JP2022056310A - 乗物用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】パッド部材と、パッド部材の表面に設けられ、膨張収縮可能なエアセルとを備え、着座した乗員それぞれが自らに適した温度にすることのできる乗物用シートを提供する。【解決手段】 パッド部材12及びパッド部材を覆う表皮材13を備えたシートバック6及びシートクッション8の少なくとも一方を備えた乗物用シート1、101、201であって、パッド部材の表面側と表皮材との間に設けられたシート状のヒータ38及び、複数のエアセル32を有する。【選択図】 図6
Description
本発明は、乗物用シートに関する。
乗物用シートであって、膨張収縮が可能な空気袋を備えたものが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1の乗物用シートでは、空気袋はそれぞれ、シートクッション及びシートバック内部のパッド部材の表面側(乗員が着座する側)に設けられている。
各空気袋は、パッド部材の表面に設けられた凹部を跨ぐように設けられている。空気袋が膨張すると、空気袋を覆うスラブ及び表皮が車両上方側へ膨出膨張して乗員の体の一部を押圧する。これにより、乗員の腰部や背部及び大腿部などがマッサージされ、乗員をリラックス又はリフレッシュさせる。
車両には車室内の温度をコントロールする空気調節装置(エアコン)が設けられる場合がある。しかし、快適と感じる温度は乗員ごとに異なるため、全ての乗員に快適な温度環境を提供することが難しい。
そこで、本発明は以上の背景を鑑み、パッド部材と、パッド部材の表面に設けられ、膨張収縮可能なエアセルとを備え、着座した乗員それぞれが自らに適した温度にすることのできる乗物用シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、パッド部材(12)及び前記パッド部材を覆う表皮材(13)を備えたシートバック(6)及びシートクッション(8)の少なくとも一方を備えた乗物用シート(1、101、201)であって、前記パッド部材の表面側と前記表皮材との間に設けられたシート状のヒータ(38)及び、複数のエアセル(32)を有する。
この態様によれば、エアセルを膨張させることによって、乗員に押圧することができる。更に、ヒータを駆動させることで表皮材を温めることができるため、乗員それぞれが着座する乗物用シートを自らに適した温度にすることができる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは前記表皮材の裏面に結合され、前記エアセルは前記パッド部材の表面に結合されている。
この態様によれば、乗物用シートの組立作業性が向上する。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータ及び前記エアセルは、表裏方向に互いに重なり合わない位置にある。
この態様によれば、ヒータとエアセルとが表裏方向に重なり合わないため、乗物用シートの表裏方向の厚みを抑えることができ、乗物用シートの小型化を図ることができる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータを前記エアセルによる膨張によって変形する変形容易部(103、210)が設けられている。
この態様によれば、エアセルの膨張に追従してヒータが変形可能となるため、エアセルの膨張がヒータによって阻害されることが防止できる。
また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部は前記ヒータに設けられたスリット(102、205)を含む。
この態様によれば、変形容易部を容易に構成することができる。
また、上記態様において、好ましくは、前記スリットは前記エアセルに表裏方向に重なり合う。
この態様によれば、変形容易部がエアセルの近傍に配置されるため、ヒータがエアセルの膨張により追従し易くなる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは、シート状の基布(68)と、前記基布の面に沿って配置されたヒータ線(70)とを有し、前記ヒータ線の間に前記スリットが設けられている。
