）とを含む。

　この構成によれば、簡素な構成で展開部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記接合部が縫合部を含む。

　この構成によれば、確実な接合部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の互いに重なり合う２つの末端部（６４３Ａ、６４５Ａ）を弾発的に把持するクリップ（６９０）を含み、前記クリップが、前記エアバッグ装置の展開時に前記末端部を解放するように構成されている。

　この構成によれば、表皮の吊込み部分を利用して展開部が簡便に構成される。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記クリップが、前記表皮の吊込み部を形成する。

　この構成によれば、表皮の吊込み部が展開部に利用される。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記パッド部材の、前記エアバッグ装置と対応する前後方向の位置に於ける上面に、横方向に延在する溝（６４１）を有する。

　この構成によれば、エアバッグ装置によるパッド部材の隆起変形が容易になる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記パッド部材の、前記エアバッグ装置と対応する前後方向の位置に於ける下面に、横方向に延在する溝（６４１）を有する。

　上記乗物用シート装置は、好ましくは、前記フレームと前記シートクッションとの間に延在して前記エアバッグ装置に接続されたハーネス（６５８）と、前記フレームに固定され、前記ハーネスを覆うカバー部材（６６０）とを更に有する。

　この構成によれば、ハーネスが断線し難くなる。

　本発明の一態様は、パッド部材及び前記パッド部材を覆う表皮材を備えたシートバック及びシートクッションの少なくとも一方を備えた乗物用シートであって、前記パッド部材の表面側と前記表皮材との間に設けられたシート状のヒータ及び、複数のエアセルを有する。この態様によれば、エアセルを膨張させることによって、乗員に押圧することができる。更に、ヒータを駆動させることで表皮材を温めることができるため、乗員それぞれが着座する乗物用シートを自らに適した温度にすることができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは前記表皮材の裏面に結合され、前記エアセルは前記パッド部材の表面に結合されている。この態様によれば、乗物用シートの組立作業性が向上する。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータ及び前記エアセルは、表裏方向に互いに重なり合わない位置にある。この態様によれば、ヒータとエアセルとが表裏方向に重なり合わないため、乗物用シートの表裏方向の厚みを抑えることができ、乗物用シートの小型化を図ることができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータを前記エアセルによる膨張によって変形する変形容易部が設けられている。この態様によれば、エアセルの膨張に追従してヒータが変形可能となるため、エアセルの膨張がヒータによって阻害されることが防止できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部は前記ヒータに設けられたスリットを含む。この態様によれば、変形容易部を容易に構成することができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記スリットは前記エアセルに表裏方向に重なり合う。この態様によれば、変形容易部がエアセルの近傍に配置されるため、ヒータがエアセルの膨張により追従し易くなる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは、シート状の基布と、前記基布の面に沿って配置されたヒータ線とを有し、前記ヒータ線の間に前記スリットが設けられている。この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータがシート状の基布及び前記基布上に設けられたヒータ線を含み、前記変形容易部において、前記ヒータ線は第１の方向に蛇行しながら延び、前記第１の方向に直交する第２の方向に繰り返し折り返すように配置されている。この態様によれば、変形容易部において、ヒータ線が第１方向及び第２の方向に変形し易くなる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部の前記基布には、前記ヒータ線と重ならない位置にスリットが設けられている。この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。

　また、上記態様において、前記スリットが前記第１の方向に延びる第１の部分（２０６）と、前記第１の部分に直交する第２の部分（２０７）とを含む。この態様によれば、基布がエアセルの膨張に追従するように変形し易くなる。

　パッド部材と、パッド部材の表面側に設けられ、膨張収縮可能な流体封入部材とを備えたシートにおいて、流体封入部材から乗員に圧力を加わり易くすることが課題となる場合に対して、本発明の一態様は、パッド部材と、前記パッド部材の表側に設けられ、膨張可能な流体封入部材とを備えた乗物用シートであって、前記流体封入部材の背部側に設けられ、前記パッド部材よりも変形し難い硬質部材を含み、前記硬質部材が、前記流体封入部材の膨張時に、前記流体封入部材からの圧力に抗して前記パッド部材の変形を抑制する態様によれば、硬質部材によってパッド部材の変形が抑制される。これにより、流体封入部材の膨張によって生じる荷重がパッド部材に伝わり難くなる。よって、乗員に流体封入部材からの圧力が加わり易くなる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記流体封入部材の背面側を通過する流路が設けられ、前記硬質部材は筒状をなし、前記流路の少なくとも一部を画定する態様によれば、流体封入部材の膨張による荷重がパッド部材に加わった場合に硬質部材が対抗するため、流路の変形を防止できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記パッド部材は、背部側を構成するパッド本体と、前記パッド本体に重ね合わされ、前記硬質部材を収容するスリットを備えた流路形成片と、前記流路形成片に重ね合わされた上部形成片とを含み、前記硬質部材と前記流路形成片とは一体成型品である態様によれば、乗物用シートの組み立てが簡素になる。

　また、上記態様において、好ましくは、流路を備えたシート状の流路形成部材を更に有し、前記硬質部材は前記パッド部材と前記流路形成部材との間に設けられている態様によれば、乗物用シートに容易に流路を形成できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記硬質部材と前記流路形成部材とは接着されて一体をなす態様によれば、乗物用シートの組み立てが容易になる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記パッド部材には前記流体封入部材の背面側を通過する流路が設けられ、前記硬質部材が前記流体封入部材の裏面、及び、前記パッド部材の表面の間に設けられ、前記硬質部材の車幅方向の幅は、前記流体封入部材の前記車幅方向の幅よりも大きい態様によれば、流路が流体封入部材の背面側を通過するため、乗物用シートの小型化を図ることができる。また、流体封入部材を硬質部材によって支持することで、パッド部材に加わる圧力を分散させることができる。これにより、パッド部材の変形により、流路内において流体が流れにくくなることを防止することができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記硬質部材及び前記流体封入部材は表裏方向視で矩形状をなし、前記硬質部材の前記車幅方向に直交する方向の幅は、前記流体封入部材の前記車幅方向に直交する方向の幅よりも大きい態様によれば、パッド部材に加わる圧力をより分散させることができ、流路内において流体が流れにくくなることをより確実に防止することができる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記硬質部材の縁部には前記パッド部材の表面から離反する方向に突出する突出壁が設けられている態様によれば、膨張時の流体封入部材の移動を抑制できる。

　また、上記態様において、好ましくは、前記流体封入部材を複数備え、前記流路は隣接する前記流体封入部材の間に通じている態様によれば、空気が滞留し易い隣接する流体封入部材の空隙に流路を介してアクセスすることができる。

　エアバッグ装置によるパッド部材の隆起変形が表皮によって阻害されることを低減し、所要のサブマリン抑制効果が得られるようにする課題に対して、本発明の一つの実施形態による乗物用シート装置は、フレームと、前記フレーム上に設けられたパッド部材及び前記パッド部材を覆う表皮を含むシートクッションと、前記パッド部材の前部を上向きに隆起するように変形させるべく前記フレームに設けられたエアバッグ装置とを有する乗物用シート装置であって、前記表皮は、前記パッド部材の隆起変形を許容するように伸長可能な展開部を含む。この構成によれば、パッド部材の隆起変形が表皮によって阻害されることが低減し、所要のサブマリン抑制効果が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の折返し部を含む。この構成によれば、簡素な構成で展開部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の互いに重なり合う部分を、前記エアバッグ装置の展開時に破断可能に接合した接合部を含む。この構成によれば、簡素な構成で展開部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の互いに重なり合う２つの末端部を、前記エアバッグ装置の展開時に破断可能に接合する第１の接合部と、前記第１の接合部よりも前記末端部の末端側に位置し、前記表皮の互いに重なり合う前記両末端部を、前記エアバッグ装置の展開時に破断不能に接合した第２の接合部とを含む。この構成によれば、簡素な構成で展開部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記接合部が縫合部を含む。この構成によれば、確実な接合部が得られる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記展開部は、前記表皮の互いに重なり合う２つの末端部を弾発的に把持するクリップを含み、前記クリップが、前記エアバッグ装置の展開時に前記末端部を解放するように構成されている。この構成によれば、表皮の吊込み部分を利用して展開部が簡便に構成される。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記クリップが、前記表皮の吊込み部を形成する。この構成によれば、表皮の吊込み部が展開部に利用される。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記パッド部材の、前記エアバッグ装置と対応する前後方向の位置に於ける上面に、横方向に延在する溝を有する。この構成によれば、エアバッグ装置によるパッド部材の隆起変形が容易になる。

　上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記パッド部材の、前記エアバッグ装置と対応する前後方向の位置に於ける下面に、横方向に延在する溝を有する。この構成によれば、エアバッグ装置によるパッド部材の隆起変形が容易になる。

　上記乗物用シート装置は、好ましくは、前記フレームと前記シートクッションとの間に延在して前記エアバッグ装置に接続されたハーネスと、前記フレームに固定され、前記ハーネスを覆うカバー部材とを更に有する。この構成によれば、ハーネスが断線し難くなる。

第１実施形態に係る乗物用シートの斜視図図１のＩＩ－ＩＩ断面図第１実施形態に係る乗物用シートの分解斜視図第１実施形態に係る乗物用シートのパッド部材の上面図第１実施形態に係る乗物用シートのブロック線図第１実施形態に係る乗物用シートの上面図であって、シートヒータ、及び、その配置を示す図第１実施形態に係る乗物用シートの変形例を示す上面図であって、シートヒータ、及び、その配置を示す図第１実施形態に係る（Ａ）乗物用シート、及び、（Ｂ）その変形例において、エアセルが膨張したときのエアセル近傍の断面図第２実施形態に係る乗物用シートに係る（Ａ）シートヒータ、及び（Ｂ）二点鎖線で囲まれた部分の拡大図第３実施形態に係る乗物用シートに係る（Ａ）シートヒータ、及び（Ｂ）二点鎖線で囲まれた部分の拡大図第４実施形態に係る乗物用シートの斜視図第４実施形態に係る乗物用シートのブロック線図図１１のＩＩＩ－ＩＩＩ断面図図１１のＩＶ－ＩＶ断面図第４実施形態に係る乗物用シートのシートクッションの分解斜視図第４実施形態に係る乗物用シートのシートクッションの上面図第５実施形態に係る乗物用シートのシートクッションの横断面図第５実施形態に係る乗物用シートのシートクッションのパッド部材、及び、流路形成部材の斜視図第６実施形態に係る乗物用シートのシートクッションの横断面図第６実施形態に係る乗物用シートのシートクッションの分解斜視図第７実施形態に係る乗物用シートのシートクッションのパッド部材の（Ａ）斜視図、及び（Ｂ）上面図本発明による乗物用シート装置の第８実施形態を示す部分断面斜視図第８実施形態による乗物用シート装置の要部の拡大断面図第８実施形態による乗物用シート装置の前部パン及びエアバッグ装置を示す拡大斜視図第８実施形態による乗物用シート装置のハーネス配置部の拡大断面図第９実施形態による乗物用シート装置の要部の拡大断面図第１０実施形態による乗物用シート装置のハーネス配置部の拡大断面図第１１実施形態による乗物用シート装置の要部の拡大断面図第１２実施形態による乗物用シート装置の部分断面斜視図第２実施形態に係る乗物用シートの変形例に係るシートヒータの一部を拡大した図であって、（Ａ）スリットがエアセルに重ならない位置に形成されている場合と、（Ｂ）変形容易部が不織布以外の素材によって構成された場合とを示す図第８～第１２実施形態の他の実施形態による乗物用シート装置の要部の拡大断面図第８～第１２実施形態の他の実施形態による乗物用シート装置の前部パン及びエアバッグ装置を示す拡大斜視図

