WO2021246509A1 - ロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるアクリルゴム - Google Patents

ロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるアクリルゴム Download PDF

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Abstract

ロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるアクリルゴムを提供する。本発明に係るアクリルゴムは、イオン反応性基を有し、GPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布による数平均分子量(Mn)が10万~50万の範囲、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.7~6.5の範囲である。

Description

ロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるアクリルゴム
 本発明は、アクリルゴム、その製造方法、ゴム組成物及びゴム架橋物に関し、さらに詳しくは、ロール加工性や架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性や耐圧縮永久歪み特性に優れるアクリルゴム、その製造方法、該アクリルゴムを含むゴム組成物及びそれを架橋してなるゴム架橋物に関する。
 アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性及び耐オゾン性に優れたゴムとして知られ、自動車関連の分野などで広く用いられている。
 例えば、特許文献1(国際公開第2019/188709号パンフレット)には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチル及びフマル酸モノブチルからなる単量体成分、水及びラウリル硫酸ナトリウムを仕込み、減圧脱気及び窒素置換を繰り返した後、ナトリウムアルデヒドスルホキシレートと有機ラジカル発生剤であるクメンハイドロパーオキシドを加えて常圧、常温下で乳化重合を開始させ、重合転化率が95重量%になるまで乳化重合を行ってから塩化カルシウム水溶液で凝固させ金網でろ過後にスクリューを有する押出乾燥機で脱水乾燥してアクリルゴムを製造する方法が開示されている。しかしながら、本方法で得られるアクリルゴムは、ロール加工性やバンバリー加工性が極端に劣り、且つ保存安定性や耐水性にも劣る問題があった。
 特許文献2(特開2019-119772号公報)には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチル及びマレイン酸モノブチルからなる単量体成分を純水と乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウムとポリオキシエチレンドデシルエーテルを用いて単量体乳化液としたのち、単量体乳化液の一部を重合反応槽に投入し窒素気流下で12℃まで冷却してから、残部の単量体乳化液、硫酸第一鉄、アスコルビン酸ナトリウム及び無機ラジカル発生剤としての過硫酸カリウム水溶液を連続的に3時間かけて連続的に滴下し、その後も23℃に保ち1時間継続して乳化重合を行い重合転化率が97重量%に達してから85℃に昇温させた後に硫酸ナトリウムを連続的に添加することにより凝固濾別し含水クラムを得て、該含水クラムを水洗4回、酸洗浄1回及び純水洗浄1回行った後にスクリューを有する押出乾燥機でシート状にアクリルゴムを連続的に製造し、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等の脂肪族多価アミン化合物で架橋する方法が開示されている。しかしながら、本方法で得られるシート状アクリルゴムは、ロール加工性に劣り、また、架橋物の耐水性に劣る問題があった。
 特許文献3(特開平1-135811号公報)には、アクリル酸エチル、カプロラクトン付加型アクリル酸エステル、シアノエチルアクリレート及びクロロ酢酸ビニルからなる単量体成分と連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタンとからなる単量体混合物の1/4量をラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル及び蒸留水で乳化し、亜硫酸ナトリウムと無機ラジカル発生剤としての過硫酸アンモニウムを添加して重合を開始し、温度を60℃に保ちながら残部の単量体混合物と2%過硫酸アンモニウム水溶液を2時間滴下し、滴下後更に2時間重合を継続した重合転化率96~99%のラテックスを80℃の塩化ナトリウム水溶液に投入し凝固してから十分に水洗後乾燥をしてアクリルゴムを製造しイオウで架橋する方法が開示されている。しかしながら、本方法で得られるアクリルゴムは、ロール加工性や保存安定性に劣り、且つ架橋物の強度特性及び耐水性に劣る問題があった。
 特許文献4(特開2018-168343号公報)には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びフマル酸モノブチルからなる単量体成分、純水、ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコール及び連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタンからなる単量体乳化液を調整し、次いで、重合反応槽に、単量体乳化液の1部と純水を投入し12℃まで冷却後、残部の単量体乳化液、硫酸第一鉄、アスコルビン酸ナトリウム及び無機ラジカル発生剤としての過硫酸カリウムを2.5時間かけ連続的に滴下し、その後23℃に保ち1時間反応を継続した後に、工業用水を加え85℃に昇温後に85℃で硫酸ナトリウムを連続的に添加することにより、凝固して含水クラムを得、純水洗浄3回行った後に熱風乾燥器にて乾燥させてアクリルゴムを製造し2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンで架橋する方法が開示されている。しかしながら、本方法で得られるアクリルゴムは、応力緩和性や押出加工性に優れるが、ロール加工性や保存安定性が十分でなく且つ架橋物の強度特性や耐水性に劣る問題があった。
 特許文献5(特開平9-143229号公報)には、エチルアクリレート、特殊アクリレート及びモノクロロ酢酸ビニルからなる単量体混合物、乳化剤のラウリル硫酸ナトリウム、連鎖移動剤としてのn-オクチルメルカプタン及び水を反応容器に加え、窒素置換した後に、亜硫酸水素アンモニウムと無機ラジカル発生剤としての過硫酸ナトリウムを加えて重合反応を開始させ、55℃で3時間反応転化率93~96%で共重合させアクリルゴムを製造しイオウで架橋する方法が開示されている。しかしながら、本方法で得られるアクリルゴムは、保存安定性やロール加工性に劣り、また、架橋物の強度特性や耐水性に劣る問題があった。
 特許文献6(特開昭62-64809号公報)には、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルのうち少なくとも1種の化合物50~99.9重量%、ラジカル反応性基を有する不飽和カルボン酸のジヒドロジシクロペンテニル基含有エステル0.1~20重量%、他のモノビニル系、モノビニリデン系及びモノビニレン系不飽和化合物のうち少なくとも1種0~20重量%よりなる単量体組成の共重合体であって、そのテトラハイドロフランを展開溶媒にしたポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が20万~120万であり重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が10以下であることを特徴とする加工性、圧縮永久歪、引張強度に優れ且つ硫黄加硫が可能なアクリルゴムが開示されている。また、数平均分子量(Mn)については、20万~100万、好ましくは20万~100万で、Mnが20万未満であれば加硫物の物性及び加工性が劣り120万を超えると加工性が劣り、及び、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)に関しては、10を超えると圧縮永久歪が大きくなり好ましくないことが記載されている。その具体的な実施例としては、エチルアクリレートやラジカル架橋性のジヒドロジシクロペンテニルアクリレートなどを含む単量体成分、乳化剤のラウリル硫酸ナトリウム、無機ラジカル発生剤としての過硫酸カリウム及び分子量調節剤としてのチオグリコール酸オクチルやt-ドデシルメルカプタンを変量して添加し、数平均分子量(Mn)が53~115万、重量平均分子量(Mw)が354~626万及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.7~8のアクリルゴムを重合し、塩化カルシウム水溶液中で凝固後十分に水洗し直接乾燥する製造方法が開示されている。そして、連鎖移動剤の量が少ないと、得られるアクリルゴムの数平均分子量(Mw)は500万と大きく重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.4と狭くなり、連鎖移動剤の量が多いと数平均分子量(Mn)は20万と小さく量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は17と極端に広くなることが実施例比較例に示されている。しかしながら、本方法で得られるアクリルゴムは、耐圧縮永久歪み特性や保存安定性に劣り、ラジカル反応性基を含有しているのでラジカル発生剤を用いた重合反応では適切な分子量分布(Mw/Mn)が得られても分子量(Mw、Mn)が大きく且つ複雑になりすぎてロール加工性やバンバリー加工性が十分でない問題もあった。また、本方法で得られるアクリルゴムは、架橋反応では、架橋剤としての硫黄と加硫促進剤を加えロールで混錬後に、100kg/cmの加硫プレスで170℃15分間、さらにギヤオーブンで175℃で4時間と長時間の架橋が必要となる問題や得られる架橋物も耐圧縮永久歪み特性、耐水性及び強度特性に劣り、且つ、熱劣化後の物性変化にも劣る等の問題があった。
国際公開第2019/188709号パンフレット 特開2019-119772号公報 特開平1-135811号公報 特開2018-168343号公報 特開平9-143229号公報 特開昭62-64809号公報
 本発明は、かかる従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、ロール加工性や短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れたアクリルゴム、その製造方法、該アクリルゴムを含むゴム組成物及びそれを架橋してなるゴム架橋物を提供することを目的とする。
 本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、アクリルゴムが、イオン反応性基を含み、且つ、GPC-MALS法で測定される絶対分子量及び絶対分子量分布の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を特定な範囲にすることによりロール加工性や短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れることを見出した。
 本発明者らは、カルボキシル基、エポキシ基、塩素原子などの架橋剤と反応できるイオン反応性基を有し、且つ、GPC-MALS法で測定される絶対分子量の数平均分子量(Mw)が特定であるアクリルゴムが、短時間架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れることを見出した。
 本発明者らは、また、かかるイオン反応性基含有アクリルゴムのGPC測定において、上記従来技術のエチルアクリレートとジヒドロジシクロペンテニルアクリレートなどを共重合したラジカル反応性アクリルゴムのGPC測定に用いられるテトラヒドロフランでは十分に溶解できず、各分子量や分子量分布をきれいに且つ再現良く測定できなかったが、テトラヒドロフランよりもSP値が高い特定溶媒を展開溶媒にすることによりきれいに溶解し且つ再現良く測定でき、しかもそれぞれの特性値を特定にすることでアクリルゴムのロール加工性や架橋性且つ架橋物の強度特性と耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスさせることができることを見出した。
 本発明者らは、また、アクリルゴムのロール加工性については、GPC-MALS法で測定される数平均分子量(Mn)と、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が大きく関係し、それぞれ特定の範囲にあるときに、強度特性を損ねずにロール加工性を格段に改善できることを見出した。特に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が大きければ大きいほどロール加工性が改善されるが、特定の数平均分子量(Mn)を有し且つ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が広めのアクリルゴムを製造するのは困難であったが、本発明者らは、連鎖移動剤を初期に添加せずに重合途中で回分的に添加することで達成できることを見出した。本発明者らは、また、スクリュー型二軸押出乾燥機を用いて凝固反応で生成した含水クラムを高シェアで乾燥することにより、数平均分子量(Mn)を損ねずに重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を大きく広げロール加工性をさらに改善されることを見出した。
 本発明者らは、また、アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量を特定にすることで、ロール加工性、架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるともにバンバリー加工性にも格段に優れることを見出した。アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量は、重合反応途中で発生し、特に、強度特性を向上させるために重合転化率を高めると急増しコントロールするのが困難であるが、連鎖移動剤存在下で乳化重合することである程度抑制できること、及び、急増したメチルエチルケトン不溶解分がスクリュー型二軸押出乾燥機内で実質的に水分を含まない状態(含水量1重量%未満)でアクリルゴムを溶融混錬して押出乾燥することで急増したメチルエチルケトン不溶解分が消失且つメチルエチルケトン不溶解分バラツキ量を小さくし、アクリルゴムのロール加工性を損ねることなくバンバリー加工性を格段に改善できることを見出した。
 本発明者らは、また、アクリルゴムの比重を特定にすることで、ロール加工性、架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるともに保存安定性にも格段に優れることを見出した。イオン反応性基を有する本発明のアクリルゴムは、粘着性で且つ空気が抜けづらく、含水クラムを直接乾燥したクラム状アクリルゴムでは多量の空気を巻き込み(比重が小さくなり)保存安定性を悪化しているが、クラム状アクリルゴムをベーラー等で圧縮してベール化することで多少空気を抜くことができ且つ保存安定性が改善できること、及び、含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機により減圧下で押出乾燥し空気を含まないシート状アクリルゴムを押し出すこと、あるいは必要に応じて押し出したシート状アクリルゴムを積層することで殆ど空気を含まず比重の高い保存安定性が格段に改善されたベール状アクリルゴムを製造できることを見出した。本発明者らは、また、かかる空気の含有量を加味した比重は、浮力の差を利用したJIS K6268架橋ゴム-密度測定のA法に準じて測定できることを見出した。また、アクリルゴムの保存安定性は、pHを特定することにより更に向上できることを見出した。
 本発明者らは、また、灰分量や灰分中成分量を特定範囲内にすることで更にロール加工性、短時間架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるとともに耐水性にも優れることを見出した。アクリルゴム中の灰分量を低下させるのはなかなか困難であるが、特定方法で凝固反応を行った含水クラムが温水での洗浄効率及び脱水時での灰分除去効率が高いこと、及び特定成分の灰分は洗浄では除去しにくいが同方法で行うことで容易に減少し且つ耐水性を格段に高められることを見出した。本発明者らは、特に、凝固工程で生成する含水クラムの特定粒子径の割合を多くし洗浄・脱水・乾燥を行うことにより、得られるアクリルゴムのロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性等の特性を損なわずに耐水性を格段に改良できることを見出した。また、本発明者らは、アクリルゴムの乳化重合において特定な乳化剤を使用すると、または、乳化重合液を凝固する場合に特定な凝固剤を使用すると、アクリルゴムの耐水性に優れるとともに金型等への離型性が格段に高められることを見出した。
 本発明者らは、また、乾燥したアクリルゴムの冷却速度を高めることでロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性等の特性を損なわずにゴム組成物のスコーチ安定性を格段に改良できることを見出した。
 本発明者らは、また、アクリルゴムのイオン反応性基の種類と量、アクリルゴムの単量体組成、z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)、60℃における複素粘性率([η]60℃)、100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)、及び形状を特定することにより、更に、ロール加工性、架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に改善されることを、及び、架橋剤として多価有機化合物を用いることにより、更に、短時間の架橋性や得られるゴム架橋物の各特性が大きく改善されることを見出した。
 本発明者らは、また、特定な単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化した後に過硫酸カリウム等の無機ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒存在下に乳化重合を開始させ、連鎖移動剤を初期には添加せずに重合途中で回分的に添加して乳化重合を行うことにより、製造できるアクリルゴムの低分子量成分と高分子量成分を共存させ広めな分子量分布とすることで、アクリルゴムのロール加工性、架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされることを見出した。
 本発明者らは、また、特定の押出乾燥機を用いて高シェアの条件でアクリルゴムを溶融混錬し乾燥することにより、ロール加工性、短時間架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が更に改善されたアクリルゴムが製造できることを見出した。更に、無機ラジカル発生剤量、還元剤後添加及び重合温度を特定にすることで、よりロール加工性、強度特性、耐水性及び耐圧縮永久歪み特性がバランスされるアクリルゴムを製造できることを見出した。
 本発明者らは、更に、本願発明のアクリルゴム、充填剤及び架橋剤を含むゴム組成物において、充填剤として、カーボンブラックやシリカを配合することによりロール加工性や短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れ、更にバンバリー加工性、保存安定性及び耐水性にも優れることを見出した。本発明者らは、また、架橋剤として、有機化合物、多価化合物またはイオン性架橋化合物であることが好ましく、例えば、アミン基、エポキシ基、カルボキシル基またはチオール基などのアクリルゴムのイオン反応性基と反応するイオン反応性基を複数有する多価イオン有機化合物であることによりロール加工性や短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れ、更にバンバリー加工性、保存安定性及び耐水性にも優れることを見出した。
 本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
 かくして、本発明によれば、イオン反応性基を有し、GPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布による数平均分子量(Mn)が10万~50万の範囲、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.7~6.5の範囲であるアクリルゴムが提供される。
 本発明のアクリルゴムにおいて、GPC-MALS法の測定溶媒が、ジメチルホルムアミド系溶媒であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、イオン反応性基が、カルボキシル基、エポキシ基または塩素原子であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、イオン反応性基含有量が、0.001~5重量%の範囲であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位、イオン反応性基含有単量体由来の結合単位、及びその他の単量体由来の結合単位からなるものであることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が、1.3~3の範囲であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、メチルエチルケトン不溶解分量が、50重量%以下であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、メチルエチルケトン不溶解分量を20点測定したときの値が、(平均値±5)重量%の範囲内に全て入るものであることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、灰分量が、0.5重量%以下であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、灰分中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン及びイオウの合計量が、50重量%以上であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、60℃における複素粘性率([η]60℃)が、15,000[Pa・s]以下であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、0.8以上であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、比重が、0.8以上であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、シート状またはベール状であることが好ましい。
 また、本発明のアクリルゴムは、リン酸エステル塩または硫酸エステル塩を乳化剤として使用し乳化重合したものであることが好ましく、乳化重合した重合液をアルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を凝固剤として使用することにより凝固させ、乾燥したものであることが好ましい。また、本発明のアクリルゴムは、凝固後に溶融混錬及び乾燥されたものであることが好ましく、前記の溶融混錬及び乾燥が、実質的に水分を含まない状態で行われたものであること、前記の溶融混錬及び乾燥が、減圧下で行われたものであることが好ましい。さらに、本発明のアクリルゴムは、前記の溶融混錬及び乾燥後に、40℃/hr以上の冷却速度で冷却されたものであることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムにおいて、粒子径710μm~6.7mmの範囲の割合が50重量%以上の含水クラムを洗浄・脱水・乾燥させたものであることが好ましい。
 本発明によれば、また、イオン反応性基含有単量体を含むアクリルゴム単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化する工程と、無機ラジカル発生剤と還元剤とを含むレドックス触媒存在下、重合を開始し、重合途中で連鎖移動剤を回分的に後添加して重合を継続し乳化重合する工程と、を含むアクリルゴムの製造方法が提供される。
 本発明のアクリルゴムの製造方法は、上記アクリルゴムを製造するアクリルゴムの製造方法であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化重合後に凝固して含水クラムを生成し、生成した含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて最大トルク25N・m以上で脱水・乾燥することが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、無機ラジカル発生剤量が、単量体成分100重量に対して0.1~0.21重量部の範囲であることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、還元剤を後添加するものであることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化重合温度が、35℃以下に制御されることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化重合工程において、リン酸エステル塩または硫酸エステル塩を乳化剤として使用し乳化重合を行うことが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化重合工程で生成した重合液を、アルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を凝固剤として使用することで凝固させ、乾燥することが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化重合工程で生成した重合液を、アルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を含む凝固剤を含む水溶液中に添加し撹拌することで凝固させることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、乳化重合工程で生成した重合液を凝固剤と接触させて凝固した後、溶融混錬及び乾燥することが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、前記の溶融混錬及び乾燥が、実質的に水分を含まない状態で行われることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、前記の溶融混錬及び乾燥が、減圧下で行われることが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、溶融混錬及び乾燥後のアクリルゴムを、40℃/hr以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