この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータがシート状の基布(68)及び前記基布上に設けられたヒータ線(70)を含み、前記変形容易部において、前記ヒータ線は第1の方向に蛇行しながら延び、前記第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し折り返すように配置されている。
この態様によれば、変形容易部において、ヒータ線が第1方向及び第2の方向に変形し易くなる。
また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部の前記基布には、前記ヒータ線と重ならない位置にスリット(205)が設けられている。
この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。
また、上記態様において、好ましくは、前記スリットが前記第1の方向に延びる第1の部分と、前記第1の部分に直交する第2の部分とを含む。
この態様によれば、基布がエアセルの膨張に追従するように変形し易くなる。
本発明の一態様は、パッド部材及び前記パッド部材を覆う表皮材を備えたシートバック及びシートクッションの少なくとも一方を備えた乗物用シートであって、前記パッド部材の表面側と前記表皮材との間に設けられたシート状のヒータ及び、複数のエアセルを有する。この態様によれば、エアセルを膨張させることによって、乗員に押圧することができる。更に、ヒータを駆動させることで表皮材を温めることができるため、乗員それぞれが着座する乗物用シートを自らに適した温度にすることができる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは前記表皮材の裏面に結合され、前記エアセルは前記パッド部材の表面に結合されている。この態様によれば、乗物用シートの組立作業性が向上する。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータ及び前記エアセルは、表裏方向に互いに重なり合わない位置にある。この態様によれば、ヒータとエアセルとが表裏方向に重なり合わないため、乗物用シートの表裏方向の厚みを抑えることができ、乗物用シートの小型化を図ることができる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータを前記エアセルによる膨張によって変形する変形容易部が設けられている。この態様によれば、エアセルの膨張に追従してヒータが変形可能となるため、エアセルの膨張がヒータによって阻害されることが防止できる。
また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部は前記ヒータに設けられたスリットを含む。この態様によれば、変形容易部を容易に構成することができる。
また、上記態様において、好ましくは、前記スリットは前記エアセルに表裏方向に重なり合う。この態様によれば、変形容易部がエアセルの近傍に配置されるため、ヒータがエアセルの膨張により追従し易くなる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータは、シート状の基布と、前記基布の面に沿って配置されたヒータ線とを有し、前記ヒータ線の間に前記スリットが設けられている。この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。
また、上記態様において、好ましくは、前記ヒータがシート状の基布及び前記基布上に設けられたヒータ線を含み、前記変形容易部において、前記ヒータ線は第1の方向に蛇行しながら延び、前記第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し折り返すように配置されている。この態様によれば、変形容易部において、ヒータ線が第1方向及び第2の方向に変形し易くなる。
また、上記態様において、好ましくは、前記変形容易部の前記基布には、前記ヒータ線と重ならない位置にスリットが設けられている。この態様によれば、ヒータ線に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。
また、上記態様において、前記スリットが前記第1の方向に延びる第1の部分(206)と、前記第1の部分に直交する第2の部分(207)とを含む。この態様によれば、基布がエアセルの膨張に追従するように変形し易くなる。