　以下、本発明の乗物用シートを自動車等の車両に搭載されるシートに適用した実施形態について、図面を参照して説明する。以下、車両を基準として、前後、左右、及び、上下の各方向を定めて説明を行う。

＜＜第１実施形態＞＞
　図１に示すように、乗物用シート１は、車両の車室２の底部を画定するフロア３に車両前方を向くように載置されている。本実施形態では、乗物用シート１は運転席側方の助手席を構成する。

　乗物用シート１は、フロア３に結合されたシートクッション５と、シートクッション５の後部に結合されたシートバック６と、シートバック６の上側に設けられたヘッドレスト７とを有する。シートクッション５は上面において着座面８を構成するとともに、着座する乗員の臀部及び大腿部を支持する。シートバック６は着座する乗員の腰部及び背部の後方に位置し、ヘッドレスト７は着座する乗員の頭部後方に位置する。

　シートクッション５は、車体に支持されてシートクッション５の骨格を形成するクッションフレーム１１と、クッションフレーム１１に支持されたパッド部材１２と、パッド部材１２の表面を覆う表皮材１３とを有する。

　パッド部材１２は、発泡ウレタンなどの発泡樹脂で形成されている。図２に示すように、パッド部材１２は、その下面においてクッションフレーム１１に支持されている。

　パッド部材１２は、図３に示すように、左右方向における中央部分を構成するパッド中央部１４と、パッド中央部１４の左右外側に接続されたパッド側部１５とを有している。パッド側部１５はそれぞれシートクッション５の左右側部に設けられ、中央部分に対して上方に隆起した土手部１６（図１及び図２参照）を構成している。

　図２に示すように、パッド部材１２の上面には下方に凹む吊り込み溝２０が設けられている。図４に示すように、吊り込み溝２０はパッド中央部１４とパッド側部１５との間において、前後に延在する左右一対の縦溝部２１と、左右の縦溝部２１の前後方向略中央部を左右に接続する横溝部２２とを有し、上面視でＨ字状をなす。図２に示すように、縦溝部２１と横溝部２２にはそれぞれ適所に表皮材１３を掛け止めするためのワイヤ２４が設けられている。

　図３及び図４に示すように、パッド中央部１４の上面には複数の凹部２６が設けられている。凹部２６は下方に凹み、上面視で矩形状（方形）をなす。図３に示すように、凹部２６は左右の縦溝部２１の内側に位置している。

　凹部２６は横溝部２２の前側において、左右に間隔をおいて、前後に列をなすように設けられている。横溝部２２の前側に設けられた凹部２６は、概ね、乗物用シート１に着座した乗員の大腿部に対応する位置にある。本実施形態では、左右一対の凹部２６がパッド部材１２上面の横溝部２２の後側の部分に設けられている。横溝部２２の後側に配置された凹部２６は、概ね、乗物用シート１に着座した乗員の臀部に対応する位置にある。

　図４に示すように、パッド部材１２の上面には、凹部２６それぞれから左右外方向に延び、縦溝部２１に達する通し溝２８が設けられている。縦溝部２１にはそれぞれ、通し溝２８の左右外側において、上下方向に貫通する通し孔３０が設けられている。

　図５に示すように、乗物用シート１は、複数のエアセル３２と、エアセル３２を給排気する給排気装置３４と、着座センサ３６と、シートヒータ３８と、シートヒータ３８を制御する温度調節装置４０と、給排気装置３４及び温度調節装置４０を制御する制御装置４２とを備えている。

　エアセル３２（空気袋）は袋状の部材であって、ゴム材料等の伸縮可能な材料で形成されている。図２に示すように、エアセル３２はそれぞれ凹部２６に収容された状態で、パッド部材１２の表面に結合されて、シートクッション５の内部に収容されている。エアセル３２にはそれぞれ可撓性を有するチューブ４４が接続されている。チューブ４４は凹部２６の内部から通し溝２８、通し孔３０を順に通過し、パッド部材１２の下側に達している。

　給排気装置３４は、制御装置４２からの信号に基づいて、エアセル３２を給排気し、エアセル３２を膨張収縮させる装置である。給排気装置３４は、図５に示すように、電磁弁４８及びポンプ５０を含み、エアセル３２にチューブ４４を介して接続されている。

　電磁弁４８は吸気ポート４８Ａ、排気ポート４８Ｂ、及び、共通ポート４８Ｃを備えた三方弁である。電磁弁４８の吸気ポート４８Ａはポンプ５０に接続されている。排気ポート４８Ｂは大気開放されている。共通ポート４８Ｃはチューブ４４に接続されている。電磁弁４８は制御装置４２からの信号に基づいて、共通ポート４８Ｃが吸気ポート４８Ａに接続する吸気位置と、共通ポート４８Ｃが排気ポート４８Ｂに接続する排気位置との間で切り替わる。電磁弁４８が吸気位置にあるとき、ポンプ５０から空気が圧送され、エアセル３２が膨張する。電磁弁４８が排気位置にあるときには、乗員からの圧力によりチューブ４４からエアセル３２内の空気が排出されてエアセル３２が収縮する。

　着座センサ３６は乗物用シート１への乗員の着座を検出するセンサであって、複数の感圧スイッチ５２を含む。

　感圧スイッチ５２は、メンブレンスイッチであり、枠形のスペーサシートと、枠形のスペーサシートを介して互いに間隔をおいて積層された接点シートと、各接点シートの互いに対向する面に設けられた電気接点とを有する。一方の接点シートに他方の接点シートに近づくように荷重が加わると、少なくとも一方の接点シートが撓み、２つの電気接点が互いに接触して導通状態、すなわちオンになる。電気接点が互いに接触する圧力は、接点の大きさ及び厚さ、スペーサの厚さ及び形状、接点シートの硬さ等を調節することによって変更することができる。なお、感圧スイッチ５２はそれぞれ、圧力を検知して電気的に導通するスイッチであればいかなる構成であってもよい。

　本実施形態では、図１に示すように、感圧スイッチ５２はシートクッション５の着座面８後部、及び、シートバック６の前面下部にそれぞれ設けられている。

　更に、シートクッション５及びシートバック６を構成するパッド部材１２にはそれぞれ、感圧スイッチ５２を収容するためのスイッチ凹部５４が設けられているとよい。スイッチ凹部５４はシートバック６の後部（図３及び図４参照）、及び、シートバック６の下部に左右に対をなすようにそれぞれ設けられている。感圧スイッチ５２がスイッチ凹部５４に収容されているときには、感圧スイッチ５２の接点シートの表面はパッド部材１２の表面と面一をなすとよい。これにより、感圧スイッチ５２が設けられることによって、着座した乗員に異物感を与えることが防止できる。

　シートヒータ３８はシートクッション５の内部に設けられた面状の発熱体、すなわち、シート状のヒータである。シートヒータ３８が発熱すると、シートクッション５の着座面８が温められる。

　シートヒータ３８は、図６に示すように、パッド中央部１４の上面に配置された矩形状のヒータ中央部６０と、左右のパッド側部１５にそれぞれ配置された左右一対のヒータ側部６２と、ヒータ中央部６０及びヒータ側部６２を連結するヒータ横連結部６４とを含む。

　シートヒータ３８は、基布６８と、ヒータ線７０と、温度センサ７２とを有する。

　基布６８はシート状（布状）をなしている。本実施形態では、基布６８は繊維を絡み合わせることによって形成された、いわゆる不織布によって構成されている。基布６８は、ヒータ中央部６０を構成し、パッド中央部１４に沿って配置される基布中央部７４と、ヒータ側部６２を構成し、パッド側部１５に沿って配置される左右一対の基布側部７６と、基布中央部７４及び基布側部７６を接続する左右一対の基布横連結部７８とを含む。基布中央部７４は前後一対の基布主部７４Ａと、前後に延びて２つの基布主部７４Ａを接続する基布縦連結部７４Ｂとを含む。基布側部７６は基布中央部７４の左右側方にそれぞれ位置し、基布横連結部７８は左右に延びて、前側の基布主部７４Ａと左右の基布側部７６とをそれぞれ接続する。

　基布中央部７４は左右のエアセル３２の間において前後に延在している。基布主部７４Ａ、及び、基布縦連結部７４Ｂはそれぞれ略矩形状をなしている。基布縦連結部７４Ｂは基布主部７４Ａよりも左右方向の幅が小さい。基布横連結部７８は、基布中央部７４、及び、左右の基布側部７６よりも前後幅が小さく、基布横連結部７８はエアセル３２の間を通過している。

　ヒータ線７０（熱線ともいう）は電流が流れることによって発熱する素材（例えば、金属製のワイヤやフィルム等）によって構成されている。ヒータ線７０は基布６８の表面に結合されている。ヒータ線７０は、ヒータ中央部６０の後端から前方へ左右に蛇行しながら延び、左右の側部を通過して、ヒータ中央部６０の後端に達している。ヒータ線７０は、エアセル３２の間を通過し、エアセル３２の上側を通過しない。ヒータ線７０の両端は、温度調節装置４０に接続されている。

　温度センサ７２は熱電対によって構成されている。本実施形態では、温度センサ７２はヒータ中央部６０の適所に設けられている。温度センサ７２は、ヒータ線７０と同様に、温度調節装置４０に接続されている。

　温度調節装置４０は、制御装置４２からの信号が入力されると、制御装置４２から入力された信号に対応する所定の温度となるようにシートヒータ３８を制御する。本実施形態では、温度調節装置４０は、温度センサ７２によって取得した温度が制御装置４２から入力された信号に対応する温度以下の場合にはヒータ線７０へ通電してシートヒータ３８の温度を上げ、信号に対応する温度を越えるとヒータ線７０への通電を停止する。

