JP2012162613A - 難燃性組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリマーと、難燃剤とを含有してなり、前記難燃剤が、有機カルボン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアミド硫酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含有し、前記難燃剤の含有量が、前記ポリマー100質量部に対し、20質量部〜150質量部である難燃性組成物とする。
【選択図】なし
Description
第一は、樹脂にハロゲン系化合物を10質量%〜25質量%程度を添加することにより、燃焼炎に対し酸化反応負触媒として働き、燃焼速度を低下させて難燃性を付与するものである。
第二は、樹脂にシリコーン化合物を数質量%〜十数質量%程度添加するか、又はリン酸系化合物を数質量%〜数十質量%添加し、燃焼中に樹脂の表面にシリコーン化合物をブリードしたり、脱水素反応を樹脂内で起こしたりすることにより、表面にチャー(炭化層)を生成させて、断熱皮膜の形成により燃焼を止めるものである。
第三は、樹脂100質量部に対し水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を80質量部〜150質量部程度添加し、樹脂の燃焼によってこれらの化合物が分解するときの吸熱反応による冷却、及び生成した水の持つ蒸発潜熱で樹脂全体を冷却し燃焼を止めるものである。
また、前記第二の手法は、燐酸エステル化合物の場合、燃焼灰に含まれるリン酸による水質汚染などが廃棄プラスチックによって引き起こされるおそれがある。また、シリコーン化合物を大量に添加すると、樹脂本来の物性を変えてしまい、強度が低下することがある。
また、前記第三の手法は、金属水酸化物は多量の無機塩を添加するため、樹脂が加水分解したり機械的物性が極めて脆くなってしまったりするという問題がある。
しかし、熱可塑性樹脂の燃焼は前記樹脂が分解することによってガスが発生し、このガスが空気中の酸素と連続反応して燃焼が継続することが知られており、前記タンニン化合物の添加による樹脂の安定性の向上だけでは、十分満足できるレベルの難燃性を付与することが困難である。
即ち、ポリマーの燃焼は、前記ポリマーが不均一熱分解することにより、低分子化合物が可燃性燃焼ガスとして発生し、前記可燃性燃焼ガスが空気中の酸素と連続反応することによって燃焼が継続し、前記ポリマー中に、有機カルボン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアミド硫酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含有することにより、前記ポリマーが見掛け上より分子量が大きくなるため、熱分解する際に発生する可燃性燃焼ガスが低減し、前記ポリマーの燃焼が効果的に抑制され、難燃性を付与し得るものと推測する。なお、本発明の難燃性組成物による効果は前記燃焼メカニズムに左右されるものではない。
更に、有機カルボン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアミド硫酸アンモニウムは、適量添加によって難燃効果を充分付与し、ポリマーと良好な相溶性があり、ハロゲン元素、リン元素を含まないので環境や人体への安全性に優れた難燃性組成物が提供できることを知見した。
<1> ポリマーと、難燃剤とを含有してなり、
前記難燃剤が、有機カルボン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアミド硫酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含有し、
前記難燃剤の含有量が、前記ポリマー100質量部に対し、20質量部〜150質量部である難燃性組成物である。
<2> 有機カルボン酸アンモニウムが、クエン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、重蓚酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム及びコハク酸アンモニウムから選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の難燃性組成物である。
<3> ポリマーが、ゴム、エラストマー及び熱可塑性樹脂から選択される少なくともいずれかを含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の難燃性組成物である。
<4> 熱可塑性樹脂が、エステル結合、カーボネート結合及びアミド結合から選択される少なくともいずれかを含む前記<3>に記載の難燃性組成物である。
<5> 熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリカプロラクタムから選択される少なくとも1種を含有する樹脂である前記<3>から<4>のいずれかに記載の難燃性組成物である。
本発明の難燃性組成物は、ポリマーと、難燃剤とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記ポリマーとしては、ゴム、エラストマー及び熱可塑性樹脂から選択される少なくともいずれかを含む。
前記ゴムとは、室温において小さな力で大きい変形を起こし、力を除くと急速にほとんど元の形に戻る性質、即ち、ゴム弾性を示す物質、又はこのような物質にすることのできるポリマーを意味する。
これらの中でも、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(ECO)、エポキシ化天然ゴム(変性NR)、エチレンプロピレン(EPDM)が、経済的及び実用的に使用できる点で特に好ましい。
前記エラストマーとは、室温でゴム弾性を示すポリマーをいう。即ち、室温で伸ばすと2倍以上に伸び、外力を取除くと瞬間的にほとんど元の形に戻るポリマーを意味する。
これらの中でも、スチレン系エラストマー(PSE)、エチレン酢酸ビニル系エラストマー(EVM)が、安価であり、かつ容易に入手できる点で、好ましい。
前記熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度及び融点のいずれかまで加熱することによって軟らかくなり、目的とする形に成形可能なポリマーを意味する。