以下、本発明の乗物用シートを自動車等の車両に搭載されるシートに適用した実施形態について、図面を参照して説明する。以下、車両を基準として、前後、左右、及び、上下の各方向を定めて説明を行う。
<<第1実施形態>>
図1に示すように、乗物用シート1は、車両の車室2の底部を画定するフロア3に車両前方を向くように載置されている。本実施形態では、乗物用シート1は運転席側方の助手席を構成する。
図1に示すように、乗物用シート1は、車両の車室2の底部を画定するフロア3に車両前方を向くように載置されている。本実施形態では、乗物用シート1は運転席側方の助手席を構成する。
乗物用シート1は、フロア3に結合されたシートクッション5と、シートクッション5の後部に結合されたシートバック6と、シートバック6の上側に設けられたヘッドレスト7とを有する。シートクッション5は上面において着座面8を構成するとともに、着座する乗員の臀部及び大腿部を支持する。シートバック6は着座する乗員の腰部及び背部の後方に位置し、ヘッドレスト7は着座する乗員の頭部後方に位置する。
シートクッション5は、車体に支持されてシートクッション5の骨格を形成するクッションフレーム11と、クッションフレーム11に支持されたパッド部材12と、パッド部材12の表面を覆う表皮材13とを有する。
パッド部材12は、発泡ウレタンなどの発泡樹脂で形成されている。図2に示すように、パッド部材12は、その下面においてクッションフレーム11に支持されている。
パッド部材12は、図3に示すように、左右方向における中央部分を構成するパッド中央部14と、パッド中央部14の左右外側に接続されたパッド側部15とを有している。パッド側部15はそれぞれシートクッション5の左右側部に設けられ、中央部分に対して上方に隆起した土手部16(図1及び図2参照)を構成している。
図2に示すように、パッド部材12の上面には下方に凹む吊り込み溝20が設けられている。図4に示すように、吊り込み溝20はパッド中央部14とパッド側部15との間において、前後に延在する左右一対の縦溝部21と、左右の縦溝部21の前後方向略中央部を左右に接続する横溝部22とを有し、上面視でH字状をなす。図2に示すように、縦溝部21と横溝部22にはそれぞれ適所に表皮材13を掛け止めするためのワイヤ24が設けられている。
図3及び図4に示すように、パッド中央部14の上面には複数の凹部26が設けられている。凹部26は下方に凹み、上面視で矩形状(方形)をなす。図3に示すように、凹部26は左右の縦溝部21の内側に位置している。
凹部26は横溝部22の前側において、左右に間隔をおいて、前後に列をなすように設けられている。横溝部22の前側に設けられた凹部26は、概ね、乗物用シート1に着座した乗員の大腿部に対応する位置にある。本実施形態では、左右一対の凹部26がパッド部材12上面の横溝部22の後側の部分に設けられている。横溝部22の後側に配置された凹部26は、概ね、乗物用シート1に着座した乗員の臀部に対応する位置にある。
図4に示すように、パッド部材12の上面には、凹部26それぞれから左右外方向に延び、縦溝部21に達する通し溝28が設けられている。縦溝部21にはそれぞれ、通し溝28の左右外側において、上下方向に貫通する通し孔30が設けられている。
図5に示すように、乗物用シート1は、複数のエアセル32と、エアセル32を給排気する給排気装置34と、着座センサ36と、シートヒータ38と、シートヒータ38を制御する温度調節装置40と、給排気装置34及び温度調節装置40を制御する制御装置42とを備えている。
エアセル32(空気袋)は袋状の部材であって、ゴム材料等の伸縮可能な材料で形成されている。図2に示すように、エアセル32はそれぞれ凹部26に収容された状態で、パッド部材12の表面に結合されて、シートクッション5の内部に収容されている。エアセル32にはそれぞれ可撓性を有するチューブ44が接続されている。チューブ44は凹部26の内部から通し溝28、通し孔30を順に通過し、パッド部材12の下側に達している。
給排気装置34は、制御装置42からの信号に基づいて、エアセル32を給排気し、エアセル32を膨張収縮させる装置である。給排気装置34は、図5に示すように、電磁弁48及びポンプ50を含み、エアセル32にチューブ44を介して接続されている。