　表皮材１３はシート状をなし、パッド部材１２、エアセル３２、着座センサ３６、及び、シートヒータ３８を上方から覆い、シートクッション５の意匠面を構成する。表皮材１３は、エアセル３２の膨張によって伸長する伸縮可能な布材によって構成されていることが好ましい。また、表皮材１３は複数の布部材を縫合することによって構成されていてもよい。

　図２に示すように、表皮材１３の適所にはフック８０が設けられ、フック８０が縦溝部２１及び横溝部２２に設けられたワイヤ２４に掛け止めされて、表皮材１３はパッド部材１２に結合されている。

　シートヒータ３８は表皮材１３の裏面に結合されている。本実施形態では、シートヒータ３８はその縁部において表皮材１３の裏面に縫合されて、表皮材１３の裏面に結合している。これにより、シートヒータ３８は表皮材１３を介してワイヤ２４に掛け止めされる。

　更に、基布縦連結部７４Ｂは、横溝部２２に設けられたワイヤ２４に吊り込まれて掛け止めされているとよい。また、基布横連結部７８は、縦溝部２１に設けられたワイヤ２４に吊り込まれて掛け止めされているとよい。基布縦連結部７４Ｂ及び基布横連結部７８がそれぞれワイヤ２４に掛け止めされることにより、シートヒータ３８をパッド部材１２により強固に結合させることができる。

　制御装置４２（ＥＣＵ）は、中央演算処理装置（ＣＰＵ）、ＲＡＭ，ＲＯＭ，記憶装置等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。乗物用シート１には、乗員からのエアセル３２の駆動及び停止指示と、乗員からシートヒータ３８の駆動及び停止指示とを受け付ける受付部８２が設けられている。

　制御装置４２は受付部８２に接続されている。制御装置４２は受付部８２にエアセル３２への駆動指示に対応する入力があり、且つ、着座センサ３６によって乗員の着座が検知されているとき（より詳細には、全ての感圧スイッチ５２がオンとなっているとき）には、ポンプ５０を駆動し、電磁弁４８を所定時間ごとに吸気位置と排気位置との間で切り替える。電磁弁４８が吸気位置にあるときには、ポンプ５０から圧送された空気がチューブ４４内に流入する。これにより、エアセル３２が膨張し、着座面８のエアセル３２が設けられた部分が膨出する。電磁弁４８が排気位置にあるときにはエアセル３２の内部の空気がチューブ４４を介して排気ポート４８Ｂから排出され、エアセル３２が収縮する。これにより、エアセル３２は断続的に膨張及び収縮を繰り返す。受付部８２に駆動停止に対応する入力があると、制御装置４２はポンプ５０を停止し、電磁弁４８を排気位置とする。これによりエアセル３２の内部の空気が排気ポート４８Ｂから排出され、エアセル３２が収縮する。

　制御装置４２は、受付部８２にシートヒータ３８への駆動指示に対応する入力があり、且つ、着座センサ３６によって乗員の着座が検知されているときには、温度調節装置４０を駆動させて、シートヒータ３８を所定の温度にする。本実施形態では、制御装置４２は、受付部８２において、駆動指示とともに、乗員から希望する着座面８の温度設定（例えば、ＨＩＧＨ，ＬＯＷ等）を受け付け、制御装置４２は、温度設定に対応する温度を通知する信号を温度調節装置４０に出力し、温度調節装置４０はシートヒータ３８を温度設定に対応する温度となるように制御する。

　次に、このように構成した乗物用シート１の効果について説明する。乗員が受付部８２にエアセル３２への駆動指示（膨張指示）に対応する入力を行うと、エアセル３２の膨張に伴って表皮材１３が膨出し、乗員の大腿部が押圧される。これにより、乗員の大腿部がマッサージされ、乗員をリラックス又はリフレッシュさせることができる。

　更に、乗員が受付部８２にシートヒータ３８の駆動指示に対応する入力を行うと、シートヒータ３８が駆動し、シートクッション５の上面（すなわち、着座面８）が温められて、シートクッション５の表面温度が上昇する。このように、乗員が受付部８２に入力を行うことで、シートクッション５の表面温度を上昇させることができるため、乗員それぞれが着座する乗物用シート１の着座面８を自らに適した温度にすることができる。

　本実施形態では、図６に示すように、ヒータ中央部６０は左右のエアセル３２の間を通過し、左右のヒータ側部６２は左右のエアセル３２の左右外側に位置している。また、ヒータ横連結部６４はエアセル３２の間を通過している。これにより、図６に示すように、シートヒータ３８とエアセル３２とは表裏方向に互いに重なり合わない位置にある。

　図７に示すように、シートヒータ３８の一部がエアセル３２に表裏方向に重なり合う場合においても、乗員が受付部８２にシートヒータ３８の駆動指示に対応する入力を行うと、シートクッション５の着座面８が温められるため、乗物用シート１に着座した乗員に適した温度環境を提供することができる。

　しかし、シートヒータ３８とエアセル３２とが表裏方向に重なり合う場合には、シートクッション５が厚くなるという問題がある。また、図８（Ａ）に示すように、エアセル３２の膨張によって、シートヒータ３８が乗員側に押し出されるため、シートヒータ３８が移動したり、折れ曲がったりする（すなわち、シートヒータ３８が予期しない挙動を示す）虞や、ヒータ線７０に引張荷重が加わる虞がある。

　本実施形態では、シートヒータ３８とエアセル３２とは表裏方向に互いに重なり合わない位置にあるため、シートクッション５の厚みを抑えることができる。よって、乗物用シート１の小型化を図ることができる。更に、シートヒータ３８とエアセル３２とは表裏方向に互いに重なり合わないため、図８（Ｂ）に示すように、エアセル３２の膨張による荷重がシートヒータ３８に加わり難い。よって、シートヒータ３８が移動したり、折れ曲がったりすることが防止できる。また、シートヒータ３８とエアセル３２とが重なり合わないため、エアセル３２の膨張によって、シートヒータ３８に過剰な引張荷重が加わることが防止できる。

　感圧スイッチ５２はシートクッション５の着座面８後部、及び、シートバック６の前面下部にそれぞれ設けられている。そのため、乗員が乗物用シート１に十分深く腰掛けていない場合におけるシートヒータ３８の駆動及びエアセル３２の膨張収縮が防止できる。これにより、乗員の意図しないシートヒータ３８の駆動及びエアセル３２の膨張収縮が防止できる。

＜＜第２実施形態＞＞
　第２実施形態に係る乗物用シート１０１は、シートヒータ３８の構成のみが第１実施形態と異なり、他の構成については第１実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。

　シートヒータ３８は、第１実施形態と同様に、パッド中央部１４の上面に配置された略矩形状のヒータ中央部６０と、左右のパッド側部１５にそれぞれ配置された左右一対のヒータ側部６２とを含む。

　図９に示すように、ヒータ中央部６０は左右縁部においてエアセル３２に重なり合っている。図９（Ａ）に示すように、シートヒータ３８の基布６８には、エアセル３２に重なり合う部分（図９（Ｂ）参照）を含めて、蛇行するヒータ線７０のうち、隣り合うヒータ線７０の間の適所にはスリット１０２が設けられている。これにより、シートヒータ３８には、エアセル３２の膨張によって変形が容易な変形容易部１０３が構成されている。

　本実施形態では、スリット１０２の少なくとも一部は表裏方向にエアセル３２に重なるように設けられている。

　次に、このように構成した乗物用シート１０１の効果について説明する。シートヒータ３８の基布６８にはスリット１０２が設けられることによって、エアセル３２に重なる重合部に変形容易部１０３が構成される。これにより、エアセル３２が膨張した場合であっても、シートヒータ３８が追従して変形する。これにより、シートヒータ３８に過剰な引張力が加わることが防止でき、シートヒータ３８によってエアセル３２の膨張が阻害されることが防止できる。これにより、エアセル３２からの圧力を乗員に適切に加えることができる。

　また、基布６８にスリット１０２を設けることによって、例えば、基布６８を局所的に薄くする、又は、局所的に変形し易い布材で構成する等の場合に比べて、変形容易部１０３を容易に構成することができるとともに、変形容易部１０３の構成が簡素になる。

　本実施形態では、スリット１０２の少なくとも一部はエアセル３２に表裏方向に重なり合っているため、シートヒータ３８の変形容易部１０３がエアセル３２の近傍に形成される。これにより、シートヒータ３８がエアセル３２の膨張により追従し易くなる。

　エアセル３２が膨張すると、エアセル３２の近傍に設けられたスリット１０２はより開口するように変形する。そのため、スリット１０２とヒータ線７０とが交差する場合にはヒータ線７０に引張荷重が加わる。本実施形態では、スリット１０２は隣り合うヒータ線７０の間に設けられているため、スリット１０２とヒータ線７０とが交差する場合に比べて、エアセル３２の膨張に伴ってヒータ線７０に加わりうる荷重を低減することができる。

＜＜第３実施形態＞＞
　第３実施形態に係る乗物用シート１５１は、シートヒータ３８の構成のみが第１実施形態と異なり、他の構成については第１実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。

　ヒータ中央部６０は左右縁部においてエアセル３２に重なり合っている。図１０（Ａ）に示すように、ヒータ線７０はヒータ中央部６０において、左右方向（第１の方向）に蛇行しながら延びた複数の蛇行部１５２と、２つの蛇行部１５２の端部をつなぐ接続部１５３とを備えている。蛇行部１５２は前後に並ぶように配置され、接続部１５３は前後方向（第２の方向）に延び、隣接する蛇行部１５２を接続している。これにより、ヒータ線７０は、ヒータ中央部６０において、左右方向に蛇行しながら延び、前後方向に繰り返して折り返すように構成されている。

　シートヒータ３８の基布６８には、複数のスリット１５５が設けられている。スリット１５５は、２つの蛇行部１５２の間に設けられている。スリット１５５は左右方向に延びるスリット横部１５６（第１の部分）と、スリット横部１５６に直交し、前後方向に延びるスリット縦部１５７（第２の部分）とを含む。本実施形態では、図１０（Ｂ）に示すように、スリット縦部１５７はエアセル３２の中央部に重なる位置に設けられている。

　２つの蛇行部１５２の前後間隔はエアセル３２の前後幅よりも小さく、少なくとも一つの蛇行部１５２と、少なくとも一つの接続部１５３と、少なくとも一つのスリット１５５がエアセル３２に重なり合っている。

　次に、第３実施形態に係る乗物用シート１の効果について説明する。エアセル３２が膨張すると、シートヒータ３８のエアセル３２の上側に設けられた部分が上方に押し上げられる。