前記エステル結合、カーボネート結合及びアミド結合から選択される少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ナイロン樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)が、高い難燃性を付与できる点、及びフィルム、シート、繊維、などの難燃性を要求される用途が多い点で好ましい。なお、これらを含むアロイ・ブレンドと呼ばれる樹脂を使用してもよい。
前記難燃剤としては、有機カルボン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアミド硫酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含有してなる。
前記有機カルボン酸アンモニウムは、化学式:RCOONH4で表される化学物質で、化学式中のRが有機部分を示し、有機カルボン酸とアンモニアを化学変化させて得られるアンモニウム塩である。
前記有機部分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物などが挙げられる。これらの中でも、脂肪族化合物及び芳香族化合物が、優れた難燃性を付与できる点で好ましい。
前記有機カルボン酸としては、カルボキシル基を1つ以上有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機部分が脂肪族化合物であるカルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有することが優れた難燃性を付与できる点で好ましい。また、前記有機部分が芳香族化合物及び複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種であるカルボン酸は、カルボキシル基を1つ以上有することが優れた難燃性を付与できる点で好ましい。
前記モノカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸、サリチル酸、桂皮酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、キノリンジカルボン酸、カルボキシ桂皮酸、カルボキシフェニル酢酸、ナフタレンジカルボン酸、フランジカルボン酸などが挙げられる。
前記トリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゼントリカルボン酸、ニトリル三酢酸、ピリジントリカルボン酸、アコニット酸などが挙げられる。
前記テトラカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジオキシビスエチルアミン四酢酸などが挙げられる。
前記炭酸アンモニウムは、アンモニアの炭酸塩で、化学式:(NH4)2CO3で表される化学物質である。前記炭酸アンモニウムは、前記ポリマーに優れた難燃性を付与することができる。
前記炭酸水素アンモニウムは、重炭酸アンモニウムとも表され、化学式:NH4HCO3で表される化学物質である。前記炭酸水素アンモニウムは、前記ポリマーに優れた難燃性を付与することができる。
前記アミド硫酸アンモニウム(スルファミン酸アンモニウム)は、アミド硫酸(スルファミン酸)のアンモニウム塩である。前記アミド硫酸アンモニウムは、前記ポリマーに優れた難燃性を付与することができる。
前記難燃剤の含有量が、20質量部未満であると、難燃性が得られないことがあり、150質量部を超えると、ゴム、エラストマー、及び熱可塑性樹脂から選択されるポリマーの物性が低下し、難燃性組成物の成形加工性が劣ることがある。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、難燃性組成物に通常使用される公知の添加剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、繊維、鉱物、抗菌剤などが挙げられる
前記鉱物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、タルク、マイカ、ウォラストナイト、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
前記難燃性組成物の成形の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダ成形、熱成形、流動成形、積層成形などが挙げられる。
本発明の難燃性組成物は、優れた難燃性を有しているので、各種形状、構造、大きさの成形体とすることができ、例えば、パソコン、プリンター、テレビ、ステレオ、コピー機、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等の各種家電OA製品の部品などとして幅広く用いることができる。
−難燃性組成物の調製−
ポリマーとしてのニトリルブタジエンゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「ニポール2850」)と、表1に記載の難燃剤を、それぞれ、ニトリルブタジエンゴム(NBR)100質量部に対し80質量部添加して混合し、所定量計量して、HAAKE社製RheocordRC300P(独国製)混練機に投入し、回転数20rpm、30℃で混練し、10分間後に取り出して、ロット番号1〜10の難燃性組成物を調製した。
得られたロット番号1〜10の難燃性組成物について、以下に示す方法により、燃焼試験の評価を行った。結果を表2に示す。
各難燃性組成物に加硫剤として粉末硫黄及び酸化亜鉛を所定量添加し、ニッパなどで粗く切断し、ポリプロピレン製100mL容器に入れ、約3時間振とう機で溶解してから、ドクターブレードにてポリイミドフィルムに塗布し、面積50mm×200mm程度でゴム層の厚み0.30mm±0.05mmのシート状の試験片を作製した。
得られた試験片を直径約10mmの筒状にして、UL94の燃焼試験機内で、10mmのメタン炎で5秒間接炎着火し、ガスバーナーを遠ざけた瞬間から炎が消えるまでの時間を燃焼時間として測定し、下記基準で評価した。この燃焼試験は難燃性の確認であり、UL94試験に全てが準拠しているわけではない。
〔評価基準〕
◎:燃焼時間が0秒
○:燃焼時間が0秒を超え15秒以下
△:燃焼時間が15秒を超えた
×:全焼及びドリップ炎のいずれかを確認できた
−難燃性組成物の調製−
実施例1において、難燃剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、ロット番号11の難燃性組成物を作製し、評価を実施した。結果を表2に示す。
−難燃性組成物の調製−