電磁弁48は吸気ポート48A、排気ポート48B、及び、共通ポート48Cを備えた三方弁である。電磁弁48の吸気ポート48Aはポンプ50に接続されている。排気ポート48Bは大気開放されている。共通ポート48Cはチューブ44に接続されている。電磁弁48は制御装置42からの信号に基づいて、共通ポート48Cが吸気ポート48Aに接続する吸気位置と、共通ポート48Cが排気ポート48Bに接続する排気位置との間で切り替わる。電磁弁48が吸気位置にあるとき、ポンプ50から空気が圧送され、エアセル32が膨張する。電磁弁48が排気位置にあるときには、乗員からの圧力によりチューブ44からエアセル32内の空気が排出されてエアセル32が収縮する。
着座センサ36は乗物用シート1への乗員の着座を検出するセンサであって、複数の感圧スイッチ52を含む。
感圧スイッチ52は、メンブレンスイッチであり、枠形のスペーサシートと、枠形のスペーサシートを介して互いに間隔をおいて積層された接点シートと、各接点シートの互いに対向する面に設けられた電気接点とを有する。一方の接点シートに他方の接点シートに近づくように荷重が加わると、少なくとも一方の接点シートが撓み、2つの電気接点が互いに接触して導通状態、すなわちオンになる。電気接点が互いに接触する圧力は、接点の大きさ及び厚さ、スペーサの厚さ及び形状、接点シートの硬さ等を調節することによって変更することができる。なお、感圧スイッチ52はそれぞれ、圧力を検知して電気的に導通するスイッチであればいかなる構成であってもよい。
本実施形態では、図1に示すように、感圧スイッチ52はシートクッション5の着座面8後部、及び、シートバック6の前面下部にそれぞれ設けられている。
更に、シートクッション5及びシートバック6を構成するパッド部材12にはそれぞれ、感圧スイッチ52を収容するためのスイッチ凹部54が設けられているとよい。スイッチ凹部54はシートバック6の後部(図3及び図4参照)、及び、シートバック6の下部に左右に対をなすようにそれぞれ設けられている。感圧スイッチ52がスイッチ凹部54に収容されているときには、感圧スイッチ52の接点シートの表面はパッド部材12の表面と面一をなすとよい。これにより、感圧スイッチ52が設けられることによって、着座した乗員に異物感を与えることが防止できる。
シートヒータ38はシートクッション5の内部に設けられた面状の発熱体、すなわち、シート状のヒータである。シートヒータ38が発熱すると、シートクッション5の着座面8が温められる。
シートヒータ38は、図6に示すように、パッド中央部14の上面に配置された矩形状のヒータ中央部60と、左右のパッド側部15にそれぞれ配置された左右一対のヒータ側部62と、ヒータ中央部60及びヒータ側部62を連結するヒータ横連結部64とを含む。
シートヒータ38は、基布68と、ヒータ線70と、温度センサ72とを有する。
基布68はシート状(布状)をなしている。本実施形態では、基布68は繊維を絡み合わせることによって形成された、いわゆる不織布によって構成されている。基布68は、ヒータ中央部60を構成し、パッド中央部14に沿って配置される基布中央部74と、ヒータ側部62を構成し、パッド側部15に沿って配置される左右一対の基布側部76と、基布中央部74及び基布側部76を接続する左右一対の基布横連結部78とを含む。基布中央部74は前後一対の基布主部74Aと、前後に延びて2つの基布主部74Aを接続する基布縦連結部74Bとを含む。基布側部76は基布中央部74の左右側方にそれぞれ位置し、基布横連結部78は左右に延びて、前側の基布主部74Aと左右の基布側部76とをそれぞれ接続する。
基布中央部74は左右のエアセル32の間において前後に延在している。基布主部74A、及び、基布縦連結部74Bはそれぞれ略矩形状をなしている。基布縦連結部74Bは基布主部74Aよりも左右方向の幅が小さい。基布横連結部78は、基布中央部74、及び、左右の基布側部76よりも前後幅が小さく、基布横連結部78はエアセル32の間を通過している。
ヒータ線70(熱線ともいう)は電流が流れることによって発熱する素材(例えば、金属製のワイヤやフィルム等)によって構成されている。ヒータ線70は基布68の表面に結合されている。ヒータ線70は、ヒータ中央部60の後端から前方へ左右に蛇行しながら延び、左右の側部を通過して、ヒータ中央部60の後端に達している。ヒータ線70は、エアセル32の間を通過し、エアセル32の上側を通過しない。ヒータ線70の両端は、温度調節装置40に接続されている。