 本発明のアクリルゴムの製造方法において、粒子径710μm~6.7mmの範囲の割合が50重量%以上の含水クラムを洗浄・脱水・乾燥することが好ましい。
 本発明によれば、また、アクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び架橋剤を含んでなるゴム組成物が提供される。
 本発明のゴム組成物において、前記充填剤が、補強性充填剤であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記充填剤が、カーボンブラック類であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記充填剤が、シリカ類であることが好ましい。
 本発明のゴム組成物において、前記架橋剤が、有機架橋剤であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記架橋剤が、多価化合物であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記架橋剤が、イオン架橋性化合物であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記架橋剤が、イオン架橋性有機化合物であることが好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記架橋剤が、多価イオン有機化合物であることが好ましい。
 本発明のゴム組成物において、前記架橋剤としてのイオン架橋性化合物、イオン架橋性有機化合物または多価イオン有機化合物のイオンが、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基及びチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン反応性基であることが好ましい。
 本発明のゴム組成物において、前記架橋剤が、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸化合物及び多価チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の多価イオン化合物であることが好ましい。
 本発明のゴム組成物において、前記架橋剤の含有量が、ゴム成分100重量部に対して0.001~20重量部の範囲であることが好ましい。
 本発明のゴム組成物は、更に、老化防止剤を含んでなることが好ましい。本発明のゴム組成物において、前記老化防止剤が、アミン系老化防止剤であることが好ましい。
 本発明によれば、また、上記のアクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び必要に応じて老化防止剤を混合した後に、架橋剤を混合するゴム組成物の製造方法が提供される。
 本発明によれば、更に、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。本発明のゴム架橋物において、前記ゴム組成物の架橋が、成形後に行われることが好ましい。また、本発明のゴム架橋物において、前記ゴム組成物の架橋が、一次架橋及び二次架橋を行うものであることが好ましい。
 本発明によれば、ロール加工性や短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れたアクリルゴム、その効率的な製造方法、該アクリルゴムを含む高品質なゴム組成物並びにそれを架橋したゴム架橋物が提供される。
本発明の一実施形態に係るアクリルゴムの製造に用いられるアクリルゴム製造システムの一例を模式的に示す図である。 図1のスクリュー型押出機の構成を示す図である。 図1の冷却装置として用いられる搬送式冷却装置の構成を示す図である。
 本発明のアクリルゴムは、イオン反応性基を有し、GPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布による数平均分子量(Mn)が10万~50万の範囲、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.7~6.5の範囲であることを特徴とする。ここで、「GPC-MALS法」とは、以下の内容である。GPC(gel permeation chromatography)法は、分子サイズの差に基づいて分離を行う液体クラマトグラフィーの一種である。この装置に多角度レーザ光散乱光度計(MALS)及び示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置でサイズ分別された分子鎖溶液の光散乱強度及び屈折率差を、溶融時間を追って測定することにより、溶質の分子量とその含有率を順次計算し、最終的には高分子物質の絶対分子量分布及び絶対平均分子量値を求める手法である。
<イオン反応性基>
 本発明のアクリルゴムは、イオン反応性基を有することを特徴とする。
 イオン反応性基としては、イオン反応する官能基であれば格別な限定はないが、好ましくは、カルボキシル基、エポキシ基及び塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基、より好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、特に好ましくはカルボキシル基である。
 本発明のアクリルゴムのイオン反応性基含有量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、イオン反応性基自体の重量割合で、通常0.001~5重量%、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.05~1重量%、特に好ましくは0.1~0.5重量%の範囲にあるときに加工性や架橋性、及び、架橋物としたときの強度特性、耐圧縮永久歪み特性、耐油性、耐寒性、及び耐水性などの特性が高度にバランスされるので好適である。
 本発明のイオン反応性基を有するアクリルゴムは、アクリルゴムに後反応でイオン反応性基を導入したものでもよいが、好ましくはイオン反応性基含有単量体を共重合したアクリルゴムが好適である。
<単量体成分>
 本発明のアクリルゴムの単量体成分は、イオン反応性基を含む通常のアクリルゴムを構成する単量体であれば格別な限定はないが、好ましくはイオン反応性基含有単量体を含むアクリルゴム単量体成分、より好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、イオン反応性基含有単量体、及び必要に応じて共重合可能なその他の単量体からなるものである。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル類を総称する用語として使用される。
 (メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、通常炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくは炭素数1~8のアルキルを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好ましくは炭素数2~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。
 (メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルがより好ましい。
 (メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、特に限定されないが、通常2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、好ましくは2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、より好ましくは炭素数2~6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシエステルが用いられる。
 (メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチルがより好ましい。
 これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独であるいは2種以上が組み合わせて用いられ、単量体全成分中におけるこれらの割合は、通常50~99.99重量%、好ましくは62~99.95重量%、より好ましくは74~99.9重量%、特に好ましくは80~99.5重量%、最も好ましくは87~99重量%の範囲であるときにアクリルゴムの耐候性、耐熱性及び耐油性が高度に優れ好適である。
 イオン反応性基含有単量体としては、イオン反応に携わる官能基を有するものあれば格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、カルボキシル基、エポキシ基及び塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体が挙げられ、好ましくはカルボキシル基及びエポキシ基を有する単量体、より好ましくはカルボキシル基を有する単量体であるときに、短時間の架橋性及び架橋物の耐圧縮永久歪み特性や耐水性を高度に改善でき好適である。
 カルボキシル基を有する単量体としては、格別な限定はないが、エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられ、これらの中でも特にエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルがアクリルゴムをゴム架橋物とした場合の耐圧縮永久歪み特性をより高めることができるので好ましい。
 エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、格別な限定はないが、炭素数3~12のエチレン性不飽和モノカルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。
 エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、格別な限定はないが、炭素数4~12のエチレン性不飽和ジカルボン酸が好ましく、例えば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。なお、エチレン性不飽和ジカルボン酸は、無水物として存在しているものも含まれる。
 上記エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、格別な限定はないが、通常、炭素数4~12のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~12のアルキルモノエステル、好ましくは炭素数4~6のエチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数2~8のアルキルモノエステル、より好ましくは炭素数4のブテンジオン酸の炭素数2~6のアルキルモノエステルが挙げられる。
 エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどのブテンジオン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;などが挙げられ、これらの中でも、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチルが好ましく、フマル酸モノn-ブチルが特に好ましい。
 エポキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニルエーテル;などが挙げられる。
 塩素原子を有する単量体としては、格別限定されるものではないが、例えば、塩素原子含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸クロロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸クロロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(クロロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、塩素原子含有不飽和エーテル、塩素原子含有不飽和ケトン、クロロメチル基含有芳香族ビニル化合物、塩素原子含有不飽和アミド、クロロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
 塩素原子含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸クロロアルキルエステル具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸クロロアシロキシアルキルエステル具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(クロロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。塩素原子含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。塩素原子含有不飽和ケトンの具体例としては、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。クロロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。塩素原子含有不飽和アミドの具体例としては、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。また、クロロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
 これらのイオン反応性基含有単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いられ、単量体全成分中の割合は、通常0.01~10重量%、好ましくは0.05~8重量%、より好ましくは0.1~6重量%、特に好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の範囲である。
 必要に応じて上記の各単量体と共に使用し得る上記以外の単量体(本発明では「その他の単量体」と略称する)としては、上記単量体と共重合可能なものであれば格別な限定はなく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体;エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのオレフィン系単量体などが挙げられる。
 これらその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられ、単量体全成分中の割合は、通常0~40重量%、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0~20重量%、特に好ましくは0~15重量%、最も好ましくは0~10重量%の範囲に抑えられる。
<アクリルゴム>
 本発明のアクリルゴムは、上記イオン反応性基を有し、好ましくは上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、イオン反応性基含有単量体及び必要に応じて含まれるその他の単量体からの結合単位からなり、アクリルゴム中のそれぞれの割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位が、通常50~99.99重量%、好ましくは62~99.95重量%、より好ましくは74~99.9重量%、特に好ましくは80~99.5重量%、最も好ましくは87~99重量%の範囲であり、イオン反応性基含有単量体由来の結合単位が、通常0.01~10重量%、好ましくは0.05~8重量%、より好ましくは0.1~6重量%、特に好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の範囲であり、その他の単量体由来の結合単位が、通常0~40重量%、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0~20重量%、特に好ましくは0~15重量%、最も好ましくは0~10重量%の範囲である。アクリルゴムの単量体組成がこの範囲にあるときに短時間の架橋性、耐圧縮永久歪み特性、耐候性、耐熱性、及び耐油性等の特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムの絶対分子量及び絶対分子量分布を測定するGPC-MALS法の測定溶媒は、本発明のアクリルゴムが溶解し測定できるものであれば格別な限定はないが、ジメチルホルムアミド系溶媒が好適である。使用されるジメチルホルムアミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミドを主成分とするものであれば格別限定はないが、ジメチルホルムアミド100%あるいはジメチルホルムアミド系溶媒中のジメチルホルムアミドの割合が、90重量%、好ましくは95重量%、より好ましくは97重量%以上である。ジメチルホルムアミドに添加する化合物としては、格別な限定はないが、本発明においては、特に、ジメチルホルムアミドに塩化リチウムが0.05mol/L、37%濃塩酸が0.01%の濃度でそれぞれ添加された溶液が好適である。
 本発明のアクリルゴムの数平均分子量(Mn)は、GPC-MALS法で測定される絶対分子量で、100,000~500,000(10万~50万)、好ましくは200,000~480,000(20万~48万)、より好ましくは250,000~450,000(25万~45万)、特に好ましくは300,000~400,000(30万~40万)、最も好ましくは350,000~400,000(35万~40万)の範囲であるときにアクリルゴムのロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされ好適である。本発明のアクリルゴムの数平均分子量(Mn)が過度に小さいと強度特性や耐圧縮永久歪み特性に劣り、逆に、過度に大きいとロール加工性、バンバリー加工性、射出成型性等に劣り、いずれも好ましくない。
 本発明のアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、GPC-MALS法で測定される絶対分子量で、通常1,000,000~3,500,000、好ましくは1,200,000~3,000,000、より好ましくは1,300,000~3,000,000、特に好ましくは1,500,000~2,500,000、最も好ましくは1,900,000~2,100,000の範囲であるときにアクリルゴムのロール加工性、強度特性、及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムのz平均分子量(Mz)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、GPC-MALS法で測定される高分子量領域を重視した絶対分子量で、通常1,500,000~6,000,000、好ましくは2,000,000~5,000,000、より好ましくは2,500,000~4,500,000、特に好ましくは3,000,000~4,000,000の範囲であるときにアクリルゴムのロール加工性、強度特性、及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、GPC-MALS法で測定される絶対分子量分布で、3.7~6.5、好ましくは3.8~6.2、より好ましくは4~6、特に好ましくは4、5~5.7、最も好ましくは4.7~5.5の範囲であるときにロール加工性と架橋した場合の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされ好適である。本発明のアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が過度に小さいとロール加工性に劣り、過度に大きい強度特性や耐圧縮永久歪み特性に劣りまたロール加工性も十分でなくなり、いずれも好ましくない。
 本発明のアクリルゴムのz平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)は、格別な限定なく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、GPC-MALS法で測定される高分子領域を重視した絶対分子量分布で、通常1.3~3、好ましくは1.4~2.7、より好ましくは1.5~2.5、特に好ましくは1.8~2、最も好ましくは1.8~1.95の範囲であるときにアクリルゴムの加工性と強度特性が高度にバランスされ且つ保存時の物性変化を緩和でき好適である。
 本発明のアクリルゴムの灰分量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、特に好ましくは0.15重量%以下、最も好ましくは0.13重量%以下であり、この範囲にあるときアクリルゴムの耐水性、強度特性及び加工性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムの灰分量の下限値は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、最も好ましくは0.01重量%以上であるときに、ゴムの金属付着性が低減され作業性に優れるようになり好適である。
 本発明のアクリルゴムが耐水性、強度特性、加工性及び作業性を高度にバランスされる場合の灰分量は、通常0.0001~0.5重量%、好ましくは0.0005~0.3重量%、より好ましくは0.001~0.2重量%、特に好ましくは0.005~0.15重量%、最も好ましくは0.01~0.13重量%の範囲である。
 本発明のアクリルゴムの灰分中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン及びイオウの合計量が、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上であるときにアクリルゴムの耐水性が高度に改善され好適である。また、本発明のアクリルゴムの灰分中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン及びイオウの合計量がこの範囲にあるときに、金属付着性が低減され作業性に優れ好適である。
 本発明のアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンとの合計量が、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上であるときにアクリルゴムの耐水性、強度特性及び加工性が高度にバランスされ好適である。また、本発明のアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンとの合計量がこの範囲にあるときに、金属付着性が低減され作業性に優れ好適である。
 本発明のアクリルゴムの灰分中のマグネシウム量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常10重量%以上、好ましくは15~60重量%、より好ましくは20~50重量%、特に好ましくは25~45重量%、最も好ましくは30~40重量%の範囲である。
 本発明のアクリルゴムの灰分中のリン量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常10重量%以上、好ましくは20~90重量%、より好ましくは30~80重量%、特に好ましくは40~70重量%、最も好ましくは50~60重量%の範囲である。
 本発明のアクリルゴムの灰分中のマグネシウムとリンとの比([Mg]/[P])は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、重量比で、通常0.4~2.5、好ましくは0.45~1.2、より好ましくは0.45~1、特に好ましくは0.5~0.8、最も好ましくは0.55~0.7の範囲であるときに、アクリルゴムの耐水性、強度特性及び加工性が高度にバランスされ好適である。
 ここで、アクリルゴム中の灰分は、単量体成分をエマルジョン化して乳化重合する際に用いる乳化剤及び乳化重合液を凝固する際に用いる凝固剤に主として由来するものであるが、全灰分量や灰分中のマグネシウムとリンの含有量などは、乳化重合工程や凝固工程の条件だけでなく、その後の各工程の諸条件によっても変化するものである。
 本発明のアクリルゴムは、後述する乳化重合時の乳化剤としてアニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、またはノニオン性乳化剤、好ましくはアニオン性乳化剤、より好ましくはリン酸エステル塩または硫酸エステル塩を用いたときに、耐水性や強度特性のほかにも金型離型性や加工性を高度に改善でき好適である。アクリルゴムの耐水性は、アクリルゴム中の灰分量と灰分中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン及びイオウの合計量とで一義的に相関するが、上記乳化剤を使用するものは、アクリルゴムの耐水性、強度特性、金型離型性及び加工性を更に高度にバランスでき好適である。
 本発明のアクリルゴムは、後述する凝固剤として金属塩、好ましくはアルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を用いたときに、耐水性や強度特性のほかにも金型離型性や加工性を高度に改善でき好適である。アクリルゴムの耐水性は、アクリルゴム中の灰分量と灰分中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン及びイオウの合計量とで一義的に相関するが、上記凝固剤を使用するものは、アクリルゴムの耐水性、強度特性、金型離型性及び加工性が更に高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、アクリルゴムの使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下であるときに加工性や耐寒性に優れ好適である。アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)の下限値は、格別限定されるものではないが、通常-80℃以上、好ましくは-60℃以上、より好ましくは-40℃以上である。ガラス転移温度を前記下限以上とすることにより耐油性と耐熱性により優れたものとすることができ、上記の上限以下とすることにより加工性、架橋性及び耐寒性により優れたものとすることができる。