　シートヒータ３８のエアセル３２の上側に設けられた部分には、蛇行部１５２、接続部１５３、及び、スリット１５５が少なくとも一つずつ設けられている。そのため、エアセル３２の膨張に追従するように、ヒータ線７０及び基布６８が容易に変形する。換言すれば、蛇行部１５２、接続部１５３、及び、スリット１５５によって、シートヒータ３８のエアセル３２の上側に設けられた部分には、エアセル３２の膨張に追従するように、変形が容易な変形容易部１６０が構成されている。これにより、基布６８及びヒータ線７０に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。

　本実施形態では、スリット１５５は左右方向に延びるスリット横部１５６と、前後方向に延びるスリット縦部１５７とを含む。そのため、スリット１５５が左右方向及び前後方向いずれの方向にも開裂することができる。よって、スリット１５５が左右又は前後にのみ延びる場合に比べて、基布６８がエアセル３２の膨張により追従するようにより変形し易くなる。

＜＜第４実施形態＞＞
　図１１に示すように、乗物用シート１５１は、車両の車室２０２の底部を画定するフロア２０３に車両前方を向くように載置されている。本実施形態では、乗物用シート１５１は運転席側方の助手席を構成する。

　乗物用シート１５１は、フロア２０３に結合されたシートクッション２０５と、シートクッション２０５の後部に結合されたシートバック２０６と、シートバック２０６の上側に設けられたヘッドレスト２０７とを有する。シートクッション２０５は着座する乗員の臀部及び大腿部を支持する。シートバック２０６は着座する乗員の腰部及び背部の後方に位置し、ヘッドレスト２０７は着座する乗員の頭部後方に位置する。

　乗物用シート１５１は、図１２に示すように、流体封入部材としてのエアセル２０９と、エアセル２０９それぞれを給排気するエアセル駆動装置２１０とを備えている。エアセル２０９はシートクッション２０５の内部に複数設けられている。エアセル２０９はシートクッション２０５の内部に概ね乗員の左右の大腿部に対応する位置にそれぞれ、左右に対をなすように配置されている。本実施形態では、左右に対をなすエアセル２０９が前後に列（本実施形態では３列）をなすように設けられている。エアセル駆動装置２１０が駆動すると、エアセル２０９がそれぞれ給排気されて膨張及び収縮を繰り返し、乗員の臀部や大腿部が押圧される。これにより、乗員の大腿部がマッサージされ、乗員にリラックス効果がもたらされると期待される。

　更に、乗物用シート１５１のシートクッション２０５の内部には流路２３８（通気路）が形成されている。この流路２３８は、乗物用シート１５１に設けられた送風機２３９（図１２参照）からの風をシートクッション２０５の座面に導くための通路である。

　次に、シートクッション２０５の構造について、図面を参照して詳細に説明する。

　図１３及び図１４に示すように、シートクッション２０５は、車体に支持されてシートクッション２０５の骨格を形成するクッションフレーム２１２と、クッションフレーム２１２に支持されたパッド部材２１３と、パッド部材２１３の表面を覆う表皮材２１４とを有する。表皮材２１４は、シートクッション２０５の意匠面を構成するものであって、エアセル２０９の膨張によって伸長する伸縮可能な布材によって構成されていることが好ましい。

　パッド部材２１３は、図１３～図１５に示すように、クッションフレーム２１２に支持されたパッド本体２１６と、パッド本体２１６の上面の一部に積層された流路形成片２１７と、流路形成片２１７に結合された硬質部材２１８と、流路形成片２１７及び硬質部材２１８の上面に積層され、かつ表皮材２１４に覆われた上部形成片２１９とを有している。パッド本体２１６、流路形成片２１７、及び、上部形成片２１９はそれぞれ弾性変形可能であり、発泡ウレタンなどの発泡樹脂で形成されている。本実施形態では、パッド本体２１６、流路形成片２１７、及び、上部形成片２１９はともに同種の素材から構成されている。

　パッド本体２１６は、シートクッション２０５の下部を構成する略直方体状の部材であって、図１３及び図１４に示すように、クッションフレーム２１２に下側から支持されている。図１４、及び、図１５に示すように、パッド本体２１６には上下に貫通する連通孔２２１が設けられている。図１４に示すように、パッド本体２１６の下面にはダクト２２２が結合されている。ダクト２２２は内孔を有する筒状をなしている。本実施形態は、ダクト２２２は蛇腹パイプによって構成されている。ダクト２２２はその内孔が連通孔２２１に通じるように接続された状態で、パッド本体２１６に結合されている。パッド本体２１６には、ダクト２２２をパッド本体２１６に接続するため、接続部材２２３（例えば、ホースニップル等）が設けられているとよい。

　図１５に示すように、流路形成片２１７はシート状（すなわち、板状）をなしている。流路形成片２１７には、上下方向に貫通する一繋がりのスリット２２５（溝、ともいう）が設けられている。本実施形態では、スリット２２５は上下方向視で所定の幅を有し、基端側（後側）から延出端側（前側）に二股に分岐するＹ字状をなしている。スリット２２５の基端は流路形成片２１７がパッド本体２１６に積層されたときに、連通孔２２１に上下に整合する位置に設けられている。

　硬質部材２１８は、前後方向に延在する２つの枝部２２７と、２つの枝部２２７を後端側で連結し、前後に延在する連結部２２８とを備え、スリット２２５に対応するＹ字状をなしている。硬質部材２１８は前後端において封じられ、後端側で２つに分岐した角パイプによって構成されている。枝部２２７、及び連結部２２８の内部にはそれぞれの延在方向に空洞が形成され、枝部２２７の空洞後端と連結部２２８の空洞前端とは互いに連結されている。枝部２２７の空洞の前端と、連結部２２８の後端とはそれぞれ封じられている。これにより、硬質部材２１８の内部にはスリット２２５に対応するＹ字状の内部空間２３１が形成されている。硬質部材２１８は例えばパッド本体２１６、流路形成片２１７、及び、上部形成片２１９よりも硬質の素材（例えば、プラスチックや金属等）によって構成され、外部からの圧力に対して変形し難くなっている。

　硬質部材２１８は流路形成片２１７と上下方向に概ね同じ厚さを有している。硬質部材２１８はスリット２２５に嵌め込まれ、スリット２２５に収容されている。硬質部材２１８の外壁はスリット２２５を画定する壁面に結合されている。本実施形態では、硬質部材２１８と流路形成片２１７とは一体発泡されることによって形成された一体成型品となっている。

　図１４に示すように、連結部２２８の下壁後部には内部空間２３１に通じる連結部貫通孔２３３が設けられている。連結部貫通孔２３３は、流路形成片２１７がパッド本体２１６に積層されたときに、連通孔２２１に上下方向に重なる位置に設けられている。図１３及び図１５に示すように、枝部２２７の上面前端側には内部空間２３１に通じる枝部連結孔２３４が前後に並ぶように設けられている。

　上部形成片２１９はシートクッション２０５の着座面に沿って延在するシート状（板状）をなしている。上部形成片２１９には上下に貫通する複数の上部貫通孔２３６が設けられている。本実施形態では、上部貫通孔２３６は上部形成片２１９において左右に隣接して配置されて対を構成している。以下、上部貫通孔２３６の対を上部貫通孔対２３６Ｐと記載する。上部貫通孔対２３６Ｐは左右に間隔をおいて、前後に列をなすように設けられている。上部貫通孔対２３６Ｐは乗物用シート１５１に着座した乗員、すなわち着座者の大腿部に対応する部分に沿って、前後に列をなすように設けられている。

　上部形成片２１９が流路形成片２１７に積層されたときに、上部貫通孔２３６はそれぞれ枝部連結孔２３４に整合し、上下に重なる位置にある。

　パッド本体２１６の上に流路形成片２１７が積層され、流路形成片２１７の上に上部形成片２１９が積層されると、ダクト２２２の内部と、連結部貫通孔２３３の内部と、硬質部材２１８の内部空間２３１と、上部貫通孔２３６の内部とが接続されて、それぞれを順に通過する流路２３８が形成される。

　ダクト２２２には送風機２３９（図１２参照）が接続されている。送風機２３９が駆動すると、送風機２３９から空気がダクト２２２内に送り込まれる。ダクト２２２に送り込まれた空気は流路２３８を介して、上部貫通孔２３６から排出される。上部貫通孔２３６から排出された空気は、表皮材２１４を通過して、着座者の大腿部に達する。このように、送風機２３９からの風は流路２３８を流れて着座者に到達する。

　エアセル２０９は流体である空気を封入することのできる袋状の部材であって、ゴム材料等の伸縮可能な材料で形成されている。空気が供給されることによってエアセル２０９は膨張する。また、空気が供給された状態にあるときに空気が排出されると、エアセル２０９は収縮する。エアセル２０９はそれぞれ、上部形成片２１９の上面（表面側の面）に結合されている。

　本実施形態では、上部形成片２１９の上面には、エアセル２０９に対応する位置にそれぞれ下方に凹む凹部２４０が形成されている。凹部２４０はそれぞれ上面視で略方形をなしている。上部貫通孔対２３６Ｐは上部形成片２１９の上面においてそれぞれ凹部２４０に重なり合うことがない、すなわち凹部２４０を避けた位置に設けられている。よって、上部貫通孔対２３６Ｐはそれぞれ上部形成片２１９の上面において凹部２４０の外側において開口している。本実施形態では、隣接するエアセル２０９の間において上部貫通孔対２３６Ｐが開口している。これにより、流路２３８は隣接するエアセル２０９の間に通じ、流路２３８を介して隣接するエアセル２０９の間の空間（空隙）にアクセス可能となっている。

　エアセル２０９はそれぞれ凹部２４０の内部に収容された状態で、上部形成片２１９に結合されている。すなわち、エアセル２０９はパッド部材２１３の上面側に結合された状態で、表皮材２１４によって上方から覆われている。このとき、図１６に示すように、エアセル２０９はそれぞれ硬質部材２１８に上下方向に重なっている。

　エアセル２０９はそれぞれチューブ（不図示）に結合されている。チューブはそれぞれパッド部材２１３の表側からその内部を通過し、パッド部材２１３の裏側に達し、エアセル駆動装置２１０に接続されている。

　図１２に示すように、エアセル駆動装置２１０は、エアセル２０９にチューブを介して接続された給排気装置２４２と、給排気装置２４２を制御する制御装置２４３とを含む。給排気装置２４２は制御装置２４３からの信号に基づいて、エアセル２０９それぞれを給排気し、エアセル２０９それぞれを膨張収縮させる。