温度センサ72は熱電対によって構成されている。本実施形態では、温度センサ72はヒータ中央部60の適所に設けられている。温度センサ72は、ヒータ線70と同様に、温度調節装置40に接続されている。
温度調節装置40は、制御装置42からの信号が入力されると、制御装置42から入力された信号に対応する所定の温度となるようにシートヒータ38を制御する。本実施形態では、温度調節装置40は、温度センサ72によって取得した温度が制御装置42から入力された信号に対応する温度以下の場合にはヒータ線70へ通電してシートヒータ38の温度を上げ、信号に対応する温度を越えるとヒータ線70への通電を停止する。
表皮材13はシート状をなし、パッド部材12、エアセル32、着座センサ36、及び、シートヒータ38を上方から覆い、シートクッション5の意匠面を構成する。表皮材13は、エアセル32の膨張によって伸長する伸縮可能な布材によって構成されていることが好ましい。また、表皮材13は複数の布部材を縫合することによって構成されていてもよい。
図2に示すように、表皮材13の適所にはフック80が設けられ、フック80が縦溝部21及び横溝部22に設けられたワイヤ24に掛け止めされて、表皮材13はパッド部材12に結合されている。
シートヒータ38は表皮材13の裏面に結合されている。本実施形態では、シートヒータ38はその縁部において表皮材13の裏面に縫合されて、表皮材13の裏面に結合している。これにより、シートヒータ38は表皮材13を介してワイヤ24に掛け止めされる。
更に、基布縦連結部74Bは、横溝部22に設けられたワイヤ24に吊り込まれて掛け止めされているとよい。また、基布横連結部78は、縦溝部21に設けられたワイヤ24に吊り込まれて掛け止めされているとよい。基布縦連結部74B及び基布横連結部78がそれぞれワイヤ24に掛け止めされることにより、シートヒータ38をパッド部材12により強固に結合させることができる。
制御装置42(ECU)は、中央演算処理装置(CPU)、RAM,ROM,記憶装置等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。乗物用シート1には、乗員からのエアセル32の駆動及び停止指示と、乗員からシートヒータ38の駆動及び停止指示とを受け付ける受付部82が設けられている。
制御装置42は受付部82に接続されている。制御装置42は受付部82にエアセル32への駆動指示に対応する入力があり、且つ、着座センサ36によって乗員の着座が検知されているとき(より詳細には、全ての感圧スイッチ52がオンとなっているとき)には、ポンプ50を駆動し、電磁弁48を所定時間ごとに吸気位置と排気位置との間で切り替える。電磁弁48が吸気位置にあるときには、ポンプ50から圧送された空気がチューブ44内に流入する。これにより、エアセル32が膨張し、着座面8のエアセル32が設けられた部分が膨出する。電磁弁48が排気位置にあるときにはエアセル32の内部の空気がチューブ44を介して排気ポート48Bから排出され、エアセル32が収縮する。これにより、エアセル32は断続的に膨張及び収縮を繰り返す。受付部82に駆動停止に対応する入力があると、制御装置42はポンプ50を停止し、電磁弁48を排気位置とする。これによりエアセル32の内部の空気が排気ポート48Bから排出され、エアセル32が収縮する。
制御装置42は、受付部82にシートヒータ38への駆動指示に対応する入力があり、且つ、着座センサ36によって乗員の着座が検知されているときには、温度調節装置40を駆動させて、シートヒータ38を所定の温度にする。本実施形態では、制御装置42は、受付部82において、駆動指示とともに、乗員から希望する着座面8の温度設定(例えば、HI,LOW等)を受け付け、制御装置42は、温度設定に対応する温度を通知する信号を温度調節装置40に出力し、温度調節装置40はシートヒータ38を温度設定に対応する温度となるように制御する。
次に、このように構成した乗物用シート1の効果について説明する。乗員が受付部82にエアセル32への駆動指示(膨張指示)に対応する入力を行うと、エアセル32の膨張に伴って表皮材13が膨出し、乗員の大腿部が押圧される。これにより、乗員の大腿部がマッサージされ、乗員をリラックス又はリフレッシュさせることができる。