 本発明のアクリルゴムの60℃における複素粘性率([η]60℃)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常15,000[Pa・s]以下、好ましくは1,000~10,000[Pa・s]、より好ましくは2,000~5,000[Pa・s]、特に好ましくは2,500~4,000[Pa・s]、最も好ましくは2,500~3,000[Pa・s]の範囲にあるときに加工性、耐油性及び形状保持性に優れ好適である。
 本発明のアクリルゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常1,500~6,000[Pa・s]、好ましくは2,000~5,000[Pa・s]、より好ましくは2,300~4,000[Pa・s]、特に好ましくは2,500~3,500[Pa・s]、最も好ましくは2,500~3,000[Pa・s]の範囲であるときに加工性、耐油性及び形状保持性に優れ好適である。
 本発明のアクリルゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上、最も好ましくは0.83以上である。本発明のアクリルゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)は、また、通常0.5~0.99、好ましくは0.6~0.98、より好ましくは0.7~0.97、特に好ましくは0.8~0.96、最も好ましくは0.85~0.95の範囲であるときに加工性、耐油性、及び形状保持性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムのメチルエチルケトンの不溶解分量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下であるときに、バンバリー等の混錬時の加工性が高度に改善され好適である。
 本発明のアクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量を任意に20点測定したときの値(バラツキ量)は、格別限定されるものではないが、(平均値±5)重量%の範囲内に20点全てが入る、好ましくは(平均値±3)重量%の範囲内に20点全てが入るときに加工性バラツキが無くゴム組成物やゴム架橋物の諸物性が安定化されて好適である。なお、アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量を任意に20点測定したときの値が、平均値±5の範囲内に20点全てが入るとは、(平均値-5)~(平均値+5)重量%の範囲内に測定した20点のメチルエチルケトン不溶解分量が全て入ることを意味し、例えば、測定したメチルエチルケトン不溶解分量の平均値が20重量%であった場合には15~25重量%の範囲内に20点全ての測定値が入ることを意味する。
 本発明のアクリルゴムは、凝固反応で生成した含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機で殆ど水が除去された状態(含水量1重量%未満)で溶融混錬及び乾燥されたものであるときにバンバリー加工性と強度特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムの含水量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下であるとき、アクリルゴムの加硫特性が最適化され耐熱性やストランド状耐水性などの特性が高度に改善され好適である。
 本発明のアクリルゴムのpHは、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常6以下、好ましくは2~6、より好ましくは2.5~5.5、最も好ましくは3~5の範囲であるときにアクリルゴムの保存安定性が高度に改善され好適である。
 本発明のアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常10~150、好ましくは20~100、より好ましくは25~70の範囲であるときに、アクリルゴムの加工性や強度特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムの比重は、格別限定されるものではないが、通常0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは1以上であるときに殆ど空気を内在させず保存安定性に優れ好適である。本発明のアクリルゴムの比重は、また、通常0.7~1.6、好ましくは0.8~1.5、より好ましくは0.9~1.4、特に好ましくは0.95~1.3、最も好ましくは1.0~1.2の範囲であるときに生産性、保存安定性及び架橋物の架橋特性安定性等が高度にバランスされ好適である。アクリルゴムの比重が過度に小さいときは、アクリルゴム中の空気量が多いことを示し酸化劣化など含めて保存安定性に大きく影響し好ましくない。
 なお、本発明のアクリルゴムの比重は、空隙を含む容量で質量を割ったもの、すなわち、空気中で測定される質量を浮力で割ったもので、通常JIS K6268架橋ゴム-密度測定のA法に準じて測定されるものである。
 本発明のアクリルゴムは、また、凝固反応で生成する含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機により、減圧下で乾燥、あるいは、減圧下で溶融混錬及び乾燥したものが、保存安定性と射出成型性と強度特性の特性が特に優れ且つ高度にバランスされるので好適である。
 本発明のアクリルゴムの形状は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよく、例えば、粉状、クラム状、ストランド状、シート状、ベール状等いずれでもよいが、好ましくはシート状やベール状であるときに作業性や保存安定性に優れ好適である。
 本発明のアクリルゴムがシート状であるときの厚さは、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1~40mm、好ましくは2~35mm、より好ましくは3~30mm、最も好ましくは5~25mmの範囲であるときに作業性、保存安定性及び生産性が高度にバランスされ好適である。本発明のシート状アクリルゴムの幅は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常300~1200mm、好ましくは400~1000mm、より好ましくは500~800mmの範囲であるときに特に取り扱い性に優れ好適である。本発明のシート状アクリルゴムシートの長さは、格別限定されるものではないが、通常300~1200mm、好ましくは400~1000mm、より好ましくは500~800mmの範囲であるときに特に取り扱い性に優れ好適である。
 本発明のアクリルゴムがベール状であるときの大きさは、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、幅が通常100~800mm、好ましくは200~500mm、より好ましくは250~450mmの範囲であり、長さが通常300~1,200mm、好ましくは400~1,000mm、より好ましくは500~800mmの範囲で、高さ(厚さ)が通常50~500mm、好ましくは100~300mm、より好ましくは150~250mmの範囲にあるのが適当である。また、本発明のベール状アクリルゴムの形状も限定されず、アクリルゴムベールの使用目的に応じて適宜選択されるが、多くの場合、直方体が好適である。
<アクリルゴムの製造方法>
 上記アクリルゴムの製造方法は、格別限定されるものではないが、例えば、イオン反応性基含有単量体を含むアクリルゴム単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化した後に無機ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒存在下に乳化重合するアクリルゴムの製造方法において、連鎖移動剤を重合途中で回分的に後添加することを特徴とするアクリルゴムの製造方法などを挙げることができる。
(単量体成分)
 本発明に使用されるイオン反応性基含有単量体を含む単量体成分は、格別な限定はないが、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル、イオン反応性基含有単量体、及び必要に応じて共重合可能なその他の単量体からなるものであり、既に述べた単量体成分の例示及び好ましい範囲と同じである。単量体成分の使用量についても、既に述べたとおりであり、乳化重合においては、各単量体を本発明のアクリルゴムの上記組成になるように適宜選択すればよい。
(乳化剤)
 本発明に使用される乳化剤としては、格別な限定はないが、例えば、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などを挙げることができ、好ましくはアニオン性乳化剤である。
 アニオン性乳化剤としては、格別な限定はなく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤の中でも、リン酸エステル塩、硫酸エステル塩が好ましく、リン酸エステル塩が特に好ましく、2価リン酸エステル塩が最も好ましく、得られるアクリルゴムの耐水性、強度特性、金型離型性及び加工性を高度にバランスさせることができ好適である。また、これらリン酸エステル塩や硫酸エステル塩としては、好ましくはリン酸エステルや硫酸エステルのアルカリ金属塩、より好ましくはリン酸エステルや硫酸エステルのナトリウム塩であるときに、得られるアクリルゴムの耐水性、強度特性、金型離型性及び加工性を高度にバランスさせることができ好適である。
 2価リン酸エステル塩としては、乳化重合反応において乳化剤として使用可能なものであれば、格別限定されるものではないが、アルキルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル塩、アルキルフェニルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル塩などが挙げられ、これらの中でもこれらの金属塩が好ましく、これらのアルカリ金属塩がより好ましく、これらのナトリウム塩が最も好ましい。
 上記アルキルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル塩としては、例えば、アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸エステル塩、アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸エステル塩などが挙げられ、これらの中でも、アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸エステル塩が好ましい。
 アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸エステル塩の具体例としては、オクチルオキシジオキシエチレンリン酸エステル、オクチルオキシトリオキシエチレンリン酸エステル、オクチルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、デシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、トリデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、テトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、オクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、オクチルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、デシルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、トリデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、テトラデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、オクタデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、オクチルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、デシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、トリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、テトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、オクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、オクチルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、デシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、トリデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、テトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、オクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステルなどの金属塩が挙げられ、これらの中でも、それらのアルカリ金属塩、とりわけナトリウム塩が好適である。
 アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸エステル塩の具体例としては、オクチルオキシジオキシプロピレンリン酸エステル、オクチルオキシトリオキシプロピレンリン酸エステル、オクチルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、デシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、トリデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、テトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、オクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、オクチルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、デシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、トリデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、テトラデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、オクタデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、オクチルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、デシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、トリデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、テトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、オクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、オクチルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、デシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、トリデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、テトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、オクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル及びそれらの金属塩などが挙げられ、これらの中でも、それらのアルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好適である。
 アルキルフェニルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル塩の具体例としては、アルキルフェニルオキシポリオキシエチレンリン酸エステル塩、アルキルフェニルオキシポリオキシプロピレンリン酸エステル塩などが挙げられ、これらの中でも、アルキルフェニルオキシポリオキシエチレンリン酸エステル塩が好ましい。
 アルキルフェニルオキシポリオキシエチレンリン酸エステル塩の具体例としては、メチルオキシオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、オクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸エステル、メチルフェニルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシペンタオキシエチレンリン酸エステル、メチルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、メチルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステルなどの金属塩が挙げられ、これらの中でも、それらのアルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好適である。
 アルキルフェニルオキシポリオキシプロピレンリン酸エステル塩の具体例としては、メチルフェニルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシテトラオキシプロピレンリン酸エステル、メチルフェニルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシペンタオキシプロピレンリン酸エステル、メチルフェニルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸エステル、メチルフェニルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、エチルフェニルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、ブチルフェニルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、ヘキシルフェニルオキシオクタオキシエチレンリン酸エステル、ノニルフェニルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステル、ドデシルフェニルオキシオクタオキシプロピレンリン酸エステルなどの金属塩が挙げられ、これらの中でも、それらのアルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好適である。
 リン酸エステル塩としては、ジ(アルキルオキシポリオキシアルキレン)リン酸エステルナトリウム塩などの1価リン酸エステル塩を、単独、または2価リン酸エステル塩と組み合わせて用いることができる。
 硫酸エステル塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミスチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸ナトリウムなどが挙げられ、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。
 カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
 ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどを挙げることができ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルがより好ましい。
 これらの乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~3重量部の範囲である。
 単量体成分と水と乳化剤との混合方法(混合方式)は、常法に従えばよく、例えば、単量体と乳化剤と水とをホモジナイザーやディスクタービンなどの撹拌機を用いて撹拌する方法などが挙げられる。水の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常1~1000重量部、好ましくは5~500重量部、より好ましくは4~300重量部、特に好ましくは3~150重量部、最も好ましくは20~80重量部の範囲である。
(無機ラジカル発生剤)
 本発明で使用する重合触媒としては、無機ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒を用いることを特徴とする。特に、無機ラジカル発生剤を用いることにより製造されるアクリルゴムのロール等における加工性を高度に改善でき好適である。
 無機ラジカル発生剤としては、乳化重合で通常用いられるものであれば格別な限定はなく、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられ、これらの中でも、過硫酸塩が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムがより好ましく、過硫酸カリウムが特に好ましい。
 これらの無機ラジカル発生剤は、それぞれ単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.0001~5重量部、好ましくは0.0005~1重量部、より好ましくは0.001~0.25重量部、特に好ましくは0.01~0.21重量部、最も好ましくは0.1~0.2重量部の範囲である。
(還元剤)
 本発明で使用される還元剤としては、通常乳化重合で用いられるものであれば格別な限定がないが、好ましくは少なくとも2種の還元剤を用いるものであり、還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤とを組み合わせるのが得られるアクリルゴムのバンバリー加工性とロール加工性と強度特性を更に高度にバランスでき好適である。
 還元状態にある金属イオン化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅などが挙げられ、これらの中でも硫酸第一鉄が好ましい。これらの還元状態にある金属イオン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001~0.01重量部、好ましくは0.00001~0.001重量部、より好ましくは0.00005~0.0005重量部の範囲である。
 本発明で使用する還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸またはその塩;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸またはその塩;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸又はその塩;ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸またはその塩;ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。これらの中でも、アルコルビン酸またはその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが好ましく、特にアスコルビン酸またはその塩が好ましい。
 これらの還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.1重量部の範囲である。
 還元状態にある金属イオン化合物とそれ以外の還元剤との好ましい組み合わせは、硫酸第一鉄とアスコルビン酸若しくはその塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの組み合わせであり、より好ましくは硫酸第一鉄とアルコルビン酸若しくはその塩との組み合わせである。このときの硫酸第一鉄の使用量は、単量体成分100重量部に対して、通常0.000001~0.01重量部、好ましくは0.00001~0.001重量部、より好ましくは0.00005~0.0005重量部の範囲であり、アスコルビン酸若しくはその塩及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの使用量は、両成分100重量部に対し、通常0.001~1重量部、好ましくは0.005~0.5重量部、より好ましくは0.01~0.1重量部の範囲である。
 乳化重合反応における水の使用量は、単量体成分エマルジョン化時に使用した量だけもよいが、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、通常10~1000重量部、好ましくは50~500重量部、より好ましくは80~400重量部、最も好ましくは100~300重量部の範囲になるように調整される。
 乳化重合反応の方式は、常法に従えばよく、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合温度及び重合時間は、特に限定されず、使用する重合開始剤の種類などから適宜選択できる。重合時間は通常0.5~100時間、好ましくは1~10時間である。
 乳化重合反応は、発熱反応で、制御しないと温度が上がり重合反応を短縮することもできるが、本発明においては、乳化重合反応温度を、通常35℃以下、好ましくは0~35℃、より好ましくは5~30℃、特に好ましくは10~25℃で制御することが、製造されるアクリルゴムの強度特性とバンバリー等の混錬時の加工性が高度にバランスされ好適である。
(連鎖移動剤の後添加)
 本発明においては、連鎖移動剤を初期に添加せずに重合途中で回分的に後添加することを特徴とし、こうすることにより高分子量成分と低分子量成分が分かれたアクリルゴムが製造でき、且つ、製造されるアクリルゴムの強度特性とロール等混錬時の加工性が高度にバランスされ好適である。
