WO2022044920A1 - 繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品 - Google Patents

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Abstract

強化繊維(A)5~50重量部、ポリアミド樹脂組成物(B)40~94.9重量部、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)0.1~10重量部からなり、強化繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa1)が0.4~7mmであり、ポリアミド樹脂組成物(B)が、ポリアミド樹脂(B1)、反応性官能基を有する樹脂(B2)、および(B1)と(B2)との反応により生成した化合物(B3)からなり、樹脂(B2)は、数平均粒子径10~1,000nmにて粒子状に分散していることを特徴とする繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。本発明により、力学特性(曲げ特性、耐衝撃特性)に優れ、かつ繊維分散性および成形性、さらには吸水時剛性に優れる繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品を得ることが可能になる。

Description

繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品
 本発明は、ポリアミド樹脂組成物と強化繊維を含む繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品に関する。
 強化繊維とポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途などに広く用いられている。これらの成形品に使用される強化繊維としては、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、シリコンカーバイド繊維、炭素繊維などの無機繊維、アラミド繊維やポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維などが挙げられる。
 また、強化繊維とポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、優れた軽量性と力学特性を有することから、スポーツ部材や自動車部材をはじめ、最近では電子機器筐体や家電用途の外装部品などの分野でも用いられている。特に、スポーツ用途、電子機器筐体や家電用途の部品などは、より一層の軽量化、薄型化が要求されているため成形時における高い流動性が必要とされており、また、外装部材として使用されることから成形品表面の良好な外観品位、特に高い繊維分散性が要求されている。さらに、落下時、衝撃付与時における成形品の曲げ強度や耐衝撃性が要求されていることから、高い外観品位と力学特性の両方が発現でき、かつ、軽量化や薄型化に対応できる高い流動性が発現できる成形材料からなる成形品が求められている。さらにまた、スポーツ用途、電子機器筐体や家電用途の部品などでは、より一層の軽量化、薄型化が要求されているが、通常環境下では成形品の吸水による剛性低下が起きるため、成形品のたわみが発生することが知られている。そのため、吸水時でも剛性が発現できる成形品が必要とされている。
 力学特性を高める手段として、炭素繊維、有機繊維およびポリアミド樹脂組成物を含み、炭素繊維の平均繊維長と平均繊維端部間距離、有機繊維の平均繊維長と平均繊維端部間距離が特定の範囲にある繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品(例えば、特許文献1参照)や、炭素繊維およびポリアミド樹脂組成物と反応性官能基を有する樹脂を含有する繊維強化樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
 また、成形品成形時の流動性を高める技術としては、成形品中に樹状ポリエステルを含む樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
 さらに、成形品の吸水性を抑制する技術としては、成形品中にポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミドを含む樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
国際公開第2014/098103号 国際公開第2010/107022号 特開2013-249363号公報 特開平11-140237号公報 特開2019-151712号公報
 特許文献1および2の技術により得られる成形品は、衝撃強度の改善のため、炭素繊維に加えて有機繊維や反応性官能基を有する樹脂を加えることが記載されている。また、特許文献3には、ポリアミド樹脂組成物に樹状ポリエステルを加えることで、流動性を向上させることが記載されている。
 また、特許文献4には、ポリアミド樹脂組成物にポリオレフィン樹脂を加えることで、成形品の吸水率を抑制させることが記載されている。また、特許文献5には、マトリックス樹脂に吸水率の低い芳香族ポリアミド樹脂を用いることで、成形品の吸水率を抑制させることが記載されている。
 しかしながら、特許文献1により得られる成形品は、炭素繊維および有機繊維を含むため、高い衝撃強度を発現することが記載されているだけであり、特許文献1にはポリアミド樹脂組成物からなる成形品の流動性、繊維分散性については言及されておらず、得られる成形品の流動性および繊維分散性は不十分なものであった。また、特許文献2により得られる成形品は、反応性官能基を有する樹脂を用いることで高い衝撃強度を発現できることが記載されているが、こちらについても成形品の流動性および繊維分散性については言及されていない。また、特許文献3の技術により得られる成形品は、樹状ポリエステルを含むため、成形品の流動性が高いことを特徴としているが、繊維分散性の改善が不十分である。
 また、特許文献4および5の技術により得られる成形品は、吸水率の低いポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含むため、吸水時における成形品の剛性が高いことを特徴としているが、繊維分散性の改善が不十分である。
 このように、従来技術では、ポリアミド樹脂組成物をマトリックスとした繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品において、力学特性(曲げ特性、耐衝撃特性を含む)に優れ、成形品の繊維分散性に優れ、さらに成形性(流動性)および吸水時剛性(低吸水)に優れる繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品は得られておらず、かかる繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品の開発が望まれていた。
 本発明は、従来技術の有する上記課題に鑑み、力学特性(曲げ特性、耐衝撃特性)に優れ、かつ繊維分散性および成形性、さらには吸水時剛性に優れる繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品を得ることを目的とし、とくにその成形材料を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
(1)強化繊維(A)5~50重量部、ポリアミド樹脂組成物(B)40~94.9重量部、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)0.1~10重量部からなり、前記強化繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa1)が0.4~7mmであり、前記ポリアミド樹脂組成物(B)が、ポリアミド樹脂(B1)、反応性官能基を有する樹脂(B2)、および前記ポリアミド樹脂(B1)と前記樹脂(B2)との反応により生成した化合物(B3)からなり、前記樹脂(B2)は、数平均粒子径10~1,000nmにて粒子状に分散していることを特徴とする繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(2)前記ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれる前記ポリアミド樹脂(B1)が連続相を形成し、前記樹脂(B2)が分散相を形成し、かつ、前記分散相内に前記化合物(B3)よりなる粒子径1~100nmの微粒子を含有する、(1)に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(3)前記化合物(B3)よりなる前記微粒子の、前記樹脂(B2)からなる粒子中に占める面積割合が20%以上である、(2)に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(4)前記樹脂(B2)が、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、エポキシ基、酸無水物基およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する樹脂である、(1)~(3)のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(5)前記樹脂(B2)がポリオレフィン樹脂である、(1)~(4)のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(6)前記強化繊維(A)が炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を含み、該炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)の合計100重量部に対して炭素繊維(A1)を50~99重量部、有機繊維(A2)を1~50重量部含む、(1)~(5)のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(7)前記有機繊維(A2)の重量平均繊維長(Lwa2)が3~7mmである、(6)に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(8)前記ポリアミド樹脂(B1)は、ポリアミド6、ポリアミド66から選ばれるポリアミド樹脂(B1a)と、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド1012、およびポリアミド9T、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上のポリアミド樹脂(B1b)との混合物である、(1)~(7)のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(9)前記ポリアミド樹脂(B1)が、ポリアミド6樹脂とポリアミド610樹脂の混合物である、(8)に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(10)80℃×95%RHの環境下で24hr放置した際の吸水率が3.0%以下である、(8)または(9)に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
(11)前記有機繊維(A2)が、液晶ポリエステル繊維、ポリアリーレンサルファイド繊維およびフッ素繊維からなる群より選択される少なくとも一種である、(6)~(10)のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
 本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品は、強化繊維、ポリアミド樹脂組成物を含むため、補強効果が高く、衝撃特性に優れる。また、本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品は、特定のアンモニウム塩を含むため、成形品の成形時における流動性ならびに繊維分散性、および力学特性にも優れる。さらに、特定のポリアミド樹脂混合物を用いるようにすれば、成形品のさらに優れた繊維分散性、および優れた吸水時剛性を得ることが可能になる。
 そして、かかる繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品は、電気・電子機器、家電機器、筐体や自動車の部品およびスポーツ用途における部品などに極めて有用である。電気・電子機器筐体、部品としては、コンピューター、テレビ、ビデオプレーヤー、DVDプレーヤー、カメラ、オーディオ等の電子機器筐体、コネクター、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、コンピューター関連部品等に代表される電子部品用途に適している。家電機器としては、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、DVD等の音声映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等が挙げられる。また、光学機器、精密機械関連部品としては、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、双眼鏡、カメラ、時計等が挙げられる。
 自動車用部品、車両関連部品等としては、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアパネル、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパー等が挙げられる。また、本発明の成形品は、スポーツ用品としても好適であり、ゴルフクラブやシャフト、グリップ、ゴルフボール等のゴルフ関連用品、テニスラケットやテニスボール、バトミントンラケットやそのガットおよびバドミントンシャトル等のラケットスポーツ関連用品、アメリカンフットボールや野球、ソフトボール等のマスク、ヘルメット、胸当て、肘当て、膝当て等のスポーツ用身体保護用品、スポーツシューズの底材等のシューズ関連用品、釣り竿、リール、ルアー等の釣り具関連用品、サーフィン等のサマースポーツ関連用品、スキー、スノーボード等のウィンタースポーツ関連用品、その他インドアおよびアウトドアスポーツ関連用品等に好適に使用される。
繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品の成形材料の断面において、炭素繊維(A1)が有機繊維(A2)を内包している形態を示す模式図である。 繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品の成形材料の断面において、有機繊維(A2)が炭素繊維(A1)を内包している形態を示す模式図である。 繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品の成形材料の断面において、炭素繊維(A1)の束と有機繊維(A2)の束がある境界部によって分けられた状態でそれぞれ存在している形態を示す模式図である。 繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品の成形材料の断面において、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)からなる繊維束に成分(D)が付着された形態の複合繊維束(E)を示す模式図である。
 以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
 本発明は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)、および炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)を含む繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品であって、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)、および炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)の合計100重量部に対して、強化繊維(A)5~50重量部、ポリアミド樹脂組成物(B)40~94.9重量部、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)0.1~10重量部を含み、繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品における強化繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa1)が、0.4mm以上7.0mm以下であり、前記ポリアミド樹脂組成物(B)がポリアミド樹脂(B1)、反応性官能基を有する樹脂(B2)、および(B1)と(B2)との反応により生成した化合物(B3)からなり、反応性官能基を有する樹脂(B2)は数平均粒子径10~1,000nmにて粒子状に分散している状態にある。
 まず、本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品について詳細に説明する。
<強化繊維(A)>
 本発明における強化繊維(A)は、ポリアミド樹脂組成物(B)に対する繊維補強効果により、成形品としての力学特性を向上し得るものである。さらに、強化繊維(A)が導電性や熱伝導性など固有の特性を有する場合、ポリアミド樹脂組成物(B)単体では為し得ない、それらの性質も成形品に付与することができる。また、導電性を付与する目的においては、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維も好ましく用いられる。
 強化繊維としては、特に制限はないが、炭素繊維、有機繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。中でも力学特性の向上のためには、炭素繊維がより好適に用いられる。炭素繊維としては、PAN(ポリアクリルニトリル)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維、これらの黒鉛化繊維などが例示される。より衝撃特性を向上させたい場合は、後述する有機繊維と併用することが好ましい。
 炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が、0.05~0.5であるものが好ましい。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面に十分な官能基量を確保でき、ポリアミド樹脂組成物(B)とより強固な接着性を得ることができることから、成形品の曲げ強度および引張強度がより向上する。表面酸素濃度比は、0.1以上がより好ましい。また、表面酸素濃度比の上限は、炭素繊維の取り扱い性、生産性のバランスから、0.3以下がより好ましい。
 炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、炭素繊維表面にサイジング剤などが付着している場合には、溶剤でそのサイジング剤などを除去する。炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10-8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積を、K.E.として1191~1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積を、K.E.として947~959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
 ここで、表面酸素濃度比[O/C]は、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光装置として、国際電気社製モデルES-200を用い、感度補正値を1.74とする。炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、成形品の力学特性と表面外観の観点から、1~20μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。
 炭素繊維とポリアミド樹脂組成物(B)の接着性を向上する等の目的で、炭素繊維は表面処理されたものであってもかまわない。表面処理の方法としては、例えば、電解処理、オゾン処理、紫外線処理等を挙げることができる。
 炭素繊維の毛羽立ちを防止したり、炭素繊維とポリアミド樹脂組成物(B)との接着性を向上する等の目的で、炭素繊維はサイジング剤が付与されたものであってもかまわない。サイジング剤を付与することにより、炭素繊維表面の官能基等の表面特性を向上させ、接着性および成形品の力学特性(特に衝撃強度)を向上させることができる。
 サイジング剤としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。サイジング剤は、水溶性もしくは水分散性であることが好ましい。炭素繊維との濡れ性に優れるエポキシ樹脂が好ましく、多官能エポキシ樹脂がより好ましい。
 多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリアミド樹脂組成物(B)との接着性を発揮しやすい脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。また、脂肪族エポキシ樹脂は、炭素繊維/ポリアミド樹脂組成物間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度をより向上させることができる。
 多官能の脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。ジグリシジルエーテル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
 上記脂肪族エポキシ樹脂の中でも、3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂が好ましく、反応性の高いグリシジル基を3個以上有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物がより好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、ポリアミド樹脂組成物(B)との相溶性のバランスがよく、接着性をより向上させることができる。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類がさらに好ましい。
 サイジング剤の付着量は、サイジング剤と炭素繊維の合計100重量%中、0.01~10重量%が好ましい。サイジング剤付着量が0.01重量%以上であれば、ポリアミド樹脂組成物(B)との接着性をより向上させることができる。サイジング剤付着量は、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。一方、サイジング剤付着量が10重量%以下であれば、ポリアミド樹脂組成物(B)の物性をより高いレベルで維持することができる。サイジング剤付着量は、5重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。
<有機繊維(A2)>
 本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品では、前述した強化繊維(A)が、前述した炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を含有してもよい。炭素繊維(A1)は剛直で脆いため、絡まりにくく折れやすい。一方で、有機繊維(A2)は、柔軟性を有するため、成形時に折れにくく、成形品中に長い繊維長を保ったまま残存しやすい。そのため、柔軟で折れにくい有機繊維(A2)を含むことにより、成形品の衝撃特性を大幅に向上させることができる。
 具体的には、成形品中における有機繊維(A2)の残存繊維長(言い換えると、成形品中の重量平均繊維長(Lwa2))を、3mm以上7mm以下にすることで、該成形品により高い衝撃特性を付与することができる。
 有機繊維(A2)は、成形品の力学特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレン・プロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマーなどのフッ素樹脂、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどの液晶ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド、等の樹脂を紡糸して得られる繊維を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。これらの有機繊維(A2)の中から、適宜選択して用いることが好ましい。特に、ポリアミド樹脂組成物(B)の成形温度(溶融温度)に対して、有機繊維(A2)の溶融温度が30℃~150℃高いことが好ましく、50~100℃高いことがより好ましい。あるいは、ポリアミド樹脂組成物(B)と非相溶性である樹脂を用いてなる有機繊維(A2)は、成形品内に繊維状態を保ったまま存在するため、成形品の衝撃特性をより向上できるため好ましい。溶融温度の高い有機繊維(A2)として、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリエステル繊維などが挙げられる。本発明における有機繊維(A2)としては、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維を用いることが好ましい。
 有機繊維(A2)の単繊維繊度は、0.1~50dtexが好ましい。3dtex以上がより好ましく、6dtex以上がさらに好ましい。単繊維繊度を前述した範囲にすることで、成形時の繊維剪断に対して強いため、成形品内の繊維長が長く残存しやすく、成形品の衝撃強度を高めることができるため好ましい。
 有機繊維(A2)の繊維強度は、公知の単糸引張試験により求めることができる。ここで、有機繊維(A2)の繊維強度は、標準状態(20℃,65%RH)の室内で、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/分の条件で引張試験を行い、繊維切断時の荷重を単繊維繊度で除すことで算出することができる。ここで、単繊維繊度とは、10,000mの長さで1gの重さを示す糸の太さを表しており、本発明で用いる有機繊維(A2)の単繊維繊度は、公知の繊維繊度測定(例えば、JIS L 1013:2010)により求めることができる。
 繊維強度は、4cN/dtex以上であることが好ましい。4cN/dtex未満の場合、特に成形品の衝撃特性が低下する。4cN/dtexを超えることがより好ましく、5cN/dtex以上が更に好ましく、6cN/dtex以上が一層好ましい。また、前述の繊維強度で得られた応力歪み曲線図における、初期勾配から繊維初期弾性率を算出することができる。
 繊維強度は、50cN/dtex以下であることが好ましく、40cN/dtex以下がより好ましく、30cN/dtex以下がさらに好ましい。繊維強度が50cN/dtexを越えると、繊維のカッティングが困難になり、成形材料の生産性が低下するため好ましくない。
 有機繊維(A2)の密度は、公知の密度測定(例えば、JIS L 1015:2010)により求めることができる。
 本発明の成形品における有機繊維(A2)の含有量は、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)の合計100重量部に対して、1~50重量部であることが好ましい。有機繊維(A2)の含有量が1重量部未満である場合、成形品の衝撃特性が低下する。有機繊維(A2)の含有量は5重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらに好ましく、20重量部以上が一層好ましい。一方、有機繊維(A2)の含有量が50重量部を超える場合、繊維同士の絡み合いが増加し、成形品中における有機繊維(A2)の分散性が低下し、成形品の衝撃特性の低下を引き起こすことが多い。有機繊維(A2)の含有量は40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。なお、本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品の強化繊維(A)が、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を含有する場合、炭素繊維(A1)の含有量は、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)の合計100重量部に対して、50~99重量部であることが好ましい。炭素繊維(A1)の含有量が50重量部未満である場合、成形品の高い力学特性が得られにくい。
<重量平均繊維長>