　給排気装置２４２はエアセル２０９それぞれにチューブを介して接続された電磁弁２４５と、ポンプ２４６を含む。電磁弁２４５は吸気ポート２４５Ａ、排気ポート２４５Ｂ、及び、共通ポート２４５Ｃを備えた三方弁である。電磁弁２４５の吸気ポート２４５Ａはチューブ等を介してポンプ２４６に接続されている。排気ポート２４５Ｂは大気開放されている。共通ポート２４５Ｃはダクト２２２に接続されている。電磁弁２４５はそれぞれ制御装置２４３からの信号に基づいて、共通ポート２４５Ｃが吸気ポート２４５Ａに接続する吸気位置と、共通ポート２４５Ｃが排気ポート２４５Ｂに接続する排気位置との間で切り替わる。ポンプ２４６は制御装置２４３からの信号に基づいて、チューブ内に空気を圧送すべく駆動する。

　乗物用シート１５１には、乗員からのエアセル２０９の駆動指示、及び、停止指示を受け付ける受付部２４８（図１１参照）が設けられている。受付部２４８に駆動指示に対応する入力があると、制御装置２４３はポンプ２４６を駆動し、電磁弁２４５を所定時間ごとに吸気位置と排気位置との間で切り替える。電磁弁２４５が吸気位置にあるときには、ポンプ２４６から圧送された空気がチューブ内に流入し、エアセル２０９が膨張する。電磁弁２４５が排気位置にあるときにはエアセル２０９の内部の空気がチューブを介して排気ポート２４５Ｂから排出され、エアセル２０９が収縮する。これにより、エアセル２０９は断続的に膨張及び収縮を繰り返す。受付部２４８に駆動停止に対応する入力があると、制御装置２４３はポンプ２４６を停止し、電磁弁２４５を排気位置とする。これによりエアセル２０９の内部の空気が排気ポート２４５Ｂから排出され、エアセル２０９が収縮する。このように、制御装置２４３は電磁弁２４５それぞれの開閉を制御することによって、対応するエアセル２０９に給排気し、膨張収縮させる。

　次に、本実施形態に係る乗物用シート１５１の効果について説明する。乗員から受付部２４８に駆動指示に対応する入力があると、エアセル２０９は膨張して乗員の大腿部を押し上げる。これにより、エアセル２０９は反力を受けて下方に押し出され、エアセル２０９からパッド部材２１３に圧力が加わる。

　エアセル２０９の背面側（下側）には硬質部材２１８が設けられている。硬質部材２１８によってパッド部材２１３の変形が抑制される。これにより、エアセル２０９の下方（すなわち、パッド部材２１３の側）への移動が防止できる。よって、エアセル２０９の膨張によって生じる荷重がパッド部材２１３に伝わり難くなり、乗員にエアセル２０９からの圧力が加わり易くなるため、マッサージ効果が高まると期待できる。

　また、送風機２３９からの風が流れる流路２３８の一部が硬質部材２１８によって構成されている。着座者からの圧力や、エアセル２０９の膨張による圧力に硬質部材２１８が抗するため、流路２３８の硬質部材２１８によって画定される部分が潰れにくくなり、流路２３８のその部分の変形が防止される。これにより、着座者からの圧力や、エアセル２０９の膨張による圧力によって、送風機２３９からの風を通過させるための流路２３８が潰れ難くなる。よって、着座者に送風機２３９からの風が到達し難くなることを防止することができる。

　また、流路２３８をエアセル２０９に表裏方向視で重なるように配置し、流路２３８のエアセル２０９に表裏方向視で重なる部分を硬質部材２１８によって構成することで、エアセル２０９の背面側に別途硬質部材を設ける必要がなくなる。これにより、乗物用シート１５１の部品数を低減することができる。

　また、本実施形態では、硬質部材２１８と流路形成片２１７とは一体発泡されることによって一体成型された一体成型品となっている。そのため、硬質部材２１８と流路形成片２１７とが別体で構成されている場合に比べて、部品点数を削減することができる。更に、硬質部材２１８を流路形成片２１７に組み込む工程が不要となるため、乗物用シート１５１の組み立てが簡素になる。

　また、本実施形態では、隣接するエアセル２０９の間において上部貫通孔対２３６Ｐが開口している。これにより、パッド部材２１３に設けられた流路２３８が隣接するエアセル２０９の間に通じ、送風機２３９からの風が流路２３８を通過して、隣接するエアセル２０９の間に吹き付けられる。このように、エアセル２０９が膨張しているときに、流路２３８を介して隣接するエアセル２０９の空隙内に送風することができるため、乗物用シート１５１の快適性が向上する。

＜＜第５実施形態＞＞
　第５実施形態に係る乗物用シート３０１は、第４実施形態と同様に、シートクッション２０５の構成が異なる。以下、第５実施形態に係る乗物用シート３０１のシートクッション２０５について、図面を参照して説明する。

　図１７に示すように、第５実施形態に係る乗物用シート３０１のシートクッション２０５は、骨格を形成する第４実施形態と同様のクッションフレーム２１２を有する。また、シートクッション２０５はエアセル２０９と、パッド部材２１３と、表皮材２１４と、流路形成部材３１７と、硬質部材３１８と、を備えている。

　図１８に示すように、パッド部材２１３は上面及び下面を有する略直方体状をなしている。パッド部材２１３は、第４実施形態とは異なり、一体の部材によって構成されている。パッド部材２１３は弾性変形可能であり、発泡ウレタンなどの発泡樹脂で形成されている。

　硬質部材３１８は板状の部材であり、第４実施形態と同様にパッド部材２１３よりも硬質の素材（例えば、プラスチック等）によって構成されて、パッド部材２１３に比べて外部からの圧力に対して変形し難くなっている。硬質部材３１８はパッド部材２１３の下面（裏面）に沿って配置されて、パッド部材２１３の下面に当接している。

　流路形成部材３１７はシート状の部材である。本実施形態では、流路形成部材３１７は、図１７に示すように、２枚の樹脂製のシートを重ね合わせて結合させることによって構成されている。図１８に示すように、流路形成部材３１７の一端側にはダクト２２２が設けられ、他端側には複数の開口３３９が形成されている。流路形成部材３１７の内部には、２つのシートが部分的に結合されておらず、その結合されていない部分によって流路３３８（通路）が形成されている。ダクト２２２はその内部が流路３３８に通じるように、流路形成部材３１７に結合されている。

　流路形成部材３１７は硬質部材３１８の下面から後方に延びて、パッド部材２１３の後面を通過し、パッド部材２１３の上面に達している。このとき、ダクト２２２はパッド部材２１３の下面側に位置し、開口３３９はパッド部材２１３の上面に位置している。本実施形態では、硬質部材３１８と流路形成部材３１７とは接着されて一体をなしている。流路形成部材３１７と硬質部材３１８とは、左右両縁部においてクッションフレーム２１２に下側から支持されている。

　本実施形態では、開口３３９は、図１８に示すように、左右方向に対をなすように流路形成部材３１７に設けられている。以下、開口３３９の対を開口対３３９Ｐと記載する。開口対３３９Ｐは左右に間隔をおいて、前後に列をなすように設けられている。

　エアセル２０９はパッド部材２１３の上側において、流路形成部材３１７と表皮材２１４との間に設けられている。図１８に示すように、エアセル２０９は開口対３３９Ｐを含む流路３３８を避けた位置に配置されている。エアセル２０９は流路形成部材３１７の上面に結合されている。エアセル２０９は第４実施形態と同様に、袋状の部材であって、ゴム材料等の伸縮可能な材料で形成されている。第４実施形態と同様に、エアセル２０９はそれぞれ図示しないチューブを介して、給排気装置２４２に接続されている。エアセル２０９は、左右方向に間隔をおいて、前後に対をなすように配置されている。エアセル２０９は、乗物用シート１５１に着座した乗員の左右の大腿部の下方に位置する。給排気装置２４２は第４実施形態と同様に、制御装置２４３によって制御されて、エアセル２０９に給排気する。これにより、エアセル２０９は膨張収縮し、乗員の臀部及び大腿部をマッサージする。

　表皮材２１４は第４実施形態と同様に、エアセル２０９及びパッド部材２１３の表面を一体として覆っている。表皮材２１４はエアセル２０９の膨張によって伸長する伸縮可能な素材によって構成されている。表皮材２１４は、シートクッション２０５の上面に設けられ、シートクッション２０５の意匠面を構成する。

　ダクト２２２には、第４実施形態と同様に、送風機２３９に接続されている。送風機２３９が駆動すると、送風機２３９によってダクト２２２内に空気が送り込まれる。ダクト２２２に送り込まれた空気は流路３３８を通って着座者に達する。すなわち、送風機２３９は流路３３８を介して着座者に送風する。

　次に、第５実施形態に係る乗物用シート３０１の効果について説明する。

　図１７に示すように、エアセル２０９がパッド部材２１３の上側に位置している。そのため、エアセル２０９が膨張すると、パッド部材２１３に圧力が加わる。

　硬質部材３１８がパッド部材２１３の下側、且つ、エアセル２０９の下方に位置している。そのため、硬質部材３１８がエアセル２０９の膨張による圧力に抗し、パッド部材２１３の下方への変形が抑制される。これにより、エアセル２０９がパッド側（下方）に移動することが防止できるため、乗員にエアセル２０９からの圧力が加わり易くなる。

　また、流路形成部材３１７はシート状をなしている。これにより、パッド部材２１３の表面に流路形成部材３１７を配置することによって、パッド部材２１３の内部に通路を形成することなく、着座者に送風するための流路２３８を容易に形成することができる。

　また、硬質部材３１８と流路形成部材３１７とは接着されて一体をなしている。そのため、硬質部材３１８と流路形成部材３１７とが別体になっているときに比べて、硬質部材３１８と流路形成部材３１７とを一度にパッド部材２１３に組み付けることができるため、乗物用シート３０１の組み立てが容易になる。

＜＜第６実施形態＞＞
　第６実施形態に係る乗物用シート４０１は、第４実施形態に比べて、硬質部材４１８の形状、及び、位置が異なり、他の構成については第４実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。

　硬質部材４１８は、上部形成片２１９の上面に設けられた凹部２４０にそれぞれ収容されている。硬質部材４１８は凹部２４０に整合する平板状をなしている。本実施形態では、凹部２４０及び硬質部材４１８はそれぞれ上面視（すなわち、表裏方向視）で矩形状（方形）をなしている。硬質部材４１８は凹部２４０に嵌め込まれて、上部形成片２１９に結合されている。

　エアセル２０９は、硬質部材４１８に相似な矩形状（方形）をなしている。硬質部材４１８の左右方向の幅はエアセル２０９の左右方向（車幅方向）の幅よりも大きい。硬質部材４１８の前後方向（車幅方向に直交する方向）の幅は、エアセル２０９の前後方向の幅よりも大きい。硬質部材４１８の前後及び左右方向の幅は、エアセル２０９が膨張したときにエアセル２０９はパッド部材２１３に直接当接しない程度に、十分大きく設定されているとよい。