 使用される連鎖移動剤としては、乳化重合で通常使用されるものであれば格別限定されるものでなく、例えば、メルカプタン化合物が好適に用いることができる。
 メルカプタン化合物としては、通常炭素数2~20のアルキルメルカプタン化合物、好ましくは炭素数5~15のアルキルメルカプタン化合物、より好ましくは炭素数6~14のアルキルメルカプタン化合物を用いることができる。
 アルキルメルカプタン化合物としては、n-アルキルメルカプタン化合物、sec-アルキルメルカプタン化合物、t-アルキルメルカプタン化合物のいずれでもよいが、好ましくはn-アルキルメルカプタン化合物、t-アルキルメルカプタン化合物で、より好ましくはn-アルキルメルカプタン化合物であるときに連鎖移動剤の効果が安定的に発揮でき、製造されるアクリルゴムのロール等の加工性を高度に改善でき好適である。
 アルキルメルカプタン化合物の具体例としては、n-ペンチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-ヘプチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-トリデカンメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、sec-ペンチルメルカプタン、sec-ヘキシルメルカプタン、sec-ヘプチルメルカプタン、sec-オクチルメルカプタン、sec-デシルメルカプタン、sec-ドデシルメルカプタン、sec-トリデカンメルカプタン、sec-テトラデシルメルカプタン、sec-ヘキサデシルメルカプタン、sec-オクタデシルメルカプタン、t-ペンチルメルカプタン、t-ヘキシルメルカプタン、t-ヘプチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、t-デシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-トリデカンメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタン、t-ヘキサデシルメルカプタン、t-オクタデシルメルカプタンなどを挙げることができ、好ましくはn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、より好ましくはn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンである。
 これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、格別限定されるものではないが、単量体成分100重量部に対して、通常0.0001~1重量部、好ましくは0.0005~0.5重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部、特に好ましくは0.005~0.1重量部、最も好ましくは0.01~0.06重量部の範囲であるときに製造されるアクリルゴムの強度特性とロール加工性が高度にバランスされ好適である。
 本発明においては、上記連鎖移動剤を重合初期には添加せずに重合途中で回分的に添加することを特徴とし、製造されるアクリルゴムの高分子量成分と低分子量成分を製造し且つ分子量分布を特定範囲として強度特性とロール等の加工性を高度にバランスさせることができ好適である。
 連鎖移動剤の回分的な後添加の回数は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1~5回、好ましくは2~4回、より好ましくは2~3回、特に好ましくは2回であるときに製造されるアクリルゴムの強度特性とロール等の加工性を高度にバランスすることができ好適である。
 連鎖移動剤の回分的な後添加を開始する時期は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、重合開始してから通常20分以降、好ましくは重合開始後30分以降、より好ましくは重合開始後30~200分、特に好ましくは重合開始後35~150分、最も好ましくは40~120分の範囲であるときに製造されるアクリルゴムの強度特性とロール等の加工性を高度にバランスすることができ好適である。
 連鎖移動剤の回分的な後添加における1回あたりの添加量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、単量体成分100重量部に対して、通常0.00005~0.5重量部、好ましくは0.0001~0.1重量部、より好ましくは0.0005~0.05重量部、特に好ましくは0.001~0.03重量部、最も好ましくは0.002~0.02重量部の範囲であるときに製造されるアクリルゴムの強度特性とロール加工性を高度にバランスすることができ好適である。
 連鎖移動剤の添加後は、格別な限定はないが、通常30分以上、好ましくは45分以上、より好ましくは1時間以上重合反応を継続させてから終了することができる。
(還元剤の後添加)
 本発明においては、前記レドックス触媒の還元剤を、重合途中で後添加することができ、そうすることにより製造されるアクリルゴムの強度特性とロール等の加工性が高度にバランスさせることができ好適である。
 重合途中で後添加する還元剤としては、前記した還元剤の例示及び好ましい範囲は同じである。本発明において、後添加する還元剤としては、アスコルビン酸またはその塩が好適ある。
 重合途中で後添加する還元剤の使用量は、格別限定されるものでなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、単量体成分100重量部に対して、通常0.0001~1重量部、好ましくは0.0005~0.5重量部、より好ましくは0.001~0.5重量部、特に好ましくは0.005~0.1重量部、最も好ましくは0.01~0.05重量部の範囲であるときにアクリルゴム製造の生産性に優れるとともに製造されるアクリルゴムの強度特性と加工性を高度にバランスでき好適である。
 重合途中で後添加する還元剤は、連続的あるいは回分的のいずれでもよいが、好ましくは回分的である。還元剤を重合途中で回分的に後添加する場合の回数は、格別な限定はないが、通常1~5回、好ましくは1~3回、より好ましくは1~2回である。
 重合初期及び重合途中で後添加する還元剤が、アスコルビン酸またはその塩であるときの初期に添加するアスコルビン酸またはその塩の量と後添加するアスコルビン酸またはその塩の量との比は、格別限定されるものではないが、「初期添加アスコルビン酸またはその塩」/「回分的後添加のアスコルビン酸またはその塩」の重量比で、通常1/9~8/2、好ましくは2/8~6/4、より好ましくは3/7~5/5の範囲であるときにアクリルゴム製造の生産性に優れるとともに製造されるアクリルゴムの強度特性と加工性を高度にバランスでき好適である。
 還元剤の後添加の時期は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、重合開始してから通常1時間以降、好ましくは重合開始後1~3時間、より好ましくは1.5~2.5時間の範囲であるときにアクリルゴム製造の生産性に優れるとともに製造されるアクリルゴムの強度特性とロール等の加工性を高度にバランスすることができ好適である。
 還元剤の回分的な後添加における1回あたりの添加量は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、単量体成分100重量部に対して、通常0.00005~0.5重量部、好ましくは0.0001~0.1重量部、より好ましくは0.0005~0.05重量部、特に好ましくは0.001~0.03重量部の範囲であるときに製造されるアクリルゴムの強度特性とロール等の加工性を高度にバランスすることができ好適である。
 還元剤の添加後の操作は、格別な限定はないが、通常30分以上、好ましくは45分以上、より好ましくは1時間以上重合反応を継続させてから、重合反応を終了することができる。
 乳化重合反応の重合転化率は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上であり、このときに製造されるアクリルゴムは強度特性に優れ且つ単量体臭も無く好適である。重合停止に当たっては、重合停止剤を使用してもよい。
 本発明においては、乳化重合後に得られた乳化重合液(エマルジョン)を凝固して含水クラムを生成し、生成した含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて最大トルク25N・m以上で脱水・乾燥することが好ましい。
(凝固工程)
 乳化重合後の凝固工程では、例えば、上記の乳化重合で得られた乳化重合液を、凝固液と接触させることで凝固させて、アクリルゴムの含水クラムを生成することができる。
 この凝固反応で使用される乳化重合液の固形分濃度は、格別な限定はないが、通常5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~40重量%の範囲に調整される。
 使用される凝固液の凝固剤としては、特に限定されないが、通常は金属塩が用いられる。金属塩としては、例えば、アルカリ金属、周期表第2族金属塩、その他の金属塩などが挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、周期表第2族金属塩、より好ましくは周期表第2族金属塩、特に好ましくはマグネシウム塩であるときに得られるアクリルゴムの耐水性、強度特性、金型離型性及び加工性を高度にバランスさせることができ好適である。
 アルカリ金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム塩;塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム塩;塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウム塩などが挙げられ、これらの中でもナトリウム塩が好ましく、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムが特に好ましい。
 周期表第2族金属塩としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられ、好ましくは塩化カルシウム、硫酸マグネシウムである。
 その他の金属塩としては、例えば、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズ、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズ、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどが挙げられる。
 これらの凝固剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0.01~100重量部、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは1~30重量部の範囲である。凝固剤がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み特性や耐水性を高度に向上させることができるので好適である。
 本発明の凝固工程においては、特に、生成する含水クラムの粒径を特定領域に集束することで洗浄効率や脱水時の灰分除去効率が格段に上昇し好適である。生成する含水クラムの710μm~6.7mm(710μmを通過せず6.7mmを通過)の範囲の割合が、格別な限定はないが、全生成含水クラムに対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上であるときにアクリルゴムの耐水性を格段に改善でき好適である。また、生成する含水クラムの710μm~4.75mm(710μmを通過せず4.75mmを通過)の範囲の割合が、格別な限定はないが、全生成含水クラムに対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上であるときにアクリルゴムの耐水性を格段に改善でき好適である。さらに、生成する含水クラムの710μm~3.35mm(710μmを通過せず3.35mmを通過)の範囲の割合が、格別な限定はないが、全生成含水クラムに対して、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上であるときにアクリルゴムの耐水性を格段に改善でき好適である。
 含水クラムの粒子径を上記範囲に生成する手段としては、格別な限定はないが、例えば、乳化重合液と上記凝固剤との接触方法を乳化重合液を撹拌している凝固液(凝固剤水溶液)に添加すること、あるいは、凝固液の凝固剤濃度、撹拌している凝固液の撹拌数や周速を特定にすることで行うことができる。
 使用する凝固液は、通常水溶液として使用されるが、該水溶液における凝固剤濃度は、通常0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~10重量%、特に好ましくは1.5~5重量%の範囲であるときに生成する含水クラムの粒径を特定の領域に且つ均一に集束でき好適である。
 凝固液の温度は、格別限定はないが、通常40℃以上、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃の範囲であるときに均一な含水クラムが生成され好適である。
 乳化重液と凝固液を接触する方法としては、格別な限定はないが、例えば、該乳化重合液に凝固液を添加する方法、撹拌されている該乳化重合液に凝固液を添加する方法、凝固液に該乳化重合液を添加する方法、撹拌されている凝固液に該乳化重合液を添加する方法などいずれの方法でもよいが、前述したように、撹拌されている凝固液に該乳化重合液を添加する方法が生成する含水クラムの洗浄効率及び脱水効率に優れ且つ得られるアクリルゴムの耐水性と保存安定性を格段に向上できるので好適である。
 撹拌されている凝固液の撹拌数(回転数)は、すなわち、撹拌装置の撹拌翼の回転数で、格別な限定はないが、通常100rpm以上、好ましくは200rpm以上、より好ましくは200~1000rpm、特に好ましくは300~900rpm、最も好ましくは400~800rpmの範囲である。
 回転数はある程度激しく撹拌される回転数である方が、生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一にでき好適であり、前記下限以上とすることにより、クラム粒径が過度に大きいものと小さいものとが生成するのを抑制でき、前記上限以下とすることにより、凝固反応の制御をより容易にできる。
 撹拌されている凝固液の周速は、すなわち、撹拌装置の撹拌翼の外周の速度は、格別な限定はないが、一定程度まで激しく撹拌されている方が生成する含水クラム粒径を小さく且つ均一にでき好適で、通常0.5m/s以上、好ましくは1m/s以上、より好ましくは1.5m/s以上、特に好ましくは2m/s以上、最も好ましくは2.5m/s以上である。一方周速の上限値は、格別限定されるものではないが、通常50m/s以下、好ましくは30m/s以下、より好ましくは25m/s以下、最も好ましくは20m/s以下であるときに凝固反応の制御が容易になり好適である。
 凝固反応の上記条件(接触方法、乳化重合液の固形分濃度、凝固液の濃度及び温度、凝固液の撹拌時の回転数及び周速、など)を特定範囲にすることで、生成する含水クラムの形状及びクラム径が均一で且つ集束化され、洗浄及び脱水時の乳化剤や凝固剤の除去が格段に向上し、結果として製造されるアクリルゴムの耐水性と保存安定性を高度に改善できるので好適である。
(洗浄工程)
 上記凝固反応で生成した含水クラムは、乾燥する前に、洗浄するのが好適である。
 洗浄方法としては、格別限定されるものでなく、例えば、生成した含水クラムを多量の水と混合して行うことができる。
 洗浄のため加える水の量は、特に限定されないが、単量体成分100重量部に対して、水洗1回当たりの量が、通常50重量部以上、好ましくは50~15,000重量部、より好ましくは100~10,000重量部、さらに好ましくは500~5,000重量部の範囲であるときに、アクリルゴム中の灰分量を効果的に低減することができるので好適である。
 使用する水の温度は、格別限定されないが、温水を使用するのが好ましく、通常40℃以上、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃であり、特に60~80℃のときに洗浄効率を格段に上げることができ最適である。使用する水の温度を上記した下限以上とすることにより、乳化剤や凝固剤が含水クラムから遊離して洗浄効率がより向上する。
 洗浄時間は、格別な限定はないが、通常1~120分、好ましくは2~60分、より好ましくは3~30分の範囲である。
 洗浄(水洗)の回数についても、特に限定されず、通常は1~10回、好ましくは1~5回、より好ましくは2~3回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減させるという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、上記のように含水クラムの形状及び含水クラム径を特定範囲にすること、及び/又は洗浄温度を上記の範囲にすることで、水洗回数を格段に低減できる。
(乾燥工程)
 上記含水クラム、好ましくは洗浄後の含水クラムを乾燥する方法は、格別な限定はないが、例えば、スクリュー型二軸押出乾燥機を用いて行うことができる。使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機としては、2つのスクリューを有する押出乾燥機であれば格別限定はないが、本発明においては、特に、2つのスクリューを有するスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて高シェアの条件で含水クラムを乾燥することにより得られるアクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性を高度にバランスすることができ好適である。
 本発明においては、アクリルゴムはスクリュー型二軸押出乾燥機内で含水クラムが溶融され押出乾燥されて得ることができる。スクリュー型二軸押出乾燥機の乾燥温度(設定温度)は、適宜選択されればよいが、通常100~250℃、好ましくは110~200℃、より好ましくは120~180℃の範囲であるときに、アクリルゴムのヤケや変質がなく効率よく乾燥ができ好適である。
 本発明においては、また、含水クラムがスクリュー型二軸押出乾燥機内で減圧下で溶融され押出乾燥されたときに、アクリルゴムのロール加工性や強度特性を損ねることなく保存安定性を高度に高められ好適である。この段階でアクリルゴム中に内在する空気を除去し保存安定性を高めるために好適なスクリュー型二軸押出乾燥機中の減圧度としては、適宜選択されればよいが、通常1~50kPa,好ましくは2~30kPa、より好ましくは3~20kPaの範囲である。
 本発明においては、また、含水クラムがスクリュー型二軸押出乾燥機で殆ど水が除去された状態で溶融混錬及び乾燥されたときに、アクリルゴムのロール加工性や強度特性を損ねることなくバンバリー加工性を高度に高められ好適である。バンバリー加工性を高度に高められる殆ど水が除去された状態としては、適宜選択されればよいが、アクリルゴムの含水量として、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。なお、本発明でいう「溶融混錬」あるいは「溶融混錬及び乾燥」とは、スクリュー型二軸押出乾燥機内でアクリルゴムが溶融状態で混錬(混合)あるいは溶融状態で押し出され、その段階で乾燥されること、あるいは、スクリュー型二軸押出乾燥機によりアクリルゴムを溶融(可塑化)状態で混練して押し出し乾燥することを意味する。
 本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の最大トルクは、格別限定されるものではないが、通常25N・m以上、好ましくは30N・m以上、より好ましくは35N・m以上、特に好ましくは40N・m以上である。本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の最大トルクは、また、通常25~125N・m、好ましくは30~100N・m、より好ましくは35~75N・m、特に好ましくは40~60N・mの範囲であるときに、製造されるアクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性を高度にバランスすることができ好適である。
 本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の比動力は、格別な限定はないが、通常0.1~0.25[kw・h/kg]以上、好ましくは0.13~0.23[kw・h/kg]、より好ましくは0.15~0.2[kw・h/kg]の範囲であるときに得られるアクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の比電力は、格別な限定はないが、通常0.2~0.6[A・h/kg]以上、好ましくは0.25~0.55[A・h/kg]、より好ましくは0.35~0.5[A・h/kg]の範囲であるときに得られるアクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の剪断速度は、格別な限定はないが、通常40~150[1/s]以上、好ましくは45~125[1/s]、より好ましくは50~100[1/s]の範囲であるときに得られるアクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機内のアクリルゴムの剪断粘度は、格別な限定はないが、通常4000~8000[Pa・s]以下、好ましくは4500~7500[Pa・s]、より好ましくは5000~7000[Pa・s]の範囲であるときに得られるアクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明のアクリルゴムは、溶融混錬及び乾燥後に冷却される。この冷却速度に関しては格別な限定はないが、通常40℃/hr以上、好ましくは50℃/hr以上、より好ましくは100℃/hr以上、特に好ましくは150℃/hr以上であるときにアクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性、強度特性、耐水性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるとともにスコーチ安定性が格段に改善でき好適である。
 かくして得られる本発明のアクリルゴムは、ロール加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れ各種用途に使用することができる。本発明のアクリルゴムの形状としては、格別な限定はなく使用目的に応じて選択され、例えば、粉状、クラム状、ストランド状、シート状、ベール状などを選ぶことができるが、好ましくはシート状やベール状が作業性や保存安定性に優れ好適である。
(シート状またはベール状アクリルゴム製造方法)
 本発明のシート状またはベール状アクリルゴムの製造方法は、格別な限定はないが、前記洗浄後の含水クラムを、脱水スリットを有する脱水バレルと減圧下の乾燥バレルと先端部にダイを有するスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて脱水バレルで含水量1~40重量%まで脱水した後に乾燥バレルで1重量%未満まで乾燥してシート状乾燥ゴムをダイから押し出すことで容易にシート状アクリルゴムが製造でき、また、押し出されたシート状乾燥ゴムを積層してベール化することで容易にベール状アクリルゴムを製造することができる。
 本発明においては、スクリュー型二軸押出乾燥機に供給される含水クラムは、洗浄後に遊離水を除去(水切り)したものであることが好ましい。
(水切り工程)
 本発明において、洗浄後の含水クラムから水切り機で遊離水を分離する水切り工程を設けることが脱水効率を上げる上で好適である。
 水切り機としては、公知のものを格別な限定なく用いることができ、例えば、金網、スクリーン、電動篩機などが挙げられ、好ましくは金網、スクリーンである。
 水切り機の目開きは、格別限定はないが、通常0.01~5mm、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.6mmの範囲であるときに、含水クラム損失が少なく且つ水切りが効率的にでき好適である。
 水切り後の含水クラムの含水量、すなわち脱水・乾燥工程に投入される含水クラムの含水量は、格別限定されるものではないが、通常50~80重量%、好ましくは50~70重量%、より好ましくは50~60重量%の範囲である。
 水切り後の含水クラムの温度、すなわち脱水・乾燥工程に投入される含水クラムの温度は、格別限定されるものではないが、通常40℃以上、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、特に好ましくは55~85℃、最も好ましくは60~80℃の範囲であるときに、本発明のアクリルゴムのように比熱が1.5~2.5KJ/kg・Kと高く温度を上げにくい含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて効率よく脱水・乾燥でき好適である。
(脱水バレル部での含水クラムの脱水)
 含水クラムの脱水は、脱水スリットを有するスクリュー型二軸押出乾燥機中の脱水バレルで行われる。脱水スリットの目開きは、使用条件に応じて適宜選択されればよいが、通常0.01~5mm、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.6mmの範囲であるときに、含水クラム損失が少なく且つ含水クラムの脱水が効率的にでき好適である。
 スクリュー型二軸押出乾燥機における脱水バレルの数は、格別限定されるものではないが、通常複数個、好ましくは2~10個、より好ましくは3~6個であるときに粘着性のアクリルゴムの脱水を効率よく行う上で好適である。
 脱水バレルにおける含水クラムからの水の除去は、脱水スリットから液状で除去するもの(排水)、蒸気状で除去するもの(排蒸気)の二通りがあるが、本発明においては、排水は脱水、排蒸気は予備乾燥と定義して区別する。
 含水クラムの脱水において脱水スリットから排出される水は、液状(排水)、蒸気状(排蒸気)のいずれの状態でもよいが、脱水バレルを複数個備えるスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて行う場合は、排水及び排蒸気を組み合わせることで粘着性アクリルゴムの脱水が効率よくでき好適である。脱水バレルを3個以上備えるスクリュー型二軸押出乾燥機の排水型脱水バレルか排蒸気型脱水バレルかの選択は、使用目的に応じて適宜行えばよいが、通常製造されるアクリルゴム中の灰分量を少なくする場合は排水型バレルを多くし、含水量を低減する場合は排蒸気型バレルを多くする。