 本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品では、成形品中における強化繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa1)が0.4mm以上7.0mm以下である。強化繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa1)が0.4mm未満の場合、成形品の曲げ強度および衝撃特性向上効果が奏しにくい。Lwa1は0.5mm以上がより好ましく、0.7mm以上がさらに好ましい。一方、重量平均繊維長(Lwa1)が7.0mmを超える場合、強化繊維(A)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくくなり、繊維折損が発生するため、成形品の曲げ強度向上効果が奏しにくい。Lwa1は4mm以下がより好ましい。
 また、本発明の成形品では、強化繊維(A)が、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を含有する場合、成形品中における有機繊維(A2)の重量平均繊維長(Lwa2)は3mm以上7mm以下であることが好ましい。有機繊維(A2)の重量平均繊維長(Lwa2)が3mm未満の場合、成形品における有機繊維(A2)の補強効果が奏しにくく、衝撃特性に劣る。Lwa2は4mm以上がより好ましい。一方で、重量平均繊維長(Lwa2)が7mmを超える場合、有機繊維(A2)同士の単糸間での絡み合いが抑制されにくく繊維折損が発生するため、成形品の衝撃特性に劣る。Lwa2は6mm以下がより好ましい。有機繊維(A2)の重量平均繊維長(Lwa2)を上記範囲にすることで、有機繊維(A2)の単糸同士の絡み合いが抑制され、有機繊維(A2)が湾曲した状態で存在する。その結果、成形品が破壊される際のクラック進展が一方向ではなくなり、より多くの衝撃エネルギーを吸収できるようになるため、成形品の衝撃強度が向上する。
 ここで、本発明における「重量平均繊維長」とは、単純に数平均を取るのではなく、重量平均分子量の算出方法を繊維長の算出に適用し、繊維長の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長を指す。下記式により炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)それぞれの重量平均繊維長を算出することができる。
重量平均繊維長=Σ(Mi×Ni)/Σ(Mi×Ni)
 Mi:繊維長(mm)
 Ni:繊維長Miの強化繊維の個数。
 上記重量平均繊維長の測定は、例えば、ISO型ダンベル試験片から切り出した任意のサイズの試験片を、有機繊維(A2)が溶融せず、ポリアミド樹脂組成物(B)のみが溶融する温度に設定(例えば、200~300℃)したホットステージの上で、カバーガラス間に挟んだ状態で加熱し、過剰な圧力を加えることなく、フィルム状にして均一分散させて、繊維が均一分散したフィルムを得る方法や、あるいは、有機繊維(A2)が溶解せず、ポリアミド樹脂組成物(B)のみが溶解する有機溶剤中にISO型ダンベル試験片から切り出した任意のサイズの試験片を投入し、必要に応じて加熱溶解させた後、その有機溶解液を濾過することで、繊維が均一分散した観察サンプルを得ることで測定できる。上記手法により得られたサンプルを光学顕微鏡(50~200倍)にて観察し、無作為に選んだ1,000本の炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の繊維長を計測して、上記式から炭素繊維(A1)の重量平均繊維長(Lwa1)および有機繊維(A2)の重量平均繊維長(Lwa2)を算出する。
 なお、成形品中における炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の重量平均繊維長は、例えば、成形条件などにより調整することができる。かかる成形条件としては、例えば、射出成形の場合、背圧や保圧力などの圧力条件、射出時間や保圧時間などの時間条件、シリンダー温度や金型温度などの温度条件などが挙げられる。具体的には、有機繊維(A2)が炭素繊維(A1)に比べて柔軟で折損しにくいことを利用して、背圧などの圧力条件を適度に増加させることでシリンダー内での剪断力を適度に高め、炭素繊維(A1)の平均繊維長を有機繊維(A2)に比べて短くする。また、射出時間を適度に短くすることで射出時の剪断力を適度に高くし、炭素繊維(A1)の平均繊維長を有機繊維(A2)に比べて短くしてもよい。さらにシリンダー温度や金型温度などの温度を適度に下げれば、流動する樹脂の粘度が上がり、剪断力を高めることができるため、このような方法により炭素繊維(A1)の平均繊維長を有機繊維(A2)に比べて短くすることもできる。本発明においては、上記のように条件を適宜変更することにより、成形品中における炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の平均繊維長を所望の範囲とすることができる。中でも、背圧条件や射出時間の制御で剪断力を調整することが特に有効である。ただし、繊維に作用する剪断力を必要以上に高めすぎると、炭素繊維(A1)のみならず有機繊維(A2)の平均繊維長も短くなるので、注意が必要である。
<ポリアミド樹脂組成物(B)>
 本発明で用いるポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(B1)、反応性官能基を有する樹脂(B2)および(B1)と(B2)との反応により生成した化合物(B3)から構成される。
<ポリアミド樹脂(B1)>
 上記ポリアミド樹脂(B1)は、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。その原料の代表例としては、(6-アミノカプロン酸)、(11-アミノウンデカン酸)、(12-アミノドデカン酸)、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸;ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム;テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族または芳香族のジアミン;およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
 本発明において、特に有用なポリアミドの具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
 とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/6T、ナイロン6T/6Iコポリマーなどの例を挙げることができる。さらにこれらのポリアミドを成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。これらの中でナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12が最も好ましい。
 また、本発明の成形品は、前記ポリアミド樹脂(B1)が、ポリアミド6またはポリアミド66を構成成分としたポリアミド樹脂(B1a)と、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド1012、及びポリアミド9T、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上のポリアミド樹脂(B1b)との混合物から構成されることが好ましい。これらのポリアミドを成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物とすることを特徴とする。ポリアミド樹脂(B1b)は、25℃の水中環境下で300hr放置したときの吸水率が5%以下のポリアミド樹脂であり、ポリアミド樹脂(B1a)および(B1b)の配合比率を適宜調整することで、成形品を80℃×95%RHの環境下で24hr放置した際の吸水率を3.0%以下に抑制することができるため、成形品の吸水時剛性の低下を抑制することができる。吸水率が3.0%を超えると吸水時の剛性低下が大きくなるため好ましくない。吸水率としては2.7%以下がより好ましい。
 また、本発明においては、ポリアミド樹脂(B1b)について、SP値を(B1a)と後述する樹脂(B2)の間に位置するもの選択することで繊維分散性が改善することが明らかにされた。このメカニズムについては、推定ではあるが、ポリアミド樹脂(B1b)が混合されることで、ポリアミド6樹脂(B1a)と後述する樹脂(B2)のSP値を(B1b)がコントロールしているためと考えられる。即ち、SP値のかけ離れた(B1a)と(B2)の間に(B1b)が位置することで、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)との相溶性をより一層向上させるためと推測される。
 これらの組み合わせの中でも(B1a)にポリアミド6樹脂を選択し、(B1b)にポリアミド610を選択することが吸水率、繊維分散性の観点から好ましい。
 これらポリアミドの重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5~7.0の範囲が好ましく、特に1.8~5.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、繊維強化樹脂組成物により高い耐衝撃性が付与される。また、相対粘度が7.0以下であれば、成形性に優れる。
<反応性官能基を有する樹脂(B2)>
 反応性官能基を有する樹脂(B2)のベースとなる樹脂としては、特に制限されないが、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアセタール、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやABS等のスチレン系樹脂、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド等から選ばれ、かつ、前述のポリアミド樹脂(B1)とは異なる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。中でも樹脂(B2)のベースとなる樹脂としては、反応性官能基の導入の容易さから、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂およびゴム質重合体から選ばれた樹脂がより好ましく、さらに衝撃吸収性付与の観点から、ゴム質重合体がさらに好ましい。
 ゴム質重合体は、ガラス転移温度が低い重合体を含有し、分子間の一部が共有結合、イオン結合、ファンデルワールス力、絡み合い等により、拘束されている重合体である。ゴム質重合体のガラス転移温度は、25℃以下が好ましい。ガラス転移温度が25℃を超えると耐衝撃性に劣るため好ましくない。
 ゴム質重合体としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ブタジエン-イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン-プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン-ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などのエチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル、エチレン-メタクリル酸エステルなどのエチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸の一部が金属塩である、エチレン-アクリル酸-アクリル酸金属塩、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸金属塩などのエチレン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸金属塩共重合体、アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート-ブタジエン共重合体などのアクリル系弾性重合体、エチレン-酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ヘキサジエン共重合体などのエチレン-プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン-イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが好ましい例として挙げられる。
 ポリアミド樹脂(B1)に対して用いる場合、優れた衝撃強度が得られる観点から、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体またはエチレン-プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン-ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、が好ましく用いられる。
 エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体における不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。不飽和カルボン酸エステルの具体的な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸またはメタクリル酸」のことを意味する。共重合体中のエチレン成分と不飽和カルボン酸エステル成分の重量比は特に制限は無いが、好ましくは90/10~10/90、より好ましくは85/15~15/85の範囲である。エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体の数平均分子量は特に制限されないが、流動性および機械的特性の観点から1,000~70,000の範囲が好ましい。
 反応性官能基を有する樹脂(B2)が含有する反応性官能基は、ポリアミド樹脂(B1)中に存在する官能基と互いに反応するものであれば特に制限されないが、好ましくは、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、水酸基、エポキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基、スルホン酸基等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この中でもアミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、エポキシ基、酸無水物基およびオキサゾリン基から選ばれる基は反応性が高く、しかも分解、架橋などの副反応が少ないため、より好ましく用いられる。