更に、乗員が受付部82にシートヒータ38の駆動指示に対応する入力を行うと、シートヒータ38が駆動し、シートクッション5の上面(すなわち、着座面8)が温められて、シートクッション5の表面温度が上昇する。このように、乗員が受付部82に入力を行うことで、シートクッション5の表面温度を上昇させることができるため、乗員それぞれが着座する乗物用シート1の着座面8を自らに適した温度にすることができる。
本実施形態では、図6に示すように、ヒータ中央部60は左右のエアセル32の間を通過し、左右のヒータ側部62は左右のエアセル32の左右外側に位置している。また、ヒータ横連結部64はエアセル32の間を通過している。これにより、図6に示すように、シートヒータ38とエアセル32とは表裏方向に互いに重なり合わない位置にある。
図7に示すように、シートヒータ38の一部がエアセル32に表裏方向に重なり合う場合においても、乗員が受付部82にシートヒータ38の駆動指示に対応する入力を行うと、シートクッション5の着座面8が温められるため、乗物用シート1に着座した乗員に適した温度環境を提供することができる。
しかし、シートヒータ38とエアセル32とが表裏方向に重なり合う場合には、シートクッション5が厚くなるという問題がある。また、図8(A)に示すように、エアセル32の膨張によって、シートヒータ38が乗員側に押し出されるため、シートヒータ38が移動したり、折れ曲がったりする(すなわち、シートヒータ38が予期しない挙動を示す)虞や、ヒータ線70に引張荷重が加わる虞がある。
本実施形態では、シートヒータ38とエアセル32とは表裏方向に互いに重なり合わない位置にあるため、シートクッション5の厚みを抑えることができる。よって、乗物用シート1の小型化を図ることができる。更に、シートヒータ38とエアセル32とは表裏方向に互いに重なり合わないため、図8(B)に示すように、エアセル32の膨張による荷重がシートヒータ38に加わり難い。よって、シートヒータ38が移動したり、折れ曲がったりすることが防止できる。また、シートヒータ38とエアセル32とが重なり合わないため、エアセル32の膨張によって、シートヒータ38に過剰な引張荷重が加わることが防止できる。
感圧スイッチ52はシートクッション5の着座面8後部、及び、シートバック6の前面下部にそれぞれ設けられている。そのため、乗員が乗物用シート1に十分深く腰掛けていない場合におけるシートヒータ38の駆動及びエアセル32の膨張収縮が防止できる。これにより、乗員の意図しないシートヒータ38の駆動及びエアセル32の膨張収縮が防止できる。
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る乗物用シート101は、シートヒータ38の構成のみが第1実施形態と異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
第2実施形態に係る乗物用シート101は、シートヒータ38の構成のみが第1実施形態と異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
シートヒータ38は、第1実施形態と同様に、パッド中央部14の上面に配置された略矩形状のヒータ中央部60と、左右のパッド側部15にそれぞれ配置された左右一対のヒータ側部62とを含む。
図9に示すように、ヒータ中央部60は左右縁部においてエアセル32に重なり合っている。図9(A)に示すように、シートヒータ38の基布68には、エアセル32に重なり合う部分(図9(B)参照)を含めて、蛇行するヒータ線70のうち、隣り合うヒータ線70の間の適所にはスリット102が設けられている。これにより、シートヒータ38には、エアセル32の膨張によって変形が容易な変形容易部103が構成されている。
本実施形態では、スリット102の少なくとも一部は表裏方向にエアセル32に重なるように設けられている。
次に、このように構成した乗物用シート101の効果について説明する。シートヒータ38の基布68にはスリット102が設けられることによって、エアセル32に重なる重合部に変形容易部103が構成される。これにより、エアセル32が膨張した場合であっても、シートヒータ38が追従して変形する。これにより、シートヒータ38に過剰な引張力が加わることが防止でき、シートヒータ38によってエアセル32の膨張が阻害されることが防止できる。これにより、エアセル32からの圧力を乗員に適切に加えることができる。
また、基布68にスリット102を設けることによって、例えば、基布68を局所的に薄くする、又は、局所的に変形し易い布材で構成する等の場合に比べて、変形容易部103を容易に構成することができるとともに、変形容易部103の構成が簡素になる。