 脱水バレルの設定温度は、アクリルゴムの単量体組成、灰分量、含水量、及び操業条件などにより適宜選択されるが、通常60~150℃、好ましくは70~140℃、より好ましくは80~130℃の範囲である。排水状態で脱水する脱水バレルの設定温度は、通常60~120℃、好ましくは70~110℃、より好ましくは80~100℃である。排蒸気状態で脱水する脱水バレルの設定温度は、通常100~150℃、好ましくは105~140℃、より好ましくは110~130℃の範囲である。
 含水クラムから水分を絞り出す排水型脱水の脱水後の含水量としては、格別な限定はないが、1~40重量%、好ましくは5~40重量%、より好ましくは5~35重量%、特に好ましくは10~35重量%であるときに、生産性と灰分除去効率とが高度にバランスされ好適である。
 反応性基を有する粘着性のアクリルゴムの脱水は、遠心分離機などを用いて行うと脱水スリット部にアクリルゴムが付着してしまい殆ど脱水できないが(含水量は約45~55重量%程度まで)、本発明において、脱水スリットを有しスクリューで強制的に絞られるスクリュー型二軸押出乾燥機を用いることによりここまで含水量を低減できるようになった。
 排水型脱水バレルと排蒸気型脱水バレルとを備える場合の含水クラムの脱水は、排水型脱水バレル部における排水後の含水量が通常5~40重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは15~35重量%、排蒸気型脱水バレル部における予備乾燥後の含水量が、通常1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%である。
 脱水後の含水量を前記下限以上とすることにより、脱水時間を短縮できてアクリルゴムの変質を抑制でき、前記上限以下とすることにより灰分量を十分に低減することができる。
(乾燥バレル部での含水クラムの乾燥)
 上記脱水後の含水クラムの乾燥は、乾燥バレル部を有するスクリュー型二軸押出乾燥機により、減圧下の乾燥バレル部で行うことが望ましい。アクリルゴムの乾燥を減圧下で行うことにより、乾燥の生産効率が上がり、また、アクリルゴム中に内在する空気が除去され比重が高く保存安定性に優れるシート状またはベール状アクリルゴムが製造でき好適である。本発明においては、また、アクリルゴムを減圧下で溶融して押出乾燥することで保存安定性を高度に高めることができる。アクリルゴムの保存安定性は、大きくはアクリルゴムの比重と相関しコントロールできるが、比重が大きく高度の保存安定性を制御する場合は押出乾燥の減圧度等で制御することができる。
 乾燥バレルの減圧度は、適宜選択されればよいが、通常1~50kPa,好ましくは2~30kPa、より好ましくは3~20kPaであるときに効率よく含水クラムを乾燥でき且つアクリルゴム中に内在する空気を除去しシート状またはベール状アクリルゴムの保存安定性を改善でき好適である。
 乾燥バレルの設定温度は、適宜選択されればよいが、通常100~250℃、好ましくは110~200℃、より好ましくは120~180℃の範囲であるときに、アクリルゴムのヤケや変質がなく効率よく乾燥ができ且つシート状またはベール状アクリルゴム中のメチルエチルケトン不溶解分量を低減でき好適である。
 スクリュー型二軸押出乾燥機における乾燥バレルの数は、格別限定されるものではないが、通常複数個、好ましくは2~10個、より好ましくは3~8個である。乾燥バレルが複数個有する場合の減圧度は、全ての乾燥バレルで近似した減圧度にしてもよいし、変えてもよい。乾燥バレルが複数個有する場合の設定温度は、全ての乾燥バレルで近似した温度にしてもよいし変えてもよいが、導入部(脱水バレルに近い方)の温度よりも排出部(ダイに近い方)の温度の方が高くするのが乾燥効率を上げることができる好適である。
 乾燥後の乾燥ゴムの含水量は、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。本発明においては、特にスクリュー型二軸押出乾燥機内で乾燥ゴムの含水量がこの値(殆ど水が除去された状態)にして溶融押出しされることがシート状またはベール状アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量を低減でき好適である。本発明において、スクリュー型二軸押出乾燥機で溶融混錬あるいは溶融混錬及び乾燥させたアクリルゴムは、強度特性とバンバリー加工性の両特性が高度にバランスされるので好適である。なお、本発明でいう「溶融混錬」あるいは「溶融混錬及び乾燥」とは、スクリュー型二軸押出乾燥機内でアクリルゴムが溶融状態で混錬(混合)あるいは溶融状態で押し出され、その段階で乾燥されること、あるいは、スクリュー型二軸押出乾燥機によりアクリルゴムを溶融(可塑化)状態で混練して押し出し乾燥することを意味する。
 本発明においては、スクリュー型二軸押出乾燥機の乾燥バレルにおいて上記アクリルゴムが実質的に水を含まない状態でかかる剪断速度は、格別な限定はないが、通常が、10[1/s]以上、好ましくは10~400[1/s]、より好ましくは50~250[1/s]の範囲であるときに得られるシート状またはベール状アクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度にバランスされ好適である。
 本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機内、特に乾燥バレルにおけるアクリルゴムの剪断粘度は、格別な限定はないが、通常12000[Pa・s]以下、好ましくは1000~12000[Pa・s]、より好ましくは2000~10000[Pa・s]、特に好ましくは3000~7000[Pa・s]、最も好ましくは4000~6000[Pa・s]の範囲であるときに得られるシート状またはベール状アクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
(ダイ部からの乾燥ゴムの押出し)
 上記脱水バレル及び乾燥バレルのスクリュー部で脱水・乾燥された乾燥ゴムは、スクリューの無い整流のダイ部に送られ、ダイ部から所望の形状に押し出される。スクリュー部とダイ部の間には、ブレーカープレートや金網を設けてもよいし、設けなくてもよい。
 押出される乾燥ゴムは、ダイ形状を略長方形状にしてシート状に出すことにより空気の巻き込みが少なく比重の大きい保存安定性に優れる乾燥ゴムが得られ好適である。
 ダイ部における樹脂圧は、格別限定されないが、通常0.1~10MPa、好ましくは0.5~5MPa、より好ましくは1~3MPaの範囲としたときに、シート状またはベール状アクリルゴムの空気の巻き込みが少なく(比重が高く)且つ生産性に優れ好適である。
(スクリュー型二軸押出乾燥機及び操業条件)
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機のスクリュー長(L)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常3000~15000mm、好ましくは4000~10000mm、より好ましくは4500~8000mmの範囲である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機のスクリュー径(D)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50~250mm、好ましくは100~200mm、より好ましくは120~160mmの範囲である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機のスクリュー長(L)とスクリュー径(D)との比(L/D)は、格別限定されるものではないが、通常10~100、好ましくは20~80、より好ましくは30~60の範囲であるときに乾燥ゴムの分子量低下や焼けを起こさずに含水量を1重量%未満にでき好適である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の回転数(N)は、諸条件に応じて適宜選択されればよいが、通常10~1000rpm、好ましくは50~750rpm、より好ましくは100~500rpm、最も好ましくは120~300rpmであるときに、シート状またはベール状アクリルゴムの含水量とメチルエチルケトン不溶解分量を効率よく低減でき好適である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の押出量(Q)は、格別限定されないが、通常100~1,500kg/hr、好ましくは300~1200kg/hr、より好ましくは400~1000kg/hr、最も好ましくは500~800kg/hrの範囲である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の押出量(Q)と回転数(N)の比(Q/N)は、格別限定されるものではないが、通常2~10、好ましくは3~8、より好ましくは4~6の範囲である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の最大トルクは、格別限定されるものではないが、通常30N・m以上、好ましくは35N・m以上、より好ましくは40N・m以上である。本発明で使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の最大トルクは、また、通常30~100N・m、好ましくは35~75N・m、より好ましくは40~60N・mの範囲であるときに、製造されるシート状またはベール状アクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性を高度にバランスすることができ好適である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の比動力は、格別な限定はないが、通常0.1~0.25[kw・h/kg]以上、好ましくは0.13~0.23[kw・h/kg]、より好ましくは0.15~0.2[kw・h/kg]の範囲であるときに得られるシート状またはベール状アクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の比電力は、格別な限定はないが、通常0.2~0.6[A・h/kg]以上、好ましくは0.25~0.55[A・h/kg]、より好ましくは0.35~0.5[A・h/kg]の範囲であるときに得られるシート状またはベール状アクリルゴムのロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機の剪断速度は、格別な限定はないが、通常40~150[1/s]以上、好ましくは45~125[1/s]、より好ましくは50~100[1/s]の範囲であるときに得られるシート状またはベール状アクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 使用されるスクリュー型二軸押出乾燥機内のアクリルゴムの剪断粘度は、格別な限定はないが、通常4000~8000[Pa・s]以下、好ましくは4500~7500[Pa・s]、より好ましくは5000~7000[Pa・s]の範囲であるときに得られるシート状またはベール状アクリルゴムの保存安定性、ロール加工性、バンバリー加工性及び強度特性が高度にバランスされ好適である。
 このように、本発明においては、二軸のスクリューを有する押出乾燥機を用いることにより高シェアな条件での脱水・乾燥・成形が可能となり好適である。
(シート状乾燥ゴム)
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出される乾燥ゴムの形状は、シート状であり、この時に空気を巻き込まず比重を大きくでき保存安定性が高度に改善され好適である。スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されるシート状乾燥ゴムは、通常、冷却され切断されてシート状アクリルゴムとして使用される。
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されるシート状乾燥ゴムの厚さは、格別な限定はないが、通常1~40mm、好ましくは2~35mm、より好ましくは3~30mm、最も好ましくは5~25mmの範囲であるときに作業性、生産性に優れ好適である。特にシート状乾燥ゴムの熱伝導度が0.15~0.35W/mKと低いために冷却効率を上げ生産性を格段に向上させる場合のシート状乾燥ゴムの厚さは、通常1~30mm、好ましくは2~25mm、より好ましくは3~15mm、特に好ましくは4~12mmの範囲である。
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されるシート状乾燥ゴムの幅は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常300~1200mm、好ましくは400~1000mm、より好ましくは500~800mmの範囲である。
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出される乾燥ゴムの温度は、格別限定されるものではないが、通常100~200℃、好ましくは110~180℃、より好ましくは120~160℃の範囲である。
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出される乾燥ゴムの含水量は、格別な限定は無いが、通常1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.6重量%以下である。
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されるシート状乾燥ゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)は、格別限定されるものではないが、通常1500~6000[Pa・s]、好ましくは2000~5000[Pa・s]、より好ましくは2500~4000[Pa・s]、最も好ましくは2500~3500[Pa・s]の範囲であるときに、シートとしての押出性と形状保持性とが高度にバランスされ好適である。すなわち、下限以上とすることにより押出性により優れるものとでき、上限以下とすることによりシート状乾燥ゴムの形状の崩れや破断を抑制できる。
 スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されたシート状乾燥ゴムは、そのまま折りたたんで使用してもよいが、通常は、切断して用いることができる。
 シート状乾燥ゴムの切断は、格別な限定はないが、本発明のアクリルゴムは粘着性が強いことから、空気を巻き込まずに連続的に切断するために、シート状乾燥ゴムを冷却してから行うのが好ましい。
 シート状乾燥ゴムの切断温度は、格別な限定はないが、通常60℃以下、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下であるときに、切断性と生産性とが高度にバランスされ好適である。
 シート状乾燥ゴムの60℃における複素粘性率([η]60℃)は、格別限定されるものではないが、通常15,000以下、好ましくは2000~10.000[Pa・s]、より好ましくは2500~7000[Pa・s]、最も好ましくは2700~5500[Pa・s]の範囲にあるときに空気を巻き込まずに且つ連続的に切断ができ好適である。
 シート状乾燥ゴムの100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上、最も好ましくは0.85以上であり、上限値が、通常0.98以下、好ましくは0.97以下、より好ましくは0.96以下、特に好ましくは0.95以下、最も好ましくは0.93以下であるときに空気巻き込み性が少なく、且つ切断と生産性が高度にバランスされ好適である。
 シート状乾燥ゴムの冷却方法としては、格別限定はなく室温に放置してもよいが、シート状乾燥ゴムの熱伝導度が0.15~0.35W/mKと非常に小さいために、送風あるいは冷房下での空冷方式、水を吹き付ける水かけ方式、水中に浸漬する浸漬方式などの強制冷却が生産性を上げるために好ましく、特に送風あるいは冷下での空冷方式が好適である。
 シート状乾燥ゴムの空冷方式では、例えば、スクリュー型押出機からベルトコンベアなどの搬送機上にシート状乾燥ゴムを押し出し、冷風を吹き付ける中で搬送し冷却することができる。冷風の温度は、格別限定されるものではないが、通常0~25℃、好ましくは5~25℃、より好ましくは10~20℃の範囲である。冷却される長さは、格別限定はないが、通常5~500m、好ましくは10~200m、より好ましくは20~100mの範囲である。シート状乾燥ゴムの冷却速度は、格別限定されるものではないが、通常40℃/hr以上、好ましくは50℃/hr以上、より好ましくは100℃/hr以上、特に好ましくは150℃/hr以上であるときに切断が容易になり空気を巻き込まずに保存安定性を良好にでき好適である。本発明においては、また、シート状乾燥ゴムの冷却速度が、通常40℃/hr以上、好ましくは50℃/hr以上、より好ましくは100℃/hr以上、特に好ましくは150℃/hr以上であるときにアクリルゴム組成物としたときのスコーチ安定性が格段に優れ好適である。
 シート状乾燥ゴムの切断長さは、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択されるが、通常100~800mm、好ましくは200~500mm、より好ましくは250~450mmの範囲である。
 かくして得られるシート状アクリルゴムは、クラム状アクリルゴムに比べて操作性に優れ、且つ、ロール加工性、架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるとともに保存安定性、バンバリー加工性及び耐水性にも優れ、そのまま、あるいは積層してベール化されて使用することができる。
(積層工程)
 本発明のベール状アクリルゴムの製造方法は、格別限定されるものではないが、上記シート状アクリルゴムを積層することにより空気の巻き込みの少ない保存安定性に優れるベール状アクリルゴムが得られ好適である。
 シート状アクリルゴムの積層温度は、格別限定はないが、通常30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であるときに積層時に巻き込まれる空気を逃がすことができ好適である。積層枚数は、前記ベール状アクリルゴムの大きさまたは重量に応じて適宜選択されればよい。本発明のベール状アクリルゴムは、積層したシート状アクリルゴムの自重により一体化される。
 かくして得られる本発明のベール状アクリルゴムは、クラム状アクリルゴムに比べ操作性に優れ、且つ、ロール加工性、架橋性、強度特性及び耐圧縮永久歪み特性に優れるとともに保存安定性、バンバリー加工性及び耐水性にも優れ、ベール状アクリルゴムをそのまま、あるいは必要量を切断してバンバリー、ロールなどの混合機に投入して用いることができる。
<ゴム組成物>
 本発明のゴム組成物は、前記アクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び架橋剤を含むことを特徴とする。
 本発明のゴム組成物の主たる成分となるゴム成分としては、本発明のアクリルゴム単独で用いてもよく、あるいは必要に応じて、本発明のアクリルゴムとその他のゴム成分とを組み合わせて用いてもよい。ゴム成分中における本発明のアクリルゴムの含有量は、使用目的に応じて選択されればよく、例えば、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
 本発明のアクリルゴムと組み合わせるその他のゴム成分としては、格別な限定はなく、例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどを挙げることができる。
 これらのその他のゴム成分は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのその他のゴム成分の形状は、クラム状、ストランド状、ベール状、シート状、粉体状などいずれであっても構わない。ゴム成分全体におけるその他のゴム成分の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択され、例えば、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
 ゴム組成物に含まれる充填剤としては、格別な限定はないが、例えば、補強性充填剤、非補強性充填剤などが挙げられ、好ましくは補強性充填剤であるときにゴム組成物のロール加工性及び短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れ、更にバンバリー加工性、保存安定性及び耐水性にも優れるので好適である。
 補強性充填剤としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック及びグラファイトなどのカーボンブラック類;湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどのシリカ類;などを挙げることができる。非補強性充填剤としては、石英粉末、ケイソウ土、亜鉛華、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
 これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択され、ゴム成分100重量部に対して、通常1~200重量部、好ましくは10~150重量部、より好ましくは20~100重量部の範囲である。
 ゴム組成物に使用される架橋剤としては、格別な限定はなく従来公知の架橋剤を使用目的に応じて選択され、例えば、硫黄化合物などの無機架橋剤や有機架橋剤などが挙げられ、好ましくは有機架橋剤である。架橋剤としては、また、多価化合物または単価化合物のいずれでもよいが、好ましくは反応性が2個以上である多価化合物が好適である。架橋剤としては、更に、イオン架橋性化合物またはラジカル架橋性化合物のいずれでもよいが、好適にはイオン架橋性化合物である。
 有機架橋剤としては、格別な限定はないが、イオン架橋性有機化合物が好ましく、多価イオン有機化合物が特に好ましい。架橋剤が、多価イオン有機化合物(多価イオン架橋性化合物)であるときにゴム組成物のバンバリー加工性及び短時間の架橋性に優れ、且つ、架橋物の強度特性及び耐圧縮永久歪み特性が高度に優れしかも耐水性にも優れるので特に好適である。イオン架橋性または多価イオンの「イオン」としては、イオン反応性のイオンであり、例えば、前記アクリルゴムのイオン反応性基含有単量体のイオン反応性基とイオン反応するものであれば格別な限定はないが、好適には、アミン基、エポキシ基、カルボキシル基、チオール基などのイオン反応性基を有するイオン架橋性有機化合物が挙げられる。
 多価イオン有機化合物の具体例としては、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸化合物、多価チオール化合物などが挙げられ、好ましくは多価アミン化合物や多価チオール化合物、より好ましくは多価アミン化合物である。
 多価アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N'-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどの脂肪族多価アミン化合物;4,4'-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどが好ましい。多価アミン化合物としては、また、これらの炭酸塩を好適に用いることができる。これらの多価アミン化合物は、特に、カルボキシル基含有のアクリルゴム、あるいはエポキシ基含有のアクリルゴムと組み合わせて好適に用いられる。
 多価チオール化合物としては、好適にはトリアジンチオール化合物が用いられ、例えば、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-ジブチルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジチオール-s-トリアジン、1-フェニルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、1-ヘキシルアミノ-3,5-ジメルカプトトリアジンなどが挙げられる。これらのトリアジンチオール化合物は、特に、塩素原子含有のアクリルゴムと組み合わせて好適に用いられる。
 その他の多価有機化合物としては、テトラデカン二酸などの多価カルボン酸化合物、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸金属塩などが挙げられる。これらのその他の多価有機化合物は、特に、エポキシ基含有のアクリルゴムと組み合わせて好適に用いられる。
 これらの架橋剤は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対し、通常0.001~20重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部である。架橋剤の配合量をこの範囲とすることにより、ゴム弾性を充分なものとしながら、ゴム架橋物としての機械的強度を優れたものとすることができ好適である。
 本発明のゴム組成物は、必要に応じて老化防止剤を配合することができる。老化防止剤の種類は、特に限定されないが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2'-メチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール、2,2'-チオビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス-(6-t-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノールなどのその他のフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4'-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2-メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5-ジ-(t-アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの中でも特にアミン系老化防止剤が好ましい。
 これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対して、0.01~15重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは1~5重量部の範囲である。
 本発明のゴム組成物は、上記本発明のアクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び架橋剤を必須成分として、及び必要に応じて老化防止剤を含み、さらに、必要に応じて当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば、架橋助剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑材、顔料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを任意に配合できる。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