 酸無水物基をゴム質重合体に導入する場合、その方法としては、公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、1-ブテン-3,4-ジカルボン酸無水物等の酸無水物とゴム質重合体の原料である単量体とを共重合する方法、酸無水物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。
 また、エポキシ基をゴム質重合体に導入する場合、その方法としては、公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどのα,β-不飽和酸のグリシジルエステル化合物等のエポキシ基を有するビニル系単量体を、ゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、エポキシ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、エポキシ化合物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。
 また、オキサゾリン基をゴム質重合体に導入する場合、その方法としては、公知の技術で行うことができ、特に制限はないが、例えば2-イソプロペニル-オキサゾリン、2-ビニル-オキサゾリン、2-アクロイル-オキサゾリン、2-スチリル-オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法などを用いることができる。
 反応性官能基を有する樹脂(B2)における、一分子鎖当りの官能基の数については、特に制限はないが通常1~10個が好ましく、架橋等の副反応を少なくする為に1~5個が好ましい。
 本発明におけるポリアミド樹脂組成物(B)は、ポリアミド樹脂(B1)と反応性官能基を有する樹脂(B2)および(B1)と(B2)との反応より生成した化合物(B3)からなる。上記ポリアミド樹脂組成物(B)は、ポリアミド樹脂(B1)と反応性官能基を有する(B2)を溶融混練することにより得ることができる。また、(B2)が反応性官能基を有することから、(B1)、(B2)の溶融混練時に(B1)と(B2)の反応により(B3)が生成される。(B1)が連続層としてマトリックス相を形成し、(B2)が分散相として粒子状に分散したポリアミド樹脂組成物(B)が得られる。(B2)からなる粒子の構造が高度に制御され、耐衝撃性の向上に大きく寄与する。ポリアミド樹脂(B1)および成分(B)が混合されてマトリックス樹脂を形成し、該マトリックス樹脂に樹脂(B2)が粒子状に分散したポリアミド樹脂組成物(B)に含まれる、樹脂(B2)からなる粒子の数平均粒子径は10~1,000nmである必要がある。該粒子の数平均粒子径が10nm未満では本発明の特徴である耐衝撃性が発現せず、1,000nmを越えると本発明の特徴である剛性が低下するため、望ましくない。構造が高度に制御された樹脂(B2)からなる粒子が少量で耐衝撃性の向上を達成することで、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れた繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品が得られる。
 さらに、本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品は、樹脂(B2)からなる粒子中にポリアミド樹脂(B1)と樹脂(B2)の反応により生成した平均粒子径が1~100nmの化合物(B3)を含有することが好ましい。さらに樹脂(B2)からなる粒子中における、前記成分(B1)と(B2)の反応により生成した化合物(B3)の占める面積割合が20%以上であることが好ましい。分散相を形成する樹脂(B2)の配合量が少量でも、分散相内の構造を上記のように制御することで、剛性と耐衝撃性のバランスに優れた繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品を得ることができる。
 なお、モルホロジー観察方法は、公知の技術が適用できる。例えば、試験片の断面方向中心部を1~2mm角に切削し、四酸化ルテニウムで反応性官能基を有する樹脂(B2)を染色後、ウルトラミクロトームにより、厚さ0.1μm以下(約80nm)の超薄切片を得て、該切片のポリアミド樹脂(B1)、樹脂(B2)および化合物(B3)からなる樹脂部分(強化繊維を除いた部分)を、透過型電子顕微鏡で観察する方法が挙げられる。粒子の数平均粒子径(Xn)は、得られた画像から、無作為に400個以上の粒子を抽出し、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」を使用して粒径分布を解析し、次式により求める。
 数平均粒子径(Xn)=Σ(Xi×ni)/Σni
Xi;粒子径
ni;粒子径(Xi)に該当する粒子数
(i=1、2、3、・・・、n)
 樹脂(B2)からなる粒子の数平均粒子径は、1万倍に拡大した画像から求めることができる。また、(B2)からなる粒子中に含まれる、ポリアミド樹脂(B1)と(B2)の反応により生成した化合物(B3)の数平均粒子径は、3万5千倍に拡大した画像から求めることができる。
 樹脂(B2)からなる粒子中における化合物(B3)の占める面積割合は、透過型電子顕微鏡を使用して、3万5千倍に拡大した画像から、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」を使用して、樹脂(B2)の面積、および化合物(B3)の占める面積をそれぞれ解析し、次式により求める。
Sn=Sp/(Sa2+Sp)
Sn;樹脂(B2)からなる粒子中における化合物(B3)の占める面積割合(Sn)
Sa2;樹脂(B2)の占める面積
Sp;化合物(B3)の占める面積。
 本発明においてポリアミド樹脂組成物(B)の製造方法は特に制限はないが、例えば以下の方法が有効である。
 ポリアミド樹脂組成物(B)の製造方法の一つとしては、ポリアミド樹脂(B1)と反応性官能基を有する樹脂(B2)を、スクリュー長さLとスクリュー直径D0の比L/D0が50以上で複数箇所のフルフライトゾーンおよびニーディングゾーンを有する二軸押出機に投入し、スクリュー中のニーディングゾーンの樹脂圧力のうち最大の樹脂圧力をPkmax(MPa)、スクリュー中のフルフライトゾーンの樹脂圧力のうち最小の樹脂圧力をPfmin(MPa)としたときに、Pkmax≧Pfmin+0.3を満たす条件で溶融混練する方法が挙げられる。
 混練性および反応性の向上の点から、L/D0の値は、60~200がより好ましく、80~200の範囲であればさらに好ましい。また、L/D0が50未満の二軸押出機を使用する場合は、複数回混練を行うことにより、樹脂組成物が通過する計算上のL/D0の値を50以上とすることが好ましい。L/D0は、スクリュー長さLを、スクリュー直径D0で割った値である。ここで、スクリュー長さとは、スクリュー根元のポリアミド樹脂(B1)および反応性官能基を有する樹脂(B2)が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。二軸押出機のスクリューは、フルフライト、ニーディングディスクなどの、長さや形状的特徴が異なるスクリューセグメントが組み合わされて構成されている。また、押出機において、原材料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流ということがある。
 L/D0が50以上の二軸押出機を使用してポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合、混練性、反応性の向上の点から、二軸押出機のスクリューが複数ヶ所のフルフライトゾーンおよびニーディングゾーンを有していることが好ましい。フルフライトゾーンは1個以上のフルフライトより構成され、ニーディングゾーンは1個以上のニーディングディスクより構成される。
 ニーディングゾーンの複数ヶ所に設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最大となるニーディングゾーンの樹脂圧力をPkmax(MPa)、フルフライトゾーンの複数ヶ所に設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最小となるフルフライトゾーンの樹脂圧力をPfmin(MPa)とすると、Pkmaxの値が(Pfmin+0.3)以上の条件で製造することが好ましく、Pkmaxの値が(Pfmin+0.5)以上の条件で製造することがより好ましい。
 1個以上のニーディングディスクから構成されるニーディングゾーンは、1個以上のフルフライトから構成されるフルフライトゾーンより、溶融樹脂の混練性および反応性に優れる。ニーディングゾーンに溶融樹脂を充満することにより、混練性および反応性が飛躍的に向上する。溶融樹脂の充満状態を示す一つの指標として、樹脂圧力の値があり、樹脂圧力が大きいほど、溶融樹脂が充満している一つの目安となる。すなわち二軸押出機を使用する場合、ニーディングゾーンの樹脂圧力を、フルフライトゾーンの樹脂圧力より、ある範囲で高めることにより、反応を効果的に促進させることが可能となる。
 ニーディングゾーンにおける樹脂圧力を高める方法として、特に制限はないが、ニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に、溶融樹脂を上流側に押し戻す効果のある逆スクリューゾーンや溶融樹脂を溜める効果のあるシールリングゾーン等を導入する方法など好ましく使用できる。逆スクリューゾーンやシールリングゾーンは、1個以上の逆スクリューや1個以上のシールリングからなり、それらを組み合わせることも可能である。
 例えば、ニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に逆スクリューゾーンを導入する場合、逆スクリューゾーンの長さをLrとすると、逆スクリューゾーンが、Lr/D0=0.1~10の長さを有していることが、混練性および反応性の観点から好ましい。逆スクリューゾーンの長さLr/D0は、より好ましくは0.2~8、さらに好ましくは0.3~6である。複数の逆スクリューゾーンを設けた場合、それぞれの逆スクリューゾーンが全て上記のLr/D0の範囲を満たすことが好ましい。なお、逆スクリューゾーンの長さLrは、その逆スクリューゾーンを構成する最も上流の逆スクリューの上流端部からスクリュー軸中心線への垂線と、その逆スクリューゾーンを構成する最も下流の逆スクリューの下流端部からスクリュー軸中心線への垂線との間の距離とする。
 L/D0が50以上の二軸押出機を使用してポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合、押出量がスクリュー1rpm当たり0.01kg/h以上であることが好ましく、より好ましくは0.05kg/h~1kg/h、さらに好ましくは0.08~0.5kg/h、最も好ましくは、0.1~0.3kg/hである。ここで押出量とは、押出機から吐出される溶融混練物の1時間当たりの重量(kg)のことである。
 なお、前記二軸押出機における押出量に関わる好ましい数値範囲は、スクリュー直径41mmの二軸押出機の押出量を基準とするものである。スクリュー直径が大幅に異なる場合、例えば直径30mm未満、または直径が50mmを越える二軸押出機を使用する場合、押出量は、スケールダウンあるいはスケールアップ前後のスクリュー直径比に対して、好ましくは2.5乗則あるいは3乗則に従って、より好ましくは2.5乗則に従って、低下あるいは増大するものとして、読み替えることができるものとする。
 例えば、スクリュー直径が20mmの二軸押出機を使用する場合、押出量がスケールダウン前後のスクリュー直径比の2.5乗則に従うものとすると、溶融混練物の押出量は、スクリュー回転数1rpm当たり、好ましくは0.0017kg/h以上、より好ましくは0.0083~0.17kg/h、さらに好ましくは0.013~0.083kg/h、最も好ましくは、0.017~0.050kg/hである。
 また、スクリュー直径が100mmの二軸押出機を使用する場合、押出量がスケールアップ前後のスクリュー直径比の2.5乗則に従うものとすると、溶融混練物の押出量は、スクリュー1rpm当たり、好ましくは0.093kg/h以上、より好ましくは0.46~9.29kg/h、さらに好ましくは0.74~4.65kg/h、最も好ましくは0.93~2.79kg/hである。
 また、スクリューの回転速度としては、特に制限はないが、10rpm以上が好ましく、より好ましくは15rpm以上、さらに好ましくは20rpm以上である。
 二軸押出機中での滞留時間は、1~30分であることが好ましく、より好ましくは1.5~25分である。かかる滞留時間とは、二軸押出機に原材料を供給してから吐出するまでの滞留時間の平均を表す値である。滞留時間は、無着色の溶融混練物が所定の押出量に調節された定常的な溶融混練状態において、原料が供給されるスクリュー根本の位置から、原料と共に、着色剤を1g程度投入し、着色剤等を投入した時点から押出機の吐出口より押出され、その押出物への着色剤による着色度が最大となる時点までの時間とする。
 L/D0が50以上の二軸押出機を使用してポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合、二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューが使用できる。混練性および反応性の観点から、完全噛み合い型スクリューが好ましい。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでも良いが、混練性、反応性の観点から、同方向回転が好ましい。スクリューとしては、同方向回転完全噛み合い型が最も好ましい。
 二軸押出機のスクリュー構成としては、フルフライトおよび/またはニーディングディスクを組み合わせて使用するが、溶融状態の樹脂組成物へ効果的に剪断場を付与するスクリュー構成が好ましい。そのため、前記の通り、二軸押出機のスクリューが、1個以上のニーディングディスクから構成されるニーディングゾーンを、長手方向に複数箇所所有していることが好ましい。これらのニーディングゾーンの合計長さは、スクリューの全長の好ましくは5~50%、より好ましくは10~40%、さらに好ましくは、15~30%の範囲である。
 二軸押出機のスクリューにおけるニーディングゾーンのそれぞれの長さをLkとすると、全てのニーディングゾーンが、Lk/D0=0.2~10の長さを有していることが、混練性および反応性の観点から好ましい。各ニーディングゾーンの長さLk/D0は、より好ましくは0.3~9、さらに好ましくは0.5~8である。なお、ニーディングゾーンの長さLkは、そのニーディングゾーンを構成する最も上流のニーディングディスクの上流端部からスクリュー軸中心線への垂線と、そのニーディングゾーンを構成する最も下流のニーディングディスクの下流端部からスクリュー軸中心線への垂線との間の距離とする。また二軸押出機のニーディングゾーンは、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。