　本実施形態では、更に、硬質部材４１８の縁部には、上方（すなわち、パッド部材２１３の表面から離反する方向）に向かって突出する突出壁４２０が設けられている。突出壁４２０の突出量は凹部２４０の深さ以下に設定されている。これにより、突出壁４２０がパッド部材２１３の表面であって硬質部材４１８の設けられた凹部２４０周辺の部分よりも低くなる。よって、硬質部材４１８が設けられることによって着座者が受ける異物感を抑えることができる。

　また、エアセル２０９の収縮時の厚さは突出壁４２０の突出量よりも大きく設定するとよい。これにより、突出壁４２０が硬質部材４１８に収容されたエアセル２０９の上面よりも低くなる。よって、硬質部材４１８が設けられることによって着座者が受ける異物感を抑えることができる。

　次にこのように構成した乗物用シート４０１の効果について説明する。図２０に示すように、パッド本体２１６の上面には、流路形成片２１７と、上部形成片２１９とが順に重ね合わされている。

　送風機２３９が駆動すると、ダクト２２２内に空気が流入する。ダクト２２２の内部に送り込まれた空気は、連通孔２２１、スリット２２５、及び、上部貫通孔２３６を介して、パッド部材２１３の上面に達する。すなわち、送風機２３９は流路２３８を介して着座者に送風する。

　流路２３８はエアセル２０９の背面側を通過している。そのため、乗物用シート４０１をコンパクトにすることができ、乗物用シート４０１の小型化を図ることができる。

　給排気装置２４２が駆動してエアセル２０９が膨張すると、エアセル２０９から硬質部材４１８に圧力が加わる。硬質部材４１８はエアセル２０９よりも上面視で大きく、エアセル２０９が膨張したときに、エアセル２０９は硬質部材４１８に支持されて、パッド部材２１３に直接当接しない。これにより、エアセル２０９の膨張による圧力が直接パッド部材２１３に加わることが防止される。また、圧力が硬質部材４１８によってパッド部材２１３に分散して加わるため、パッド部材２１３が変形し難くなる。これにより、エアセル２０９が硬質部材４１８に裏側から支持されて、エアセル２０９のパッド部材２１３の側への移動が防止されるため、着座者にエアセル２０９からの圧力が加わり易くなる。更に、流路２３８が設けられたパッド部材２１３に圧力が分散されて加わるため、流路２３８が変形して送風機２３９によって送り込まれた空気（流体）が通り難くなることを防止することができる。

　硬質部材４１８の左右方向の幅は、エアセル２０９の左右方向の幅よりも大きいため、エアセル２０９を左右方向に確実に硬質部材４１８によって支持することができる。また、硬質部材４１８の前後方向の幅は、エアセル２０９の前後方向の幅よりも大きいため、エアセル２０９を前後方向に確実に支持できる。また、硬質部材４１８を大きくすることによって、パッド部材２１３に加わる圧力をより分散させることができる。よって、流路２３８が変形して送風機２３９によって送り込まれた空気（流体）が通り難くなることをより確実に防止することができる。

　本実施形態では、硬質部材４１８の前後及び左右方向の幅は、エアセル２０９が膨張したときにエアセル２０９はパッド部材２１３に直接当接しない程度に、十分大きく設定されている。これにより、エアセル２０９は膨張時に硬質部材４１８によってより広い範囲で支持され、膨張時にエアセル２０９がパッド部材２１３に接触することが防止できるため、エアセル２０９の膨張による荷重を乗員に効果的に伝達することができる。

　更に、硬質部材４１８の縁部にはエアセル２０９の側に突出する突出壁４２０が設けられている。これにより、エアセル２０９が膨張時に前後左右方向に膨張してパッド部材２１３に接触することが抑制される。これにより、膨張時にエアセル２０９がパッド部材２１３に接触することが防止され、エアセル２０９の膨張による荷重をより効果的に乗員に伝達することができる。

＜＜第７実施形態＞＞
　第７実施形態に係る乗物用シート５０１は、シートクッション２０５の構造が第１～第６実施形態のいずれの実施形態とも異なり、他の構成については、他の実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。

　第７実施形態に係る乗物用シート５０１のシートクッション２０５は、骨格となるクッションフレーム２１２と、クッションフレーム２１２に支持されたパッド部材５１３と、パッド部材５１３の上面に設けられたエアセル２０９と、エアセル２０９及びパッド部材５１３を上方から覆う表皮材２１４とを備えている。

　クッションフレーム２１２については、第４実施形態と同様である。パッド部材５１３は、第５実施形態と同様であって、上面及び下面を有する略直方体状をなし、一体の部材によって構成されている。パッド部材５１３は弾性変形可能であり、発泡ウレタンなどの発泡樹脂で形成されている。

　図２１（Ａ）に示すように、パッド部材５１３の上面には下方に凹む吊り込み溝５１４が設けられている。図２１（Ｂ）に示すように、吊り込み溝５１４は上面視でＵ字状をなすＵ字溝部５１５と、左右に延在する横溝部５１６とを備えている。Ｕ字溝部５１５はそれぞれ前後に延在し、左右に対をなす２つのＵ字溝縦部５１５Ａと、左右に延び、Ｕ字溝縦部５１５Ａの後端を接続するＵ字溝横部５１５Ｂとを備えている。Ｕ字溝横部５１５Ｂは横溝部５１６の後方に位置し、左右のＵ字溝縦部５１５Ａを接続している。吊り込み溝５１４の内部にはそれぞれ適所に表皮材２１４を掛け止めするためのフック（不図示）が設けられている。

　パッド部材５１３の上面には、エアセル２０９を収容するための凹部２４０が設けられている。凹部２４０は、第４実施形態と同様のものであって、下方に凹み、上面視で略方形をなしている。本実施形態では、凹部２４０は、Ｕ字溝横部５１５Ｂの前方であり、且つ、左右のＵ字溝縦部５１５Ａの間の部分に複数設けられている。凹部２４０は、パッド部材５１３の上面において、左右に対をなして、前後に列（本実施形態では３列）をなすように配置されている。

　パッド部材５１３の上面には、凹部２４０それぞれから左右外方向に延び、Ｕ字溝部５１５（より詳細には、Ｕ字溝縦部５１５Ａ）に達する通し溝５１７が設けられている。Ｕ字溝部５１５にはそれぞれ、通し溝５１７の左右外側において、パッド部材５１３を上下方向に貫通する通し孔５１８が設けられている。

　エアセル２０９はそれぞれ凹部２４０に収容されている。エアセル２０９には内部に給排気するためのチューブ５１９が接続されている。チューブ５１９はそれぞれ通し溝５１７、及び、通し孔５１８を通過して、パッド部材５１３の下側に延び、それぞれ給排気装置２４２に接続されている。チューブ５１９はそれぞれ屈曲変形可能であり、パッド部材５１３よりも硬質の素材によって形成されている。

　第４実施形態と同様に、パッド部材２１３の内部には流路２３８が形成されている。送風機２３９が駆動すると、送風機２３９からダクト２２２に送り込まれた空気が流路２３８を介して着座者に到達する。すなわち、送風機２３９は流路２３８を介して着座者に送風する。

　次にこのように構成した乗物用シート５０１の効果について説明する。本実施形態に係る乗物用シート５０１では、チューブ５１９が吊り込み溝５１４を通過するように設けられているため、エアセル２０９にチューブ５１９を接続するための孔や溝を少なくすることができる。よって、乗物用シート５０１の構成が簡素になる。

＜＜第８実施形態＞＞
　本発明に係る乗物用シート装置の第８実施形態を、図２２～図２５を参照して説明する。

　図２２に示されているように、乗物用シート装置６１０は、自動車用のシート装置であり、自動車のフロアパネル（不図示）に設置される左右のガイドレール６１２（ロアレール）にスライド可能に係合したスライダ６１４（アッパレール）上に設けられ、前後方向位置を変更可能である。

　乗物用シート装置６１０は、スライダ６１４に固定されたシートクッションフレーム６１６と、シートクッションフレーム６１６の後部に左右方向（横方向）に延在する支持軸６１８と、支持軸６１８に取り付けられた下端を含み、支持軸６１８を中心として傾動可能なシートバックフレーム６２０とを有する。シートクッションフレーム６１６の上部には着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション６２２が取り付けられている。シートバックフレーム６２０の前部には着座者の背もたれをなすシートバック６２４が取り付けられている。シートバック６２４の上部にはヘッドレスト６２６が取り付けられている。

　シートクッションフレーム６１６は、前後方向に互いに平行に延在する左右のサイドメンバ６３０と、左右方向に延在して左右のサイドメンバ６３０の前部を互いに連結する前部パン６３２と、左右方向に延在して左右のサイドメンバ６３０の後部を互いに連結する後部ロッド６３４とを含み、平面視で四角枠状をなす。

　シートクッション６２２は、発泡ポリウレタン樹脂等によるパッド部材６４０と、パッド部材６４０の底面を除く外面を覆う表皮６４２とを有し、平面視で四角形状をなす。シートクッション６２２は、左右両側を左右のサイドメンバ６３０により、前部を前部パン６３２により、後部を後部ロッド６３４により各々支持され、略水平な上面を呈するように延在する。

　表皮６４２は、皮革、樹脂シート、織布等により構成されている。表皮６４２は、図２３に示されているように、パッド部材６４０の前部６４０Ａに沿って延在する前部６４２Ａを有する。表皮６４２の前部６４２Ａは、下側の所定の上下長をもって上下に折り返されて前後に重なり合った折返し部６４６を有する。折返し部６４６は、重ね合わせ状態を維持すべく、両面粘着テープ（不図示）等によって隣接するもの同士を互いに貼り合わされている。

　折返し部６４６は、後述するエアバッグ装置６５４の展開動作により生じるパッド部材６４０の隆起変形を許容するように、所定値以上の張力を受けることにより、貼り合わせ破壊のもとに、表皮６４２の上面部の前後長を増大すべく伸長する展開部をなす。尚、ここで云う張力は、表皮６４２の上面においては前後方向である縦方向の張力である。

　表皮６４２は、折返し部６４６の下端から後方に折曲してパッド部材６４０の下方を後方に向けて延在し、後方延在部６４２Ｂの末端に縫合６４８等によって係止用金具６５０が取り付けられている。係止用金具６５０は先端のフック部６５０Ａをもって前部パン６３２の後縁部６３２Ａに係合している。この係合により、定常状態下で表皮６４２に所定の張力が付与される。この定常状態下で表皮６４２に付与される張力は、折返し部６４６の貼り合わせが破壊されない程度に設定される。