本実施形態では、スリット102の少なくとも一部はエアセル32に表裏方向に重なり合っているため、シートヒータ38の変形容易部103がエアセル32の近傍に形成される。これにより、シートヒータ38がエアセル32の膨張により追従し易くなる。
エアセル32が膨張すると、エアセル32の近傍に設けられたスリット102はより開口するように変形する。そのため、スリット102とヒータ線70とが交差する場合にはヒータ線70に引張荷重が加わる。本実施形態では、スリット102は隣り合うヒータ線70の間に設けられているため、スリット102とヒータ線70とが交差する場合に比べて、エアセル32の膨張に伴ってヒータ線70に加わりうる荷重を低減することができる。
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る乗物用シート201は、シートヒータ38の構成のみが第1実施形態と異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
第3実施形態に係る乗物用シート201は、シートヒータ38の構成のみが第1実施形態と異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
シートヒータ38は、第1実施形態と同様に、パッド中央部14の上面に配置された略矩形状のヒータ中央部60と、左右のパッド側部15にそれぞれ配置された左右一対のヒータ側部62とを含む。
ヒータ中央部60は左右縁部においてエアセル32に重なり合っている。図10(A)に示すように、ヒータ線70はヒータ中央部60において、左右方向(第1の方向)に蛇行しながら延びた複数の蛇行部202と、2つの蛇行部202の端部をつなぐ接続部203とを備えている。蛇行部202は前後に並ぶように配置され、接続部203は前後方向(第2の方向)に延び、隣接する蛇行部202を接続している。これにより、ヒータ線70は、ヒータ中央部60において、左右方向に蛇行しながら延び、前後方向に繰り返して折り返すように構成されている。
シートヒータ38の基布68には、複数のスリット205が設けられている。スリット205は、2つの蛇行部202の間に設けられている。スリット205は左右方向に延びるスリット横部206(第1の部分)と、スリット横部206に直交し、前後方向に延びるスリット縦部207(第2の部分)とを含む。本実施形態では、図10(B)に示すように、スリット縦部207はエアセル32の中央部に重なる位置に設けられている。
2つの蛇行部202の前後間隔はエアセル32の前後幅よりも小さく、少なくとも一つの蛇行部202と、少なくとも一つの接続部203と、少なくとも一つのスリット205がエアセル32に重なり合っている。
次に、第3実施形態に係る乗物用シート1の効果について説明する。エアセル32が膨張すると、シートヒータ38のエアセル32の上側に設けられた部分が上方に押し上げられる。
シートヒータ38のエアセル32の上側に設けられた部分には、蛇行部202、接続部203、及び、スリット205が少なくとも一つずつ設けられている。そのため、エアセル32の膨張に追従するように、ヒータ線70及び基布68が容易に変形する。換言すれば、蛇行部202、接続部203、及び、スリット205によって、シートヒータ38のエアセル32の上側に設けられた部分には、エアセル32の膨張に追従するように、変形が容易な変形容易部210が構成されている。これにより、基布68及びヒータ線70に極度に大きな引張荷重が加わることが防止できる。
本実施形態では、スリット205は左右方向に延びるスリット横部206と、前後方向に延びるスリット縦部207とを含む。そのため、スリット205が左右方向及び前後方向いずれの方向にも開裂することができる。よって、スリット205が左右又は前後にのみ延びる場合に比べて、基布68がエアセル32の膨張により追従するようにより変形し易くなる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、エアセル32は膨張収縮し、乗員の臀部や大腿部をマッサージするためのものであったが、この態様には限定されない。例えば、制御装置42は、乗物用シート1の左半分(又は右半分)に設けられたエアセル32に繋がる電磁弁48のみを開き、乗物用シート1の着座面8の左半分(又は右半分)のみを膨出させて、乗員の姿勢を制御するように構成してもよい。