 反応副生成物または熱劣化物質等を除去するため、ベント真空ゾーンを設けてゲージ圧力-0.07MPa以下の圧力まで減圧して溶融混練することが好ましく、ゲージ圧力-0.08MPa以下の圧力まで減圧して溶融混練することがより好ましい。ここでゲージ圧力とは、大気圧をゼロとした際の圧力を示し、低いほど真空度が高く揮発成分を除去する能力が高いことを表す。ベント真空ゾーンにおけるゲージ圧力が-0.07MPaを越える、すなわち真空度が低い場合、前記揮発成分を十分に除去することができず、ポリアミド樹脂組成物(B)中に不純物が残存するため好ましくない。ベント真空ゾーンにおいて揮発成分を十分に除去することにより、溶融混練物中の不純物量を低減することが可能となる。ベント真空ゾーンの個数には特に制限はなく、1~複数個設置することが好ましい。またベント真空ゾーンの位置に関しても特に制限はないが、サンプリングする位置からL/D0=0~10手前の位置に少なくとも1つ設置することは、前記揮発成分を効果的に除去することが可能となるため好ましい。
 最高樹脂温度は180℃~330℃に制御して溶融混練することが好ましく、200℃~325℃で溶融混練することがより好ましい。ここでいう最高樹脂温度とは、押出機の複数ヶ所に均等に設置された樹脂温度計により測定した中で最も高い温度を示す。最高樹脂温度が180℃未満の場合には、ポリマー間の反応性が低く、330℃を越える場合には、ポリマーの熱分解が進行する。
 二軸押出機を使用する場合、熱劣化を抑制するために原料投入部から不活性ガスを導入して溶融混練することが好ましい。不活性ガスとしては窒素ガスが好ましい。
 ポリアミド樹脂組成物(B)の製造方法の二つ目としては、ポリアミド樹脂(B1)と反応性官能基を有する樹脂(B2)を伸張流動しつつ溶融混練する方法が挙げられる。伸張流動混練では、溶融混練時に一般的に用いられる剪断流動と比較し、分散効率が高いことから、特にリアクティブプロセッシングの様に反応を伴うアロイ化の場合、反応が効率的に進行する。
 伸張流動しつつ溶融混練してポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合、押出機を用いた溶融混練が好ましく用いられ、押出機の例としては、単軸押出機、二軸押出機、三軸以上の多軸押出機が挙げられる。中でも単軸押出機と二軸押出機が好ましく用いられ、特に二軸押出機が好ましく用いられる。またかかる二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューが使用できる。混練性および反応性の観点から、好ましくは、完全噛み合い型である。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでも良いが、混練性および反応性の観点から、好ましくは同方向回転である。最も好ましいスクリューは、同方向回転完全噛み合い型である。
 リアクティブプロセッシングに適した伸張流動場を付与するためには、押出機のスクリューの全長に対する伸張流動ゾーンの合計の長さの割合が、5~60%の範囲が好ましく、より好ましくは10~55%、さらに好ましくは、15~50%の範囲である。
 押出機のスクリューにおける伸張流動ゾーンの長さをLkとし、スクリュー直径をD0とすると、混練性および反応性の観点から、Lk/D0=0.2~10であることが好ましい。より好ましくは0.3~9、さらに好ましくは0.5~8である。複数の伸張流動ゾーンを設けた場合、それぞれの伸張流動ゾーンが全て上記のLk/D0の範囲を満たすことが好ましい。また、本発明において、伸張流動ゾーンは、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。
 伸張流動ゾーンのスクリュー構成としては、ニーディングディスクよりなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクであることや、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて断面積が縮小されてなる樹脂通路が形成されていることや、押出機中に溶融樹脂の通過する断面積が暫時減少させた樹脂通路からなることが好ましい例として挙げられる。
 スクリュー1rpmに対する押出量が、0.01kg/h以上であることが好ましい。押出量とは、押出機から吐出される溶融混練物の1時間当たりに押出される重量(kg)のことである。スクリュー1rpmに対する押出量が、0.01kg/h未満であると、回転数に対する押出量が十分ではなく、押出機中での滞留時間が長くなりすぎて、熱劣化の原因となると共に、押出機中での樹脂の充満率が非常に小さくなり、十分な混練ができないという問題が生じる。また、スクリューの回転速度としては、特に制限はないが、10rpm以上が好ましく、より好ましくは50rpm以上、さらに好ましくは80rpm以上である。また、押出量は、好ましくは0.1kg/h以上、より好ましくは0.15kg/h以上、さらに好ましくは0.2kg/h以上である。
 押出機中での滞留時間が1~30分であることが好ましく、より好ましくは1.5~28分、さらに好ましくは2~25分である。滞留時間とは、押出機に原材料を供給してから吐出するまでの滞留時間の平均を表す値である。滞留時間は、無着色の樹脂組成物が所定の押出量に調節された定常的な溶融混練状態において、原料が供給されるスクリュー根本の位置から、原料と共に、着色剤を1g程度投入し、着色剤等を投入した時点から押出機の吐出口より押出され、その押出物への着色剤による着色度が最大となる時点までの時間とする。滞留時間が1分未満である場合、押出機中での反応時間が短く、十分に反応が促進されないため好ましくない。滞留時間が30分より長い場合、滞留時間が長いことによる樹脂の熱劣化が起こるため好ましくない。
 L/D0が50以上の二軸押出機を使用してポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合、および伸張流動しつつ溶融混練してポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合のいずれにおいても、ポリアミド樹脂(B1)および反応性官能基を有する樹脂(B2)の配合割合が、ポリアミド樹脂(B1)が80~60重量%、樹脂(B2)が20~40重量%であると、ポリアミド樹脂(B1)が連続相、樹脂(B2)が分散相を形成し、かつ、樹脂(B2)からなる粒子中に(B1)と(B2)の反応により生成した1~100nmの化合物(B3)を含有し、さらに化合物(B3)の占める面積割合が20%以上となりやすいため好ましい。
<アンモニウム塩(C)>
 本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(アンモニウム塩(C))を含有する。念のために説明すると、アンモニウム塩(C)は、(R(COO・(NH4+)の化学式で表される化合物(ここで、Rは炭素数4~10の二価の脂肪族基)であり、アンモニウムイオンの水素原子が1つ以上の水素原子以外の官能基に置換された、1級アンモニウム塩、2級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩は、本発明にいうアンモニウム塩(C)には該当しない。
 アンモニウム塩(C)に代えて、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸が用いられた場合、かかる脂肪族ジカルボン酸はポリアミド樹脂組成物(B)の原料として用いられるケースもあるように、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)と親和性は比較的高く、また、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)のアミノ基と、該脂肪族ジカルボン酸のカルボキシル基とが反応可能であるため、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)にある程度分散すると推測される。しかし、脂肪族ジカルボン酸は酸であるため、含有量が増えるとポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)を分解し、得られる成形品の力学特性が低下することとなる。
 一方、炭素数5以下の脂肪族ジカルボン酸のアンモニウム塩は、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)との親和性が比較的高いので、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)中に分散すると推測される。しかし、炭素数5以下の脂肪族ジカルボン酸のアンモニウム塩は分子量が低く、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)の製造時に当該アンモニウム塩が分解されるため、得られる成形品の力学特性が低下することとなる。
 本発明が提案する炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)を用いると次のような作用・効果を得ることができる。
 すなわち、アンモニウム塩(C)がポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)のアミド基またはカルボキシル末端基と配位すると考えられることから、アンモニウム塩(C)はポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)との相溶性に優れ、ポリアミド樹脂組成物中において微分散することができ、ポリアミド樹脂組成物(B)の流動性を向上させる。さらに流動性を改質するアンモニウム塩(C)が、ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれるポリアミド樹脂(B1)に対して良好な親和性を示すため、繊維強化ポリアミド樹脂成形品となった場合における、強化繊維(A)の繊維分散性を阻害することがないため、強化繊維(A)が成形品内部で単糸分散することが可能となり、成形品の繊維分散性を向上させることができる。また、アンモニウム塩(C)がポリアミド樹脂(B1)に対して、高い親和性を示すことから成形品表面へのブリードアウトを抑制できる点においても優れる。
 また、アンモニウム塩(C)は、炭素数5以下の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩と比較して分子量が高いため、アンモニウム塩(C)の分解・揮発が抑制される。また、アンモニウム塩(C)は中性であるため、量的に多く含有されたとしても、ポリアミド組成物製造時に酸あるいは塩基によるポリアミド樹脂の分解が抑制される。そのため、ポリアミド樹脂組成物(B)の流動性をより効果的に向上させるとともに、得られる成形品の力学特性、外観品位を向上させることができる。
 アンモニウム塩(C)の具体例としては、アジピン酸二アンモニウム、ピメリン酸二アンモニウム、スベリン酸二アンモニウム、アゼライン酸二アンモニウム、セバシン酸二アンモニウム、ドデカン二酸アンモニウム等が挙げられる。必要に応じて2種以上が用いられてもよい。中でも原料入手性、性能のバランス、コストの観点から、アジピン酸二アンモニウム、セバシン酸二アンモニウムが好ましく用いられる。
 本発明の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品において、アンモニウム塩(C)の含有量は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)の合計100重量部に対して0.1~10重量部である。アンモニウム塩(C)の含有量が0.1重量部未満であると、繊維強化ポリアミド樹脂組成物(B)の流動性、繊維分散性および力学特性が低下する。アンモニウム塩(C)の含有量は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)の合計100重量部に対して、0.2重量部以上が好ましく、0.3重量部以上がさらに好ましい。一方、アンモニウム塩(C)の含有量が10質量部を超えると、ポリアミド樹脂(B1)の可塑化が促進され、得られる成形品の力学特性が低下する。アンモニウム塩(C)の含有量は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)の合計100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがさらに好ましく、1.5重量部がより好ましい。
 なお、樹脂組成物中のアンモニウム塩(C)の含有量、およびアンモニウムイオンの含有量[B]は、以下の方法により求められる。
 ポリアミド樹脂組成物に無機粒子や有機粒子等の非相溶の成分が含まれている場合はこれらの成分を、そのままであるいは酸化物等の他の形態に変換して、分離し、ポリアミド樹脂組成物の単位重量あたりに含まれる量を求めておく。分離の方法としては含まれる成分に応じて適宜選択でき、特に制限は無い。一方で、相溶性の他の有機成分あるいは無機成分が含まれている場合は、水や有機溶媒等による抽出で分離可能な成分は抽出で分離してポリアミド樹脂組成物の単位重量あたりに含まれる量を求め、それが困難な場合は、含まれている成分に応じて分光学的方法などの分析法に拠って組成物中の含有率を求めることでポリアミド樹脂組成物の単位重量あたりに含まれる量を求めておく。なお、相溶性の有機成分あるいは無機成分が含まれている場合のポリアミド樹脂組成物の単位重量あたりに含まれるポリアミド樹脂(B1)の量はこの方法に拠って求めることが可能である。
 一方、アンモニウム塩(C)は水による抽出が可能であるので、既知の重量のポリアミド樹脂組成物を例えばソックスレー抽出器で十分な時間抽出を行い、抽出液を含まれている成分に応じて例えば、NMR、FT-IR、GC-MS、液体クロマトグラフ等の方法を単独あるいは組み合わせて用いて分析することで、アンモニウム塩(C)の化学構造の特定並びにアンモニウム塩(C)の含有量およびアンモニウムイオンの含有量[B]を求めることができる。
<各成分の含有量>
 本発明の成形品は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)の合計100重量部に対して、強化繊維(A)を5~50重量部含む。強化繊維(A)の含有量が5重量部未満であると、成形品の力学特性、特に曲げ特性、衝撃特性が低下する。強化繊維(A)の含有量は、7重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。一方、強化繊維(A)の含有量が50重量部を超えると、繊維同士の絡み合いが増加する。その結果、繊維折損が起きるため、繊維長が短くなり、曲げ特性、衝撃特性が低下する。強化繊維(A)の含有量は30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましい。