　前部パン６３２は図２４に示されているように、左右方向に長い窪み部６３２Ｂを含む。前部パン６３２の上面には前部パン６３２の上面形状と同等の下面形状を有するマウントブラケット６５２がリベット等の締結具６５６によって固定されている。マウントブラケット６５２が窪み部６３２Ｂに対応する部分にはエアバッグ装置６５４が取り付けられている。エアバッグ装置６５４は、インフレータ（不図示）及びエアバッグ（不図示）を含み、外部からの電気信号によってインフレータが動作することにより、エアバッグが膨張する。以降、このエアバッグの膨張をエアバッグ装置６５４の展開動作と云う。エアバッグ装置６５４の展開動作は、自動車の衝突時等、所定値以上の前後加速度が乗物用シート装置６１０及び着座者に作用した時に行われてよい。

　パッド部材６４０の、エアバッグ装置６５４と対応する前後方向の位置に於ける上面には、左右方向（横方向）に延在する溝６４１が形成されている。

　外部からの電気信号によってエアバッグ装置６５４が展開動作すると、パッド部材６４０の前部が、エアバッグ装置６５４の真上を頂点として、上向きに山形に隆起するように変形する。パッド部材６４０の前部が隆起変形すると、着座者の大腿部が隆起変形に沿って持ち上げられる。この動作により、パッド部材６４０の隆起変形が着座者の下半身がシートクッション６２２から前滑りすることに対する抵抗となって、サブマリン現象の発生が抑制される。

　パッド部材６４０が隆起変形すると、表皮６４２に所定値以上の張力が作用する。この張力により、表皮６４２の折返し部６４６の貼り合わせが破壊され、折返し部６４６が展開する。これにより、表皮６４２の上面部の前後長が増大すべく伸長する。

　この挙動により、エアバッグ装置６５４の展開動作によってパッド部材６４０が隆起変形することが、表皮６４２によって阻害されることが低減し、パッド部材６４０の隆起変形が良好に行われ、所要のサブマリン抑制効果が得られる。

　溝６４１が設けられていることにより、エアバッグ装置６５４の展開動作によるパッド部材６４０の隆起変形に必要な力が低減する。これにより、大出力のエアバッグ装置６５４が用いられなくても、パッド部材６４０の隆起変形が確実に行われ、サブマリン抑制効果の確実性が向上する。

　外部から電気信号をエアバッグ装置６５４に送るために、図２２に示されているように、前部パン６３２上にハーネス６５８（電線）が配線される。ハーネス６５８は前部パン６３２の前部フランジ部６３２Ｃの上面とシートクッション６２２のパッド部材６４０の下面との間を延在してエアバッグ装置６５４に接続される。

　前部フランジ部６３２Ｃの上面には、図２２及び図２４に示されているように、ハーネス６５８の、前部フランジ部６３２Ｃの上面を前後に延在する部分を略全長に亘って覆うカバー部材６６０が設けられている。カバー部材６６０は、図２５（Ａ）に示されているように、電気絶縁性の樹脂成形品であり、ハーネス６５８を収容する半円筒部６６０Ａと、半円筒部６６０Ａの両縁部より各々外方に延出したフランジ部６６０Ｂと、フランジ部６６０Ｂの下面より下方に延出した逆止形状の複数の係止爪部６６２とを有する。カバー部材６６０は、各係止爪部６６２が前部フランジ部６３２Ｃに形成された貫通孔６３２Ｄに挿入されることにより前部パン６３２に固定される。

　カバー部材６６０は、着座時の衝撃や振動やパッド部材６４０の隆起変形等により、ハーネス６５８がパッド部材６４０と干渉することにより断線することを防止する。

　カバー部材６６０は、図２５（Ｂ）に示されているように、左右の２個の半体６６４、６６６の組み合わせにより構成されていてもよい。この場合には、半体６６４、６６６の各々のフランジ部６６４Ａ、６６６Ａに係止爪部６６２が形成される。カバー部材６６０は、図２５（Ｃ）に示されているように、ハーネス６５８の受入部６６８がヒンジ６６８Ａにより開閉可能な半割構造になっていてもよい。この場合には、受入部６６８の基部６６８Ｂに係止爪部６６２が形成される。

＜＜第９実施形態＞＞
　本発明に係る乗物用シート装置の第９実施形態を、図２６を参照して説明する。なお、図２６において、図２に対応する部分は、図２３に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。

　表皮６４２は後方延在部６４２Ｂの末端部６４２Ｃと前後に重なり合う末端部６８０Ａを有する補助表皮６８０を含む。補助表皮６８０には縫合６４８等によって係止用金具６５０が取り付けられている。係止用金具６５０は先端のフック部６５０Ａをもって前部パン６３２の後縁部６３２Ａに係合している。

　末端部６４２Ｃと末端部６８０Ａとは、所定の縦方向長をもって互いに重なり合い、エアバッグ装置６５４の展開動作時に破断可能な第１の接合部６８２と、第１の接合部６８２よりも末端部６４２Ｃ、６８０Ａの端末側に位置し、エアバッグ装置６５４の展開動作時に破断不能に接合する第２の接合部６８４とにより２段階に互いに接合され、表皮６４２の縦方向長を伸長する展開部をなす。第１の接合部６８２と第２の接合部６８４とは縫合強さが互いに異なる縫合や接着強度が互いに異なる接着等によるものである。

　定常時には、図２６に示されているように、第１の接合部６８２及び第２の接合部６８４が破断しておらず、第１の接合部６８２と第２の接合部６８４とが所定の縦方向長をもって互いに重なり合った状態にある。

　エアバッグ装置６５４の展開動作により、パッド部材６４０の前部が隆起変形すると、表皮６４２に所定値以上の張力が作用し、第１の接合部６８２が破断する。これにより、末端部６４２Ｃと末端部６８０Ａとの重なり合いが互いに離れ、表皮６４２が上面部の前後長を増大すべく伸長する。

　この挙動により、エアバッグ装置６５４の展開動作によってパッド部材６４０が隆起変形することが、表皮６４２によって阻害されることが低減し、パッド部材６４０の隆起変形が良好に行われ、この実施形態でも、所要のサブマリン抑制効果が得られる。

　第２の接合部６８４は、エアバッグ装置６５４の展開動作後も接合状態を維持するから、パッド部材６４０が外部に露呈することがない。

　尚、表皮６４２と補助表皮６８０とが一体で、末端部６４２Ｃと末端部６８０ＡとはＵ字形に折曲したものであてもよい。この場合には、第２の接合部６８４は省略されてよい。

＜＜第１０実施形態＞＞
　本発明に係る乗物用シート装置の第１０実施形態を、図２７を参照して説明する。なお、図２７において、図２３に対応する部分は、図２３に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。

　パッド部材６４０は前後方向の中間部を左右方向に延在する吊込み溝６８６を有する。吊込み溝６８６はパッド部材６４０の上面に開口した有底溝である。

　表皮６４２は、パッド部材６４０の吊込み溝６８６より後側を覆う後側表皮６４３及びパッド部材６４０の吊込み溝６８６より前側を覆う前側表皮６４５を含む。後側表皮６４３は前末端部６４３Ａを吊込み溝６８６に落とし込まれている。前側表皮６４５は後末端部６４５Ａを吊込み溝６８６に落とし込まれている。前末端部６４３Ａと後末端部６４５Ａとは、所定の縦方向長に亘って互いに重なり合い、端末部に縫合６８８によってアンカ部材６９０を連結されている。

　パッド部材６４０は、吊込み溝６８６の底部固定された樹脂成形品によるクリップ部材６９２を有する。クリップ部材６９２は、前後一対の把持爪部６９２Ａ及び前側の把持爪部６９２Ａからエアバッグ装置６５４の直上位置に対応する前後方向位置にまで延出した横転Ｕ字形状の作動アーム部６９２Ｂを有する。

　前後一対の把持爪部６９２Ａは、定常状態下で、後側表皮６４３及び前側表皮６４５を縦方向の張力を与えた状態でアンカ部材６９０を弾発的に把持する、作動アーム部６９２Ｂは、エアバッグ装置６５４の展開動作時にエアバッグ装置６５４から上向きの力を遊端に受けることにより、前後一対の把持爪部６９２Ａを互いに離れる方向に変形させる。

　これにより、エアバッグ装置６５４が展開動作すると、アンカ部材６９０がクリップ部材６９２との係合より離脱し、後側表皮６４３の前末端部６４３Ａ及び前側表皮６４５の後末端部６４５Ａが吊込み溝６８６から上方に自由に抜け出すことができる状態になる。

　エアバッグ装置６５４の展開動作によりパッド部材６４０の前部が隆起変形する際には、後側表皮６４３の前末端部６４３Ａ及び前側表皮６４５の後末端部６４５Ａが吊込み溝６８６から上方に自由に抜け出すことができ、表皮６４２の縦方向の伸長が抵抗で行われ得る状態にある。

　これにより、エアバッグ装置６５４の展開動作によってパッド部材６４０が隆起変形することが、表皮６４２によって阻害されることが低減し、パッド部材６４０の隆起変形が良好に行われ、この実施形態でも、所要のサブマリン抑制効果が得られる。

　この実施形態では、吊込み溝６８６が第８実施形態の溝６４１と同等の作用をし、エアバッグ装置６５４の展開動作によるパッド部材６４０の隆起変形に必要な力が低減する。

＜＜第１１実施形態＞＞
　本発明に係る乗物用シート装置の第１１実施形態を、図２８を参照して説明する。なお、図２８において、図２７に対応する部分は、図２７に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。

　第１１実施形態では、吊込み溝６８６及びクリップ部材６９２がエアバッグ装置６５４の真上位置に対応する位置にクリップ部材６９２が配置されている。この実施形態では、クリップ部材６９２は一対の把持爪部６９２Ａより外方に延出する一対のフランジ部６９２Ｃを有する。

　クリップ部材６９２は、エアバッグ装置６５４の展開動作時にエアバッグ装置６５４から上向きの力を底部に受けることにより、前後一対の把持爪部６９２Ａが互いに離れる方向に変形する。

　これにより、エアバッグ装置６５４が展開動作すると、第１０実施形態と同様に、アンカ部材６９０がクリップ部材６９２との係合より離脱し、後側表皮６４３の前末端部６４３Ａ及び前側表皮６４５の後末端部６４５Ａが吊込み溝６８６から上方に自由に抜け出すことができる状態になる。

　これにより、第１１実施形態でも、エアバッグ装置６５４の展開動作によってパッド部材６４０が隆起変形することが、表皮６４２によって阻害されることが低減し、パッド部材６４０の隆起変形が良好に行われ、この実施形態でも、所要のサブマリン抑制効果が得られる。

　また、この実施形態でも、吊込み溝６８６が第８実施形態の溝６４１と同等の作用をし、エアバッグ装置６５４の展開動作によるパッド部材６４０の隆起変形に必要な力が低減する。