上記実施形態では、エアセル32及びシートヒータ38がシートクッション5に設けられた例について説明を行ったが、この態様には限定されない。同様の構成を転用することによって、乗物用シート1であって、エアセル32及びシートヒータ38が、シートバック6のパッド部材の表面側(前側)に設けられたものであってもよい。シートバック6にエアセル32を設け、エアセル32の膨張収縮を行うことで、乗員の腰部や背部を押圧し、マッサージすることができる。
上記第2実施形態では、スリット102がエアセル32に重なるように設けられていたが、この態様には限定されない。シートヒータ38の変形容易部210がエアセル32の膨張に追従して変形する態様であればいかなる態様であってもよく、図11(A)に示すように、スリット102がエアセル32の近傍に設けられることによって、シートヒータ38の変形容易部210がエアセル32の近傍に形成されるものであってもよい。また、シートヒータ38の変形容易部103は図11(B)に示すように、基布68の一部が不織布よりも伸縮性の高い素材(例えば、ゴム等)によって構成されていてもよい。
上記実施形態では、乗物用シート1、101、201が車両に設けられたシートに適用した例について記載したがこの態様には限定されない。本発明は、自動車以外の乗物(例えば、バス、トラック、船舶、飛行機等)に設けられたシートに適用することが可能である。
1 :乗物用シート
5 :シートクッション
6 :シートバック
12 :パッド部材
13 :表皮材
32 :エアセル
68 :基布
70 :ヒータ線
101 :第2実施形態に係る乗物用シート
102 :スリット
103 :変形容易部
201 :第3実施形態に係る乗物用シート
205 :スリット
206 :スリット横部(第1の部分)
207 :スリット縦部(第2の部分)
210 :変形容易部
5 :シートクッション
6 :シートバック
12 :パッド部材
13 :表皮材
32 :エアセル
68 :基布
70 :ヒータ線
101 :第2実施形態に係る乗物用シート
102 :スリット
103 :変形容易部
201 :第3実施形態に係る乗物用シート
205 :スリット
206 :スリット横部(第1の部分)
207 :スリット縦部(第2の部分)
210 :変形容易部
Claims (10)
- パッド部材及び前記パッド部材を覆う表皮材を備えたシートバック及びシートクッションの少なくとも一方を備えた乗物用シートであって、
前記パッド部材の表面側と前記表皮材との間に設けられたシート状のヒータ及び、複数のエアセルを有する乗物用シート。 - 前記ヒータは前記表皮材の裏面に結合され、前記エアセルは前記パッド部材の表面に結合されている請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記ヒータ及び前記エアセルは、表裏方向に互いに重なり合わない位置にある請求項2に記載の乗物用シート。
- 前記ヒータを前記エアセルによる膨張によって変形する変形容易部が設けられている請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
- 前記変形容易部は前記ヒータに設けられたスリットを含む請求項4に記載の乗物用シート。
- 前記スリットは前記エアセルに表裏方向に重なり合う請求項5に記載の乗物用シート。
- 前記ヒータは、シート状の基布と、前記基布の面に沿って配置されたヒータ線とを有し、前記ヒータ線の間に前記スリットが設けられている請求項5又は請求項6に記載の乗物用シート。
- 前記ヒータがシート状の基布及び前記基布上に設けられたヒータ線を含み、
前記変形容易部において、前記ヒータ線は第1の方向に蛇行しながら延び、前記第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し折り返すように配置されている請求項4に記載の乗物用シート。 - 前記変形容易部の前記基布には、前記ヒータ線と重ならない位置にスリットが設けられている請求項8に記載の乗物用シート。
- 前記スリットが前記第1の方向に延びる第1の部分と、前記第1の部分に直交する第2の部分とを含む請求項9に記載の乗物用シート。
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