 本発明の成形品におけるポリアミド樹脂組成物(B)の含有量は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)の合計100重量部に対して、40~94.9重量部である。ポリアミド樹脂組成物(B)の含有量が40重量部未満の場合、強化繊維(A)同士の絡み合いが増加し、繊維折損が起きるため、繊維長が短くなり、曲げ強度、衝撃特性が低下する。ポリアミド樹脂組成物(B)の含有量は50重量部以上が好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物(B)の含有量が94.9重量部を超える場合、相対的に炭素繊維(A)、アンモニウム塩(C)の含有量が少なくなるため、繊維による補強効果が低くなり、力学特性、特に曲げ特性、衝撃特性が低下する。ポリアミド樹脂組成物(B)の含有量は85重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましい。
<その他成分(D)>
 本発明の成形品は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記(A)~(C)に加えて他の成分(D)を含んでもよい。他の成分(D)の例としては、熱硬化性樹脂、石油樹脂、難燃剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、制泡剤、あるいは、カップリング剤などが挙げられる。
 ここで、他の成分(D)として、より高い繊維分散性を確保するため、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、を含んでもよいし、これらを2種以上含有してもよい。成分(D)としては、ポリアミド樹脂組成物(B)との親和性の高いものが好ましい。ポリアミド樹脂組成物(B)との親和性の高い成分(D)を選択することにより、射出成形時に、ポリアミド樹脂組成物(B)と効率良く相溶するため、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の分散性をより向上させることができる。
 成分(D)は、ポリアミド樹脂組成物(B)の成形温度との組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、成形温度が150℃~270℃の範囲であれば、テルペン樹脂が好適に用いられる。成形温度が270℃~320℃の範囲であれば、フェノール樹脂が好適に用いられる。
 成分(D)は、成形温度における10℃/分昇温(空気中)における加熱減量が10重量%以下であることが好ましい。より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。かかる加熱減量が10重量%以下の場合、ポリアミド樹脂組成物(B)と射出成形する際に分解ガスの発生を抑制することができ、成形した際にボイドの発生を抑制することができる。また、特に高温における成形において、ガスの発生を抑制することができる。
 なお、本発明における加熱減量とは、加熱前の成分(D)の重量を100%とし、前記加熱条件における加熱前後での成分(D)の重量減量率を表し、下記式により求めることができる。加熱前後の重量は、白金サンプルパンを用いて、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件にて、成形温度における重量を熱重量分析(TGA)により測定することにより求めることができる。
加熱減量[重量%]={(加熱前重量-加熱後重量)/加熱前重量}×100
 テルペン樹脂としては、例えば、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体を、必要に応じて芳香族単量体等と重合して得られる重合体または共重合体などが挙げられる。特に、テルペン単量体としては、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、d-リモネンがポリアミド樹脂組成物(B)との相溶性に優れるため好ましく、さらに、これらのテルペン単量体の単独重合体がより好ましい。また、これらテルペン樹脂を水素添加処理して得られる水素化テルペン樹脂や、テルペン単量体とフェノール類を、触媒存在下で反応させて得られるテルペンフェノール樹脂を用いることもできる。ここで、フェノール類としては、フェノールのベンゼン環上に、アルキル基、ハロゲン原子および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を1~3個有するものが好ましく用いられる。これらの中でも、フェノールおよびクレゾールが好ましい。これらの中でも、水素化テルペン樹脂が、ポリアミド樹脂組成物(B)との相溶性に優れるため好ましい。
 また、テルペン樹脂のガラス転移温度は、特に限定しないが、30~100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以上であると、成形加工時に成分(D)の取扱性に優れる。また、ガラス転移温度が100℃以下であると、成形加工時の成分(D)の流動性を適度に抑制し、成形性を向上させることができる。
 本発明の成形材料における成分(D)の含有量は、強化繊維(A)、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩の合計100重量部に対して、1~20重量部が好ましい。成分(D)の含有量が1重量部未満の場合、射出成形時における炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の分散性が低下する。成分(D)の含有量は、2重量部以上が好ましく、4重量部以上が好ましい。一方、成分(D)の含有量が20重量部を超える場合、成形品の曲げ特性および衝撃特性が低下する。15重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
 本発明における成形材料としては、特に限定されないが、具体的な形状として図1~図4に示すような断面を有する柱状体を例示できる。かかる柱状体においては、炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)が、柱状体の軸心方向にほぼ平行に整列されており、かつ炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)の長さと成形材料の長さとが実質的に同じであることが好ましい。繊維の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることにより、それを用いて製造する成形品における炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)の繊維長を、制御しやすく、また、比較的長くすることができるため、より優れた力学特性の成形品を得ることができる。なお、「ほぼ平行に配列されて」いるとは、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)を含む繊維束の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を示し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。成形材料の長さとは、成形材料中の繊維束配向方向の長さであり、上記したような柱状体の場合はその柱状体の長軸方向の長さである。また、「実質的に同じ長さ」とは、成形材料内部で繊維束が意図的に切断されていたり、成形材料全長よりも有意に短い繊維束が実質的に含まれたりしないことである。特に、成形材料全長よりも短い繊維束の量について限定するわけではないが、成形材料全長の50%以下の長さの繊維束の含有量が、全繊維束中30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。より好ましくは成形材料全長の85%以上の長さの繊維束の含有量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
 成形材料は、ほぼ同一の断面形状を長手方向に一定長連続して有していることが好ましい。成形材料の長手方向の長さは、3mm~7mmの範囲である。3mm未満の場合は繊維の補強効果が乏しい。言い換えると、3mm未満の成形材料を用いて成形する場合、得られる成形品における有機繊維の重量平均繊維長を十分に長くすることができないため、衝撃特性に劣る。成形材料は4mm以上であることが好ましく、5mm以上がより好ましい。一方、成形材料が7mmを超える場合は射出成形時の成形性が低下する。言い換えると、成形材料の長さが7mmを超える場合は、成形材料が長いために、射出成形機内に成形材料が噛みこまず好ましくない。
 本発明における成形材料は、ポリアミド樹脂組成物(B)とアンモニウム塩(C)からなる樹脂組成物内に、連続繊維束である炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)を含む繊維束を有することが好ましい。言い換えると、繊維束の外側にポリアミド樹脂組成物(B)とアンモニウム塩(C)を配した構成を有することが好ましい。ポリアミド樹脂組成物(B)には、成分(D)が含まれていてもよく、また、前記繊維束の各単繊維間に成分(D)を満たした複合繊維束(E)を構成し、その外側にポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)を配してもよい。複合繊維束(E)は、繊維束に成分(D)を含浸させてなり、成分(D)の海に、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)が島のように分散している状態である。
 本発明における成形材料は、前記繊維束または複合繊維束(E)が、前記ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)によって被覆された、芯鞘構造を有することが好ましい。鞘構造となる、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)は必要により更に他の成分を含有してポリアミド樹脂組成物組成物としてもよい。ここで、「被覆された構造」とは、前記ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)を含有する組成物(以下、組成物の場合も単に「ポリアミド樹脂組成物(B)」と称する場合がある)が、繊維束または複合繊維束(E)の表面に配置されて接着している構造を指す。
 本発明における成形材料に含まれる成分(D)は低分子量である場合が多く、常温においては通常比較的脆く破砕しやすい固体であったり、液体であることが多い。複合繊維束(E)の外側に、ポリアミド樹脂組成物(B)を含む構成とすることにより、高分子量のポリアミド樹脂組成物(B)が複合繊維束(E)を保護し、成形材料の運搬や取り扱い時の衝撃、擦過などによる成分(D)の破砕、飛散などを抑制し、成形材料の形状を保持することができる。本発明の成形材料は、取り扱い性の観点から、成形に供されるまで前述の形状を保持することが好ましい。
 複合繊維束(E)とポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)は、境界付近で部分的にポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)が複合繊維束(E)の一部に入り込み、相溶しているような状態であってもよいし、複合繊維束(E)にポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)が含浸しているような状態になっていてもよい。
 本発明の成形材料は、繊維束断面において炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)が偏在することが好ましい。ここで、繊維束断面とは、繊維束の繊維長手方向に対して垂直な断面を指す。繊維束断面において、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)が偏在することにより、成形時の炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の絡み合いを抑制し、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)が均一に分散した成形品を得ることができる。このため、成形品の衝撃特性をより向上させることができる。ここで、本発明において「偏在」とは、繊維束断面において、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)がそれぞれ全ての領域において均等に存在するのではなく、部分的に偏って存在することを言う。
 例えば、図1に示すような、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)3中における繊維束の断面において、炭素繊維(A1)1が有機繊維(A2)2を内包している形態や、図2に示すような、有機繊維(A2)2が炭素繊維(A1)1を内包している形態などのいわゆる芯鞘型構造や、図3に示すような、繊維束断面において、炭素繊維(A1)1の束と有機繊維(A2)2の束がある境界部によって分けられた状態でそれぞれ存在している構造などが、本発明における「偏在」の態様として挙げられる。なお、本発明において「内包」とは、炭素繊維(A1)を芯部、有機繊維(A2)を鞘部に配する態様や、有機繊維(A2)を芯部、炭素繊維(A1)を鞘部に配する態様などを指す。図3に示す態様の場合、繊維束断面において炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)のそれぞれ少なくとも一部が外層のポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)3に接している。このとき、炭素繊維(A1)または有機繊維(A2)がポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)3に接している態様には、図4に示すように、炭素繊維(A1)または有機繊維(A2)が成分(D)を介してポリアミド樹脂組成物(C)およびアンモニウム塩(C)3に接している態様も含むものとする。
 なお、本発明において、繊維束中において炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)が偏在していることを確認する方法としては、例えば、成形材料の繊維長手方向に対して垂直な断面を倍率300倍に設定した光学顕微鏡にて観察し、得られた顕微鏡像の画像処理を行い解析する手法が挙げられる。