 本発明のゴム組成物の製造方法としては、本発明のアクリルゴムを含むゴム成分、充填剤、架橋剤及び必要に応じて含有できる老化防止剤やその他の配合剤を混合する方法が挙げられ、混合には、従来のゴム加工分野において利用されている任意の手段、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類などを利用することができる。各成分の混合手順は、ゴム加工の分野において行われている通常の手順で行えばよく、例えば、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
<ゴム架橋物>
 本発明のゴム架橋物は、上記ゴム組成物を架橋してなるものである。
 本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、例えば、押出機、射出成形機、圧縮機又はロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常10~200℃、好ましくは25~150℃である。架橋温度は、通常100~250℃、好ましくは130~220℃、より好ましくは150~200℃であり、架橋時間は、通常0.1分~10時間、好ましくは1分~5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、及び熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
 本発明のゴム架橋物は、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1~48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
 本発明のゴム架橋物は、引張強度、伸び、硬さなどのゴムとしての基本特性を維持しながら、優れた耐圧縮永久歪み特性及び耐水性を有するものである。
 本発明のゴム架橋物は、上記特性を活かして、例えば、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウエルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧縮機器用シールなどのシール材;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連結部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダヘッドあるいはトランスミッションケースとの連結部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着された燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;などとして好適に用いられる。
 本発明のゴム架橋物は、また、自動車用途に用いられる押し出し成形型品及び型架橋製品として、例えば、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ペーパーホース、オイルホースなどの燃料タンクなどの燃料油系ホース、ターボエアーホース、ミッションコントロールホースなどのエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
<アクリルゴムの製造に用いられる装置構成>
 次に、本発明の一実施形態に係るアクリルゴムの製造に用いられる装置構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るアクリルゴムの製造に用いられる装置構成を有するアクリルゴム製造システムの一例を模式的に示す図である。本発明に係るアクリルゴムの製造には、例えば、図1に示すアクリルゴム製造システム1を使用することができる。
 図1に示すアクリルゴム製造システム1は、不図示の乳化重合反応器、凝固装置3、洗浄装置4、水切り機43、スクリュー型二軸押出乾燥機により構成されている。
 乳化重合反応器は、上述した乳化重合工程に係る処理を行うように構成されている。図1には不図示であるが、この乳化重合反応器は、例えば重合反応槽、反応温度を制御する温度制御部、モータ及び撹拌翼を備えた撹拌装置を有する。乳化重合反応器では、アクリルゴムを形成するための単量体成分に水と乳化剤とを混合して撹拌機で適切に撹拌しながらエマルジョン化し、無機ラジカル発生剤と還元剤とからなるレドックス触媒存在下に乳化重合反応を開始し、重合途中で連鎖移動剤を回分的に後添加して乳化重合液を得ることができる。乳化重合反応器は、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよく、槽型反応器、管型反応器のいずれであってもよい。
 図1に示す凝固装置3は、上述した凝固工程に係る処理を行うように構成されている。図1に模式的に図示されているように、凝固装置3は、例えば撹拌槽30、撹拌槽30内を加熱する加熱部31、撹拌槽30内の温度を制御する不図示の温度制御部、モータ32及び撹拌翼33を備えた撹拌装置34、撹拌翼33の回転数及び回転速度を制御する不図示の駆動制御部を有する。凝固装置3では、乳化重合反応器で得られた乳化重合液を、凝固液と接触させて凝固させることにより含水クラムを生成することができる。
 凝固装置3では、例えば、乳化重合液と凝固液との接触は、乳化重合液を撹拌している凝固液中に添加する方法が採用される。すなわち、凝固装置3の撹拌槽30に凝固液を充填しておき、この凝固液に乳化重合液を添加及び接触させて乳化重合液を凝固させることによって含水クラムが生成される。
 凝固装置3の加熱部31は、撹拌槽30に充填された凝固液を加熱するよう構成されている。また、凝固装置3の温度制御部は、温度計で計測された撹拌槽30内の温度を監視しながら加熱部31による加熱動作を制御することで、撹拌槽30内の温度を制御するように構成されている。撹拌槽30内の凝固液の温度は、温度制御部によって、通常40℃以上、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃の範囲となるよう制御される。
 凝固装置3の撹拌装置34は、撹拌槽30に充填された凝固液を撹拌するように構成されている。具体的には、撹拌装置34は、回転動力を生み出すモータ32と、モータ32の回転軸に対して垂直方向に広がる撹拌翼33を備えている。撹拌翼33は、撹拌槽30に充填された凝固液内で、モータ32の回転動力により回転軸を中心として回転することで凝固液を流動させることができる。撹拌翼33の形状や大きさ、設置数などは特に限定されない。
 凝固装置3の駆動制御部は、撹拌装置34のモータ32の回転駆動を制御して、撹拌装置34の撹拌翼33の回転数及び回転速度を所定値に設定するように構成されている。凝固液の撹拌数が、例えば、通常100rpm以上、好ましくは200~1000rpm、より好ましくは300~900rpm、特に好ましくは400~800rpmの範囲となるように、駆動制御部によって撹拌翼33の回転が制御される。凝固液の周速が、通常0.5m/s以上、好ましくは1m/s以上、より好ましくは1.5m/s以上、特に好ましくは2m/s以上、最も好ましくは2.5m/s以上となるように、駆動制御部によって撹拌翼33の回転が制御される。さらに、凝固液の周速の上限値が、通常50m/s以下、好ましくは30m/s以下、より好ましくは25m/s以下、最も好ましくは20m/s以下となるように、駆動制御部によって撹拌翼33の回転が制御される。
 図1に示す洗浄装置4は、上述した洗浄工程に係る処理を行うように構成されている。図1に模式的に図示されているように、洗浄装置4は、例えば洗浄槽40、洗浄槽40内を加熱する加熱部41、洗浄槽40内の温度を制御する不図示の温度制御部を有する。洗浄装置4では、凝固装置3で生成された含水クラムを多量の水と混合して洗浄することにより、最終的に得られるアクリルゴム中の灰分量を効果的に低減することができる。
 洗浄装置4の加熱部41は、洗浄槽40内を加熱するよう構成されている。また、洗浄装置4の温度制御部は、温度計で計測された洗浄槽40内の温度を監視しながら加熱部41による加熱動作を制御することで、洗浄槽40内の温度を制御するように構成されている。上述したように、洗浄槽40内の洗浄水の温度は、通常40℃以上、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、最も好ましくは60~80℃の範囲となるよう制御される。
 洗浄装置4で洗浄された含水クラムは、脱水工程及び乾燥工程を行うスクリュー型二軸押出乾燥機5に供給される。このとき、洗浄後の含水クラムは、遊離水を分離することが可能な水切り機43を通ってスクリュー型二軸押出乾燥機5に供給されることが好ましい。水切り機43には、例えば金網、スクリーン、電動篩機などを用いることができる。
 また、洗浄後の含水クラムがスクリュー型二軸押出乾燥機5に供給される際、含水クラムの温度は40℃以上、更に60℃以上であることが好ましい。例えば、洗浄装置4における水洗に用いられる水の温度を60℃以上(例えば70℃)とすることで、スクリュー型二軸押出乾燥機5に供給された際の含水クラムの温度を60℃以上に維持することができるようにしてもよく、洗浄装置4からスクリュー型二軸押出乾燥機5に搬送する際に含水クラムの温度が40℃以上、好ましくは60℃以上となるよう加温してもよい。これにより、後工程である脱水工程及び乾燥工程を効果的に行うことが可能となり、最終的に得られる乾燥ゴムの含水率を大幅に低減させることが可能となる。
 図1に示すスクリュー型二軸押出乾燥機5は、上述した脱水工程及び乾燥工程に係る処理を行うように構成されている。なお、図1には好適な例としてスクリュー型二軸押出乾燥機5が図示されているが、脱水工程に係る処理を行う脱水機として遠心分離機やスクイザーなどを用いてもよく、乾燥工程に係る処理を行う乾燥機として熱風乾燥機、減圧乾燥機、エキスパンダー乾燥機、ニーダー型乾燥機などを用いてもよい。
 スクリュー型二軸押出乾燥機5は、脱水工程及び乾燥工程を経て得られる乾燥ゴムを所定の形状に成形して排出するように構成されている。具体的には、スクリュー型二軸押出乾燥機5は、洗浄装置4で洗浄された含水クラムを脱水する脱水機としての機能を有する脱水バレル部53と、含水クラムを乾燥する乾燥機としての機能を有する乾燥バレル部54とを備えており、さらにスクリュー型二軸押出乾燥機5の下流側に含水クラムを成形する成形機能を有するダイ59を備えて構成されている。
 以下、図2を参照しながら、スクリュー型二軸押出乾燥機5の構成について説明する。図2は、図1で示したスクリュー型二軸押出乾燥機5として好適な一具体例の構成を示している。このスクリュー型二軸押出乾燥機5により、上述した脱水・乾燥工程を好適に行うことができる。
 図2に示すスクリュー型二軸押出乾燥機5は、バレルユニット51内に不図示の一対のスクリューを備えてなる二軸スクリュー型の押出乾燥機である。スクリュー型二軸押出乾燥機5は、バレルユニット51内の一対のスクリューを回転駆動する駆動ユニット50を有する。この構成によりアクリルゴムに高シェアをかけて乾燥ができ好適である。駆動ユニット50は、バレルユニット51の上流端(図2で左端)に取り付けられている。また、スクリュー型二軸押出乾燥機5は、バレルユニット51の下流端(図2で右端)にダイ59を有する。
 バレルユニット51は、上流側から下流側(図2で左側から右側)にわたり、供給バレル部52、脱水バレル部53、乾燥バレル部54を有する。
 供給バレル部52は、2つの供給バレル、すなわち、第1の供給バレル52a及び第2の供給バレル52bにより構成されている。
 また、脱水バレル部53は、3つの脱水バレル、すなわち、第1の脱水バレル53a、第2の脱水バレル53b及び第3の脱水バレル53cにより構成されている。
 また、乾燥バレル部54は、8個の乾燥バレル、すなわち、第1の乾燥バレル54a、第2の乾燥バレル54b、第3の乾燥バレル54c、第4の乾燥バレル54d、第5の乾燥バレル54e、第6の乾燥バレル54f、第7の乾燥バレル54g、第8の乾燥バレル54hにより構成されている。
 このようにバレルユニット51は、分割された13個の各バレル52a~52b,53a~53c,54a~54hが上流側から下流側にわたり連結されて構成されている。
 また、スクリュー型二軸押出乾燥機5は、上記各バレル52a~52b,53a~53c,54a~54hを個別に加熱して、各バレル52a~52b,53a~53c,54a~54h内の含水クラムをそれぞれ所定温度に加熱する不図示の加熱手段を有する。加熱手段は、各バレル52a~52b,53a~53c,54a~54hに対応する数を備える。そのような加熱手段としては、例えば、各バレル52a~52b,53a~53c,54a~54h内に形成されたスチーム流通ジャケットにスチーム供給手段から高温スチームを供給するなどの構成が採用されるが、これに限定はされない。また、スクリュー型二軸押出乾燥機5は、各バレル52a~52b,53a~53c,54a~54hに対応する各加熱手段の設定温度を制御する不図示の温度制御手段を有する。
 なお、バレルユニット51における各バレル部52、53、54をそれぞれ構成する供給バレル、脱水バレル及び乾燥バレルの設置数は、図2に示す態様に限定されるものではなく、乾燥処理するアクリルゴムの含水クラムの含水量などに応じた数に設定することができる。
 例えば、供給バレル部52の供給バレルの設置数は例えば1~3個とされる。また、脱水バレル部53の脱水バレルの設置数は、例えば2~10個が好ましく、3~6個とすると、粘着性のアクリルゴムの含水クラムの脱水を効率よく行うことができるのでより好ましい。また、乾燥バレル部54の乾燥バレルの設置数は、例えば2~10個が好ましく、3~8個であるとより好ましい。
 バレルユニット51内の一対のスクリューは、駆動ユニット50に格納されたモータなどの駆動手段によって回転駆動される。一対のスクリューはバレルユニット51内の上流側から下流側にわたって延在しており、回転駆動されることで、供給バレル部52に供給された含水クラムを混合しながら下流側に搬送することができるようになっている。一対のスクリューとしては、互いに山部と谷部とが噛み合わされる状態とされた二軸噛合型であることが好ましく、これにより、含水クラムの脱水効率及び乾燥効率を高めることができる。
 また、一対のスクリューの回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。一対のスクリューのスクリュー形状としては、特に限定されず、各バレル部52、53、54において必要とされる形状であればよく、特に限定されない。
 供給バレル部52は、含水クラムをバレルユニット51内に供給する領域である。供給バレル部52の第1の供給バレル52aは、バレルユニット51内に含水クラムを供給するフィード口55を有する。
 脱水バレル部53は、含水クラムから、凝固剤などが含まれる液体(セラム水)を分離し排出する領域である。
 脱水バレル部53を構成する第1~第3の脱水バレル53a~53cは、含水クラムの水分を外部に排出する脱水スリット56a、56b、56cをそれぞれ有する。各脱水スリット56a、56b、56cは、各脱水バレル53a~53cにそれぞれ複数形成されている。
 各脱水スリット56a、56b、56cのスリット幅すなわち目開きは、使用条件に応じて適宜選択されればよく、通常で0.01~5mmとされ、含水クラムの損失が少なく、且つ含水クラムの脱水が効率的にできる点から、好ましくは0.1~1mmであり、0.2~0.6mmであればより好ましい。
 脱水バレル部53の各脱水バレル53a~53cにおける含水クラムからの水分の除去は、それぞれの脱水スリット56a、56b、56cから液状で除去する場合と、蒸気状で除去する場合との二通りがある。本実施形態の脱水バレル部53においては、水分を液状で除去する場合を排水と定義し、蒸気状で除去する場合を排蒸気と定義して区別する。
 脱水バレル部53においては、排水及び排蒸気を組み合わせることで、粘着性アクリルゴムの含水率を低下させることが効率よくできるので好適である。脱水バレル部53では、第1~第3の脱水バレル53a~53cのうち、どの脱水バレルで排水又は排蒸気を行うかは、使用目的に応じて適宜に設定すればよいが、通常製造されるアクリルゴム中の灰分量を少なくする場合は、排水を行う脱水バレルを多くするとよい。その場合、例えば図2に示すように、上流側の第1及び第2の脱水バレル53a、53bで排水を行い、下流側の第3の脱水バレル53cで排蒸気を行う。また、例えば脱水バレル部53が4つの脱水バレルを有する場合には、例えば上流側の3つの脱水バレルで排水を行い、下流側の1つの脱水バレルで排蒸気を行うといった態様が考えられる。一方、含水量を低減する場合には、排蒸気を行う脱水バレルを多くするとよい。
 脱水バレル部53の設定温度は、上述の脱水・乾燥工程で述べたように、通常60~150℃、好ましくは70~140℃、より好ましくは80~130℃の範囲であり、排水状態で脱水する脱水バレルの設定温度は、通常60~120℃、好ましくは70~110℃、より好ましくは80~100℃であり、排蒸気状態で脱水する脱水バレルの設定温度は、通常100~150℃、好ましくは105~140℃、より好ましくは110~130℃の範囲である。
 乾燥バレル部54は、脱水後の含水クラムを減圧下で乾燥させる領域である。乾燥バレル部54を構成する第1~第8の乾燥バレル54a~54hのうち、第2の乾燥バレル54b、第4の乾燥バレル54d、第6の乾燥バレル54f及び第8の乾燥バレル54hは、脱気のためのベント口58a、58b、58c、58dをそれぞれ有する。各ベント口58a、58b、58c、58dには、不図示のベント配管がそれぞれ接続されている。
 各ベント配管の末端には不図示の真空ポンプがそれぞれ接続されており、それら真空ポンプの作動により、乾燥バレル部54内が所定圧力に減圧されるようになっている。スクリュー型押出機5は、それら真空ポンプの作動を制御して乾燥バレル部54内の減圧度を制御する図示せぬ圧力制御手段を有する。
 乾燥バレル部54での減圧度は適宜選択されればよいが、上述したように、通常1~50kPa、好ましくは2~30kPa、より好ましくは3~20kPaに設定される。
 また、乾燥バレル部54内の設定温度は適宜選択されればよいが、上述したように、通常100~250℃、好ましくは110~200℃、より好ましくは120~180℃に設定される。
 乾燥バレル部54を構成する各乾燥バレル54a~54hにおいては、全ての乾燥バレル54a~54h内の設定温度を近似した値にしてもよいし、異ならせてもよいが、上流側(脱水バレル部53側)の温度よりも下流側(ダイ59側)の温度の方を高温に設定すると、乾燥効率が向上するので好ましい。
 ダイ59は、バレルユニット51の下流端に配置される金型であり、所定のノズル形状の吐出口を有する。乾燥バレル部54で乾燥処理されたアクリルゴムは、ダイ59の吐出口を通過することで、所定のノズル形状に応じた形状に押出成形される。ダイ59を通過するアクリルゴムは、ダイ59のノズル形状に応じて、粒状、柱状、丸棒状、シート状など、種々の形状に成形できるが、本発明においてはシート状に成型される。スクリューとダイ59との間には、ブレーカープレートや金網を設けてもよいし、設けなくてもよい。
 洗浄工程を経て得られたアクリルゴムの含水クラムは、フィード口55から供給バレル部52に供給される。供給バレル部52に供給された含水クラムは、バレルユニット51内の一対のスクリューの回転により、供給バレル部52から脱水バレル部53に送られる。脱水バレル部53では、前述したように第1~第3の脱水バレル53a~53cにそれぞれ設けられた脱水スリット56a、56b、56cから、含水クラムに含まれる水分の排水や排蒸気が行われて、含水クラムが脱水処理される。
 脱水バレル部53で脱水された含水クラムは、バレルユニット51内の一対のスクリューの回転により乾燥バレル部54に送られる。乾燥バレル部54に送られた含水クラムは可塑化混合されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、このアクリルゴムの融体中に含まれる水分が気化し、その水分(蒸気)が各ベント口58a、58b、58c、58dにそれぞれ接続された不図示のベント配管を通じて外部へ排出される。
 上記のように乾燥バレル部54を通過することで含水クラムは乾燥処理されてアクリルゴムの融体となり、そのアクリルゴムはバレルユニット51内の一対のスクリューの回転によりダイ59に供給されダイ59から押し出される。
 ここで、本実施形態に係るスクリュー型二軸押出乾燥機5の操業条件の一例を挙げる。
 バレルユニット51内の一対のスクリューの回転数(N)は、諸条件に応じて適宜選択されればよく、通常で10~1000rpmとされ、アクリルゴムの含水量とメチルエチルケトン不溶解分量を効率よく低減できる点から、好ましくは50~750rpm、より好ましくは100~500rpmであり、120~300rpmが最も好ましい。
 また、アクリルゴムの押出量(Q)は、格別限定されないが、通常で100~1500kg/hrとされ、好ましくは300~1200kg/hr、より好ましくは400~1000kg/hrであり、500~800kg/hrが最も好ましい。
 アクリルゴムの押出量(Q)とスクリューの回転数(N)との比(Q/N)は、格別限定されないが、通常で1~20とされ、好ましくは2~10、より好ましくは3~8であり、4~6が特に好ましい。
 バレルユニット51内の最大トルクは、格別限定されるものではないが、通常30~100N・m、好ましくは35~75N・m、より好ましくは40~60N・mの範囲である。
 バレルユニット51内の比動力は、格別な限定はないが、通常0.1~0.25[kw・h/kg]以上、好ましくは0.13~0.23[kw・h/kg]、より好ましくは0.15~0.2[kw・h/kg]の範囲である。
 バレルユニット51内の比電力は、格別な限定はないが、通常0.2~0.6[A・h/kg]以上、好ましくは0.25~0.55[A・h/kg]、より好ましくは0.35~0.5[A・h/kg]の範囲である。
 バレルユニット51内の剪断速度は、格別な限定はないが、通常40~150[1/s]以上、好ましくは45~125[1/s]、より好ましくは50~100[1/s]の範囲である。
 バレルユニット51内のアクリルゴムの剪断粘度は、格別な限定はないが、通常4000~8000[Pa・s]以下、好ましくは4500~7500[Pa・s]、より好ましくは5000~7000[Pa・s]の範囲である。
 図1に示す冷却装置6は、脱水機による脱水工程及び乾燥機による乾燥工程を経て得られた乾燥ゴムを冷却するように構成されている。冷却装置6による冷却方式としては、送風あるいは冷房下での空冷方式、水を吹き付ける水かけ方式、水中に浸漬する浸漬方式などを含む様々な方式を採用することが可能である。また、室温下に放置することで、乾燥ゴムを冷却するようにしてもよい。
 上述したように、ダイ59のノズル形状に応じて、スクリュー型押出機5から排出された乾燥ゴムは、粒状、柱状、丸棒状、シート状など、種々の形状に押出成形されるが、本発明においてはシート状に成型される。以下、図3を参照しながら、冷却装置6の一例として、シート状に成形されたシート状乾燥ゴム10を冷却する搬送式冷却装置60について説明する。
 図3は、図1で示した冷却装置6として好適な搬送式冷却装置60の構成を示している。図3に示す搬送式冷却装置60は、スクリュー型押出機5のダイ59の吐出口から排出されたシート状乾燥ゴム10を搬送しながら、空冷方式によって冷却するよう構成されている。この搬送式冷却装置60を用いることで、スクリュー型押出機5から排出されたシート状乾燥ゴムを好適に冷却することができる。
 図3に示す搬送式冷却装置60は、例えば、図2に示したスクリュー型押出機5のダイ59に直結するか、又はダイ59の近傍に設置して使用される。
 搬送式冷却装置60は、スクリュー型押出機5のダイ59から排出されるシート状乾燥ゴム10を図3中矢印A方向に搬送するコンベア61と、コンベア61上のシート状乾燥ゴム10に冷風を吹き付ける冷却手段65とを有する。
 コンベア61は、ローラ62、63と、これらローラ62、63に巻架され、シート状乾燥ゴム10がその上に載せられるコンベアベルト64とを有する。コンベア61は、コンベアベルト64上にスクリュー型押出機5のダイ59から排出されたシート状乾燥ゴム10を連続して下流側(図3で右側)に搬送するよう構成されている。
 冷却手段65は、特に限定されないが、例えば、不図示の冷却風発生手段から送られてくる冷却風をコンベアベルト64上のシート状乾燥ゴム10の表面に吹き付けることができるような構成を有するものなどが挙げられる。
 搬送式冷却装置60のコンベア61及び冷却手段65の長さ(冷却風の吹き付けが可能な部分の長さ)L1は、特に限定されないが、例えば10~100mであり、好ましくは20~50mである。また、搬送式冷却装置60におけるシート状乾燥ゴム10の搬送速度は、コンベア61及び冷却手段65の長さL1、スクリュー型押出機5のダイ59から排出されるシート状乾燥ゴム10の排出速度、目標とする冷却速度や冷却時間などに応じて適宜調整すればよいが、例えば10~100m/hrであり、より好ましくは15~70m/hrである。
 図3に示す搬送式冷却装置60によれば、スクリュー型押出機5のダイ59から排出されるシート状乾燥ゴム10をコンベア61にて搬送しつつ、シート状乾燥ゴム10に対し冷却手段65から冷却風を吹き付けることにより、シート状乾燥ゴム10の冷却が行われる。
 なお、搬送式冷却装置60としては、図3に示すような1つのコンベア61及び1つの冷却手段65を備える構成に特に限定されず、2つ以上のコンベア61と、これに対応する2つ以上の冷却手段65とを備えるような構成としてもよい。その場合には、2つ以上のコンベア61及び冷却手段65のそれぞれの総合長さを上記範囲とすればよい。
 図1に示すベール化装置7は、スクリュー型押出機5から押出成形され、さらに冷却装置6で冷却された乾燥ゴムを加工して、一塊のブロックであるベールを製造するよう構成されている。上述したように、スクリュー型押出機5は、乾燥ゴムを粒状、柱状、丸棒状、シート状など、種々の形状に押出成形することが可能であり、ベール化装置7は、このように種々の形状に成形された乾燥ゴムをベール化するように構成されている。ベール化装置7によって製造されるベール状アクリルゴムの重さや形状などは特に限定されないが、例えば約20kgの略直方体形状のベール状アクリルゴムが製造される。
 ベール化装置7は、例えばベーラーを備え、冷却された乾燥ゴムをベーラーにより圧縮することでベール状アクリルゴムを製造してもよい。
 また、スクリュー型押出機5によってシート状乾燥ゴム10を製造した場合には、シート状乾燥ゴム10を積層したベール状アクリルゴムを製造してもよい。例えば、図3に示す搬送式冷却装置60の下流側に配置されるベール化装置7に、シート状乾燥ゴム10を切断するカッティング機構が設けられていてもよい。具体的には、ベール化装置7のカッティング機構は、例えば、冷却されたシート状乾燥ゴム10を連続的に所定の間隔で切断して、所定の大きさのカットシート状乾燥ゴム16に加工するように構成されている。カッティング機構により所定の大きさに切断されたカットシート状乾燥ゴム16を複数枚積層することで、カットシート状乾燥ゴム16を積層したベール状アクリルゴムを製造することができる。