＜＜第１２実施形態＞＞
　本発明に係る乗物用シート装置の第１２実施形態を、図２９を参照して説明する。なお、図２９において、図２２に対応する部分は、図２２に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。

　第１２実施形態では、シートクッションフレーム６１６の前部パン６３２が左右のサイドメンバ６３０の前端部に水平方向に延在する枢軸７００によって前上がりに傾動可能に設けられている。

　前部パン６３２は、スライダ６１４に連結された支持板６１５と前部パン６３２との間に設けられた圧縮コイルばね７０２によって上方に向けて付勢されている。

　支持板６１５上にはブラケット７０４によってロック部材７０８が水平軸線周りに回動可能に設けられている。ロック部材７０８は捩りコイルばね（不図示）によって係止爪部７０８Ａが前部パン６３２に形成されている係合凹部７１０に係合する方向に付勢している。

　ロック部材７０８の係止爪部７０８Ａが係合凹部７１０に係合している状態では、前部パン６３２は略水平姿勢を取り、これに応じてシートクッション６２２は略水平な姿勢の定常状態を維持する。

　ロック部材７０８は不図示のアクチュエータにより係止爪部７０８Ａが係合凹部７１０との係合より離間する方向に駆動される。ロック部材７０８の係止爪部７０８Ａが係合凹部７１０との係合より離間すると、前部パン６３２は圧縮コイルばね７０２のばね力によって枢軸７００を中心として前上がりに傾動する。この傾動に伴ってシートクッションフレーム６１６の前部が前上がりに傾動するように変形する。これにより、着座者の下半身がシートクッション６２２から前滑りすることに対する抵抗が増加し、サブマリン現象の発生が抑制される。

　以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記第１～第３実施形態では、エアセル３２は膨張収縮し、乗員の臀部や大腿部をマッサージするためのものであったが、この態様には限定されない。例えば、制御装置４２は、乗物用シート１の左半分（又は右半分）に設けられたエアセル３２に繋がる電磁弁４８のみを開き、乗物用シート１の着座面８の左半分（又は右半分）のみを膨出させて、乗員の姿勢を制御するように構成してもよい。

　上記第１～第３実施形態では、エアセル３２及びシートヒータ３８がシートクッション５に設けられた例について説明を行ったが、この態様には限定されない。同様の構成を転用することによって、乗物用シート１であって、エアセル３２及びシートヒータ３８が、シートバック６のパッド部材の表面側（前側）に設けられたものであってもよい。シートバック６にエアセル３２を設け、エアセル３２の膨張収縮を行うことで、乗員の腰部や背部を押圧し、マッサージすることができる。

　上記第２実施形態では、スリット１０２がエアセル３２に重なるように設けられていたが、この態様には限定されない。シートヒータ３８の変形容易部１６０がエアセル３２の膨張に追従して変形する態様であればいかなる態様であってもよく、図３０（Ａ）に示すように、スリット１０２がエアセル３２の近傍に設けられることによって、シートヒータ３８の変形容易部１６０がエアセル３２の近傍に形成されるものであってもよい。また、シートヒータ３８の変形容易部１０３は図３０（Ｂ）に示すように、基布６８の一部が不織布よりも伸縮性の高い素材（例えば、ゴム等）によって構成されていてもよい。

　上記第１～第３実施形態では、乗物用シート１、１０１、２０１が車両に設けられたシートに適用した例について記載したがこの態様には限定されない。本発明は、自動車以外の乗物（例えば、バス、トラック、船舶、飛行機等）に設けられたシートに適用することが可能である。

　上記第４～第７実施形態では、エアセル２０９がシートクッション２０５に設けられる例について説明したが、この態様には限定されない。エアセル２０９はシートバック２０６に設けられていてもよい。また、上記第４～第７実施形態では、乗物用シート１５１、３０１、４０１、５０１が車両に設けられたシートに適用した例について記載したがこの態様には限定されない。本発明は、自動車以外の乗物（例えば、バス、トラック、船舶、飛行機等）に設けられたシートに適用することが可能である。

　上記第４～第７実施形態では、流体封入部材として、内部に流体である空気が封入されるエアセル２０９が用いられていたが、この態様には限定されない。流体封入部材は流体が供給・排出可能あり、液体が封入（導入）されることによって膨張する袋状の部材であれば、いかなる態様のものであってもよい。すなわち、流体封入部材は流体としての液体の導入によって膨張する袋状の部材であってもよい。

　上記第４～第７実施形態では、流路２３８、３３８は着座者に風を送るために使用されていたが、この態様には限定されない。例えば、流路２３８、３３８は空気等の流体を供給又は排出する装置（給排装置）に接続され、乗物用シート１５１、３０１、４０１、５０１の表面近傍に流体を供給又は排出するために使用されてもよい。例えば、流路２３８、３３８は乗物用シート１５１、３０１、４０１、５０１の表面近傍の空気を排出して収集するために使用されてもよい。収集された空気は例えば、着座者の体調等を判定するために用いられるとよい。

　この場合においても、流路２３８、３３８は隣接するエアセル２０９の間に通じているとよい。これにより、エアセル２０９が膨張しているときに、流路２３８、３３８を介して隣接するエアセル２０９の隙間にアクセスし、その隙間に滞留する空気を効率よく収集することができる。

　また、送風機２３９はそれぞれの乗物用シート１５１に結合されて保持されていてもよく、車体（例えば、フロア２０３）に固定されていてもよい。

　また、溝６４１は、図３１に示されているように、パッド部材６４０の、エアバッグ装置６５４と対応する前後方向の位置に於ける下面に、左右方向に延在していてもよい。ハーネス６５８は、図３２に示されているように、エアバッグ装置６５４から前部パン６３２上を前部パン６３２の後縁部６３２Ａに向けて延在すべく配置されていてもよい。この場合も、ハーネス６５８は、前部パン６３２に沿って延在する部分の全長に亘ってカバー部材６６０によって覆われる。

１　　　：第１実施形態に係る乗物用シート
５　　　：シートクッション
６　　　：シートバック
１２　　：パッド部材
１３　　：表皮材
３２　　：エアセル
６８　　：基布
７０　　：ヒータ線
１０１　：第２実施形態に係る乗物用シート
１０２　：スリット
１０３　：変形容易部
１５１　：第３実施形態に係る乗物用シート
１５５　：スリット
１５６　：スリット横部（第１の部分）
１５７　：スリット縦部（第２の部分）
１６０　：変形容易部
２０１　：第４実施形態に係る乗物用シート
２０９　　：エアセル（流体封入部材）
２１３　　：パッド部材
２１６　　：パッド本体
２１７　　：流路形成片
２１８　　：硬質部材
２１９　　：上部形成片
２３８　　：流路
３０１　　：第５実施形態に係る乗物用シート
３１７　　：流路形成部材
３１８　　：硬質部材
３３８　　：流路
４０１　　：第６実施形態に係る乗物用シート
４１８　　：硬質部材
４２０　　：突出壁
５０１　　：第７実施形態に係る乗物用シート
５１３　　：パッド部材
６１０　　：第８～第１２実施形態に係る乗物用シート装置
６１４　　：スライダ
６１５　　：支持板
６１６　　：シートクッションフレーム
６１８　　：支持軸
６２０　　：シートバックフレーム
６２２　　：シートクッション
６２４　　：シートバック
６２６　　：ヘッドレスト
６３０　　：サイドメンバ
６３２　　：前部パン
６３２Ａ　：後縁部
６３２Ｂ　：窪み部
６３２Ｃ　：前部フランジ部
６３２Ｄ　：貫通孔
６３４　　：後部ロッド
６４０　　：パッド部材
６４０Ａ　：前部
６４１　　：溝
６４２　　：表皮
６４２Ａ　：前部
６４２Ｂ　：後方延在部
６４２Ｃ　：末端部
６４３　　：後側表皮
６４３Ａ　：前末端部
６４５　　：前側表皮
６４５Ａ　：後末端部
６４６　　：折返し部
６４８　　：縫合
６５０　　：係止用金具
６５０Ａ　：フック部
６５２　　：マウントブラケット
６５４　　：エアバッグ装置
６５６　　：締結具
６５８　　：ハーネス
６６０　　：カバー部材
６６０Ａ　：半円筒部
６６０Ｂ　：フランジ部
６６２　　：係止爪部
６６４　　：半体
６６６　　：半体
６６８　　：受入部
６６８Ａ　：ヒンジ
６６８Ｂ　：基部
６８０　　：補助表皮
６８０Ａ　：末端部
６８２　　：第１の接合部
６８４　　：第２の接合部
６８６　　：吊込み溝
６８８　　：縫合
６９０　　：アンカ部材
６９２　　：クリップ部材
６９２Ａ　：把持爪部
６９２Ｂ　：作動アーム部
６９２Ｃ　：フランジ部
７００　　：枢軸
７０２　　：圧縮コイルばね
７０４　　：ブラケット
７０８　　：ロック部材
７０８Ａ　：係止爪部
７１０　　：係合凹部

Claims

　パッド部材及び前記パッド部材を覆う表皮材を備えたシートバック及びシートクッションの少なくとも一方を備えた乗物用シートであって、
　前記パッド部材の表面側と前記表皮材との間に設けられたシート状のヒータ及び、複数のエアセルを有する乗物用シート。
　前記ヒータは前記表皮材の裏面に結合され、前記エアセルは前記パッド部材の表面に結合されている請求項１に記載の乗物用シート。
　前記ヒータ及び前記エアセルは、表裏方向に互いに重なり合わない位置にある請求項２に記載の乗物用シート。
　前記ヒータを前記エアセルによる膨張によって変形する変形容易部が設けられている請求項１又は請求項２に記載の乗物用シート。
　前記変形容易部は前記ヒータに設けられたスリットを含む請求項４に記載の乗物用シート。
　前記スリットは前記エアセルに表裏方向に重なり合う請求項５に記載の乗物用シート。
　前記ヒータは、シート状の基布と、前記基布の面に沿って配置されたヒータ線とを有し、前記ヒータ線の間に前記スリットが設けられている請求項５又は請求項６に記載の乗物用シート。
　前記ヒータがシート状の基布及び前記基布上に設けられたヒータ線を含み、
　前記変形容易部において、前記ヒータ線は第１の方向に蛇行しながら延び、前記第１の方向に直交する第２の方向に繰り返し折り返すように配置されている請求項４に記載の乗物用シート。
　前記変形容易部の前記基布には、前記ヒータ線と重ならない位置にスリットが設けられている請求項８に記載の乗物用シート。
　前記スリットが前記第１の方向に延びる第１の部分と、前記第１の部分に直交する第２の部分とを含む請求項９に記載の乗物用シート。