 繊維束の断面において炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)を偏在させる方法としては、炭素繊維(A1)の束と有機繊維(A2)の束とを引き揃えて上記成形材料を作製する方法が挙げられる。それぞれの束同士を引き揃えて成形材料を作製することで、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)とが独立した繊維束として存在することになり、偏在させることができる。使用する炭素繊維(A1)の束と有機繊維(A2)の束の単繊維数を多くすると束を大きくでき、単繊維数を少なくすると束を小さくでき、束の大きさを変えて偏在させることが可能である。
 炭素繊維(A1)としては、特に制限はないが、炭素繊維の本数が100~350,000本の繊維束を用いることが好ましく、生産性の観点から、20,000~100,000本の繊維束を用いることがより好ましい。一方、有機繊維(A2)としてポリエステル繊維、または液晶ポリエステル繊維を使用する場合、特に制限はないが、1~2,000本の繊維束を用いることが好ましく、生産性および成形品内での繊維同士の絡まり合いを抑制できる観点から、10~1,000本の繊維束を用いることがより好ましく、さらには、30~700本の繊維束を用いることが好ましい。
 上記成形材料を用いて成形することにより、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の分散性、成形性に優れ、かつ曲げ強度、衝撃特性に優れる成形品を得ることができる。
 続いて、上記成形材料の製造方法について説明する。本発明における成形材料は、例えば、次の方法により得ることができる。
 まず、炭素繊維(A1)のロービングおよび有機繊維(A2)のロービングを繊維長手方向に対して並列に合糸し、炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を有する繊維束を作製する。次いで、溶融させた成分(D)を該繊維束に含浸させて複合繊維束(E)を作製する。さらに、溶融したポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)を含む組成物で満たした含浸ダイに複合繊維束(E)を導き、ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)を複合繊維束(E)の外側に被覆させ、ノズルを通して引き抜く。冷却固化後に所定の長さにペレタイズして、成形材料を得る方法が挙げられる。ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)は、少なくとも複合繊維束(E)の外側に配されていれば、繊維束中に含浸されていてもよい。
 前記方法により作製した、複合繊維束(E)をポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)で被覆した成形材料と、ポリアミド樹脂組成物(B)を含むペレット(炭素繊維(A1)や有機繊維(A2)を含まない)とをペレットブレンドして、成形材料混合物を得てもよい。これにより、成形品中における炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)の含有量を容易に調整することができる。なお、ペレットブレンドとは、溶融混練とは異なり、複数の材料を樹脂成分が溶融しない温度で撹拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを指し、主に射出成形や押出成形など、ペレット形状の成形材料を用いる場合に好ましく用いられる。
 次に本発明の成形品の製造方法について説明する。
 前述の本発明における成形材料を用いて成形することにより、成形性、曲げ特性、衝撃特性および外観品位に優れる成形品を得ることができる。成形方法としては、金型を用いた成形方法が好ましく、射出成形、押出成形、プレス成形など、種々の成形方法を用いることができる。特に射出成形機を用いた成形方法により、連続的に安定した成形品を得ることができる。射出成形の条件としては、特に規定はないが、例えば、射出時間は0.5秒~10秒が好ましく、より好ましくは2秒~10秒である。背圧は0.1MPa以上が好ましく、より好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは2MPa以上、最も好ましくは3MPa以上である。また上限は、50MPa以下が好ましく、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下、最も好ましくは10MPa以下である。射出速度は1mm/s~200mm/sが好ましく、より好ましくは10mm/s~150mm/s、さらに好ましくは20mm/s~100mm/sである。スクリュー回転数は10rpm~200rpmが好ましく、より好ましくは30rpm~150rpm、さらに好ましくは50rpm~100rpmである。保圧力は、1MPa~50MPaが好ましく、より好ましくは1MPa~30MPaである。保圧時間は1秒~20秒が好ましく、より好ましくは5秒~20秒である。シリンダー温度は200℃~320℃、金型温度は20℃~100℃の条件が好ましい。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。これらの条件、特に射出時間、背圧および金型温度を適宜選択することにより、成形品中の炭素繊維などの炭素繊維および有機繊維の繊維長を容易に調整することができる。
 以上のようにして得られる本発明の成形品は、成形性に優れ、力学特性、特に曲げ強度や衝撃特性および外観品位に優れる。
 以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。まず、本実施例で用いる各種特性の評価方法について説明する。
(1)重量平均繊維長の測定
 各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片から切り出した0.5cm角サイズの試験片を有機繊維(A2)が溶融せず、ポリアミド樹脂組成物(B)のみが溶融する温度に設定(例えば、200~300℃)したホットステージの上で、カバーガラス間に挟んだ状態で加熱し、過剰な圧力を加えることなく、フィルム状にして繊維を均一分散させた。炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)が均一分散したフィルムを、光学顕微鏡(50~200倍)にて観察した。無作為に選んだ1000本の炭素繊維(A1)と、同様に無作為に選んだ1000本の有機繊維(A2)について、それぞれ繊維長を計測して、下記式から重量平均繊維長を算出した。
平均繊維長=Σ(Mi×Ni)/Σ(Mi×Ni)
 Mi:繊維長(mm)
 Ni:繊維長Miの繊維の個数。
(2)成形品の曲げ強度および曲げ弾性率測定、吸水時曲げ弾性率
 各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片について、ISO 178:2010,Amd.1:2013に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。測定は3回行い、その平均値を各実施例および比較例の曲げ強度および曲げ弾性率として算出した。このとき、曲げ弾性率の算出には、規定歪み区間(0.05~0.25%)の応力勾配より算出した。
 また、後述する吸水ISO型ダンベル試験片についても上記と同様に曲げ弾性率を測定した。
(3)成形品のシャルピー衝撃強度測定
 各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1-4-01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施した。測定は5回行い、その平均値を各実施例および比較例の衝撃強度(kJ/m)として算出した。
(4)成形品の繊維分散性評価
 各実施例および比較例により得られた、80mm×80mm×3mm厚の試験片について、表裏それぞれの面に存在する未分散炭素繊維束(CF束)の個数を目視でカウントした。評価は50枚の成形品について行い、その合計個数について繊維分散性の判定を以下の基準で行い、AおよびBを合格とした。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上、3個未満
C:未分散CF束が3個以上。
(5)流動性評価
 繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で12時間真空乾燥し、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射速:60mm/sec、射出圧力:60MPaの条件で、幅10mm×長さ150mm×長さ1.0mmの金型を用いて射出成形し、幅10mm×厚さ1.0mmの棒流動試験片を作製した。保圧0における棒流動長を5回測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
(6)モルホロジー観察
 射出成形により得られたJIS-5Aダンベル型試験片または曲げ試験片の断面方向中心部を1~2mm角に切削し、四酸化ルテニウムで染色して、反応性官能基を有する樹脂(B2)を染色した。該試験片を、ウルトラミクロトームにより-196℃で切削し、厚さ0.1μm以下(約80nm)の超薄切片を得た。該切片を透過型電子顕微鏡で観察した。数平均粒子径(Xn)は、得られた画像から、無作為に400個以上の粒子を抽出し、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」を使用して粒径分布を解析し、次式により求めた。
 数平均粒子径(Xn)=Σ(Xi×ni)/Σni
Xi;粒子径
ni;粒子径(Xi)に該当する粒子数
(i=1、2、3、・・・、n)
 樹脂(B2)からなる粒子の数平均粒子径は1万倍に拡大した画像から、樹脂(B2)からなる粒子中の微粒子の数平均粒子径は、3万5千倍に拡大した画像から計算する。樹脂(B2)からなる粒子の数平均粒子径、化合物(B3)の1~100nmの微粒子の有無および300nmを越える微粒子の有無を確認した。
 さらに化合物(B3)の占める面積割合は、透過型電子顕微鏡を使用して、3万5千倍に拡大した前記画像から、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」を使用して、樹脂(B2)の面積、および化合物(B3)の占める面積をそれぞれ解析し、次式により求めた。
Sn=Sp/(Sa2+Sp)
Sn;樹脂(B2)からなる粒子中における化合物(B3)の占める面積割合
Sa2;樹脂(B2)の占める面積
Sp;化合物(B3)の占める面積。
(7)吸水率測定
 各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片を23℃湿度50%の恒温室に24時間静置させた後の重量を秤量後、80℃×95%RHの環境下に24時間放置した。その後、得られた吸水ISO型ダンベル試験片の水分を拭き取った後の重さを秤量し、吸水前後の、ISO型ダンベル試験片の吸水率を算出した。
<炭素繊維(A1)>
参考例1:炭素繊維(A1)の作製
 ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm、表面酸素濃度比[O/C]0.2の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。続いて、多官能性化合物としてグリセロールポリグリシジルエーテルを2重量%になるように水に溶解させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行った。こうして得られた炭素繊維のサイジング剤付着量は1.0重量%であった。
参考例2:樹状ポリエステル(C-3)の作製
 撹拌翼および留出管を備えた500mLの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸51.93g(0.38モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル19.1g(0.10モル)、テレフタル酸5.86g(0.035モル)、トリメシン酸21.2g(0.10モル)、安息香酸5.55g(0.045モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート11.3g(0.059モル)および無水酢酸65.3g(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら150℃で1.5時間反応させた。3時間かけて290℃まで昇温した後、重合温度を290℃に保持したまま30分で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、撹拌トルクが2.5kg・cmに到達したところで重合反応を停止し内容物を水中に吐出した。得られた樹状ポリエステル(C-1)は、110℃で4時間加熱乾燥した後ブレンダーを用いて粉砕し、エタノールおよび脱イオン水で洗浄した。その後、真空加熱乾燥機を用いて110℃で24時間真空乾燥し、粉体状樹状ポリエステル(C-3)を得た。
<有機繊維(A2)>
 (A2-1):液晶ポリエステル繊維(東レ(株)製“シベラス”(登録商標)1700T-288f、強度:23.5cN/dtex、融点330℃)を用いた。
 (A2-2):ポリエステル繊維(東レ(株)製、“テトロン(登録商標)”2200T-480-705M、単繊維繊度:4.6dtex、融点:260℃)を用いた。
 (A2-3):ポリフェニレンサルファイド繊維(東レ(株)製“トルコン”(登録商標)400T-100-190、単繊維繊度4.0dtex、融点285℃)を用いた。
 (A2-4):ポリテトラフルオロエチレン繊維(東レ(株)製“トヨフロン”(登録商標)440T-60F-S290-M190、単繊維繊度7.3dtex、融点327℃)を用いた。
<ポリアミド樹脂組成物(B)>
・ポリアミド樹脂(B1a)
(B1a-1):融点225℃、98%硫酸中0.01g/mlでの相対粘度2.75のナイロン6樹脂。
(B1a-2):融点265℃、98%硫酸中0.01g/mlでの相対粘度3.60のナイロン66樹脂。
(B1a-3):融点225℃、98%硫酸中0.01g/mlでの相対粘度2.70のナイロン610樹脂。
・ポリアミド樹脂(B1b)
(B1b-1):融点225℃、98%硫酸中0.01g/mlでの相対粘度2.70のナイロン610樹脂。
(B1b-2):融点190℃、98%硫酸中0.01g/mlでの相対粘度2.55のナイロン11樹脂。
(B1b-3):融点180℃、98%硫酸中0.01g/mlでの相対粘度2.55のナイロン12樹脂。
・反応性官能基を有する樹脂(B2)