 カットシート状乾燥ゴム16を積層したベール状アクリルゴムを製造する場合には、例えば40℃以上のカットシート状乾燥ゴム16を積層することが好ましい。40℃以上のカットシート状乾燥ゴム16を積層することで、更なる冷却及び自重による圧縮によって良好な空気抜けが実現される。
 以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の「部」、「%」及び「比」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性などについては、以下の方法に従って評価した。
[単量体組成]
 アクリルゴムにおける単量体組成に関して、アクリルゴム中の各単量体単位の単量体構成はH-NMRで確認し、アクリルゴム中に反応性基の活性が残存していること及びその各反応性基含有量を下記方法で確認した。また、各単量体単位のアクリルゴム中の含有割合は、各単量体の重合反応に用いた使用量及び重合転化率から算出した。具体的には、重合反応は乳化重合反応でその重合転化率は、未反応の単量体がいずれも確認できない略100%であったことから、ゴム中の各単量体単位の含有割合は各単量体の使用量と同一とした。
[反応性基含有量]
 アクリルゴム中の反応性基の含有量は、下記方法により測定した。
(1)カルボキシル基量は、試料(アクリルゴム)をアセトンに溶解し水酸化カリウム溶液で電位差滴定を行うことにより算出した。
(2)エポキシ基量は、試料をメチルエチルケトンに溶解し、それに規定量の塩酸を加えてエポキシ基と反応させ、残留した塩酸量を水酸化カリウムで滴定することにより算出した。
(3)塩素量は、試料を燃焼フラスコ中で完全燃焼させ、発生する塩素を水に吸収させ硝酸銀で滴定することにより算出した。
[灰分量]
 アクリルゴム中に含まれる灰分量(%)は、JIS K6228 A法に準じて測定した。
[灰分成分量]
 アクリルゴム灰分中の各成分量(ppm)は、上記の灰分量測定の際に採取した灰分をΦ20mmの滴定濾紙に圧着し、ZSX Primus(Rigaku社製)を用いてXRF測定した。
[分子量及び分子量分布]
 アクリルゴムの分子量(Mw、Mn、Mz)及び分子量分布(Mw/Mn及びMz/Mw)は、溶媒としてジメチルホルムアミドに塩化リチウムが0.05mol/L、37%濃塩酸が0.01%の濃度でそれぞれ添加された溶液を用いたGPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布である。
 本装置である、ゲル浸透クロマトグラフィー多角度光散乱光度計の構成は、ポンプ(LC-20ADOpt 島津製作所社製)と、検出器である示差屈折率計(Optilab rEX Wyatt Technology社製)及び多角度光散乱検出器(DAWN HELEOS  Wyatt Technology社製)からなる。具体的には、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置に多角度レーザ光散乱光度計(MALS)及び示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置でサイズ分別された分子鎖溶液の光散乱強度及び屈折率差を、溶出時間を追って測定することにより、溶質の分子量とその含有率を順次計算し求めた。GPC装置による測定条件及び測定方法は、以下のとおりである。
 カラム:TSKgel α-M 2本(φ7.8mm×30cm、東ソー社製)
 カラム温度:40℃
 流速:0.8ml/mm
 試料調整:試料(アクリルゴム)10mgに溶媒5mlを加え、室温で緩やかに撹拌した(溶解を視認)。その後0.5μmフィルターを用いてろ過を行った。
[ガラス転移温度(Tg)]
 アクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC、製品名「X-DSC7000」、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
[メチルエチルケトン不溶解分量]
 アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量(%)は、メチルエチルケトンに対する不溶解分の量であり、以下の方法により求めた。
 アクリルゴム0.2g程度を秤量(Xg)し、100mlメチルエチルケトンに浸漬させて室温で24時間放置後、80メッシュ金網を用いてメチルエチルケトンに対する不溶解分を濾別した濾液、すなわち、メチルエチルケトンに溶解するゴム成分のみが溶解した濾液を蒸発乾燥固化させた乾燥固形分(Yg)を秤量し、下式により算出した。
 メチルエチルケトン不溶解分量(%)=100×(X-Y)/X
[比重]
 アクリルゴムの比重は、JIS K6268架橋ゴム-密度測定のA法に準じて測定した。
 下記の測定方法により求まる測定値は密度であるが、水の密度を1Mg/mとして、比重とする。具体的には、JIS K6268架橋ゴム-密度測定のA法に準じて求められるゴム試料の比重は、ゴム試料の空隙を含む容量で質量を割ったものであり、JIS K6268架橋ゴム-密度測定のA法に準じて測定されるゴム試料の密度を水の密度で除して求められるものである(ゴム試料の密度を水の密度で除すると、数値は同じで単位がなくなる)。詳細には、下記手順に基づいてゴム試料の比重が求められる。
(1)標準温度(23℃±2℃)に少なくとも3時間静置させたゴム試料から2.5gの試験片を切り出し、精度1mgの化学天秤上のフックから、質量が0.010g未満の細いナイロン糸を用いて試験片の底辺が化学天秤用振り分け皿から25mm上になるように吊り下げ、大気中で試験片の質量(m1)をmgまで2回測定する。
(2)次に、化学天秤用振り分け皿の上に置いた250cm容量のビーカーに煮沸後標準温度まで冷却した蒸留水を満たし、その中に試験片を浸漬し、試験片表面に付着する気泡を取り除き、天秤の指針の動きを数秒間観察し対流によって指針が徐々に触れないことを確認して水中での試験片の質量(m2)をmg単位で2回測定する。
(3)また、試験片の密度が1Mg/m未満の時(水中で試験片が浮いてしまう時)は、試験片におもりをつけて水中でのおもりの質量(m3)と、試験片及びおもりの質量(m4)をmg単位で2回測定する。
(4)ゴム試料の比重は、上記測定したm1、m2、m3、m4の各々の平均値を用いて次式に基づき密度(Mg/m)を算出し、算出した密度を水の密度(1.00Mg/m)で除して求める。
(おもりを用いないときのゴム試料の密度)
    密度=m1/(m1-m2)
(おもりを用いたときのゴム試料の密度)
    密度=m1/(m1+m3-m4)
[含水量]
 含水量(%)は、JIS K6238-1:オーブンA(揮発分測定)法に準じて測定した。
[pH]
 pHは、6g(±0.05g)のアクリルゴムをテトラヒドロフラン100gで溶解後、蒸留水2.0mlを添加し完全に溶解したことを確認後にpH電極で測定した。
[複素粘性率]
 複素粘性率ηは、動的粘弾性測定装置「ラバープロセスアナライザRPA-2000」(アルファテクノロジー社製)を用いて、歪み473%、1Hzにて温度分散(40~120℃)を測定し、各温度における複素粘性率ηを求めた。ここでは、上述の動的粘弾性のうち60℃における動的粘弾性を複素粘性率η(60℃)とし、100℃における動的粘弾性を複素粘性率η(100℃)として、その比率η(100℃)/η(60℃)の値を算出した。
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
 ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300の未架橋ゴム物理試験法に従って測定した。
[架橋性]
 ゴム試料の架橋性は、二次架橋を2時間行ったゴム架橋物の破断強度と4時間行ったゴム架橋物の破断強度との変化率((4時間架橋ゴム架橋物破断強度/2時間架橋ゴム架橋物破断強度)×100)を算出し、下記基準で判断した。
 ◎:破断強度変化率が10%未満のもの
 ×:破断強度変化率が10%以上のもの
[ロール加工性]
 ゴム試料のロール加工性は、ゴム試料をロール練りした時のロール巻き付け性とゴムの状態を観察し、以下の基準で評価した。
 ◎:混錬が容易で、ロールに巻き付き易くロールからの離れがみられず、混錬後のゴム組成物の表面が平滑であるもの
 〇:混錬が容易で、ロールに巻き付き易くロールからの離れが見られず、且つ混錬後のゴム組成物の表面の一部にわずかに凸凹が見られる
 □:混錬が容易で、ロール巻き付き性に優れ、且つ混錬後のゴム組成物の表面が多少凸凹しているもの
 △:混錬が容易で、多少ロール巻き付き性に劣り、混錬後のゴム組成物の表面があれているもの
 ×:混錬に負荷がかかりロール巻き付き性もわるいもの
[バンバリー加工性]
 ゴム試料のバンバリー加工性は、ゴム試料を50℃に加温されたバンバリーミキサーに投入し1分間素練り後、表1記載のゴム混合物配合の配合剤Aを投入して1段目のゴム混合物が一体化して最大トルク値を示すまでの時間、すなわちBIT(Black Incorporation Time)を測定し、比較例2を100とする指数で評価した(指数が小さいほど加工性に優れる)。
[保存安定性評価]
 ゴム試料の保存安定性は、ゴム試料を45℃×80%RHの恒温恒湿度槽(ESPEC社製SH-222)に投入し、7日間試験前後の含水量の変化率を算出し、比較例2を100とする指数で評価した(指数が小さいほど保存安定性に優れる)。
[耐水性評価]
 ゴム試料の耐水性は、JIS K6258に準拠してゴム試料の架橋物を温度85℃の蒸留水中に100時間浸漬させて浸漬試験を行い、浸漬前後の体積変化率を下記の式に従って算出し、比較例2を100とする指数で評価した(指数が小さいほど耐水性に優れる)。
 浸漬前後の体積変化率(%)=((浸漬後の試験片体積-浸漬前の試験片体積)/浸漬前の試験片体積)×100
[耐圧縮永久歪み特性]
 ゴム試料の耐圧縮永久歪み特性は、JIS K6262に従いゴム試料のゴム架橋物を25%圧縮させた状態において、175℃で90時間置いた後の圧縮永久歪率を測定して下記基準で評価した。
 ◎:圧縮永久歪率が15%未満である
 ×:圧縮永久歪率が15%以上である
[常態物性評価]
 ゴム試料の常態物性は、JIS K6251に従いゴム試料のゴム架橋物を破断強度、100%引張応力及び破断伸びを測定し以下の基準で評価した。
(1)破断強度は、10MPa以上を◎、10MPa未満を×として評価した。
(2)100%引張応力は、5MPa以上を◎、5MPa未満を×として評価した。
(3)破断伸びは、150%以上を◎、150%未満を×として評価した。
[メチルエチルケトン不溶解分量のバラツキ性評価]
 ゴム試料のメチルエチルケトン不溶解分量のバラツキ評価を、ゴム試料20部(20kg)から任意に選択した20点のメチルエチルケトン不溶解分量を測定し、下記基準に基づき評価した。
 ◎:測定した20点のメチルエチルケトン不溶解分量の平均値を算出し、平均値±3の範囲内に測定した20点全てが入っているもの
 〇:測定した20点のメチルエチルケトン不溶解分量の平均値を算出し、平均値±5の範囲内に測定した20点全てが入っていたもの(平均値±3の範囲では測定した20点のうち1点でも外れてしまうが、平均値±5の範囲内には20点全てが入るもの)
 ×:測定した20点のメチルエチルケトン不溶解分量の平均値を算出し、平均値±5の範囲から測定した20点のうち1点でも外れたもの
[ムーニースコーチ抑制による加工安定性評価]
 特許第6683189号公報に記載されるスクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されたシート状アクリルゴムの冷却速度とアクリルゴム組成物のムーニースコーチ安定性を評価した。
[実施例1]
 ホモミキサーを備えた混合容器に、表2-1に示すように、純水46部、単量体成分としてアクリル酸エチル4.5部、アクリル酸n-ブチル64.5部、アクリル酸メトキシエチル29.5部及びフマル酸モノn-ブチル1.5部、乳化剤としてオクチルオキシジオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部を仕込み撹拌して単量体エマルジョンを得た。
 温度計、撹拌装置を備えた重合反応槽に、純水170部及び上記で得られた単量体エマルジョン3部を投入し、窒素気流下で12℃まで冷却した後に、硫酸第一鉄0.00033部、アスコルビン酸ナトリウム0.02部、及び無機ラジカル発生剤の過硫酸カリウム0.2部を仕込み重合反応を開始した。重合反応槽内の温度を23℃に保ち単量体エマルジョンの残部を3時間かけて連続的に滴下し、反応開始50分後にn-ドデシルメルカプタン0.0072部、100分後にn-ドデシルメルカプタン0.0036部、及び120分後にL-アスコルビン酸ナトリウム0.4部を添加し重合反応を継続させ、重合転化率が略100%に達したところで重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。
 次いで、温度計と撹拌装置を備えた凝固槽で、80℃に加温し、撹拌装置の撹拌翼回転数600回転(周速3.1m/s)で激しく撹拌した2%硫酸マグネシウム水溶液(凝固剤として硫酸マグネシウムを用いた凝固液)350部中に、上記得られた乳化重合液を80℃に加温して連続的に添加して重合体を凝固させ、凝固物であるアクリルゴムのクラムと水を含む凝固スラリーを得た。得られたスラリーからクラムを濾別しつつ凝固層から水分を排出して含水クラムを得た。
 濾別された含水クラムの残った凝固槽内に194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌して含水クラムを洗浄した後に水分を排出させ、再び194部の温水(70℃)を添加して15分間撹拌して含水クラムの洗浄を行った(合計洗浄回数は2回)。洗浄した含水クラム(含水クラム温度65℃)をスクリュー型二軸押出乾燥機15に供給し、脱水・乾燥して幅300mmで厚さ10mmのシート状乾燥ゴムを押し出した。次に、スクリュー型二軸押出乾燥機15に直結して設けた搬送式例局装置を用いて、シート状乾燥ゴムを冷却速度200℃/hrで冷却した。
 なお、本実施例1で用いたスクリュー型二軸押出乾燥機は、1つの供給バレル、3つの脱水バレル(第1~第3の脱水バレル)、5つの乾燥バレル(第1~第5の乾燥バレル)で構成されている。第1の脱水バレルは排水を行い、第2及び第3の脱水バレルは排蒸気を行うようになっている。スクリュー型二軸押出乾燥機の操業条件は、以下のとおりとした。
含水量:
 ・第1の脱水バレルでの排水後の含水クラムの含水量:20%
 ・第3の脱水バレルでの排蒸気後の含水クラムの含水量:10%
 ・第5の乾燥バレルでの乾燥後の含水クラムの含水量:0.4%
ゴム温度:
 ・供給バレルに供給する含水クラムの温度:65℃
 ・スクリュー型二軸押出乾燥機から排出されるゴムの温度:140℃
各バレルの設定温度:
 ・第1の脱水バレル:100℃
 ・第2の脱水バレル:120℃
 ・第3の脱水バレル:120℃
 ・第1の乾燥バレル:120℃
 ・第2の乾燥バレル:130℃
 ・第3の乾燥バレル:140℃
 ・第4の乾燥バレル:160℃
 ・第5の乾燥バレル:180℃
運転条件:
 ・スクリューの直径(D):132mm
 ・スクリューの全長(L):4620mm
 ・L/D:35
 ・スクリューの回転数:135rpm
 ・乾燥バレルの減圧度:10kPa
 ・ダイからのゴムの押出量:700kg/hr
 ・ダイにおける樹脂圧:2MPa
 ・スクリュー型二軸押出乾燥機内での最大トルク:15N・m
 押し出されたシート状乾燥ゴムを、50℃まで冷却してからカッターで切断して、40℃以下にならない内に20部(20kg)になるように積層してベール状アクリルゴム(A)を得た。得られたアクリルゴム(A)の反応性基含有量、灰分量、灰分成分量、メチルエチルケトン不溶解分量、pH、比重、ガラス転移温度(Tg)、含水量、分子量、分子量分布、及び100℃と60℃の複素粘性率を測定して表2-2に示した。また、アクリルゴム(A)の保存安定性試験を行って含水量変化率を求め、その結果を表2-2に示した。
 次いで、バンバリーミキサーを用い、アクリルゴム(A)100部と表1に記載の「配合1」の配合剤Aとを投入して、50℃で5分間混合した(1段目混合)。このときのBITを測定してアクリルゴムのバンバリー加工性を評価しその結果を表2-2に示した。
 次に、得られた混合物を50℃のロールに移して、「配合1」の配合剤Bを配合して混合(2段目混合)しゴム組成物を得た。このときのロール加工性を評価しその結果を表2-2に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 得られたゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、2時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物から3cm×2cm×0.2cmの試験片を切り取って耐水性、耐圧縮永久歪み特性及び常態物性を評価した。また、二次架橋を更に2時間行ったシート状ゴム架橋物の常態物性を測定し架橋性を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[実施例2]
 乳化剤をノニルフェニルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部に、無機ラジカル発生剤の過硫酸カリウム量を0.21部に、更に、連鎖移動剤n-ドデシルメルカプタンの後添加を50分後0.017部、100分後0.017部及び120分後0.017部に変更する以外は実施例1と同様に行い、アクリルゴム(B)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[実施例3]
 単量体成分をアクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸モノn-ブチル1.75部、乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部に変更し、更に、洗浄後の含水クラムを160℃の熱風乾燥機を用いて含水量0.4%まで乾燥を行いクラム状アクリルゴムを得た後に300×650×300mmのベーラーに充填し3MPaの圧力で25秒間押し固めベール状アクリルゴムとする以外は実施例1と同様に行いアクリルゴム(C)を得た。アクリルゴム(C)の各特性を評価し(配合剤は「配合2」に変更した)、それらの結果を表2-2に示した。
[実施例4]
 単量体成分をアクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に変更する以外は実施例3と同様に行い、アクリルゴム(D)を得て各特性(配合剤は「配合3」に変更した)を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[実施例5]
 単量体成分をアクリル酸エチル42.2部、アクリル酸n-ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部及びクロロ酢酸ビニル1.3部に変更する以外は実施例3と同様に行い、アクリルゴム(E)を得て各特性(配合剤は「配合4」に変更した)を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[実施例6]
 単量体成分をアクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸モノn-ブチル1.75部、乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部に変更し、更に、洗浄後の含水クラムを160℃の熱風乾燥機を用いて含水量0.4%まで乾燥を行いクラム状アクリルゴムを得た後に300×650×300mmのベーラーに充填し3MPaの圧力で25秒間押し固めベール状アクリルゴムとする以外は実施例2と同様に行いアクリルゴム(F)を得た。アクリルゴム(F)の各特性を評価し(配合剤は「配合2」に変更した)、それらの結果を表2-2に示した。
[実施例7]
 単量体成分をアクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に変更する以外は実施例6と同様に行い、アクリルゴム(G)を得て各特性(配合剤は「配合3」に変更した)を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[実施例8]
 単量体成分をアクリル酸エチル42.2部、アクリル酸n-ブチル35部、アクリル酸メトキシエチル20部、アクリロニトリル1.5部及びクロロ酢酸ビニル1.3部に変更する以外は実施例6と同様に行い、アクリルゴム(H)を得て各特性(配合剤は「配合4」に変更した)を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[参考例1]
 無機ラジカル発生剤の過硫酸カリウム量を0.22部に変更し、連鎖移動剤を添加せず且つベーラーによりベール化はせずにクラム状のアクリルゴムを得る以外は実施例8と同様に行い、アクリルゴム(I)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[比較例1]
 凝固反応を、乳化重合後の撹拌している乳化重合液(撹拌数100rpm、周速0.5m/s)に0.7%硫酸マグネシウム水溶液を添加して行う以外は参考例1と同様に行い、アクリルゴム(J)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[比較例2]
 乳化剤をラウリル硫酸ナトリウム塩0.709部及びポリオキシエチレンドデシルエーテル1.82部に変更し、凝固液を0.7%硫酸ナトリウム水溶液に変更し、且つ、洗浄方法を、凝固反応後の含水クラム100部に対し、工業用水194部を添加し、凝固槽内で25℃、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出する含水クラムの洗浄を4回行い、次いで、pH3の硫酸水溶液194部を添加して25℃で5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させて酸洗浄を1回行った後、純水194部添加して純水洗浄を1回行うように変更する以外は比較例1と同様に行い、アクリルゴム(K)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
[比較例3]
 連鎖移動剤のn-ドデシルメルカプタン0.025部を単量体エマルジョンに連続的に添加し且つ含水クラムの洗浄を工業用水194部を添加し、凝固槽内で25℃、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出する操作を2回だけ行う以外は比較例2と同様に行い、アクリルゴム(L)を得て各特性を評価した。それらの結果を表2-2に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 表2-1及び表2-2から、本発明のイオン反応性基を有し、GPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布による数平均分子量(Mn)が10万~50万の範囲、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.7~6.5の範囲であるアクリルゴムは、架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性含めた常態物性に優れ、更に、バンバリー加工性、保存安定性、耐水性にも格段に優れていることがわかる(実施例1~8)。
 表2-2から、また、本願実施例、参考例及び比較例の条件で製造したアクリルゴム(A)~(L)は、カルボキシル基、エポキシ基及び塩素原子等のいずれかのイオン反応性基を有し、且つGPC-MALS法で測定される絶対分子量の数平均分子量(Mn)が10~50万の特定領域であるため、短時間の架橋性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性含めた常態物性のいずれにも優れていることがわかる(実施例1~8、参考例1及び比較例1~3)。しかしながら、比較例1~3のアクリルゴム(J)~(L)は、架橋性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性に優れてもロール加工性、バンバリー加工性、保存安定性及び耐水性に劣り(比較例1~2)、また、ロール加工性、保存安定性及び耐水性に劣っている(比較例3)。
 表2-2から、ロール加工性に関しては、数平均分子量(Mn)が特定領域の範囲内で且つ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が大きければ大きいほど良好で、特に3.7~6.5の特定領域にあるときに強度特性を損なわずにロール加工性を格段に改善できることがわかる(実施例1~8と比較例1~3との比較)。
 表2-1及び表2-2から、かかる数平均分子量(Mn)が特定領域の範囲内で且つMw/Mnが広い強度特性とロール加工性に優れるアクリルゴムが、無機ラジカル発生剤を減少させ1本の重合鎖を伸ばし且つ連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)を回分的に後添加することにより達成できることがわかる(実施例1~8)。また、Mw/Mnを効率的に広げるためには、回分的な後添加の回数が大きく影響し、回分的な後添加回数が3回よりも2回の方がMw/Mnが広くなるが(実施例3~5と実施例6~8との比較)、連鎖移動剤を連続的に添加してしまうとMw/Mnの広がりが僅かで且つロール加工性の改善が限定的なことがわかる(比較例3)。これは、GPC-MALS法のチャート上では完全な二山にはならないが、連鎖移動剤を回分的に後添加することにより高分子量成分と低分子量成分とができてMw/Mnを広くして且つロール加工性を大幅に改善していると推測している。また、表2-1には示していないが、本願実施例においては、還元剤のアスコルビン酸ナトリウムを重合開始120分後に添加しており、こうすることにより、アクリルゴムの高分子量成分生成が容易になり連鎖移動剤後添加のMw/Mnを広げる効果を増大している。一方、連鎖移動剤の添加量を過剰に添加してMw/Mnを過度に大きく、例えば、10以上にしてしまうと低分子量成分が多量に存在し強度特性や耐圧縮永久歪み特性に劣ってしまっており好ましくなかった。