実施例1において、難燃剤としてクエン酸アンモニウムを用い、ポリマーであるニトリルブタジエンゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「ニポール2850」)を、表3に記載のゴム及びエラストマーに代え、表4に示す組み合わせで用いた以外は、実施例1と同様にして、ロット番号12〜19の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表4に示す。
−難燃性組成物の調製−
実施例2において、難燃剤であるクエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、ロット番号20〜27の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表4に示す。
−難燃性組成物の調製−
実施例1において、表1に記載の難燃剤を、クエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)と蓚酸アンモニウム(関東化学株式会社製、試験1級)を質量比1対1で含む混合物に代えて、表5に記載のゴム及びエラストマーを表6に示す組み合わせでそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、ロット番号28〜30の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表6に示す。
−難燃性組成物の調製−
実施例1において、表1に記載の難燃剤を、クエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)と蓚酸アンモニウム(関東化学株式会社製、試験1級)を質量比1対1で含む混合物に代えて、難燃剤の添加量80質量部を、表7に示すように20質量部、50質量部、90質量部、120質量部、及び150質量部にそれぞれ変えた以外は、実施例1と同様にして、ロット番号31〜35の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表7に示す。
−難燃性組成物の調製−
実施例1において、表1に記載の難燃剤を、クエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)と蓚酸アンモニウム(関東化学株式会社製、試験1級)を質量比1対1で含む混合物に代えて、難燃剤の添加量80質量部を、表7に示すように5質量部、10質量部、15質量部、160質量部、及び170質量部にそれぞれ変えた以外は、実施例1と同様にして、ロット番号36〜40の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表7に示す。
−難燃性組成物の調製−
ポリマーである表8に記載の熱可塑性樹脂に、難燃剤であるクエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)を、表9に示す組み合わせで熱可塑性樹脂100質量部に対し80質量部それぞれ添加し、磁性乳鉢を使用して乳棒により圧搾粉砕することにより、10分間混ぜ合わせて、ロット番号41〜45の難燃性組成物を調製した。
得られたロット番号41〜45の難燃性組成物について、以下に示す方法により、燃焼試験の評価を行った。結果を表9に示す。
各難燃性組成物の上下にポリイミドフィルムを配置し、表8に記載の熱可塑性樹脂のプレス温度に調節した熱プレス機(東洋精機株式会社製、ミニプレス・10型)で挟み込んでから60秒後にゲージ圧10MPaの圧力で10秒間プレス後、冷却し、直径80mm程度で厚さ0.4mm〜0.6mmの円盤状の難燃性組成物の試験片を作製した。
得られた試験片を垂直に立てガスバーナーで着火し、燃焼状況を観察し、下記基準で評価した。この燃焼試験は難燃性の確認であり、UL94試験に全てが準拠しているわけではない。
〔評価基準〕
○:15秒以内で消えた
▲:消えそうで消えなかった
△:ゆっくり燃えたが消えなかった
×:全焼及びドリップ炎のいずれかを確認できた
−難燃性組成物の調製−
実施例5において、難燃剤であるクエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)を添加しなかった以外は、実施例5と同様にして、ロット番号46〜50の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表9に示す。
従って、カーボネート結合、エステル結合及びアミド結合から選択される少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂は、本発明で用いるポリマーとして優れていることが分った。
−難燃性組成物の調製−
実施例5において、難燃剤であるクエン酸アンモニウム(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)を、表10に記載の難燃剤に代えて、表8に記載の熱可塑性樹脂を表10に記載の熱可塑性樹脂に代えた以外は、実施例5と同様にして、ロット番号51〜54の難燃性組成物を作製し、これらの評価を実施した。結果を表10に示す。
Claims (4)
- ポリマーと、難燃剤とを含有してなり、
前記難燃剤が、有機カルボン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びアミド硫酸アンモニウムから選択される少なくとも1種を含有し、
前記難燃剤の含有量が、前記ポリマー100質量部に対し、20質量部〜150質量部であることを特徴とする難燃性組成物。 - 有機カルボン酸アンモニウムが、クエン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、重蓚酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム及びコハク酸アンモニウムから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の難燃性組成物。
- ポリマーが、ゴム、エラストマー及び熱可塑性樹脂から選択される少なくともいずれかを含有する請求項1から2のいずれかに記載の難燃性組成物。
- 熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリアミド及びポリカプロラクタムから選択される少なくとも1種を含有する請求項3に記載の難燃性組成物。
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