(B2-1):グリシジルメタクリレート変性ポリエチレン共重合体「ボンドファースト(登録商標) BF-7L」(住友化学(株)製)。
(B2-2):グリシジルメタクリレート変性ポリエチレン共重合体「ボンドファースト(登録商標) BF-7M」(住友化学(株)製)。
(B2-3):無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体「タフマー(登録商標) MH7020」(三井化学(株)製)。
(B2-4):エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸亜鉛塩共重合体「ハイミラン(登録商標)1706」(三井・デュポンポリケミカル(株)製)。
(B2-5):オキサゾリン基含有反応性ポリスチレン「エポクロス(登録商標)RPS-1005」((株)日本触媒製)。
<アンモニウム塩(C)、または比較例で使用した流動改質剤(C)(C-2とC-3)>
(C-1):アジピン酸二アンモニウム(富士フイルム和光純薬(株)製)
(C-2):アジピン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
(C-3):参考例2で得られた樹状ポリエステル
<成分(D)>
(D-1)
 固体のテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製“マイティエース”(登録商標)K125、軟化点125℃)を用いた。
(実施例1)
 (株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を270℃に設定し、上記に示したポリアミド樹脂組成物(B1-1)、樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)からなる繊維束に溶融したポリアミド樹脂(B1-1)および樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)を含む組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の周囲が溶融したポリアミド樹脂(B1-1)および樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)を含む組成物で連続的に被覆されるようにした。この時の複合繊維束(E)の内部断面は、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)が偏在していた。偏在状態は、図3に示すように、炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)のそれぞれ少なくとも一部が、溶融したポリアミド樹脂(B1-1)および樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)を含む組成物に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした。この時、(A)~(C)の合計100重量部に対し、強化繊維(A)が25重量部(強化繊維(A)100重量部に対して、炭素繊維(A1)が80重量部、有機繊維(A2)が20重量部)となるように、引取速度を調整した。得られた長繊維ペレットの炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の長さと、ペレット長さは実質的に同じであった。
 こうして得られた長繊維ペレットを、射出成形機((株)日本製鋼所製J110AD)を用いて、射出時間:2秒、背圧5MPa、保圧力:40MPa、保圧時間:10秒、射出速度30mm/s、スクリュー回転数80rpm、シリンダー温度:270℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、成形品としてのISO型ダンベル試験片(タイプA1)および80mm×80mm×3mmの試験片を作製した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた試験片(成形品)を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置後に特性評価に供した。前述の方法により評価した評価結果をまとめて表1に示した。
(実施例2~5、7~17、31~35、41~54、56)
 組成比または用いる繊維種を表1、表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様(実施例13はシリンダー温度を280℃に設定)にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1、表2、表3、表4および表5に記した。
(実施例6)
 射出成形時の成形背圧力を10MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表1に示した。
(実施例18~30、38~40、55、57)
 (株)日本製鋼所製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に電線被覆法用のコーティングダイを設置した長繊維強化樹脂ペレット製造装置を使用し、押出機シリンダー温度を270℃に設定し、上記に示したポリアミド樹脂組成物(B1-1)、樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)をメインホッパーから供給し、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。200℃にて加熱溶融させた成分(D-1)を、(A)~(C)の合計100重量部に対し8重量部となるように吐出量を調整し、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)からなる繊維束に付与して複合繊維束(E)とした後、該複合繊維束(E)を、溶融したポリアミド樹脂(B1-1)および樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)を含む組成物を吐出するダイス口(直径3mm)へ供給して、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の周囲が溶融したポリアミド樹脂(B1-1)および樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)を含む組成物で連続的に被覆されるようにした。この時の複合繊維束(E)の内部断面は、炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)が偏在していた。偏在状態は、図3に示すように、炭素繊維(A1)、有機繊維(A2)のそれぞれ少なくとも一部が、溶融したポリアミド樹脂(B1-1)および樹脂(B2-1)およびアンモニウム塩(C-1)を含む組成物に接していた。得られたストランドを冷却後、カッターでペレット長7mmに切断し、長繊維ペレットとした以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表2、表3、表4および表5に示した。
(実施例36)
 射出成形時の成形背圧力を7MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表3に示した。
(実施例37)
 射出成形時の成形背圧力を3MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表4に示した。
(比較例1~7、9~11)
 組成を表6に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表6に示した。
(比較例8)
 射出成形時の成形背圧力を40MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製し、評価を行った。評価結果はまとめて表6に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 
 実施例の成形品は、高い曲げ強度や衝撃特性を示し、アンモニウム塩(C)を含むことにより、優れた流動性および優れた繊維分散性を発現できる結果であった。実施例5~51、53~57は強化繊維(A)が炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を含むことで特に成形品の高い衝撃強度を発現した。また、ポリアミド樹脂(B1)がポリアミド樹脂(B1a)とポリアミド樹脂(B1b)を含む実施例31~51および56、57は、成形品の吸水率を低下させることができるため吸水時剛性の低下を抑制でき、さらに優れた繊維分散性および高い衝撃特性を発現できる結果であった。また、成形背圧力を変更した実施例6、36、37の場合でも、前記と同様の優れた効果を発現した。さらに、成分(D)を含む実施例18~30、38~40、55、57は炭素繊維(A1)および有機繊維(A2)の分散性が優れるため、特に高い曲げ強度や衝撃特性を示す結果であった。有機繊維種を変更した実施例25~30および46~51でも高い曲げ強度や衝撃特性を示し、アンモニウム塩(C)を含み、ポリアミド樹脂(B1b)を含むため、成形品の吸水率を低下させ吸水時剛性の低下を抑制でき、さらに優れた流動性および優れた繊維分散性を発現できる結果であった。
 一方、比較例1、6では、アンモニウム塩(C)を含まないため、成形品の流動性、および繊維分散性に劣る結果となった。比較例2では樹脂(B2)を含まないため、衝撃強度に劣る結果となった。比較例3では、炭素繊維(A1)の含まれる量が少なかったため、補強効果が劣り、成形品の力学特性が低下する結果であった。比較例4、5では、炭素繊維(A1)または有機繊維(A2)がそれぞれ過剰に含まれるため、繊維同士の接触による折損が生じ、残存繊維長が短くなったため、衝撃強度が低い結果となった。
 また、比較例7では、アンモニウム塩(C)を過剰に含むため、ポリアミド樹脂組成物(B)の可塑化が促進されてしまったため、力学特性が劣る結果となった。比較例8では、成形時背圧力を高く設定したため、補強繊維(A)の残存繊維長が短くなったため、力学特性が低い結果となった。比較例9では、樹脂(B2)の数平均粒子径が10~1000nmの範囲に制御されておらず、衝撃特性が低下する結果であった。比較例10では、アンモニウム塩(C)を含まず、アジピン酸のみを用いたため、ポリアミド樹脂組成物(B)の分解が促進され、力学特性が劣る結果となった。比較例11では、アンモニウム塩(C)ではない流動改質剤を用いたため、繊維分散性が劣る結果となった。
1 炭素繊維(A1)
2 有機繊維(A2)
3 ポリアミド樹脂組成物(B)およびアンモニウム塩(C)
4 成分(D)

Claims (11)

  1.  強化繊維(A)5~50重量部、ポリアミド樹脂組成物(B)40~94.9重量部、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸とアンモニアからなるアンモニウム塩(C)0.1~10重量部からなり、前記強化繊維(A)の重量平均繊維長(Lwa1)が0.4~7mmであり、前記ポリアミド樹脂組成物(B)が、ポリアミド樹脂(B1)、反応性官能基を有する樹脂(B2)、および前記ポリアミド樹脂(B1)と前記樹脂(B2)との反応により生成した化合物(B3)からなり、前記樹脂(B2)は、数平均粒子径10~1,000nmにて粒子状に分散していることを特徴とする繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  2.  前記ポリアミド樹脂組成物(B)に含まれる前記ポリアミド樹脂(B1)が連続相を形成し、前記樹脂(B2)が分散相を形成し、かつ、前記分散相内に前記化合物(B3)よりなる粒子径1~100nmの微粒子を含有する、請求項1に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  3.  前記化合物(B3)よりなる前記微粒子の、前記樹脂(B2)からなる粒子中に占める面積割合が20%以上である、請求項2に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  4.  前記樹脂(B2)が、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、エポキシ基、酸無水物基およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  5.  前記樹脂(B2)がポリオレフィン樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  6.  前記強化繊維(A)が炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)を含み、該炭素繊維(A1)と有機繊維(A2)の合計100重量部に対して炭素繊維(A1)を50~99重量部、有機繊維(A2)を1~50重量部含む、請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  7.  前記有機繊維(A2)の重量平均繊維長(Lwa2)が3~7mmである、請求項6に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  8.  前記ポリアミド樹脂(B1)は、ポリアミド6、ポリアミド66から選ばれるポリアミド樹脂(B1a)と、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド1012、およびポリアミド9T、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上のポリアミド樹脂(B1b)との混合物である、請求項1~7のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  9.  前記ポリアミド樹脂(B1)が、ポリアミド6樹脂とポリアミド610樹脂の混合物である、請求項8に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  10.  80℃×95%RHの環境下で24hr放置した際の吸水率が3.0%以下である、請求項8または9に記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
  11.  前記有機繊維(A2)が、液晶ポリエステル繊維、ポリアリーレンサルファイド繊維およびフッ素繊維からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項6~10のいずれかに記載の繊維強化ポリアミド樹脂組成物成形品。
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