 表2-1及び表2-2から、本発明のアクリルゴム(A)~(H)は、架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性に優れるとともに、バンバリー加工性にも優れ、ロール加工性とバンバリー加工性の両加工性に優れていることがわかる(実施例1~8)。アクリルゴムのバンバリー加工性は、メチルエチルケトン不溶解分量に相関し、メチルエチルケトン不溶解分が少ない方がバンバリー加工性に優れていることがわかる(実施例1~2、実施例3~8&参考例1、及び比較例1~3との比較)。アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量は、連鎖移動剤存在下で乳化重合することで減少させることができ(実施例3~8及び比較例3)、特に、メチルエチルケトン不溶解分量が、強度特性を高めるために重合転化率を高めると急激に増加してくるので、重合後半の連鎖移動剤後添加の実施例3~8においてメチルエチルケトン不溶解分生成を抑制できていることがわかる。アクリルゴムのメチルエチルケトン不溶解分量は、さらに、含水クラムの乾燥をスクリュー型二軸押出乾燥機で行うことにより格段に減少し製造されるアクリルゴムのバンバリー加工性を大幅に改善している(実施例1~2と実施例3~8との比較)。本発明においては、本実施例では示していないが、連鎖移動剤を添加せずに乳化重合で急増したメチルエチルケトン不溶解分量が(比較例1~2)、スクリュー型二軸押出乾燥機内で実質的に水分を含まない状態(含水量1重量%未満)で溶融混錬されることで消失し強度特性を損ねずにバンバリー加工性を大幅に改善できることを確認している。
 表2-1及び表2-2から、また、本発明のアクリルゴム(A)~(H)は、架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性に優れるとともに、保存安定性にも格段に優れることがわかる(実施例1~8)。アクリルゴムの保存安定性は、アクリルゴムの比重が大きく関係しており、比重が大きいとアクリルゴムに空気を巻き込んでおらず保存安定性に優れていることがわかる(実施例1~2、実施例3~8及び比較例1~3との比較)。比重の大きなアクリルゴムは、クラム状のアクリルゴムをベーラーで圧縮させてベール化することにより(実施例3~8)、更に好適にはスクリュー型二軸押出乾燥機で空気を巻き込まない状態でシート状に押し出して特定温度で切断・積層してベール化することにより(実施例1~2)得ることができる。本発明においては、特に、減圧下で溶融混錬及び乾燥したシート状アクリルゴムを積層したベール状アクリルゴムとしたものが、短時間架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性、強度特性含めた常態物性及び耐水性を損ねることなく格段に保存安定性を改善されていることがわかる(実施例1~2)。アクリルゴムの保存安定性は、また、灰分量が少ないほどあるいはpHが特定であるときほど好ましいことがわかる(実施例1~8)。
 表2-1及び表2-2から、また、本発明のアクリルゴム(A)~(H)は、架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性に優れるとともに、耐水性が格段に優れることがわかる(実施例1~8)。イオン反応性基の違いによる耐水性への影響を灰分量が同等の実施例3~8及び参考例1の中でみると、塩素原子を有する実施例5、8及び参考例1のアクリルゴム(E、H、I)よりもカルボキシル基を有する実施例3、6のアクリルゴム(C、F)及びエポキシ基を有する実施例4、7のアクリルゴム(D、G)の方が2倍優れていることがわかる。本発明のアクリルゴム(A)~(H)、参考例のアクリルゴム(I)及び比較例のアクリルゴム(J)~(L)の灰分中のリン、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム及びイオウの合計の元素量はいずれも90重量%を超えてアクリルゴムの耐水性や金型離型性等の特性に優れるが、特に、灰分量が同じでも灰分中のリンとマグネシウムの割合が多い方が耐水性に優れていることがわかる(実施例3~8及び参考例1と比較例2との比較)。
 表2-2から、アクリルゴムの耐水性に関しては、また、灰分量に大きく影響されていることがわかる。アクリルゴム中の灰分量は、製造条件により大きく影響され、凝固剤を濃いめの水溶液(凝固液)にし且つ激しく撹拌して凝固液中に乳化重合した乳化重合液を添加して凝固反応を行うこと、洗浄を温水で行うこと、及び含水クラムを脱水してから乾燥することで大幅に低減できることがわかる(実施例1~2、実施例3~8及び比較例1との比較)。また、灰分中のリンとマグネシウムの含有量を多くすること及びリンとマグネシウムの比率を特定にすることによりアクリルゴムの耐水性を大幅に改善できる(実施例1~8と比較例1~3との比較)。なお、洗浄回数によるアクリルゴム中の灰分量への影響は、室温での水洗浄では、3回目までは灰分量を確実に減少させることができるが、3回目と4回目では殆ど差が無く、4回目以降での灰分量低減効果は殆ど見られなかった。一方、温水での洗浄では、2回目まででアクリルゴム中の灰分量は低減し、3回目以降の洗浄効果は殆ど認められなかった。
[生成含水クラムの粒径について]
 実施例1~8、参考例1及び比較例1の凝固工程において生成した含水クラムについて、(1)710μm~6.7mm(710μmを通過せず6.7mm通過)、(2)710μm~4.75mm(710μmを通過せず4.75mmを通過)、(3)710μm~3.35mm(710μm通過せず3.35mm通過)の全含水クラム量に対する割合をJIS篩を用いて測定した。それらの結果を下記に示す。
実施例1:(1)90重量%、(2)90重量%、(3)87重量%
実施例2:(1)92重量%、(2)91重量%、(3)89重量%
実施例3:(1)89重量%、(2)87重量%、(3)83重量%
実施例4:(1)91重量%、(2)90重量%、(3)83重量%
実施例5:(1)93重量%、(2)91重量%、(3)89重量%
実施例6:(1)95重量%、(2)89重量%、(3)80重量%
実施例7:(1)92重量%、(2)92重量%、(3)88重量%
実施例8:(1)94重量%、(2)93重量%、(3)87重量%
参考例1:(1)90重量%、(2)89重量%、(3)88重量%
比較例1:(1)15重量%、(2)1重量%、(3)0重量%
 これらの結果より、凝固工程で生成する含水クラムの大きさで同じ洗浄をしてもアクリルゴム、あるいはアクリルゴム中に残存する灰分量が相違し、(1)~(3)の特定割合が多いものの洗浄効率が高く灰分量が低減し耐水性に優れていることがわかる(表2-2の実施例3~8及び参考例1と比較例1との比較)。また、さらに、(1)~(3)の特定割合の多い含水クラムのものは、20重量%脱水時の灰分除去率も高く、灰分量をより低減しアクリルゴムの耐水性を格段に改善していることがわかる(実施例1~2と実施例3~8及び参考例1との比較)。なお、実施例8と参考例1と比べてわかるように、凝固工程で生成する含水クラムの粒子径は連鎖移動剤の有無には関係していない。
 また、参考のために、凝固工程において乳化重合液を凝固液に添加する以外は比較例1と同様に行い(参考例2)、また、乳化重合液を凝固液に添加し凝固液の凝固剤濃度を0.7重量%から2重量%に変更する以外は比較例1と同様に行い(参考例3)、生成する含水クラムの粒径割合とアクリルゴム中の灰分量を測定した。それらの結果を下記に示す。なお、参考例3の凝固液の撹拌数100rpmを600rpmに変更し、周速を0.5m/sから3.1m/sに増大し、激しく回転する条件に変えて実施すると参考例1と同じ条件となる。
参考例2:(1)90重量%、(2)55重量%、(3)22重量%、灰分量0.55重量%
参考例3:(1)91重量%、(2)70重量%、(3)40重量%、灰分量0.41重量%
 これらの結果より、アクリルゴム中の灰分量が、凝固反応において、凝固液濃度を高め(2%)、乳化重合液を撹拌している凝固液中に添加して行う方法に変え(Lx↓)、且つ、凝固液の撹拌を激しくする(撹拌数600rpm/周速3.1m/s)ことで生成する含水クラムのクラム径を710μm~4.75mmの特定範囲に集束でき、温水による洗浄効率および脱水時の乳化剤や凝固剤の除去効率が格段に向上してアクリルゴムの灰分量を低減し、アクリルゴムの架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性含めた常態物性等の特性を損ねずに耐水性を大幅に改善できていることがわかる(実施例1~2)。
[実施例9]
 表3-1に示すように、単量体成分をアクリル酸エチル74.5部、アクリル酸n-ブチル17部、アクリル酸メトキシエチル7部及びフマル酸モノn-ブチル1.5部及び乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部に変更する以外は実施例2と同様にして行い、アクリルゴム(M)を得て各特性を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例10]
 単量体成分をアクリル酸エチル74.5部、アクリル酸n-ブチル17部、アクリル酸メトキシエチル7部及びフマル酸モノn-ブチル1.5部及び乳化剤をトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸エステルナトリウム塩1.8部に変更する以外は実施例1と同様にして行い、アクリルゴム(N)を得て各特性を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例11]
 単量体成分をアクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に、及びスクリュー型二軸押出乾燥機の運転条件を高シェア(最大トルク45N・m)に変更する以外は実施例9と同様にして行い、アクリルゴム(O)を得て各特性(配合剤は「配合3」に変更した)を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例12]
 単量体成分をアクリル酸エチル48.5部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸n-ブチル1.5部に変更する以外は実施例11と同様にして行い、アクリルゴム(P)を得て各特性(配合剤は「配合1」に変更した)を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例13]
 単量体成分をアクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸モノn-ブチル1.75部に変更する以外は実施例11と同様にして行い、アクリルゴム(Q)を得て各特性(配合剤は「配合2」に変更した)を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例14]
 単量体成分をアクリル酸エチル28部、アクリル酸n-ブチル38部、アクリル酸メトキシエチル27部、アクリロニトリル5部及びアリルグリシジルエーテル2部に、及びスクリュー型二軸押出乾燥機の運転条件を高シェア(最大トルク45N・m)に変更する以外は実施例10と同様にして行い、アクリルゴム(R)を得て各特性(配合剤は「配合3」に変更した)を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例15]
 単量体成分をアクリル酸エチル48.5部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸モノn-ブチル1.5部に変更する以外は実施例14と同様にして行い、アクリルゴム(S)を得て各特性(配合剤は「配合1」に変更した)を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
[実施例16]
 単量体成分をアクリル酸エチル48.25部、アクリル酸n-ブチル50部及びフマル酸モノn-ブチル1.75部に変更する以外は実施例14と同様にして行い、アクリルゴム(T)を得て各特性(配合剤は「配合2」に変更した)を評価し、それらの結果を表3-2に示した。また、表3-1には、スクリュー型二軸押出乾燥機の脱水(排水)後含水量、最大トルク、比電力、比動力、剪断速度及び剪断粘度を示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 表3-1と表3-2からは、スクリュー型二軸押出乾燥機の最大トルクを特定領域まで高めて(高シェアにして)含水クラムを脱水・乾燥することで、本発明のアクリルゴムの架橋性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性等の特性を損ねることなくロール加工性が更に格段に高められることがわかる(実施例11~16と実施例9~10との比較)。これは、連鎖移動剤を後添加して乳化重合した高分子量成分と低分子量成分とからなるアクリルゴムをスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて高シェアで乾燥することにより更に分子量と分子量分布がバランスされたアクリルゴムとなることにより、ロール加工性を格段に改善できることがわかる。
 さらに、各ゴム試料について、前述の方法で、メチルエチルケトン不溶解分量のバラツキ性を評価した。すなわち、ゴム試料のメチルエチルケトン不溶解分量のバラツキ評価を、ゴム試料20部(20kg)から任意に選択した20点のメチルエチルケトン不溶解分量を測定し、前述の基準に基づき評価した。
 ゴム試料として実施例9~16で得られたアクリルゴム(M)~(T)及び比較例1で得られたアクリルゴム(J)を用いてメチルエチルケトン不溶解分量のバラツキ性評価を行うと、本発明に係る実施例9~16のアクリルゴム(M)~(T)の結果はいずれも「◎」であったが、比較例1のアクリルゴム(J)の結果は「×」であった。
 これは、アクリルゴム(M)~(T)は、スクリュー型二軸押出乾燥機で溶融混錬し実質的に水分がない状態(含水量1重量%未満)で溶融混錬及び乾燥されることでメチルエチルケトン不溶解分量が殆ど消失し且つメチルエチルケトン不溶解分量バラツキも殆ど無くなることで、架橋性、ロール加工性、耐圧縮永久歪み特性及び強度特性含めた常態物性を損なうことなく、バンバリー加工性を格段に向上できたと推測される。
 一方、比較例1のアクリルゴム(J)を製造する条件で乳化重合及び凝固洗浄まで行った後に生成した含水クラムを、実施例9と同じ条件でスクリュー型二軸押出乾燥機に投入し押出乾燥させて得られたアクリルゴムについて測定したメチルエチルケトン不溶解分量及びメチルエチルケトン不溶解分量バラツキは、アクリルゴム(M)とほぼ同等でバンバリー加工性も改善できていることがわかったが、ロール加工性は「×」評価のままであった。
 実施例9~16のアクリルゴム(M)~(T)を含むアクリルゴム組成物について、前述したムーニースコーチ抑制による加工安定性評価の方法で、温度125℃におけるムーニースコーチ時間t5(分)をJIS K 6300に従って測定し、下記基準でムーニースコーチ保存安定性を評価した。その結果、いずれも「◎」の良好な結果であった。
 ◎:ムーニースコーチ時間t5が2.0分を超えるもの
 〇:ムーニースコーチ時間t5が1.5~2.0分のもの
 ×:ムーニースコーチ時間t5が1.5分未満のもの
 なお、これらのアクリルゴム(M)~(T)に関して、スクリュー型二軸押出乾燥機から押し出されるシート状乾燥ゴムの冷却速度は、実施例1と同様に略200℃/hrと早くいずれも40℃/hr以上である。
[金型への離型性]
 実施例9~16で得られたアクリルゴム(M)~(T)のゴム組成物を、10mmφ×200mmmの金型に圧入し、金型温度165℃で2分間架橋後のゴム架橋物を取り出し、以下の基準で金型離型性を評価すると、アクリルゴム(M)~(T)はいずれも「◎」と良好な評価であった。
 ◎:金型から簡単に離型でき型残りもない
 〇:金型から簡単に離型できるが型残りがほんの僅かに認められる
 △:金型から簡単に離型できるが型残りが僅かにある
 ×:金型から剥がしにくい
 1 アクリルゴム製造システム
 3 凝固装置
 4 洗浄装置
 5 スクリュー型押出機
 6 冷却装置
 7 ベール化装置
 

Claims (53)

  1.  イオン反応性基を有し、GPC-MALS法により測定される絶対分子量及び絶対分子量分布による数平均分子量(Mn)が10万~50万の範囲、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.7~6.5の範囲であるアクリルゴム。
  2.  GPC-MALS法の測定溶媒が、ジメチルホルムアミド系溶媒である請求項1に記載のアクリルゴム。
  3.  イオン反応性基が、カルボキシル基、エポキシ基または塩素原子である請求項1または2に記載のアクリルゴム。
  4.  イオン反応性基含有量が、0.001~5重量%の範囲である請求項1~3のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  5.  アクリルゴムが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の結合単位、イオン反応性基含有単量体由来の結合単位、及びその他の単量体由来の結合単位からなるものである請求項1~4のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  6.  z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が、1.3~3の範囲である請求項1~5のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  7.  メチルエチルケトン不溶解分量が、50重量%以下である請求項1~6のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  8.  メチルエチルケトン不溶解分量を20点測定したときの値が、(平均値±5)重量%の範囲内に全て入るものである請求項1~7のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  9.  灰分量が、0.5重量%以下である請求項1~8のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  10.  灰分中のナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン及びイオウの合計量が、50重量%以上である請求項1~9のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  11.  60℃における複素粘性率([η]60℃)が、15,000[Pa・s]以下である請求項1~10のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  12.  100℃における複素粘性率([η]100℃)と60℃における複素粘性率([η]60℃)との比([η]100℃/[η]60℃)が、0.8以上である請求項1~11のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  13.  比重が、0.8以上である請求項1~12のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  14.  シート状またはベール状である請求項1~13のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  15.  リン酸エステル塩または硫酸エステル塩を乳化剤として使用し乳化重合したものである請求項1~14のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  16.  乳化重合した重合液をアルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を凝固剤として使用することにより凝固させ、乾燥したものである請求項1~15のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  17.  凝固後に溶融混錬及び乾燥されたものである請求項1~16のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  18.  前記の溶融混錬及び乾燥が、実質的に水分を含まない状態で行われたものである請求項17に記載のアクリルゴム。
  19.  前記の溶融混錬及び乾燥が、減圧下で行われたものである請求項17または18に記載のアクリルゴム。
  20.  前記の溶融混錬及び乾燥後に、40℃/hr以上の冷却速度で冷却されたものである請求項17~19のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  21.  粒子径710μm~6.7mmの範囲の割合が50重量%以上の含水クラムを洗浄・脱水・乾燥させたものである請求項1~20のいずれか1項に記載のアクリルゴム。
  22.  イオン反応性基含有単量体を含むアクリルゴム単量体成分を水と乳化剤とでエマルジョン化する工程と、
     無機ラジカル発生剤と還元剤とを含むレドックス触媒存在下、重合を開始し、
     重合途中で連鎖移動剤を回分的に後添加して重合を継続し乳化重合する工程と、
     を含むアクリルゴムの製造方法。
  23.  請求項1~21のいずれか1項に記載のアクリルゴムを製造する請求項22に記載のアクリルゴムの製造方法。
  24.  乳化重合後に凝固して含水クラムを生成し、生成した含水クラムをスクリュー型二軸押出乾燥機を用いて最大トルク25N・m以上で脱水・乾燥する請求項22または23に記載のアクリルゴムの製造方法。
  25.  無機ラジカル発生剤量が、単量体成分100重量に対して0.1~0.21重量部の範囲である請求項22~24のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  26.  還元剤を後添加するものである請求項22~25のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  27.  乳化重合温度が、35℃以下に制御される請求項22~26のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  28.  乳化重合工程において、リン酸エステル塩または硫酸エステル塩を乳化剤として使用し乳化重合を行う請求項22~27のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  29.  乳化重合工程で生成した重合液を、アルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を凝固剤として使用することで凝固させ、乾燥する請求項22~28のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  30.  乳化重合工程で生成した重合液を、アルカリ金属塩または周期表第2族金属塩を含む凝固剤を含む水溶液中に添加し撹拌することで凝固させる請求項29に記載のアクリルゴムの製造方法。
  31.  乳化重合工程で生成した重合液を凝固剤と接触させて凝固した後、溶融混錬及び乾燥する請求項22~30のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  32.  前記の溶融混錬及び乾燥が、実質的に水分を含まない状態で行われる請求項31に記載のアクリルゴムの製造方法。
  33.  前記の溶融混錬及び乾燥が、減圧下で行われる請求項31または32に記載のアクリルゴムの製造方法。
  34.  溶融混錬及び乾燥後のアクリルゴムを、40℃/hr以上の冷却速度で冷却する請求項31~33のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  35.  粒子径710μm~6.7mmの範囲の割合が50重量%以上の含水クラムを洗浄・脱水・乾燥する請求項22~34のいずれか1項に記載のアクリルゴムの製造方法。
  36.  請求項1~21のいずれか1項に記載のアクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び架橋剤を含んでなるゴム組成物。
  37.  前記充填剤が、補強性充填剤である請求項36に記載のゴム組成物。
  38.  前記充填剤が、カーボンブラック類である請求項36に記載のゴム組成物。
  39.  前記充填剤が、シリカ類である請求項36に記載のゴム組成物。
  40.  前記架橋剤が、有機架橋剤である請求項36~39のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  41.  前記架橋剤が、多価化合物である請求項36~40のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  42.  前記架橋剤が、イオン架橋性化合物である請求項36~41のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  43.  前記架橋剤が、イオン架橋性有機化合物である請求項42に記載のゴム組成物。
  44.  前記架橋剤が、多価イオン有機化合物である請求項42または43に記載のゴム組成物。
  45.  前記架橋剤としてのイオン架橋性化合物、イオン架橋性有機化合物または多価イオン有機化合物のイオンが、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基及びチオール基からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン反応性基である請求項42~44のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  46.  前記架橋剤が、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸化合物及び多価チオール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の多価イオン化合物である請求項44に記載のゴム組成物。
  47.  前記架橋剤の含有量が、ゴム成分100重量部に対して0.001~20重量部の範囲である請求項36~46のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  48.  更に、老化防止剤を含んでなる請求項36~47のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  49.  前記老化防止剤が、アミン系老化防止剤である請求項48に記載のゴム組成物。
  50.  請求項1~21のいずれか1項に記載のアクリルゴムを含むゴム成分、充填剤及び必要に応じて老化防止剤を混合した後に、架橋剤を混合するゴム組成物の製造方法。
  51.  請求項36~49のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
  52.  前記ゴム組成物の架橋が、成形後に行われる請求項51に記載のゴム架橋物。
  53.  前記ゴム組成物の架橋が、一次架橋及び二次架橋を行うものである請求項51または52に記載のゴム架橋物。
     
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